(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】植物の栽培管理システム及び、植物の栽培管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230518BHJP
G06Q 10/06 20230101ALI20230518BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/06
A01G7/00 603
(21)【出願番号】P 2019125524
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513088294
【氏名又は名称】株式会社オーガニックnico
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昌
(72)【発明者】
【氏名】宮地 孝明
(72)【発明者】
【氏名】中村 新
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】小西 豊,食・農バリューチェーン市場への取組み,FUJITSU,富士通株式会社,2014年09月01日,Vol. 65 No. 5,p.48-53,ISSN 0016-2515
【文献】全国農業共済協会企画研修部,スマート農業 ,農林統計出版株式会社,2014年08月29日,p.82-87,92-99,102-143,301-307,325-347
【文献】スマートアグリビジネスに先手を打つ,PC-Webzine,日本,PC-Webzine編集局,Vol. 281,p.25-37
【文献】データに基づくPDCA型農業ソリューションの提供-KSAS (クボタスマートアグリシステム),[online],2018年06月13日,p.1-9,[2020年8月27日検索], インターネット<URL:https://smartiot-forum.jp/iot-val-team/iot-case/case-kubota>
【文献】堀 光良,農業分野へのクラウドコンピューティングの適用と他分野への展開,FUJITSU,富士通株式会社,Vol. 61 No. 3,p.314-320,ISSN 0016-2515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産者の経営方針及び植物の生育シミュレーションに基づき、前記植物の栽培計画を決定しまたは該決定を補助する計画決定装置と、
前記植物の栽培時における周囲環境を制御するとともに、前記植物の栽培に関する作業を行う作業者に作業指示を行い、または該作業指示を補助する環境・作業制御装置と、
前記計画決定装置を用いて決定された栽培計画に関わる計画指標値と、前記環境・作業制御装置を用いて得られた前記植物の栽培に関わる実際の指標値との関係を管理する管理実行装置と、を備え、
前記管理実行装置は、
前記計画決定装置に対して、前記指標値の実績または予測についての情報である指標値情報と、前記作業の内容についての情報である作業情報の少なくとも一方を提供するとともに、前記計画決定装置より、前記指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得し、且つ、
前記環境・作業制御装置に対して前記作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び前記植物の周囲環境の制御の方針である環境方針情報を提供するとともに、前記環境・作業制御装置から、実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報、前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報及び、前記植物の周囲環境および/または生体の記録情報である環境生体記録情報を取得することを特徴とする、植物の栽培管理システム。
【請求項2】
前記管理実行装置は、
栽培対象である植物の生育状態に関する情報と、前記植物の環境状態に関する情報と、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、前記植物の前記指標値に関する情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、前記植物の生育状態に関する情報、該植物の環境状態に関する情報、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれか一方を入力することにより、該植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力する
学習器と、
前記環境生体記録情報、前記作業記録情報を定量化した定量化作業情報、前記指標値記録情報及び、前記計画指標値情報の少なくとも一部を含む情報から、前記学習器を用いて、前記作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成する指示生成部と、
を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項3】
前記指示生成部は、
前記学習器に対して、前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報の少なくとも一部を含む情報を入力して、前記植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力させ、
該植物の前記指標値の予測値が前記計画指標値情報における前記指標値に近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報を生成することを特徴とする、請求項2に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項4】
前記指標値は収量であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項5】
前記植物の生育状態に関する情報には、前記植物の葉の量と実の量の比に相当する値である樹勢の情報が含まれることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項6】
前記計画決定装置は、
生産者の収益目標に関する情報を受付ける経営方針入力部と、
前記経営方針入力部で受付けた前記収益目標に基づいて前記植物の販売計画を算出しまたは該販売計画の算出を補助する販売計画演算部と、
前記植物の生育シミュレーションを行う生育シミュレーション部と、
前記販売計画演算部を用いて得られた販売計画及び、生育シミュレーション部によって行われた生育シミュレーション結果に基づいて前記植物の栽培計画を算出しまたは該栽培計画の算出を補助する栽培計画演算部と、
を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項7】
前記環境・作業制御装置は、
前記管理実行装置からの前記作業変更情報に基づいて、作業者に対する作業内容を表示するとともに、前記作業記録情報及び前記指標値記録情報の入力を受付ける作業管理部と、
前記管理実行装置からの環境方針情報に基づいて、前記植物の周囲環境を調整する環境調整器を制御するとともに、前記環境生体記録情報を各種センサから取得する環境制御部と、
を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の植物の栽培管理システム。
【請求項8】
植物に関わる所定の指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得する計画指標値情報取得部と、
前記植物の栽培現場で実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報を取得する作業記録情報取得部と、
前記植物の周囲環境及び生体の記録情報である環境生体記録情報を取得する環境生体記録情報取得部と、
前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報を取得する指標値記録情報取得部と、
栽培対象である植物の生育状態に関する情報と、前記植物の環境状態に関する情報と、
前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、前記植物の指標値に関する情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、前記植物の生育状態に関する情報、該植物の環境状態に関する情報、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれか一方を入力することにより、該植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力する学習器と、
前記環境生体記録情報、前記作業記録情報を定量化した定量化作業情報、前記指標値記録情報及び、前記計画指標値情報の少なくとも一部を含む情報から、前記学習器を用いて、前記作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成する指示生成部と、
を備え、
前記指示生成部は、
前記学習器に対して、前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報の少なくとも一部を含む情報を入力して、前記植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力させ、
該植物の前記指標値の予測値が前記計画指標値情報における指標値に近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報を生成し、
前記作業変更情報及び、環境方針情報が、実施可能か否かを判定し、実施可能と判定された場合には、実行認可の情報を得るために、
予測収量及び予測作業の値を出力することを特徴とする、植物の栽培管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培において、その生育状況の管理を行う植物の栽培管理システム及び、植物の栽培管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物等の植物の栽培については、その収量が生産者の経営方針を反映した栽培計画に沿うように管理されることで、生産者はより安定した収益を得ることが可能となる。しかしながら、植物の収量は、植物の周囲環境の変化や植物に加えられる作業の適否等によっても左右され、栽培計画どおりに収量が得られるように生育状況を管理することは必ずしも容易ではない。例えば、目標の収量を得るために、ある時点で植物に加えられるべき作業の内容は、植物の周囲環境や生育状態によって変わり、考え得る作業の種類も非常に多い。よって、複数の種類の作業の中から最適な作業を選択し、さらに適切な程度まで作業を行うには豊富な経験が必要である。さらに、将来における収量の予測についても、生産者の経験に基づいて行われることが多く、経験が少ない生産者が栽培計画を予定通りに達成することは困難である。
【0003】
これに対し、農作物の生育状況の管理および予測を支援する農作物生育管理装置を用いた生育管理方法であって、前記農作物生育管理装置の記憶部は、前記農作物の作付を一意に識別する作付IDに関連付けて、前記農作物を作付けした日である作付開始日と、前記農作物を収穫しようと計画している日である計画収穫日と、実際に農作物を収穫した日付である実績収穫日と、実際に収穫した農作物の数量である実績収穫量と、作付開始日から実績収穫日で示される期間である作付期間における、圃場が置かれている環境である圃場条件と、を記憶している作付情報と、前記作付IDに関連付けて、農作業の名称である作業名と、前記農作業を行おうと計画している作業の度合いである作業量と、前記農作業を行おうと計画している作業日時と、を記憶している作業計画情報と、前記作付IDに関連付けて、前記農作物の生育状況を評価する指標である評価指標の値である評価値と、前記評価値を測定した日である測定日と、を記憶している評価値情報と、気象条件の範囲ごと、前記農作業の作業量の範囲ごとに、前記圃場条件を、気象条件と前記農作業の作業量から算出する数式を記憶している圃場条件情報と、を格納しており、前記農作物生育管理装置の制御部は、評価値入力部により、入力装置を介して受け付けた前記作付ID、前記測定日および前記評価値を、前記評価値情報に登録し、評価指標設定部により、入力装置を介して受け付けた評価指標を、前記農作物の生育状況を予測する際に着目する予測評価指標として設定し、予測情報設定部により、入力装置を介して受け付けた予測の対象とする作付である予測対象作付の作付IDならびに予測開始日および予測終了日で特定される予測期間を、予測情報として設定し、類似作付抽出部により、入力装置を介して受け付けた検索条件に基づいて、前記作付情報を検索し、評価指標、実績情報および圃場条件が前記検索条件で指定された範囲内である作付である、類似作付を抽出し、成功作付抽出部により、入力装置を介して受け付けた検索条件および前記類似作付の作付IDに基づいて、前記作付情報を検索し、前記農作物の評価指標および実績情報が前記検索条件で指定された基準を満たす作付である、成功作付を抽出し、管理可能範囲算出部により、前記成功作付における前記予測評価指標の評価値の最小値および最大値により特定される範囲を、前記農作物の生育が成功するか否かを判断する基準である管理可能範囲として算出し、予測生育範囲作成部により、気象情報取得手段が取得した前記予測期間における気象予報と、入力装置を介して受け付けた気象予報における誤差分布とに基づいて、誤差を加減することが可能な数値変数に対して誤差を生成することで、気象条件を算出し、当該算出した気象条件、作業計画情報および前記数式とに基づいて、圃場条件を算出し、当該算出した圃場条件から予測モデルを用いて、前記予測期間における前記予測評価指標の評価値を予測し
た結果を、予測生育範囲として作成し、予測結果表示部により、前記管理可能範囲および/または前記予測生育範囲を予測結果として出力装置に表示させる、技術が公知である(特許文献1などを参照。)。
【0004】
この技術によれば、農作物の生育が成功であるか否かを判断する基準である管理可能範囲と、農作物の生育状況の予測値である予測生育範囲とが示されるので、適切な作業計画の策定を支援することができる。また、気象予報の誤差による気象条件のブレが、農作物の生育にどのように影響を与えるかを考慮して予測生育範囲が作成されるので、より適切に、作業計画の策定を支援することができる。
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、植物の栽培を、生産者の経営方針を反映した栽培計画に沿うように制御することは適切に行われておらず、必ずしも経営方針に沿った収量を得られるような栽培管理がなされていたとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、経験が少ない生産者でも、その経営方針を反映した栽培計画に沿うような栽培管理ができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、生産者の経営方針及び植物の生育シミュレーションに基づき、前記植物の栽培計画を決定しまたは該決定を補助する計画決定装置と、
前記植物の栽培時における周囲環境を制御するとともに、前記植物の栽培に関する作業を行う作業者に作業指示を行い、または該作業指示を補助する環境・作業制御装置と、
前記計画決定装置を用いて決定された栽培計画に関わる計画指標値と、前記環境・作業制御装置を用いて得られた前記植物の栽培に関わる実際の指標値との関係を管理する管理実行装置と、を備え、
前記管理実行装置は、
前記計画決定装置に対して、前記指標値の実績または予測についての情報である指標値情報と、前記作業の内容についての情報である作業情報の少なくとも一方を提供するとともに、前記計画決定装置より、前記指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得し、且つ、
前記環境・作業制御装置に対して前記作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び前記植物の周囲環境の制御の方針である環境方針情報を提供するとともに、前記環境・作業制御装置から、実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報、前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報及び、前記植物の周囲環境および/または生体の記録情報である環境生体記録情報を取得することを特徴とする、植物の栽培管理システムである。
【0009】
ここで、計画決定装置は生産者の経営方針及び、植物の生育シミュレーションに基づいて、植物の栽培計画を決定する。より具体的には、生産者の経営方針は、例えば対象となる植物(野菜、果物、例えば果菜類など)を栽培、収穫、販売することによる年間売上、粗利、営業利益等であってもよい。また、植物の生育シミュレーションは、所定の作付面積の農園において、後述の環境・作業制御装置を用いて植物の周囲環境、植物の栽培に関する作業を制御した場合に得られる結果(ここで結果とは、例えば、収量、品質、価格等
を示す)を予測するものである。計画決定装置においては、これらの情報により、経営方針を実現するために必要な栽培計画が精度良く決定される。なお、計画決定装置においては栽培計画が自動的に演算されてもよいが、ユーザによる栽培計画の立案を補助するものであってもよい。例えば、部分的な自動演算が挙げられる。
【0010】
また、環境・作業制御装置は前記植物の栽培時における周囲環境を制御するとともに、前記植物の栽培に関する作業を行う作業者に作業指示を行い、または該作業指示を補助する装置である。環境・作業制御装置によって、植物の周囲環境は、植物の生育を促進するように自動調整される。また、植物の栽培に関する作業の内容が自動的に作業者に対して直接または、管理者に対して指示される。指示の内容としては指示自体の文面による表示が例示できる。その他、指示の立案を補助する情報を表示することで作業の指示を補助しても構わない。
【0011】
そして、管理実行装置は、前記計画決定装置を用いて決定された栽培計画に関わる計画指標値と、前記環境・作業制御装置を用いて得られた前記植物の実際の指標値との関係を管理する。ここで指標値としては、収量、品質(実の糖度、大きさ、色等)、出荷可能時期等が例示できる。
【0012】
より具体的には、前記管理実行装置は、前記計画決定装置に対して、前記植物の指標値の実績または予測についての情報である指標値情報と、前記作業の内容についての情報である作業情報とを提供するとともに、前記計画決定装置より、前記植物の指標値についての計画についての情報である計画指標値情報を取得し、且つ、
前記環境・作業制御装置に対して前記作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び前記植物の周囲環境の制御の方針である環境方針情報を提供するとともに、前記環境・作業制御装置から、実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報、前記植物の収量についての記録情報である収量記録情報及び、前記植物の周囲環境および/または生体の記録情報である環境生体記録情報を取得する(ここでは、管理実行装置は、生体の記録情報を、環境・作業制御装置から取得する他、人による直接入力や、本発明に係る栽培管理システム外のセンサからの取得など、別の方法により取得することも想定している)。
【0013】
これによれば、管理実行装置によって、計画決定装置を用いて決定された栽培計画に関わる計画指標値と、環境・作業制御装置を用いて得られた前記植物の実際の指標値とが一致するように、栽培計画が変更され、あるいは、植物の栽培において植物に加えられる作業または、植物の周囲環境が変更されるので、ユーザの認識する経営計画に基づく指標値と、環境・作業制御装置を用いて得られる実際の指標値と、より精度よく一致させ、ユーザの経営方針を実現することが可能となる。
【0014】
また、本発明においては、前記管理実行装置は、栽培対象である植物の生育状態に関する情報と、前記植物の環境状態に関する情報と、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、前記植物の前記指標値に関する情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、前記植物の生育状態に関する情報、該植物の環境状態に関する情報、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれか一方を入力することにより、該植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力する学習器と、
前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報、前記指標値記録情報及び、前記計画指標値情報の少なくとも一部を含む情報から、前記学習器を用いて、前記作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成する指示生成部と、を備えるようにしてもよい。
【0015】
そして、前記指示生成部は、前記学習器に対して、前記環境生体記録情報、前記作業記録情報を定量化した定量化作業情報の少なくとも一部を含む情報を入力して、前記植物の
前記指標値の予測値に関する情報を出力させ、該植物の前記指標値の予測値が前記計画指標値情報における前記指標値に近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報を生成するようにしてもよい。これによれば、環境・作業制御装置から得られる情報を学習データとして学習した学習器を用いて、作業変更情報及び、環境方針情報を生成することができるので、より精度よく、計画決定装置から得られる計画指標値と、環境・作業制御装置を用いて取得される実際の指標値とを近づけることが可能となる。なお、ここにおいて、栽培対象である植物の生育状態に関する情報とは、例えば環境生体記録情報のうち生体の記録情報に相当する情報である。また、植物の環境状態に関する情報とは、例えば環境生体記録情報のうち植物の周囲環境についての記録情報に相当する情報である。植物に対する作業の履歴を定量化した情報とは、定量化作業情報に相当する情報である。また、植物の指標値に関する情報とは、指標値記録情報に相当する情報である。
【0016】
また、本発明においては、前記指標値は植物の収量であってもよい。そうすれば、生産者の売上、利益への影響の大きい収量を制御することが可能となり、より確実にユーザの経営方針を実現することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては前記植物の生育状態に関する情報には、前記植物の葉の量と実の量の比に相当する値である樹勢の情報が含まれるようにしてもよい。すなわち、植物の実(果実または種実)に対して葉が少なすぎる場合には、果実または種実を生育させるための光合成による栄養分が少なく、果実または種実の生育が妨げられる虞がある。一方、果実または種実に対して葉が多すぎる場合にも、葉自体を生育させるために必要な栄養分が配分されてしまい、果実または種実の生育が妨げされる虞がある。よって、果実や種実を好適に生育させるためには、樹勢が適切な値であることが必要となる。本発明においては、植物の生育状態に関する情報の一つとして、この樹勢を採用しているので、より正確に、指標値が計画指標値に近づくようにすることが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記計画決定装置は、
生産者の収益目標に関する情報を受付ける経営方針入力部と、
前記経営方針入力部で受付けた前記収益目標に基づいて前記植物の販売計画を算出しまたは該販売計画の算出を補助する販売計画演算部と、
前記植物の生育シミュレーションを行う生育シミュレーション部と、
前記販売計画演算部を用いて得られた販売計画及び、生育シミュレーション部によって行われた生育シミュレーション結果に基づいて前記植物の栽培計画を算出しまたは該栽培計画の算出を補助する栽培計画演算部と、
を備えるようにしてもよい。これによれば、ユーザは、経営方針入力部に、経営方針に基づく収益目標に関する情報を入力することで、栽培計画を自動的または半自動的に取得することが可能となる。
【0019】
また、本発明においては、前記環境・作業制御装置は、前記管理実行装置からの前記作業変更情報に基づいて、作業者に対する作業内容を表示するとともに、前記作業記録情報及び前記指標値記録情報の入力を受付ける作業管理部と、前記管理実行装置からの環境方針情報に基づいて、前記植物の周囲環境を調整する環境調整器を制御するとともに、前記環境生体記録情報を各種センサから取得する環境制御部と、を備えるようにしてもよい。
【0020】
ここで、環境調整器とは、植物の周囲の環境を調整する機器をいい、例えば、加温湿器、遮光カーテン、CO2発生器、施肥器、潅水器、換気窓などの機器または機器群を示す。また、各種センサとは、温湿度センサ、日射センサ、CO2センサ、土中養分センサ、土中水分センサ、吸収養分センサ、樹液流センサ、画像センサ等のセンサまたはセンサ群を示す。
【0021】
これによれば、作業管理部によって、管理実行装置からの作業変更情報の内容を作業者により確実に伝達することが可能となり、また、作業内容、指標値のリアルタイム情報を迅速に取得することが可能となる。さらに、植物の周囲環境を、各環境データまたは生体データに基づいて、より精度良く迅速に制御することが可能となる。
【0022】
また、本発明は、植物に関わる所定の指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得する計画指標値情報取得部と、
前記植物の栽培現場で実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報を取得する作業記録情報取得部と、
前記植物の周囲環境及び生体の記録情報である環境生体記録情報を取得する環境生体記録情報取得部と、
前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報を取得する指標値記録情報取得部と、
栽培対象である植物の生育状態に関する情報と、前記植物の環境状態に関する情報と、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、前記植物の指標値に関する情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、前記植物の生育状態に関する情報、該植物の環境状態に関する情報、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれか一方を入力することにより、該植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力する学習器と、
前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報、前記指標値記録情報及び、前記計画指標値情報の少なくとも一部を含む情報から、前記学習器を用いて、前記作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成する指示生成部と、
を備え、
前記指示生成部は、
前記学習器に対して、前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報の少なくとも一部を含む情報を入力して、前記植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力させ、
該植物の前記指標値の予測値が前記計画指標値情報における指標値に近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報を生成することを特徴とする、植物の栽培管理装置であってもよい。
【0023】
なお、上記した課題を解決するための手段は、可能な限り組合せて実施可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、経験が少ない生産者でも、その経営方針を反映した栽培計画に沿うような栽培管理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例における栽培管理システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施例における計画決定装置と管理実行装置の関係を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施例における管理実行装置と環境・作業制御装置の関係を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施例における栽培管理システムのハード構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例における管理実行装置のハード構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例における処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<適用例>
以下、本発明の適用例について説明する。本適用例に係る発明は、経験が少ないユーザ
でも経営方針に基づく栽培計画に沿うような栽培管理ができるようにする、植物の栽培管理システムである。なお、本発明のユーザとしては、例えば生産者が挙げられるが、生産者に限られず、コンサルタント、利害関係者等であってもよい。本システムは、
図1に示すように、ユーザの経営方針及び植物の生育シミュレーションに基づき、植物の栽培計画を決定する計画決定装置3と、植物の栽培時における周囲環境を制御するとともに、植物の栽培に関する作業を行う作業者に作業指示を行う環境・作業制御装置4と、計画決定装置3を用いて決定された栽培計画に関わる収量と、環境・作業制御装置4を用いて得られた植物の収量との関係を管理する管理実行装置2と、を備えている。なお、本適用例及び、以下の実施例においては本発明における指標値を植物の収量とした例について説明する。
【0027】
管理実行装置2は、計画決定装置3に対して、植物の収量の実績または予測についての情報である収量情報と、作業の内容についての情報である作業情報とを提供するとともに、計画決定装置3より、植物の収量の計画についての情報である計画収量情報を取得する。また、管理実行装置2は、環境・作業制御装置4に対して作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び植物の周囲環境の制御の方針である環境方針情報を提供するとともに、環境・作業制御装置4から、実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報、植物の収量についての記録情報である収量記録情報及び、植物の周囲環境及び生体の記録情報である環境生体記録情報を取得する。
【0028】
これにより、管理実行装置2は、環境・作業制御装置4を用いることで得られる実際の収量を、計画決定装置2を用いて決定された計画収量に近づけるように、環境・作業制御装置4における植物の周囲環境や作業内容を調整する。
【0029】
より詳細には、
図2に示すように、計画決定装置3では、ユーザが経営方針を入力することで、経営計画、販売計画が演算され、これに生育シミュレーション部によるシミュレーション結果が考慮されて、栽培計画が演算される。この栽培計画に基づいて算出される計画収量が管理実行装置2に提供される。この計画収量は本発明における計画指標値情報に相当する。
【0030】
また、
図3に示すように、環境・作業制御装置4には、環境調整器4hが設けられ、環境センサ群4g、生体センサ群4fの測定値を環境生体記録情報として管理実行装置2に提供する。また、作業者による作業の記録情報と、収量の記録情報とが作業管理IF4bを介して管理実行装置2に提供される。その際、作業の内容は定量化された上で送信される。ここで、作業者による作業の記録情報は、本発明における作業記録情報に相当する。また、収量の記録情報は指標値記録情報に相当する。
【0031】
管理実行装置2においては、学習済の学習器2aこれらの情報を入力し、指示生成部2bにおいて、実際の収量を計画収量に近づけるための作業変更情報や、環境方針情報を環境・作業制御装置4に提供する。
【0032】
なお、適用例においては、計画決定装置3から管理実行装置2に提供された計画収量を実現するために、管理実行装置2から環境・作業制御装置4に環境方針情報、作業変更情報が提供される例について説明したが、本発明に係る栽培管理システム1で管理される指標値は収量には限られない。例えば、収量の他に、果実の糖度、大きさ、色などの品質、収穫時期等を管理することで、ユーザ(生産者)の経営計画を達成するようにしても構わない。
【0033】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について詳細に説明する。
<実施例1>
【0034】
図1は、本実施例における栽培管理システム1の機能ブロック図である。本実施例における栽培管理システム1は、ユーザの経営方針に基づく収量と栽培計画を決定する計画決定装置2と、植物の周囲環境を制御し、植物に加える作業指示を行うための環境・作業制御装置4と、計画決定装置2及び環境・作業制御装置4と連携して、計画決定装置2で決定された収量を実現するために機能する管理実行装置3を有する。
【0035】
図1から分かるように、計画決定装置3から管理実行装置2へは、計画決定装置3を用いて決定された計画に関わる計画指標値情報としての計画情報が提供される。また、管理実行装置2から計画決定装置3へは、実際の収量についての情報であり指標値情報としての収量情報と、栽培現場で行われている作業についての情報である作業情報が提供される。
【0036】
また、管理実行装置2から環境・作業制御装置4へは、作業者の作業の変更に関する作業変更情報や、植物の周囲環境の制御方針に関する環境方針情報が提供される。また、環境・作業制御装置4から管理実行装置2へは、実際に行われた作業の内容についての作業記録情報と、実際の収量の記録情報であり指標値記録情報としての作業記録情報(
図1ではこの2つの情報を合わせて、作業収量記録情報としている。)が提供される。また、植物の周囲環境及び、生体状態の記録情報である環境生体記録情報が提供される。
【0037】
なお、管理実行装置2において、環境・作業制御装置4における収量予測を行い、収量予測に基づいた作業変更情報、環境方針情報が提供されるが、その収量予測は植物の樹勢を判断基準の一つにしている。よって、管理実行装置2には、樹勢管理DB5が接続されており、収量予測に樹勢画像が用いられる。また、樹勢管理DB5には、植物の栽培現場に設置された成長(画像)センサ4i(後述)から、管理対象の植物の樹勢画像が集められるようになっている。
【0038】
図2には、管理実行装置2と計画決定装置3のより詳細な機能構成についてのブロック図を示す。
図2に示すように、計画決定装置3から管理実行装置2に提供される計画情報には、計画収量の他、管理実行装置2における管理処理の実行認可に関わる情報も含まれている。すなわち、管理実行装置2において計画収量と植物の実際の収量を近づける処理を導出する際には、計画収量自体を見直すという判断がなされる場合がある。上記の実行認可に関わる情報は、このような場合に、計画決定装置3から管理実行装置2へ計画変更の認可に関わる情報が提供される。また、管理実行装置2から計画決定装置3に提供される収量情報には、予測収量と実績収量に関わる情報が含まれる。また、管理実行装置2から計画決定装置3に提供される作業情報には、予測作業と実績作業に関わる情報が含まれる。
【0039】
また、管理実行装置2には、樹勢評価、作業内容の変更決定、収量予測と作業変更、収量予実評価等の機能があり、これらは、学習と知識蓄積により実現される。より具体的には、管理実行装置2には、学習器2aと指示生成部2bが備えられている。この学習器2aと指示生成部2bについては後述する。
【0040】
計画決定装置3は、ユーザによる経営方針の入力を受付ける経営方針入力部3aを有する。経営方針の内容としては、例えば、予算年度の4半期毎の売上、粗利、営業利益等を挙げることができる。経営方針入力部3aに入力された経営方針に基づいて、経営計画演算部3bによって経営計画が演算される。この経営計画演算部3bにおいては、経営方針入力部3aからの入力の内容に基づき、各期間における予想売上原価、予想販管費等の情報を用いて、より詳細な経営情報としての経営計画が演算される。
【0041】
また、本実施例においては、経営計画の演算自体はユーザが行い、ユーザによる演算を補助するための情報提供のみが行われてもよい。経営計画演算部3bによって演算された経営計画は、経営計画出力部3cにより出力される。経営方針入力部3aが受付けた経営方針と、経営計画出力部3cにより出力された経営計画とに基づいて、植物の販売計画演算部3dによって植物の販売計画が演算される。これは、管理対象の植物の季節毎の販売価格等の情報を折り込んだ上で、植物の販売計画について演算するものである。販売計画演算部3dによって演算された販売計画は販売計画出力部3eによって出力される。
【0042】
そして、生育シミュレーション部3fによって、経営計画に基づく設備投資、作業員数等の他、収量の季節変動等も考慮された栽培量がシミュレートされる。この生育シミュレーション部3fによるシミュレーション結果と、販売計画出力部3eによって出力された販売計画とに基づいて、栽培計画演算部3gによって栽培計画が演算される。栽培計画演算部3gによって演算された栽培計画は、栽培計画出力部3hによって出力される。
【0043】
図3には、管理実行装置2と環境・作業制御装置4との関係について示す。環境・作業制御装置4は、主に植物を栽培する現場において、植物の周囲環境と植物に加える作業とを制御する装置である。管理実行装置2から環境・作業制御装置4へは、作業者の作業内容を変更する指示の情報である作業変更情報が提供される。この作業変更情報は、環境・作業制御装置4の内部に設けられた作業管理IF4bに送信される。この作業管理IF4bからは、作業命令GUI4dに、作業命令に関わる情報が送信される。作業者または管理者は、作業命令GUI4dを通じて、実施すべき作業の内容または作業の変更の内容を把握する。
【0044】
また、作業管理IF4bへは、作業者または管理者が作業収量記録GUI4cへ入力することによって、作業記録と収量記録とが送信される。そして、作業管理IF4dからは、作業指示の内容に関する情報と作業記録(作業実績)の内容に関する情報を合わせた情報である作業予実記録と、収量記録の内容に関する情報である収量実績記録と、が作業収量DB4aに送信され、作業収量DB4aに情報として蓄積される。作業収量DB4aからは、作業記録と収量記録を合わせた情報である作業収量記録情報が管理実行装置3に送信される。
【0045】
また、管理実行装置2から環境・作業制御装置4における環境制御装置4eに、環境の制御方針である環境方針情報が送信される。そうすると、環境制御装置4eから、環境調整器4hに環境命令が送信される。この環境調整器4hは、植物周囲の温度・湿度を調整する加温湿器、日照量を調整する遮光カーテン、CO2量を調整するCO2発生器、肥料の量を調整する施肥器、植物または土壌に潅水する潅水器、植物周囲の空気の換気を行うための換気窓を含んでいる。この環境調整器4hによって、植物の生育に影響を及ぼす環境の調整が行われる。
【0046】
また、環境・作業制御装置4には、環境センサ群4gと、生体センサ群4f及び、成長(画像)センサ4iが備えられている。この環境センサ群4gには、植物周囲の温度・湿度を測定する温湿度センサ、日照量を測定する日射センサ、CO2量を測定するCO2センサ、土壌中の所定成分を測定する土中養分センサ、土壌中の水分量を測定する土中水分センサが含まれている。また、生体センサ群4fには、植物によって吸収された養分の量を測定する吸収養分センサや、植物内の樹液の流量を測定する樹液流センサが含まれている。
【0047】
そして、環境センサ群4gからは植物の周囲の環境情報である環境記録が環境制御装置4eに送信される。また、生体センサ群4f及び成長(画像)センサ4iからは、生体情報である生体記録が環境制御装置4eに送信される。環境制御装置4eから管理実行装置
2へは、環境記録と生体記録を合わせた情報である環境生体記録情報が送信される。
【0048】
なお、上述のように、管理実行装置2には、学習器2aと指示生成部2bが設けられている。この学習器2aは、栽培対象である植物の生育状態の情報と、植物の環境状態の情報と、植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、植物の収量の情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、植物の生育状態の情報、植物の環境状態の情報、植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれかを入力することにより、該植物の予測収量に関する情報を出力する学習器としたものである。そして、指示生成部2bは、環境・作業制御装置4から提供される、環境生体記録情報、前記作業記録情報、作業収量記録情報と、計画決定装置3から提供される計画収量の情報の少なくとも一部を含む情報から、学習器2aを用いて収量を予測し、計画収量と予測収量とが近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成するものである。
【0049】
なお、ここで作業記録情報については、実際にはこの情報を定量化した定量化作業情報が学習器2aに入力される。作業記録情報を定量化した定量化作業情報とは、例えば、ユーザが、作業記録の入力の際に、ディスプレイに表示されたプルダウンメニューから作業の種類を選択し、選択された作業の種類に応じて表示される作業量のプルダウンメニューから作業量を選択することにより、作業履歴を入力することにより生成される。その際、選択された作業の種類に対応するフラグ(例えば、作業が摘花であれば摘花フラグ)をオンに設定するともに、作業の種類に応じて定められた単位(ここでは個数)に基づいて定量化された数値(例えば3)を定量化作業情報とする。この、作業の履歴を定量化する手法については、この手法に限られず、適宜他の手法を採用しても構わない。
【0050】
図4は、本実施例に係る栽培管理システム1の概略のハード構成を示す模式図である。管理実行装置2と、計画決定装置3と、環境・作業制御装置4は、例えばネットトワークNを介して接続されている。環境・作業制御装置4には、サーバ装置40が設けられている。このサーバ装置40には、作業収量DB4a、作業管理IF4bの機能が内蔵されている。また、サーバ装置40には、植物41が栽培されるハウス42に配置されたコントローラ43としての環境制御装置4eが接続されている。
【0051】
この環境制御装置4eには、環境センサ群4g、生体センサ群4fが接続されており、ハウス42内の温湿度、日照、CO2濃度、土中養分量、土中水分量等を測定し、環境生体記録情報として管理実行装置2に送信可能となっている。また、成長(画像)センサ4i(不図示)からは、植物41の画像が環境生体記録情報として管理実行装置2に送信可能となっている。また、環境制御装置4eには、環境調整器4hが接続されており、ハウス42内の温湿度、日照、CO2濃度、肥料量、水分量を制御可能となっている。また、サーバ装置40には、端末44が接続されている。この端末44には、作業収量記録GUI4c、作業命令GUI4dの機能が付与されており、作業者または管理者が作業や収量の情報を入力したり、作業指示の内容を確認することが可能となっている。
【0052】
図5は、本実施例に係る管理実行装置2のハードウエア構成図である。本実施例では、管理実行装置2は、植物の栽培管理装置に相当する。管理実行装置2は、プロセッサ21、主記憶部22、補助記憶部23、入力部24、出力部25、外部インタフェース26、通信インタフェース27、バス28を含んで構成されるコンピュータ装置である。
【0053】
プロセッサ21は、CPUやDSP等である。主記憶部22はROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等から構成される。補助記憶部23は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、リムーバブルメディア等を含む。リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリやSDカード等のフラッシュメモリ、あるいは、CD-ROMやDVDディスク、ブルー
レイディスクのようなディスク記録媒体である。補助記憶部23には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶部22の作業領域にロードしてプロセッサ21によって実行され、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、機能が実現される。
【0054】
ただし、一部または全部の機能部はASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)のようなハードウエア回路によって実現されてもよい。ただし、管理実行装置2は必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0055】
入力部24は、キーボード、マウスやマイク等を含み、ユーザからの入力操作を受け付ける。出力部25は、ディスプレイやスピーカ等を含み、ユーザに対して情報を提供する。外部インタフェース(図ではI/Fと表記)26は、種々の外部装置と接続するためのインタフェースである。通信インタフェース27は管理実行装置2をネットワークに接続するためのインタフェースである。通信インタフェース27は、ネットワークとの接続方式に応じて適宜の構成を採用することができる。本実施例において、計画指標値情報取得部、作業記録情報取得部、環境生体記録情報取得部、指標値記録情報取得部は、通信インターフォース27に含まれている。また、バス28は、管理実行装置2の各部を接続する信号の伝送路である。なお、計画決定装置3、環境・作業制御装置4のサーバ装置40のハード構成については、実質的に管理実行装置2のハード構成と類似であるので、ここでは説明を割愛する。
【0056】
次に、
図6には、栽培管理システム1における処理のフローチャートを示す。本フローは、管理実行装置2の補助記憶部23に記憶されたプログラムに基づいて、管理実行装置2のプロセッサ21において、計画決定装置2、環境・作業制御装置4と適宜通信を行いながら実行される。本フローが実行されると、先ず、ステップS101において、現時点の計画収量が参照される。この計画収量は、計画決定装置3から提供された情報であり、管理実行装置2内の補助記憶部23に記憶された計画収量値である。ステップS101の処理が収量するとステップS102に進む。
【0057】
ステップS102においては、実績収量が参照される。この実績収量は、環境・作業制御装置4の作業収量DB4aから送信され、やはり管理実行装置3内の補助記憶部23に記憶された収量記録情報である。ステップS102の処理が終了するとステップS103に進む。
【0058】
ステップS103においては、ステップS101において参照された計画収量の値と、ステップS102において参照された実績収量の値が比較される。そして、計画収量の値と実績収量の値との相違が所定の閾値以上か否かが判定される。ここで、計画収量の値と実績収量の値との相違が閾値以上であれば、計画収量を達成するためには何等かの対策を施す必要があると判断されるので、ステップS104に進む。一方、計画収量の値と実績収量の値との間の相違が閾値未満であれば、計画は順調に実行されていると判断されるので、本ルーチンを一旦、終了する。
【0059】
計画収量の値と実績収量の値との相違が閾値以上である場合には、ステップS104においてルート案の構築が試みられる。より具体的には、管理実行装置2における指示生成部2bが環境生体記録情報、定量化作業情報を学習済の学習器2aに入力し、予測収量の情報を出力させ、この予測収量と計画収量との差が閾値未満となるような、環境生体記録情報、定量化作業情報の値を模索する。そして、得られた環境生体記録情報、定量化作業情報の値(または、環境生体記録情報、定量化作業情報がそのように変化するような、作業変更情報、環境方針情報の値)をルート案として、管理実行装置2の補助記憶部23に
保存する。ステップS104の処理が終了するとステップS105に進む。
【0060】
ステップS105においては、ステップS104において構築されたルート案が実施可能か否かが判定される。より具体的には、工数、人、スケジュール、資材、機械の各観点から実現可能か否かが判定される。ステップS105において、ルート案が実施可能と判定された場合には、ステップS107に進む。ステップS107においては、ルート案が実施された場合の予測収量・予測作業が管理実行装置2から計画決定装置3に提供される。そして、計画決定装置3においては、管理実行装置2から提供された予測収量・予想作業の値が補助記憶部(不図示)に記憶された上で、実行認可の情報が管理実行装置2に提供される。ステップS107の処理が終了するとステップS108に進む。
【0061】
一方、ステップS105において、ルート案が実施不可能と判定された場合には、ステップS106に進む。ステップS106においては、管理実行装置2から計画決定装置3に、栽培計画の変更が要求されるとともに、ルート案が実施された場合の予測収量・予測作業量が管理実行装置2から計画決定装置3に提供される。そして、計画決定装置3においては、管理実行装置2から提供された予測収量・予想作業の値が補助記憶部(不図示)に記憶された上で、栽培計画が変更される。そして、必要に応じ、販売計画、経営計画、経営方針が変更される。ステップS106の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0062】
ステップS108においては、ステップS107において計画決定装置3から取得した承認に基づき、管理実行装置2から環境・作業制御装置4に、作業変更情報、環境方針情報が提供される。ステップS108の処理が終了するとステップS109に進む。
【0063】
ステップS109においては、環境・作業制御装置4において、作業者のスキルがルート案を実行する上で充分か否かが判定される。ここでは、各作業内容に対する作業者の必要スキルと、作業者の保有スキルの情報が環境・作業制御装置4のサーバ装置40の補助記憶部(不図示)に記憶されており、変更後の各作業内容に対して、必要スキルと保有スキルをと比較することで判定される。ここで、ステップS109において作業者のスキルが充分であると判定された場合には、ステップS111に進む。一方、ステップS109において作業者のスキルが不十分であると判定された場合には、ステップS110に進む。
【0064】
ステップS110では、作業者に対する、作業方法の解説、作業員育成教育がなされるよう、端末44(作業命令GUI4d)に表示される。そして、その表示に応じて、管理者が作業者に対して、作業方法の解説や育成教育を行う。ステップS110の処理が終了するとステップS111に進む。ステップS111では、作業確認・進捗確認がなされるよう、端末44(作業命令GUI4d)に表示される。そして、その表示に応じて、管理者が作業確認・進捗確認を行う。ステップS111の処理が終了すると本ルーチンが一旦終了する。
【0065】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
生産者の経営方針及び植物の生育シミュレーションに基づき、前記植物の栽培計画を決定しまたは該決定を補助する計画決定装置(3)と、
前記植物の栽培時における周囲環境を制御するとともに、前記植物の栽培に関する作業を行う作業者に作業指示を行い、または該作業指示を補助する環境・作業制御装置(4)と、
前記計画決定装置(3)を用いて決定された栽培計画に関わる計画指標値と、前記環境
・作業制御装置を用いて得られた前記植物の栽培に関わる実際の指標値との関係を管理する管理実行装置(2)と、を備え、
前記管理実行装置(2)は、
前記計画決定装置(3)に対して、前記指標値の実績または予測についての情報である指標値情報と、前記作業の内容についての情報である作業情報の少なくとも一方を提供するとともに、前記計画決定装置(3)より、前記指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得し、且つ、
前記環境・作業制御装置(4)に対して前記作業の内容の変更に関する情報である作業変更情報及び前記植物の周囲環境の制御の方針である環境方針情報を提供するとともに、前記環境・作業制御装置(4)から、実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報、前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報及び、前記植物の周囲環境および/または生体の記録情報である環境生体記録情報を取得することを特徴とする、植物の栽培管理システム(1)。
<発明8>
植物に関わる所定の指標値の計画についての情報である計画指標値情報を取得する計画指標値情報取得部(27)と、
前記植物の栽培現場で実際に行われた作業の内容についての情報である作業記録情報を取得する作業記録情報取得部(27)と、
前記植物の周囲環境及び生体の記録情報である環境生体記録情報を取得する環境生体記録情報取得部(27)と、
前記植物の前記指標値についての記録情報である指標値記録情報を取得する指標値記録情報取得部(27)と、
栽培対象である植物の生育状態に関する情報と、前記植物の環境状態に関する情報と、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報と、前記植物の指標値に関する情報と、を少なくとも含む学習データを学習させて、前記植物の生育状態に関する情報、該植物の環境状態に関する情報、前記植物に対する作業の履歴を定量化した情報の少なくともいずれか一方を入力することにより、該植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力する学習器(2a)と、
前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報、前記指標値記録情報及び、前記計画指標値情報の少なくとも一部を含む情報から、前記学習器(2a)を用いて、前記作業変更情報及び、環境方針情報の少なくとも一方を生成する指示生成部(2b)と、
を備え、
前記指示生成部(2b)は、
前記学習器(2a)に対して、前記環境生体記録情報、前記定量化作業情報の少なくとも一部を含む情報を入力して、前記植物の前記指標値の予測値に関する情報を出力させ、
該植物の前記指標値の予測値が前記計画指標値情報における指標値に近づくように、前記作業変更情報及び、環境方針情報を生成することを特徴とする、植物の栽培管理装置(2)。
【符号の説明】
【0066】
1・・・栽培管理システム
2・・・管理実行装置
3・・・計画決定装置
4・・・環境・作業制御装置
5・・・樹勢管理DB