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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】分散送液装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/96 20220101AFI20230518BHJP
   B01F 23/47 20220101ALI20230518BHJP
   B01F 23/57 20220101ALI20230518BHJP
   A23L 11/00 20210101ALN20230518BHJP
【FI】
B01F27/96
B01F23/47
B01F23/57
A23L11/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019122912
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021007914
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592035154
【氏名又は名称】株式会社田定工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】田 益久
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-518843(JP,A)
【文献】実開昭63-182296(JP,U)
【文献】米国特許第04018598(US,A)
【文献】特開平05-123560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 21/00 - 25/90
F04D 1/00 - 13/16
F04D 17/00 - 19/02
F04D 21/00 - 25/16
F04D 29/00 - 35/00
A23L 11/00 - 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を送液するための円管部と、この円管部内へ前記液体が導入される上流側開口部と、前記液体が前記円管部外へ送り出される下流側開口部とを有する送液管と、
前記円管部を塞ぐように配置され、上流側から下流側へ前記液体を送液可能な連通路と、前記円管部の内壁径に接することのない外径とを備えた回転体と、
この回転体を円管部の軸心同軸上に回動させる回動手段と、
前記回転体の上流側又は下流側の送液管内を流れる液体に被分散液又は被分散微粒子粉を供給して含有させる供給手段とを備えた分散送液装置であって、
前記回転体の連通路は、
上流側端面に設けられる1つ以上の吸入口と、
この吸入口に連通する下流側端面に設けられる1つ以上の吐出口とに連通するものであり、
前記吸入口は前記吐出口よりも前記回転体の回動軸心に近い位置に配置され、
前記吐出口は前記吸入口よりも前記回動軸心から半径方向外側の位置に配置されることを特徴とする分散送液装置。
【請求項2】
前記回転体が、配置された前記円管部の内壁面に一定の間隙を隔てた側面部とを備えた円筒体であることを特徴とする請求項1に記載の分散送液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液体を送液する際に、この液体中に他の液体や微粒子粉を均一に混合分散することが可能な分散送液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転時に容器等にぶつけた場合に破片や削りカスが生じることが少ない攪拌用回転体が提案されている(特許文献1参照)。この回転体は、外部に突起が少なく、回転軸に近い箇所に設けられた吸入口と、回転体の最外周部に設けられた吐出口とを繋ぐ流通路が、吸入口から回転軸方向に沿って直進した後に直角に曲がり、回転体本体の半径方向外側に向けて直進して吐出口に到達するように形成されているものである。
【0003】
このため、液体中に攪拌用回転体を浸漬して回転させると、流通路内に進入した液体も回転体と共に回転する。これにより、流通路内の流体に遠心力が作用し、流通路内の流体が回転体の半径方向外側に向けて流動することにより、回転体の周囲に液流を生じさせる。これにより、溶液を撹拌するものである。
【0004】
この回転体については、粘性の高い液体に他の液体や微粒子粉を混合する場合に、均一に撹拌することができる優れた特徴がある反面、発生する流れは流通路の容積に応じた大きさとなることは否めず、大容量の撹拌には不向きであった。このため、本出願人は、大量製造が容易で、尚且つ、大型で大容量の液体又は気体による流体を効率よく撹拌することのできる撹拌用回転体を提案した(特許文献2参照)。
【0005】
この撹拌用回転体は、予め定められた平面に対して垂直な回転軸を中心に予め定められた回転方向に回転する回転体であって、内部に回転軸を取り巻く環状中空部を備えたドーナツ状本体部と、回転軸に近接するドーナツ状本体部に設けられ、本体部の回転方向に向かって開口した吸入口と、ドーナツ状本体部の最外周表面に設けられる1つ以上の吐出口とを備え、吸入口から環状中空部を介して吐出口まで連通されているものであり、回転軸に沿った螺旋状の流れを作る羽根がないため、キャビテーションの発生を起こさず効率よく撹拌することができる利点を奏するものである。
【0006】
一方、粘性の高い液体を送液しながらこの液体中に他の液体や微粒子粉を均一に分散することが望まれている。例えば、合成樹脂を固化させる際に、粘性の高い接着剤に硬化を促進させる硬化剤を均一に混合することや、豆腐の製造に際して、粘性の高い豆乳ににがり等の凝固剤を均一に混合する場合等では、少量であれば均一に混合することは容易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4418019号公報
【文献】特開2015-171684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、大量に混合する必要がある場合には、一つの撹拌槽内で撹拌することを想定すると、大容量の槽では、粘性の高い液体を均一に撹拌するには時間がかかる。このため、分散によって凝固等の液体の物性が変更される状況では、大容量の槽での分散ではムラが生じることとなる。
【0009】
このため、粘性の高い液体を送液する間に、他の液体や微粒子粉を均一に分散する分散送液装置が望まれている。加えて、他の液体や微粒子粉を均一に分散するに際して、粘性の高い液体であってもキャビテーションを起こし難い撹拌手段を備えた分散送液装置が更に望まれている。
【0010】
本発明は、通常の水に近い粘性の液体は勿論のこと粘性の高い液体であっても、液体を送液する間に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができ、更に、キャビテーションを起こし難い撹拌手段を備えた分散送液装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明に係る分散送液装置は、液体を送液するための円管部と、この円管部内へ前記液体が導入される上流側開口部と、前記液体が前記円管部外へ送り出される下流側開口部とを有する送液管と、
前記円管部を塞ぐように配置され、上流側から下流側へ前記液体を送液可能な連通路と、前記円管部の内壁径に接することのない外径とを備えた回転体と、
この回転体を円管部の軸心同軸上に回動させる回動手段と、
前記回転体の上流側又は下流側の送液管内を流れる液体に被分散液又は被分散微粒子粉を供給して含有させる供給手段とを備えた分散送液装置であって、
前記回転体の連通路は、
上流側端面に設けられる1つ以上の吸入口と、
この吸入口に連通する下流側端面に設けられる1つ以上の吐出口とに連通するものであり、
前記吸入口は前記吐出口よりも前記回転体の回動軸心に近い位置に配置され、
前記吐出口は前記吸入口よりも前記回動軸心から半径方向外側の位置に配置されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係る分散送液装置は、請求項1に記載の回転体が、配置された前記円管部の内壁面に一定の間隙を隔てた側面部とを備えた円筒体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、通常の水に近い粘性の液体は勿論のこと粘性の高い液体であっても、液体を送液する間に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができ、更に、キャビテーションを起こし難い撹拌手段を備えた分散送液装置を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の分散送液装置の一実施例の構成を示す説明図である。
図2図1の分散送液装置の送液管内の流れの計算モデルの概観を示す説明図である。
図3】送液管内の計算セルの断面を示す説明図である。
図4】回転体内の計算セルの断面を示す説明図である。
図5】送液管内の流れの流線状態を示す説明図であり、a図は回転体の回転速度が500rpm、b図は回転体の回転速度が1000rpmを示す。
図6図2の500rpmの管軸に垂直な断面での断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す説明図であり、A図はz=0.1m、B図はz=0.08m、C図はz=0.06m、D図は0.04m、E図は0.02m、F図は0.015mにおける断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す。
図7図6に引き続く図2の500rpmにおける管軸に垂直な断面での断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す説明図であり、G図はz=0.01m、H図はz=0.005m、I図はz=-0.001m、J図はz=-0.005m、K図はz=-0.01m、L図はz=-0.02mにおける断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す。
図8図2のz=60mmにおける500rpmの流れの速度分布を示す説明図であり、a図は断面速度の大きさ及びベクトルを示し、b図は管軸方向速度の大きさを示す。
図9図2のz=60mmにおける1000rpmの流れの速度分布を示す説明図であり、a図は断面速度の大きさとベクトルを示し、b図は管軸方向速度の大きさを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明においては、液体を送液するための円管部と、この円管部内へ液体が導入される上流側開口部と、液体が円管部外へ送り出される下流側開口部とを有する送液管と、円管部を塞ぐように配置され、上流側から下流側へ液体を送液可能な連通路と、円管部の内壁径に接することのない外径とを備えた回転体と、この回転体を円管部の軸心同軸上に回動させる回動手段と、回転体の上流側又は下流側の送液管内を流れる液体に被分散液又は被分散微粒子粉を供給して含有させる供給手段とを備えた分散送液装置である。
【0018】
回転体の連通路は、上流側端面に設けられる1つ以上の吸入口と、この吸入口に連通する下流側端面に設けられる1つ以上の吐出口とに連通するものであり、吸入口は吐出口よりも回転体の回動軸心に近い位置に配置され、吐出口は吸入口よりも回動軸心から半径方向外側の位置に配置されてるものである。これにより、通常の水に近い粘性の液体は勿論のこと粘性の高い液体であっても、液体を送液する間に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができ、更に、キャビテーションを起こし難い利点を奏する。
【0019】
即ち、円管部を塞ぐように配置され、上流側から下流側へ液体を送液可能な連通路と、円管部の内壁径に接することのない外径とを備えた回転体について、回転体の連通路は、上流側端面に設けられる1つ以上の吸入口と、この吸入口に連通する下流側端面に設けられる1つ以上の吐出口とに連通するものであり、吸入口は吐出口よりも回転体の回動軸心に近い位置に配置され、吐出口は吸入口よりも回動軸心から半径方向外側の位置に配置されている。従って、回転体を回動することにより、吐出口が円筒状の回転体の側面近傍に配されているため、吐出口内部に存在する流体への遠心力の方が吸入口内部に存在する流体への遠心力よりも大きくなる。
【0020】
このため、吐出口から流体が吐出され、連通路を介して吸入口により液体が浸入される。回転体は回動軸で回転しているため、吐出口から連続して吐出する液体の流れは回動軸周りに回りながら流れ、通常の水に近い粘性の液体は勿論のこと粘性の高い液体であっても、液体を送液する間に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができる。円管部内の流れについては、回転体によって回動軸周りに回りながら流れるため、層流でも乱流でも良好に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができる。多くの場合には、乱流状態で円管部内を流れる状態であっても回転体によって回動軸周りに回りながら流れる。加えて、回転軸に沿った螺旋状の流れを作る羽根がないため、キャビテーションの発生を起こさず効率よく他の液体や微粒子粉を均一に分散することができる利点を奏する。
【0021】
本発明の分散送液装置で送液される液体としては、粘度の高い液体でも液送中に回転体で良好に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができる。例えば、通常の水に近い粘性の液体を送液する際に、液体や微粒子粉を均一に分散することは勿論のこと、接着剤を固化させる際に、粘性の高い合成樹脂に硬化を促進させる硬化剤を均一に混合することや、豆腐の製造に際して、粘性の高い豆乳ににがり等の凝固剤を液送しながら均一に混合することができる。
【0022】
本発明の分散送液装置で用いる回転体としては、液体を送液するための円管部と、この円管部内へ前記液体が導入される上流側開口部と、前記液体が前記円管部外へ送り出される下流側開口部とを有する送液管内の円管部を塞ぐように配置され、上流側から下流側へ前記液体を送液可能な連通路と、前記円管部の内壁径に接することのない外径を備えるものであればよく、好ましくは、配置された円管部の内壁面に一定の間隙を隔てた側面部とを備えた円筒体であるものが採用される。これにより、円筒体の回転体の側面部が、配置された円管部の内壁面と小さな間隙を介して配置されることができるため、間隙から入り込む液体を小さくすることができるため、吐出口から連続して吐出する液体の流れは回動軸周りに周りながら流れ、液体を送液する間に他の液体や微粒子粉を均一に分散することができる。
【0023】
本発明の吸入口については上流槽側端面に1つ以上設けられ、本発明の吐出口については吸入口に連通する下流槽側端面に1つ以上設けられればよく、吸入口は吐出口よりも回転体の回動軸心に近い位置に配置され、吐出口は吸入口よりも回動軸心から半径方向外側の位置に配置されるものであればよい。
【0024】
好ましい吸入口としては、上流槽側端面の回動軸心回りに均等に2つ以上配され、好ましい吐出口としては、下流槽側端面の円管壁面側に均等に吸入口と同数であればよく、一つの吸入口とこれに対応する一つの吐出口とを連絡する吸入口と同数の連通路を備えたものであればよい。後述する実施例では、吸入口と吐出口とが回動軸周りに均等に6つ配置されているものが開示されている。
【実施例
【0025】
図1は本発明の分散送液装置の一実施例の構成を示す説明図である。図1に示す通り、本実施例の分散送液装置10は、送液管を構成する円管部上方の上流側開口部11と、その下方に回動軸14の軸受14aを介して配された円管部混合室13と、この円管部混合室13の側方に設けられた下流側開口部12とを備え、上流側開口部11と円管部混合室13との間に回動軸14で回動する円筒形状の回転体20が配されている。
【0026】
回転体20の外径は、回転体20の側面部と円管部混合室13の内壁との間隙が僅かであり、配されている円管状の円管部混合室13の内壁面に対して接することのない外径としている。尚、回転体20の円筒形の側面部と円管部混合室13の内壁面との間隙は、0.1mmとしている。尚、少なくとも1mm以下程度とすることにより、間隙からの円管部混合室13への流入を防ぎ、回転体20での分散を効率よく行うことができる。
【0027】
円筒形の回転体20には、上流側端面に回動軸14の軸心回りに均等に6つ設けられた吸入口21と、下流側端面に円管部混合室13の内壁面側に均等に6つ配された吐出口23とを備え、個々の吸入口21とこれに1つ対応する吐出口23とは連通路22で連通されている。個々の吐出口23は、吸入口21よりも回動軸から半径方向外側の位置に配置されている。
【0028】
円管部混合室13の下方には連結室18を介して回動軸14を回動するモータ15が配され、連結室18内でモータ15の駆動軸16と回動軸14とを着脱可能にする連結部17で連結されている。円管部混合室13と連結室18との回動軸14の軸受14bについては、円管部混合室13内の液体が連結室18へ漏れ出ないように4つのシール部19が配されている。
【0029】
本実施例の分散送液装置10は、粘性の高い液体としての豆乳ににがり供給手段30で上流側開口部11ににがり(苦汁)を添加し、回転体20で吸入させつつ円管部混合室13側に吐出することにより、円管部混合室13内で混合分散させながら下流側開口部12へ送液する。下流側開口部12以降で凝固容器や凝固槽等で凝固させて豆腐とするものであるが、粘性の高い合成樹脂に硬化を促進させる硬化剤を均一に混合する分散送液装置でも同様の構成で行うことができる。
【0030】
回転体20の吸入口21が回動軸14の近傍に、吐出口23が回転体20の側面近傍に配されているため、吐出口23内部に存在する流体への遠心力の方が吸入口21内部に存在する流体への遠心力よりも大きくなる。このため、吐出口23から流体が吐出され、連通路22を介して吸入口21により液体が浸入される。回転体20は回動軸14で回転しているため、吐出口23から連続して吐出する液体の流れは回動軸周りに回りながら流れる。
【0031】
このため、回転体20の回動によって送液されるが、この回転体20だけの送液量で均一な分散状態が得られる場合には、回転体20だけの送液量で行う。粘性の高い液体を送液する場合等のように回転体20だけの送液量で不足する場合には、送液量を増加させるため、別途の送液ポンプを追加させてもよいし、上流側開口部11に連通する槽を上位高さ位置に配置し、下流側開口部12を下位高さ位置に配置して豆乳の高位から低位への流れを用いてもよい。また、豆乳の送液量に応じてにがりを添加する場合についても、豆乳の送液量を計測してこの総液量に見合った量のにがりを定量ポンプで添加することにより、均一な分散状態を得ることができる。
【0032】
図1に示した分散送液装置の回転体20による撹拌流れをシミュレートして検証した。図2図1の分散送液装置の送液管内の流れの計算モデルの概観を示す説明図である。図3は送液管内の計算セルの断面を示す説明図である。図4は回転体内の計算セルの断面を示す説明図である。円管部内に設置した回転体20によって生じる流れを、数値シミュレーションで予測した。計算環境としては、ソフトウェア:オープンソースCFD(Computational Fluid Dynamics)「ソフトウェァOpen FOAM v1806」を用いた。
【0033】
モデル全体像を示す図2に示す通り、流路全体を計算対象とした。計算領域全体に、回転体の回転を模擬する遠心力を考慮することで、計算領域全体の回転を再現した。一定回転速度で回る座標系から観察すると考える、定常現象として扱う。(SRF Simple Foam)パイプ壁面は静止し、回転体および固定軸が指定した回転数で回転することとなる。シミュレーションにおける流路入口は、回転体20の底面から100mm上流とし、 入口全体で一様な速度(流量/管路断面積)とした。また、流路出口は回転体20上面から200mm下流とした。
【0034】
図3に円管内断面(z=60mm)の計算セルの概要を図4に回転体内の孔部断面の計算セルの概要を示す。基準となるセルの大きさ(1辺の長さ)は2mmである。必要に応じて、そのセルを2分の1に分割し、細分化した。壁面近傍には2層の境界層レイヤーを追加した。全体のセル数は結果的に約75万となった。
【0035】
計算条件は、次の通りである。流量Q は、50L/minとした。即ち、管入口面積S(回転軸分の面積減少を無視)とし、平均流速は Q/S(=4Q/PI/D^2)=0.4244m/s(管路入口に一様速度と付与)となった。尚、レイノルズ数 Re=2.6×10(乱流と考える)とした。回転体20の回転は、500rpm、または、1000rpmを想定した(500/60=8.3round per sec)。相当回転速度は半径0.01mで0.5m/s程度、半径0.025mで1.3m/s程度流体は水とした(動粘度0.8e-6m/s)。乱流モデルは、レイノルズ平均型 k-ω SST乱流モデル(旋回非考慮)とした。
【0036】
図5は送液管内の流れの流線状態を示す説明図であり、a図は回転体の回転速度が500rpm、b図は回転体の回転速度が1000rpmを示す。全体の流れとしては、図5に示す通り、回転体20より上流では、乱流であるため流れは主に管軸方向である。もし、回転体がない状態であれば、この乱流中に、例えばにがり供給手段30でにがり等を添加したとしても、均一な分散状態を得るには、相応の長さの流れが必要となる。
【0037】
しかしながら、回転体20への通過後には、500rpm及び1000rpm共に流路全体が回転する流れとなり、円管部内の全体に渡る旋回流が生じることが分かった。この全体に亘る旋回流によって均一な分散状態が得られるものと思われた。そのため、動粘度を水とした乱流状態でのシミュレートで円管部内の全体に渡る旋回流が生じているため、豆乳のように高い粘度のものであっても回転数を適宜変更することにより、円管部内の全体に渡る旋回流が生じることが予想された。
【0038】
図6図2の500rpmの管軸に垂直な断面での断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す説明図であり、A図はz=0.1m、B図はz=0.08m、C図はz=0.06m、D図は0.04m、E図は0.02m、F図は0.015mにおける断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す。図7図6に引き続く図2の500rpmの管軸に垂直な断面での断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す説明図であり、G図はz=0.01m、H図はz=0.005m、I図はz=-0.001m、J図はz=-0.005m、K図はz=-0.01m、L図はz=-0.02mにおける断面速度の大きさ及びベクトルと管軸方向速度の大きさとを示す。
【0039】
管軸に垂直な断面での管軸方向の速度の大きさ、および、断面内方向の速度の大きさを示す図6及び図7に示す通り、回転体20への通過前は管軸方向に直進して流れる(L図、K図、J図)。回転体20の吸入口21に進入すると(I図)、流路面積が減少するため、流体の速度の大きさが増大することが判った。尚、この流れは連通路22に沿って流れる。
【0040】
回転体20の回転によって、この部分の流体は回転速度に応じた回転成分を得ることとなる(H図、G図、F図)。回転体20の吐出口23から出た流れは、その勢いを保ったまま、円管部内壁面へ衝突する(E図)。回転体20から離れると、回転成分はやや弱まるが、円管部内全体に渡る旋回流が生じていることが判った(D図、C図、B図、A図)。
【0041】
図8図2のz=60mmにおける500rpmの流れの速度分布を示す説明図であり、a図は断面速度の大きさ及びベクトルを示し、b図は管軸方向速度の大きさを示す。図9図2のz=60mmにおける1000rpmの流れの速度分布を示す説明図であり、a図は断面速度の大きさとベクトルを示し、b図は管軸方向速度の大きさを示す。
【0042】
回転数による比較としては、z=60mmの断面における速度分布の回転数による比較を示す図8及び図9に示す通り、回転数の増加によって、断面内の旋回速度が大きくなることが判った。
【符号の説明】
【0043】
10 …分散送液装置、
11 …上流側開口部、
12 …下流側開口部、
13 …円管部混合室(円管部)、
14 …回動軸、
14a…軸受、
14b…軸受、
15 …モータ、
16 …駆動軸、
17 …連結部、
18 …連結室、
19 …シール部、
20 …回転体、
21 …吸入口、
22 …連通路、
23 …吐出口、
30 …にがり供給手段(供給手段)、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9