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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 41/04 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
F16K41/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019059979
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159479
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】中浜 隆泰
(72)【発明者】
【氏名】小路 克利
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-96473(JP,A)
【文献】特開平8-270831(JP,A)
【文献】特開2007-78003(JP,A)
【文献】特開昭57-63681(JP,A)
【文献】実開昭61-135075(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入通路、流出通路及びこれらの通路の間に形成された弁座を有するバルブボディと、前記弁座と当接・離間して前記通路を開閉する弁体を先端に有し、前記バルブボディに形成または取り付けられたボンネットを挿通するステムと、を備えたバルブであって、
前記ステムには、当該ステムと前記ボンネットの間の隙間から流体が漏出するのを防止するパッキンが外嵌されており、
前記ステムが挿通し、前記パッキン上下端面と当接する金属製の環状部材が設けられ、
前記環状部材の少なくとも内周面側には、前記ステムの外周面と摺動する樹脂コーティング層が備えられ、前記環状部材の外周面と、前記ボンネットの内周面との間の隙間が実質的にゼロであることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記樹脂コーティング層の材料が、フッ素樹脂系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記パッキンが、グランドパッキンである請求項1または2に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
流体制御のためのバルブには、種々の機構のものが用いられている。先端に弁体を備えるステムが、ヘリカル運動をするタイプのもの、回転運動をするタイプのもの、往復運動をするもの等、さまざまなタイプのものが用いられている。
【0003】
これらステムは種々の動きをするので、ステムの外周面とステムが接するバルブボディやボンネットの空洞の内周面との間の隙間から、バルブボディ内の流体通路を流れる流体が外部に流出しないように、Oリングやグランドパッキンが備えられている。
【0004】
高圧流体を扱うバルブにおいては、これらのOリングやグランドパッキンは、金属製の環状部材によって上下を挟持され、この環状部材をステムの軸方向に押圧することによって、Oリングやグランドパッキンを、ステムの軸方向に圧縮しステムの軸と直交する横方向に拡げ、ステムの外周面とバルブボディまたはボンネットの空洞の内面と、Oリングやグランドパッキンとを密着させ、流体が外部に漏れ出ないようにシールがなされる。
【0005】
特許文献1に記載のバルブにおいては、グランドパッキン1の下面側を金属製のハメワ4で、上面側を金属製のパッキン押え5で挟持している。特許文献2に記載のバルブにおいては、グランドパッキン84の下面側と上面側を金属製のハメワ85で挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-78003号公報
【文献】特開2018-96473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1におけるハメワ4及びパッキン押え5並びに特許文献2におけるハメワ85は、金属材料で作成されており、金属製のステムと擦りあうとステムに傷がつく。ステムに傷がつくと、ステムの軸方向に流体が漏れ出てしまうため、ステムに傷がつかないように、ハメワ等とステムとの間は、通常0,2~0,3mm程度の直径隙間(クリアランス)が設けられる。
【0008】
この隙間の存在により、例えばグランドパッキンが用いられるバルブにおいては、グランドパッキンは、高圧負荷の経年変化により内外周の周に沿った環状の突起状のものが形成され、この突起状のものが隙間に入り込み、グランドパッキンの横方向の膨張が低下し、ステム等への面圧が低下してシール性が低下する。
【0009】
このような突起状のものの形成を抑えるためには、ハメワ等とステムとの間の隙間をできるだけ小さくする必要があるが、隙間を小さくするとステムに傷が発生する可能性が高まり、シール性の低下のおそれがでてくる。
【0010】
図6は、従来のバルブであって、環状のグランドパッキン62にステム5が挿通している。グランドパッキン62の上下端面には、環状の金属製のハメワ63が備えられている。下側のハメワ63は、ボンネット6の中に形成された円柱状の凹部下面に配置され、上側のハメワ63の上面は、ボンネットナット61の凹部上面と密接せられ、ボンネットナット61の内部に切られた雌ねじと、ボンネット61の外周に切られた雄ねじの螺合によって、グランドパッキン62はステム5の軸方向に押圧され、それによって、グランドパッキン62は径方向に膨張して、ステム5の外周面とグランドパッキン62の内周面は密着して、流体が漏れなくなる。また、グランドパッキン62とボンネット6の内部凹部の内周面とは密着して、流体が漏れなくなる。
【0011】
図6のグランドパッキンは、高圧に耐えられるように3層構造となっている。3層構造の中央に、樹脂製のパッキングリング62aと、パッキングリング62aの上下面は、パッキングリング62aよりも硬度の高い樹脂を用いた硬質パッキングリング62bで挟まれている。このような構造とすることによって、流体の圧力が高圧になっても、高いシール性と高い開閉耐久性を確保することができる。
【0012】
図6に示すバルブにおいては、環状部材(ハメワ)63の内周面とステム5の外周面との間、及び、環状部材(ハメワ)63の外周面とボンネット6の内部の凹部の内周面との間に、隙間66があいている。
【0013】
図7は、図6のバルブの経年変化後の状態を示している。パッキングリング62aよりも硬度の高い硬質パッキングリング62bであっても、樹脂製なので、ボンネットナット61による圧縮と高圧流体による圧縮を受け続けると、図7に示すように硬質パッキングリング62bの外周及び内周縁部に環状の突起67が発生する可能性がある。突起67が発生すると、グランドパッキン62の横方向の面圧が下がりシール性が低下する恐れがあり、流体の漏れ発生の原因となる可能性がある。
【0014】
本発明の目的は、弁体を備えるステムを有するバルブにおいて、ステムの軸に沿った流体の漏れを抑えることができるバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明(1)は、流体の流入通路、流出通路及びこれらの通路の間に形成された弁座を有するバルブボディと、前記弁座と当接・離間して前記通路を開閉する弁体を先端に有し、前記バルブボディに形成または取り付けられたボンネットを挿通するステムと、を備えたバルブであって、前記ステムには、当該ステムと前記ボンネットの間の隙間から流体が漏出するのを防止するパッキンが外嵌されており、前記ステムが挿通し、前記パッキン上下端面と当接する金属製の環状部材が設けられ、前記環状部材の少なくとも内周面側には、前記ステムの外周面と摺動する樹脂コーティング層が備えられ、前記環状部材の外周面と前記ボンネットの内周面との間の隙間が実質的にゼロであることを特徴とするバルブである。
【0016】
本発明(1)のバルブにおいては、パッキンの上下端面と当接する金属製の環状部材が設けられ、環状部材の少なくとも内周面側には、ステムの外周面と摺動する樹脂コーティング層が備えられている。環状部材の外周面とボンネットの内周面との間の隙間は、実質的にゼロである。環状部材の内周面は、ステムの外周面と摺動するように樹脂コーティングされ、環状部材の外周面とボンネットの内周面との間の隙間は実質的にゼロであるので、グランドパッキンは、高圧負荷による経年変化により内外周の周に沿った突起状のものが形成されず、グランドパッキンの横方向の膨張による面圧が低下することはない。このため、ステム等との間の面圧が低下してシール性が低下することもなくなる。
【0017】
本発明(2)のバルブは、前記樹脂コーティング層の材料が、フッ素樹脂系樹脂であることを特徴とする本発明(1)に記載のバルブである。
【0018】
本発明(2)は、樹脂コーティング層の材料が、フッ素樹脂系樹脂であることを特徴としており、耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性等に優れ、摩擦係数も非常に小さいため摩耗量も少なく、バルブがさらに長寿命となる。フッ素樹脂系樹脂には、完全フッ素化樹脂、部分フッ素化樹脂またはフッ素樹脂共重合体が好ましい。完全フッ素化樹脂には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等があり、部分フッ素化樹脂には、ポリフッ化ビニル(PVF)等があり、フッ素樹脂共重合体には、ペリフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)がある。
【0019】
本発明(3)は、前記パッキンが、グランドパッキンである本発明(1)または(2)のバルブである。不特定の流体を扱うバルブでは、Oリングよりもフッ素樹脂系樹脂のグランドパッキンが好ましく、グランドパッキンとOリングを組み合わせることによって、特に超高圧の流体であってもシールが可能になるとともに、バルブの寿命もさらに長くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
弁体を備えるステムを有するバルブにおいて、ステムの軸に沿った流体の漏れを抑えることができ、従来のバルブに比べてバルブの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明によるバルブの実施例1を示す。
図2】この発明によるバルブの実施例2を示す。
図3】実施例2のバルブに用いられるグランドパッキン付近の部分断面図を示す。
図4】実施例2のバルブに用いられ、ステムに挿入された3層構造のグランドパッキンの縦断面図を示す。
図5】実施例2のバルブに用いられ、ステムに挿入された3層構造のグランドパッキンと、樹脂コーティングされた環状部材の拡大断面図を示す。
図6】従来技術のバルブにおいて、ステムに挿入された3層構造のグランドパッキンと、樹脂コーティングされていない環状部材の拡大断面図を示す。
図7図6に示すバルブにおいて、経年変化によって、グランドパッキンの周辺部に環状の突起ができている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
図1は、この発明による実施例1のバルブ1を示している。このバルブは、バルブボディ2とアクチュエータ4とその間のヨーク7及びボンネット6の4つの構成部分を有している。
【0024】
バルブボディ2には、流入口21、流入通路23、流出口22および流出通路24が設けられ、流入通路23および流出通路24の間には弁座25が備えられている。弁座25と当接・離間する接触面を有する弁体3が、垂直に備えられ、弁体3はステム5の下部先端側に形成されている。ステム5は、アクチュエータ4の軸であるシャフト41と接続され、アクチュエータ4によって、上下に駆動される。
【0025】
バルブボディ2の上部には、ボンネットナット61によってボンネット6が取り付けられており、ボンネット6の上部は、ヨーク7が取り付けられ、ヨーク7の上端部には、アクチュエータ4が取り付けられている。
【0026】
ボンネット6の内部は、ステム5が貫通する貫通孔が形成されており、その中にステム5が挿通するグランドパッキン62が備えられている。グランドパッキン62の下面側にハメワ63が備えられ、グランドパッキン62の上面側にOリングホルダー64が備えられている。このハメワ63とOリングホルダー64は、金属製であり、その表面には、図3に示すフッ素樹脂系樹脂のコーティング層65と同じコーティング層が設けられている。樹脂コーティング層65は、ステム5の外周面及びボンネット6の内部凹部の内周面と密接している。これによって、シール性が確保され、高圧流体の開閉による経年使用によってグランドパッキン62の経年劣化が低減される。フッ素樹脂系樹脂は、例えば、PTFEやPFAなどが好ましい。
【0027】
図2は、この発明による実施例2のバルブ1を示している。このバルブは、大きくは、バルブボディ2とアクチュエータ4とその間のバルブボディ2の上部に形成されたボンネット6の3つの構成部分を有している。
【0028】
バルブボディ2には、流入口21、流入通路23、流出口22および流出通路24が設けられ、流入通路23および流出通路24の間には弁座25が備えられている。弁座25と当接・離間する接触面を有する弁体3が、垂直に備えられ、弁体3はステム5の下部先端側に形成されている。ステム5は、アクチュエータ(ハンドル)4の中心に接続され、ハンドル4によって、上下に駆動される。
【0029】
ボンネット6の内部は、ステム5が挿通する貫通孔が形成されており、その中にステム5が挿通するグランドパッキン62が備えられている。グランドパッキン62の下面側と上面側にハメワ63が備えられている。このハメワ63は、金属製であり、その表面がフッ素樹脂系樹脂のコーティング層65が設けられている(図3参照)。樹脂コーティング層65は、ステム5の外周面及びボンネット6の内部凹部の内周面と密接している。これによって、シール性が確保され、高圧流体の開閉による経年使用によってグランドパッキン62の経年劣化が低減される。フッ素樹脂系樹脂は、例えば、PTFEやPFAなどが好ましい。
【0030】
図3は、実施例2のバルブに用いられるグランドパッキン付近の部分断面図を示す。グランドパッキン62の上下面にハメワ63が配置され、ハメワ63の表面は、フッ素樹脂系樹脂のコーティング層65が形成されている。この図3では、樹脂コーティング層65は、ハメワ63の表面全面に形成されているが、少なくとも内周面に形成するだけでも良い。その場合、ハメワ63と、ボンネット6の内周面との間の隙間は、実質的にゼロとし、隙間がないようにするのが好ましい。
【0031】
図4は、ステム5が挿通する3層構造のグランドパッキン62の断面図を示している。3層構造の中央に、樹脂製のパッキングリング62aが備えられ、パッキングリング62aの上下面は、パッキングリング62aよりも硬度の高い樹脂を用いた硬質パッキングリング62bで挟まれている。このような構造とすることによって、流体の圧力が高圧になっても、高いシール性と高い開閉耐久性を確保することができる。
【0032】
図5は、実施例2のバルブ1に用いられ、ステム5に挿入された3層構造のグランドパッキン62と、樹脂コーティングされたハメワ63の拡大断面図を示している。図3のバルブのグランドパッキン62が、3層構造となって、グランドパッキン62自体が強化され、硬質パッキングリング62bの内外周の周縁に突起67が発生しないので、シール性が確保され、高圧流体の開閉による経年使用によってグランドパッキン62の経年劣化が低減される。
【符号の説明】
【0033】
1 ;バルブ
2 ;バルブボディ
3 ;弁体
4 ;アクチュエータ
5 ;ステム
6 ;ボンネット
7 ;ヨーク
21;流入口
22;流出口
23;流入通路
24;流出通路
25;弁座
41;シャフト
61;ボンネットナット
62;グランドパッキン
62a;パッキングリング
62b;硬質パッキングリング
63;ハメワ(環状部材)
64;Oリングホルダー(環状部材)
65;樹脂コーティング層
66;隙間(クリアランス)
67;突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7