(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】表皮インサート射出成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20230518BHJP
B29C 33/18 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/18
(21)【出願番号】P 2019178993
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000168115
【氏名又は名称】KTX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克也
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-249987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00-45/84
B29C33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮をセットする第1型(1)と、樹脂を射出する射出口(23)がある第2型(20)とを備えた表皮インサート射出成形型において、
第1型(1)は、複数の真空吸引孔(5)を有する厚さ2~6mmのシェル型(2)と、シェル型(2)をバックアップするための、表面がシェル型(2)の裏面と合致する形状をなす厚さ10mm以上のバックアップ型(10)とを含み構成され、
互いが対向した相手面となるバックアップ型(10)の表面又はシェル型(2)の裏面のいずれか一方又は両方に、相手面を受ける分散した複数の受け面(14)を残して、ネット状に繋がる通気溝(13)が凹設され、
1つの受け面(14)の面積が15~500mm
2であり、
受け面(14)の合計面積と通気溝(13)の合計開口面積との比が40:60~90:10であり、
通気溝(13)の溝深さが0.2~3mmであり、
通気溝(13)の溝幅が1~7mmであり、
バックアップ型(10)に、通気溝(13)から型外部へ連通する通気穴(15)が形成されていることを特徴とする表皮インサート射出成形型。
【請求項2】
通気溝(13)のネット状が四角格子状であり、受け面(14)の形状が四角形である請求項1記載の表皮インサート射出成形型。
【請求項3】
通気溝(13)の溝幅が1~
5mmである請求項1又は2記載の表皮インサート射出成形型。
【請求項4】
真空吸引孔(5)は、シェル型(2)の表面側の一定径孔部(6)と、一定径孔部(6)よりも拡径したシェル型(2)の裏面側の拡径孔部(7)とからなる請求項1、2又は3記載の表皮インサート射出成形型。
【請求項5】
一定径孔部(6)は、直径0.07~0.3mmであり、長さ0.5~2mmである請求項4記載の表皮インサート射出成形型。
【請求項6】
シェル型(2)の表面に微細凹凸模様(8)が形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の表皮インサート射出成形型。
【請求項7】
シェル型(2)は、バックアップ型(10)に対して取り外し可能に取り付けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の表皮インサート射出成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮インサート射出成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表皮インサート射出成形は、インサート部品としての表皮の裏面に樹脂を射出して樹脂基材を成形し、表皮と樹脂基材とが一体化した樹脂成形品を得る成形法である。同法に用いる表皮インサート射出成形型は、表皮をセットする第1型と、樹脂を射出する射出口がある第2型とを備える。
【0003】
特許文献1に記載された表皮インサート射出成形型では、予め真空成形などによって第1型の型面に合致する形状に賦形しておいた表皮(合成樹脂シート)を、第一型の型面に当ててセットする。その第一型に、真空吸引孔は必要ないため形成されていない。しかし、射出成形型とは別に、予め表皮を賦形する真空成形型が必要であり、工程も多くなる。また、第一型の型面に例えば革シボ模様を形成する場合、形成方法はエッチングが主であり、手間がかかる。
【0004】
特許文献2に記載された表皮インサート射出成形型では、平らな表皮(熱可塑性合成樹脂フィルム)を第1型の型面に真空吸引して賦形する。その第1型には、多数の真空吸引孔が形成されている。真空吸引孔は、表皮に吸引跡が付かないように、直径1mm未満の微小孔とする必要があるが、分厚い第1型に機械加工またはレーザー加工により微小孔を形成するのは手間がかかる。また、上記と同様に、革シボ模様のエッチングに手間がかかる。
【0005】
そこで、本出願人は先に、特許文献3の表皮インサート射出成形型において、第1型を、電鋳により形成した真空吸引孔を有するシェル型と、シェル型の裏面よりも一回り大きい収容凹部を有するバックアップ型とで構成し、シェル型と収容凹部との間の間隙を型外部から減圧して、シェル型に表皮を真空吸引することを提案した。シェル型はそれだけでは射出圧力に耐えられないので、バックアップ型の収容凹部から突設した複数個の支持突片で、シェル型をバックアップ(背面支持)する。
真空吸引孔は電鋳と同時に形成されるため、上記の機械加工またはレーザー加工は不要である。真空吸引孔の直径は、シェル型の表面側で小さく、裏面側で拡径しているため、表皮を吸引跡を付けることなく強力に吸引することができる。また、型面に革シボ模様を形成する場合、電鋳時にモデルから転写して形成できるため、手間がかからない。このように、同型は多くの利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭55-5244号公報
【文献】特開平1-202415号公報
【文献】特開昭61-14922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の表皮インサート射出成形型のような、バックアップ型の収容凹部から突設した複数個の支持突片では、シェル型を十分にバックアップすることができず、シェル型が高い射出圧力に耐えられずに型面変形するおそれがあった。また、支持突片も、細長いものであったため強度が不足し、変形するおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、真空吸引孔を有するシェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型が高い射出圧力に耐えて型面変形しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表皮をセットする第1型と、樹脂(エラストマーを含む。)を射出する射出口がある第2型とを備えた表皮インサート射出成形型において、
第1型は、複数の真空吸引孔を有する厚さ2~6mmシェル型(殻状型)と、シェル型をバックアップするための、表面がシェル型の裏面と合致する形状をなす厚さ10mm以上のバックアップ型とを含み構成され、
互いが対向した相手面となるバックアップ型の表面又はシェル型の裏面のいずれか一方又は両方に、相手面を受ける分散した複数の受け面を残して、ネット状に繋がる通気溝が凹設され、
1つの受け面の面積が15~500mm2であり、
受け面の合計面積と通気溝の合計開口面積との比が40:60~90:10であり、
通気溝の溝深さが0.2~3mmであり、
通気溝の溝幅が1~7mmであり、
バックアップ型に、通気溝から型外部へ連通する通気穴が形成されていることを特徴とする。
【0010】
<作用>
バックアップ型の表面又はシェル型の裏面に形成された複数の受け面が、相手面を当接して受けることにより、シェル型がバックアップされる。シェル型は、厚さ2~6mmであるから、電鋳等により製造しやすく、真空吸引孔も形成しやすい。シェル型の厚さは2.5~5mmがより好ましい。バックアップ型は、厚さ10mm以上であるから、剛性が高い。バックアップ型の厚さは20mm以上がより好ましい。
【0011】
型外部の真空吸引装置により通気穴を真空減圧すると、ネット状に繋がる通気溝を介して複数の真空吸引孔が真空減圧され、表皮がシェル型の表面(型面)に真空吸引される。
【0012】
1つの受け面の面積が15~500mm2であることにより、受け面が真空吸引孔を痛めたり塞ぎすぎたりすることなく、相手面を十分な面で受けて、シェル型を射出圧力で型面変形しないように十分にバックアップする。同面積が15mm2未満だと、受け面が1つの真空吸引孔の裏面に食い込みやすくなり、同面積が500mm2を越えると、1つの受け面が複数の真空吸引孔の裏面をまとめて塞ぎやすくなる。1つの受け面の面積は20~300mm2がより好ましく、25~200mm2が最も好ましい。
【0013】
受け面の合計面積と通気溝の合計開口面積との比が40:60~90:10であることにより、受け面によるシェル型のバックアップ性と、通気溝による通気性とがバランス良く得られる。同比で受け面が40よりも小さいと、バックアップ性が減少し、同比で通気溝が10よりも小さいと通気性が減少する。同比は40:60~80:20がより好ましい。
【0014】
通気溝の溝深さが0.2~3mmであることにより、通気溝による通気性と、通気溝の形成効率とがバランス良く得られ、また、受け面の下の部分(通気溝の底から受け面までの高さ部分)が、さほど高くならないので、特許文献3の支持突片のように強度不足で変形するというおそれもない。溝深さが0.2mm未満だと、通気性が減少し、溝深さが3mmを越えると、通気溝の形成効率が低下する。通気溝の溝深さは0.2~2mmがより好ましく、0.3~1mmが最も好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表皮インサート射出成形型によれば、真空吸引孔を有するシェル型をバックアップ型で十分にバックアップして、シェル型が高い射出圧力に耐えて型面変形しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は実施例の表皮インサート射出成形型の第1型を分解して示し、(a)はシェル型の斜視図、(b)はシェル本体部の部分拡大斜視図、(c)はバックアップ型の斜視図、(d)はバックアップ本体部の部分拡大斜視図である。
【
図2】
図2の(a)は第1型の分解断面図、(b)は第1型の斜視図である。
【
図3】
図3の(a)は第1型に表皮を当てがうときの断面図、(b)は第1型に表皮を真空吸引したときの断面図である。
【
図4】
図4の(a)は第1型を第2型に型閉じしたときの断面図、(b)は表皮の裏面に樹脂を射出したときの断面図である。
【
図5】
図5の(a)は脱型した成形品の断面図、(b)はトリミングした成形品の断面図である。
【
図6】
図6の(a)~(d)は実施例2~5の部分表面図である。
【
図7】
図7の(a)~(d)は実施例6~9の部分表面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.シェル型
シェル型の形状は、特に限定されない。
シェル型の材料としては、特に限定されないが、金属、セラミック等を例示できる。
シェル型の製法による種別は、特に限定されないが、電鋳により形成されたものが好ましい。製造効率が高く、微細凹凸模様をモデルからの転写で容易に形成できるからである。
【0018】
真空吸引孔としては、次の態様(1)(2)を例示できる。
(1)厚さ方向で一定径である真空吸引孔
真空吸引孔の製法による種別は、特に限定されないが、機械加工(ドリル加工等)、高エネルギビーム加工(レーザー加工、電子ビーム加工、イオンビーム加工等)により形成されたものを例示できる。
【0019】
(2)シェル型の表面側の一定径孔部と、一定径孔部よりも拡径したシェル型の裏面側の拡径孔部とから真空吸引孔
一定径孔部があると、型の表面磨きや長時間使用によって表面が多少摩耗しても(表皮に真空吸引跡が付かない程度に小さい)一定径を維持できる。また、拡径孔部とがあると、通気抵抗が減少して強い真空吸引力が得られるとともに、目詰りを軽減することができる。
一定径孔部は、直径0.07~0.3mmであり、長さ0.5~2mmであることが好ましい。
拡径孔部は、一定径孔部の終端からシェル型の裏面に向かうにつれて拡径するものが好ましく、最大直径が2mm以上であるものが好ましい。
【0020】
態様(2)の真空吸引孔としては、本出願人が先に提案した、特開平9-249987号公報に記載の方法(すなわち、孔の無いシェル表面層を電鋳形成し、該シェル表面層に一定径孔部を高エネルギビーム加工等により形成し、該シェル表面層の裏面にシェル裏面層を電鋳形成すると同時に拡径孔部を形成する。)で形成されたものを例示できる。
また、この方法において一定径孔部の形成方法を変更したものも例示できる。例えば、複数のフィラメントの先端部が埋まったシェル表面層を電鋳形成し、シェル裏面層を電鋳形成した後に、フィラメントの先端部をシェル表面層から抜くと、抜いた跡が一定径孔部となる。
【0021】
シェル型の表面(型面)に微細凹凸模様を形成しておくことにより、該表面に真空吸引された表皮の表面に該微細凹凸模様を転写した微細凹凸模様を賦形することができる。微細凹凸模様としては、特に限定されないが、革シボ模様、縫目模様、幾何学的単位模様の複数繰り返し配列等を例示できる。
【0022】
シェル型は、バックアップ型に対して取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。シェル型を、同一の形状で異なる微細凹凸模様を有するシェル型と、容易に入れ替えることができるからである。取り外し可能に取り付ける構造としては、ネジによる螺着、嵌合形状による嵌合等を例示できる。
【0023】
2.バックアップ型
バックアップ型の材料としては、特に限定されないが、金属、セラミック等を例示できる。但し、強度、熱伝導性、コスト等を総合的に考慮すると、鋼材が好ましい。
通気溝の製法による種別は、特に限定されないが、機械加工(切削加工等)、放電加工等により形成されたものを例示できる。
【0024】
通気溝のネット状としては、特に限定されないが、四角格子状(縦に対して横が交互にずれたものも含む。)、三角格子状、六角格子状(ハニカム状)、複数の円形の間に生じるネット状、中心からの複数の放射線と複数の同心円とが作るネット状等を例示できる。
受け面の形状としては、特に限定されないが、四角形、三角形、六角形、円形、扇形等を例示できる。
【0025】
これらのうち、通気溝のネット状が四角格子状であり、受け面の形状が四角形である態様が好ましい。四角格子状の通気溝は機械加工で容易に形成できるからである。
【0026】
通気溝の溝幅(開口幅)は、一定の場合は1~7mmであることが好ましく(1~5mmがより好ましい)、変化する場合には最も狭い箇所で1mm以上、最も広い箇所で7mm以下であることが好ましい。溝幅が1mmよりも小さいと、シェル型の真空吸引孔にかかりにくい傾向となり、溝幅が7mmよりも大きいと、シェル型のバックアップ性が減少する傾向となる。
【0027】
受け面のアスペクト比(最も長い方向の長さと最も短い方向の長さとの比率。例えば四角形の場合は長辺と短辺の比率。)が1:1~3:1であることが好ましい。バックアップ型の表面において、受け面によるバックアップ性に方向性をもたせないためである。
【0028】
通気穴は、通気溝のネット状の交叉した箇所に開口していることが好ましい。通気溝との連通性が高いからである。
通気穴の直径は、特に限定されないが、5~12mmであることが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0030】
実施例の表皮インサート射出成形型は、
図3及び
図4に示すように、表皮31をセットする第1型1と、樹脂を射出する射出口23がある第2型20とを備える。図示例では、第1型1はキャビティ型(雌型)であって可動型であり、第2型20はコア型(雄型)であって固定型であるが、これに限定されない。
【0031】
第1型1は、
図1~
図4に示すように、複数の真空吸引孔5を有する厚さ3mmシェル型2と、シェル型2をバックアップするための、表面がシェル型2の裏面と合致する形状をなす厚さ65~100mmのバックアップ型10とを含み構成されている。
【0032】
シェル型2は、電鋳により形成されたニッケル製のものであり、雌型として凹んだ形状のシェル本体部3(成形に関わる本体部分)と、シェル本体部3の周りのフランジ部4(成形に関わらない付随的部分)とからなる。真空吸引孔5は、シェル本体部3の全域に分散して複数(多数)形成されており、フランジ部4には形成されていない。また、微細凹凸模様としての革シボ模様8が、シェル本体部3の表面(型面)のみに電鋳時に形成されている。
【0033】
真空吸引孔5は、シェル型2の表面側の一定径孔部6と、一定径孔部6よりも拡径したシェル型2の裏面側の拡径孔部7とからなる。一定径孔部6は、直径0.1~0.3mmであり、長さ1~2mmである。拡径孔部7は、一定径孔部6の終端からシェル型2の裏面に向かうにつれて拡径し、最大直径が3~5mmである。この真空吸引孔5は[発明を実施するための形態]の項で述べた方法又はその変更例により形成されたものである。
【0034】
バックアップ型10は、鋼材製であり、表面がシェル本体部3の裏面と合致する凹形状をなすバックアップ本体部11(シェル本体部3をバックアップする本体部分)と、バックアップ本体部11の周りの座繰部12とを有する。バックアップ本体部11にシェル本体部3が入り込んで当接し、座繰部12にフランジ部4が落とし込まれて当接する。フランジ部4が座繰部12にネジで螺着されることにより、シェル型2はバックアップ型10に対して取り外し可能に取り付けられている。
【0035】
バックアップ本体部11の表面の全域には、シェル本体部3の裏面を受ける分散した複数の受け面14を残して、ネット状に繋がる通気溝13が凹設されている。
通気溝13のネット状は四角格子状であり、受け面14の形状は四角形である。
通気溝13の溝幅が2mmであり、1つの受け面14が10mm平方の正方形である(面積100mm2)場合、受け面14の合計面積と通気溝13の合計開口面積との比は69:31である。
通気溝13の溝深さは0.6mmである。
通気溝13は、機械加工(切削加工等)で容易に形成されたものであるが、放電加工等により形成されたものでもよい。
【0036】
バックアップ型10には、型外部から通気溝13に連通する通気穴15が形成されている。通気穴15は、通気溝13のネット状の交叉した箇所に受け面14の一部を切り欠きつつ複数本が開口しており、その複数本が型内で1本にまとまって型外面部に開口している。通気穴15の直径は8mmである。
【0037】
第2型20は、鋼製のものであり、シェル本体部3の凹みとの間にキャビティを形成するために、シェル本体部3の凹みよりも一回り小さい凸部21が形成されている。
第2型20は、樹脂通路22の一方に射出口23を有し、他方に射出ノズルの接続口24を有している。樹脂通路22の構成は、特に限定されない。
【0038】
この表皮インサート射出成形型を用いて、次の方法で成形品30を成形することができる。
図3(a)に示すように、加熱により軟化させた熱可塑性樹脂シートからなる表皮31を第1型1に当てがう。
図3(b)に示すように、型外部の真空吸引装置(図示略)により通気穴15を真空減圧すると、ネット状に繋がる通気溝13を介して複数の真空吸引孔5が真空減圧され、表皮31がシェル本体部3の表面(型面)に真空吸引される。このとき、前述のとおり拡径孔部7を有する真空吸引孔5によって吸引力が強いため、表皮31にはシェル本体部3の革シボ模様8が忠実に転写され、リアリティのある革シボ模様が賦形される。
【0039】
図4(a)に示すように、第1型1を第2型20に型閉じする。シェル本体部3と第2型20の間(厳密には表皮31と第2型20の間)にキャビティが形成される。
図4(b)に示すように、キャビティに樹脂を射出して樹脂基材32を成形する。このとき、前述したとおり、受け面14が相手面を十分な面で受けて、シェル型2を射出圧力で型面変形しないように十分にバックアップする。
【0040】
図5(a)に示すように、表皮31の裏面に樹脂基材32が一体化されてなる成形品30を脱型し、
図5(b)に示すように、表皮31の余分をトリミングする。
【0041】
次に、
図6~
図7に示す実施例2~9は、通気溝13と受け面14を変更した例であり、その他は実施例1と共通である。
図6(a)に示す実施例2は、通気溝13が四角格子状であり、受け面14が4mm×4mmの正方形である。
図6(b)に示す実施例3は、通気溝13が四角格子状であり、受け面14が15mm×15mmの正方形である。
図6(c)に示す実施例4は、通気溝13が四角格子状であり、受け面14が10mm×20mmの長方形である。
図6(d)に示す実施例5は、通気溝13が縦溝に対して横溝が千鳥状にずれた四角格子状であり、受け面14が10mm×20mmの長方形である。
【0042】
図7(a)に示す実施例6は、通気溝13が三角格子状であり、受け面14が一辺10.4mmの正三角形である。
図7(b)に示す実施例7は、通気溝13が六角格子状(ハニカム状)であり、受け面14が一辺5.85mmの正六角形である。
図7(c)に示す実施例8は、通気溝13が四角格子点(ピッチ12mm)に配列した複数の円形の間に生じるネット状であり、受け面14が直径10mmの円形である。
図7(d)に示す実施例9は、通気溝13が中心からの複数の放射線と複数の同心円とが作るネット状であり、受け面14が扇形である。
【0043】
次の表1に、実施例1~9における1つの受け面の面積、通気溝の溝幅と溝深さ、受け面の合計面積と通気溝の合計開口面積との比を示す。実施例8の通気溝13の溝幅は変化するが、最も狭いところで2mmである。
【0044】
【0045】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)シェル本体部3(成形に関わる本体部分)の所定量域に真空吸引孔5を分散して形成し、当該所定領域に対応するバックアップ本体部11の表面の対応領域に、通気溝13と受け面14を形成することが好ましい。すなわち、前記実施例のように、シェル本体部3の全域に真空吸引孔5を分散形成した場合には、バックアップ本体部11の表面の全域(対応領域)に通気溝13と受け面14を形成することが好ましい。また、シェル本体部3の一部の領域に真空吸引孔5を分散形成した場合には、当該一部の領域に対応するバックアップ本体部11の表面の一部の領域(対応領域)に通気溝13と受け面14を形成することが好ましい。但し、対応領域を包含するより広い領域に、通気溝13と受け面14を形成することも許容される。上記の受け面の合計面積と通気溝の合計開口面積との比は、通気溝13と受け面14を形成した領域における比である。
【0046】
(2)通気溝13と受け面14は、バックアップ本体部11の表面に形成するのに代えてシェル本体部3の裏面に形成することもでき、また、バックアップ本体部11の表面とシェル本体部3の裏面の両方に形成することもできる。それらの場合でも、通気溝13と受け面14を形成する領域について上記(1)を援用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 第1型
2 シェル型
3 シェル本体部
4 フランジ部
5 真空吸引孔
6 一定径孔部
7 拡径孔部
8 (微細凹凸模様としての)革シボ模様
10 バックアップ型
11 バックアップ本体部
12 座繰部
13 通気溝
14 受け面
15 通気穴
20 第2型
21 凸部
22 樹脂通路
23 射出口
24 接続口
30 成形品
31 表皮
32 樹脂基材