(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】加飾フィルム用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230518BHJP
C08F 299/06 20060101ALI20230518BHJP
C09D 175/16 20060101ALI20230518BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20230518BHJP
C09D 11/102 20140101ALI20230518BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F299/06
C09D175/16
C09D4/02
C09D11/102
C08G18/67 010
(21)【出願番号】P 2018218632
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2018042412
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018121722
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 美希
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 明理
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/047565(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08F 299/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を含有する加飾フィルム用樹脂組成物であって、
(A)は、
ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオール由来の構造単位、並びに数平均分子量60~450未満のポリオール由来の構造単位を有し、かつ、
ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールの数平均分子量は450~5,000であり、
(A)は、1つ以上の(メタ)
アクリルアミド基を有
し、数平均分子量10,000~100,000の範囲である加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、1分子当たりの(メタ)アクリルアミド基の個数が1~10であることを特徴とする請求項1に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
数平均分子量60~450未満のポリオールは脂環骨格を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、
ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールから合成されてなり、
ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有する
ポリオールの含有量が
、ポリオール全体に対して20質量%以上であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、原料ポリオールとして数平均分子量60~450未満のポリオールを用い、その
含有量はポリオール全体に対して80質量%以下であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)1~100質量%を含有することを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
エチレン性不飽和基を有する化合物(B)((A)を除く)0~80質量%を含有することを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項8】
エチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、
エチレン性不飽和基として(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和基を有する化合物であることを特徴とする請求項
7に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項9】
エチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマーとメタクリルアミド系モノマーからなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項10】
更に光重合開始剤(C)0.01~10質量%を含有することを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を光及び/又は熱により硬化して得られることを特徴とする加飾シート。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を基材上に塗布、成形した後、光及び/又は熱により硬化して得られることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項13】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を基材上に塗布、光及び/又は熱により硬化した後、成形して得られることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項14】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を1質量%以上含有する加飾印刷用インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム用樹脂組成物及びそれを硬化して得られる加飾フィルム並びに加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチックは日々の生活の中に根強く存在しており、自動車や家電、通信機器を始めとする様々な分野において大量に使用されている。プラスチックは軽量、安価、大量生産が可能であり、得られる成形品も透明性、複雑な加工が可能であるなど優れた特性を有している。しかしながら、プラスチック表面は傷つきやすく、デザイン性、高級感などの質感は物足りないものであった。加飾成形はプラスチックの特性を生かしつつ、質感などの不足を補うことが可能な技術であるといえる。
【0003】
加飾技術は成形と同時に行われる「一次加飾」と、成形後に行われる「二次加飾」に大別される。一次加飾はハードコート層や印刷層を付与したベースフィルムを金型上にインサートし、その上に成形材料を射出するなどして成形品を得る方法(インモールド成形の一種)やシート状の中間品を再加熱して成形する際にベースフィルムを積層する方法(シートなどからの加飾)がある。インモールド成形では、ハードコート層や印刷層とともにベースフィルムを張り合わせ一体化する方法(In-Mold Lamination;IML)やベースフィルム上のハードコート層や印刷層のみを成形品に転写する方法(In-Mold Decoration;IMD)があり、IMLではハードコート層/ベースフィルム/印刷相/粘着剤層の順で成膜されたフィルムを成形品に貼り合せ、IMDでは剥離層を付与したベースフィルム上にハードコート層/印刷層/接着剤層の順で成膜されたフィルムを用い、加飾部のみ成形品に転写させる。二次加飾は成形品を成型後に一時取り出し、加飾する方法であり、一度立体成形した芯材に直接塗装・印刷する方法や真空蒸着、スパッタリングなどの真空成膜する方法など多数の手法が挙げられるが、中でも印刷・蒸着・着色などした多層フィルムを芯材に貼付・転写するTOM工法(Three Dimension Overlay Method)は最近注目されている手法である。
【0004】
加飾成形のハードコート層硬化工程は、成形後に熱もしくは紫外線(UV)などの活性エネルギー線にて硬化するアフターキュア手法や成形前に熱もしくはUVなどの活性エネルギー線にて硬化するプレキュア手法が挙げられる。また生産性の向上のため、硬化に時間のかかる熱硬化に代わって短時間で硬化工程が完了する活性エネルギー線硬化が多く検討されている。
【0005】
アフターキュア手法では成形後に硬化を行うため、成形に必要な伸び率を担保することが可能ではあるが、大きいパーツの加飾成形には大型のUV照射装置が必要となり、また、完全硬化するまでの各成形工程において、ゴミ付着や擦傷などによる外観悪化の懸念、貯蔵中のブロッキングやゲル化の問題があった。問題解決のために、特許文献1には、分子中に2個以上の活性メチレン基を有する化合物としてアセトアセトキシエチルメタクリレートのポリマーと、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としてグリシジルメタクリレートの重合体にアクリル酸を付けたポリマーの混合物を転写材用硬化性樹脂組成物として用いることが提案された。該樹脂組成物を基材上に塗布し、まず加熱により活性メチレン基を(メタ)アクリロイル基に付加させ、残タックのない半硬化樹脂層を得、その後樹脂層を成形品に接着させ、エネルギー線照射により保護層(ハードコート層)が形成される。この方法は二段階の反応が必要となり、生産性に乏しい。また、ポリマー同士の付加反応であるため、反応率が制御しにくく、結果は性能や品質が確保できない懸念が新たに生じた。
【0006】
アフターキュア手法の特許文献2には、加飾成形用耐久性シートの表皮層となる光硬化性ポリウレタン樹脂組成物が提案された。該ポリウレタン樹脂はモノオール、ポリオール及びポリアミンを用いてポリイソシアネートと反応させることで得られ、且つ、(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが特徴である。光硬化性ポリウレタン樹脂組成物からなる表皮層が硬化前に良好を有し、その表面にガードフィルムが配置された状態で成形部品の三次元加飾成型を行い、成形後UV照射により硬化、ガードフィルムを剥離し、耐擦傷性と耐衝撃性の表面層を有する成形品が得られる。しかし、(メタ)アクリロイルオキシ基を有しない非重合性ポリオールを含有するため、成形後における経時的なブリードアウトが回避できず、またポリアミンとイソシアネートの反応から得られるウレア基の親水性が強く、着色しやすいため、成形品の表面層として耐水性、耐光性などの耐久性が不十分であった。
【0007】
プレキュア手法では成形前に硬化が完了しているため、成形時のゴミ、埃の付着や傷による外観悪化などの問題なく成形が可能であるが、硬化後のハードコート層の柔軟性が低く、インモールドなど成形時に割れが生じやすく、また、伸び率が低く、精密な成形が困難であった。上記問題を解決するために、特許文献3には、加飾用ハードコート層の形成材料として20~85%の伸び率を有するウレタンアクリレート(10~90質量%)と多官能の(メタ)アクリレート(15~75質量%)の混合物が提案された。しかし、多官能(メタ)アクリレートの存在によりUV硬化後の樹脂が架橋され、硬化膜の伸び率は開示されてないが、ウレタンアクリレートよりは急激に低下することは公知であるため、加飾用ハードコート層としては満足できる伸び率を有すると考えにくいものである。さらに、80~160℃の通常の加飾成形温度における耐熱性や伸び率などに関して一切触れていない。
【0008】
プレキュア手法の特許文献4には、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応で得られるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含有する電子線硬化性樹脂組成物が提案された。該樹脂組成物の硬化膜が23℃における耐擦傷性、傷修復性、50%以上の破断伸度と40MPa以上の破断強度を有するが、加飾成形温度における耐熱性、強度と伸び率などに関して一切開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-206778号公報
【文献】特開2014-141087号公報
【文献】特開2010-284910号公報
【文献】特開2014-196430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アフターキュア手法、プレキュア手法などの硬化工程に限定されることなく、高温成形にて成形加工が可能であり、かつ表面硬度、耐傷性、耐日焼け止め剤性に優れた表面特性を有する加飾フィルム、加飾フィルム用ハードコート層及びそれらを形成し得る樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、 (メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を必須成分として含有することによりアフターキュア手法、プレキュア手法に限定されることなく生産過程に合わせた硬化工程を選ぶことが可能であり、硬化性、透明性に優れ、耐傷性、耐折り曲げ性、耐日焼け止め剤性などの耐久性及び複雑な構造にも追従し得る柔軟性を兼ね備える加飾フィルム、加飾フィルム用ハードコート層及びそれらを形成し得る樹脂組成物を見出し、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は
(1)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を含有する加飾フィルム用樹脂組成物、
(2)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、少なくともポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格から選ばれる1種又は2種以上の骨格を有し、かつ、1つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有することを特徴とする前記(1)に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(3)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、数平均分子量1,000~100,000の範囲であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(4)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、80~200℃の温度範囲において結晶転移温度(Tc)を有することを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(5)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、-20~100℃の温度範囲においてガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(6)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、構成成分としてポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有する部分の含有量が20質量%以上であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(7)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールから合成され、かつ、ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールの数平均分子量は450~5,000であることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(8)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、原料ポリオールとしてさらに分子量450未満の低分子量ポリオールを用い、且つ、低分子量ポリオールの配合量はポリオール全体に対して80質量%以下であることを特徴とする前記(1)~(7)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(9)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)1~100質量%を含有することを特徴とする前記(1)~(8)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(10)エチレン性不飽和基を有する化合物(B)((A)を除く)0~80質量%を含有することを特徴とする前記(1)~(9)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(11)エチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、不飽和基として(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基とマレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和基を有する化合物であることを特徴とする前記(1)~(10)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(12)エチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、アクリルアミド系モノマーとメタクリルアミド系モノマーからなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする前記(1)~(11)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(13)更に光重合開始剤(C)0.01~10質量%を含有することを特徴とする前記(1)~(12)のいずれか一項に記載の加飾フィルム用樹脂組成物、
(14)前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を光及び/又は熱により硬化して得られることを特徴とする加飾シート、
(15)前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を基材上にコーティングした後、光及び/又は熱により硬化して得られることを特徴とする加飾フィルム、
(16)前記(1)~(13)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を1質量%以上含有する加飾印刷用インキ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を必須成分として含有することにより、プレキュア手法、アフターキュア手法に限定されることなく生産過程に合わせて硬化工程を選ぶことが可能であり、硬化性、透明性に優れ、耐傷性、耐折り曲げ性、耐日焼け止め剤性に優れた表面特性を有しながらも、複雑な構造にも追従しうる柔軟性を兼ね備える加飾フィルム用樹脂組成物、当該樹脂組成物からなる加飾フィルム、加飾フィルム用光硬化性ハードコート剤、加飾フィルム用光硬化性インクが得られることを見いたし、本発明に至ったものである。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、必須成分として(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を含有し、アミド結合とウレタン結合との間の相互作用により分子内及び/又は分子間で水素結合が形成されやすく、形成される水素結合がアミド結合、ウレタン結合と共にハードセグメントとして存在するため、未硬化状態においてもタック性を有せず、アフターキュア用材料として好適に用いることができる。また、プレキュア手法において、活性エネルギー線照射などにより硬化されても、ソフトセグメントとしてポリカーボネート骨格やポリオレフィン骨格を有するため、十分な柔軟性が付与され、高伸度の延伸材料として好適である。さらに、水素結合は可逆的に結合、解離が可能であり、それによりはしご(ジッパー)型の架橋領域が形成される。このような構造とハードセグメント、ソフトセグメントとの相乗作用により、環境温度の上昇伴い、樹脂中の分子鎖や結合の配列が最適化され、その結果、室温から100℃の低、中温領域においては良好な表面硬度や耐傷性、耐日焼け止め剤性を有すると同時に、100℃以上、特に150~180℃の高温領域においては高伸度を維持することができると、本発明者らは考えている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、少なくともポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格から選ばれる1種又は2種以上の骨格を有し、かつ、1つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタンオリゴマー及び/又はポリマーである。(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタンは、分子内及び/又は分子間でアミド基とアミド基同士或いはアミド基とウレタン基との間で水素結合が形成されやすく、また、形成される水素結合は可逆的に結合、解離が可能であり、それによりはしご(ジッパー)型の架橋領域が形成される。このような構造の形成が、優れた光硬化性を有する加飾フィルム用樹脂組成物及び良好な表面硬度や耐傷性、耐日焼け止め剤性などの耐久性を有する硬化膜を得られる理由だと本発明者らは推測する。また、上記構造により高温成形における硬化膜の過度な柔軟化を抑制することができ、これにより高温時にも硬化膜が切れることなく十分に伸張することが可能となる。さらに、柔軟性、剛直性のバランスを調整することができるポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格との相互作用による相乗効果として柔軟性と強靭性を兼ね備える材料が得られ、本発明の良好な硬化性、表面硬度や耐傷性、耐日焼け止め剤性などの耐久性と高温成形性を併せ持つ加飾フィルム用樹脂組成物、該樹脂組成物からなる加飾フィルム、加飾フィルム用光硬化性ハードコート剤、加飾フィルム用光硬化性インクを取得できる。また、これらの(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0016】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)はポリオール及び水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとポリイソシアネートとの反応で得ることができる。ポリウレタン(A)のポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格は、それぞれの骨格を有するポリオールから導入されるものであり、これらの骨格を有するポリオールを1種単独、または2種以上、或いはさらに他の骨格を有するポリオールと混合して使用することができる。また、ポリウレタン(A)の合成に用いる原料として、水酸基を有する化合物、アミン基を有する化合物とカルボキシル基を有する化合物をポリオールと併用することができる。そこで、ポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールの含有量が、(A)を形成するポリオールやその他の水酸基、アミン基、カルボキシル基を有する単官能又は多官能の化合物の全体に対して20質量%以上であることが好ましい。20質量%未満であった場合、高温時の膜靭性が低下するなど、強度と柔軟性のバランスが崩れ、成形性が悪化する。また表面の耐傷性、耐日焼け止め剤性などの耐久性が低下する可能性がある。なお、ポリオレフィン骨格は共役又は非共役のオレフィン骨格あるいはそれらの水素添加骨格が含まれる。これらの骨格は1種類単独含有してもよいし、また2種類以上含有してもよい。
【0017】
ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格を有するポリオールの分子量は、数量平均で450~5,000であることが好ましく、また500以上3,500以下であることがより好ましい。これらのポリオールの数平均分子量が5,000を超えると、樹脂組成物中の(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)配合量にもよるが、得られた硬化膜の架橋密度低下による高温領域における伸び率が不十分か、硬化膜の耐日焼け止め剤性が満足できない可能性がある。また、これらのポリオールの数平均分子量が450より低くなると、樹脂組成物中の(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)配合量にもよるが、柔軟性付与効果が得られなくなる恐れがある。
【0018】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を形成するポリオールとして、前記数平均分子量450~5,000のポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格ポリオールを有するもの以外に、数平均分子量450未満のポリオール(以下低分子ポリオールと呼ぶ)を含有することができる。低分子ポリオールとは、分子内に2つ以上の水酸基を有し、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、オクタントリオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、ジヒドロキシオクタデカン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの水酸基2つ以上を有する炭素数1~18の鎖状、もしくはシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イノシトール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルネンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、アダマンタンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、スピログリコール、ジオキサングリコール、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、1,4:3,6-ジアンヒドロアンニトール、1,4:3,6-ジアンヒドロイジトール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添テルペンジフェノール及びこれらのEO、PO、カプロラクトン変性物などの脂環状骨格を有するポリオールなどが挙げられる。中でも脂環骨格を有するポリオールを使用することがより好ましい。これらの低分子ポリオールは1種又は2種以上を含有することも可能である。
【0019】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物は低分子ポリオールを併用することにより、得られる加飾フィルムの耐久性と柔軟性のバランス、即ち表面硬度や耐傷性、耐日焼け止め剤性と高温成形性(高温伸度)のバランスが制御しやすくなる。そのため、低分子ポリオールの数平均分子量は60~450未満であることが好ましい。
【0020】
低分子ポリオールの含有量は(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)を形成するポリオールの全体に対して80質量%以下であることが好ましい。その含有量が80質量%を超える場合、加飾フィルムの柔軟性が十分に得られない可能性がある。
【0021】
ポリイソシアネートとしては、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が挙げられ、具体的にはトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソンアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプ等の多量体が挙げられる。
【0022】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)-N-アルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミド、N-ジヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、安全性が高く(皮膚刺激性指標のPIIは0)、工業品として調達が容易な面からヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、1つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有するものである。(メタ)アクリルアミド基はメタクリルアミド基とアクリルアミド基であり、1分子当たり、これらの官能基の含有個数(官能基数)が1~10であることが好ましく、また2~6であることがより好ましい。官能基数が1未満であれば、非重合性化合物の存在による光硬化性、硬化膜の表面硬度や強度が低下する問題があり、一方、官能基数が10を超えると、硬化膜の柔軟性低減に伴い耐傷性や成形性が低下する。
【0024】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)の分子量は、数平均で1,000~100,000の範囲であることが好ましく、また3,000~50,000の範囲であることがより好ましく、3,500~30,000の範囲であることが最も好ましい。分子量が1,000未満であれば、得られる硬化膜の靭性が不十分となり、割れやすい。一方、分子量が100,000を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗布性が十分に満足できない問題や、得られる硬化膜の架橋密度が低く、高温成形時に膜が柔らかすぎて、成形困難の問題がある。
【0025】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、結晶転移温度(Tc)80~200℃を有することが好ましい。ポリウレタン(A)はウレタン結合、アミド結合、水素結合などのハードセグメント(HS)とポリカーボネート骨格やポリオレフィン骨格のポリオール由来のソフトセグメント(SS)を有し、Tcがこの範囲内であれば、HSとSSのセグメント大きさ、分布と結晶性、水素結合密度、ミクロ相構造などによって、結晶性を示す部分と非晶性を示す部分を同時に形成されることが可能である。ポリウレタン(A)のTcがこの範囲内であれば、低温領域(室温)から高温領域まで、広範な温度範囲において、結晶部分に起因する高硬度、耐熱性、耐摩耗性及び耐日焼け止め剤性を示すと同時に、非晶性部分に起因する柔軟性や高温領域における高い伸度を示すことができ、さらに結晶部と非晶部の相互作用によりプレキュアやアフターキュアの形成加工の方法によらず、摺動性が良好で、強靭性とゴム弾性を合わせ持つ加飾フィルムを取得することができる。
【0026】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は、-20~100℃の温度範囲においてガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。Tgが-20℃未満であれば、高温成型時に硬化膜が柔らかくなりすぎて成型困難であり、一方、100℃を超える場合、硬化膜が硬くなりすぎて成型時に割れる問題がある。また、加熱成型時に硬化膜の凹凸への追随性と耐日焼け止め剤性を両立できる観点から、Tgが0~80℃の範囲であることがより好ましく、0~60℃の範囲であることが最も好ましい。
【0027】
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)のTcとTgの測定方法は特に限定することではなく、Differential scanning calorimetry(DSC)、Thermal Mechanical Analysis(TMA)やDynamic Mechanical Analysis(DMA)などの熱分析により測定可能である。また、1種又は2種以上の装置により測定することができる。ポリウレタン(A)が特有の温度範囲内に結晶化転移及び/又はガラス転移を有することにより、本発明の加飾フィルムが広範な温度領域において好適に成形、加工することができると本発明者らは推測している。さらに、各種要求物性を全て満足できる成形品を取得する観点から、TcとTgの温度差が50~150℃であることが好ましい。
【0028】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物中の(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は1質量%以上を含有することが好ましい。1%未満であれば、ポリウレタン(A)の特有な強靭性、耐久性を十分に付与できず、高温成形時に凹凸の追従が困難となる恐れがあって、好ましくない。また、(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)は分子量や官能基数によって、加飾フィルム用樹脂組成物としてそのまま(100%)用いることができる。
【0029】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)と併用する他成分として、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)を配合することができる。本発明に用いられるエチレン性不飽和基を有する化合物(B)((A)を除く)は、単官能不飽和化合物(b1)と2官能以上の不飽和化合物(多官能不飽和化合物)(b2)から構成される。(A)の分子量、含有する(メタ)アクリルアミド基の数により、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)として(b1)と(b2)を併用しても良いが、(b1)、(b2)のそれぞれ単独を(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)に添加して用いることも可能である。また、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)の含有量は、加飾フィルム用樹脂組成物(D)全体に対して0~80質量%であることが好ましい。(B)の含有量がこの範囲内であれば、(A)との配合比調整によって、表面硬度と柔軟性、強靭性、耐日焼け止め剤性のバランスよい硬化膜が得られる。
【0030】
前記単官能性不飽和化合物(b1)としては、分子内にエチレン性不飽和基1つを有するモノマーやオリゴマーであれば、特に限定することはない。また、エチレン性不飽和基はラジカル重合性を有すれば特に限定されず、具体的には(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基等が挙げられる。(b1)の含有量は、(B)全体に対して0~50質量%であることが好ましい。(b1)の含有量が(B)全体に対して50質量%を超えると、得られる加飾フィルムの強度や靭性が足りないため、加工時に割れやすく、又は高温成形し難く、さらに耐薬品性、耐傷性などの耐久性が十分に満足できない可能性がある。
【0031】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、(メタ)アクリレート基を含む化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のヒドロキシアルキル基を導入したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸とヒドロキシアルキルカルボン酸類からなる(メタ)アクリル酸エチルカルボン酸、(メタ)アクリル酸エチルコハク酸、(メタ)アクリル酸エチルフタル酸、(メタ)アクリル酸エチルヘキサヒドロフタル酸等の(メタ)アクリル酸アルキルカルボン酸類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のアルキルスルホン酸基を導入した(メタ)アクリル酸アルキルスルホン酸類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のアルキルリン酸基を導入した(メタ)アクリル酸アルキルリン酸類、炭素数が1~18のアルキル基と炭素数1~4のアルキレングリコール基からなる官能基を導入したアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類や、フェノキシ基と炭素数1~4のアルキレングリコール基からなる官能基を導入したフェノキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートや、炭素数が1~6のアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノ(メタ)アクリレート類や、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN-アルキルアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類や、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN,N-ジアルキルアミノアルキル基を導入したN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類や、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の環状構造を導入した(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を導入した(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0032】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、(メタ)アクリルアミド基を含む化合物としては、(メタ)アクリルアミド、モノ又はジ置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクロイルモルホリン等が挙げられ、また、モノ又はジ置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、炭素数1から18の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基を導入したN-ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ヒロドキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル-N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基および炭素数1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-ヒロドキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルキル-N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミドや、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基を導入したN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基、炭素数が1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルキルスルホン酸基を導入したN-スルホアルキルアクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN-アルキルアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN,N-ジアルキルアミノアルキル基を導入したN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0033】
また、単官能性不飽和化合物(b1)が(メタ)アクリルアミド基を含む化合物として、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、メトキシブチル(メタ)アクリルアミドが自爪やプラスチック基材に対する密着性がよいため、より好ましい。
【0034】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、ビニル基を含む化合物としては、炭素数が1~22のカルボン酸を導入したカルボン酸ビニルエステル、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキルビニルエーテル、ビニルクロライド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリン、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルアミド、マレイン酸ジアルキルアミド、マレイン酸アルキルイミド、フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルアミド、フマル酸ジアルキルアミド、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルアミド、イタコン酸ジアルキルアミド、イタコン酸アルキルイミド、ビニルカルボン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸等が挙げられる。
【0035】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、アリル基を含む化合物としては、炭素数が1~22のカルボン酸を導入したカルボン酸アリルエステル、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキルアリルエーテル類、フェニルアリルエーテル、アルキルフェニルアリルエーテル、アリルアミン、分岐、環状のアルキル基を導入したモノまたはジアルキルアリルアミン等が挙げられる。
【0036】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、マレイミド基を含む化合物としては、N-ヒドロキシメチルマレイミド、N-ヒドロキシエチルマレイミド、N-ヒドロキシプロピルマレイミド、N-ヒドロキシイソプロピルマレイミド、N-ヒドロキシブチルマレイミド、N-ヒドロキシイソブチルマレイミド、N-ヒドロキシペンチルマレイミド、N-ヒドロキシヘキシルマレイミド、N-ヒドロキシシクロヘキシルマレイミド、N-エチルマレイミド、マレイミド基を有するアルコキシシラン化合物、マレイミド基を有するカルボン酸化合物等が挙げられる。
【0037】
前記多官能性不飽和化合物(b2)としては、分子内にエチレン性不飽和基2つ以上を有するモノマーやオリゴマーであれば、特に限定することはない。また、エチレン性不飽和基はラジカル重合性を有すれば特に限定されず、具体的には(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基等が挙げられる。また、分子内にこれらのエチレン性不飽和基は、同一の官能基2つ以上を有するものでもよいし、異なる官能基を任意に選んだ2種以上を組み合わせたものでもよい。(b2)の含有量は、(B)全体に対して50~100質量%であることが好ましい。(b2)の含有量が(B)全体に対して50質量%以上であれば、得られる加飾フィルムの耐傷性、耐日焼け止め剤性などの耐久性や、高温時の膜強度が維持できる。
【0038】
多官能性不飽和化合物(b2)のうち、例えば、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(トリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(炭素数1~4)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3(又は1,4)-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アクリレートエステル(ジオキサングリコールジアクリレート)、アルコキシ化(シクロ)ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリウレタンジ(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、N-エチルマレイミド(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性不飽和化合物(b2)は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0039】
本発明で用いる光重合開始剤(C)としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、αアミノケトン系、キサントン系、アントラキノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、高分子光重合開始剤系等の通常使用されるものから適宜選択すればよい。例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、α-ベンゾイルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、αアミノケトン類としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニル)メチル-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、アシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、高分子光重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン-1-オンのポリマーなどが挙げられる。これらの光重合開始剤(C)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
光重合開始剤(C)の含有量は、加飾フィルム用樹脂組成物(D)全体に対して0.01~10質量%が好ましい。ポリウレタン(A)及び/又はエチレン性不飽和基を有する化合物(B)が不飽和基として、光照射により活性ラジカルを生じるマレイミド基などを有する場合、加飾フィルム用樹脂組成物(D)に光重合開始剤(C)を含有させなくてもよい。また、マレイミド基などの活性ラジカルを発生できる不飽和基を有しない場合、(C)が0.01質量%以下であれば、十分な硬化性が得られず、得られる硬化膜の強度や耐久性が十分に満足できないため、好ましくない。一方、10質量%を超えると、高温成形性の低下や硬化膜の黄変等のトラブルが発生しやすい。0.1~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%が最も好ましい。
【0041】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。具体的には、添加剤としては、熱重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、染料などの着色剤、香料、消泡剤、充填剤、シランカップロング剤、表面張力調整剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、有機フィラー、無機フィラー、シリカ粒子等を添加することができる。これらその他成分の添加量は、本発明による加飾フィルム用樹脂組成物(D)が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、(D)全体に対して5質量%以下の範囲が好ましい。
【0042】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物に水や有機溶媒を含有する場合、前記各種基材上に塗布し、溶媒などを蒸発させてから光硬化を行うことが好ましい。また、基材に直接塗工する場合、バーコーター法、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の通常の塗膜形成法を用いることが可能である。硬化膜の厚みは0.1μm~250μmの範囲が好ましく、0.5μm~100μmがより好ましく、1μm~50μmが特に好ましい。膜厚が上記範囲であれば、高温時の伸度、膜強度が良好であり、硬化物の表面硬度や耐傷性、耐日焼け止め剤性などの耐久性に関しても良好である。
【0043】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物(D)は活性エネルギー線照射により十分に硬化することができる。活性エネルギー線としては、可視光、電子線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。中でも活性エネルギー線の発生装置、硬化速度及び安全性のバランスから紫外線を使用することが好ましい。また、紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等が挙げられる。
【0044】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物の光硬化に必要な照射エネルギーは、用途や光源によって多少異なるが、照射エネルギー(積算光量)は5~10,000mJ/cm2の範囲が好ましく、10~5,000mJ/cm2がより好ましい。この範囲であれば、樹脂組成物が十分に硬化できる。
【0045】
本発明の加飾フィルム用樹脂組成物は、例えばベースフィルムに積層してコーティング膜やインキとしても使用してもよく、樹脂組成物からなる単独の加飾フィルムを成形することもできる。加飾成形に用いられるのであれば、その成形方法は特に制限されず、例えば、一次加飾のインモールド成形、シート成形、二次加飾のフィルム貼合・転写、印刷、真空成膜等加飾技術を使用可能である。また、光硬化において、成形前に硬化するプレキュア手法、成形後に硬化するアフターキュア手法、成形前の段階では半硬化状態とし、成形された後に完全硬化させる半硬化手法等、生産過程に合わせて硬化工程を選ぶことが可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0047】
実施例及び比較例に用いられる単官能性不飽和化合物(b1)は、以下のとおりである。
b1-1:イソボルニルアクリレート(IBOA)
b1-2:ダイアセトンアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「Kohshylmer」DAAM)
b1-3:4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(KJケミカルズ株式会社の登録商標「Kohshylmer」TBCHA)
b1-4:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社の登録商標「ACMO」)
b1-5:N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「HEAA」)
b1-6:ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「DMAA」)
b1-7:ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「DEAA」)
b1-8:イソプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「NIPAM」)
b1-9:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「DMAPAA」)
【0048】
実施例及び比較例に用いられる多官能性不飽和化合物(b2)は、以下のとおりである。
b2-1:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、3官能)
b2-2:ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(PETA、3~4官能)
b2-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、6官能)
b2-4:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、2官能)
b2-5:GENOMER3364 (3官能、ポリエーテルアクリレート、Rahn AG社製)
b2-6:UV-3700B(2官能、ポリエーテル骨格を有するポリウレタンアクリレートオリゴマー、日本合成化学社製)
【0049】
実施例及び比較例に用いられる光重合開始剤(C)は、以下のとおりである。
C-1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM ResinsB.V.製)
C-2:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173、IGM ResinsB.V.製)
C-3:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO、IGM ResinsB.V.製)
【0050】
実施例に用いられる(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A-1~A-8)、比較例に用いられる(メタ)アクリレート基を有するポリウレタン(F-1~F-3)の分子量、含有する不飽和基の構造と個数、ポリウレタンを構成するポリオールの構造、含有量などを表1に示す。なお、F-3は前記特許文献4(特開2014-196430号公報)の実施例4に準じて合成したものである。
【0051】
【0052】
実施例1 アフターキュアタイプの加飾コート剤用樹脂組成物調製及び評価
(A)として(メタ)アクリルアミド基を有する水添ポリブタジエン骨格のポリウレタン(A-1)79.0質量部、(b2)としてGENOMER3364(b2-5)20.0質量部、(C)として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(C-2)1.0質量部及び溶剤として酢酸エチル100質量部をそれぞれ容器に加え、40℃で1時間攪拌し、均一な液体である加飾コート剤用樹脂組成物(D-1)を得た。
【0053】
得られた加飾コート剤用樹脂組成物D-1を厚さ180μmのPCフィルム(「パンライトPC-2151」帝人社製)上にバーコーター(RDS 6)を用い、乾燥後膜厚が5μmとなるように塗布した後、80℃にて3分間乾燥し、未硬化の塗膜を得た。未硬化膜の伸び率について下記の通り評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
(1)伸び率
得られた未硬化塗膜(膜厚5μm)を長さ50mm、幅15mmにカットし、テンシロン万能試験機RTA-100(オリエンテック社製)にチャック間距離25mmにて固定し、温度150℃に設定したオーブン中にて250mm/minの速度にて、外観を目視観察しながら一方向に引張り、塗工層に割れ又は白化を生じたときの試験片の長さ(mm)を測定した。伸び率は下記方法により算出し、評価を行った。
伸び率(%)=(試験後試料片長さ/25)×100%
◎:伸び率が200%以上
〇:伸び率が150以上200%未満
△:伸び率が110%以上150%未満
×:伸び率が110%未満
【0055】
得られた加飾コート剤用樹脂組成物D-1を厚さ100μmのPETフィルム(「ソフトシャインA4100」東洋紡社製)上にバーコーター(RDS 12)を用い、乾燥後膜厚が10μmとなるように塗布した後、80℃にて3分間乾燥し、未硬化の塗膜を得た。それを長さ100mm、幅30mmにカットし、テンシロン万能試験機RTA-100(オリエンテック社製)にチャック間距離50mmにて固定し、温度100℃に設定したオーブン中にて250mm/minの速度にて、試験片の長さが75mm(伸び率150%)になるまで一方向に引っ張った。25℃まで放冷後、紫外線照射(高圧水銀ランプ 300mW/cm2、1,000mJ/cm2)して塗膜を硬化させ、ハードコート層を有するPETフィルムを得た。得られた積層体を30mm角に切り取り、ハードコート層の外観、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性と耐日焼け止め剤性を下記方法により評価を行った。結果を表2に示す。
【0056】
(2)外観
◎:まったくクラックや白化が見られず、表面にしわがない。
○:クラック、白化またはしわのいずれかが僅かに見られる。
△:クラック、白化またはしわが見られるが、ハードコート層が残っていた。
×:割れ、白化、しわが多数に発生し、ハードコート層として残っていない。
【0057】
(3)鉛筆硬度
試験片をJIS K 5600に準拠して、鉛筆を45°の角度で10mm程度引っ掻いた後、硬化膜表面に傷の付かない最も硬い鉛筆を鉛筆硬度とした。
◎:鉛筆硬度が2H以上
○:鉛筆硬度がHB~H
△:鉛筆硬度が3B~B
×:鉛筆硬度が4B以下
【0058】
(4)耐傷性
試験片を#0000のスチールウールを加重200gにて10往復し、硬化膜表面に目視にて観察した。
◎:膜の剥離や傷の発生は認められない。
○:膜の一部にわずかな細い傷が認められる。
△:膜全体に筋上の傷が認められる。
×:膜の剥離が生じる。
(5)耐折り曲げ性
試験片を塗膜面が外側になるように180°に折り曲げ、1kgの重しを載せて10分間放置し、硬化膜表面の割れの有無を目視にて観察した。
◎:まったく割れが見られなかった。
○:折り曲げ部が一部白化した。
△:折り曲げ部において一部割れが見られた。
×:折り曲げ部において割れが見られた。
(6)耐日焼け止め剤性
試験片の表面に日焼け止め剤であるUltraSheer DRY-TOUCH SUNSCREEN SPF100+(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を直径1cm程度となるように塗布し、80℃にて6時間加熱し、放冷後、中性洗剤にて洗い流し、表面の状態を観察した。
◎:日焼け止め剤の跡がまったく見られなかった。
○:日焼け止め剤を塗布した部分に透明な跡がわずかに見られる。
△:日焼け止め剤を塗布した部分に白く跡が残り、表面が膨れている。
×:日焼け止め剤を塗布した部分がべたつき、表面が剥がれている。
【0059】
実施例2~10および比較例1~3
表2に記載の組成に変更した以外は実施例1と同様にアフターキュアタイプの加飾コート剤用樹脂組成物を調製し、試験片を作製、評価した結果を表2に示す。
【0060】
【0061】
実施例11 プレキュアタイプの加飾コート剤用樹脂組成物調製及び評価
(A)として(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A-5)78.0質量部、(b1)としてアクリロイルモルフォリン(b1-4)5.0質量部、(b2)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(b2-3)14.0質量部、(C)として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(C-1)3.0質量部及び溶剤として酢酸エチル100質量部をそれぞれ容器に加え、40℃で1時間攪拌し、均一な液体である加飾コート剤用樹脂組成物(D-11)を得た。
【0062】
得られた加飾コート剤用樹脂組成物D-11を厚さ180μmのPCフィルム(「パンライトPC-2151」帝人社製)上にバーコーター(RDS 6)を用い、乾燥後膜厚が5μmとなるように塗布した後、80℃にて3分間乾燥し、未硬化の塗膜を得た後、紫外線照射(高圧水銀ランプ 300mW/cm2、1,000mJ/cm2)して塗膜を硬化させ、ハードコート層を有する積層体を得た。得られた積層体を切り取り、ハードコート層の耐表面タック性、伸び率、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性と耐日焼け止め剤性を下記方法により評価した。結果を表3に示す。
【0063】
(1)耐表面タック性
得られた積層体を用いて、膜の表面を指で触り、べたつき具合を評価した。
◎:べたつきが全くない。
〇:若干のべたつきがあるが、表面に指の跡が残らない。
△:べたつきがあり、表面に指の跡が残る。
×:べたつきがひどく、表面に指が貼りつく。
【0064】
(2)伸び率
得られた積層体を長さ50mm、幅15mmにカットし、テンシロン万能試験機RTA-100(オリエンテック社製)にチャック間距離25mmにて固定し、温度150℃に設定したオーブン中にて250mm/minの速度にて、外観を目視観察しながら一方向に引張り、塗工層に割れ又は白化を生じたときの試験片の長さ(mm)を測定した。伸び率は下記方法により算出し、評価を行った。
伸び率(%)=(試験後試料片長さ/25)×100%
◎:伸び率が200%以上
〇:伸び率が150以上200%未満
△:伸び率が110%以上150%未満
×:伸び率が110%未満
【0065】
(3)鉛筆硬度
前述の鉛筆硬度の評価方法と同様に評価を行った。
(4)耐傷性
前述の耐傷性の評価方法と同様に評価を行った。
【0066】
(5)耐折り曲げ性
前述の耐折り曲げ性の評価方法と同様に評価を行った。
(6)耐日焼け止め剤性
前述の耐日焼け止め剤性の評価方法と同様に評価を行った。
【0067】
実施例12~15および比較例4~6
表3に記載の組成に変更した以外は実施例11と同様にプレキュアタイプの加飾コート剤用樹脂組成物を調製し、積層体を作製、評価した。結果を表3に示す。
【0068】
【0069】
実施例16 加飾シート用樹脂組成物調製及び評価
(A)として(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A-6)96.0質量部、(C)として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(C-1)2.0質量部、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(C-2)2.0質量部及び溶剤として酢酸エチル100質量部をそれぞれ容器に加え、40℃で1時間攪拌し、均一な加飾シート用樹脂組成物(D-16)を得た。
【0070】
得られた加飾シート用樹脂組成物D-16を離型フィルム上に固定した厚さ50μm、内部が40mm×60mmのスペーサーに流し込み、溶剤を完全に除去(80℃、5分)し、紫外線照射(高圧水銀ランプ 300mW/cm2、1,000mJ/cm2)により硬化させた後、離型フィルムを剥離し、加飾シートを得た。得られた加飾シートを切り取り、耐表面タック性、伸び率、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性と耐日焼け止め剤性を下記方法により評価した。その結果を表4に示す。
【0071】
(1)耐表面タック性
前述の耐表面タック性の評価方法と同様に評価を行った。
【0072】
(2)伸び率
前述の伸び率の評価方法と同様に評価を行った。
【0073】
(3)鉛筆硬度
前述の鉛筆硬度の評価方法と同様に評価を行った。
(4)耐傷性
前述の耐傷性の評価方法と同様に評価を行った。
【0074】
(5)耐折り曲げ性
前述の耐折り曲げ性の評価方法と同様に評価を行った。
(6)耐日焼け止め剤性
前述の耐日焼け止め剤性の評価方法と同様に評価を行った。
【0075】
実施例17~18および比較例7
表4に記載の組成に変更した以外は実施例16と同様にプレキュアタイプの加飾シート用樹脂組成物を調製し、加飾シートを作製、評価した。結果を表4に示す。
【0076】
【0077】
実施例19 加飾印刷用インキの調製
(A)として(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A-2)8.0質量部、(b1)としてジエチルアクリルアミド(b1-7)26.0質量部、(b2)として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(b2-4)31.0質量部、(C)として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(C-3)5.0質量部及び顔料分散体(NX-051ブルー 大日精化工業株式会社製)30.0質量部及び溶剤として酢酸エチル100質量部をそれぞれ容器に加え、40℃で1時間攪拌することにより、均一な実施例19の加飾印刷用インキ(D-19)を得た。
【0078】
加飾印刷層の作製
得られた加飾印刷用インキD-19を、光硬化性樹脂組成物をPETフィルム上にバーコーター(RDS 6)にて乾燥膜厚が5μmとなるように塗布した後、紫外線照射(365nmLEDランプ 100mW/cm2、1,000mJ/cm2)することで加飾印刷層を得た。得られた加飾印刷層を切り取り、耐表面タック性、伸び率、鉛筆硬度、耐傷性、耐折り曲げ性と耐日焼け止め剤性を下記方法により評価した。結果を表5に示す。
【0079】
(1) 耐表面タック性
前述の耐表面タック性の評価方法と同様に評価を行った。
【0080】
(2) 伸び率
前述の伸び率の評価方法と同様に評価を行った。
【0081】
(3)鉛筆硬度
前述の鉛筆硬度の評価方法と同様に評価を行った。
(4)耐傷性
前述の耐傷性の評価方法と同様に評価を行った。
【0082】
(5)耐折り曲げ性
前述の耐折り曲げ性の評価方法と同様に評価を行った。
(6)耐日焼け止め剤性
前述の耐日焼け止め剤性の評価方法と同様に評価を行った。
【0083】
実施例20~22および比較例8、9
表5に記載の組成に変更した以外は実施例19と同様に加飾印刷用インキを調製し、加飾印刷層を作製、評価した。結果を表5に示す。
【0084】
【0085】
実施例と比較例の結果に示されたとおり、本発明はプレキュア手法、アフターキュア手法に限定されることなく生産過程に合わせて硬化工程を選ぶことが可能であり、高温成形時の硬化性に優れた加飾フィルム用樹脂組成物、またそれにより耐傷性、耐折り曲げ性、耐日焼け止め剤性などの耐久性と複雑な構造にも追従しうる柔軟性を兼ね備える加飾コート剤用樹脂組成物を提案した。さらに、本発明の樹脂組成物は加飾フィルムや加飾印刷層への展開も可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明してきたように、本発明の加飾コート剤用樹脂組成物はプレキュア手法、アフターキュア手法に限定されることなく加飾成形が可能である。さらに、本発明により得られるフィルムは、表面硬度や耐傷性、耐折り曲げ性、耐日焼け止め剤性などの耐久性と複雑な構造にも追従しうる柔軟性を兼ね備えた加飾フィルムとして、好適に用いることができる。