(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】貼付材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20230518BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230518BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230518BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230518BHJP
A61K 31/618 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61P29/00
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/81
A61K31/618
(21)【出願番号】P 2019003529
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】500190029
【氏名又は名称】第一編物株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591166330
【氏名又は名称】前田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金丸 亮二
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 巧
(72)【発明者】
【氏名】栄 哲
(72)【発明者】
【氏名】ニルカ アベワルダナ
(72)【発明者】
【氏名】奥野 一詩
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132409(JP,A)
【文献】実開昭57-059819(JP,U)
【文献】特開2006-008593(JP,A)
【文献】特開平04-001126(JP,A)
【文献】秋本眞喜雄ら,皮膚色の評価におけるCIEDE2000色差式の有用性,自動制御連合講演会講演論文集,日本,2014年,第57回自動制御連合講演会,1115
【文献】成瀬大輔ほか,ESP方式によるナノファイバ―不織布とセルロースナノファイバーの複合化による医療用材料の開発,富山県産業技術研究開発センター研究報告,富山県産業技術研究開発センター,2018年07月31日,No.32,4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染
料を含む極細繊維不織布からなる基材層と、
前記基材層の一面に積層され、粘着成分を含む粘着層とを備えた貼付材であって、
前記基材層の積層方向の厚さは5μm以上200μm以下であり、
前記基材層を形成する極細繊維不織布の繊維径は50nm以上2000nm以下であり、
前記極細繊維不織布の樹脂成分に対する前記染料の割合は、0.01質量%以上2.0質量%以下であり、
前記粘着層の塗膏量は5μm以上400μm未満であり、
前記粘着成分は、中和度が10モル%以上50モル%以下のポリ(メタ)アクリル酸部分中和物であり、
前記粘着層中における前記粘着成分の含有量は、1質量%以上10質量%以下であり、
前記粘着成分は、前記基材層における前記極細繊維不織布の繊維と繊維の交差個所にも水かき状の付着物として存在しており、
肌の色がL
*a
*b
*表色系でL
*45以上67以下、a
*4以上11以下、及びb
*13以上23以下の被験者について、前記貼付材を前記被験者の肌に貼付したときに、前記被験者の肌の色と、前記被験者における前記貼付材を貼付した部分の色とのL
*a
*b
*表色系における色差Δ
Eが10以下である
ことを特徴とする貼付材。
【請求項2】
前記貼付材を、肌色カラースケール Skin Color 75(日本色研事業株式会社発行)に記載の75色の色パターン上に貼付したときに、27色以上の色パターンにおいて、前記色パターンの色と、前記色パターンにおける前記貼付材を貼付した部分の色とのL
*a
*b
*表色系における色差Δ
Eが10以下となる
ことを特徴とする請求項1に記載の貼付材。
【請求項3】
前記基材層を形成する極細繊維不織布の繊維径は200nm以上800nm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の貼付材。
【請求項4】
前記極細繊維不織布のSEM像において、繊維間の空隙の開口径を測定して得られた最も大きい該開口径の値を空隙最大径としたときに、該空隙最大径は0.1μm以上10μm以下
であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項5】
前記粘着層は、薬効成分又は化粧料成分を含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項6】
前記極細繊維不織布の原料樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタン、シルク及びポリビニルアルコールの群から選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項7】
前記貼付材を人の肌に貼付して所定時間経過後に、前記基材層中で前記粘着成分が固化して膜を形成することにより、前記貼付材は半透明状態を維持する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の貼付材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された貼付材の製造方法であって、
前記基材層の前記一面に前記粘着層を形成したときに、前記粘着層の粘着成分が前記基材層の一面側から他面側に向かって前記基材層の内部に浸透することにより、全体として半透明の不織布膜を形成することを特徴とする貼付材の製造方法。
【請求項9】
原料樹脂を含む樹脂溶液を紡糸して前記基材層を得る基材層形成工程と、
前記基材層の一面に、前記粘着成分を含む組成物を配置して前記粘着層が積層された貼付材本体を得る粘着層形成工程と、
前記貼付材本体を大気中に保持し、熟成させて前記貼付材を得る熟成工程とを備え、
前記熟成工程で、前記粘着成分は前記基材層の内部に浸透する
ことを特徴とする請求項8に記載の貼付材の製造方法。
【請求項10】
前記染料は、分散染料及び酸性染料の少なくとも一方である
ことを特徴とする請求項9に記載の貼付材の製造方法。
【請求項11】
前記基材層形成工程で、前記樹脂溶液を、電界紡糸法を用いて紡糸するものであり、
前記電界紡糸法による紡糸は、マルチノズル式エレクトロスピニング装置を用い、ノズル先端から前記樹脂溶液を噴射させて、コレクタの表面上に一定速度で流れるように配置された支持層の表面に該樹脂溶液を吹付けることで行われ、
前記樹脂溶液中における樹脂の濃度は、5質量%以上50質量%以下であり、
前記ノズルと前記コレクタとの間に印加される電圧は、10kV以上50kV以下であり、
前記ノズル先端から前記コレクタまでの距離は、50mm以上200mm以下であり、
前記支持層の送り速度は、0.5mm/分以上200mm/分以下であり、
前記ノズル先端から前記樹脂溶液を噴射させるときのノズル噴射速度は、2mg/秒以上25mg/秒以下である
ことを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の貼付材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬用湿布材等の貼付材は、粘着層を塗膏する基布の繊維径が太く且つ基布の厚さが厚いため、使用者の肌に貼付したときに、貼付材を貼付していることが明瞭に視認でき、外観性やファッション性の面で改善の余地があった。
【0003】
そこで、貼付材用の基布の繊維中に顔料を練り込むことにより基布の色を肌色等に着色する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のものでは、基布はポリエステル繊維からなり、例えば実施例1に記載のように56dtex/36f程度の繊度を備えた織編物により構成されている。その結果、基布の繊維径が太く且つ基布の厚さが厚いため、基布の色が肌色に着色されていたとしても、使用者の肌に貼付したときに依然として目に付きやすい虞があるという問題があった。また、基布は織編物であるから、基布の製造に多くの工程が必要になるという点で問題があった。
【0006】
そこで本発明では、製造工程が簡潔であり、使用者の肌に貼付しても目立ちにくい貼付材をもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示する貼付材は、染料又は顔料を含む極細繊維不織布からなる基材層と、前記基材層の一面に積層され、粘着成分を含む粘着層とを備えた貼付材であって、肌の色がL*a*b*表色系でL*45以上67以下、a*4以上11以下、及びb*13以上23以下の被験者について、前記貼付材を前記被験者の肌に貼付したときに、前記被験者の肌の色と、前記被験者における前記貼付材を貼付した部分の色とのL*a*b*表色系における色差ΔE及び/又はΔE00が10以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製造工程が簡潔であり、染料又は顔料を含むことにより着色されるとともに繊維径が細く均一且つ多数の空隙を備えた極細繊維不織布を基材層とするとともに、基材層の一面に粘着成分を含む粘着層を備えることで、粘着成分の一部が基材層に浸み込み、全体として半透明の貼付材をもたらすことができる。そうして、使用者の肌に貼付したときに、肌の色と同化して目立たない貼付材をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る貼付材の構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る貼付材を含む貼付材製品の構成を示す断面図である。
【
図3】極細繊維不織布のみを人の肌に貼付したときの入射光の進行の様子を説明するための模式図である。
【
図4】極細繊維不織布に液状体が浸透したものを人の肌に貼付したときの入射光の進行の様子を説明するための模式図である。
【
図5】一実施形態に係る貼付材の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図5における紡糸工程の方法の一例を示す図である。
【
図7A】製造例2の極細繊維不織布の電子顕微鏡像である。
【
図7B】製造例2の極細繊維不織布の電子顕微鏡像である。
【
図8A】実施例1の貼付材の高真空撮影により得られた2000倍の電子顕微鏡像である。
【
図8B】実施例1の貼付材の高真空撮影により得られた5000倍の電子顕微鏡像である。
【
図9A】実施例1の貼付材の低真空撮影により得られた撮影開始直後の2000倍の電子顕微鏡像である。
【
図9B】実施例1の貼付材の低真空撮影により得られた撮影開始直後から3分経過後の2000倍の電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0011】
≪貼付材≫
本実施形態に係る貼付材10は、
図1に示すように、基材層12と、基材層12の下面(一面)に積層された粘着層14とを備えている。
【0012】
<基材層>
基材層12は、極細繊維不織布からなる。
【0013】
極細繊維不織布は、極細の繊維径を有するナノファイバー及び/又はマイクロファイバーからなる不織布であり、広い比表面積を有することから、軽い、薄い、柔らかい、伸びる、透湿防水性等の特徴を備える。なお、本明細書において、1000nm未満の繊維径を有する極細繊維をナノファイバー、1000nm以上の繊維径を有する極細繊維をマイクロファイバーという。極細繊維の平均繊維径は、貼付材10の強度を保持しつつ、貼付材10を人の肌に貼付したときに色の違いや違和感を低減し、目立ちにくくする観点から、好ましくは50nm以上2000nm以下、より好ましくは100nm以上1000nm以下、特に好ましくは200nm以上800nm以下とすることができる。平均繊維径が50nm未満であると、貼付材10の強度が劣る虞がある。また、平均繊維径が2000nm超であると、貼付材10を人の肌に貼付したときに色の違いや違和感が増大し、目立ちやすくなる虞がある。極細繊維の平均繊維径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により得られた任意の極細繊維5本~100本の繊維形状部分の繊維径の平均値から求めることができる。また、極細繊維不織布は、複数の繊維間に、空隙最大径が好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5μm以上8μm以下、特に好ましくは1μm以上5μm以下の細かな空隙を多数有する。これにより、比表面積が広くなり、粘着層の粘着成分等の基材層への浸透及び粘着成分等の保持が促進される。なお、空隙最大径が0.1μm未満であると、粘着成分等の速やかな浸透が難しくなる虞がある。また、空隙最大径が10μm超であると、粘着成分等の保持が難しくなる虞がある。なお、空隙最大径は、SEM像において、繊維間の空隙の開口径を測定して得られた最も大きい開口径の値である。
【0014】
極細繊維不織布の製造方法は、特に限定されるものではないが、具体的には例えば、極細繊維不織布の繊維径の均一性を向上させる観点から、電界紡糸法を用いて作製することができる。なお、溶融紡糸法を用いて作製してもよい。
【0015】
極細繊維不織布の原料樹脂は、極細繊維不織布の極細繊維の繊維形状を形成する母材としての役割を有する。原料樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸コポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクトン、シルク、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)コポリマー、ポリスチレン、ポリビニルカーボネート、ポリアミド、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン及びこれらのコポリマー等が挙げられる。なお、貼付材の優れた肌触りや追従性を得る観点から、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、ナイロン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリカプロラクタン、シルク及びポリビニルアルコールの群から選ばれる少なくとも1種、特にポリフッ化ビニリデンを採用することが好ましい。
【0016】
また、基材層12の積層方向の厚さは、貼付材10の強度を確保しつつ人の肌に貼付したときの目立ちにくさを確保する観点から、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下、特に好ましくは20μm以上50μm以下である。基材層12の積層方向の厚さが5μm未満では、貼付材10の強度が不足する虞がある。また、基材層12の積層方向の厚さが200μm超では、基材層12が厚すぎて極細繊維による入射光の乱反射が増加し、人の肌に貼付したときに目立ちやすくなる虞がある。
【0017】
基材層12の極細繊維不織布は、染料又は顔料を含む。染料又は顔料は、基材層を着色することにより、使用者の肌に貼付材10を貼付したときに、肌の色と同化させるためのものである。染料又は顔料は、極細繊維不織布の極細繊維に含有されていてもよいし、極細繊維不織布を染料又は顔料を用いて染色されることにより含有されていてもよいが、染料又は顔料の使用量を抑え且つ貼付材10の使用時の色移り等を抑える観点から、染料又は顔料は極細繊維不織布の繊維に含有されていることが望ましい。極細繊維に染料又は顔料を含有させる方法としては、例えば極細繊維不織布の原料樹脂を含む樹脂溶液に染料又は顔料を添加し、その樹脂溶液を紡糸する方法が挙げられる。染料又は顔料は、具体的には例えば、日本化薬株式会社製 Kayalon Polyesterシリーズ等の分散染料、HUNTSMAN社製 TECTILONシリーズ等Acid Red 14等の酸性染料;Arianor Sienna Brown、Arianor Madder Red、Arianor Steel Blue、Arianor Straw Yellow等の塩基性染料;HC Yellow 2、HC Yellow 5、HC Red 3、4-hydoxypropylamino-3-nitrophenol、N,N'-bis(2-hydroxyethyl)-2-nitro-p- phenylenediamine、HC Blue 2、Basic Blue 26等のニトロ染料;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、金等の金属粉末顔料;表面処理無機及び金属粉末顔料;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、青色404号、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料;表面処理有機顔料;アスタキサンチン、アリザリン等のアントラキノン類、アントシアニジン、β-カロチン、カテナール、カプサンチン、カルコン、カルサミン、クエルセチン、クロシン、クロロフィル、クルクミン、コチニール、シコニン等のナフトキノン類、ビキシン、フラボン類、ベタシアニジン、ヘナ、ヘモグロビン、リコピン、リボフラビン、ルチン等の天然色素・染料;p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、o-,m-,若しくはp-アミノフェノール、m-フェニレンジアミン、5-アミノ-2-メチルフェノール、レゾルシン、1-ナフトール、2,6-ジアミノピリジン等及びその塩等の酸化染料中間体及びカップラー;インドリン等の自動酸化型染料;ジヒドロキシアセトンから選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、特に、分散染料及び酸性染料の少なくとも一方であることが望ましい。
【0018】
基材層12は、必要に応じて原料樹脂、及び、染料又は顔料以外の添加物を含有してもよい。添加物としては、例えば香料、冷温感材等が挙げられる。また、後述する基材層12の製造工程において極細繊維不織布の製造を促進させる観点から、後述するように塩が添加され得る。これらの添加物は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0019】
<粘着層>
粘着層14は、粘着成分を含む。また、粘着層14は、薬効成分及び/又は化粧料成分を含んでもよい。さらに、粘着層14は、その他の添加剤を含有してもよい。
【0020】
-粘着成分-
粘着成分としては、特に限定されるものではなく、公知の非水溶性粘着成分及び水溶性粘着成分(水溶性成分)のいずれも用いることができる。
【0021】
非水溶性粘着成分は、例えば、アクリル(エマルジョン)系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0022】
アクリル系粘着剤としては、好ましくは炭素数が1~18、さらに好ましくは炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体や当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体として、当該単量体と共重合可能な他の単量体を1~50質量%、好ましくは3~40質量%の範囲で共重合してなる各種コポリマー等が用いられる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、ラウリルエステル、ステアリルエステル等が挙げられ、これらのエステル鎖は直鎖状若しくは分岐状のいずれでもよい。
【0024】
また上記エステルと共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸やマレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピルエステル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミドやジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸N,N-アルキルアミノアルキルエステル、N-ビニルピロリドン等の酸アミド基含有不飽和単量体等の官能性単量体が挙げられる。なお、これらの官能性単量体以外に、酢酸ビニルやスチレン、アクリロニトリル等の無官能性の単量体も共重合させることができる。
【0025】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブテン、スチレン-イソプレン系ブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン系ブロックコポリマー等の主ポリマーに粘着付与樹脂としてロジン系樹脂やテルペン系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン-フェノール系樹脂、石油系樹脂等を配合したものを用いることができる。さらに必要に応じて、液状ポリブテンや鉱油、ラノリン、液状イソプレン、脂肪酸エステル等の軟化剤や、酸化チタン、酸化亜鉛等の充填剤、ブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤等を適宜配合したものを用いることができる。なお、このような添加剤は、前記アクリル系粘着剤に配合しても差し支えないものである。また、アクリル系粘着剤に軟化剤を配合する場合には、必要に応じて多官能性ポリイソシアネートや、多官能性エポキシ化合物、アルミニウムキレート化合物により架橋処理するのが好ましい。
【0026】
シリコーン系粘着剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする粘着剤が例示される。
【0027】
また、水溶性粘着成分は、例えば、(メタ)アクリル酸を重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸)、(メタ)アクリル酸を部分的に中和し重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物)及び(メタ)アクリル酸を完全に中和し重合したもの(ポリ(メタ)アクリル酸完全中和物)が挙げられ、これらの成分は含水状態で粘着性を示す。なお、特に(メタ)アクリル酸を部分的に中和し重合したものについては、中和度としては70モル%以下が好ましく、更に60モル%以下、特に50モル%以下が好ましい。また、中和度が10モル%以上であるのが生産性の点で好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸の市販品としては、例えば、ジュリマーAC-10L(日本純薬製)、アクアリックHL(日本触媒製)等が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物の市販品としては、例えば、ビスコメートNP-600、ビスコメートNP-700、ビスコメートNP-800(昭和電工製)、アロンビス105X、アロンビス106X(日本純薬製)等が挙げられる。ポリ(メタ)アクリル酸完全中和物(ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム)の市販品としては、例えば、アロンビスS(日本純薬製)、ポリスターA-1060(日本油脂製)、ビスコメートF-480SS(昭和電工製)、アクアリックFH(日本触媒製)等が挙げられる。これらポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物及びポリ(メタ)アクリル酸完全中和物は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
粘着層中における粘着成分の含有量は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、特に1.5質量%以上8質量%が好ましい。粘着成分の含有量が10質量%を超えると粘着層14の粘着力が高くなりすぎ、貼付材10の剥離時に皮膚を傷つける可能性が高まる。また、含有量が1質量%未満の場合には、粘着力が低下しすぎ、関節等の屈曲部位への連続貼付が困難となる虞がある。
【0029】
-化粧料成分及び薬効成分-
化粧料成分としては、例えば、ヒアルロン酸Na、セラミド、米糠エキス等が上げられる。
【0030】
薬効成分としては、例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、カンフル、メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド等の局所刺激剤、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール等の末梢血流改善剤、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル等の抗ヒスタミン剤、トウキ、オウバク、サンシシ、アルニカ、西洋トチノミ等の消炎性生薬のエキスや粉末、グリチルレチン酸、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、ジクロフェナック等の非ステロイド性消炎鎮痛剤、プレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド等の外用ステロイド剤、クロタミトン等の鎮痒剤、リドカイン、ジブカイン等の局所麻酔剤、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等の殺菌消毒剤等が挙げられる。これらのうち非ステロイド性消炎鎮痛剤が好ましく、インドメタシンが特に好ましい。これらの化粧料成分及び薬効成分は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0031】
なお、本明細書において、本実施形態に係る貼付材10のうち、粘着層14中に医薬品として該当する薬効成分が含まれているものを貼付剤と称することがある。
【0032】
粘着層14に薬効成分又は化粧料成分が含まれる場合は、粘着層14中の薬効成分又は化粧料成分の含有量は、好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。薬効成分又は化粧料成分の含有量が0.5質量%未満では、薬効成分又は化粧料成分の十分な効能が得られない虞がある。また、薬効成分又は化粧料成分の含有量が3質量%以上では、粘着層14自体の色が濃くなりすぎ、人の肌に貼付したときに目立ちやすくなる虞がある。
【0033】
-その他の成分-
粘着層14中には、上記の成分に加えて、その他の添加剤成分を、目的に応じて適宜配合することができる。添加剤成分としては、架橋剤、硬化調整剤、溶媒、吸収促進剤、安定化剤、界面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤成分は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。
【0034】
架橋剤は例えば、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらのうち、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート及び/又は乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。架橋剤の市販品には、合成ヒドロタルサイトとしては、例えばアルカマック(協和化学工業製)が、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートとしては、例えばグリシナールSG、グリシナールPG(協和化学工業製)が、乾燥水酸化アルミニウムゲルとしては、例えば乾燥水酸化アルミニウムゲルS-100(協和化学工業製)が、ケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンUFL2(富士化学工業製)が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとしては、例えばノイシリンA、ノイシリン(富士化学工業製)、ネオアルミンS(富田製薬製)が、水酸化アルミナマグネシウムとしては、例えばサナルミン(協和化学工業製)が、合成ケイ酸アルミニウムとしては、例えば合成ケイ酸アルミニウム(協和化学工業製、富田製薬製)等が挙げられる。これらの架橋剤は、一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。架橋剤の含有量は、一般的に貼付材において粘着層を形成できる範囲の含有量であればよく、粘着層の質量に対して例えば0.001~3.0質量%とすることができる。
【0035】
硬化調整剤は例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エデト酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、乳酸等が挙げられる。硬化調整剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.001~3質量%とすることができる。
【0036】
溶媒は例えば、水、(濃)グリセリン、D-ソルビトール液、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、マクロゴール、ジエチレングリコール、1、3-ブチレングリコール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール2000等の多価アルコール;エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の一価のアルコール;トリアセチン、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、トリイソオクタン酸等の炭素数が6~12の中鎖脂肪酸トリグリセリド等のエステル類;クロタミトン等のケトン類等が挙げられる。これら溶媒は、単独又は2種以上の組み合わせで使用することが可能である。特に粘着層14に水溶性粘着成分が含有される場合には、水を含む含水性の粘着層14とすることが好ましい。粘着層14における水の含有量は、一般的に含水性の粘着層を有する貼付材において必要とされる範囲の含有量であればよく、粘着層の質量に対して例えば15~60質量%とすることができる。また、その他の溶媒の含有量としては、粘着層の質量に対して例えば1~60質量%とすることができる。
【0037】
吸収促進剤は例えば、L-メントール、オレイン酸、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。吸収促進剤としてL-メントールを使用する場合、L-メントールの含有量は、粘着層の質量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、特に0.1~5.0質量%が好ましい。
【0038】
安定化剤は例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のフェノール性物質;クロロブタノール、フェニルエチルアルコール等の中性物質;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸;ビタミンE、ブチルヒドロキシアニソール、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール等の抗酸化剤;アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤、エデト酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。安定化剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.001~1.0質量%とすることができる。
【0039】
界面活性剤は例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、塩化セチルピリジニウム等の陽イオン性界面活性剤;モノステアリン酸グリセリル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.01~3質量%とすることができる。
【0040】
その他の添加剤成分としては、粘着層同士が接着した際の剥離性を向上させる観点から、例えば、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、及びラウリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステルを含有してもよい。これらのデキストリン脂肪酸エステルは、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。デキストリン脂肪酸エステルの含有量は、粘着層の質量に対して例えば0.1~20質量%とすることができる。
【0041】
-粘着層の塗膏量-
本明細書において、粘着層14の「塗膏量」とは、粘着層14の積層方向の厚さ(μm)又は単位面積当たりの質量(g/m2)をいうものとする。
【0042】
粘着層14の塗膏量は、人の肌に貼付したときの貼付材10の目立ちにくさを確保しつつ、屈曲部位への長時間の連続貼付に耐え得る粘着力を確保する観点から、好ましくは5μm以上400μm未満、より好ましくは50μm以上300μm以下、特に好ましくは80μm以上250μm以下である。また、粘着層14の塗膏量を単位面積当たりの質量で表す場合は、塗膏量は、好ましくは10g/m2以上240g/m2未満、より好ましくは20g/m2以上200g/m2以下、特に好ましくは30g/m2以上120g/m2以下である。粘着層14の塗膏量が5μm未満(10g/m2未満)では、粘着成分の量が不足し基材層への粘着成分の浸透が不十分となって貼付材10の不透明感が増し、人の肌に貼付したときに目立ちやすくなる虞があるとともに、貼付材10の十分な粘着力を確保することが困難となる虞がある。粘着層14の塗膏量が400μm以上(240g/m2以上)では、粘着層14自体の色が濃くなりすぎ、人の肌に貼付したときに目立ちやすくなる虞がある。
【0043】
≪貼付材の色≫
-原理-
図3に示すように、極細繊維不織布101のみをそのまま人の肌301に貼付したとすると、入射光401は、極細繊維不織布101の極細繊維102に当たって屈折及び/又は反射される。極細繊維102は種々の配向で互いに絡み合って延びているから、極細繊維102自体が僅かに着色しているか又は透明であったとしても、屈折率及び乱反射の影響により極細繊維102に当たった入射光401は散乱する。そうして、極細繊維不織布101を貼付した箇所の外観は白く目立ちやすくなり得る。
【0044】
これに対し、
図4に示すように、極細繊維不織布101に粘着成分等の液状体201が浸透すると、極細繊維不織布101の空隙が液状体201で埋められたような状態となる。その結果、極細繊維不織布101に入射した入射光401の乱反射が抑制されるとともに、液状体201が浸透した極細繊維不織布101は屈折率が低下するから、全体として半透明となり、液状体201が浸透した極細繊維不織布101を貼付した箇所の外観は目立ちにくくなる。
【0045】
本実施形態に係る貼付材10では、後述する熟成工程S4において、粘着層14の粘着成分等が基材層12に浸透する。その結果、粘着成分等が基材層12の極細繊維不織布にの空隙が粘着層の成分で埋められた状態となる。従って、本実施形態における貼付材10を人の肌に貼付したときに、極細繊維不織布が着色されていることに加え、極細繊維不織布には粘着成分等が浸透し、空隙部分を粘着層の成分で満たしてしているから、全体として半透明となることにより、肌に貼付していることが判りにくく目立ちにくくなる。
【0046】
-表色系-
貼付材10の色は、例えば測色計によりL*a*b*表色系の数値を計測することにより評価することができる。L*a*b*表色系は、JIS Z8781-4:2013に基づく一般的な色の表現方法である。
【0047】
L*値は色の明度を表しており、0は黒色、100は白色を示す。
【0048】
また、a*値及びb*値は色の色相及び彩度を示す色度を表しており、通常-100から+100程度までの値で表される。なお、a*値の+方向は赤方向、-方向は緑方向、b*値の+方向は黄方向、-方向は青方向を表している。
【0049】
貼付材10を人の肌に貼付したときの目立ちにくさを評価するための指標としては、例えば下記の色差式(1)で表される色差ΔEを用いることができる。
【0050】
ΔE=[(L*1-L*2)2+(a*1-a*2)2+(b*1-b*2)2]1/2 …(1)
但し、L*1、a*1及びb*1は、人の肌のL*値、a*値及びb*値であり、L*2、a*2及びb*2は、貼付材を貼付した部分のL*値、a*値及びb*値である。
【0051】
なお、算出する色差ΔEは、上記色差式(1)の代わりにCIEDE2000色差式で表される色差ΔE00でもよい。
【0052】
肌の色がL*a*b*表色系でL*45以上67以下、a*4以上11以下、及びb*13以上23以下の被験者について、貼付材10を被験者の肌に貼付したときに、被験者の肌の色と、被験者における貼付材を貼付した部分の色とのL*a*b*表色系における色差ΔE及び/又はΔE00、より好ましくは色差ΔE及びΔE00が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることが特に好ましい。色差ΔE及び/又はΔE00が10を超えると、貼付材10を人の肌に貼付したときに、貼付した箇所が目立ちやすくなる虞がある。
【0053】
また、貼付材10を、肌色カラースケール Skin Color 75(日本色研事業株式会社発行)に記載の75色の色パターン上に貼付したときに、好ましくは27色以上、より好ましくは29色以上、特に好ましくは35色以上の色パターンにおいて、色パターンの色と、色パターンにおける貼付材10を貼付した部分の色とのL*a*b*表色系における色差ΔE及び/又はΔE00、より好ましくは色差ΔE及びΔE00が10以下となることが好ましく、8以下となることがより好ましく、5以下となることが特に好ましい。色差ΔE及び/又はΔE00が10を超えると、貼付材10を人の肌に貼付したときに、貼付した箇所が目立ちやすくなる虞がある。
【0054】
このように、本実施形態に係る貼付材10は、染料又は顔料を含むことにより着色されるとともに繊維径が細く均一且つ多数の空隙を備えた極細繊維不織布を基材層12とするとともに、基材層12の一面に粘着成分を含む粘着層14を備えることで、粘着成分の一部が基材層12に浸み込み、全体として半透明の貼付材10をもたらすことができる。そうして、使用者の肌に貼付したときに、肌の色と同化して目立たない貼付材10をもたらすことができる。そして、人の肌や肌色カラースケールの色パターンに貼付したときの色差ΔE及びΔE00が上記範囲となる貼付材10をもたらすことにより、幅広く種々の色の肌を有する使用者に対して、貼付しても目立たちにくい貼付材をもたらすことができる。なお、本実施形態に係る貼付材10は、極細繊維不織布がもたらす優れた皮膚追従性と粘着成分がもたらす適度な粘着力を兼ね備えているから、関節等の屈曲部位であっても長時間に亘って連続貼付が可能となるとともに、剥離したいときには少しの力で簡単に剥離を行うことができる。さらに、貼付材10は透湿性に優れているので、蒸れ等の発生を抑えることができるから、長時間に亘っても快適な連続貼付が可能となる。そうして、貼付しても目立ちにくく、耐久性、透湿性に優れた連続貼付可能な貼付材10をもたらすことができる。
【0055】
≪貼付材製品≫
本実施形態に係る貼付材10は、例えば
図2に示すように、支持層16やフィルム層18を設けて、本実施形態に係る貼付材製品11とすることができる。具体的には例えば、
図2に示すように、基材層12における粘着層14が形成されていない面、及び粘着層14における基材層12が形成されていない面に、それぞれ支持層16及びフィルム層18を設けて、貼付材製品11とすることができる。
【0056】
≪支持層≫
支持層16は、後述する紡糸工程S2において、電界紡糸によって基材層12を形成する際の支持体として用いられ、主に極細繊維不織布のシート形状の維持、及び保護を目的とする。また、支持層16は貼付材10において、皮膚貼付時のハンドリング性を向上させるためのものであり、皮膚貼付後には容易に基材層12から離脱するものが好ましい。具体的には例えば、コットン、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ビニロン、アセテート、ポリプロピレン、ポリウレタン等の不織布、織布、編布、紙材等が挙げられる。支持層16の厚さは、例えば10μm以上500μm以下とすることができる。
【0057】
≪フィルム層≫
フィルム層18は、粘着層14を保護するためのものであり、具体的には例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のフィルム、セルロース系のフィルム及びシリコーン系剥離剤を表面にコーティングした上記フィルム、紙シート等が挙げられ、特にポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック系のフィルムが好ましい。フィルム層18の厚さは、例えば5μm以上200μm以下とすることができる。
【0058】
≪貼付材製品における貼付材の皮膚貼付法≫
貼付材製品11を用いて貼付材10を肌に貼付する方法としては、例えば、フィルム層18の一方側18aを剥がして粘着層14の半分を肌に貼付した後、他方側18bを剥がして粘着層14の全体を肌に貼付する。そして、支持層16を剥離することにより、貼付材10を肌に貼付することができる。
【0059】
なお、
図2に示す貼付材製品11の状態では、粘着層14の粘着成分等は、基材層12に浸透し、基材層12の表面近辺まで、あるいは全体に亘って空隙を埋めたような状態となっている。貼付材10を肌に貼付すると、貼付直後から所定時間経過後、例えば2~5分後には、基材層12の表面近辺に存在する粘着成分等に含まれる水分等の溶媒成分が蒸発して基材層12の表面が乾燥する。その結果、極細繊維組織中で、粘着成分等が固化して膜が形成され、入射光の乱反射が抑制され、貼付材10は表面がさらさらした状態で半透明状態を維持して目立ちにくさを維持することができる。
【0060】
≪貼付材の用途≫
本実施形態に係る貼付材10は、例えばパップ剤、プラスター剤等で構成される痔疾用薬、虫刺され薬、消炎鎮痛薬、皮膚病薬等の治療用皮膚外用貼付剤、サージカルテープ、ドレッシング剤等の医療用、美白、シミ取り、しわ取り、皮膚機能改善等の化粧用、その他皮膚に貼付する用途の各種貼付材として用いることができる。
【0061】
≪貼付材及び貼付材製品の製造方法≫
本実施形態に係る貼付材10及び貼付材製品11の製造方法は、
図5に示すように、基材層を形成する樹脂溶液調製工程S1(基材層形成工程)及び紡糸工程S2(基材層形成工程)と、粘着層形成工程S3と、熟成工程S4とを備える。
【0062】
<樹脂溶液調製工程>
樹脂溶液調製工程S1は、原料樹脂と、染料又は顔料と、必要に応じてさらなる添加物を溶媒に溶解させて樹脂溶液51を調製する工程である。樹脂溶液51の調製は、例えば、容器に原料樹脂を秤量し、溶媒、添加物を加え、撹拌機等の公知の撹拌手段(図示せず。)により撹拌して、溶媒中に樹脂、添加物を溶解・分散させることにより行う。撹拌に際し、同時に加熱や超音波等を印加してもよい。
【0063】
溶媒は、上記樹脂を溶解させ、樹脂溶液51の粘度を調整するとともに、紡糸工程S2において蒸発し繊維形状の形成を促進させるものである。溶媒としては、具体的には例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン、10-カンファースルホン酸、イソプロピルアルコール(IPA)、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、ギ酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、酢酸エチル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種でもよいし、2種以上を用いてもよい。なお、これらの溶媒は上述のごとく紡糸工程S2において蒸発するため、基材層12には含有されない。
【0064】
樹脂溶液に含まれる添加物としては、樹脂の溶解性・分散性の向上、微細な繊維形状の均一形成促進の観点から、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化リチウム等の塩等が添加され得る。また、上述のごとく、必要に応じて、香料、冷温感材等の添加物を添加することができる。
【0065】
樹脂溶液51中における樹脂の濃度は、均一且つ微細な繊維形状の極細繊維不織布を得る観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは7質量%以上40質量%以下、特に好ましくは10質量%以上30質量%以下である。樹脂溶液51中における染料又は顔料の含有量は、使用者の肌に貼付材10を貼付したときに、効果的に肌の色と同化させる観点から、樹脂溶液51の溶媒以外の固形成分、すなわち樹脂成分等に対して、好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下である。染料又は顔料の含有量が0.01質量%未満であると、貼付材10を人の肌に貼付したときに、入射光の乱反射により極細繊維不織布の色が白くなりすぎて、目立ちにくさを確保することが困難となる虞がある。また、染料又は顔料の含有量が2.0質量%超であると、色が濃くなりすぎて目立ちやすくなる虞があるとともに、染料又は顔料を極細繊維に含有させる場合には、樹脂溶液を紡糸するときに極細繊維を形成することが困難となる虞がある。また、樹脂溶液51に上記塩を添加する場合には、樹脂溶液51中における塩の濃度は、均一且つ微細な繊維形状の極細繊維不織布を得る観点から、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。また、樹脂溶液51中における染料又は顔料、及び塩以外の添加物の濃度は、添加物の種類にもよるが、目的に応じて、例えば0.5質量%以上3質量%以下とすることができる。
【0066】
<紡糸工程S2>
紡糸工程S2は、樹脂溶液51を、電界紡糸法を用いて紡糸し、基材層12としての極細繊維不織布を得る工程である。
【0067】
電界紡糸法による紡糸は、例えば、
図6に示すマルチノズル式エレクトロスピニング装置を用いて行うことができる。具体的には例えば、マルチノズル式噴射装置33等のノズル先端から樹脂溶液51を噴射させて、例えばコレクタ35の表面上に一定速度で流れるように配置された支持層16としての不織布、織布、編布、紙材等の表面に樹脂溶液51を吹付けることで行われる。これにより、例えば、
図2の貼付材製品11の支持層16及び基材層12の部分を製造することができる。なお、電界紡糸法による紡糸の方法は、
図6の方法に限定されるものではなく、例えば支持層16を配置せず、基材層12だけをコレクタ35の表面に形成するようにしてもよいし、コレクタ35は例えば回転式ドラム等であってもよい。
【0068】
図6において、マルチノズル式噴射装置33又はコレクタ35のいずれか一方には、高圧電源装置34が接続されており、またもう一方にはアースが接続されている。そして、両者間には所定の高電圧が印加される。なお、マルチノズル式噴射装置33の樹脂溶液51は、室温程度、例えば15℃~30℃とすることができる。
【0069】
高圧電源装置34による印加電圧は、平均繊維径及び空隙最大径を調整する観点から、例えば10kV以上50kV以下とすることができる。
【0070】
マルチノズル式噴射装置33等のノズル先端からコレクタ35までの距離は、平均繊維径及び空隙最大径を調整しつつ均一な繊維形状の極細繊維不織布を得る観点から、例えば50mm以上200mm以下とすることができる。
【0071】
支持層16の送り速度は、平均繊維径及び空隙最大径を調整しつつ生産速度を高める観点から、例えば0.5mm/分以上200mm/分以下とすることができる。
【0072】
ノズル先端から樹脂溶液51を噴射させるときのノズル噴射速度は、平均繊維径及び空隙最大径を調整する観点から、例えば2mg/秒以上25mg/秒以下とすることができる。
【0073】
こうして得られた極細繊維不織布を、そのまま、又は例えば所望のサイズに裁断、加工等することにより基材層12とすることができる。
【0074】
<粘着層形成工程S3>
基材層12の一面に支持層16が形成されている場合には、基材層12の支持層16が形成されていない面に、粘着層14を形成するための組成物を配置することにより、粘着層14が形成された貼付材本体を得ることができる。貼付材本体は、次の熟成工程S4を経て貼付材10となる。
【0075】
組成物は、上述した粘着成分、化粧料成分、薬効成分、添加剤成分等を一般的な方法により混合することで調製することができる。
【0076】
そして、組成物を、基材層12の上記面に展延塗布することで粘着層14を形成することができる。なお、例えば
図2の貼付材製品11を製造する場合は、フィルム層18の一面に組成物を展延塗布して粘着層14を形成しておき、基材層12の支持層16が形成されていない面と粘着層14のフィルム層18が形成されていない面とを貼り合わせることで貼付材本体、延いては貼付材10を含む貼付材製品11を形成するようにしてもよい。
【0077】
展延塗布を行う手段としては、特に限定されるものではないが、例えばフィルムアプリケータ等を用いることができる。フィルムアプリケータを用いた場合、上述の塗膏量(μ
m)、すなわち粘着層の積層方向の厚さは、塗布対象物である基材層12及び支持層16
と、フィルムアプリケータとの隙間の大きさとなる。
【0078】
<熟成工程>
粘着層形成工程S3で得られた貼付材本体を大気中に所定時間、例えば20分~1時間保持し、熟成させて貼付材10を得る。
【0079】
熟成工程S4において、粘着層14に含有される粘着成分等は基材層12の内部に浸透する。詳細には、基材層12の一面に粘着層14を形成したときに、粘着層14の粘着成分が、基材層の一面側から他面側、すなわち
図2の貼付材製品11では粘着層14側から支持層16側に向かって基材層12の内部に浸透することにより、貼付材10の基材層12は、全体として半透明の不織布膜を形成する。そうして、貼付材10を人の肌に貼付したときに、入射光の乱反射を抑制して目立ちにくい貼付材10をもたらすことができる。
【実施例】
【0080】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0081】
≪貼付材製品の作製≫
実施例1~5の貼付材製品、及び比較例1,2の貼付材製品を準備した。実施例及び比較例の貼付材製品の構成を表1に示す。
【0082】
【0083】
<実施例1>
溶媒としてのDMF中に、酸性染料(HUNTSMAN社製TECTILONシリーズ、RED2B 200%(R)、YELLOW 4R 200%(Y)、BLUE 4R-01 200%(B))を、染料成分比R:Y:B=60:85:5で、最終的に得られる樹脂溶液中の溶媒以外の固形分、すなわち樹脂成分に対する染料割合が0.2質量%となるように添加し、撹拌した。この染料含有DMF溶液に、ポリフッ化ビニリデン樹脂(東京材料株式会社製KYNAR(登録商標)2501-00)を、添加し、撹拌して溶解させた。その後、さらにMEK(DMF:MEK=3:2)を加えて撹拌し、樹脂溶液を調製した。なお、最終的に得られた樹脂溶液中の樹脂濃度は、15質量%であった。この樹脂溶液を、マルチノズル式エレクトロスピニング装置(自社製作、
図6)を用い、支持層としてのポリプロピレン樹脂製の不織布シート(厚さ約100μm)をコレクタ下部に接触させるように一定速度(30mm/分)で流し、これに対し、印加電圧30kV、ノズル先端-コレクタ間距離200mm、ノズル吐出速度22mg/秒の条件で紡糸し、支持層上に厚さ25μm~35μmの極細繊維不織布を得、支持層及び基材層を得た。
【0084】
粘着層を形成するための組成物として、粘着層の質量に対する含有量がそれぞれ以下の含有量となるように、ポリアクリル酸部分中和物(中和度50%Na塩、昭和電工株式会社製)4.2質量%、サリチル酸メチル(安土産業株式会社製)0.5質量%、濃グリセリン(阪本薬品工業株式会社製)22質量%、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート(協和化学工業株式会社製)0.30質量%、乳酸(昭和化学工業株式会社製)1.25質量%、パルミチン酸デキストリン(日本サーファクタント株式会社製)2質量%及び精製水を撹拌機にて全質均等となるまで撹拌して調製した。調製した組成物を、基材層の支持層が形成されていない面上にフィルムアプリケータ(テスター産業株式会社製SA-204)を用いて展延塗布し塗膏量100μm(単位面積当たりの質量40g/m2)の粘着層を形成した。粘着層の基材層が配置されていない面に、フィルム層としてのポリエステル製のフィルムを接着させた後、1枚あたり12cm×20cmに裁断して、大気中1時間保持して、貼付材を含む貼付材製品を得た。
【0085】
<実施例2>
粘着層の塗膏量を200μm(単位面積当たりの質量80g/m2)とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0086】
<実施例3>
染料成分比をR:Y:B=65:80:5、樹脂成分に対する染料割合を0.5質量%とするとともに、粘着層の塗膏量を120μm(単位面積当たりの質量48g/m2)とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0087】
<実施例4>
染料成分比をR:Y:B=40:57:3、樹脂成分に対する染料割合を0.5質量%とするとともに、粘着層の塗膏量を180μm(単位面積当たりの質量72g/m2)とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0088】
<実施例5>
染料成分比をR:Y:B=40:57:3とするとともに、粘着層の塗膏量を180μm(単位面積当たりの質量72g/m2)とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0089】
<比較例1>
貼付材製品として、市販のパップ剤(リフェンダフェルビナク(株式会社タカミツ製))を用いた。
【0090】
<比較例2>
粘着層の塗膏量を400μm(単位面積当たりの質量160g/m2)とした以外は実施例1と同様に貼付材製品を作製した。
【0091】
≪極細繊維不織布のサンプル作製≫
表2に示す製造例1~4の極細繊維不織布(基材層)を作製した。
【0092】
【0093】
<製造例1>
実施例1と同様の手順により、表2で示す割合でポリフッ化ビニリデン樹脂(東京材料株式会社製KYNAR(登録商標)2501-00)を含む樹脂溶液を調整した。この樹脂溶液を、マルチノズル式エレクトロスピニング装置(自社製作、
図6)を用い、支持層としてのポリプロピレン樹脂製の不織布シート(厚さ約100μm)をコレクタ下部に接触させるように一定速度30mm/分で流し、これに対し、印加電圧30kV、ノズル先端-コレクタ間距離200mm、ノズル吐出速度22mg/秒の条件で紡糸し、支持層上に厚さ25μm~35μmの基材層としての極細繊維不織布を得た。
【0094】
<製造例2,3>
表2に示すように、樹脂及び溶媒の混合割合が異なる以外は、製造例1と同様の手順で極細繊維不織布を得た。
【0095】
<製造例4>
支持層速度を60mm/分とした以外は、製造例1と同様の手順で極細繊維不織布を得た。
【0096】
≪評価試験≫
<電子顕微鏡観察試験I>
製造例1~4の極細繊維不織布を、支持層としてのポリプロピレン樹脂製の不織布シートを下側にしてサンプルホルダ上に配置し、極細繊維不織布の一部とサンプルホルダとに跨がるようにカーボンテープを貼付し、60秒間スパッタ処理を行った。そして、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製JSM-6610LA)を用いて、極細繊維不織布表面のSEM観察を行った。そして、極細繊維不織布の平均繊維径[nm]と空隙最大径[nm]を算出した。製造例2の極細繊維不織布のSEM像を
図7A,
図7Bに示す。
図7A,
図7Bは、真空度10
-3~10
-4Torrの高真空状態における5000倍のSEM像であり、それぞれ平均繊維径及び空隙最大径の算出方法を示している。
【0097】
図7A,
図7Bに示すように、粘着層を有しない極細繊維不織布では、多数の繊維が種々の方向に延びた状態であることが判る。
【0098】
維径平均は、例えば
図7Aに示すようなSEM像において、
図7A中に例示するように繊維の幅を計5箇所測定し、その平均として得られた値である。また、空隙最大径は、
図7Bに示すようなSEM像において、
図7B中に例示するように繊維間の空隙の開口径を測定して得られた最も大きい開口径の値である。
【0099】
製造例1~4の極細繊維不織布の平均繊維径及び空隙最大径を表2に示す。製造例1,2の結果に示すように、樹脂成分割合が増加すると、平均繊維径及び空間最大径のいずれもが増加することが判った。また、製造例1,3の結果に示すように、溶媒割合が増加すると、平均繊維径及び空間最大径のいずれもが減少することが判った。さらに、製造例1,4の結果に示すように、支持層の速度が速くなると、平均繊維径はほぼ同程度であるが、空隙最大径が増加することが判った。
【0100】
<電子顕微鏡観察試験II>
実施例1の貼付材製品について、ポリエステル製のフィルムを剥がし、粘着層をサンプルホルダ上に貼付し、支持層を剥がした。貼付材の一部とサンプルホルダとに跨がるようにカーボンテープを貼付した。そして、走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製JSM-6610LA)を用いて、基材層表面のSEM観察を行った。
図8A,
図8B,
図9A,
図9Bに観察結果のSEM像を示す。なお、
図8A,
図8Bは、真空度10
-3~10
-4Torrの高真空撮影により得られたSEM像であり、それぞれ2000倍、5000倍のSEM像である。また、
図9A,
図9Bは、真空度0.1~1.0Torrの低真空撮影により得られた2000倍のSEM像であり、それぞれ観察開始直後のSEM像、観察開始直後から約3分経過後のSEM像である。
【0101】
まず、極細繊維不織布のSEM像である
図7A,
図7Bに比べて、
図8A,
図8Bでは、繊維と繊維の交差箇所に水かき状の付着物が存在していることが判る。また、複数の繊維が付着物により凝集して存在している状態であることが判る。この付着物はおそらく粘着層の粘着成分であると考えられる。なお、
図7A,
図7Bにおいて観察された空隙は、
図8A,
図8Bにおいては奥がほとんど埋まった状態に見える。これは、粘着成分等が空隙の奥に溜まっていることが原因の一つと考えられる。
【0102】
次に、
図9A,
図9Bは、低真空撮影であり、
図9Aの撮影開始直後は、繊維と繊維との間に水かき状の付着物としての粘着成分が散見される。その3分後には、
図9Bに示すように、繊維間に丸い穴が大量に発生した。これは、水かき状の粘着成分が電子ビームの熱で溶解したためと考えられる。基材層のPVDFは、高真空撮影及び低真空撮影のいずれにおいても、電子ビーム程度の熱では溶解することはないため、繊維間に粘着成分が存在することが示唆された。
【0103】
<色差評価試験I>
実験例1~5として、表3に示す被験者の右下腕外側の肌に貼付材を貼り、色差を評価する実験を行った。具体的には、まず、表3に示す被験者の右下腕外側の肌の色について、測色計(KONICA MINOLTA社製SPECTRO PHOTO METER CM-3600d)を用いてL*値、a*値、b*値をCIE標準光源であるD65光源下で測定した。また、表3に示す被験者の右下腕外側の肌に実施例1~4及び比較例1,2の貼付材を貼付し、上記測色計を用いてL*値、a*値、b*値をD65光源下で測定した。得られたL*値、a*値、b*値から、上述の式(1)を用いて色差ΔEを算出した。また、CIEDE2000色差式で表される色差ΔE00を算出した。
【0104】
【0105】
[実験例1]
比較例1の貼付材について、貼付材自体(実験例1-1)のL*値、a*値、b*値、被験者A~Cの肌に貼付したときのL*値、a*値、b*値、及び色差ΔE(実験例1-2~1-4)、及び被験者D~Gの肌に貼付したときのL*値、a*値、b*値、色差ΔE及び色差ΔE00(実験例1-5~1-8)を測定及び算出した。結果を表4に示す。
【0106】
【0107】
表4の結果から、被験者C,E~Gでは、色差の値が10を超え、貼付材を貼付した状態では、ある程度目立つことが示唆された。
【0108】
[実験例2,3]
実施例1,2及び比較例2の貼付材について、被験者A,Bの肌に貼付したときの、L*値、a*値、b*値、色差ΔE及び色差ΔE00(実験例2-1~2-3及び実験例3-1~3-3)を測定及び算出した。結果を表5に示す。
【0109】
【0110】
塗膏量が400μmの比較例2の貼付材では、被験者A,Bのいずれにおいても、ΔEが10を超えたのに対し、塗膏量が100μm及び200μmの実施例1,2の貼付材では、被験者A,Bのいずれにおいても、ΔEが10以下となった。
【0111】
[実験例4,5]
実験例4-1~4-4として、実施例4の貼付材を被験者D~Gの肌に貼付したときの、L*値、a*値、b*値、色差ΔE及び色差ΔE00を測定及び算出した。また、実験例5-1~5-4として、実施例3の貼付材を被験者H~Kの肌に貼付したときの、L*値、a*値、b*値、色差ΔE及び色差ΔE00を測定及び算出した。結果を表6に示す。
【0112】
【0113】
実験例4-1~4-4に示す実施例4の貼付材では、色差ΔE及び色差ΔE00のいずれも5以下となった。また、実験例5-1~5-4に示す実施例3の貼付材では、色差ΔEは10以下、色差ΔE00は5以下となった。
【0114】
<色差評価試験II>
実験例6として、肌色カラースケール Skin Color 75(日本色研事業株式会社発行)を用いて貼付材の色差を評価した。具体的には、75色の色パターンについて、上記測色計を用いてL*値、a*値、b*値をD65光源下で測定した。また、色パターンに実施例4,5及び比較例1の貼付材を貼付し、上記測色計を用いてL*値、a*値、b*値をD65光源下で測定した。得られたL*値、a*値、b*値から、上述の色差式(1)を用いて色差ΔEを算出した。また、CIEDE2000色差式で表される色差ΔE00を算出した。結果を表7A~表7Dに示す。また、表7A~表7Dの算出結果から、ΔE及び/又はΔE00が10未満、及び5未満になる色パターンの数を数えた結果を表8に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
全体の傾向として、ΔEに比べてΔE00の方が小さい値となる傾向がある。表7A~表8に示すように、比較例1の貼付材では、ΔE<10且つΔE00<10となるカラー数は26であり、ΔE<5且つΔE00<7となる色パターン数は7であったのに対し、実施例4,5の貼付材では、ΔE<10且つΔE00<10となる色パターン数はそれぞれ63及び72、ΔE<5且つΔE00<7となる色パターン数は29及び54であり、色パターン数は大きく増加した。
【符号の説明】
【0121】
10 貼付材
11 貼付材製品
12 基材層
14 粘着層
16 支持層
18 フィルム層
33 マルチノズル式噴射装置
34 高圧電源装置
35 コレクタ
51 樹脂溶液
101 極細繊維不織布
102 極細繊維
201 液状体
301 肌
401 入射光
S1 樹脂溶液調製工程
S2 紡糸工程
S3 粘着層形成工程
S4 熟成工程