(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20230518BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230518BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230518BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230518BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20230518BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q5/06
A61Q5/04
A61Q5/00
(21)【出願番号】P 2019027223
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】303028376
【氏名又は名称】株式会社 リトル・サイエンティスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】柴橋 知明
(72)【発明者】
【氏名】能勢 愛香
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭稔
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124983(JP,A)
【文献】特開2002-167437(JP,A)
【文献】特表2008-533218(JP,A)
【文献】特開平02-243614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を構成するアミノ酸
のSH基の一部又は全部に、アミジノシステインを付加させたタンパク質を含有する、化粧料。
【請求項2】
前記タンパク質がケラチンである、請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記化粧料が、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、整髪剤、パーマネントウェーブ剤、カーリング剤、ヘアーカラー剤、又はこれらの剤を使用する前若しくは後処理剤である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料に関し、更に詳しくは、適用部位への付着性に優れ、適用部位の機能・特性を改善・保護又は補修することができる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は、単に外観を美しく整えるだけでなく、適用部位を保護するため、あるいは適用部位における機能・特性を改善又は補修するために用いられることがある。このような化粧料に含まれる成分の一つとして、タンパク質が従来から知られている。タンパク質は髪や皮膚になじみやすく、皮膚及び毛髪の保湿、感触改良、並びに肌荒れ防止に有効であることが知られている。
【0003】
例えば、毛髪及び皮膚を構成するタンパク質として知られているケラチンは、皮膚及び毛髪の構造を維持するために重要である。ケラチンは細く長い髪に強度、ハリ・コシ、及びしなやかさを与える。また、ケラチンは、乾燥及び様々な刺激から身体を守る皮膚にバリア機能を与える。コラーゲンは水分保持力が高く、髪及び皮膚の潤いを与え、それを維持することで生体機能及び代謝等の恒常性を与える。シルクタンパク質は、疎水性と親水性のアミノをバランスよく含み、髪及び皮膚の表面を被覆して滑り性を改善することにより、髪に指通りの良い質感、皮膚になめらかな質感を与えることが知られている。
【0004】
タンパク質は、その由来及び構成するアミノ酸の組成によって様々な物性を示す。ケラチン及びシルクのように、水に不溶なタンパク質も多くある。化粧品で用いられるタンパク質の中でも特に、ケラチンを水に溶解させることは難しい。この原因として、ケラチンを構成するアミノ酸組成にはシステインが多く、このシステインが分子間及び分子内でジスルフィド結合による架橋を形成していることが挙げられる。
【0005】
従来、ケラチン等の水に不溶なタンパク質を化粧料に用いる場合には、加水分解又はタンパク質を変性させることにより、水へ可溶化させている。ケラチンのようにジスルフィド結合を多くもつタンパク質は通常、ジスルフィド結合を還元してチオール基(-SH)又はその誘導基とすることにより、ジスルフィド結合を開裂して可溶化することが行われている。例えば、特許文献1には、-SS-(CH2)nCOO-を側鎖基として備えるペプチドが配合されたヘアケア剤が記載されている。特許文献2には、水に不溶なタンパク質のジスルフィド結合をチオール基に還元し、その一部又は全部をカルボキシメチルジルスフィド基(-SSCH2COOH)とすることにより得られる可溶化タンパク質が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-285401号公報
【文献】特開平7-126296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、化粧料の成分は、適用部位(例えば、皮膚及び毛髪)における付着性に優れることが求められる。一方、特許文献2記載の可溶化タンパク質では、-COOHを側鎖に有する。このような可溶化タンパク質は、水溶性が向上する反面、毛髪には付着しにくいという問題がある。
【0008】
タンパク質の水溶性を向上させる方法の一つとして、加水分解によりタンパク質を低分子量化する方法も利用されている。しかし、この方法により得られた低分子量のタンパク質は、髪及び皮膚の被覆性が弱く、洗浄等で容易に洗い流されてしまう問題がある。
【0009】
本発明は、適用部位への付着性に優れ、適用部位の機能・特性を改善・保護又は補修することができる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の化粧料(以下、「本化粧料」という。)は、タンパク質を構成するアミノ酸のNH2基、OH基、及びSH基の一部又は全部に、アミジノシステインを付加させたタンパク質(以下、「付加タンパク質」という。)を含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧料は付加タンパク質を含み、皮膚及び毛髪等の適用部位への付着性に優れていることから、適用部位の保護若しくは補修又は適用部位における機能若しくは特性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記タンパク質の種類、由来及び構造に特に限定はない。化粧料へ配合するために、前記タンパク質として、水に可溶又は可溶化させたタンパク質が好ましい。前記タンパク質として具体的には、例えば、ケラチン、コラーゲン、シルクタンパク質、及び大豆タンパク質が挙げられる。
【0013】
前記タンパク質として、精製・単離された該タンパク質を用いてもよく、あるいは該タンパク質を含む天然成分を用いてもよい。該天然成分として、例えば、ケラチンを含むヒト及び鳥獣の毛(人毛、羊毛、羽毛)、角、及び爪、コラーゲンを含む動物や魚類の鱗、皮、骨及び軟骨、シルクタンパク質を含む蚕の繭、並びに大豆タンパク質を含むダイズの種子が挙げられる。ヒト及び鳥獣の毛は、加水分解又はタンパク質変性により水に可溶化させた場合でも、タンパク質を構成するアミノ酸のうち疎水性アミノ酸の割合が多い。そのため、ヒト及び鳥獣の毛由来のケラチンは、他のタンパク質より髪や皮膚への付着性に優れるので好ましく、羊毛又は鳥の羽毛若しくは羽由来のケラチンがより好ましい。
【0014】
アミジノシステインの構造を式(1)に示す。アミジノシステインは通常、多くの化粧料のpH領域においてカチオン化される強い塩基性のアミジノ基と、幅広いpH領域で水溶性となる電解質に寄与するカルボキシル基と、を有する。
【0015】
【0016】
前記付加タンパク質では、前記タンパク質を構成するアミノ酸のNH2基、OH基、及びSH基の一部又は全部に、アミジノシステインが付加されている。前記付加タンパク質は、強いカチオン化能を有するアミジノ基を分子内にもつアミジノシステインが付加することにより、水溶性とカチオン性が高く、皮膚及び毛髪等への付着性に優れる。前記付加の程度には特に限定はない。アミジノシステインは、前記タンパク質分子内に1分子、あるいは2分子以上付加されていてもよい。
【0017】
前記タンパク質へのアミジノシステインの付加の具体的態様及び方法には特に限定はない。アミジノシステインは通常、前記タンパク質中のNH2基、OH基、及びSH基と反応し、アミド結合、エステル結合、及びチオエステル結合を形成することにより、前記タンパク質に付加される。また、前記タンパク質のSH基とアミジノシステインのSH基とのジスルフィド結合を形成することにより、アミジノシステインを前記タンパク質に付加してもよい。前記ジスルフィド結合の形成は、前記タンパク質中のシスチン結合(分子間又は分子内のシステイン同士のジスルフィド結合)を還元した後に生成するSH基とアミジノシステインとを反応させることにより行ってもよい。
【0018】
前記タンパク質中のシスチン結合の還元には通常、還元剤が用いられる。該還元剤は、シスチン結合を還元することができる限り、その種類に特に限定はない。該還元剤として、公知の還元剤、例えば、チオグリコール酸、システイン、システアミン、メルカプトエタノール、チオ乳酸、チオ尿素若しくはその塩等のチオール化合物、又は亜硫酸、ピロ亜硫酸若しくはその塩等を用いることができる。
【0019】
アミジノシステインの量その他反応条件によっては、前記タンパク質中のジスルフィド結合の一部が、アミジノシステインのチオール基により直接変換され、ジスルフィド結合の一方に付加する場合がある(式(2)参照)。前記「付加」には、このような付加も含まれる。下記式(2)中、「Cys」は、前記タンパク質に含まれるシステイン残基を、「R-SH」はアミジノシステインを意味する。
【0020】
Cys-S-S-Cys + R-SH
→ Cys-S-S-R + Cys-SH (2)
【0021】
前記タンパク質及び前記付加タンパク質は、必要に応じて他の処理を行ってもよい。例えば、分子量及び分子サイズを低下させるために、前記タンパク質及び/又は前記付加タンパク質について、酵素、酸、又はアルカリにより加水分解を行ってもよい。また、前記タンパク質として、水可溶性を高めるために、従来公知の加水分解及びタンパク質変性等による可溶化を行ってもよい。更に、前記付加タンパク質を得た後、精製、ろ過、遠心分離等を行うことにより、他の成分又は不溶分を除去してもよい。
【0022】
本化粧料中、前記付加タンパク質の含有量は、有効量である限り特に限定はない。前記付加タンパク質の含有量は、通常、0.01~10質量%である。
【0023】
本化粧料は、本発明の作用効果を阻害しない限り、必要に応じて、前記付加タンパク質以外の他の成分を含んでいてもよい。該他の成分として、従来から化粧料に添加含有されている公知成分、あるいは他の機能性成分が挙げられる。該他の成分として具体的には、例えば、油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤(アニオン系、カチオン系、両性、非イオン系)、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、アミノ酸、pH調整剤、ビタミン、酸化防止剤、色素、防腐剤、及び香料が挙げられる。
【0024】
本化粧料の剤形及び使用形態には特に限定はない。本化粧料は、例えば、ローション、エマルション、ゲル、軟膏・ワックス、フォーム状、固体・粉末、又は霧状で使用することができる。
【0025】
本化粧料の適用箇所には特に限定はない。本化粧料は、例えば、皮膚又は毛髪に適用することができる。本化粧料は、皮膚又は毛髪を改善、保護、又は補修するために使用することができる。
【0026】
本化粧料の具体的用途には特に限定はない。本化粧料の用途として具体的には、例えば、化粧水・乳液・クリーム・オイル等の基礎化粧品、皮膚洗浄料、マッサージ用剤、除毛・脱毛剤及びその前後処理剤、ファンデーション・口紅・アイシャドウ・アイライナー・マスカラ等のメークアップ化粧料、フェイスマスク、テープ剤、シート剤、爪用補修剤・保護剤、育毛・養毛剤、並びに毛髪処理剤が挙げられる。
【0027】
毛髪はダメージを受けると、毛髪内のシステインがシステイン酸に変換されてマイナスの電荷が増えることにより、アニオン性が強くなる。その結果、カチオン性が強い前記付加タンパク質は、より毛髪に強く付着することができる。その結果、前記付加タンパク質を含有する毛髪処理剤は、ダメージを受けた毛髪の機能・特性を改善・保護又は補修に優れる。よって、本化粧料は、毛髪処理剤、例えば、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、整髪剤、パーマネントウェーブ剤、カーリング剤、ヘアーカラー剤、又はこれらの剤を使用する前若しくは後処理剤として好適に使用することができる。また、本化粧料は、ヒト用だけでなく、ヒト以外の動物用化粧雑貨、ヒト以外の動物用医薬部外品、皮膚外用剤、及び毛髪処理剤等にも使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、実施例に示す形態に限定されない。本発明の実施形態は、目的及び用途等に応じて、本発明の範囲内で種々変更することができる。
【0029】
処方例1~20の化粧料の具体的組成を以下に示す。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
(処方例12)ヘアスタイリングスプレー
【表12】
【0042】
【0043】
(処方例14)毛髪処理剤(前処理・後処理共用)
【表14】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
実施例1;毛髪強度改善試験
ブリーチ剤1剤(ホーユー株式会社製「レセ パウダーブリーチ EX」)及びブリーチ2剤(株式会社ミルボン社製「オルディーブ アディクシー オキシダン 6%」)を1:2:5(質量比)の比率で均一に混合してブリーチ混合液を得た。毛束(株式会社スタッフス社製「テスト用毛束1g10cm、人毛、黒」)に対し、ブリーチ混合液を均等に塗布し、25℃で30分放置後、しっかり水洗した。このブリーチ処理を2回行った。その毛束を1.0質量%ラウリル硫酸ナトリウム溶液中に25℃5分間浸漬した。次いでその毛束を水洗し、評価用毛束とした。
【0051】
サンプル溶液として、以下の化粧料(A)~(C)を用いた。
(A)処方例10のS-アミジノシステイニルケラチンの代わりに水を添加したもの。
(B)処方例10のS-アミジノシステイニルケラチンの代わりに、カチオン化ケラチンとして一丸ファルコス株式会社製「プロティキュート Cアルファ」を添加したもの。
(C)処方例10
【0052】
サンプル溶液に評価用毛束を5分間浸漬後、水洗し温風乾燥した。処理した毛束に対して、万能引張試験機(株式会社島津製作所製「AG-20k NXDplus」)を用いて、50mm/minの速度で毛髪1本当りの引張切断強度(N)及び伸長率(%)を測定した(n=10)。
【0053】
毛髪強度改善試験の結果は以下の通りである。この結果を指標として、毛髪損傷を評価した。
化粧料(A):引張強度0.65(N)及び伸長率37.1(%)
化粧料(B):引張強度0.82(N)及び伸長率39.6(%)
化粧料(C):引張強度1.13(N)及び伸長率44.9(%)
【0054】
実施例2;毛髪付着性試験
評価用毛髪及びサンプル溶液として、実施例1の評価用毛束並びに化粧料(A)~(C)及び(D)処方例10のS-アミジノシステイニルケラチンの代わりに東邦化学工業株式会社製「カチナールHC-200」(カチオン化度1.3meq/g)を用いた。
【0055】
評価用毛束を20日間シリカゲルデシケーター中にて真空乾燥させ、各毛髪の質量を測定した。次いで、評価用毛束をサンプル溶液に30分間浸漬後、水洗し温風乾燥した。その後、評価用毛束を20日間シリカゲルデシケーター中にて真空乾燥させ、各毛髪の質量を測定した。毛髪付着率(%)は以下の式に基づいて算出した。
毛髪付着率(%)=(H2-H1)/H1×100
H1:試験前の毛髪の質量(g)
H2:試験後の毛髪の質量(g)
【0056】
毛髪付着性試験の結果は以下の通りである。この結果を指標として、毛髪損傷を評価した。
化粧料(A):毛髪付着率0.11(%)
化粧料(B):毛髪付着率0.84(%)
化粧料(C):毛髪付着率2.51(%)
化粧料(D):毛髪付着率1.04(%)
【0057】
実施例3:毛髪摩擦ダメージの軽減試験
評価用毛髪として、株式会社スタッフス社製「テスト用毛束1g10cm、人毛、黒」の評価用毛束を用い、サンプル溶液として、以下の化粧料(A)~(C)を用いた。
(A)処方例6のN-アミジノシステイニルケラチンの代わりに水を添加したもの。
(B)処方例6のN-アミジノシステイニルケラチンの代わりに、一丸ファルコス株式会社製「プロティキュートCアルファ」を添加したもの。
(C)処方例6
【0058】
評価用毛束にサンプル溶液を1g塗布後、水洗し温風乾燥した。乾燥後の毛髪に対して10回ブラッシングを行った。この工程を1回とし、50回繰り返した。その後、実施例1と同様の方法により、処理した評価用毛束の毛髪1本当りの引張切断強度(N)及び伸長率(%)を測定した(n=10)。
【0059】
毛髪摩擦ダメージの軽減試験の結果は以下の通りである。この結果を指標として、毛髪損傷を評価した。
化粧料(A):引張強度0.77(N)及び伸長率38.2(%)
化粧料(B):引張強度0.98(N)及び伸長率42.3(%)
化粧料(C):引張強度1.19(N)及び伸長率45.1(%)
【0060】
実施例4:シャンプーによる損傷に対する毛髪保護試験
評価用毛髪として、株式会社スタッフス社製「テスト用毛束1g10cm、人毛、黒」の評価用毛束を用い、サンプル溶液として、以下の化粧料(A)~(D)を用いた。
(A)処方例2のN-アミジノシステイニルケラチンの代わりに水を添加したもの。
(B)処方例2のN-アミジノシステイニルケラチンの代わりに一丸ファルコス株式会社製「プロティキュート Cアルファ」を添加したもの。
(C)処方例2
(D)処方例2のN-アミジノシステイニルケラチンの代わりに、東邦化学工業株式会社製「カチナールHC-200」(カチオン化度1.3meq/g)を添加したもの。
【0061】
評価用毛束にシャンプー剤である各サンプル溶液を1g塗布後、十分に泡立てた後、温水にて毛髪を濯ぎ、次いで温風乾燥させた。この工程を1回とし、30回繰り返した。その後、実施例1と同様の方法により、処理した評価用毛束の毛髪1本当りの引張切断強度(N)及び伸長率(%)を測定した(n=10)。
【0062】
シャンプーによる損傷に対する毛髪保護試験結果は以下の通りである。この結果を指標として、毛髪損傷を評価した。
化粧料(A):引張強度0.95(N)及び伸長率38.0(%)
化粧料(B):引張強度1.08(N)及び伸長率42.5(%)
化粧料(C):引張強度1.22(N)及び伸長率44.4(%)
化粧料(D):引張強度1.03(N)及び伸長率42.2(%)
【0063】
実施例1及び3より、本発明の実施品である化粧料(C)で処理した毛髪は、前記付加タンパク質を含まない化粧料(A)及び前記付加タンパク質に代えてカチオン化ケラチンを含む化粧料(B)で処理した毛髪と比べて、引張強度及び伸長率が大きい。同様に、実施例4より、本発明の実施品である化粧料(C)で処理した毛髪は、前記付加タンパク質を含まない化粧料(A)及び前記付加タンパク質に代えてカチオン化ケラチンを含む化粧料(B)及び(D)で処理した毛髪と比べて、引張強度及び伸長率が大きい。
【0064】
更に、実施例2より、本発明の実施品である化粧料(C)は、前記付加タンパク質を含まない化粧料(A)及び前記付加タンパク質に代えてカチオン化ケラチンを含む化粧料(B)及び(D)と比べて、毛髪への付着率が2倍以上の高い。
【0065】
これらの結果は、本発明の実施品である化粧料(C)は、適用部位(毛髪)への付着性に優れ、熱及び摩擦からの物理的な毛髪損傷に対する保護効果(実施例1及び3)と、シャンプーによる化学的な毛髪損傷に対する保護効果(実施例4)のいずれにも優れていることを示している。