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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】縦置き型二重殻タンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/501 20190101AFI20230518BHJP
【FI】
B65D90/501
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019063543
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020164170
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤村 裕人
(72)【発明者】
【氏名】大音 純治
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013677(JP,A)
【文献】特開2017-085834(JP,A)
【文献】特開2005-088993(JP,A)
【文献】特許第6192148(JP,B1)
【文献】特開昭59-142982(JP,A)
【文献】特開2011-137652(JP,A)
【文献】特開平09-024989(JP,A)
【文献】特開昭52-022299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 88/00-90/66
E04H 5/00-5/12
E04H 7/00-7/32
E04H 12/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の胴部とその少なくとも底部を閉鎖する椀形の鏡板とを備えた鋼製外殻と、前記胴部の軸方向を鉛直方向にして当該鋼製外殻を基台に固定する支持台とを備え、当該支持台がその短円筒部を前記鋼製外殻の胴部の下部に嵌合した状態で鋼製外殻に溶接して鋼製外殻と一体化されている液体タンクにおいて、
少なくとも当該タンクに収容される液体の最大液面より下方部内面に前記鋼製外殻に固定されて当該鋼製外殻との間に殻間隙を形成している強化樹脂製の内殻、前記殻間隙へのタンク内液及び地下水の漏入を検出するためのタンク底部の前記殻間隙に連通された漏洩検出管と当該漏洩検出管内に設けた液検出器からなる漏洩検出手段を備え
当該漏洩検出手段は、上部が鋼管で下部が樹脂管でありかつ当該鋼管と樹脂管とが前記最大液面より上方の気相部で接続されている、
縦置き型二重殻タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体を貯蔵するタンクに関するもので、筒形の胴部とその両端を閉鎖している鏡板とを備えた筒形タンクであって、胴部の軸方向を鉛直方向にして地中に埋設される二重殻タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を貯蔵する筒形タンクは、灯油やガソリンなどの燃料油や上水を貯蔵するのに用いられており、通常は建物を建てた敷地の地下に埋設されている。筒形タンクは、通常横置き、すなわち胴部の軸線を水平方向にして設置される。従来、地中に埋設される液体タンクも横置きとされていたが、都市における建築敷地の狭小化とそれに伴う建物の高層化とにより、建物の敷地内に必要な容量の筒形タンクを横置きで設置できなくなってきており、同一容量のタンクをより狭い面積で設置することが可能な縦置きへの要望が高まっている。
【0003】
筒形タンクを縦置きに設置する構造として、鋼製の殻を備えたタンクにスカート状の支持台を溶接して、当該支持台をアンカーボルトなどでコンクリート製の基台に固定する構造が知られている。この支持台は、タンクに接合した短円筒部の下辺に鍔を設けた構造で、短円筒部の上部内側を縦置きにしたタンクの鋼製の胴部の下端部分に溶接接合してタンクと一体化されている。支持台を備えたタンクは、コンクリート製の基台に立設したアンカーボルトを支持台の鍔に設けたボルト穴に挿通してナットで締結することにより、縦置きに設置される。
【0004】
地下に埋設されたタンクは、埋設された時点から液漏れ、すなわちタンク内の液体が漏れ出ること及び地下水がタンク内に漏れ入ることを検出するのが困難になる。タンクは、厳重な液漏れ検査をして埋設されるが、埋設後の腐食や地震に伴う地盤の変形による亀裂の発生などによって液漏れが生ずるおそれがあるので、液漏れが生じたときにそれを検出できるようにしなければならない。
【0005】
埋設後のタンクの液漏れを検出する手段として、タンクをいわゆるSF二重殻構造として液検出器を設置した検出管を設ける構造が推奨されている。この構造は、タンクの殻を鋼殻の内殻と、強化樹脂製の外殻との二重殻構造とするもので、鋼製内殻と樹脂製外殻とは密着しておらず、鋼製内殻の上に樹脂フィルムを巻いてその上に強化樹脂を吹き付けるなどにより、鋼製内殻と樹脂製外殻との間に面的に連通する数十μm~数百μmの隙間(以下及び特許請求の範囲で「殻間隙」と言う。)が存在している。そして、タンク内に下端が殻間隙の下部に開口する検出管を設け、この検出管に液検出器を設けることにより、鋼製内殻を通ってのタンク内液の漏れ及び樹脂製外殻を通っての地下水の漏れをいずれも検出可能にした構造である。
【0006】
上記構造のSF二重殻タンクを縦置きに設置する場合、縦置き用の支持台を固定するタンク胴部の下部表面が強化樹脂殻となるため、支持台を強度部材である鋼殻に溶接することができず、従来のような構造の支持台でタンクを支持することができない。また、鋼製内殻に支持台を溶接すると、支持台を溶接した箇所の近辺に殻がSF二重殻構造とならない部分(鋼製内殻と樹脂製外殻との間に殻間隙を形成できない部分)が残り、当該部分での漏れが検出できないという問題が生ずる。
【0007】
鋼製内殻の外側に樹脂製外殻を形成する方法として、本願出願人は、特許文献1において、鋼製内殻の上に微粒子を混入した錆止め塗料を塗布し、その後従来手段で強化樹脂殻を形成することにより、殻間隙に結露が生ずることによるモアレ模様の発生や殻の超音波検査に対する弊害を防止する技術を提案している。
【0008】
上記提案における微粒子は、ナイロン樹脂や、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の有機材料、砂やガラス等の無機材料で、好ましくは耐油性、耐水性有機材料を粉砕したものなどが用いられる。微粒子の大きさは、錆止め塗料の表面からその一部が突出する大きさであれば良く、錆止め塗料の一般的な塗布厚みである50~100μmの場合、75~500μm程度とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006‐1607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、SF二重殻タンクの上記の問題点に鑑み、強度部材となる鋼殻に当該タンクを縦置きで支持する支持台を溶接可能にすると共に、タンクの一部に二重殻構造とならない部分(内殻と外殻との間に殻間隙を設けることができない部分)が生じない構造の縦置き型の二重殻タンクを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
液体を貯留するタンクには、収容された液体の上部に気相部Aが存在していなければならない。タンクに許容される最大液量を入れたときの液面(最大液面)Lの上部が気相部Aとなる。
【0012】
この発明の縦置き型二重殻タンクは、外殻2(2t、2c、添字tは上下に鏡板を備えたタンク形の殻、添字cは下にのみ鏡板を備えたカップ形の殻)を鋼製として、当該外殻と内殻1(1c、1t)との間のタンクに収容される液体の最大液面Lより下方部の外殻2と内殻1との間に殻間隙3を形成した縦置き円筒型の二重殻タンクを提供するものである。タンクを縦置きにして基台に固定するための支持台11は、鋼製の外殻2に溶接してタンク本体と一体化されている。
【0013】
すなわちこの発明の縦置き型二重殻タンクは、筒形の胴部6とその少なくとも底部を閉鎖する椀形の底部鏡板7とを備えた鋼製外殻2と、胴部6の軸方向を鉛直方向にして鋼製外殻2を基台9に固定する支持台11とを備えている。支持台11は、その短円筒部12を鋼製外殻の胴部6の下部に嵌合した状態で鋼製外殻2に溶接して鋼製外殻2と一体化されている。
【0014】
この発明の縦置き型二重殻タンクは、鋼製外殻2の内側に内殻1を備えている。内殻1は、強化樹脂製で、鋼製外殻2に固定されており、タンク内液の最大液面Lより下方部の鋼製外殻2との間に殻間隙3を形成している。そして、殻間隙3へのタンク内液及び地下水の漏洩を検出する漏洩検出手段16、18を備えている。
【0015】
内殻1を強化樹脂製の樹脂製内殻1cとしたときは、鋼製外殻2tの内面の最大液面Lより下方部に強化樹脂層2fを設け、その強化樹脂層2fとその内側に設けた樹脂製内殻1cとの間に殻間隙3を設けることができる。また、漏洩検出手段としてタンク底部の殻間隙3に連通された漏洩検出管16を設けるときは、上部が鋼管16sで下部が樹脂管16fとし、鋼管16sと樹脂管16fとを最大液面より上方の気相部Aで接続して、樹脂管16fの下端を殻間隙3の底部に連通させる。
【0016】
一方、内殻1を鋼製内殻1tとしたときは、鋼製外殻2cをその胴部6の上縁が開放されかつ底部が鋼製内殻1tの底部と同形の椀形としたカップ形とし、鋼製外殻2cの内面又は鋼製内殻1tの外面に所定間隔で板状のスペーサ21を溶着して鋼製内殻1tを鋼製外殻2c内に挿入することにより、スペーサ21の板厚に相当する殻間隙3を鋼製外殻2cと鋼製内殻1tとの間に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明により、タンクの液相領域の全体を完全な二重殻構造とすることができ、二重殻構造にできない部分が生じないので、地下に埋設後のタンク内液及び地下水の漏れを確実に検知可能で、強度部材となる鋼製外殻に溶接された支持台でタンクを地中の基台に固定することができ、従って、確実で安定した漏洩検出が可能な縦置き円筒型の二重殻タンクを提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の第1実施例を示す断面側面図
図2】第1実施例の殻間隙の上縁部の部分拡大断面図
図3】この発明の参考例を示す断面側面図
図4参考例の上縁部の殻間隙を示す部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2は、この発明の第1実施例を示した図である。タンクは、円筒形の胴部6の両端に浅い椀形の鏡板7、8を設けたタンクで、鋼製の外殻2tの胴部6の下部に従来構造と同様な構造の縦置き用の支持台11が溶接されている。支持台11は、タンクに溶接された短円筒部12の下辺に鍔13を設けた構造で、コンクリート製の基台9に立設したアンカーボルトを鍔13に設けた図示しないボルト穴に挿通してナット止めされる。上下の鏡板7、8は、通常の浅い椀形形状である。鋼製外殻2tの外面及び支持台11には、繊維強化樹脂やノンタールエポキシ、ウレタン塗装などの防錆塗装が施されている。
【0020】
第1実施例のタンクは、内面に強化樹脂層2fを設けた鋼製外殻2tの内側に樹脂製内殻1cを設けた二重殻構造で、最大液面Lより下の樹脂製内殻1cと鋼製外殻内面の強化樹脂層2fとの間に密閉された殻間隙3が存在している。殻間隙3は、図では誇張して描かれているが、実際には数十μm~数百μmの間隙である。
【0021】
殻間隙3は、最大液面Lより上に上縁Eが位置するように、鋼製外殻2tの内面に強化樹脂層2fとなる強化樹脂を吹き付け、吹き付けた強化樹脂が乾かないうちにその内面に樹脂フィルムなどの中込材31を貼り付け、その上に更に樹脂製内殻1cとなる強化樹脂を吹き付けることにより形成される。すなわち、最大液面Lより下の部分に、硬化した鋼製外殻内面の強化樹脂層2fと樹脂製内殻1cとの間に殻間隙3が設けられる。
【0022】
樹脂製内殻1cとなる硬化樹脂は、鋼製外殻の強化樹脂層2f及びその内側の中込材31の上縁Eより所定幅(15cm以上)上方にまで吹き付けて、樹脂製内殻1cの上縁部を鋼製外殻2tの内面に密着させた密着部5を設けて、殻間隙3を密閉している。鋼製外殻2tの内面の強化樹脂層2f及び密着部5を設ける部分は、強化樹脂を吹き付ける前に、サンドブラストなどの下地処理とプライマー塗装などの下地塗装を行う。
【0023】
図示しない液検出器を収容した検出管16は、上部が鋼管16sで下部が樹脂管16fであり、鋼管16sと樹脂管16fとは、タンクの気相部Aで接続されている。樹脂管16fの下端は、樹脂製内殻1cの底面に接合されて殻間隙3の最下部に開口しており、上端は上部鏡板8を貫通して引き出されている。液検出器の検出信号線は、検出管16の上端から引き出されて、図示しない液漏れ検出器に接続されている。
【0024】
タンクの上部鏡板8には、配管用と点検用との2個のマンホール14、15が設けられている。タンクは、支持台11を地中のタンク収納部の底面に設けたコンクリート製の基台9にアンカーボルトなどで固定することにより、縦置きで安定かつ強固に設置される。鋼製外殻2tの腐食や亀裂により生じた地下水の漏れや、樹脂製内殻1cの劣化や亀裂により生じたタンク内液の漏れは、殻間隙3の最下部から検出管16内に流入し、検出管16の下端部分に収納された液検出器で検出される。
【0025】
図3及び図4に示す参考例は、カップ形の鋼製外殻2cの内側に鋼製内殻1tを挿入して、収容される液体の最大液面Lより下を二重殻構造としたタンクである。鋼製内殻1tは、円筒形の胴部の両端に浅い椀形の鏡板7、8を設けた形状である。一方、鋼製外殻2cは、円筒形の胴部6と浅い椀形の底部鏡板7を備えたカップ形である。タンクを縦置きで支持する支持台11及び基台9は、第1実施例と同様な構造で、支持台11の短円筒部12が鋼製外殻2cの胴部6の下部に溶接されている。鋼製内殻1tの外面、鋼製外殻2cの内外面及び支持台11には、繊維強化樹脂やノンタールエポキシ、ウレタン塗装などの防錆塗装が施されている。
【0026】
鋼製内殻1tの外周面及び底面には、適宜間隔で薄い、好ましくは6mm以下の厚さの、円板状や矩形板状のスペーサ21が溶接されている。鋼製内殻1tは、上部が開放された鋼製外殻2cの中に挿入されており、最大液面Lより下方の鋼製内殻1tと鋼製外殻2cとの間には、スペーサ21の板厚に相当する殻間隙3が形成されている。殻間隙3の上縁は、全周に渡って鋼製外殻2cの上縁と鋼製内殻1tの外面とを溶接32することにより、閉鎖されている。
【0027】
参考例の漏洩検出手段は、殻間隙3に不凍液を注入しておき、殻間隙3からの不凍液の漏出や殻間隙3へのタンク内液や地下水の漏入によるその液面Sの変化を漏洩検出部18で検出することにより、鋼製内殻1tや鋼製外殻2cの漏れを検出する構造である。
【符号の説明】
【0028】
1(1c、1t) 内殻
2(2t、2c) 外殻
2f 強化樹脂層
3 殻間隙
6 胴部
7 底部鏡板
9 基台
11 支持台
12 短円筒部
16 漏洩検出管
16s 鋼管
16f 樹脂管
18 漏洩検出部
21 スペーサ
A 気相部
L 液面
図1
図2
図3
図4