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特許7281178超音波式探傷装置及び超音波式探傷プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】超音波式探傷装置及び超音波式探傷プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20230518BHJP
   G01N 29/26 20060101ALI20230518BHJP
   G01N 29/036 20060101ALI20230518BHJP
   G01N 29/024 20060101ALI20230518BHJP
   G01F 1/663 20220101ALI20230518BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/26
G01N29/036
G01N29/024
G01F1/663
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019097293
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020190534
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】木倉 宏成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀治
(72)【発明者】
【氏名】荘司 成熙
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-185843(JP,A)
【文献】特開2003-130699(JP,A)
【文献】特開2015-190954(JP,A)
【文献】特開昭60-099237(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101936756(CN,A)
【文献】井上 創ほか,ドップラー法および相互相関法を併用した超音波流速分布計測システムの開発,日本機械学会論文集B編,第70巻第700号,2004年,p.3196-3203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01F 1/66
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷装置であって、
前記配管内及び前記流路内に超音波を送信かつ前記配管内及び前記流路内からのエコー信号を受信するためのフェイズドアレイ式超音波センサと、
前記フェイズドアレイ式超音波センサを所定周波数で駆動させかつ前記フェイズドアレイ式超音波センサからの前記エコー信号を受信するための超音波発信受信ユニットと、
前記超音波発信受信ユニットからの前記エコー信号をアナログ/ディジタル変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、
前記超音波発信受信ユニット及び前記アナログ/ディジタル変換器に接続され、前記超音波発信受信ユニットを繰返周期で動作させて該超音波発信受信ユニットから前記アナログ/ディジタル変換器を介して前記エコー信号を受信するための制御ユニットと
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内に入射するようにし、該配管からの前記エコー信号に基づいて前記配管内の第1の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からの前記エコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算し、該流速分布に基づいて前記配管内の第2の欠陥を検出する第2の欠陥検出手段と
を具備する超音波式探傷装置。
【請求項2】
前記第2の欠陥検出手段は、
前記流路の計測位置からの前記エコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手段と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手段と、
前記流路内の前記流速分布を参照流速分布と比較することにより前記配管内の前記第2の欠陥を検出する手段と
を具備する請求項1に記載の超音波式探傷装置。
【請求項3】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷プログラムであって、
フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内に入射するようにし、該配管からのエコー信号に基づいて前記配管内の第1の欠陥を検出する第1の欠陥検出手順と、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からの前記エコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算し、該流速分布に基づいて前記配管内の第2の欠陥を検出する第2の欠陥検出手順と
コンピュータに実行させるための超音波式探傷プログラム。
【請求項4】
前記第2の欠陥検出手順は、
前記流路の計測位置からのエコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手順と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手順と、
前記流路内の前記流速分布を参照流速分布と比較することにより前記配管内の前記第2の欠陥を検出する手順と
コンピュータに実行させるための請求項3に記載の超音波式探傷プログラム。
【請求項5】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷装置であって、
前記配管内及び前記流路内に超音波を送信かつ前記配管内及び前記流路内からのエコー信号を受信するためのフェイズドアレイ式超音波センサと、
前記フェイズドアレイ式超音波センサを所定周波数で駆動させかつ前記フェイズドアレイ式超音波センサからの前記エコー信号を受信するための超音波発信受信ユニットと、
前記超音波発信受信ユニットからの前記エコー信号をアナログ/ディジタル変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、
前記超音波発信受信ユニット及び前記アナログ/ディジタル変換器に接続され、前記超音波発信受信ユニットを繰返周期で動作させて該超音波発信受信ユニットから前記アナログ/ディジタル変換器を介して前記エコー信号を受信するための制御ユニットと
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内に入射するようにし、該配管からの前記エコー信号に基づいて前記配管内の欠陥を検出する欠陥検出手段と、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からの前記エコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算する流速演算手段と
を具備する超音波式探傷装置。
【請求項6】
前記流速演算手段は、
前記流路の計測位置からの前記エコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手段と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手段と
を具備する請求項5に記載の超音波式探傷装置。
【請求項7】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷プログラムであって、
フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内に入射するようにし、該配管からのエコー信号に基づいて前記配管内の欠陥を検出する欠陥検出手順と、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からの前記エコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算する流速演算手順と
コンピュータに実行させるための超音波式探傷プログラム。
【請求項8】
前記流速演算手順は、
前記流路の計測位置からのエコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手順と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手順と
コンピュータに実行させるための請求項7に記載の超音波式探傷プログラム。
【請求項9】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷装置であって、
前記配管内及び前記流路内に超音波を送信かつ前記配管内及び前記流路内からのエコー信号を受信するための所定基準線に垂直に配列された複数の振動子を有するフェイズドアレイ式超音波センサと、
前記フェイズドアレイ式超音波センサを所定周波数で駆動させかつ前記フェイズドアレイ式超音波センサからの前記エコー信号を受信するための超音波発信受信ユニットと、
前記超音波発信受信ユニットからの前記エコー信号をアナログ/ディジタル変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、
前記超音波発信受信ユニット及び前記アナログ/ディジタル変換器に接続され、前記超音波発信受信ユニットを繰返周期で動作させて該超音波発信受信ユニットから前記アナログ/ディジタル変換器を介して前記エコー信号を受信するための制御ユニットと
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記フェイズドアレイ式超音波センサの前記各振動子を同一の駆動周波数の基で所定位相差で順次遅らせ又は順次進ませることにより前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を所定角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からの前記エコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算し、該流速分布に基づいて前記配管内の欠陥を検出する欠陥検出手段
を具備する超音波式探傷装置。
【請求項10】
前記欠陥検出手段は、
前記流路の計測位置からの前記エコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手段と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手段と、
前記流路内の前記流速分布を参照流速分布と比較することにより前記配管内の前記欠陥を検出する手段と
を具備する請求項9に記載の超音波式探傷装置。
【請求項11】
流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷プログラムであって、
フェイズドアレイ式超音波センサの所定基準線に垂直に配列された各振動子を同一の駆動周波数の基で所定位相差で順次遅らせ又は順次進ませることにより前記フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を所定角度に設定して前記送信超音波を前記配管内及び前記流路内に入射するようにし、前記流路からのエコー信号に基づいて前記流路内の流速分布を演算し、該流速分布に基づいて前記配管内の欠陥を検出する欠陥検出手順
コンピュータに実行させるための超音波式探傷プログラム。
【請求項12】
前記欠陥検出手順は、
前記流路の計測位置からのエコー信号の周波数スペクトルに応じて前記計測位置における前記流路内の流速を計測する手順と、
前記計測位置における前記流速に基づいて前記流路内の前記流速分布を演算する手順と、
前記流路内の前記流速分布を参照流速分布と比較することにより前記配管内の前記欠陥を検出する手順と
コンピュータに実行させるための請求項11に記載の超音波式探傷プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる配管内の欠陥を検出するための超音波式探傷装置及び超音波式探傷プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が流れる配管内の欠陥検出を行う探傷装置として、配管表面に対してある角度で接触させた超音波センサにより配管内欠陥からのエコー信号を検出し、エコー信号が反射した時間と配管材中の音速から欠陥位置を算出するものがある。
【0003】
図8を参照して従来の超音波式探傷装置を説明する。
【0004】
図8において、圧電素子よりなる単一の振動子101aを有する超音波センサ101を流体Rが流れる配管Wに設置する。この場合、振動子101aは超音波センサ101内で所定角度をなしており、従って、振動子101aは配管Wに対して所定角度で設置される。探傷を行うために、超音波センサ101から繰返周期Tで所定周波数の超音波信号Sを配管W内に入射させると、配管W内の欠陥Fからのエコー信号Sが超音波センサ101より出力される。この結果、欠陥Fの距離Dは
D=c・Δt/2
但し、cは配管W内の超音波の速度
Δtは超音波信号Sの発射時点からエコー信号Sが戻ってくる時点までの時間、
によって演算できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の超音波式探傷装置においては、振動子101aの設置角度が固定されているので、超音波信号Sを効率よく入射させるための配管Wの材料に適した入射角度の選択ができず、この結果、検出できる欠陥形状や欠陥サイズが限定されているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超音波式探傷装置は、流路を構成する配管を探傷するための超音波式探傷装置であって、配管内及び流路内に超音波を送信かつ配管内及び流路内からのエコー信号を受信するためのフェイズドアレイ式超音波センサと、フェイズドアレイ式超音波センサを所定周波数で駆動させかつフェイズドアレイ式超音波センサからのエコー信号を受信するための超音波発信受信ユニットと、超音波発信受信ユニットからのエコー信号をアナログ/ディジタル変換するためのアナログ/ディジタル変換器と、超音波発信受信ユニット及びアナログ/ディジタル変換器に接続され、超音波発信受信ユニットを繰返周期で動作させて超音波発信受信ユニットからアナログ/ディジタル変換器を介してエコー信号を受信するための制御ユニットとを具備し、制御ユニットは、フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して送信超音波を配管内に入射するようにし、配管からのエコー信号に基づいて配管内の第1の欠陥を検出する第1の欠陥検出手段と、フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して送信超音波を配管内及び流路内に入射するようにし、流路からのエコー信号に基づいて流路内の流速分布を演算し、流速分布に基づいて配管内の第2の欠陥を検出する第2の欠陥検出手段とを具備するものである。
【0008】
また、本発明に係る超音波式探傷プログラムは、流路を構成する配管を探傷するためのコンピュータに実行させるための超音波式探傷プログラムであって、フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第1の角度に設定して送信超音波を配管内に入射するようにし、配管からのエコー信号に基づいて配管内の第1の欠陥を検出する第1の欠陥検出手順と、フェイズドアレイ式超音波センサの送信超音波の送信角度を第2の角度に設定して送信超音波を配管内及び流路内に入射するようにし、流路からのエコー信号に基づいて流路内の流速分布を演算し、流速分布に基づいて配管内の第2の欠陥を検出する第2の欠陥検出手順とを具備するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管に対する超音波入射角度を選択できるので、種々の欠陥形状、欠陥サイズを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る超音波式探傷装置の実施の形態を示す概略構成図である。
図2図1のフェイズドアレイ式超音波センサの動作を示す図である。
図3図1の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
図4図3のステップ303を補足説明するための図である。
図5図3のステップ307を補足説明するための図である。
図6図3のステップ307を補足説明するための図である。
図7図3のステップ307を補足説明するための図である。
図8】従来の超音波式探傷装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る超音波式探傷装置の実施の形態を示す概略構成図である。
【0012】
図1において、フェイズドアレイ式超音波センサ1は圧電素子よりなる8個の振動子1a、1b、…、1hを有し、流路を構成する配管Wの外側に設置される。8個の振動子1a、1b、…、1hは基準線Lに対して垂直に配列されている。フェイズドアレイ式超音波センサ1の超音波入射角度は基準線Lに対して-α(0<α<90°)、+β(0<β<90°)に制御される。
【0013】
フェイズドアレイ式超音波センサ1は超音波発信受信ユニット2に接続されている。超音波発信受信ユニット2内蔵の超音波発信回路はたとえば2MHzの周波数fのバースト波をパルス状にした駆動信号Sia、Sib、…、Sihを繰返周期Tたとえば10msで送出してフェイズドアレイ式超音波センサ1を駆動する。他方、超音波発信受信ユニット2内蔵の超音波受信回路は超音波センサ1が受信したエコー信号S0a、S0b、…、S0hを合算してS=S0a+S0b+…+S0hとして受信する。エコー信号Sはアナログ/ディジタル(A/D)変換器3によってA/D変換される。
【0014】
超音波発信受信ユニット2及びA/D変換器3はCPU、ROM、RAM等よりなるコンピュータ等によって構成される制御ユニット4に接続される。制御ユニット4はパルス信号P及び位相δを送出して超音波発信受信ユニット2の超音波発信回路を繰返周期Tで動作させ、他方、超音波発信受信ユニット2からA/D変換器3を介して繰返周期Tでエコー信号Sを受信する。また、制御ユニット4には表示ユニット5が接続されている。
【0015】
図2図1のフェイズドアレイ式超音波センサ1の送信超音波の入射角度を説明するための図である。フェイズドアレイ式超音波センサ1の振動子1a、1b、…、1hは超音波発信受信ユニット2内蔵の超音波発信回路によって駆動されるが、その際の周波数fの駆動信号Sia、Sib、…、Sihの位相は制御ユニット4の制御のもとで独立に制御される。たとえば、駆動信号Sia、Sib、…、Sihの各位相がこの順でδで少しずつ遅れると、図2の(A)に示すごとく、ホイヘンスの原理による合成波面WFAが形成され、超音波入射方向は角度-αとなる。他方、駆動信号Sia、Sib、…、Sihの各位相がこの順でδで少しずつ進むと、図2の(B)に示すごとく、ホイヘンスの原理による合成波面WFBが形成され、超音波入射方向は角度+βとなる。この位相δの制御は、制御ユニット4からδを受けた超音波発信受信ユニット2において、超音波発信回路の出力Sから駆動信号Sia、Sib、…、Sihを形成する回路たとえばマイクロコンピュータを内蔵することによって達成できる。尚、δが正のときに図2の(A)の合成波面WFAが形成され、δが負のときに図2の(B)の合成波面WFBが形成されるものとする。
【0016】
図1の制御ユニット4の動作を図3のフローチャートを参照して説明する。尚、図3のフローチャートは制御ユニット4のROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納される。
【0017】
始めに、ステップ301にて、振動子1a、1b、…、1hの位相差δ(>0)とすると共に、繰返周期Tのパルス信号Pで超音波発信受信ユニット2を制御すると、超音波発信受信ユニット2はフェイズドアレイ式超音波センサ1の振動子1a、1b、…、1hを繰返周期Tの超音波周波数fたとえば2MHzの駆動信号Sia、Sib、…、Sih図2の(A)の-α駆動させる。
【0018】
次に、ステップ302にて、図4に示すごとく、フェイズドアレイ式超音波センサ1によって受信されたフェイズドアレイ式超音波センサ1側の配管W内の欠陥FAからのエコー信号SFAをA/D変換して取込む。
【0019】
次に、ステップ303にて、従来の超音波式探傷装置の場合と同様に、欠陥FAの距離Dを
D=c・Δt/2
により演算する。これにより、フェイズドアレイ式超音波センサ1側の配管Wの欠陥FAを検出する。
【0020】
次に、ステップ304にて、ステップ303にて演算された欠陥FAの距離Dと共に、欠陥FAのエコー信号SFAを表示ユニット5に表示する。
【0021】
次に、ステップ305にて、振動子1a、1b、…、1hの位相差δ(<0)とすると共に、繰返周期Tのパルス信号Pで超音波発信受信ユニット2を制御すると、超音波発信受信ユニット2はフェイズドアレイ式超音波センサ1の振動子1a、1b、…、1hを繰返周期Tの超音波周波数fたとえば2MHzの駆動信号Sia、Sib、…、Sih図2の(B)の+β駆動させる。
【0022】
次に、ステップ306にて、フェイズドアレイ式超音波センサ1によって受信された図5に示す流路内の微小反射体M(j=1,2,…)からのエコー信号SをA/D変換して取込んでRAMに格納する。
【0023】
次に、ステップ306にて、RAMに格納されたエコー信号Sを用い、この周波数スペクトルF(f)に基づいて流路内の計測位置jの流速v及び流速分布を演算する。より詳細には、図5の微小反射体Mの近傍の拡大図である図6を参照すると、フェイズドアレイ式超音波センサ1の超音波信号S(Sia、Sib、…、Sih)は流路の伝播方向の流速vに対して角度γで入射し、ドップラー効果を受け易くする。従って、計測される流速v’はv’=vcosγなる一定の関係を有するので、便宜上、v’、vを区別せずv’をvとする。微小反射体Mから反射されたエコー信号Sの周波数スペクトルF(f)は、図7の(A)に示すごとく、中心周波数fを有する。尚、周波数スペクトルFはたとえばフーリエ変換値である。この場合、超音波信号Sの周波数fと周波数スペクトルF(f)の中心周波数fとの差はドップラーシフト周波数fであり、次のごとく表せる。
=Δθ/(2πT)
但し、Δθ図7の(B)に示す超音波信号Sとエコー信号Sとの位相差、
Tは超音波信号Sの繰返周期Tたとえば10msである。
従って、流速vは、
=c・f/(2・f
但し、cは流路内での超音波の速度
によって計測できる。次いで、すべての計測位置j(j=1,2,…)における流速vを計測して図5に示す流速分布Bを得る。尚、フェイズドアレイ式超音波センサ1と計測位置jとの距離は超音波信号Sとエコー信号Sとの時間差で演算できる。
【0024】
尚、ステップ307の流速分布Bは、計測位置jのエコー信号Sの位相差に基づいて演算しているが、計測位置jでの繰返周期で少なくとも隣接する2つのエコー信号S間の周波数スペクトル間の位相差の傾き(位相差分)に基づいて演算してもよい。
【0025】
次に、ステップ308にて、ステップ307にて演算された流速分布Bの平均流速vav、標準偏差σを演算する。
【0026】
次に、ステップ308にて、フェイズドアレイ式超音波センサ1側の配管Wの図5の欠陥FBの検出を行う。たとえば、予め、欠陥FBが存在しない場合の図5に示す参照流速分布Bの平均流速vav(R)及び標準偏差σ(R)を求めておき、
|vav-vav(R)| > ε1(ε1は定数)
|σ-σ(R)| > ε2(ε2は定数)
のいずれかが成立したときに欠陥FBが存在するものとする。
【0027】
次に、ステップ310にて、欠陥FBと共に、流速分布Bを表示ユニットに表示する。
【0028】
そして、ステップ311にて、図3のルーチンは終了する。
【0029】
上述のごとく、欠陥FAおよび欠陥FBがある場合、欠陥FAは配管W内を伝搬する超音波により捉えられ、欠陥FBは流速分布Bの変化により捉えられる。従って、超音波の入射角度を任意に設定できるので、配管内欠陥すべてを容易に検出できる。
【0030】
また、フェイズドアレイ式超音波センサは、二次元測定のリニア式でも三次元測定のマトリクス式でもよい。
【0031】
さらに、フェイズドアレイ法により超音波入射角度を順次変更し、多次元の測定が可能である。このとき、欠陥エコーを、たとえば開口合成法などにより重ね合わせることにより、より位置分解能の高い探傷が可能である。
【0032】
尚、上述の実施の形態では、流速分布を測定するのに1つのフェイズドアレイ式超音波センサを用いているが、これに限定されない。たとえば、フェイズドアレイ式超音波センサを複数使用することにより、より詳細かつ高精度に計測を行うことができる。また、フェイズドアレイ式超音波センサ1と、超音波発信受信ユニット2、A/D変換器3、制御ユニット4及び表示ユニット5とは分離されているので、フェイズドアレイ式超音波センサ1の遠隔操作が容易である。
【0033】
さらにまた、配管Wは超音波を透過する材質のものであれば、配管の外にフェイズドアレイ式超音波センサを設置して計測できる。
【0034】
さらにまた、上述の実施の形態では、流速分布に基づく配管内の欠陥FBを検出しているが、流速分布を演算して欠陥FBを検出しなくてもよい。この場合に、流速分布は原子炉の循環水や冷却水の配管流れ、汚水施設や下水施設などの配管流れ、汚水・上下水道などの管内流の流れ場解析や流れ場モニタリングへ応用できる。さらにまた、上述の実施の形態では、配管内の欠陥FA及び流速分布に基づく配管内の欠陥FBを検出しているが、流速分布に基づく配管内の欠陥FBのみを検出するようにしてもよい。
【0035】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更に適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
欠陥探傷する対象は、原子炉の循環水や給水配管、汚水施設や下水施設などの配管や、汚水・上下水道などの管に限定されず、高分子材料・工業材料プロセスの流動場や食品加工プロセスに関する配管などにも適用できるばかりか、気液二相流や液膜流の配管にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1…フェイズドアレイ式超音波センサ
2…超音波発信受信ユニット
3…A/D変換器
4…制御ユニット
5…表示ユニット
W…配管
…微小反射体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8