(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】基礎型枠構造物
(51)【国際特許分類】
E02D 27/00 20060101AFI20230518BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
E02D27/00 B
E02D27/01 C
(21)【出願番号】P 2018244119
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兪 東延
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255724(JP,A)
【文献】実開昭61-177157(JP,U)
【文献】実開昭51-131025(JP,U)
【文献】特開2007-126836(JP,A)
【文献】特開2002-180474(JP,A)
【文献】実開昭59-061345(JP,U)
【文献】実開昭64-027352(JP,U)
【文献】特開2006-009408(JP,A)
【文献】特表平05-503123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内にコンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎の上面から上方にアンカーボルトの上端部が突出するように、前記コンクリート基礎に前記アンカーボルトを埋設固定するための基礎型枠構造物であって、
前記基礎型枠構造物は、
対向する一対の側壁部を備えた前記型枠と、
前記アンカーボルトを吊下げた状態で支持するべく、対向する前記一対の側壁部にわたすように、前記一対の側壁部の上端面に架設されるアンカープレートと、
前記アンカープレートに吊下げられた状態で支持される前記アンカーボルトと、
前記アンカープレートに並設して前記一対の側壁部にわたすように前記一対の側壁部の上端面に架設され、前記一対の側壁部の内壁面間の距離を保持する2つの幅止め具と、
前記各側壁部を支持し、前記一対の側壁部の対向する方向の前記各側壁部の上端面の位置を調整する一対のサポータと、を備えており、
前記型枠の平面視において、前記型枠内の前記コンクリートが流れる流路に沿って、前記アンカープレートを挟むように、前記2つの幅止め具が、前記アンカープレートに並設されており、
前記2つの幅止め具
のうち、一方の幅止め具が配置された
位置から他方の幅止め具が配置された位置までの区間
内におけるいずれかの位置において、前記一対のサポータのそれぞれが、前記各側壁部を支持しており、
前記アンカープレートには、前記アンカープレートの水平位置の基準となる基準糸に沿って、前記アンカープレートの水平方向の位置を合わせる位置合わせ部が設けられていることを特徴とする基礎型枠構造物。
【請求項2】
前記アンカープレートは、前記各側壁部の上端面において、前記アンカープレートの水平度を調整するレベル調整機構を備えており、
前記基礎型枠構造物は、前記アンカープレートが前記各側壁部の上端面から浮き上がることを防止する浮き上がり防止具をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の基礎型枠構造物。
【請求項3】
前記2つの幅止め具のそれぞれは、前記一対の側壁部の上端面の間にわたされる第1板状部と、前記一対の側壁部の内壁面の間にわたされる内側板状部を有する第2板状部と、を備えており、
前記第2板状部には、前記第1板状部が前記各側壁部の上端面に当接した状態で、前記幅止め具が前記各側壁部に嵌合するように切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎型枠構造物。
【請求項4】
前記位置合わせ部は、前記アンカープレートを前記側壁部に架設した状態で、前記アンカーボルトの取付部から立設されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の基礎型枠構造物。
【請求項5】
前記アンカープレートには、前記アンカープレートを前記側壁部に架設した状態で、前記各側壁部の上端面と内壁面の境界線が露出するように、開口部が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の基礎型枠構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の基礎構造で躯体と基礎とを連結するアンカーボルトの施工治具と、このアンカーボルトの施工治具を用いた基礎型枠構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンカーボルト付基礎構造の施工用治具として、アンカープレートと、該アンカープレートに設けられる補強プレート調整用ねじとを有し、アンカープレートは対向する型枠の上部に保持され、アンカーボルトの上端部を保持し、補強プレート調整用ねじは補強プレートに衝合し、アンカープレートに対する補強プレートの高さ位置を調整するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記構造のアンカーボルト付基礎構造の施工用治具では、アンカーボルトをアンカープレートに吊下げ支持した状態で基礎コンクリートを打設し、アンカーボルトの上部を露出して埋設するが、型枠を支持する地面の状態や型枠そのものの状態などが起因して、アンカーボルトの位置精度が低下することがある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、コンクリート基礎に埋設固定されるアンカーボルトの位置精度を高めることができるアンカーボルトの施工治具と、この施工治具を用いた基礎型枠構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題に鑑みて、本発明に係るアンカーボルトの施工治具は、型枠内にコンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎の上面から上方にアンカーボルトの上端部が突出するように、前記コンクリート基礎に前記アンカーボルトを埋設固定するためのアンカーボルトの施工治具であって、前記アンカーボルトを吊下げた状態で支持するべく、前記型枠の対向する一対の側壁部にわたすように、前記一対の側壁部の上端面に架設されるアンカープレートと、前記アンカープレートに並設して前記一対の側壁部にわたすように前記一対の側壁部の上端面に架設され、前記一対の側壁部の内壁面間の距離を保持する幅止め具と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記のごとく構成された本発明のアンカーボルトの施工治具では、アンカーボルトを鉛直状態に支持したアンカープレートを、対向する一対の側壁部にわたすように一対の側壁部の上端面に架設し、型枠間の空間にアンカーボルトを吊下げた状態で支持する。つぎに、架設されたアンカープレートに並設して、一対の側壁部にわたすように一対の側壁部の上端面に幅止め具を架設し、一対の側壁部の内壁面間の距離を保持する。
【0008】
このあと、型枠内に生コンクリートを注入して、一対の側壁部の内壁面間に所定の高さまで打設すると、アンカープレートに支持されたアンカーボルトは、打設されたコンクリート基礎の上面から上端部が突出した状態で埋設固定される。生コンクリートを打設する際に、型枠は、架設されたアンカープレートと、アンカープレートに並設して架設された幅止め具とで強固に連結されるため、型枠の面剛性を高めることができる。ここで、生コンクリートでアンカーボルトの下部が押されるが、アンカーボルトは、アンカープレートを介して型枠に安定して固定されているため、埋設されたアンカーボルトの位置精度を高めることができる。
【0009】
前記の態様においては、アンカープレートの機構は特に限定されるものではないが、前記アンカープレートは、前記各側壁部の上端面において、前記アンカープレートの水平度を調整するレベル調整機構を備えており、前記施工治具は、前記アンカープレートが前記各側壁部の上端面から浮き上がることを防止する浮き上がり防止具をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この態様によれば、アンカープレートに備えられたレベル調整機構により、アンカープレートの鉛直方向の位置を調整して水平度を調整することができる。これと同時にアンカープレートの浮き上がり防止具によりアンカープレートの上方への移動を拘束することができる。このため、型枠間に注入された生コンクリートにより、アンカープレートに吊下げた状態で支持されたアンカーボルトが移動することなく安定して固定でき、アンカーボルトの位置精度を高めることができる。
【0011】
また、前記型枠の平面視において、前記型枠内の前記コンクリートが流れる流路に沿って、前記アンカープレートを挟むように、2つの前記幅止め具が、前記アンカープレートに並設されることがより好ましい。この態様によれば、アンカープレートの両側に幅止め具を並設しているため、一対の側壁部を備える型枠の面剛性をさらに高めることができ、アンカーボルトの位置精度をより高めることができる。
【0012】
さらに好ましい態様としては、前記幅止め具は、前記一対の側壁部の上端面の間にわたされる第1板状部と、前記一対の側壁部の内壁面の間にわたされる内側板状部を有する第2板状部と、を備えており、前記第2板状部には、前記第1板状部が前記各側壁部の上端面に当接した状態で、前記幅止め具が前記各側壁部に嵌合するように切欠き部が形成されている。
【0013】
この態様によれば、幅止め具を前記側壁部に架設した状態で、第1板状部により幅止め具の水平方向の剛性を確保し、第2板状部により、幅止め具の鉛直方向の剛性を確保することができる。したがって、コンクリートの打設時に、幅止め具は変形し難いため、幅止め具を側壁部から取り外し、これを再利用することができる。
【0014】
さらに好ましい態様としては、前記アンカープレートには、前記アンカープレートを前記側壁部に架設した状態で、前記アンカーボルトの取付部から立設され、前記アンカープレートの水平方向の位置を合わせるための位置合わせ部が設けられている。
【0015】
この態様によれば、アンカープレートの水平位置の基準となる基準糸(たとえば水糸)は、アンカープレートの上方に配置されており、この基準糸に向かって位置合わせ部が延在する。したがって、位置合わせ部を用いて、基準糸に近い位置でアンカープレートの水平位置を精度良く調整することができる。
【0016】
さらに好ましい態様としては、前記アンカープレートには、前記アンカープレートを前記側壁部に架設した状態で、前記各側壁部の上端面と内壁面の境界線が露出するように、開口部が形成されている。このような開口部を形成することにより、型枠の各側壁部の上端面と内壁面の境界線が露出しているので、対向する内壁面間におけるアンカープレートの位置をより正確に確認することができる。
【0017】
本発明に係る基礎型枠構造物は、上述したいずれかのアンカーボルトの施工治具を備えた基礎型枠構造物であって、前記一対の側壁部を備えた前記型枠と、前記型枠の前記一対の側壁部にわたすように前記側壁部の上端面に架設された前記アンカープレートと、前記アンカープレートに吊下げられた状態で支持されるアンカーボルトと、前記アンカープレートに並設され、前記一対の側壁部にわたすように前記側壁部の上面に架設され、前記一対の側壁部の内壁面の距離を保持する幅止め具と、前記アンカープレートが配置された部分から前記幅止め具が配置された部分までのいずれかの位置において前記各側壁部を支持し、前記一対の側壁部の対向する方向の前記各側壁部の上端面の位置を調整する一対のサポータと、を備える。
【0018】
前記のように構成された基礎型枠構造物によれば、型枠は、架設されたアンカープレートと、アンカープレートに並設して架設された幅止め具とで強固に連結されるため、アンカープレートが配置された部分から幅止め具が配置された部分までの型枠の面剛性が高い。したがって、アンカープレートが配置された部分ばかりでなく、アンカープレートと幅止め具との間の部分にも、一対のサポータを設置することができるので、サポータの設置範囲をこれまでよりも広範囲に設定することができる。特に、アンカープレートを挟んで、一対の幅止め具を配置すれば、一対の幅止め具の間のいずれの位置においても、サポータを設置することができる。これにより、たとえばサポータが設置し難い地面などを避けて、サポータの設置を行うことができるため、アンカーボルトの施工効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンクリート基礎に埋設固定されるアンカーボルトの位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係るアンカーボルトの施工治具を用いるコンクリート基礎の要部断面図である。
【
図2】
図1に示すコンクリート基礎を成形するためのアンカーボルトの施工治具の一実施形態を用いた基礎型枠構造物の要部断面図である。
【
図3】
図2に示す基礎型枠構造物の直線部(一般部)で用いるアンカーボルトの施工治具を示す要部平面図である。
【
図6】
図3に示すアンカーボルトの施工治具のアンカープレートを示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図7】
図3に示すアンカーボルトの施工治具の幅止め具を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図8】基礎型枠構造物のコーナー部を有する型枠で用いるアンカーボルトの施工治具の他の実施形態の要部平面図である。
【
図9】
図8に示すアンカーボルトの施工治具のアンカープレートを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(b)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るアンカーボルトの施工治具および前記施工治具を用いた基礎型枠構造物の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を用いて形成されるコンクリート基礎1について、
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を用いるコンクリート基礎の要部断面図、
図2は、
図1に示すコンクリート基礎を形成するための本実施形態に係るアンカーボルトの施工治具を用いた基礎型枠構造物の要部断面図である。
【0023】
1.コンクリート基礎1について
図1、
図2に示すように、コンクリート基礎1は、幅広で高さの小さいベース部1aと、ベース部の上に形成される幅狭で高さの大きい立上げ部1bとを有しており、立上げ部1bの上端面から上方に上端部が突出するようにアンカーボルト2が埋設固定されている。本実施形態では、ベース部1aは幅W1が600mm、高さH1が250mm程度に形成され、立上げ部1bはベース部1aの幅中心から立上げられ、幅W2が300mm、高さH2が500mm程度で形成されている。
【0024】
コンクリート基礎1のベース部1aは、下地層3の上に成形される。具体的には、
図2に示すように、下地層3は、捨てコンクリートであり、型枠4の受け台となる。ベース部1aを成形する際には、下地層3の上に型枠4を設置固定し、型枠4内にベース部1a用の鉄筋(図示せず)を水平に配筋するとともに立上げ部1b用の鉄筋を鉛直方向に配筋したあと、生コンクリートを打設する。これにより、下地層3の上にベース部1aが成形される。
【0025】
ベース部1aの成形後に、後述する基礎型枠構造物30により立上げ部1bをさらに成形する。本実施形態では、基礎型枠構造物30は、ベース部1aの上にサポータ7、7で支持された型枠5を配置し、施工治具10を用いてアンカーボルト2を型枠5内に配することによって、構築される。構築された基礎型枠構造物30の型枠5内に生コンクリートを注入打設して、立上げ部1bが形成される。本実施形態では、基礎型枠構造物30と、これに用いられるアンカープレート11を含む施工治具10と、について以下に詳細に説明する。
【0026】
2.基礎型枠構造物30について
本実施形態では、基礎型枠構造物30は、コンクリートが打設される型枠5と、型枠5を支持するサポータ7と、コンクリート基礎1に埋設されるアンカーボルト2と、これを型枠5に取付けられた施工治具10と、を備えている。
【0027】
3.型枠5とサポータ7について
型枠5は、上述したように、台座となるベース部1aの上に設置され、コンクリート基礎1の立上げ部1bを成形する型枠である。型枠5は、ベース部1aの上面に立設された側壁部51、51を備えている。
【0028】
側壁部51は、ベース部1aから鉛直方向に沿って立ち上るように、対向して配置されている。側壁部51、51の対向する内壁面53、53同士は、所定の間隔(距離)Dをあけて形成されている。側壁部51、51により、型枠5には、立上げ部1b用の生コンクリートを注入する流路が形成される。
【0029】
型枠5の側壁部51は、たとえば木製または鋼製などである。型枠5が木製である場合、各側壁部51は、9~15mm程度の厚さの合板5cと、合板5cを補強するべく合板5cに固定された角材5dとにより形成されている。型枠5には、一対の対向する側壁部51、51の間隔(距離)を一定に保つために、図示していないセパレータ(スペーサ)等が一定間隔で配置されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、各側壁部51の外壁面には、水平方向に沿って鋼製の端太角6が固定されており、端太角6を介して後述する各サポータ7が、各側壁部51を支持している。具体的には、端太角6は、型枠5内の生コンクリートが流れる流路に沿って、側壁部51の外壁面に固定された型枠補強材であり、サポータ7を受ける受け材としての機能も担っている。
【0031】
サポータ7は、各側壁部51を支持し、一対の側壁部51、51の対向する方向の各側壁部51の上端面52の位置を調整するものである。サポータ7は、例えば掘削部の傾斜した壁部8と端太角6との間に突っ張るように設置されており、各側壁部51、51の上端面の位置を一定に保つように、その長さを調整できるものである。
【0032】
本実施形態では、サポータ7は、地盤の壁部8に固定された軸部7aと、端太角6と接する軸部7bとをターンバックル7cで螺着したものである。サポータ7は、ターンバックル7cを回転させることで全長を調整し、対向する各側壁部51の上端面52の位置が調整される。これにより、後述するアンカープレート11の位置が調整され、アンカープレート11に取付けられたアンカーボルト2を適切な位置に配置することができる。
【0033】
4.施工治具10について
本実施形態では、施工治具10は、型枠5内に生コンクリートを打設して成形されたコンクリート基礎1の上面から上方に(より好ましくは鉛直方向に)アンカーボルト2の上端部が突出するように、コンクリート基礎1にアンカーボルト2を埋設固定するための治具である。
【0034】
施工治具10は、アンカープレート11と、後述する幅止め具20とを少なくとも備えている。施工治具10は、アンカープレート11の両側に並設するための一対の幅止め具20、20を備えることが好ましい。なお、
図2には、アンカープレート11を示しており、幅止め具20については図示を省略している。
【0035】
4-1.アンカープレート11について
図3から
図7を参照して、以下にアンカープレート11について説明する。アンカープレート11は鋼板などの金属板材をプレス成形等の機械加工により成形された部材であり、例えば3~5mm程度の厚さのものが用いられる。アンカープレート11は、コンクリート基礎1の上部に建物の躯体を連結固定するためのアンカーボルト2を、コンクリート基礎1の上面から上方に上端部が突出するように埋設固定するための治具である。
【0036】
本実施形態では、アンカープレート11は、コンクリート基礎1の直線部(平面視でストレートとなる一般部)に、アンカーボルト2を型枠5内に吊下げた状態で支持される。アンカープレート11は、対向する一対の側壁部51、51にわたすように一対の側壁部51、51の上端面52、52に架設される。本実施形態では、一対の側壁部51、51は、ベース部1aに対して鉛直方向に沿って立設されている。
【0037】
具体的には、アンカープレート11は、型枠5の対向する側壁部51、51の上端面52、52に載置される載置部12、12と、段差を介して載置部12に連続し、アンカーボルト2が取付けられる平板状の取付部13とが形成されている。
【0038】
取付部13には、4本のアンカーボルト2が挿通する4つのアンカーボルト孔2a(
図6参照)が形成されており、各アンカーボルト2は、取付部13を挟み込むように、ダブルナット2bで固定される。取付部13の中央部には、第1開口部13aが形成されている。第1開口部13aにより、アンカープレート11を型枠5の側壁部51、51に架設した状態で、アンカープレート11の下方の型枠5内に生コンクリートが注入された際に、その状態を確認することができる。
【0039】
図3に示すように、アンカープレート11の各載置部12には、アンカープレート11を型枠5の側壁部51、51に架設した状態で、各側壁部51、51の上端面52と内壁面53の境界線54が露出するように、第2開口部12aが形成されている。
【0040】
第2開口部12aにより、型枠5の各側壁部51、51の上端面52と内壁面53の境界線54が露出しているので、対向する内壁面53、53間におけるアンカープレート11の位置をより正確に確認することができる。この結果、アンカーボルト2をより正確な位置に配置することができる。なお、本実施形態では、第1開口部13aと、第2開口部12aとは個別に形成されているが、これらが連続した1つの開口部として、アンカープレート11に形成されていてもよい。
【0041】
アンカープレート11の4つコーナー部には、アンカープレート11の水平度を調整する4つの蝶ねじ14がねじ込まれたレベル調整機構が設けられている。
図5に示すように、4つの蝶ねじ14のねじ込み量を調整し、蝶ねじ14の下端部を側壁部51の上端面52に当接させてレベル調整し、型枠5上にアンカープレート11を水平状態に載置することができる。
【0042】
施工治具10は、アンカープレート11が各側壁部51の上端面52から浮き上がることを防止する浮き上がり防止具として、シャコ万力15をさらに備えている。シャコ万力15は基本構成がU字状の本体で、型枠5の角材5dとアンカープレート11とを挟み、アンカープレート11を固定する。これにより、アンカープレート11が型枠5から浮き上がることを防止することができる。
【0043】
ここで、蝶ねじ14により、アンカープレート11の載置部12が、型枠5の上端面52に水平度を調整して載置された状態で、型枠5の角材5dとともに4つのシャコ万力15で狭持される。このようにして、
図4に示すように、アンカープレート11は、型枠5に架設された状態で固定される。
【0044】
アンカープレート11は、Y方向の基準糸L1(たとえば水糸)に、取付部13に形成された4つのアンカーボルト孔2aの中心が通るように配置され、X方向の基準糸L2(たとえば水糸)に、載置部12の中心が通るように配置される。
【0045】
このような配置を達成するために、アンカープレート11には、載置部12の外周辺にはV型の切欠き部11aが形成されている。さらに、アンカープレート11には、アンカープレート11を側壁部51、51に架設した状態で、アンカーボルト2の取付部13から立設され、アンカープレート11の水平方向の位置を合わせるための位置合わせ部13bが設けられている。
【0046】
具体的には、位置合わせ部13bには、取付部13の第1開口部13a内周辺から上方に向けて延在しており、位置合わせ部13bの上端面にはV型の切欠き部11bが形成されている。切欠き部11a、11bを、型枠5の上方に張られた基準糸L1、L2(水糸)に合わせることで、アンカーボルト2を位置合わせすることができる。特に、位置合わせ部13bは、取付部13の上方の基準糸L1に向かって延在しているので、基準糸L2に近い位置でアンカープレート11の水平位置を精度良く調整することができる。
【0047】
4-2.幅止め具20について
アンカーボルトの施工治具10を構成する幅止め具20は、アンカープレート11に並設して、型枠5の一対の側壁部51、51をわたすように、一対の側壁部51、51の上端面52、52に架設され、一対の側壁部51、51の内壁面53、53間の距離Dを固定するものである。
【0048】
すなわち、幅止め具20は、板厚が3~5mm程度の金属板材で形成され、一対の側壁部51、51の上端面52、52の間にわたされる水平面を有した第1板状部21と、一対の側壁部51、51の内壁面53、53の間にわたされる内側板状部22aを有する鉛直面を有した第2板状部22とを備えている。これにより、幅止め具20の長手方向に直角な断面がL字状に形成され、剛性が大きくなるように形成されている。
【0049】
第2板状部22には、第1板状部21が各側壁部51の上端面52に当接した状態で、各側壁部51、51に嵌合するように切欠き部22b、22bが形成されている。すなわち、切欠き部22b、22bで挟まれる内側板状部22aの水平方向の長さが、型枠5の一対の側壁部51、51間の距離Dを設定し、型枠5の生コンクリートが流れる流路幅を固定する。
【0050】
幅止め具20の第1板状部21の外周辺には、長手方向の中心にV型の切欠き部20aが形成されている。切欠き部20aを、型枠5の上方に張られた基準糸L1に位置合わせされていることを確認することで、幅止め具20が、各側壁部51に適切に嵌合していることを確認することができる。
【0051】
5.変形例について
前記したアンカープレート11は、型枠5が直線状であり、直線的なコンクリート流路が形成される部位でアンカーボルト2を所定位置に位置決めするものであるが、つぎに、型枠でコンクリート流路が直角に形成される流路に適用するためのアンカープレートの他の実施形態について、
図8、
図9を参照して以下に説明する。
【0052】
図8は、基礎型枠構造物のコーナー部を有する型枠50で用いるアンカーボルトの施工治具40の他の実施形態の要部平面図、
図9は、
図8に示すアンカーボルトの施工治具のアンカープレート41を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は(b)の右側面図である。
【0053】
図8、
図9において、コーナー部を有する型枠50は、直線状の流路を構成する型枠50Aと、これに直角に合流する流路を構成する型枠50Bとで構成される。型枠50Aは、鉛直方向に沿って対向する一対の側壁部51A、51Aを備えており、型枠50Bは、鉛直方向に沿って対向する一対の側壁部51B、51Bを備えている。一対の対向する側壁部51A、51Aの内壁面53A、53A間の距離は、前記の実施形態と同様に距離Dに設定されている。同様に、対向する一対の側壁部51B、51Bの内壁面53A、53A間の距離も、距離Dに設定されている。
【0054】
型枠50に設置されるアンカープレートの施工治具40は、アンカープレート41と幅止め具20で構成される。アンカープレート41は、コンクリート基礎の出隅部または入隅部(コーナー部)にアンカーボルト2を埋設するために位置決めするものであり、この実施形態でも4本のアンカーボルト2をダブルナット2bで固定している。なお、この実施形態では、直線的な流路にT字状に他の流路が合流する場合について述べるが、一般的な直角の出隅部または入隅部を有する流路であってもよいことは勿論である。
【0055】
アンカープレート41は、金属板材で形成され、直線状の型枠50Aの上端面に載置される載置部42Aと、直角状の型枠50Bに跨るように載置される載置部42Bとを両端部に備えており、中央部は取付部43となっている。そして、取付部43に4本のアンカーボルト2がダブルナット2bで固定されている。
【0056】
載置部42Aには第2開口部42cが形成され、取付部43の中央には第1開口部43aが形成されている。載置部42A、42Bには、4つのコーナー部に水平度を調整するためのレベル調整機構を構成する4つの蝶ねじ14がねじ込まれている。
【0057】
アンカープレート41の載置部42A、42Bは、型枠50の上端面に水平度を調整して載置された状態で、型枠50の外周の角材とともに4つのシャコ万力(浮き上がり防止具)15で狭持され、アンカープレート41は型枠50に架設された状態で固定される。この実施形態でも、シャコ万力15は、固定用の蝶ねじ15aをねじ込んで型枠50にアンカープレート41を固定するようになっている。
【0058】
この変形例でも、アンカープレート41には、載置部12の外周辺にはV型の切欠き部41aが形成されている。さらに、アンカープレート41には、アンカープレート41を側壁部51、51に架設した状態で、アンカーボルト2の取付部43から立設され、アンカープレート41の水平方向の位置を位置合わせするための位置合わせ部43bが設けられ、上端面にはV型の切欠き部41bが形成されていてもよい。
【0059】
6.アンカーボルト2の施工方法について
前記の如く構成された本実施形態のアンカーボルト2の施工方法を、
図1~7に示す施工治具10を参照しながら説明する。地中にコンクリート基礎1を構築するときは、地面を所定の深さに掘削し、掘削部に下地層3を成形する。そして、下地層3の上に基礎の幅広のベース部1aを作製するために型枠5を立設固定し、水平状にベース部1a用の配筋をするとともに、鉛直方向に立上げ部1b用の配筋(図示せず)をする。型枠5の内部に生コンクリートを注入し、コンクリート基礎1のベース部1aを形成する。
【0060】
ベース部1aに注入した生コンクリートが固化したあと、立上げ部1b用の配筋(図示せず)を囲むように型枠5をベース部1a上に立設固定する。具体的には、型枠5の内部に生コンクリートを注入できるように所定の距離Dをあけて対向する一対の側壁部51、51を立設する。各側壁部51は、サポータ7により支持される。
【0061】
そして、型枠5の一対の側壁部51、51にわたすように一対の側壁部の上端面にアンカーボルト2を鉛直方向に支持したアンカープレート11が仮配置される。次に、アンカープレート11に並設して、幅止め具20が架設され、型枠5の一対の側壁部51、51の内壁面53、53間の距離Dが固定される。この際、アンカープレート11が配置された部分から幅止め具20が配置された部分までのいずれかの位置(
図3に示す区間Rのいずれかの位置)において、サポータ7が配置されるように、幅止め具20を配置する。
【0062】
幅止め具20は、水平状の第1板状部21が型枠5の上端面52、52の間にわたされて上端面52、52に当接した状態で、第2板状部22の各切欠き部22b、22bが一対の側壁部51、51に嵌合する。このため、各切欠き部22b、22bで対向する一対の側壁部51、51の内壁面53、53間の距離Dが固定される。
【0063】
次に、幅止め具20を側壁部51に架設した状態で、第1板状部21により幅止め具20の水平方向の剛性を確保し、第2板状部22により、幅止め具20の鉛直方向の剛性を確保することができる。したがって、コンクリートの打設時に、幅止め具20は変形し難いため、側壁部51から取り外し、これを再利用することができる。
【0064】
型枠5にアンカープレート11を載置した状態で、4つの蝶ねじ14を調整して、アンカープレート11の水平度を調整し、4つのシャコ万力15でアンカープレート11を型枠5の角材5dに挟み込んで固定する。具体的には、型枠5外の地面に立てられた基準杭間に張られた基準糸L1、L2に、アンカープレート11の切欠き部11a、11bが一致するように、型枠5にアンカープレート11を架設固定する。4つのシャコ万力15でアンカープレート11は型枠5上に固定されているため、型枠5から浮き上がることが防止される。
【0065】
このあと、コンクリートの打設前に、型枠5外の地面に立てられた基準杭間に張られた基準糸L1、L2とアンカープレート11の位置を合わせる。アンカープレート11の切欠き部11a、11bと、基準糸L1、L2とを合わせるように、サポータ7の長さを微調整する。
【0066】
型枠5の側壁部51、51間に生コンクリートを所定のレベルまで注入する。生コンクリートの注入の際に、型枠5は、上端部がアンカープレート11およびアンカープレート41と、複数の幅止め具20で連結固定されており、型枠の面剛性が高く保たれているため、型枠5およびアンカープレート11の移動が阻止され、アンカーボルト2の位置精度を高めることができる。
【0067】
このように、基礎型枠構造物30によれば、型枠5は、架設されたアンカープレート11と、アンカープレート11に並設して架設された幅止め具20、20とで強固に連結される。このため、アンカープレート11が配置された部分から幅止め具20が配置された部分までの型枠5の面剛性が高い。
【0068】
したがって、アンカープレート11が配置された部分ばかりでなく、アンカープレート11と幅止め具20との間の区間Rにも、一対のサポータを設置することができるので、サポータ7の設置範囲をこれまでよりも広範囲に設定することができる。特に、アンカープレート11を挟んで、一対の幅止め具20、20を配置すれば、一対の幅止め具の間のいずれの位置においても、サポータ7を設置することができる。これにより、たとえばサポータ7が設置し難い地面などを避けて、サポータ7の設置を行うことができるため、アンカーボルト2の施工効率を高めることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0070】
1:コンクリート基礎、2:アンカーボルト、5,50:型枠、51,51A,51B:一対の側壁部、6:端太角、7:サポータ、10,40:アンカーボルトの施工治具、11,41:アンカープレート、12,42A,42B:載置部、13,43:取付部、13a,43a:第1開口部、12a,42c:第2開口部、14:蝶ねじ(レベル調整機構)、15:シャコ万力(浮き上がり防止機構)、11a,11b,41a,41b:切欠き部、L1,L2:基準板、20:幅止め具、21:第1板状部、22:第2板状部、22a:内側板状部、22b:切欠き部、30:基礎型枠構造物