(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】光軸調整ユニット、光学機器、光軸調整システム、及び光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
G03B 17/56 20210101AFI20230518BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230518BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230518BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20230518BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B15/00 T
G02B7/02 C
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2022563032
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2022015466
(87)【国際公開番号】W WO2022210718
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2021063581
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305024547
【氏名又は名称】有限会社イグノス
(74)【代理人】
【識別番号】100142734
【氏名又は名称】安 裕 希
(72)【発明者】
【氏名】大和田 功
(72)【発明者】
【氏名】寒川 陽美
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-082829(JP,A)
【文献】特開2017-058552(JP,A)
【文献】特開2009-024714(JP,A)
【文献】特開2010-175399(JP,A)
【文献】特開2015-126288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 15/00
G02B 7/02
H04N 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸調整ユニットが取り付けられた光学機器であって、
前記光軸調整ユニットは、
回路基板と、該回路基板に実装された撮像素子と、該撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを有するカメラモジュールと、
前記回路基板が固定される補強プレートと、
前記カメラモジュールが固定された補強プレートを保持した状態で光学機器に取り付けられるカメラ取付板と、
前記カメラ取付板の少なくとも3箇所に設けられ、前記補強プレートを前記カメラ取付板に締結する締結部と、
を備え、
前記締結部は、
前記カメラ取付板に形成された貫通孔を通り、前記補強プレートに形成されたネジ穴に螺合されるボルトと、
前記カメラ取付板と前記補強プレートとの間において前記ボルトを挿通させる弾性部と、
を有し、前記ボルトを回転させることにより前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整可能であり、
前記少なくとも3箇所に設けられた前記締結部において前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔が調整されることにより、前記カメラ取付板を基準として前記レンズの光軸が調整され、
当該光学機器のフレームの3箇所に設けられ、該フレームに対する前記光軸調整ユニットの高さを調整する高さ調整機構と、
前記フレームの3箇所に設けられ、該フレームに対する前記光軸調整ユニットの傾きを調整する微調整機構と、
をさらに
備え
る光学機器。
【請求項2】
前記弾性部は、
前記カメラ取付板と前記補強プレートの間において前記ボルトを挿通させる複数のウェーブワッシャと、
前記複数のウェーブワッシャのうち隣り合うウェーブワッシャの間に配置される平ワッシャと、
を含む、請求項1に記載の
光学機器。
【請求項3】
前記弾性部において、前記ウェーブワッシャは、2つ以上5つ以下設けられている、請求項2に記載の
光学機器。
【請求項4】
対象物を支持する支持台と、
前記対象物を照明する光源と、
前記カメラモジュールから出力される画像信号に基づいて、前記対象物の色、形状、又は寸法を測定する情報処理装置と、
をさらに備える請求項
1~3のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項5】
回路基板と、該回路基板に実装された撮像素子と、該撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを有するカメラモジュールと、
前記回路基板が固定される補強プレートと、
前記カメラモジュールが固定された補強プレートを保持した状態で光学機器に取り付けられるカメラ取付板と、
前記カメラ取付板の少なくとも3箇所に設けられ、前記補強プレートを前記カメラ取付板に締結する締結部と、
を備え、前記締結部は、
前記カメラ取付板に形成された貫通孔を通り、前記補強プレートに形成されたネジ穴に螺合されるボルトと、
前記カメラ取付板と前記補強プレートとの間において前記ボルトを挿通させる弾性部と、
を有し、前記ボルトを回転させることにより前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整可能であり、
前記少なくとも3箇所に設けられた前記締結部において前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔が調整されることにより、前記カメラ取付板を基準として前記レンズの光軸が調整される、光軸調整ユニットと、
前記カメラ取付板に対する前記レンズの光軸を調整するための光軸調整用治具と、
を備え、
前記光軸調整用治具は、
基準位置が設けられたベースと、
前記レンズを前記ベースに向けた状態で前記カメラ取付板を支持する支持部と、
を有し、
前記カメラ取付板は、前記レンズの設計上の光軸が前記基準位置と一致するように、前記支持部に対して位置決めされている、光軸調整システム。
【請求項6】
回路基板と、該回路基板に実装された撮像素子と、該撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを有するカメラモジュールの光軸を調整する光軸調整方法であって、
前記カメラモジュールを光軸調整ユニットに取り付けるステップ(a)と、
前記光軸調整ユニットを、基準位置が設けられた光軸調整用治具に対し、前記レンズの設計上の光軸が前記基準位置と一致するように取り付けるステップ(b)と、
前記カメラモジュールによって前記基準位置を撮像することにより、該基準位置が写った画像を画面に表示するステップ(c)と、
前記画像に基づいて前記光軸調整ユニットを操作することにより、前記レンズの光軸を調整するステップ(d)と、
を含み、
前記光軸調整ユニットは、
前記回路基板が固定される補強プレートと、
前記カメラモジュールが固定された補強プレートを保持した状態で光学機器に取り付けられるカメラ取付板と、
前記カメラ取付板の少なくとも3箇所に設けられ、前記補強プレートを前記カメラ取付板に締結する締結部と、を備え、
前記締結部は、前記カメラ取付板に形成された貫通孔を通り、前記補強プレートに形成されたネジ穴に螺合されるボルトと、前記カメラ取付板と前記補強プレートとの間において前記ボルトを挿通させる弾性部と、を有し、前記ボルトを回転させることにより前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整可能であり、
ステップ(b)は、前記カメラ取付板を前記光軸調整
用治具に取り付け、
ステップ(c)は、前記画面にカメラの画角の中心をさらに表示し、
ステップ(d)は、前記画面において前記基準位置の像が前記画角の中心と一致するように、前記少なくとも3箇所に設けられた前記締結部において前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整することにより、前記カメラ取付板を基準として前記レンズの光軸を調整する、光軸調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールの光軸を調整するための光軸調整ユニット、光学機器、光軸調整システム、及び光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板に実装された撮像素子と、撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを備えるカメラモジュールが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撮像素子が搭載された長方形状の撮像基板と、長方形状の板材からなる基板保持用板材と、撮像素子に被写体光を集光するレンズを内部で支持するレンズ支持用筒部と、該レンズ支持用筒部に一体的に設けられ、基板保持用板材に固定されるホルダとを具備する撮像モジュールが開示されている。
【0004】
特許文献2には、撮像レンズが設けられると共に外周面に雄ねじ部が設けられたレンズホルダと、雄ねじ部に嵌まり合う雌ねじ部を有するケーシングと、該ケーシングに取り付けられると共に撮像レンズの光軸上に対向するように設けられた撮像素子を有する回路基板と、を備える電子カメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/119260号
【文献】特開2012-123025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、汎用のカメラモジュールが比較的安価に市販されている。そこで、例えば、対象物の色を測定する測色装置や、対象物の色に基づいて含有成分を分析する生化学用測定装置や、対象物の形状や寸法を計測する計測装置等の光学機器に、汎用のカメラモジュールを適用することができれば、光学機器の製造コストを低減できる可能性がある。
【0007】
しかしながら、汎用のカメラモジュールにおいては、基板に対するレンズの光軸が精密に調整されていないことがある。例えば、特許文献2のように、ねじ機構を利用してレンズが保持されている場合、ねじの回転によりレンズの光軸が変化してしまう。
【0008】
このように光軸調整が精度良くなされていないカメラモジュールを光学機器に取り付けると、光学機器の性能が低下してしまうおそれがある。また、カメラモジュールを取り付けた光学機器において事後的に光軸を調整しようとすると、調整量が大きくなってしまう。その結果、光軸調整機構が大型化する、或いは、調整により発生した歪み応力により、光学機器に機械的な経時変化が生じ易くなる、といった問題が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、汎用のカメラモジュールを用いた光学機器において光軸調整を容易且つ精度良く行うことができるカメラモジュールの光軸調整ユニット、光学機器、光軸調整システム、及び光軸調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である光軸調整ユニットは、回路基板と、該回路基板に実装された撮像素子と、該撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを有するカメラモジュールと、前記回路基板が固定される補強プレートと、前記カメラモジュールが固定された補強プレートを保持した状態で光学機器に取り付けられるカメラ取付板と、前記カメラ取付板の少なくとも3箇所に設けられ、前記補強プレートを前記カメラ取付板に締結する締結部と、を備え、前記締結部は、前記カメラ取付板に形成された貫通孔を通り、前記補強プレートに形成されたネジ穴に螺合されるボルトと、前記カメラ取付板と前記補強プレートとの間において前記ボルトを挿通させる弾性部と、を有し、前記ボルトを回転させることにより前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整可能であり、前記少なくとも3箇所に設けられた前記締結部において前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔が調整されることにより、前記カメラ取付板を基準として前記レンズの光軸が調整されるものである。
【0011】
上記光軸調整ユニットにおいて、前記弾性部は、前記カメラ取付板と前記補強プレートの間において前記ボルトを挿通させる複数のウェーブワッシャと、前記複数のウェーブワッシャのうち隣り合うウェーブワッシャの間に配置される平ワッシャと、を含んでも良い。また、前記弾性部において、前記ウェーブワッシャは、2つ以上5つ以下設けられていても良い。
【0012】
本発明の別の態様である光学機器は、前記光軸調整ユニットが取り付けられたものである。上記光学機器は、当該光学機器のフレームの3箇所に設けられ、該フレームに対する前記光軸調整ユニットの高さを調整する高さ調整機構と、前記フレームの3箇所に設けられ、該フレームに対する前記光軸調整ユニットの傾きを調整する微調整機構と、をさらに備えても良い。
【0013】
上記光学機器は、対象物を支持する支持台と、前記対象物を照明する光源と、前記カメラモジュールから出力される画像信号に基づいて、前記対象物の色、形状、又は寸法を測定する情報処理装置と、さらに備えても良い。
【0014】
本発明の別の態様である光軸調整システムは、前記光軸調整ユニットと、前記カメラ取付板に対する前記レンズの光軸を調整するための光軸調整用治具と、を備え、前記光軸調整用治具は、基準位置が設けられたベースと、前記レンズを前記ベースに向けた状態で前記カメラ取付板を支持する支持部と、を有し、前記カメラ取付板は、前記レンズの設計上の光軸が前記基準位置と一致するように、前記支持部に対して位置決めされているものである。
【0015】
本発明の別の態様である光軸調整方法は、回路基板と、該回路基板に実装された撮像素子と、該撮像素子の受光面に光を入射させるレンズとを有するカメラモジュールの光軸を調整する光軸調整方法であって、前記カメラモジュールを光軸調整ユニットに取り付けるステップ(a)と、前記光軸調整ユニットを、基準位置が設けられた光軸調整用治具に対し、前記レンズの設計上の光軸が前記基準位置と一致するように取り付けるステップ(b)と、前記カメラモジュールによって前記基準位置を撮像することにより、該基準位置が写った画像を画面に表示するステップ(c)と、前記画像に基づいて前記光軸調整ユニットを操作することにより、前記レンズの光軸を調整するステップ(d)と、を含み、前記光軸調整ユニットは、前記回路基板が固定される補強プレートと、前記カメラモジュールが固定された補強プレートを保持した状態で光学機器に取り付けられるカメラ取付板と、前記カメラ取付板の少なくとも3箇所に設けられ、前記補強プレートを前記カメラ取付板に締結する締結部と、を備え、前記締結部は、前記カメラ取付板に形成された貫通孔を通り、前記補強プレートに形成されたネジ穴に螺合されるボルトと、前記カメラ取付板と前記補強プレートとの間において前記ボルトを挿通させる弾性部と、を有し、前記ボルトを回転させることにより前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整可能であり、ステップ(b)は、前記カメラ取付板を前記光軸調整治具に取り付け、ステップ(c)は、前記画面にカメラの画角の中心をさらに表示し、ステップ(d)は、前記画面において前記基準位置の像が前記画角の中心と一致するように、前記少なくとも3箇所に設けられた前記締結部において前記補強プレートと前記カメラ取付板との間隔を調整することにより、前記カメラ取付板を基準として前記レンズの光軸を調整するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、補強プレートを介してカメラモジュールをカメラ取付板に取り付け、少なくとも3箇所に設けられた締結部により補強プレートとカメラ取付板との間隔を調整することにより、カメラ取付板を基準としてレンズの光軸を調整するので、このカメラ取付板を光学機器のフレームに取り付けることにより、汎用のカメラモジュールを用いた光学機器において光軸調整を容易且つ精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るカメラモジュールの光軸調整ユニットを備える光学機器の概略構成を示す一部断面図である。
【
図2】
図1に示す光学調整ユニットを下方から見た一部断面拡大図である。
【
図3】
図1に示す光学機器の側面の一部を拡大して示す模式図である。
【
図4】
図1に示すカメラモジュールを例示する模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る光軸調整ユニットを示す一部断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る光軸調整ユニットを光軸調整用治具に取り付けた状態を示す一部断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る光軸調整方法が実行されるシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る光軸調整方法を示すフローチャートである。
【
図13】カメラにより撮像された光軸調整前の画像を示す模式図である。
【
図14】カメラにより撮像された光軸調整後の画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る光軸調整ユニット、光学機器、光軸調整システム、及び光軸調整方法について、図面を参照しながら説明する。なお、これらの実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0019】
以下の説明において参照する図面は、本発明の内容を理解し得る程度に形状、大きさ、及び位置関係を概略的に示しているに過ぎない。即ち、本発明は各図で例示された形状、大きさ、及び位置関係のみに限定されるものではない。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0020】
本実施形態に係る光軸調整ユニットは、汎用のカメラモジュールが適用される様々な光学機器に適用することができる。光学機器の具体例として、対象物を撮像することにより得られる画像に基づいて対象物の色を測定する測色装置、測定された色に基づいて対象物の含有成分を分析する生化学用測定装置や、対象物を撮像することにより得られる画像に基づいて対象物の形状や寸法を測定する計測装置などが挙げられる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る光軸調整ユニットを備える光学機器の概略構成を示す一部断面図である。
図2は、
図1に示す光学調整ユニットを下方から見た一部断面拡大図である。
図3は、
図1に示す光学機器の側面の一部を拡大して示す模式図である。
【0022】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る光学機器1は、フレーム10と、カメラモジュールの光軸調整ユニット20と、カメラモジュール30と、を備える。
【0023】
フレーム10は、フレームベース板101と、フレーム側板102と、フレーム上板103とを含む。また、フレーム10の内部において、フレームベース板101の上には、測定ワーク120を保持する保持トレイ(支持台)121が設置されている。さらに、フレーム10の内部には、測定ワーク120を照明する光源122が設けられている。
【0024】
光学機器1が測色装置である場合、さらに、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置がカメラモジュール30に接続される。情報処理装置は、カメラモジュール30から出力される画像信号に基づいて測定ワーク120の画像を生成し、該画像に基づいて測定ワークの色を測定する処理を実行する。また、光学機器1が、測定ワークの形状や寸法を測定する計測装置である場合には、情報処理装置が、測定ワークの画像に基づいて、測定ワークの形状や寸法を測定する処理を実行する。
【0025】
フレーム10には、光軸調整ユニット20を支持すると共に、光軸調整ユニット20の高さ(即ち、ワークディスタンスWD)を調整する高さ調整機構13が設けられている。高さ調整機構13は、フレーム側板102の3箇所に設けられている。高さ調整機構13は、フレーム側板102に形成された貫通孔132に挿通され、カメラ取付板202(後述)のネジ穴209(後述)に螺合されるボルト131と、ボルト131に取り付けられたスプリングワッシャ133とを含む。
図3に示すように、貫通孔132は上下方向(高さ方向)に伸びる形状(例えば長方形状又は長円形状)をなしており、貫通孔132の上下方向の長さの範囲で、光軸調整ユニット20の高さを調節することができる。光軸調整ユニット20の高さを調整した後、ボルト131を締めることにより、光軸調整ユニット20をフレーム10に対して固定することができる。
【0026】
また、フレーム10には、フレーム10に対する光軸調整ユニット20の傾きを微調整するための微調整機構14が設けられている。微調整機構14は、フレーム上板103の3箇所に設けられている。微調整機構14は、フレーム上板103に形成された貫通孔142に挿通され、カメラ取付板202(後述)のネジ穴208(後述)に螺合されるボルト141と、ボルト141に取り付けられたスプリングワッシャ143とを含む。ボルト141を締めることにより、ボルト141を締めた箇所のカメラ取付板202が僅かに上昇するため、光学機器1に対するカメラの光軸の最終的な微調整を行うことができる。
【0027】
図4は、
図1に示すカメラモジュール30を例示する模式図である。カメラモジュール30は、表面に回路が形成された回路基板31と、該回路基板31に実装されたCCDやCMOS等の撮像素子32と、撮像素子32に光を入射させるレンズ33とを含む。レンズ33は、レンズ取付ホルダ34を介して回路基板31上に設置されている。また、回路基板31には、各種信号処理や演算処理を行うICチップ35と、当該カメラモジュール30を情報処理装置と接続するためのコネクタ36とが実装されている。さらに、回路基板31には、当該回路基板31を各種機器に取り付ける際に使用される取付穴37が形成されている。
【0028】
図5は、光軸調整ユニット20を示す一部断面図である。
図6は、
図5のA矢視図である。
図7は、
図5のB矢視図である。
図8は、
図7のC-C一部断面拡大図である。光軸調整ユニット20は、カメラモジュール30を光学機器1に取り付けるため、及び、カメラモジュール30の光軸を調整するために使用される。
【0029】
図5~
図8に示すように、光軸調整ユニット20は、カメラモジュール30の回路基板31が固定される補強プレート201と、補強プレート201を介してカメラモジュール30を光学機器1に取り付けるためのカメラ取付板202と、補強プレート201をカメラ取付板202に締結する締結部21とを有する。締結部21は、カメラ取付板202の少なくとも3箇所に設けられ、本実施形態においては4箇所に設けられている。
【0030】
補強プレート201は、回路基板31の裏面(回路の形成面とは反対側の面)に取り付けられ、回路基板31の強度を補強する。補強プレート201には、回路基板31の取付穴37に合わせてネジ穴が形成されており、取付穴37にボルト38を挿通してこのネジ穴に螺合することにより、回路基板31を補強プレート201に固定することができる。
【0031】
補強プレート201の材料は、補強プレート201をカメラ取付板202に取り付けた際に撓まない程度の強度を確保することができれば、特に限定されない。例えば、補強プレート201の材料として硬質プラスチック等の樹脂材料を用いる場合には、厚さを3mm以上にすることが好ましい。また、補強プレート201の材料として鉄板を用いる場合には、厚さを1mm以上にすることが好ましい。
【0032】
補強プレート201には、締結部21の調整ボルト203を螺合させるためのネジ穴204が形成されている。
【0033】
カメラ取付板202は、カメラモジュール30が固定された補強プレート201を保持した状態で光学機器1に取り付けられる部材である。カメラ取付板202は、当該カメラ取付板202の所定位置にレンズ33の設計上の光軸が一致するように補強プレート201を保持する。
【0034】
カメラ取付板202は、補強プレート201が取り付けられる面(貫通孔205が形成された第1の面)である第1の領域202aと、微調整機構14によりフレーム上板103に取り付けられる面(ネジ穴208が形成された第2の面)である第2の領域202bと、高さ調整機構13によりフレーム側板102に取り付けられる面(ネジ穴209が形成された第3の面)である第3の領域202cとを含む。このうち、第1の領域202aと第2の領域202bとは、同一の平面であっても良いし、
図5に示すように、互いに平行な平面であっても良い。
【0035】
図6~
図8において、第2の領域202b及び第3の領域202cの幅は、第1の領域202aの幅と比べて小さくなっているが、カメラ取付板202の形状はこれに限定されない。例えば、カメラ取付板202の形状は、単純な矩形状の板の複数箇所を直線状に折り曲げることにより、第1の面、第2の面、及び、第3の面の互いの境界や段差を形成したものであっても良い。要は、補強プレート201が取り付けられる面を有し、且つ、3箇所ずつ設けられた高さ調整機構13及び微調整機構14によりカメラ取付板202をフレーム10に対して取り付けることができる形状であれば良い。
【0036】
このようなカメラ取付板202は、鉄板等の金属板を折り曲げ加工又は切削加工することにより作製されている。或いは、機械的強度の高い樹脂(例えばエンジニアリング・プラスチック)を切削又は射出成形することによりカメラ取付板202を作製しても良い。
【0037】
第1の領域202aには、締結部21の調整ボルト203を挿通させる貫通孔205が形成されている。また、第1の領域202aには、光軸調整用治具(後述)にカメラ取付板202を取り付ける際に使用される2種類の貫通孔206,207が形成されている。このうち、貫通孔206は小判形状をなし、貫通孔207は円形状をなしている。貫通孔206,207は、光軸調整ユニット20が光軸調整用治具に対して所定の位置関係となるように、光軸調整用治具に対して位置決めされている。
【0038】
第2の領域202bの3箇所には、微調整機構14のボルト141が螺合されるネジ穴208が形成されている。また、第3の領域202cの3箇所には、高さ調整機構13のボルト131が螺合されるネジ穴209が形成されている。これらのネジ穴208,209は、カメラ取付板202を介してカメラモジュール30を光学機器1に取り付けた際に、光学機器1内の所定の領域がカメラの画角に収まるように、フレーム10に対して位置決めされている。
【0039】
各締結部21は、調整ボルト203と、カメラ取付板202と補強プレート201との間において該調整ボルト203を挿通させる弾性部とを有する。弾性部は、好ましくは、調整ボルト203を挿通させる複数(本実施形態においては2つ)のウェーブワッシャ211,213と、隣り合うウェーブワッシャ211,213の間に配置される平ワッシャ212とを含む。調整ボルト203は、カメラ取付板202に形成された貫通孔205、ウェーブワッシャ213、平ワッシャ212、及びウェーブワッシャ211をこの順に通り、補強プレート201のネジ穴204に螺合される。なお、調整ボルト203の頭部とカメラ取付板202との間に、平ワッシャ210を配置しても良い。
【0040】
ウェーブワッシャの数は特に限定されないが、補強プレート201とカメラ取付板202との間隔が必要以上に大きくなることを避けるため、1つの弾性部において(1つの調整ボルト203につき)2つ以上5つ以下の範囲とすることが好ましい。ウェーブワッシャを5つ配置する場合、隣り合うウェーブワッシャの間に配置される平ワッシャの数は4つとなる。
【0041】
このようにウェーブワッシャ211,213及び平ワッシャ212を配置し、調整ボルト203をトルクいっぱいまで締めることにより、ウェーブワッシャ211,213が弾性変形する。その状態から調整ボルト203を徐々に緩めることにより、補強プレート201とカメラ取付板202との間隔を調整することができる。そして、複数箇所(本実施形態においては4箇所)の締結部21において、補強プレート201とカメラ取付板202との間隔を調整することにより、カメラ取付板202を基準とする補強プレート201の傾き、言い換えると、補強プレート201に固定されたカメラモジュール30のレンズ33の光軸を調整することができる。
【0042】
なお、弾性部としては、スプリングワッシャ等を用いることもできるが、全体サイズを抑えつつ大きなトルクを得ることができるという点で、ウェーブワッシャと平ワッシャとの組み合わせを用いることが好ましい。
【0043】
次に、本実施形態に係る光軸調整ユニット20において行われる光軸調整方法について説明する。本実施形態に係る光軸調整においては、専用の光軸調整用治具が用いられる。
図9は、光軸調整ユニット20を光軸調整用治具に取り付けた状態を示す一部断面図である。
図10は、
図9のD矢視拡大図である。
【0044】
図9及び
図10に示すように、光軸調整用治具40は、光軸調整のための基準位置が設けられた治具ベース41と、治具ベース41の側方に固定され、レンズ33を治具ベース41に向けた状態で光軸調整ユニット20のカメラ取付板202を支持する支持部42とを備える。
【0045】
支持部42の上端面には、カメラ取付板202に形成された貫通孔206,207の位置に対応する開口44が形成されている。カメラ取付板202の貫通孔206,207を開口44に合わせて配置し、位置決めピン43を開口44に嵌合させることにより、光軸調整ユニット20を光軸調整用治具40に固定することができる。
【0046】
治具ベース41の中心には中心ピン45が設置されている。中心ピン45の上端面には十字マークが記されており、この十字マークの交点が、基準位置を示す。なお、基準位置は必ずしも中心ピンのような部材によって示す必要はなく、例えば、治具ベース41の表面に基準位置を示すマークを直接描くなどしても良い。
【0047】
貫通孔206,207は、光軸調整ユニット20を光軸調整用治具40に取り付けた状態において、レンズ33の設計上の光軸が、治具ベース41の基準位置(中心ピン45の十字マークの交点)と一致するように位置決めされている。なお、貫通孔206は小判形状をなしているため、開口44の位置との間で若干の誤差があったとしても吸収することができる。
【0048】
図11は、本発明の実施形態に係る光軸調整方法が実行されるシステムの構成例を示すブロック図である。光軸調整システム2は、光軸調整ユニット20及び光軸調整用治具40に加え、カメラモジュール30に接続された情報処理装置50と、表示装置54とを備える。情報処理装置50は、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の汎用の装置によって構成することができる。情報処理装置50は、外部インタフェース51と、記憶部52と、プロセッサ53とを備える。
【0049】
外部インタフェース51は、当該情報処理装置50をカメラモジュール30と接続し、カメラモジュール30との間で信号を送受信するインタフェースである。具体的には、外部インタフェース51は、カメラモジュール30から出力される画像信号を受信する。
【0050】
記憶部52は、例えばROMやRAMといった半導体メモリやハードディスク等のコンピュータ読取可能な記憶媒体を用いて構成される。記憶部52は、オペレーティングシステムプログラム及びドライバプログラム、各種機能を実行するアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行中に使用される各種パラメータ等を格納するプログラム記憶部521を有する。
【0051】
プロセッサ53は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を用いて構成され、プログラム記憶部521に記憶された各種プログラムを読み込むことにより、光軸調整システム2の各部を統括的に制御すると共に、光軸調整用の画面を表示装置54に表示させるための各種処理を実行する。具体的には、撮像制御部531は、カメラモジュール30における撮像動作の開始及び終了を制御する。表示制御部532は、カメラモジュール30から出力された画像信号に基づいて、中心ピン45の画像を表示装置54に表示させると共に、カメラの画角(撮像素子32の撮像領域)の中心位置を表示装置54に表示させる。
【0052】
表示装置54は、例えば液晶又は有機EL(エレクトロルミネッセンス)を用いて構成された表示パネル及び駆動部を含むディスプレイである。
【0053】
図12は、本発明の実施形態に係る光軸調整方法を示すフローチャートである。
まず、カメラモジュール30を補強プレート201に固定し(ステップS10)、補強プレート201をカメラ取付板202に取り付ける(ステップS11)。それにより、
図5~
図8に示す光軸調整ユニット20の状態となる。また、この際に、調整ボルト203を限界トルクまで締め付けておく。
【0054】
続いて、光軸調整ユニット20を光軸調整用治具40に取り付ける(ステップS12、
図9及び
図10参照)。即ち、カメラ取付板202を支持部42の上に、貫通孔206,207を開口44に合わせて配置し、開口44に位置決めピン43を嵌合させる。
【0055】
続いて、カメラモジュール30を情報処理装置50に接続し、基準位置としての十字マークが示された中心ピン45をカメラモジュール30に撮像させる(ステップS13)。
【0056】
図13は、カメラモジュール30により撮像された光軸調整前の画像を示す模式図である。表示装置54の画面54aには、中心ピンの像45aが写っている。また、画面54aには、カメラの画角の中心54bが示されている。
図13においては、基準位置である十字マークの像46aが、カメラの画角の中心54bからずれている。
【0057】
ユーザは、画像を見ながら、調整ボルト203を回転させることにより、カメラの光軸調整を行う(ステップS14)。詳細には、光軸調整ユニット20に設けられた複数の調整ボルト203を順次少しずつ緩めることにより、カメラ取付板202に対する補強プレート201の傾きを変化させる。
図14は、カメラモジュール30により撮像された光軸調整後の画像を示す模式図である。
図14においては、基準位置である十字マークの像46aが、カメラの画角の中心54bと一致している。これにより、光軸調整ユニット20におけるカメラの光軸調整が完了する。
【0058】
このように光軸調整された光軸調整ユニット20は、光軸調整用治具40から取り外され、光学機器1に取り付けられる。詳細には、カメラ取付板202の3つのネジ穴209に対し、フレーム側板102の側からボルト131を螺合させる。そして、光軸調整ユニット20を水平に保ちつつ、表示装置54の画面に写った画像を見ながら、測定ワーク120に対するカメラの画角が所定の範囲となるように、高さ(ワークディスタンスWD)を調整する。そして、ボルト131を締めることにより、フレーム10に対して光軸調整ユニット20を固定する。
【0059】
続いて、カメラ取付板202に形成された3つのネジ穴208に対し、フレーム上板103の側からボルト141を螺合させる。そして、表示装置54の画面に写った画像を見ながら、測定ワーク120の中心にレンズ33の光軸が一致するように、ボルト141を適宜回転させて光軸の微調整を行う。それにより、機械的な組立誤差や部品の精度誤差の集積による光軸の僅かなずれを補正することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、補強プレート201を介してカメラモジュール30をカメラ取付板202に取り付け、少なくとも3箇所に設けられた締結部21により補強プレート201とカメラ取付板202との間隔を調整することにより、カメラ取付板202に対するレンズ33の光軸を正確に調整することができる。従って、このカメラ取付板202を光学機器1に取り付けることにより、カメラモジュール30を用いた光学機器1において、光軸調整を容易且つ精度良く行うことができるようになる。それにより、汎用のカメラモジュールを用いて高精度の光学機器を実現することが可能となる。
【0061】
詳細には、本実施形態によれば、光軸調整ユニット20において既に光軸調整がなされているため、光軸調整ユニット20を光学機器1に取り付ける際には、光軸調整ユニット20の高さ方向における位置調整と光軸の微調整を行うだけで済む。従って、光学機器1における光軸の調整量を抑制することができ、取り付け工程も簡単に行うことができる。また、調整量が少ないことから、調整機構をコンパクトに構成することができ、小型の光学機器にも容易に適用することが可能となる。
【0062】
ここで、仮に、光軸調整ユニットにおいて光軸調整を行わず、光軸調整ユニットを光学機器のフレームに取り付けた後で、光学機器側においてのみ光軸調整を行おうとすると、カメラモジュールにおける光軸ずれと機械的な組み立て誤差とを光学機器において一度に調整する必要が生じるため、調整量が大きくなってしまう。それにより、光学機器全体において機械的な歪み応力が発生し、機械的な経時変化が発生してしまう。その結果、カメラと照明との相対的な位置関係が崩れ、設計通りの照度が得られず、照度ムラが発生するおそれがある。また、カメラモジュールの取り付け後に装着する外装ケースとフレームとの間においても、相対的な位置関係がずれてしまい、外装ケースの装着時に大きな応力が発生してしまう。或いは、ずれが大きすぎて、外装ケースを装着できなくなるおそれもある。この点、本実施形態においては、光軸調整ユニットにおいて光軸調整を行った後で光学機器に取り付けるので、光学機器側における調整量を最小限に抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、光軸調整ユニット20において、調整ボルト203により締結される補強プレート201とカメラ取付板202との間にウェーブワッシャ及び平ワッシャを交互に配置するので、コンパクトなサイズで大きなトルクを得ることができる。従って、光軸調整ユニット20及びこれを含む光学機器1全体のサイズを小型化することが可能となる。また、ウェーブワッシャと平ワッシャとを交互に配置することにより、一般的なスプリングワッシャを用いる場合と比較して、光軸調整後に光軸の変動がほとんど発生しない十分な締め付けトルクを得ることが可能となる。
【0064】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。例えば、実施形態に示した全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成しても良いし、上記実施形態に示した構成要素を適宜組み合わせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…光学機器、2…光軸調整システム、10…フレーム、13…高さ調整機構、14…微調整機構、20…光軸調整ユニット、21…締結部、30…カメラモジュール、31…回路基板、32…撮像素子、33…レンズ、34…レンズ取付ホルダ、35…ICチップ、36…コネクタ、37…取付穴、38…ボルト、40…光軸調整用治具、41…治具ベース、42…支持部、43…位置決めピン、44…開口、45…中心ピン、45a…中心ピンの像、46a…十字マークの像、50…情報処理装置、51…外部インタフェース、52…記憶部、53…プロセッサ、54…表示装置、54a…画面、54b…画角の中心、101…フレームベース板、102…フレーム側板、103…フレーム上板、120…測定ワーク、121…保持トレイ、122…光源、131,141…ボルト、132,142,205,206,207…貫通孔、133,143…スプリングワッシャ、201…補強プレート、202…カメラ取付板、202a…第1の領域、202b…第2の領域、202c…第3の領域、203…調整ボルト、204,208,209…ネジ穴、210,212…平ワッシャ、211,213…ウェーブワッシャ、521…プログラム記憶部、531…撮像制御部、532…表示制御部