(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】肺炎球菌莢膜分解活性を有するタンパク質及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61P 31/04 20060101AFI20230518BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230518BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20230518BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20230518BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230518BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230518BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230518BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230518BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20230518BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230518BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
A61P31/04
A61K38/16
A61K38/47
A61P11/00
A61P27/16
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/24
C12N15/63 Z
C12N15/56
(21)【出願番号】P 2020508321
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(86)【国際出願番号】 US2018046521
(87)【国際公開番号】W WO2019036373
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-06-14
(32)【優先日】2018-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500182460
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ジョージア・リサーチ・ファウンデイション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アブシ, フィクリ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ミドルトン, ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル, エイミー ヴィクトリア
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】PROGRAM AND ABSTRACTS FOR 2016 ANNUALMEETING OF THE SOCIETY FOR GLYCOBIOLOGY[online], 2016[検索日:2022.03.22], (161) Enzymatic hydrolysis of pneumococcal type III polysaccharide, p.1440, <https://academic.oup.com/glycob/article/26/12/1351/2527580>
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 1962, Vol.237, No.1, p.3-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 31/04
A61K 38/16
A61K 38/47
A61P 11/00
A61P 27/16
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 9/24
C12N 15/63
C12N 15/56
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む遺伝子改変細胞を含む組成物であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する、組成物。
【請求項2】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、コード領域を含むポリヌクレオチドを含む遺伝子改変細胞を含む組成物であって、前記コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する、組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記細胞が、真核細胞である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞が、哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記細胞が、原核細胞である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞が、大腸菌(E.coli)である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質が、異種アミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
前記異種アミノ酸配列が、タグを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、単離成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する、組成物。
【請求項12】
前記タンパク質が、精製されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、単離ポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記ポリヌクレオチドは、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する、組成物。
【請求項14】
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64から選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、請求項11又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
薬学的に許容可能な担体を含む、請求項11又は13の組成物。
【請求項17】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物であって、
前記組成物が、III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)と、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で接触させられることを特徴とし、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上のIII型莢膜多糖の量を、前記組成物と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して低減させる、組成物。
【請求項18】
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を増加させるための、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物であって、
前記組成物が、III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)と接触させられることを特徴とし、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の前記沈着を、前記組成物と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して増加させる、組成物。
【請求項19】
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の複製に好適な条件で存在する、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項22】
前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質が、単離Pn3Pアーゼタンパク質である、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞を含み、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する前記遺伝子改変細胞に曝露されることを特徴とする、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項24】
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記組成物と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較してマクロファージによる食作用に対する増加した感受性、好中球による増加した補体媒介殺傷、又はそれらの組合せを有する、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項25】
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、対象中に存在する、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項26】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、
並びに、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有するか、
若しくは有するリスクがある対象における感染を治療するための組成物であって、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物。
【請求項27】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、
並びに、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有するか、
若しくは有するリスクがある対象における症状を治療するための組成物であって、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物。
【請求項28】
宿主防御に対する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の脆弱性を増加させるための、
並びに、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)が定着しているか、
若しくは定着しているリスクがある対象における定着を減少させるための組成物であって、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物。
【請求項29】
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、請求項26~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記対象が、ヒトである、請求項26~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
治療法における使用のための、請求項1または11に記載の組成物。
【請求項33】
医薬品としての使用のための、請求項1または11に記載の組成物。
【請求項34】
病態の治療における使用のための、請求項1または11に記載の組成物。
【請求項35】
血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染又は症状の治療又は予防における使用のための、請求項1または11に記載の組成物。
【請求項36】
肺炎、肺炎球菌髄膜炎、中耳炎、菌血症、敗血症、又はそれらの組合せの治療のための、請求項1または11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる2017年8月14日に出願された米国仮特許出願第62/545,094号明細書、及び2018年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/652,046号明細書の利益を主張する。
【0002】
政府の資金提供
本発明は、National Institutes of Healthにより授与された1R01AI123383-01A1のもと政府支援によりなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本出願は、99キロバイトのサイズを有し、2018年8月10日に作成された表題「2018-08-10-SequenceListing-02710201_ST25.txt」のASCIIテキストファイルとして米国特許商標庁にEFS-Webを介して電子的に提出された配列表を含有する。配列表に含有される情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)により引き起こされる疾患は長きにわたりヒトの健康に対して大きな脅威であり、驚くべき死亡率を伴う。ある疾患、肺炎は、地球規模で約4億5千万の人々(人口の7%)を冒しており、毎年約4百万人の死亡者をもたらしている。今日、肺炎球菌疾患の予防は、感受性集団のワクチン接種に依存する。肺炎球菌ワクチンは経験的に作製され、特に幼児、高齢者、及び免疫減衰個体間で免疫原性が変動し/不十分である。肺炎球菌疾患のための主力の薬物療法は抗生物質治療であり;しかしながら、肺炎球菌(S.pneumoniae)に対する抗生物質の使用の普及は、薬物耐性肺炎球菌株の拡散をもたらした。2015年、CDCによれば、肺炎球菌細菌は、症例の30%において1つ以上の抗生物質に対して耐性を示した。
【0005】
肺炎球菌(S.pneumoniae)は、90種超のユニークな莢膜血清型を有し、それぞれ単糖組成及び結合、並びに他の修飾、例えば、アセチル化が異なる。ワクチン中に含まれるほとんどの肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型により引き起こされる保菌及び疾患の予防に結合型ワクチンが有効であった一方、血清3型が例外であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
パエニバシラス属(Paenibacillus)株により発現されるPn3Pアーゼ遺伝子の同定及びクローニングが本明細書に記載される。Pn3Pアーゼ酵素は、高い有病率及び死亡率を伴う最もビルレントな血清型の1つである肺炎球菌(S.pneumoniae)血清3型の莢膜多糖を分解する。莢膜多糖は、肺炎球菌(S.pneumoniae)(Spn)の主要なビルレンス因子であり、ほとんどの莢膜非形成細菌は感染性でない。この酵素は、生存細菌の表面上の莢膜多糖を良好に分解する。さらに、細菌は、この酵素の存在下で食作用に対して感受性である。
【0007】
成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む遺伝子改変細胞が本明細書に提供される。一実施形態において、遺伝子改変細胞は、コード領域を含むポリヌクレオチドを含み、コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。タンパク質は、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。一実施形態において、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、遺伝子改変細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞であり得る。一実施形態において、遺伝子改変細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)であり得る。一実施形態において、タンパク質は、異種アミノ酸配列、例えば、タグを含む。
【0008】
組成物も本明細書に提供される。一実施形態において、組成物は、遺伝子改変細胞を含む。一実施形態において、組成物は、単離、場合により、精製成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む。一実施形態において、組成物は、単離ポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドは、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含む。成熟Pn3Pアーゼタンパク質は、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64から選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。一実施形態において、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0009】
方法も本明細書に提供される。一実施形態において、方法は、Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質の発現に好適な条件下で細胞をインキュベートすることを含む。細胞は、コード領域を含むポリヌクレオチドを含み得、コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有し、細胞は、好適な条件下で成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する。タンパク質は、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。一実施形態において、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。細胞は、野生型細胞、例えば、パエニバシラス属(Paenibacillus)株、例えば、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352、又はコードするポリヌクレオチドが外因性ポリヌクレオチドである遺伝子改変細胞であり得る。方法は、タンパク質を単離し、又は精製することをさらに含み得る。一実施形態において、細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞であり得る。一実施形態において、遺伝子改変細胞は、原核細胞、例えば、大腸菌(E.coli)であり得る。一実施形態において、タンパク質は、異種アミノ酸配列、例えば、タグを含む。
【0010】
一実施形態において、方法は、III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させることを含み、接触を、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で行い、肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上のIII型莢膜多糖の量を、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して低減させる。別の実施形態において、方法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を増加させる方法である。一実施形態において、方法は、III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させることを含み得、肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して増加させる。タンパク質は、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。一実施形態において、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)は、肺炎球菌(S.pneumoniae)の複製に好適な条件で存在する。一実施形態において、成熟Pn3Pアーゼタンパク質は、単離Pn3Pアーゼタンパク質である。一実施形態において、接触は、肺炎球菌(S.pneumoniae)を、成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞に曝露させることを含む。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)は、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較してマクロファージによる食作用に対する増加した感受性、好中球による増加した補体媒介殺傷、又はそれらの組合せを有する。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)は、対象中に存在する。
【0011】
一実施形態において、方法は、対象における感染を治療する方法であり、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与することを含む。一実施形態において、方法は、対象における症状を治療する方法であり、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与することを含む。一実施形態において、方法は、対象における定着を減少させる方法であり、Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)が定着しており、又は定着しているリスクがある対象に投与することを含む。タンパク質は、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。一実施形態において、タンパク質は、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、対象は、ヒトである。
【0012】
治療法における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質、医薬品としての使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質、及び病態の治療における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質も提供される。
【0013】
肺炎、肺炎球菌髄膜炎、中耳炎、菌血症、敗血症、又はそれらの組合せの治療用医薬品の調製のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質の使用;血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染又は症状の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物;及び本明細書に記載の1つ以上の特徴部を含むタンパク質、組成物、又は方法がさらに提供される。
【0014】
本明細書において使用される「遺伝子改変細胞」は、外因性ポリヌクレオチド、例えば、発現ベクターが導入された細胞を指す。例えば、細胞は、細胞に対して外来性の外因性ポリヌクレオチドの好適な細胞中への導入に基づく遺伝子改変細胞である。「遺伝子改変細胞」は、内因性ヌクレオチドが変更されるように遺伝子操作された細胞も指す。例えば、細胞は、内因性ヌクレオチドの変更の好適な細胞中への導入に基づく遺伝子改変細胞である。遺伝子改変細胞の一例は、作動可能に結合している内因性コード領域の発現の増加又は減少をもたらすように変更された調節配列、例えば、プロモーターを有する細胞である。
【0015】
本明細書において使用される用語「タンパク質」は、ペプチド結合により一緒に結合している2つ以上のアミノ酸の重合体を広く指す。用語「タンパク質」には、ジスルフィド結合により結合している2つ以上のタンパク質を含有する分子、又は多量体(例えば、二量体、四量体)として一緒に共有若しくは非共有結合しているタンパク質の複合体も含まれる。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、酵素、及びポリペプチドという用語はタンパク質の定義内に全て含まれ、それらの用語は互換的に使用される。これらの用語は規定の長さのアミノ酸の重合体を示すものではなく、それらは、タンパク質が組換え技術、化学的又は酵素的合成を使用して産生されるか天然に発生するかの意図も区別もしないことを理解すべきである。
【0016】
本明細書において使用される「成熟タンパク質」は、最終形態をもたらすために翻訳後にプロセシングされたタンパク質と同一であるアミノ酸配列を有し、又はそれと構造的類似性を有するタンパク質を指す。翻訳後プロセシングとしては、N末端プロセシング又はC末端トランケーションを挙げることができる。本明細書において使用される「プレプロセシングタンパク質」は、mRNAから翻訳され、成熟タンパク質をもたらすための翻訳後プロセシングを受けなかったタンパク質を指す。
【0017】
本明細書において使用される「単離」物質、例えば、タンパク質は、その天然環境から取り出され、組換え技術を使用して産生され、又は化学的若しくは酵素的に合成された物質である。例えば、タンパク質又はポリヌクレオチドは、単離されていてよい。好ましくは、物質は、精製されており、すなわち、それらが天然に付随する他の構成成分を少なくとも60%有さず、好ましくは、少なくとも75%有さず、最も好ましくは、少なくとも90%有さない。
【0018】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指し、それには二本鎖及び一本鎖RNA及びDNAの両方が含まれる。ポリヌクレオチドは、天然資源から直接得ることができ、又は組換え、酵素的、若しくは化学的技術の補助により調製することができる。ポリヌクレオチドは、トポロジーが線状又は環状であり得る。ポリヌクレオチドは、例えば、ベクター、例えば、発現若しくはクローニングベクターの一部、又は断片であり得る。ポリヌクレオチドは、異なる機能を有するヌクレオチド配列、例として、例えば、コード領域、及び非コード領域、例えば、調節領域を含み得る。
【0019】
本明細書において使用される「検出可能部分」又は「標識」は、分光光度的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段により直接的又は間接的に検出可能な分子である。例えば、有用な標識としては、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素及びそれらの基質(例えば、酵素結合免疫アッセイにおいて一般に使用されるもの、例えば、アルカリホスファターゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ)、ビオチン-ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、タンパク質、例えば、抗体、又はハプテン及び抗血清若しくはモノクローナル抗体が利用可能なタンパク質が挙げられる。標識又は検出可能部分は、典型的には、共有結合によりリンカー若しくは化学結合を介して、又はイオン、ファンデルワールス若しくは水素結合を介して検出すべき分子に結合している。
【0020】
本明細書において使用される用語「コード領域」及び「コード配列」は、互換的に使用され、タンパク質をコードし、適切な調節配列の制御下で配置された場合にコードされるタンパク質を発現するヌクレオチド配列を指す。コード領域の境界は一般に、その5’末端における翻訳開始コドン及びその3’末端における翻訳終止コドンにより決定される。「調節配列」は、それが作動可能に結合しているコード配列の発現を調節するヌクレオチド配列である。調節配列の非限定的な例としては、プロモーター、エンハンサー、転写開始部位、翻訳開始部位、翻訳終止部位、及び転写終結因子が挙げられる。用語「作動可能に結合している」は、構成成分がそれらの意図される様式でそれらの機能を許容する関係にあるような構成成分の並置を指す。調節配列は、調節配列と適合性の条件下でコード領域の発現が達成されるようにそれが結合している場合、コード領域に「作動可能に結合している」。
【0021】
コード領域を含むポリヌクレオチドは、コード領域の片側又は両側をフランキングする異種ヌクレオチドを含み得る。本明細書において使用される「異種ヌクレオチド」は、野生型細胞中に存在するコード領域をフランキングする、通常は存在しないヌクレオチドを指す。したがって、コード領域及び異種ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、天然に発生しない分子である。例えば、野生型微生物中に存在し、Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域は、同種配列によりフランキングされており、コード領域をフランキングする任意の他のヌクレオチド配列は、異種であるとみなされる。異種ヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、調節配列が挙げられる。典型的には、異種ヌクレオチドは、当業者に周知の標準的な遺伝子及び/又は組換え法の使用を介して本明細書に記載のポリヌクレオチド中に存在する。本明細書に記載のポリヌクレオチドは、好適なベクター中に含めることができる。
【0022】
本明細書に記載のタンパク質は、N末端、C末端、又はそれらの組合せにおいて存在する異種アミノ酸を含み得る。本明細書において使用される「異種アミノ酸」は、野生型細胞中に天然に存在するタンパク質をフランキングする、通常は存在しないアミノ酸を指す。したがって、異種アミノ酸を含むタンパク質は、天然に発生しない分子である。例えば、野生型微生物中に存在する天然に発生するPn3Pアーゼタンパク質は、N末端又はC末端のいずれにおいても追加のアミノ酸を有さず、N末端又はC末端において存在する任意の他のアミノ酸は、異種であるとみなされる。異種アミノ酸配列の例は本明細書に記載され、その例としては、限定されるものではないが、親和性精製タグが挙げられる。典型的には、異種アミノ酸は、当業者に周知の標準的な遺伝子及び/又は組換え法の使用を介して本明細書に記載のタンパク質中に存在する。
【0023】
本明細書において使用される「外因性ポリヌクレオチド」は、細胞中に通常でも天然にも見出されないポリヌクレオチドを指す。本明細書において使用される用語「内因性ポリヌクレオチド」は、細胞中に通常又は天然に見出されるポリヌクレオチドを指す。「内因性ポリヌクレオチド」は、「天然ポリヌクレオチド」とも称される。
【0024】
本明細書において使用される用語「相補体」及び「相補的」は、互いに塩基対合する2つの一本鎖ポリヌクレオチドの能力を指し、その場合、ポリヌクレオチドの一方の鎖上のアデニンが第2のポリヌクレオチドの鎖上のチミン又はウラシルと塩基対合し、ポリヌクレオチドの一方の鎖上のシトシンが第2のポリヌクレオチドの鎖上のグアニンと塩基対合する。2つのポリヌクレオチドは、一方のポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列と塩基対合し得る場合、互いに相補的である。例えば、5’-ATGC及び5’-GCATは相補的である。本明細書において使用される用語「実質的相補体」及びその同語は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で規定のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを指す。ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、多数のpH、塩、及び温度条件の下で行うことができる。pHは、6~9、好ましくは、6.8~8.5で変動し得る。塩濃度は、0.15Mのナトリウム~0.9Mのナトリウムで変動し得、イオン強度がナトリウムについて規定されるものと同等である限り、他のカチオンを使用することができる。ハイブリダイゼーション反応の温度は、30℃~80℃、好ましくは、45℃~70℃で変動し得る。さらに、他の化合物をハイブリダイゼーション反応物に添加してより低温における、例えば、室温における又は室温に向かう規定のハイブリダイゼーションを促進することができる。温度要件の低下が企図される化合物には、ホルムアミドがある。したがって、ポリヌクレオチドは、典型的には、ハイブリダイゼーションがそのポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチド間で生じる場合、実質的に第2のポリヌクレオチドと相補的である。本明細書において使用される「規定のハイブリダイゼーション」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下の2つのポリヌクレオチド間のハイブリダイゼーションを指す。
【0025】
2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は、「同一性」パーセントにより言及することができ、又は「類似性」パーセントにより言及することができる。「同一性」は、同一アミノ酸の存在を指す。「類似性」は、同一アミノ酸の存在だけでなく、保存的置換の存在も指す。2つのタンパク質間の配列類似性は、2つのタンパク質(例えば、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列、例えば、成熟Pn3Pアーゼタンパク質、例えば、配列番号2のアミノ酸41~1545)の残基をアラインしてそれらの配列の長さに沿って同一アミノ酸の数を最適化することにより決定され;アラインメントの作製において一方又は両方の配列中のギャップを許容して共有されるアミノ酸の数を最適化するが、それぞれの配列中のアミノ酸は、なおもそれらの適切な順序のままでなければならない。配列類似性は、例えば、配列技術、例えば、GCGパッケージ(Madison WI)のBESTFITアルゴリズム、又はTatusova,et al.(FEMS Microbiol Lett 1999,174:247-250)により記載されており、ワールドワイドウェブを介して、例えば、National Center for Biotechnology Information,National Institutes of Healthにより維持されるインターネットサイトにおいて利用可能なBLAST2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して決定することができる。好ましくは、2つのアミノ酸配列間の配列類似性は、BLAST2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して決定される。好ましくは、全てのBLAST2検索パラメータについてのデフォルト値が使用される。BLAST検索アルゴリズムを使用する2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は、「同一性」と称される。したがって、本明細書に記載のタンパク質、例えば、成熟Pn3Pアーゼタンパク質、例えば、配列番号2のアミノ酸41~1545への言及には、参照タンパク質と少なくとも80%の同一性、少なくとも81%の同一性、少なくとも82%の同一性、少なくとも83%の同一性、少なくとも84%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも86%の同一性、少なくとも87%の同一性、少なくとも88%の同一性、少なくとも89%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は少なくとも99%の同一性を有するタンパク質が含まれ得る。或いは、本明細書に記載のタンパク質、例えば、成熟Pn3Pアーゼタンパク質、例えば、配列番号2のアミノ酸41~1545への言及には、参照タンパク質と少なくとも80%の類似性、少なくとも81%の類似性、少なくとも82%の類似性、少なくとも83%の類似性、少なくとも84%の類似性、少なくとも85%の類似性、少なくとも86%の類似性、少なくとも87%の類似性、少なくとも88%の類似性、少なくとも89%の類似性、少なくとも90%の類似性、少なくとも91%の類似性、少なくとも92%の類似性、少なくとも93%の類似性、少なくとも94%の類似性、少なくとも95%の類似性、少なくとも96%の類似性、少なくとも97%の類似性、少なくとも98%の類似性、又は少なくとも99%の類似性を有するタンパク質が含まれ得る。
【0026】
2つのポリヌクレオチド間の配列類似性は、それらの配列の長さに沿って同一ヌクレオチドの数を最適化するように2つのポリヌクレオチド(例えば、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードする候補ヌクレオチド配列及び参照ヌクレオチド配列)の残基をアラインすることにより決定され;アラインメントの作製において一方又は両方の配列中のギャップを許容して共有されるヌクレオチドの数を最適化するが、それぞれの配列中のヌクレオチドは、なおもそれらの適切な順序のままでなければならない。配列類似性は、例えば、配列技術、例えば、GCG FastA(Genetics Computer Group,Madison,Wisconsin)、MacVector4.5(Kodak/IBIソフトウェアパッケージ)又は当技術分野において公知の他の好適なシーケンシングプログラム若しくは方法を使用して決定することができる。好ましくは、2つのヌクレオチド配列間の配列類似性は、Tatusova,et al.(1999,FEMS Microbiol Lett.,174:247-250)により記載されており、ワールドワイドウェブを介して、例えば、National Center for Biotechnology Information,National Institutes of Healthにより維持されるインターネットサイトにおいて利用可能なBLAST2検索アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して決定される。好ましくは、全てのBLAST2検索パラメータについてのデフォルト値が使用される。BLAST検索アルゴリズムを使用する2つのヌクレオチド配列の比較において、配列類似性は、「同一性」と称される。配列類似性は、典型的には、少なくとも50%の同一性、少なくとも55%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも81%の同一性、少なくとも82%の同一性、少なくとも83%の同一性、少なくとも84%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも86%の同一性、少なくとも87%の同一性、少なくとも88%の同一性、少なくとも89%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は少なくとも99%の同一性である。
【0027】
本明細書において使用される「インビトロ」は、人工的環境、及び人工的環境内で生じるプロセス又は反応を指す。インビトロ環境としては、限定されるものではないが、試験管を挙げることができる。本明細書において使用される用語「インビボ」は、対象の身体内に存在する天然環境を指す。
【0028】
イベントの発生を「可能とする」条件又はイベントの発生に「好適な」条件、例えば、酵素的反応、又は「好適な」条件は、そのようなイベントの発生を妨害しない条件である。したがって、これらの条件は、イベントを許容し、向上させ、容易にさせ、及び/又はその助けとなる。
【0029】
用語「及び/又は」は、列記要素の1つ若しくは全て又は列記要素のいずれか2つ以上の組合せを意味する。
【0030】
語「好ましい」及び「好ましくは」は、ある状況下である利益を付与し得る本開示の実施形態を指す。しかしながら、同一又は他の状況下で他の実施形態も好ましいことがある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを示さず、本開示の範囲から他の実施形態を除外するものではない。
【0031】
用語「含む」及びその変形は、それらの用語が詳細な説明及び特許請求の範囲に出現する限定的意味を有さない。
【0032】
実施形態が語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」などを用いて本明細書に記載される場合、「~からなる」及び/又は「本質的に~からなる」に関して記載される他の点で同様の実施形態も提供されることが理解される。
【0033】
特に記載のない限り、「a」、「an」、「the」、及び「少なくとも1つ」は互換的に使用され、1つ又は2つ以上を意味する。
【0034】
本明細書においてさらに、終点による数値範囲の引用には、その範囲内に含まれる全ての数(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などが含まれる)が含まれる。
【0035】
区別されるステップを含む本明細書に記載の任意の方法について、ステップは、任意の実行可能な順序で実施することができる。また適宜、2つ以上のステップの適切な任意の組合せを同時に実施することができる。
【0036】
本明細書全体にわたり、「一実施形態」、「実施形態」、「ある実施形態」、又は「一部の実施形態」などへの言及は、その実施形態と関連して記載される特定の特徴部、構成、組成、又は特徴が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる種々の箇所におけるこのような語句の出現は、必ずしも本開示の同一の実施形態を指すわけでない。さらに、特定の特徴部、構成、組成、又は特徴は、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0037】
本開示の上記の概要は、それぞれの開示される実施形態も、本開示のあらゆる実現も記載するものではない。以下の記載は、説明的な実施形態をより特定して例示する。本出願全体にわたるいくつかの箇所において、実施例の列記を介して、実施例を種々の組合せで使用することができる指針が提供される。それぞれの例において、 引用される列記は、代表的なグループとして機能するにすぎず、排他的な列記と解釈すべきでない。
【0038】
本明細書の詳細な説明において、特定の実施形態は、明確性のために分離して記載することができる。特定の実施形態の特徴部が別の実施形態の特徴部と不適合性であることが特に明示されない限り、ある実施形態は、1つ以上の実施形態と関連する本明細書に記載の適合性の特徴部の組合せを含み得る。
【0039】
本開示の説明的実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併用して精読する場合に最良に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)血清3型莢膜多糖の反復単位構造を示す。
【
図2-1】パエニバシラス属(Paenibacillus)からの7つのグリコシドヒドロラーゼのアミノ酸アラインメントを示す。WP_079915027.1(配列番号2)、WP_113018908.1(配列番号4)、WP_068663733.1(配列番号5)、KRE82476.1(配列番号6)、WP_082593776.1(配列番号7)、WP_056617367.1(配列番号8)、及びWP_028553222.1(配列番号9)。
【
図3A-B】炭素源としてのPn3Pを有する最小培地中のパエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352の培養物を示す。(
図3A)炭素源としての2%(w/v)のグルコース、Pn3P、セルロースと、又は炭素源無使用の最小培地上のパエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352(Pbac)の増殖。(
図3B)グルコース(レーン1)又はPn3P(レーン2)上で増殖させたPbacの濃縮培養物上清のSDS-PAGEクーマシーブルー染色ゲル。(
図3C)Rapid Annotation Server(Aziz et al.2008,BMC Genomics 9,75)(RAST)アノテーションに基づくPn3P利用組織化の提案される遺伝子座。(
図3D)グルコース培養物に対するPn3P培養物の発現の変化倍率として示される2%のグルコース又はPn3P上で増殖させたPbac中の推定遺伝子座内の選択遺伝子のリアルタイムPCR。
【
図4A】Pn3Pアーゼ同定及び一次アミノ酸配列のドメイン模式図を示す。(
図4A)アミノ酸配列(配列番号2)及びPn3Pアーゼのアクセッション。(
図4B)それぞれの1ml分画における毎分カウント数により計測された、サイズ排除クロマトグラフィーによる組換えPn3Pアーゼにより脱重合されたトリチウム放射性同位体標識Pn3Pの分離。(
図4C)Pn3Pモノクローナル抗体によりプロービングされた組換えPn3Pアーゼにより脱重合された低温Pn3Pのドットブロット。(
図4D)InterProによるPn3Pアーゼの予測ドメインの模式図。(
図4E)Pn3Pアーゼをコードするヌクレオチド配列(配列番号1)。
【
図5A】エレクトロスプレーイオン化質量分析によるオリゴ糖産物の同定を示す。オリゴ糖産物(
図5A)の分離並びに四糖(
図5B)及び六糖(
図5C)の質量スペクトル。実験的分子量及び精度を表1に示す。
【
図6A】オリゴ糖産物の核磁気共鳴による特徴付けを示す。Pn3四糖の1H NMRスペクトル(A)、2D HSQC NMRスペクトル(B)、及び2D COSY NMRスペクトル(C)。Pn3六糖の1H NMRスペクトル(D)、2D HSQC NMRスペクトル(E)、及び2D COSY NMRスペクトル(F)。
【
図7AB】Pn3Pアーゼの活性評価を示す。(
図7A)それぞれの1ml分画における毎分カウント数により計測された、サイズ排除クロマトグラフィーにより分離された組換えPn3Pアーゼにより脱重合されたトリチウム放射性同位体標識Pn3Pのタイムコースアッセイ。(
図7B)生成されたグルクロン酸還元末端の濃度(μg/ml)により計測された、3つの異なる緩衝液条件における組換えPn3Pアーゼの最適化。(C)生成されたグルクロン酸還元末端の濃度(μg/ml)により計測された、Mg2+及びCa2+反応サプリメントを用いた金属依存性の決定。統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて決定した、
**P<0.01。
【
図8】生存増殖3型肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)WU2株のPn3Pアーゼ処理を示す。(
図8A)600nmにおけるODに従う100ug/mlのPn3Pアーゼの存在下のTHYブロス中のWU2の増殖曲線。(
図8B~8C)無莢膜WU2、又はPn3Pアーゼ処理WU2を使用してPn3PコートELISAプレートへのPn3P特異的抗体結合について競合させた競合ELISA。データは、抗体結合の阻害パーセントとして提示する。(
図8D)WU2(左上)、無莢膜誘導体(右上)、及び代表的なPn3Pアーゼ処理WU2(下段パネル)の透過型電子顕微鏡観察。統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて決定した、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図9】3型Spnの生存能に対するPn3Pアーゼ処理の効果を示す。(
図9A)600nmにおけるODに従う100μg/mlのPn3Pアーゼの存在下のTHYブロス中のWU2の増殖曲線。(
図9B)100μg/mlの活性又は熱不活化Pn3Pアーゼの存在下のPBS中のWU2生存率。
【
図10】Pn3Pアーゼ処理による生存3型Spn上の莢膜の枯渇を示す。(
図10A~B)無莢膜WU2、2つの異なる濃度(2μg/ml又は10μg/ml)における熱不活化Pn3Pアーゼにより処理されたWU2、又はPn3Pアーゼにより処理されたWU2を使用してPn3PコートELISAプレートへのPn3P特異的抗体結合を競合させた競合ELISA。データは、抗体結合の阻害パーセントとして提示する。統計的有意性は、両側スチューデントt検定
**P<0.01、
***P<0.001を用いて決定した。2μg/mlの熱不活化Pn3Pアーゼにより処理されたWU2モック(
図10C)、無莢膜WU2株(
図10D)及び2μg/mlの活性Pn3Pアーゼ処理WU2(E)の透過型電子顕微鏡画像。下段パネルは、15000倍の直接倍率において画像化し、上段パネルは、10000倍の直接倍率において画像化する(C~E)。
【
図11A-B】Pn3Pアーゼ処理された3型Spnのマクロファージ取り込みを示す。(
図11A)熱不活化(左)又は活性(右)Pn3Pアーゼ活性後の蛍光連鎖球菌を含有するRAW264.7マクロファージ。連鎖球菌、CFSE、緑色。マクロファージ、ビオチン化-WGA、ストレプトアビジン-APC、赤色。(
図11B)フローサイトメトリーにより定量されたCFSE標識Spnのマクロファージ取り込みに対するPn3Pアーゼ処理及び補体の影響。(
図11C)蛍光食細胞のパーセントに対するPn3Pアーゼ用量依存的効果。統計的有意性は、両側スチューデントt検定
**を用いて決定した、
*P<0.001。
【
図12】Spn表面上の補体沈着に対するPn3Pアーゼ処理の効果を示す。フローサイトメトリーによるPn3Pアーゼ処理又は非処理3型Spn上のマウス補体沈着の分析。FITC-Aの平均蛍光強度(MFI)の定量を、Hoechst陽性細胞のゲーティングから計算した。統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて決定した、
**P<0.01、
***P<0.001、ns=有意でない。
【
図13】好中球による補体媒介殺傷に対するPn3Pアーゼ処理の効果を示す。Pn3Pアーゼ処理Spnに対する分化HL-60細胞の補体媒介殺傷能。生存パーセントは、対照試料(HL60細胞を用いない反応物、100%の生存率)について得られた平均値に正規化されたそれぞれの2つ組の反応物として計算した。統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて決定した、
***P<0.001、
**P<0.01、
*P<0.05、ns=有意でない。
【
図14】3型Spnによる鼻腔内定着を示す。BALB/cマウスの鼻咽頭中のSpn定着を低減させるPn3Pアーゼ処理の能力。(
図14A)マウスの群に、10μlのPBS中の10
6
個の対数増殖期細菌を鼻腔内接種した。全ての接種材料に、50μgのPn3Pアーゼ又は緩衝液対照(10μl)のいずれかを追加した。0日目(WU2+Pn3Pアーゼ
*1)、0及び3日目(WU2+Pn3Pアーゼ
*2)、又は0、3、及び7日目(WU2+Pn3Pアーゼ
*3)のいずれかにおいて、群に酵素を投与した。細菌負荷を10日目に定量した。鼻腔洗浄液の連続希釈物を2つ組でプレーティングしてCFU値を決定した。(
図14B)鼻腔洗浄液中のIL-6及び(
図14C)TNFα濃度をELISAにより決定した。統計的有意性は、両側スチューデントt検定を用いて決定した、
*P<0.05、
**P<0.01。
【
図15】Pn3Pアーゼの保護能を示す。致死チャレンジからBALB/cマウスを保護するPn3Pアーゼの能力の評価。マウスの群を5×10
3
個の対数増殖期のビルレントな3型Spnの腹腔内投与により感染させた。不活化群は、熱不活化Pn3Pアーゼである。
*感染の0、12、又は24時間後において投与された5μg又は0.5μgの単一用量の効果が示される、1群当たりn=5匹のマウス。
【発明を実施するための形態】
【0041】
タンパク質
遺伝子改変細胞及び細胞の使用方法が本明細書に提供される。遺伝子改変細胞は、Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質を産生し得る。Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質は、本明細書においてPn3Pアーゼタンパク質又はPn3Pアーゼと称される。Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)のIII型莢膜多糖を分解する。この莢膜多糖は、肺炎球菌3型多糖(Pn3P)としても公知であり、血清3型(3型とも称される)肺炎球菌(S.pneumoniae)により発現される。Pn3Pの構造を
図1に示す。
【0042】
タンパク質がPn3Pアーゼ活性を有するか否かは、インビトロアッセイにより決定することができる。一実施形態において、インビトロアッセイは、本明細書に記載のとおり実施される(実施例1参照)。簡潔に述べると、Pn3Pを検出可能部分により標識し、Pn3Pアーゼ活性について試験されているタンパク質に曝露し、分子量の差異の検出を許容する方法を使用して反応産物を分割することができる。Pn3Pは、当業者に公知の、定型的な方法を使用して得ることができ、又はAmerican Type Culture Collection、ATCC(Manassas,VA)から購入することができる。多糖の分子量の変化を検出する方法は、当業者に公知であり、定型的である。
【0043】
Pn3Pアーゼタンパク質は成熟タンパク質であり得、一部の実施形態において、好ましくは、成熟タンパク質である。一実施形態において、Pn3Pアーゼタンパク質は、タンパク質がプロセシングされてN末端から1つ以上のアミノ酸が除去されて成熟タンパク質がもたらされた、例えば、タンパク質がシグナル配列を欠く野生型細胞から得られるコード配列によりコードされる。したがって、成熟タンパク質は、野生型細胞から得られるコード配列によりコードされるプレプロセシングPn3Pアーゼタンパク質と比較して少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、少なくとも51、少なくとも52、少なくとも53、少なくとも54、少なくとも55、少なくとも56、少なくとも57、少なくとも58、少なくとも59、少なくとも60、少なくとも61、少なくとも62、又は少なくとも63個のアミノ酸をプレプロセシングタンパク質のアミノ末端から欠き得る。別の実施形態において、Pn3Pアーゼタンパク質は、シグナル配列に対応するアミノ酸をコードするヌクレオチドを含まないコード領域によりコードされる。
【0044】
Pn3Pアーゼタンパク質の一例は配列番号2において示され、Pn3Pアーゼタンパク質はプレプロセシングタンパク質である。成熟Pn3Pアーゼタンパク質の例は、配列番号2のアミノ酸2~64から選択されるN末端アミノ酸を有するアミノ酸配列を含み、C末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である。Pn3Pアーゼタンパク質の他の例としては、配列番号2のアミノ酸配列と配列類似性を有するもの又は配列番号2のアミノ酸のサブセットを含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質が挙げられる。配列番号2又はその一部のアミノ酸配列と配列類似性を有するPn3Pアーゼタンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する。プレプロセシング又は成熟Pn3Pアーゼタンパク質は、微生物、例えば、バシラス属(Bacillus)、例えば、B.サーキュランス(B.circulans)のメンバーから単離することができる。微生物の具体例は、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)Jordan株32352(ATCC14175)である。バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)のヌクレオチド配列の決定からのデータは、この細菌をパエニバシラス属(Paenibacillus)に再分類すべきことを示す。それというのも、その最近傍がこの分類内に系統発生的に位置するためである。パエニバシラス属(Paenibacillus)種は、それらが相違すると適切に考えられるまでバシラス属(Bacillus)内に既に含まれた(Ash et al.,1993,Antonie Van Leeuwenhoek 64:253-260)。パエニバシラス属(Paenibacillus)への分類は、16sリボソームRNA上の特有の第3グループのバシラス(パエニバシラス(Paenibacilli))ヌクレオチド配列(TCGATACCCTTGGTGCCGAAGT、配列番号3)の存在により確認された(Ash et al.,1993,Antonie Van Leeuwenhoek 64:253-260)。Pn3Pアーゼタンパク質は、組換え技術を使用して産生し、又は定型的方法を使用して化学的若しくは酵素的に合成することもできる。組換え産生タンパク質は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードする、mRNA転写産物から翻訳可能なアミノ酸配列全体、又はその一部を含み得る。
【0045】
成熟Pn3Pアーゼタンパク質に対応する配列番号2又はその一部と配列類似性を有するPn3Pアーゼタンパク質のアミノ酸配列は、アミノ酸の保存的置換を含み得る。保存的置換は、典型的には、あるアミノ酸の、同一のクラスのメンバーである別のアミノ酸での置換である。例えば、特定のサイズ又は特徴(例えば、電荷、疎水性、及び/又は親水性)を有するアミノ酸のグループに属するアミノ酸は、一般に、タンパク質の二次及び/又は三次構造を実質的に変更せずに別のアミノ酸で置換され得ることがタンパク質生化学の当技術分野において周知である。本開示の目的のため、保存的アミノ酸置換は、以下の残基のクラスの1つの中からのアミノ酸残基の交換から生じると定義される:クラスI:Gly、Ala、Val、Leu、及びIle(脂肪族側鎖を提供する);クラスII:Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、及びThr(脂肪族及び脂肪族ヒドロキシル側鎖を提供する);クラスIII:Tyr、Ser、及びThr(ヒドロキシル側鎖を提供する);クラスIV:Cys及びMet(硫黄含有側鎖を提供する);クラスV:Glu、Asp、Asn及びGln(カルボキシル又はアミド基含有側鎖);クラスVI:His、Arg及びLys(塩基性側鎖を提供する);クラスVII:Gly、Ala、Pro、Trp、Tyr、Ile、Val、Leu、Phe及びMet(疎水性側鎖を提供する);クラスVIII:Phe、Trp、及びTyr(芳香族側鎖を提供する);並びにクラスIX:Asn及びGln(アミド側鎖を提供する)。クラスは、天然に発生するアミノ酸に限定されず、人工アミノ酸、例えば、ベータ又はガンマアミノ酸及び非天然側鎖を含有するもの、並びに/又は他の類似の単量体、例えば、ヒドロキシ酸も含む。
【0046】
どのように表現型的にサイレントなアミノ酸置換を作製するかに関する指針は、Bowie et al.(1990,Science,247:1306-1310)に提供されており、その著者らは、驚くべきことにタンパク質がアミノ酸置換に寛容であることを示している。例えば、Bowie et al.は、変化に対するタンパク質配列の寛容性を研究する2つの主なアプローチが存在することを開示している。第1の方法は、突然変異が自然淘汰により受け入れられ、又は拒絶される進化のプロセスに依存する。第2のアプローチは、クローニングされた遺伝子の規定の位置におけるアミノ酸変化を導入するための遺伝子操作及び機能性を維持する配列を同定するための選択又はスクリーンを使用する。著者らにより記述されるとおり、これらの研究は、驚くべきことにタンパク質がアミノ酸置換に寛容であることを明らかにした。著者らは、タンパク質のある位置においてどの変化が許容される可能性が高いかをさらに示している。例えば、ほとんどの埋め込まれたアミノ酸残基は非極性側鎖を要求する一方、表面側鎖のいくつかの特徴部は一般に保存される。他のこのような表現型的にサイレントな置換は、Bowie et al、及びそれに引用される参照文献に記載されている。
【0047】
本明細書に開示のタンパク質のアミノ酸配列をどのように改変するかに関する指針も
図2に提供する。
図2は、パエニバシラス属(Paenibacillus)により発現されたグリコシドヒドロラーゼタンパク質のClustal Omegaアミノ酸アラインメントを示す。Clustal Omegaは、多重配列アラインメントプログラムである(Sievers et al.,2011,Molecular Systems Biology 7:539,doi:10.1038/msb.2011.75;Goujon et al.,2010,Nucleic acids research 38(Suppl 2):W695-9,doi:10.1093/nar/gkq313)。
図2において、アスタリスク(
*)は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示し;コロン(:)は、Gonnet PAM250行列における>0.5のスコアリングとほぼ同等の強く類似する特性のグループ間の保存を示し;ピリオド(.)は、Gonnet PAM250行列における=<0.5及び>0のスコアリングとほぼ同等の弱く類似する特性のグループ間の保存を示す。この図を参照することにより、当業者は、アミノ酸配列のどの変更が酵素活性を改変する可能性が高いか、及びどの変更が酵素活性を改変する可能性が低いかを予測することができる。
【0048】
Pn3Pアーゼタンパク質は、グリコシドヒドロラーゼ、ファミリー39ドメイン(配列番号2のアミノ酸180~353)、ガラクトース結合ドメイン様(配列番号2のアミノ酸621~765)、エンド-1,3-1,4-ベータグルカナーゼと構造的類似性を有する不明機能のドメインDUF1080(配列番号2のアミノ酸781~950)、及びコンカナバリンA様レクチン/グルカナーゼドメイン(配列番号2のアミノ酸1,209~1,348)を含む保存ドメインを含む。一実施形態において、Pn3Pアーゼタンパク質は、MES緩衝液pH6.0よりもpH7.2におけるリン酸ナトリウム緩衝液中でわずかに良好な活性を示し、pH8.0におけるトリス緩衝液中で有意に不良な活性を示す特徴を有する(実施例1参照)。別の実施形態において、Pn3Pアーゼタンパク質は、それが10mMのCa2+の存在下でより高濃度の還元末端GlcAを産生するため、Ca2+についての濃度依存的優先性を示す(実施例1参照)。
【0049】
本明細書に記載のPn3Pアーゼタンパク質は、本明細書に記載のPn3Pアーゼタンパク質及び異種アミノ酸を含む融合タンパク質として発現させることができる。例えば、追加のアミノ酸配列は、親和性クロマトグラフィーによる融合タンパク質の精製に有用であり得る。精製に有用なアミノ酸配列は、タグと称することができ、それとしては、限定されるものではないが、ポリヒスチジンタグ(Hisタグ)及びマルトース結合タンパク質が挙げられる。代表例は、Hopp et al.(米国特許第4,703,004号明細書)、Hopp et al.(米国特許第4,782,137号明細書)、Sgarlato(米国特許第5,935,824号明細書)、及びSharma Sgarlato(米国特許第5,594,115号明細書)に見出すことができる。タンパク質へのそのような親和性精製部分の追加に種々の方法が利用可能である。場合により、追加のアミノ酸配列、例えば、Hisタグを次いで開裂させることができる。
【0050】
ポリヌクレオチド
Pn3Pアーゼタンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドも本明細書に提供される。Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本明細書においてPn3Pアーゼポリヌクレオチドと称される。Pn3Pアーゼポリヌクレオチドは、配列番号2、又はその一部に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有し得る。このようなタンパク質をコードするヌクレオチド配列のクラスの一例は、配列番号1又はその一部である。配列番号2により表されるPn3Pアーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号1に開示のヌクレオチド配列に限定されず、遺伝子コードの縮重の結果としてそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチドのクラスも含むことを理解すべきである。例えば、天然に発生するヌクレオチド配列の配列番号1は、アミノ酸配列の配列番号2を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列のクラスの1つのメンバーにすぎない。選択されたタンパク質配列をコードするヌクレオチド配列のクラスは大きいが有限であり、そのクラスのそれぞれのメンバーのヌクレオチド配列は、当業者により異なるヌクレオチドトリプレット(コドン)が同一のアミノ酸をコードすることが公知である標準的な遺伝子コードを参照して容易に決定することができる。
【0051】
Pn3Pアーゼポリヌクレオチドは、配列番号1又はその一部のヌクレオチド配列、例えば、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチドと配列類似性を有し得る。配列番号1、又はその一部のヌクレオチド配列と配列類似性を有するPn3Pアーゼポリヌクレオチドは、Pn3Pアーゼタンパク質をコードする。Pn3Pアーゼポリヌクレオチドは、微生物、例えば、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)から単離することができ、又は組換え技術を使用して産生し、若しくは化学的若しくは酵素的に合成することができる。Pn3Pアーゼポリヌクレオチドは、Pn3Pアーゼタンパク質をコードするオープンリーディングフレームをフランキングする異種ヌクレオチドをさらに含み得る。典型的には、異種ヌクレオチドは、コード領域の5’末端、コード領域の3’末端、又はそれらの組合せにおいて存在し得る。異種ヌクレオチドの数は、例えば、少なくとも10、少なくとも100、又は少なくとも1000個であり得る。
【0052】
本明細書に記載のポリヌクレオチドは、ベクター中に存在し得る。ベクターは、別のポリヌクレオチドを付着させて付着ポリヌクレオチドの複製を生じさせることができる複製ポリヌクレオチド、例えば、プラスミド、ファージ、又はコスミドである。本開示のポリヌクレオチドを含有するベクターの構築は、当技術分野において公知の標準的なライゲーション技術を用いる。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)参照。ベクターは、さらなるクローニング(ポリヌクレオチドの増幅)(すなわち、クローニングベクター)、又はポリヌクレオチドの発現(すなわち、発現ベクター)を提供し得る。ベクターという用語には、限定されるものではないが、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、及び人工染色体ベクターが含まれる。ウイルスベクターの例としては、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及び単純ヘルペスベクターが挙げられる。典型的には、ベクターは、微生物宿主、例えば、大腸菌(E.coli)などのような微生物中で、又は真核生物宿主、例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、若しくは昆虫細胞中で複製し得る。一実施形態において、ベクターは、プラスミドである。
【0053】
ベクターの選択は、得られる構築物における種々の所望の特徴、例えば、選択マーカー、ベクター複製速度などに依存する。一部の態様において、本明細書のベクターのクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、原核細胞が挙げられる。ベクターは、公知の当業者により定型的に使用される方法を使用して宿主細胞中に導入することができる。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション、及びウイルス媒介核酸移行が、核酸を宿主細胞中に導入する一般的な方法である。
【0054】
Pn3Pアーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、微生物、例えば、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)のような微生物から得、又はインビトロ若しくはインビボで産生することができる。例えば、インビトロ合成の方法としては、限定されるものではないが、慣用のDNA/RNA合成装置を用いる化学的合成が挙げられる。合成ポリヌクレオチド及びそのような合成のための試薬の商業的供給業者は、周知である。
【0055】
発現ベクターは、場合により、コード領域に作動可能に結合している調節配列を含む。本開示は、任意の特定のプロモーターの使用に限定されるものではなく、広範なプロモーターが公知である。プロモーターは、細胞中でRNAポリメラーゼに結合して下流(3’方向)コード領域の転写を開始させる調節シグナルとして作用する。使用されるプロモーターは、構成的又は誘導性プロモーターであり得る。これは、必ずしもそうである必要はないが、宿主細胞に対して異種であり得る。本明細書に記載の方法において有用なプロモーターは、限定されるものではないが、構成的プロモーター、温度感受性プロモーター、非調節プロモーター、又は誘導性プロモーターであり得る。一実施形態において、プロモーターは、細菌ドメインのメンバーにおいて機能するプロモーターである。一実施形態において、プロモーターは、真核生物中で機能するプロモーターである。
【0056】
発現ベクターは、場合により、転写されたメッセージの翻訳を開始させてタンパク質を産生するためのリボソーム結合部位及び開始部位(例えば、コドンATG)を含み得る。これは、翻訳を終了させるための終結配列も含み得る。終結配列は、典型的には、対応するアミノアセチル-tRNAが存在しない、したがって、タンパク質合成を終了させるコドンである。宿主細胞を形質転換させるために使用されるポリヌクレオチドは、場合により、転写終結配列をさらに含み得る。
【0057】
遺伝子改変細胞をもたらすために宿主細胞中に導入されるベクターは、場合により、典型的には、増殖培地中の化合物を不活化させ、若しくはそうでなければ検出し、又は増殖培地中の化合物により検出される分子をコードする1つ以上のマーカー配列を含む。例えば、マーカー配列の包含は、形質転換細胞を抗生物質耐性とし得、又はそれは、形質転換細胞に化合物特異的代謝を付与し得る。マーカー配列の例としては、限定されるものではないが、カナマイシン、アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、及びネオマイシンに対する耐性を付与する配列が挙げられる。
【0058】
本明細書に記載のタンパク質は、組換えDNA技術、例えば、細胞中に存在する発現ベクターを使用して産生することができる。このような方法は、定型であり、当技術分野において公知である。タンパク質は、インビトロで、例えば、固相ペプチド合成法により合成することもできる。固相ペプチド合成法は定型であり、当技術分野において公知である。組換え技術を使用して、又は固相ペプチド合成法により産生されるタンパク質は、定型的な方法、例えば、免疫親和性若しくはイオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上若しくはアニオン交換樹脂、例えば、DEAE上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、例えば、Sephadex G-75を使用するゲル濾過、又はリガンド親和性によりさらに精製することができる。
【0059】
遺伝子改変細胞
本明細書に記載のPn3Pアーゼをコードするポリヌクレオチドを有する遺伝子改変細胞も提供される。遺伝子改変されていない対照細胞と比較して、遺伝子改変細胞は、Pn3Pアーゼの産生を示し得、又はPn3Pアーゼの増加した産生を示し得る。Pn3Pアーゼをコードするポリヌクレオチドは、ベクターとして細胞中に存在し得、又は遺伝子改変細胞のゲノムDNA、例えば、染色体又はプラスミド中に組み込むことができる。細胞は、真核細胞又は原核細胞、例えば、細菌ドメインのメンバーであり得る。
【0060】
本明細書に記載のPn3Pアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変することができる細菌ドメインのメンバーである宿主細胞の例としては、限定されるものではないが、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、大腸菌(Escherichia coli))、及びサルモネラ属(Salmonella)(例えば、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium))が挙げられる。
【0061】
Pn3Pアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子改変することができる真核細胞である宿主細胞の例としては、限定されるものではないが、酵母、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)及びピチア属種(Pichia spp.)、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられる。
【0062】
組成物
本明細書に記載のPn3Pアーゼタンパク質又はPn3Pアーゼタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物も提供される。このような組成物は、典型的には、薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用される「薬学的に許容可能な担体」としては、医薬投与と適合性である生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などが挙げられる。追加の活性剤を組成物中に取り込むこともできる。
【0063】
組成物は、薬学分野において周知の方法により調製することができる。一般に、組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように配合することができる。投与は、全身性又は局所性であり得る。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、筋肉内)、腸内(例えば、経口)、及び局所(例えば、経皮、吸入、経粘膜)投与が挙げられる。本開示の化合物の腸内投与のための適切な剤形としては、限定されるものではないが、錠剤、カプセル剤又は液剤が挙げられる。非経口投与のための適切な剤形としては、静脈内又は腹腔内投与を挙げることができる。局所投与のための適切な剤形としては、限定されるものではないが、鼻腔スプレー、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又は噴霧によるものが挙げられる。
【0064】
液剤又は懸濁液剤は、以下の構成成分を含み得る:無菌希釈剤、例えば、投与用の水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸又は重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩;電解質、例えば、ナトリウムイオン、塩化物イオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、及びマグネシウムイオン、並びに等張性の調整用薬剤、例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて調整することができる。
【0065】
組成物としては、無菌水溶液(水溶性である場合)又は分散液及び無菌液剤若しくは分散液の即時調製用の無菌粉末を挙げることができる。非経口投与について、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。組成物は典型的には無菌であり、注射的使用に好適な場合、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度で流体であるべきである。これは製造及び保存の条件下で安定であるべきであり、微生物、例えば、細菌及び真菌の汚染作用に抗して保存すべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射組成物の長期間吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることにより生じさせることができる。
【0066】
無菌液剤は、要求量の活性化合物(例えば、本明細書に記載のPn3Pアーゼタンパク質又はそのタンパク質をコードするポリヌクレオチド)を適切な溶媒中で、医薬組成物において定型的に使用される成分の1つ又は組合せと取り込み、必要によりその後に濾過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒及び任意の他の適切な成分を含有する無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことにより調製される。無菌注射液剤の調製用の無菌粉末の例において、好ましい調製方法としては、事前に滅菌されたその液剤から活性成分と任意の他の所望の成分との粉末を生じさせる真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられる。
【0067】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用担体を含む。経口治療投与の目的のため、活性化合物は、賦形剤と取り込み、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤、例えば、ゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、流体担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合性の結合剤及び/又は他の有用な材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分、又は類似の性質の化合物のいずれか:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプン若しくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogel、若しくはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはステローツ(Sterotes);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロース若しくはサッカリン;又は香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジフレーバリングを含有し得る。
【0068】
吸入による投与(例えば、局所投与)について、活性化合物は、好適な噴射剤、例えば、ガス、例えば、二酸化炭素を含有する加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達することができる。
【0069】
全身投与は、経粘膜又は経皮手段によるものであってもよい。経粘膜又は経皮投与について、障壁の浸透に適切な浸透剤が配合物において使用される。このような浸透剤は、一般に当技術分野において公知であり、それとしては、例えば、経粘膜投与について、洗浄剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔スプレー又は坐剤の使用を介して達成することができる。経皮投与について、活性化合物は、当技術分野において一般に公知の軟膏剤、膏薬、ゲル剤、又はクリーム剤中に配合される。
【0070】
組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを投与する実施形態において、ポリヌクレオチド薬剤の投与に好適な任意の方法、例えば、遺伝子銃、バイオインジェクター、及び皮膚パッチ並びに無針法、例えば、マイクロ粒子DNAワクチン技術(Johnston et al.、米国特許第6,194,389号明細書)を使用することができる。
【0071】
活性化合物、例えば、徐放配合物、例として、埋込剤は、身体からの急速な排除から化合物を保護する担体を用いて調製することができる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような配合物は、標準的な技術を使用して調製することができる。リポソーム懸濁液を薬学的に許容可能な担体として使用することもできる。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0072】
活性化合物の毒性及び治療効力は、例えば、LD50(集団の50%の致死用量)及びED50(集団の50%において治療有効な用量)の決定のための細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定することができる。毒性及び治療効果間の用量比は治療指数であり、それは、比LD50/ED50と表現することができる。高い治療指数を示す組換えタンパク質が好ましい。
【0073】
細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータは、ヒトにおける使用のためのある範囲の投与量の配合において使用することができる。このような化合物の投与量は、好ましくは、ED50を含むある範囲の循環濃度内にあり、毒性をほとんど又は全く示さない。投与量は、用いられる剤形及び使用される投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。本明細書に記載の方法において使用される化合物について、治療有効用量は、動物モデルから最初に推定することができる。用量は、動物モデルにおいてIC50(すなわち、疾患の徴候、例えば、肥満の最大阻害の半数を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように配合することができる。このような情報を使用してヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、定型的な方法を使用して計測することができる。
【0074】
組成物は、1日1回以上~週1回以上、例として、2日に1回投与することができる。当業者は、ある因子、例として、限定されるものではないが、病態の重症度、前治療、対象の全身健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患は、対象を有効に治療するために要求される投与量及びタイミングに影響し得ることを認識する。さらに、有効量の活性化合物による対象の治療としては、単一治療を挙げることができ、又は好ましくは、一連の治療を挙げることができる。
【0075】
使用方法
方法も提供される。一実施形態において、方法は、本明細書に記載のPn3Pアーゼタンパク質を作製する方法である。一実施形態において、方法は、Pn3Pアーゼタンパク質の発現に好適な条件下で細胞をインキュベートすることを含む。細胞は、限定されるものではないが、Pn3Pアーゼタンパク質を産生する遺伝子改変細胞又は天然発生細胞であり得る。天然発生細胞の一例は、パエニバシラス属(Paenibacillus)株、例えば、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352である。場合により、方法は、宿主細胞中に、Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含むベクターを導入することを含む。一実施形態において、方法は、細胞から、又は培地からPn3Pアーゼタンパク質を単離し、又は精製することを含む。Pn3Pアーゼタンパク質が、タンパク質の単離又は精製に有用な追加のアミノ酸を含む実施形態において、方法は、Pn3Pアーゼタンパク質からの追加のアミノ酸の開裂も含み得る。
【0076】
一実施形態において、方法は、Pn3P分子を開裂させる方法である。一実施形態において、方法は、Pn3P分子をPn3Pアーゼタンパク質に曝露させることを含む。Pn3P分子は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)微生物の一部であり得、例えば、Pn3P分子は、肺炎球菌(S.pneumoniae)の莢膜多糖であり得、又はPn3P分子は、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物から分離することができ、例えば、Pn3P分子は、単離することができる。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。一実施形態において、Pn3P分子は、インビボで存在し、別の実施形態において、Pn3P分子は、インビトロで存在する。
【0077】
一実施形態において、方法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上のIII型莢膜多糖の量を低減させる方法である。方法は、表面上に存在するIII型莢膜多糖を有する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させることを含む。Pn3Pアーゼタンパク質は、単離し、又は精製することができ、組成物中に存在し得る。一実施形態において、接触は、微生物を、Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞に曝露させることを含み得る。接触は、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で行うことができる。場合により、低減された量のIII型莢膜多糖を有する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)と比較してマクロファージによる食作用に対する増加した感受性、好中球による増加した補体媒介殺傷、又はそれらの組合せを有する。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、インビボで存在し、別の実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、インビトロで存在する。
【0078】
一実施形態において、方法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を増加させる方法である。方法は、表面上に存在するIII型莢膜多糖を有する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼタンパク質と接触させることを含む。Pn3Pアーゼタンパク質は、単離し、又は精製することができ、組成物中に存在し得る。一実施形態において、接触は、微生物を、Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞に曝露させることを含み得る。接触は、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で行うことができる。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、インビボで存在し、別の実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、インビトロで存在する。
【0079】
一実施形態において、方法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)により引き起こされる対象における感染を治療することを含む。本明細書に記載の方法において使用される対象は、動物、例えば、限定されるものではないが、ネズミ(例えば、マウス又はラット)又はヒトであり得る。方法は、有効量の組成物を、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)により引き起こされる感染を有する動物に投与することを含む。場合により、方法は、感染を引き起こす肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が減少したか否かを決定することを含み得る。感染が肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)により引き起こされるか否かを決定する方法は定型であり、当技術分野において公知である。感染は、限局性又は全身性であり得る。限局性肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染の一例は、鼻腔、例えば、鼻咽頭の定着である。一実施形態において、本明細書に記載の組成物の局所投与を使用して対象における鼻咽頭定着を低減させることができる。肺の限局性肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染の別の例は、例えば、肺炎球菌肺炎である。一実施形態において、例えば、エアロゾルによる組成物の局所投与を使用して対象における肺炎球菌肺炎を低減させることができる。全身性肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染の一例は、対象の血液中の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の存在である(例えば、菌血症又は敗血症)。一実施形態において、組成物の非経口投与を使用して対象における全身性肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染を低減させることができる。本開示のこの態様において、本開示の組成物の「有効量」は、レシピエントにおける所望の応答、例えば、対象中に存在する肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の量の低減を誘発し得る量である。低減は、対象の鼻咽頭、肺、又は血液中の肺炎球菌(S.pneumoniae)の数の低減であり得る。低減は、組成物投与前の対象と比較した対象における少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも4倍の減少であり得る。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。
【0080】
別の実施形態において、方法は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)による感染により引き起こされ得る動物におけるある病態の1つ以上の症状を治療することを含む。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染は、侵襲性肺炎球菌疾患を引き起こす。侵襲性肺炎球菌疾患により引き起こされる病態の例としては、肺炎、肺炎球菌髄膜炎、中耳炎、菌血症及び敗血症が挙げられる。これらの病態に伴う症状としては、寒気、咳嗽、呼吸促迫、呼吸困難、胸痛(肺炎)、斜頸、発熱、頭痛、錯乱及び羞明(肺炎球菌髄膜炎)、及び混乱、息切れ、心拍数上昇、疼痛又は不快感、多汗症、発熱、及び震え(敗血症)が挙げられる。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。
【0081】
これらの病態の1つ以上の治療は予防的であり得、或いは、本明細書に記載の病態の発症後に開始することができる。予防的であり、例えば、対象が肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)により引き起こされる病態の症状を顕在化する前に開始される治療は、本明細書において、その病態を発症する「リスク」がある対象の治療と称される。典型的には、病態を発症する「リスクがある」動物は、その病態を引き起こす肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に曝露される可能性が高い動物である。したがって、組成物の投与は、本明細書に記載の病態の発生前、その間、又はその後に実施することができる。病態の発症後に開始される治療は、病態の1つの症状の重症度の減少、例として、症状の完全な除去をもたらし得る。本開示のこの態様において、「有効量」は、病態の症状の顕在化を予防し、病態の症状の重症度を減少させ、及び/又は症状を完全に除去するために有効な量である。一実施形態において、肺炎球菌(S.pneumoniae)微生物は、血清3型である。
【0082】
本明細書に記載の組成物の効能は、標準的な方法に従って試験することができる。例えば、ヒトにおける肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)感染についての実験モデルとしてのマウスの使用が十分に確立されている。
【0083】
キット
本開示はまた、Pn3Pアーゼタンパク質を作製するためのキットを提供する。一実施形態において、キットは、Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含むベクターを、細胞の形質転換に十分な量で含む。一実施形態において、キットは、Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含む遺伝子改変細胞を好適な包装材料中で含む。
【0084】
別の実施形態において、本開示はまた、Pn3Pアーゼタンパク質の使用を対象とするキットを提供する。一実施形態において、キットは、単離され、又は場合により、精製されたPn3Pアーゼタンパク質を、好適な包装材料中で含む。
【0085】
場合により、他の試薬、例えば、緩衝液又は薬学的に許容可能な担体(調製され、又はその構成する構成成分中で存在し、構成成分の1つ以上が予備混合されていてよく、又は構成成分の全てが分離していてよい)なども含まれる。一実施形態において、タンパク質、ベクター、又は遺伝子改変細胞は、緩衝液と存在し得、又は別個の容器中に存在し得る。典型的には、包装される構成成分の使用説明書も含まれる。
【0086】
本明細書において使用される語句「包装材料」は、キットの内容物を収容するために使用される1つ以上の物理的構造物を指す。包装材料は、好ましくは、無菌で汚染物質不含の環境を提供するように公知の方法により構築される。包装材料は、内容物を細胞の形質転換又はPn3Pアーゼタンパク質の産生に使用することができることを示すラベルを有する。さらに、包装材料は、キット内の材料をどのように使用するかを示す説明書を含有する。本明細書において使用される用語「包装」は、ベクター又は遺伝子改変細胞を固定限度内で保持し得る固体マトリックス又は材料、例えば、ガラス、プラスチック、紙、ホイルなどを指す。したがって、例えば、包装は、適切な量のPn3Pアーゼタンパク質を含有するために使用されるガラス又はプラスチックバイアルを含み得る。「使用説明書」は、典型的には、試薬濃度又は少なくとも1つの方法パラメータを記載する具体的な表現を含む。
【0087】
説明的態様
態様1.成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む遺伝子改変細胞であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する遺伝子改変細胞。
態様2.コード領域を含むポリヌクレオチドを含む遺伝子改変細胞であって、前記コード領域は、成熟Pn3Pアーゼをコードするヌクレオチド配列を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する遺伝子改変細胞。
態様3.前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、態様1又は2の遺伝子改変細胞。
態様4.前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様1~3のいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様5.真核細胞である、態様1~4のいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様6.哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞である、態様1~5のいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様7.原核細胞である、態様1~6のいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様8.大腸菌(E.coli)である、態様1~7のいずれか1つの遺伝子改変細胞。態様9.前記タンパク質が、異種アミノ酸配列を含む、態様1~8のいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様10.前記異種アミノ酸配列が、タグを含む、態様1~9にいずれか1つの遺伝子改変細胞。
態様11.態様1~10のいずれか1つの遺伝子改変細胞を含む組成物。
態様12.単離成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する組成物。
態様13.前記タンパク質が、精製されている、態様1~12のいずれか1つの組成物。態様14.単離ポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記ポリヌクレオチドは、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する組成物。
態様15.前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64から選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、態様12~14のいずれか1つの組成物。
態様16.前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様12~15のいずれか1つの組成物。
態様17.薬学的に許容可能な担体を含む、態様11~16のいずれか1つの組成物。
態様18.Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質の発現に好適な条件下で細胞をインキュベートすることを含む方法であって、前記細胞は、コード領域を含むポリヌクレオチドを含み、前記コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有し、前記細胞は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する方法。
態様19.前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、態様18の方法。
態様20.前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様18~19のいずれか1つの方法。
態様21.前記細胞が、遺伝子改変細胞であり、前記ポリヌクレオチドが、外因性ポリヌクレオチドである、態様18~20のいずれか1つの方法。
態様22.前記タンパク質を単離することをさらに含む、態様18~21のいずれか1つの方法。
態様23.前記タンパク質を精製することをさらに含む、態様18~21のいずれか1つの方法。
態様24.前記細胞が、真核細胞である、態様18~21のいずれか1つの方法。
態様25.前記細胞が、哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞である、態様18~24のいずれか1つの方法。
態様26.前記細胞が、原核細胞である、態様18~25のいずれか1つに記載の方法。態様27.前記原核細胞が、大腸菌(E.coli)である、態様18~26のいずれか1つの方法。
態様28.前記タンパク質が、異種アミノ酸配列を含む、態様18~27のいずれか1つの方法。
態様29.前記異種アミノ酸配列が、タグを含む、態様18~28のいずれか1つの方法。
態様30.III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させること
を含む方法であって、前記接触を、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で行い、肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上のIII型莢膜多糖の量を、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して低減させる方法。
態様31.肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を増加させる方法であって、
III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させること
を含み、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の前記沈着を、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して増加させる方法。
態様32.前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、態様30又は31の方法。
態様33.前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様30~32のいずれか1つの方法。
態様34.前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の複製に好適な条件で存在する、態様30~33のいずれか1つの方法。態様35.前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質が、単離Pn3Pアーゼタンパク質である、態様30~34のいずれか1つの方法。
態様36.前記接触が、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)を、前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞に曝露させることを含む、態様30~35のいずれか1つの方法。
態様37.前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較してマクロファージによる食作用に対する増加した感受性、好中球による増加した補体媒介殺傷、又はそれらの組合せを有する、態様30~36のいずれか1つに記載の方法。
態様38.前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、対象中に存在する、態様30~37のいずれか1つの方法。
態様39.対象における感染を治療する方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
態様40.対象における症状を治療する方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
態様41.対象における定着を減少させる方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)が定着しており、又は定着しているリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
態様42.前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、態様39~41のいずれか1つに記載の方法。
態様43.前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様39~42のいずれか1つの方法。
態様44.前記対象が、ヒトである、態様39~43のいずれか1つの方法。
態様45.治療法における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
態様46.医薬品における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
態様47.病態の治療における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
態様48.肺炎、肺炎球菌髄膜炎、中耳炎、菌血症、敗血症、又はそれらの組合せの治療用医薬品の調製のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質の使用。
態様49.血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染又は症状の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物。
態様50.本明細書に記載の1つ以上の特徴部を含むタンパク質、組成物、又は方法。
【実施例】
【0088】
本発明は、以下の実施例により説明される。特定の実施例、材料、量、及び手順を、本明細書に記載の本発明の範囲及び主旨に従って広く解釈すべきことを理解すべきである。
【0089】
実施例1
パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352の肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)3型莢膜特異的グリコシルヒドロラーゼ遺伝子の同定
要約
「バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)Jordan32352」は、1930年代初期にニュージャージー州土壌中の腐敗性有機物から単離された。この土壌生息細菌は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)の3型莢膜多糖(Pn3P)を分解し得る酵素を産生した。この酵素(Pn3Pアーゼ)の初期報告は、Pn3Pによるその誘導性、及びそれについての特異性を実証した。それ以降、多数の研究はPn3Pアーゼを用いてきた一方、Pn3P生合成及びその抗原特性を調査してきた。本発明者らは、組換え発現のためにこの酵素のクローニングを着手した。本発明者らは、最初のこの細菌種のゲノムをシーケンシングし、Pn3Pアーゼ産生細菌を「パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352」として再分類した。ここで、本発明者らは、質量分析法ベースのプロテオミクスを介してPn3Pアーゼの遺伝子を同定した。本発明者らは、組換え発現のために遺伝子をクローニングし、Pn3Pの酵素的脱重合時に生成されるオリゴ糖産物を特徴付けした。本発明者らは、生存増殖3型Spnに対するPn3Pアーゼの効果を試験し、その結果、Spnのこのハイパービルレント血清型に対する潜在的な治療剤としてそれを調査することができる。
【0090】
1930年、Avery及びDubosは、ツルコケモモ湿地から採取された土壌からある生物を単離し、それは、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の3型莢膜多糖(Pn3P)、-3)βGlcA(1-4)βGlc(1-の線状ポリマーを脱重合させ得た(1、2)。この酵素(Pn3Pアーゼ)の発現は、Pn3Pの存在下で誘導性であり、細菌は、単一炭素源としてのPn3Pを用いて増殖し得た。著者らは、周毛性鞭毛を有する胞子形成グラム陰性好気性バシラスとしてこの細菌を記載した。数年後、Sickles及びShawは、Pn3Pを標的化する同一の酵素的活性を実証する2つの追加の類似株を単離した(3、4)。これらの株は、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)と同義として受け入れられる前は、バシラス・パルストリス(Bacillus palustris)と命名された(4~6)。Pn3Pアーゼに加え、これらの株は、肺炎球菌(S.pneumoniae)莢膜血清2及び8型を脱重合させ得る酵素を産生する能力を実証したが、無細胞抽出物中の可溶性タンパク質は、それらの多糖に対して不活性であった(3、7)。これらの株及び酵素についての多数の考えられる現実的な用途が存在する。例えば、調査者らは、Sickles及びShawPn3Pアーゼ酵素を適用した一方、Pn3P生合成並びにその抗原及び免疫学的特性を試験した(8~11)。
【0091】
本発明者らは、American Type Culture Collectionから「バシラス・サーキュランス(Bacillus Circulans)Jordan株32352」(すなわち、Sickles及びShaw株)を入手し、そのゲノムをシーケンシングした(12)。16S rRNA分析は、この細菌がパエニバシラス属(Paenibacillae)に属することを明らかにし、目下、それをパエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352(Pbac)として同定する。パエニバシラス属(Paenibacillus)種は、関心の対象となってきている。それというのも、この属は、1991年に確立されたためである(13)。これらの微生物は、多数の農業及び医療用途における有用性を実証している種々の反応を触媒する細胞外酵素の豊富な資源である(14~19)。パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352ゲノムの炭水化物活性酵素アノテーションについてのデータベース(dbCAN)は、7200個の予測遺伝子のうち665個の炭水化物活性エントリーを示し、そのうち252個は、グリコシルヒドロラーゼ又は多糖リアーゼ様アーキテクチャを示す(20)。
【0092】
本発明者らは、Pn3Pアーゼを産生する遺伝子のアイデンティティの決定を着手して酵素の特有のPn3P特異的活性を発現させ、利用した。本発明者らは、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)感染のための治療剤としての、この酵素の潜在的な使用を仮定した。莢膜多糖(CPS)は、3型株についての主なビルレンス因子である。それというのも、莢膜非形成突然変異体は定着し得ないためである(21)。CPSのビルレンス機序は、Spnが宿主マクロファージによるその食作用の耐性又は阻害を介して免疫系を回避するのを補助する一方、粘膜媒介クリアランスも制限することである(22)。現在の13価ワクチン(PCV13)のPn3P構成成分は、血清3型に対する変動する免疫応答を誘導する(23、24)。PCV13をワクチン接種された個体は、血清3型について他の血清型と比較して高いオプソニン食作用アッセイ血清力価を要求する(25)。Spnに対する現在のワクチン接種プログラムにかかわらず、それは世界の最も致死性の病原体の1つのままである。ワクチン接種及び抗生物質送達に加え、それらの及び他の莢膜形成病原体の撲滅のために代替的な治療アプローチを考慮しなければならない。
【0093】
Pn3Pが補給された最小培地増殖を用いる培養物上清調製物のプロテオミクスを介するパエニバシラス属(Paenibacillus)Pn3Pアーゼの同定が本明細書に記載される。本発明者らは、Pn3Pアーゼ遺伝子をクローニングし、大腸菌(E.coli)中で活性酵素を発現させた。本発明者らは、オリゴ糖産物を特徴付けし、Pn3P脱重合についての条件を最適化した。本発明者らは、生存ビルレント3型Spn株上の莢膜を分解する酵素の能力を評価して潜在的な治療剤としてのPn3Pアーゼの調査を開始した。
【0094】
結果
Pn3P利用は、遺伝子座中に組織化された遺伝子の発現を誘導する
本発明者らは、単一炭素源としての2%のグルコース又はPn3Pを有する最小M9培地中でPbacを培養することを開始した。Pbac増殖を、OD600nmにより14時間モニタリングして最大Pn3Pアーゼ産生を達成した(
図3A)。Pbacは増殖し得、Pn3P及びグルコースを利用し得たが、セルロースを利用し得なかった。これらの培養物からの上清を20倍濃縮し、タンパク質をクーマシー染色により可視化した。Pn3P増殖条件において、約55kDaの顕著なバンドが観察された(
図3B)。溶液中トリプシン消化によるこれらの試料のプロテオーム分析及びLC-MSは、両方の試料中に存在する多数のタンパク質を同定した。しかしながら、2つのタンパク質は、表1に強調されるとおり、Pn3P増殖条件において有意に濃縮された。
【0095】
【0096】
これら2つのPn3P誘導Pbacタンパク質は、Pn3P利用の遺伝子座中に組織化されると考えられ(
図3C)、それは、ABC型多糖輸送系、パーミアーゼ構成成分(Pbac_3556)、推定ABCトランスポーターパーミアーゼタンパク質ytcP(Pbac_3555)、リポタンパク質(Pbac_3554)、DNA結合応答調節因子、AraCファミリー(Pbac_3553)、s層ホモロジー領域、glugモチーフ、igモチーフを有するマルチドメインタンパク質(Pbac_3552)、及び仮想タンパク質(Pbac_3551)からなる。これらのタンパク質の2つはPn3P増殖条件下でより豊富であるため、本発明者らは、RT-PCRにより、グルコース及びPn3P試料においてこの遺伝子座の3つの遺伝子の転写を、一般に発現される表層タンパク質(Pbac_1521)と比較した。遺伝子3551、3552、及び3554の転写は、Pn3P利用について約130倍増加する一方、Pbac_1521のmRNA発現は、2つの条件間で不変である(
図3D)。
【0097】
Pn3Pアーゼ同定及びドメイン分析
Pbac_3554、Pbac_3552、及びPbac_3551を大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞中でクローニングし、発現させ、どの非調節遺伝子産物がPn3Pデポリメラーゼ活性を担うかを決定した。
図4Aに示される一次アミノ酸配列を有する仮想タンパク質Pbac_3551(アクセッションWP_079915027)は、トリチウム放射性同位体標識Pn3Pの急速で効率的な加水分解を実証し、それは、反応産物をサイズ排除クロマトグラフィーにより分離した場合、より低分子量のオリゴ糖への毎分カウント数のシフトにより示される(
図4B)。組換えPn3Pアーゼと非標識Pn3Pとの反応を実施し、PVDF膜上にスポットし、Pn3Pモノクローナル抗体によりプロービングした。モノクローナル抗体に対する反応性は、Pn3PのPn3Pアーゼ処理の4時間後に完全に停止された(
図4C)。
【0098】
Pbac_3551の翻訳タンパク質配列は、1,545個のアミノ酸である。残基1~40からのSignalP4.1サーバ(26)によるシグナルペプチドの予測開裂は、164.1kDaの成熟タンパク質を生じさせる。InterProオンラインソフトウェア(27)によるタンパク質配列分析及び分類は、アミノ酸180~353のグリコシドヒドロラーゼファミリー39、621~765のガラクトース結合ドメイン様、エンド-1,3-1,4-ベータグルカナーゼと構造的類似性を有する781~950の不明機能ドメインDUF1080、及び1,209~1,348のコンカナバリンA様レクチン/グルカナーゼドメインとの相同性を認識した(
図4D)。この酵素のセグメントは膨大な炭水化物活性タンパク質とのいくらかの相同性を示すが、酵素の長さにわたる公知のグリコシルヒドロラーゼファミリーとの全体相同性は存在しない。
【0099】
オリゴ糖産物の特徴付け
Pn3Pアーゼ加水分解のオリゴ糖産物を、サイズ排除クロマトグラフィーにより分離した。この加水分解は、四糖及び六糖に対応する、Superdexペプチドカラム中で後に溶出する2つの主な産物ピークを生じさせた(
図5A~C)。これらのピークのアイデンティティは、エレクトロスプレーイオン化質量分析により四糖(
図5B)及び六糖(
図5C)として確認された。質量分析データを表2にまとめる。
【0100】
【0101】
NMR分光法によるオリゴ糖産物の特徴付けを
図6に提示する。全てのアノマープロトンシグナルを四及び六糖の代表的な
1H NMRスペクトルでアサインする(
図6)。約4.70ppmにおける残基A、C及びEのアノマープロトンシグナルはHODピークと重複した(
図6A、4D)が、2D HSQCスペクトル中で出現した(
図6B、E)。B-1及びD-1の
3J
HHカップリング定数は8.22Hzであり、β-結合を実証した。5.15(
3J
HH=3.69)及び4.58(
3J
HH=8.05)ppmにおけるシグナルは、それぞれ、GlcA残基Fのα及びβ立体構造に対応する。HSQC及びCOSY実験(
図6C、F)を組み合わせることにより、本発明者らは、F-5のプロトンシグナルが高い化学シフト(約4.05ppm)を有することを同定することができ、それは、GlcA残基(F)が炭水化物鎖の還元末端において存在することを示唆した。これらのデータは、Pn3Pアーゼが多糖鎖中のグルクロン酸及びグルコース間のβ(1-4)結合を開裂させることを実証する。
【0102】
Pn3Pアーゼ活性分析
この酵素的分解がエンド分解(endolytic)開裂を介して進行するか、エキソ分解(exolytic)開裂を介して進行するかを理解するため、トリチウム化Pn3P及び組換えPn3Pアーゼを使用してタイムコース実験を実施した。反応産物を、所与の時間の進行後にサイズ排除クロマトグラフィーにより分離した。低分子量オリゴ糖が反応中で早期に生成される(
図7A)。経時的なオリゴ糖溶出容量についてのCPMの増加、及びより高分子量のポリマーについてのCPMの対応する減少の両方が、四糖及び六糖を優先的に生成するエキソ分解型開裂(
図7A)を示唆する(
図5A)。経時的な左側から右側へのピークの緩やかなシフトは、真のランダムなエンド分解開裂を示す。
【0103】
pH6.0、7.2、及び8.0における3つの異なる緩衝液中で2時間の反応を実施し、p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(PAHBAH)法(43)により還元末端グルクロン酸の濃度を検出してPn3Pアーゼに最適な反応条件を決定した。Pn3Pアーゼは、pH6.0のMES緩衝液よりもpH7.2におけるリン酸ナトリウム緩衝液中でわずかに良好な活性を示すが
、pH8.0におけるトリス緩衝液中で有意に悪化した活性を呈する(
図7B)。Mg
2+及びCa
2+を用いて金属イオン依存性にフォーカスするさらなる最適化を実施した。Pn3Pアーゼは、それが10mMのCa
2+の存在下でより高濃度の還元末端GlcAを産生するため、Ca
2+についての濃度依存的優先性を示す(
図7C)。
【0104】
Pn3Pアーゼは、増殖3型肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)から莢膜を除去する
増殖培地に添加された100μg/mlの組換え酵素を用いて3型WU2株を10時間培養して増殖3型肺炎球菌(S.pneumoniae)のPn3Pアーゼ処理の効果の評価を開始した。細胞のPn3Pアーゼ処理は、
図8Aに示されるとおり、細菌増殖に対して有害な増殖効果も細胞毒性効果も実証しなかった。さらに、同等のCFU値が2時間の間隔において得られた(データ示さず)。
【0105】
次いで、2μg/ml又は10μg/mlのPn3Pアーゼの存在下で増殖させた細菌細胞を競合ELISAにより試験して酵素が増殖培養物の効率的な莢膜脱落をもたらすか否かことを決定した。処理後、異なる濃度における固定全細胞を使用してPn3PコートプレートへのPn3P特異的抗体結合について競合させた。無莢膜WU2突然変異株(JD908)は、その莢膜の欠落に起因して5×10
5CFU/mlにおいて最小の阻害を示し、5×10
4CFU/mLの濃度において阻害を示さなかった(
図8B)。熱不活化Pn3Pアーゼ処理細胞は、細胞表面がCPSにより完全に装飾されているはずであるため、最大阻害パーセントを実証した(
図8B)。活性Pn3Pアーゼ処理により、抗体結合の阻害はPn3Pアーゼ濃度依存的に減少し始め(
図8B)、それは、生存増殖3型肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)から莢膜をストリップするために酵素が適切に設計されることを示唆する。
【0106】
細菌細胞を対数増殖中期まで増殖させ、PBS中で懸濁させ、1μg/mlのPn3Pアーゼにより0、1、2、又は4時間処理するタイムコース実験を実施した。WU2株がそれらの条件下で活性的に増殖せず、相当量の新たなCPSを産生しないはずであることを考慮して、Pn3Pアーゼ用量はこの実験について低下させた。Pn3Pアーゼの酵素的活性も、THY培養培地中よりもPBS中でわずかに良好である(データ示さず)。所与の時点において、処理細胞を固定し、上記の競合ELISAにより試験した。無莢膜WU2突然変異株(JD908)は、ここでも、その莢膜の欠落に起因して5×10
5CFU/mlにおいて最小阻害を示し、5×10
4CFU/mLの濃度において阻害を示さなかった(
図8C)。非処理細胞は、最大阻害パーセントを示し、CPSにより完全に装飾されている細胞表面を示した(
図8C)。Pn3Pアーゼインキュベーション時間が増加するにつれて、抗体結合の阻害が有意に減少し始め(
図8C)、処理の2及び4時間後に本質的に無莢膜となると考えられる。
【0107】
Pn3Pアーゼ処理細胞を透過型電子顕微鏡観察により可視化し、非処理及び無莢膜突然変異株の両方と比較した。非処理細胞は、それらの表面にわたる厚い完全なCPSコートを示した(
図8D、左上)。予測されるとおり、無莢膜突然変異体は、CPSを有さなかった(
図8D、右上)。酵素処理細胞の莢膜層は、ほとんどの場合に最小の厚さを示した(
図8D、左下)一方、一部は、それらが無莢膜のように見えた(
図8右下)。
【0108】
考察
パエニバシラス属(Paenibacillus)は、ラテン語逐語翻訳で「ほぼバシラス属(Bacillus)」であり、16S rRNA遺伝子配列に関する系統発生分析がバシラス属(Bacillus)として既に定義された多数の株について実施されたとき、真性のバシラス属(Bacillus)種と区別されて線引きされた(6)。配列分析は、この属にソートされたいくつかの細菌株が、再割り当てを要求することを示した。この属に属する種は、水域(29)から砂漠環境(30)までの、及び温泉(31)から極寒領域(32)までの多様な生態的ニッチ(28)から得られた。多くのパエニバシラス属(Paenibacillus)種が、土壌(3、33)及び植物根環境(34)中で見出されるが、いくつかはヒト試料からも単離された(35)。パエニバシラス属(Paenibacillus)種は、種々の農業、生物医学、及び工業製品についての豊富な資源である(28)。膨大な活性を実証する細胞外酵素(36)は、種々の工業的に重要な材料の製造における用途を有する(28)。多数のこれらの種は、作物成長を促進するために農業的に適用されている効率的な窒素固定細菌である(37)。さらに、パエニバシラス(Paenibacilli)から得られた新規の抗菌ペプチド及び化合物の保護作用が実証されている(38)。
【0109】
パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352は土壌資源から単離された一方(3)、ヒト病原体Spn CPSに対して作用し得る酵素を得る進化圧に疑問を呈することが適切である。早期研究に基づくと、この特定の株は、3つの区別される肺炎球菌CPSを分解する能力を実証する(3、9)。これらが酵素についての天然基質であるか否か、又は他の土壌生息微生物又は植物物質が類似のグリカン構造及び結合を有するか否かは、依然として調査されていない。
【0110】
しかしながら、最初に入手されたパエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352は、その代謝において重要な機能的役割を担う本明細書に記載のPn3Pアーゼを採用している。この種に関するTorriani及びPappenheimerによる早期報告は、増殖培地中のPn3Pの添加により培養物上清中でPn3Pアーゼ活性を誘導する能力を示した(7)。この「誘導性」は、Pn3Pアーゼ形成が、Pn3Pが単一炭素源として存在する条件下でのみ生じたというAvery及びDuboseの知見と対照的であった(2)。ここで、本発明者らは、Pn3Pが細菌増殖に要求されない一方、それは単一栄養源として機能し得ることを実証する。さらに、本発明者らのデータは、Pbac培養培地中のPn3Pの存在がPn3Pアーゼの発現を誘導することを示す。
【0111】
この誘導株培養物からマルチミリグラム量の活性で天然のPn3Pアーゼを精製する本発明者らの試行は不成功であったが、それらの培養物上清調製物中でPn3P脱重合活性を検出することができる。この試験において、本発明者らは、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352からPn3Pアーゼ遺伝子を同定し、クローニングした。本発明者らはオリゴ糖産物を完全に特徴付けし、本発明者らは、Pn3Pアーゼが生存増殖SpnからCPSを急速にストリップし得ることを示した。将来的な研究は、血清3型Spn感染の治療としてのこの酵素の有用性を評価する。現在のワクチン接種及び抗生物質投与における非効率性は、それらの及び他の莢膜形成病原体を制御するための代替的な治療アプローチの発見を必要としている。
【0112】
実験手順
細菌株及び増殖条件
パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352(ATCC 14175)を、5%のヒツジ血液を有するトリプトンソイ寒天(Hardy Diagnostics)上で、又は1mMのMgSO4、1mMのビオチン、1mMのチアミン、及び単一炭素源としての2%のグルコース(Sigma Aldrich)又はPn3P粉末(ATCC 172-X)を含有する最小培地(M9 Teknoba)培養物中で37℃において振盪させながら好気的に培養した。Moon Nahm氏(University of Alabama at Birmingham)からの寛大な寄贈品である肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)3型(WU2株)及び無莢膜誘導体(JD908)を、5%のヒツジ血液を有するトリプトンソイ寒天(TSAB)上で、又はトッドヘヴィットブロスと0.5%の酵母エキス(THY)(BD Biosciences)中で37℃において振盪なしで好気的に培養した。
【0113】
培養物上清のプロテオミクス
パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352を、上記の2%(w/v)の炭素源を含有する5mlの最小培地M9中で培養した。細菌培養物を対数増殖中期(OD600nm 0.6)において回収した。培養物上清を0.45μmのシリンジフィルターに通し、10Kの分子量カットオフを有するmicrosep advance遠心分離装置(Pall)を使用して1/20の培養物容量に濃縮した。タンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイにより決定した。溶液中トリプシン消化を既に記載のとおり実施した(39)。簡潔に述べると、培養物上清タンパク質からの20μgのタンパク質を、10mMのDTTとのインキュベーションにより56℃において1時間還元し、次いで55mMのヨードアセトアミドによりカルボキシアミドメチル化を暗所で室温において45分間行い、次いで40mMの重炭酸アンモニウム中の1μgのシーケンシンググレードトリプシン(Promega)により37℃において一晩消化した。トリプシン消化は、1%のトリフルオロ酢酸の添加及び30分間の氷上のインキュベーションにより停止させた。C18スピンカラム(G Biosciences)を使用して得られたペプチドをクリーンアップし、乾燥させ、0.1%のギ酸中で再構成させた。200nL/分の流速における130分間にわたる1~100%の溶媒B(80%のアセトニトリル、0.1%のギ酸)からなる180分間の線形勾配を使用して15cm Acclaim(商標)PepMap(商標)RSLC C18カラム(2μmの粒子サイズ、75μm ID)上でThermo Scientific UltiMate3000システムを使用してペプチドを分離した。分離したペプチドを、Orbitrap Fusion Tribrid質量分析計(Thermo Fisher Scientific)のナノスプレーイオン源中に直接溶出させた。ステンレス鋼エミッタースプレー電圧を2200Vに設定し、イオン移動管の温度を280℃に設定した。完全なMSスキャンは、60,000の分解能におけるm/z200から2000までのOrbitrap検出を使用して取得し、衝突誘導解離(38%の衝突エネルギー)による断片化後のMS2スキャンは、Thermo Xcalibur Instrument Setup3.0を使用して「トップスピード」モードにおける最も強力なイオンについてのイオントラップで取得した。未加工スペクトルを、Proteome Discoverer1.4(Thermo Fisher Scientific)においてSEQUESTを使用してパエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352についてのRapid Annotation Server(40)(RAST)アノテートゲノムデータベースに対して検索し、完全なMSペプチドトレランスは10ppmであり、MS2ペプチドトレランスは0.3Daであった。+57.021Daの一定改変(constant modification)(システイン残基のカルバミドメチル化)、及び+15.995Daの動的改変(dynamic modification)(メチオニン残基の酸化)を検索パラメータにおいて可能とした。結果をペプチドアサインメントについて1%の偽発見率においてフィルタリングした。
【0114】
遺伝子発現
Pn3P誘導遺伝子座からの転写産物発現のレベルの比較を、RT-PCRにより実施した。パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352を、上記のとおり2%(w/v)の炭素源を含有する5mlの最小培地中で培養した。3つ組の細菌培養物を対数増殖中期(OD600nm 0.6)において回収し、E.N.Z.A.細菌RNAキットを使用してRNAを精製し、次いで既に記載のとおり汚染ゲノムDNAからのRNAのTRIzol(Thermo Fisher Scientific)抽出を行った(41)。RNA純度をnanodropにより評価し、iscript CDNA合成キット(BioRad)を使用して1μgのRNAを逆転写反応に使用した。定量的リアルタイムPCRを、96ウェルプレート中で、iQ SYBRグリーンマスターミックスを用いてMyiQシステム(BioRad)上で実施した。RT-PCRにおいて使用されたプライマーを表3に列記する。反応を20μlで実施し、それは、10μlのSYBRグリーンミックス、20ngのcDNA、及び1μMのプライマーミックスからなるものであった。反応条件は、95℃で180秒間、次いで95℃で10秒間、55℃で20秒間、及び72℃の30秒間の45サイクルであった。データを16S rRNA転写産物レベルに正規化し、発現レベルの変化を、グルコース補給物を有する最小培地の培養物と比較した変化倍率として計算した。
【0115】
【0116】
組換えPn3Pアーゼの産生
pDONR221中へのBP反応を介するgatewayクローニング(42)(Thermo Fisher Scientific)を容易にするためのB部位を含有するオーバーハングを用いて2×platinum superfiマスターミックス(Thermo Fisher Scientific)を使用してPbac_3551(ref seq WP_079915027)、Pbac_3552(ref seq WP_079915028)、及びPbac_3554(ref seq WP_079915030.1)(予測シグナルペプチド及び終止コドンを欠く)のコード領域を、パエニバシラス属種(Paenibacillus sp.)32352ゲノムDNAから増幅させた(DNeasy血液組織キット、Qiagen)。クローニング用プライマーを表3に列記する。DH5α形質転換及びDNA配列確認後、LR-clonase反応を実施し、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞中のカルボキシ末端His6タグ付き融合タンパク質の発現用pET-DEST42(Thermo Fisher Scientific)デスティネーションベクター中に遺伝子を挿入した。pET-DEST42-「Pn3Pアーゼ」プラスミドにより形質転換させたBL21(DE3)細胞を、100μg/mlのアンピシリンが補給されたLB培地中で37℃において増殖させ、細胞密度を600nmにおける吸光度によりモニタリングした。OD600nmが0.6に達したら、細胞を25℃に移し、1mMの最終濃度までのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドの添加によりタンパク質発現を誘導し、細胞培養物を8時間インキュベートしておいた(A600が約1.1に達するまで)。細胞を遠心分離により回収した。次いで、1mg/mlのリゾチームを有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)中で細胞を30℃において20分間再懸濁させ、プローブを2分間超音波処理し(20秒間オン、10秒間オフの4サイクル)、17,000×gにおける遠心分離により4℃において1時間澄明化させ、0.45μmのシリンジフィルターに通した。組換えPn3Pアーゼを、Ni2+-NTA樹脂により4℃において精製し、300mMのイミダゾールにより溶出させ、PBS pH7.2中に緩衝液交換した。タンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイにより決定した。ゲルdoc EZ撮影装置(BioRad)を使用してステインフリートリス-グリシンゲル(BioRad)上のタンパク質可視化することにより、純度を評価した。
【0117】
酵素アッセイ
トリチウム化Pn3Pアッセイ-3型莢膜多糖に対する組換え酵素活性を、2μg/mlの組換えタンパク質、又は熱殺菌対照の、PBS中の10μg/mlの3H-Pn3Pとのインキュベーションによりアッセイした。反応を、100℃において5分間加熱することにより2時間後に停止させた。反応混合物を、NGC discoverer FPLCシステム(BioRad)上のsuperdexペプチド10/300GLカラム(GE)上で分離した。1mlの分画を回収し、それぞれの分画における毎分カウント数をTri-Carb2910TR液体シンチレーション分析装置(Perkin Elmer)中でカウントした。タイムコース実験を同一の方法により分析した。
【0118】
還元末端糖アッセイ-p-ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド(PAHBAH)法を使用して還元末端の増加を計測することにより、組換えPn3Pアーゼ加水分解活性を決定した(43)。20μgのPn3P、及び1μgの組換えPn3Pアーゼを、50mMのMOPS-NaOH(pH6.0)、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)、又は20mMのトリス-HCl(pH8.0)中のいずれかで含有する反応混合物(200μl)を37℃において1時間インキュベートし、次いで100℃において5分間加熱して停止させた。反応混合物(40μl)を120μlの1%(w/v)のPAHBAH-HCL溶液と混合し、100℃において5分間加熱した。405nmにおける吸光度を、Biotek synergy H1マイクロプレートリーダー上で透明底96ウェルマイクロプレート中で計測した。それぞれの緩衝液において同一の方法により作成されたGlcA標準曲線に基づき、還元糖の濃度を計算した。金属依存性アッセイを、リン酸緩衝液(pH7.2)中のMgCl2又はCaCl2の添加により同様に実施した。
【0119】
オリゴ糖分析
Pn3P粉末(2mg)を、100μgのPn3Pアーゼと37℃において48時間インキュベートした。反応を100℃において5分間加熱することにより停止させ、Superdexペプチド10/300GLカラム(GE)上にロードした。産物をリン酸緩衝生理食塩水中で1ml/分の流速において分離し、屈折率によりモニタリングした。分画(0.5ml)を回収し、オリゴ糖ピークを精製し、充填微細P2カラム(Biorad)上で水中に脱塩した。脱塩したオリゴを凍結乾燥させ、質量決定のためにESI-MSに供し、構造及び還元末端同定のためにNMRに供した。
【0120】
NMR-オリゴ糖を400μLの2H2O(99.9%、Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)中で溶解させ、3回凍結乾燥させて交換可能なプロトンを除去した。試料を400μlの99.96%の2H2O中で再溶解させ、NMRマイクロチューブに移した。1H分光光度法、13C分光光度法、1H-1H相関分光光度法(COSY)、及び1H-13C異核単一量子コヒーレンス分光光度法(HSQC)実験を全て、298KにおいてTopspin2.1.6ソフトウェアを用いるBruker600又は800MHz分光光度計上で実施した。
【0121】
3型肺炎球菌(S.pneumoniae)のPn3Pアーゼ処理
TSABプレート上の新鮮肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)3型(WU2)及び無莢膜誘導体(JD908)コロニーを、THYブロス中で0.1のODまで接種し、上記のとおり培養した。100μg/mlのPn3Pアーゼの存在下でのWU2増殖を、OD600nmの計測により10時間の経過にわたりモニタリングした。2μg/ml、10μg/ml、又は10μg/mlの熱不活化Pn3Pアーゼの存在下で増殖させたWU2を無莢膜菌とともに6時間増殖させ、段階希釈し、プレーティングしてコロニー形成単位を決定した。培養物を遠心分離により回収し、PBS中で洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で氷上で20分間固定し、さらに1回洗浄し、1mlのPBS中で懸濁させた。タイムコース実験のため、WU2及び無莢膜株を対数増殖中期(0.6のOD600nm)まで増殖させ、遠心分離により回収し、PBS中で洗浄し、次いで1mlのPBS中で懸濁させた。1μg/mlのPn3Pアーゼを添加し、37℃において1、2、又は4時間インキュベートした。処理した細胞を段階希釈し、プレーティングしてコロニー形成単位を決定し、2%のパラホルムアルデヒド中で氷上で20分間固定し、さらに1回洗浄し、1mlのPBS中で懸濁させた。
【0122】
競合ELISA
ELISAプレート(96ウェル、Nunc)を、0.1Mの炭酸塩緩衝液(pH9.0)中の5μg/mlのPn3Pにより室温において一晩コーティングした。Biotek405/LSマイクロプレートワッシャーを使用してプレートをPBS+0.1%のTween(PBS-T)20により4回洗浄した。PBS中の1%のBSAにより室温において1時間ブロッキングした後、マイクロプレートウェルを、PBS-T中のPn3P特異的抗血清と30分間プレインキュベートした固定処理細胞と室温において2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次いでPBS-T中のヤギ抗マウスIgG-AP(Southern Biotech #1030-04)の1:2000の希釈物と室温において2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを1Mのトリス 0.3mMのMgCl2中の2mg/mlのホスファターゼ基質(Sigma S0942)と37℃において約30分間インキュベートした。405nmにおける吸光度を、Biotek synergy H1マイクロプレートリーダー上で計測した。抗体結合の阻害パーセントを((非阻害OD405-阻害OD405)/非阻害OD405)×100により計算した。
【0123】
電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察を、University of GeorgiaのGeorgia Electron Microscopyコア施設により、Hammerschmidt et al.による修正方法に従って実施した(44)。処理細胞を、PBS緩衝液中の2%のグルタルアルデヒド及び0.15%のルテニウムレッド中で氷上で1時間固定し、次いで0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液により2回リンスし、1回のリンスにつき15分間であった。次いで、0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液中の1%の四酸化オスミウム中で細胞を室温において1時間固定し、次いで0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液中で2回リンスし、1回のリンスにつき15分間であった。ペレットをグレードエタノール系列(30%、50%、75%、95%、100%及び100%)中で脱水し、100%のアセトン中で2回交換し、それぞれのステップは15分間であった。次いで、ペレットに25%のスパー樹脂及び75%のアセトンを浸潤させ、2時間後に50%のスパー樹脂及び50%のアセトン、75%のスパー樹脂及び25%のアセトン、100%のスパー樹脂を連続的に浸潤させ、次いで70℃のオーブン中で24時間重合させた。試料をDiatomeダイヤモンドナイフにより60nmにおいて切片化し、スロットグリッド上にピックアップした。グリッドを酢酸ウラニル及びクエン酸鉛の液滴上で後染めし(それぞれ5分間)、染色の間にH2Oにより30秒間リンスした。JEOL JEM1011TEM(JEOL USA,Peabody,MA)を80kVにおける操作で使用して試料を顕微鏡観察した。
【0124】
参考文献
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【0125】
実施例2
肺炎球菌莢膜多糖の酵素的加水分解は、宿主防御に対して細菌を脆弱にする
要約
一世紀間の調査にもかかわらず、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)は、多数の疾患、例えば、肺炎、髄膜炎、及び中耳炎を引き起こす主要なヒト病原体のままである。多くの莢膜形成病原体と同様、Spnの莢膜多糖(CPS)は、哺乳動物宿主における定着及びビルレンスに重要な構成成分である。この研究は、最もビルレントな血清型の1つである3型SpnのCPSを標的化するグリコシドヒドロラーゼ、Pn3Pアーゼの保護的役割を評価することを目的とした。本発明者らは、生存3型株上の莢膜を分解するPn3Pアーゼの能力を評価した。インビトロアッセイを介して、本発明者らは、Pn3Pアーゼ処理がマクロファージによる食作用及び好中球による補体媒介殺傷に対する細菌の感受性を増加させることを観察した。本発明者らは、インビボPn3Pアーゼ処理が鼻咽頭定着を低減させ、3型Spnにより引き起こされる敗血症からマウスを保護することを実証した。血清型分布のシフトの増加、薬物耐性株の上昇、及びワクチンに含まれる血清型に対する不十分な免疫応答に起因して、肺炎球菌感染を撲滅するためのアプローチを調査することが必要である。この研究は、分子、細胞及び全身レベルにおける肺炎球菌CPSと宿主との相互作用を評価し、CPSの酵素的加水分解を介してSpnにより引き起こされる疾患のための代替的な治療アプローチを提供する。
【0126】
導入
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)(Spn)は、肺炎、髄膜炎、及び中耳炎の病因であり、ヒトの健康に対して大きな脅威のままである。この細菌は、正常片利共生マイクロフローラの一部としてヒト鼻咽頭に安定的に定着し得る(1~3)。定着は感染の主な様式であり、無症候性保菌にかかわらず、疾患の開始におけるキーステップである(4、5)。ほとんどのSpn株の宿主内の生存及び完全な病原性に重要な構成成分は、莢膜多糖(CPS)である(6、7)。CPSは、細菌の表面全体をコーティングする大型の区別される多糖構造である。莢膜は、Spnが宿主マクロファージによるその食作用への抵抗又はその阻害を介して宿主免疫系を回避するのを補助する一方、粘膜媒介クリアランスも制限する(8~11)。Spnは、90個超のユニークな莢膜血清型を有し、それぞれ、単糖組成及び結合、並びに他の修飾、例えば、アセチル化が異なる(12)。細菌ビルレンス、表面接近性、及び抗原性におけるCPSの要求により、それは100年超にわたるワクチン接種研究における標的となった(12~16)。タンパク質担体への結合によるCPSを利用する肺炎球菌ワクチンの免疫原性及び効力の増加において多大な研究がなされてきた(17、18)。現在の肺炎球菌ワクチンは、ほとんどの関連臨床血清型の一部のための血清型特異的保護を提供することを目的とする(12、13)。7及び13価の肺炎球菌結合型ワクチンPCV7及びPCV13(Prevnar;Pfizer)の使用は大きな成功をおさめ;ワクチン接種及び非ワクチン接種集団の両方において侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)率を有意に軽減した(15、19~22)。
【0127】
結合型ワクチンは、ほとんどの含まれる血清型により引き起こされる保菌及びIPDの予防に有効であった一方、血清3型が例外であった。現在のPCV13の肺炎球菌3型多糖(Pn3P)構成成分は、Spn血清3型に対する変動する免疫応答を誘導する(23~25)。Pn3Pは、>400kDa平均分子量を有する-3)βGlcA(1-4)βGlc(1-二糖反復単位の線状ポリマーである(26、27)。Spnのオプソニン食作用殺傷について、血清3型について他の血清型と比較して有意に高い血清力価が要求されることが留意された(12、28、29)。多数の動物モデル及び疫学研究は、3型株を他の肺炎球菌血清型と比較したビルレンス及び死亡リスクの増加と関連付けた(30~32)。近年の症例報告は、血清3型により引き起こされるIPDの致死例を実証し、この侵襲性血清型に伴う合併症の増加及び一般に不良アウトカムを強調した(33)。さらに、近年のデータは、Spn株がIPD症例の30%において1つ以上の抗生物質に耐性であることを示す(34)。The Centers for Disease Control and Preventionは、Spnの抗生物質耐性特徴の上昇を予測している(35、36)。
【0128】
ワクチン接種はこの主要なヒト病原体の最も攻撃性の血清型の1つに対する適切な保護を提供し得ないため、3型肺炎球菌感染のための代替的アプローチの緊急の探索が必要とされる。これは、抗生物質耐性株の蔓延の上昇とともに(37、38)、Pn3Pを加水分解する酵素を産生する土壌生息細菌を発見したAvery及びDubosによる早期研究の再考をもたらした(39~41)。これまで、本発明者らは、この細菌をパエニバシラス属(Paenibacillus)種として同定し、その3型特異的グリコシルヒドロラーゼ、Pn3Pアーゼをクローニングし、その分解産物を特徴付けした(26、42)。血清3型Spnの継続する蔓延性、及び重症度に照らして、本発明者らは、ハイパービルレント血清3型感染のための治療剤としてのこの精製タンパク質の潜在的な使用を仮定した。ここで、本発明者らは、生存ビルレント3型Spn株上の莢膜を分解し、したがって、細菌を宿主免疫クリアランスに対して感受性とするPn3Pアーゼの能力を調査した。
【0129】
材料及び方法
細菌株及び増殖条件
Moon Nahm氏(University of Alabama at Birmingham)からの寛大な寄贈品である肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)3型(WU2株)及び無莢膜誘導体(JD908)(60、61)を、5%のヒツジ血液を有するトリプトンソイ寒天(TSAB)上で、又はトッドヘヴィットブロスと0.5%の酵母エキス(THY)(BD Biosciences)中で37℃において振盪なしで好気的に培養した。
【0130】
マウス
8週齢雌BALB/cマウスをTaconic Biosciences(Hudson,NY)から入手し、University of GeorgiaのCentral Animal Facilityにおいて飼育した。マウスをマイクロアイソレーターケージ中で保持し、BSL-2フード下で取り扱った。
【0131】
組換えPn3Pアーゼの産生
Pn3Pアーゼを既に記載のとおり、軽微に修正して産生した(26)。簡潔に述べると、pET-DEST42-「Pn3Pアーゼ」プラスミドにより形質転換させたBL21(DE3)細胞を、100μg/mlのアンピシリンが補給されたテリフィックブロス中で37℃において増殖させ、細胞密度を600nmにおける吸光度によりモニタリングした。OD600nmが1.0に達したら、細胞を18℃に移した。1mMの最終濃度までのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドの添加によりタンパク質発現を誘導し、細胞培養物を18時間インキュベートしておいた。細胞を遠心分離により回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.2)中で再懸濁させ、圧力溶解により溶解させた。溶解物を17,000×gにおける遠心分離により4℃において1時間澄明化し、0.45μmのシリンジフィルターに通した。組換えPn3PアーゼをNi2+-NTA樹脂により4℃において精製し、300mMのイミダゾールにより溶出させ、PBS pH7.2中に緩衝液交換した。タンパク質濃度をビシンコニン酸アッセイにより製造業者の説明書に従って決定した。純度をクーマシー染色により評価した。
【0132】
3型肺炎球菌(S.pneumoniae)のPn3Pアーゼ処理
TSABプレート上の新鮮肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)3型(WU2)及び無莢膜誘導体(JD908)コロニーを、THYブロス中で0.1のOD600nmまで接種し、上記のとおり培養した。100μg/mlのPn3Pアーゼの存在下でのWU2増殖を、OD600nmを計測することにより10時間の経過にわたりモニタリングした。2μg/ml、10μg/ml、又は10μg/mlの熱不活化Pn3Pアーゼの存在下でWU2を6時間増殖させ、段階希釈し、プレーティングしてコロニー形成単位を決定した。培養物を遠心分離により回収し、PBS中で洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で氷上で20分間固定し、さらに1回洗浄し、1mlのPBS中で懸濁させた。タイムコース実験のため、WU2及び無莢膜株を対数増殖中期(0.6のOD600nm)まで増殖させ、遠心分離により回収し、PBS中で洗浄し、次いで1mlのPBS中で懸濁させた。次いで、1μg/mlのPn3Pアーゼを添加し、37℃において1、2、又は4時間インキュベートした。処理した細胞を段階希釈し、プレーティングしてコロニー形成単位を決定し、2%のパラホルムアルデヒド中で氷上で20分間固定し、さらに1回洗浄し、1mlのPBS中で懸濁させた。
【0133】
競合ELISA
ELISAプレート(96ウェル、Nunc)を、0.1Mの炭酸塩緩衝液(pH9.0)中の5μg/mlのPn3Pにより室温において一晩コーティングした。Biotek405/LSマイクロプレートワッシャーを使用してプレートをPBS+0.1%のTween(PBS-T)20により4回洗浄した。PBS中の1%のBSAにより室温において1時間ブロッキングした後、マイクロプレートウェルを、PBS-T中のPn3P特異的抗血清と30分間プレインキュベートした固定処理細胞と室温において2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、次いでPBS-T中のヤギ抗マウスIgG-AP(Southern Biotech #1030-04)の1:2000の希釈物と室温において2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを1Mのトリス 0.3mMのMgCl
2
の中の2mg/mlのホスファターゼ基質(Sigma S0942)と37℃において約30分間インキュベートした。405nmにおける吸光度を、Biotek synergy H1マイクロプレートリーダー上で計測した。抗体結合の阻害パーセントを((非阻害OD405-阻害OD405)/非阻害OD405)×100により計算した。
【0134】
電子顕微鏡観察
電子顕微鏡観察を、University of GeorgiaのGeorgia Electron Microscopyコア施設により、Hammerschmidt et al.による修正方法に従って実施した(62)。処理細胞を、PBS緩衝液中の2%のグルタルアルデヒド、2%のパラホルムアルデヒド、0.075Mの酢酸リジン及び0.075%のルテニウムレッド中で氷上で1時間固定し、次いで0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液により2回リンスし、1回のリンスにつき15分間であった。次いで、0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液中の1%の四酸化オスミウム中で細胞を室温において1時間固定し、次いで0.15%のルテニウムレッドを含有する緩衝液中で2回リンスし、1回のリンスにつき15分間であった。ペレットをグレードエタノール系列(30%、50%、75%、95%、100%及び100%)中で脱水し、100%のアセトン中で2回交換し、それぞれのステップは15分間であった。次いで、ペレットに25%のスパー樹脂及び75%のアセトンを浸潤させ、2時間後に50%のスパー樹脂及び50%のアセトン、75%のスパー樹脂及び25%のアセトン、100%のスパー樹脂を連続的に浸潤させ、次いで70℃のオーブン中で24時間重合させた。試料をDiatomeダイヤモンドナイフにより60nmにおいて切片化し、スロットグリッド上にピックアップした。グリッドを酢酸ウラニル及びクエン酸鉛の液滴上で後染めし(それぞれ5分間)、染色の間にH
2
Oにより30秒間リンスした。JEOL JEM1011TEM(JEOL USA,Peabody,MA)を80kVにおける操作で使用して試料を顕微鏡観察した。
【0135】
食作用
対数増殖中期のWU2及びJD908(無莢膜)培養物を洗浄し、10μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)により室温において30分間染色した。WU2株を2μg/mlの活性又は熱不活化Pn3Pアーゼにより同時に処理した。細菌細胞ペレットを広範に洗浄し、1mlの無菌PBS中で懸濁させた。107個の細菌を、ネズミ白血病ウイルス形質転換マクロファージ系RAW264.7(American Type Culture Collection(ATCC)Manassas,VA)のコンフルエントな単層に、活性又は熱不活化幼ウサギ補体(Pel-Freez)と24ウェルプレート中で添加し、37℃において1時間インキュベートした。ウェルをPBSにより4回洗浄して細胞外細菌を除去した。マクロファージを2%のパラホルムアルデヒドにより4℃において15分間固定し、プレートから除去した。顕微鏡観察のため、細胞を、1%のウシ血清アルブミン中のビオチン化コムギ生殖系列アグルチニン(Vector labs)の1/500の希釈物と室温において30分間インキュベートし、次いでストレプトアビジンAPC(Biolegend)の1/1000の希釈物と室温において30分間インキュベートした。細胞を40倍の対物レンズにより画像化した。フローサイトメトリーをBeckman Cytoflex Sサイトメーター上で実施し、FlowJoにより分析した。細胞を散布プロットによりマクロファージ集団に対してゲーティングした。非CFSE標識対照は、高蛍光性の細胞集団をゲーティングするために機能した。Pn3Pアーゼ用量依存的実験を活性補体の添加により上記のとおり実施した。
【0136】
補体沈着
補体沈着アッセイを既に記載のとおり実施した(63)。細菌の3型WU2及び無莢膜(JD908)株をPBS中の3%のBSA中で再懸濁させた。アリコート(96ウェル丸底プレート上の2つ組のウェル中)をHoechst33342により染色し、5又は50μg/mlにおける不活化又は機能的Pn3Pアーゼにより37℃において1時間処理した。正常マウス血清(1:10希釈物)を試料に37℃において30分間添加した。細胞を洗浄し、マウス補体に対するFITC結合ヤギ抗体(MP BioMedical,Santa Ana,CA)により4℃において30分間染色した。試料をPBS中の3%のPBSにより洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で再懸濁させて固定した。次いで、試料をフローサイトメトリーにより分析した。FITC-Aの平均蛍光強度(MFI)をHoechst陽性細胞のゲーティングから計算した。
【0137】
修飾OPA
オプソニン食作用殺傷アッセイを既に記載のとおり、修正して実施した(43)。簡潔に述べると、3型WU2及び無莢膜(JD908)株を、96ウェル丸底プレートの2つ組ウェル中で、オプソニン化緩衝液B(OBB、Ca++/Mg++を有する無菌1×PBS、0.1%のゼラチン、及び5%の熱不活化FetalClone)中でPn3Pアーゼ(5又は50ug/mlの濃度における不活化又は機能的)を用いて又は用いずに37℃において1時間又は4時間インキュベートした。ヒト前骨髄球性白血病細胞系、HL-60(ATCC Manassas,VA)を、10%の熱不活化FetalClone(HyClone)及び1%のL-グルタミンを有するRPMI中で培養した。0.6%のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、Fisher)を使用してHL-60細胞を3日間分化させてからOPAアッセイを実施し、回収し、OBB中で再懸濁させた。活性又は熱不活化(補体なし)幼ウサギ補体(Pel-Freez)を、HL-60細胞に1:5の最終容量において添加した。HL-60/補体混合物を血清/細菌に5×105個の細胞/ウェルにおいて添加した(対照については、HL-60/補体を添加せず;代わりに等容量のOBB緩衝液を添加した)。最終反応物を37℃において1時間インキュベートした。試料を氷上で約20分間インキュベートすることにより反応を停止させた。次いで、10μlのそれぞれの反応物を50μlの最終容量に希釈し、2つ組で血液寒天プレート上にプレーティングした。プレートを嫌気的条件下で30℃において一晩インキュベートし、翌日カウントした。生存パーセントを、対照試料(HL-60細胞を有さない反応物、100%の生存率)について得られた平均値に正規化されたそれぞれの2つ組の反応物として計算した。
【0138】
ネズミ鼻腔内定着
鼻腔内定着を、本質的にPuchta et al(64)により記載のとおり実施した。対数増殖中期WU2培養物を無菌PBSにより洗浄し、108CFU/ml又は106CFU/10μlの濃度において懸濁させた。5~10匹の無麻酔8週齢雌BALB/cマウス(Taconic)の群に、既に記載のとおり106CFU/10μlを鼻腔内接種した。マウスに、0.3、及び7日目にビヒクルとしての10μlのPBSを接種し、又は0、0及び3、若しくは0、3、及び7日目に10μlのPBS中の50μgのPn3Pアーゼを投与することにより処理した。気管中への25ゲージ針の挿入により鼻咽頭をPBSにより流出させて鼻孔を介して500μlを排出させることにより鼻腔洗浄液を10日目に得た。鼻腔洗浄液の段階希釈物を、5%のヒツジ血液を有するトリプトンソイ寒天(TSAB)上にプレーティングしてコロニー形成単位を計数した。サンドイッチELISA(BiolegendマウスELISA MAX)を製造業者の説明書に従って実施して洗浄液中のIL-6及びTNFαサイトカインレベルを決定した。
【0139】
ネズミ敗血症チャレンジ
対数増殖中期WU2培養物を無菌PBSにより洗浄し、5×103CFU/100μLの濃度において懸濁させた。4匹の無麻酔8週齢雌BALB/cマウス(Taconic)の群に、5×103CFUを腹腔内(I.P.)注射した。対照マウスには、0時間において又は感染直後に100μLのPBS中の5μgの熱不活化Pn3PアーゼをI.P.注射した。処理マウスには、感染の0、12、又は24時間後に100μLのPBS中の0.5μg又は5μgのPn3PアーゼをI.P.投与した。動物を12時間ごとにモニタリングした。
【0140】
結果
Pn3Pアーゼは、増殖3型Spnから莢膜を除去する
莢膜形成3型WU2株を、増殖培地に添加された組換え酵素と10時間培養し、細菌増殖を、600におけるODを計測することによりモニタリングして増殖3型Spnに対するPn3Pアーゼ処理の効果を評価した。細胞のPn3Pアーゼ処理は、細菌に対して有害な増殖効果も細胞毒性効果も実証しなかった(
図9A)。同一実験において、本発明者らは、2時間間隔において酵素処理及び非処理群の両方について同等のCFU値を得た(データ示さず)。細菌生存率に対する酵素処理の直接的な影響を評価するため、対数増殖期培養物を単離し、活性、又は熱不活化Pn3Pアーゼを有する栄養素不含緩衝液中で懸濁させた。酵素処理細胞は、8時間のタイムコースにわたり不活化及びPBS対照と同等のカウント数を示した(
図9B)。
【0141】
次いで、Pn3Pアーゼの存在下で増殖させた細菌細胞を競合ELISAにより試験して酵素が増殖培養物中で効率的な莢膜除去をもたらすか否かを決定した。処理後、固定全細胞を2つの異なる濃度において使用してPn3PコーティングプレートへのPn3P特異的抗体結合について競合させた。無莢膜WU2突然変異株(JD908)は、その莢膜の欠落に起因して抗体結合の最小~無阻害を示した。熱不活化Pn3Pアーゼ処理細胞は、細胞表面がCPSにより完全に装飾されているはずであるため、最大阻害パーセントを実証した。活性Pn3Pアーゼ処理により、抗体結合の阻害はPn3Pアーゼ濃度依存的に減少し始め(
図10A)、これは、酵素が生存増殖3型Spnから莢膜をストリップすることを示唆する。
【0142】
細菌細胞を対数増殖中期まで増殖させ、PBS中で懸濁させ、Pn3Pアーゼにより0、1、2、又は4時間処理するタイムコース実験を実施した。このアッセイについて、WU2株がそれらの条件下で活性的に増殖せず、したがって、相当量の新たなCPSを産生しないはずであることを考慮して、Pn3Pアーゼ用量を1μg/mlに低下させた。それぞれの時点において、上記のとおり処理細胞を固定し、競合ELISAにより試験した。無莢膜WU2突然変異株(JD908)は、ここでも、その莢膜の欠落に起因して最小~無阻害を示した。非処理細胞は、最大阻害パーセントを示し、CPSにより完全に装飾されている細胞表面を示した。Pn3Pアーゼインキュベーション時間が増加するにつれ、抗体結合の阻害が有意に減少し始め、処理の2又は4時間後に本質的に無莢膜となると考えられる(
図10B)。
【0143】
Pn3Pアーゼ処理細胞を透過型電子顕微鏡観察により可視化し、熱不活化Pn3Pアーゼにより処理した細胞と比較した。熱不活化酵素処理細胞は、それらの表面にわたる厚い、完全なCPSコートを示し(
図10C)、明らかに無莢膜突然変異体と区別された(
図10D)。酵素処理細胞の莢膜層は、莢膜をほとんど~全く示さず(
図10E)、無莢膜と考えられた。
【0144】
3型SpnのPn3Pアーゼ処理は、食細胞取り込み及び殺傷を可能とする
CPSの主要なビルレンス機序は、宿主食細胞による食作用に抵抗する能力を細菌に提供することである(1、6)。インビトロでのマクロファージによる取り込みに対するPn3Pアーゼ処理の効果を調査するため、本発明者らは、対数増殖中期細菌培養物をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)により染色し、次いでPn3Pアーゼにより処理し、次いでRAW264.7マクロファージとインキュベートした。次いで、マクロファージを広範に洗浄し、蛍光顕微鏡観察により画像化した(
図11A)。マクロファージによる細菌取り込みの程度をフローサイトメトリーにより定量した。酵素により処理した細菌は、莢膜形成株よりも有意に多くマクロファージにより取り込まれた。次いで、本発明者らは、蛍光細菌の食作用を表す蛍光マクロファージの割合を決定した(
図11C~D)。熱不活化Pn3Pアーゼとインキュベートした莢膜形成3型株は、最小の蛍光標識食細胞を有した一方、Pn3Pアーゼ処理細菌は、無莢膜突然変異株と同程度で効率的にマクロファージにより取り込まれた。取り込みは、補体の存在下でのより高度な細菌取り込みにより証明されるとおり、補体に部分的に依存的であった(
図11C)。Pn3Pアーゼ処理は、用量依存的に細菌をRAWマクロファージによる食作用の飲み込みに対してより感受性とした一方、さらに高用量の不活化酵素は、細菌取り込みに対して有意な効果を有さなかった(
図11D)。
【0145】
肺炎球菌表面上の補体沈着は、効率的な食作用及びクリアランスを補助する重要な機序である(10、11)。CPSは補体回避特性を細菌に提供するため(10、11)、本発明者らは、細菌表面上のC3b沈着に対するPn3Pアーゼ処理による莢膜除去の効果を調査した。莢膜形成3型WU2株を、活性又は不活性Pn3Pアーゼにより処理した。非処理3型株及び無莢膜突然変異体を追加の対照として含めた。次いで、細菌を正常マウス血清とインキュベートし、洗浄し、マウス補体に対するFITC結合抗体により染色した。次いで、固定試料をフローサイトメトリーにより分析した。用量依存的に、Pn3Pアーゼ処理は、細菌表面上の補体の沈着を増加させ、無莢膜株上の沈着のレベルに達した。補体は、非処理又は不活化Pn3Pアーゼ処理した細菌への最小の結合を有した(
図12)。
【0146】
Spnの食作用殺傷を評価するための標準的なインビトロアッセイは、HL-60細胞を好中球に分化させて抗体オプソニン化細菌を飲み込ませ、クリアランスさせるオプソニン食作用アッセイ(OPA)である。この方法は、膨大なワクチン研究において抗体応答の質を計測するために広範に使用されている(43~48)。好中球は、肺における病原性細菌に対する先天性免疫の最も重要な構成成分の1つである(49~51)。この研究の焦点は、Spnに対する体液性免疫応答ではない一方、本発明者らは、修正OPAを使用してインビトロでPn3Pアーゼにより処理した3型Spnの補体媒介好中球殺傷を評価した。莢膜形成3型Spnを、活性又は熱不活化Pn3Pアーゼとインキュベートした。分化させたHL-60細胞を、活性又は熱不活性補体とプレインキュベートした。HL-60細胞及び補体の混合物を細菌に添加し、37℃において1時間インキュベートした。実験群における生存細菌を定量するため、反応混合物をプレーティングし、CFUを翌日カウントした。生存パーセントを、対照試料として機能する好中球を有さない反応物(100%の生存率)から得られた平均値に正規化されたそれぞれの2つ組の反応物として計算した。活性補体及び好中球とのインキュベーション時、酵素非処理の莢膜形成3型株は好中球殺傷を回避し、最大生存率を示し得た一方、無莢膜突然変異株はほぼ40%の生存能まで低減された(
図13)。莢膜を除去するためのPn3Pアーゼ処理は、3型株を、無莢膜株と同様に補体依存的好中球殺傷に対して感受性とした(
図13)。
【0147】
Pn3Pアーゼは鼻咽頭定着を制限する
インビボで酵素の保護能を調査するため、本発明者らは最初に、BALB/cマウスを用いる鼻腔内定着実験を実施した。Spnによる鼻腔定着は、侵襲性肺炎球菌疾患への移行に不可欠である(4、5)。この株の莢膜は、鼻腔内定着に要求されることが確立されている(6)。したがって、本発明者らは、鼻腔定着モデルを使用し、定着3型株の莢膜の除去を介して鼻咽頭中の細菌定着を低減させるPn3Pアーゼの能力を評価した。本発明者らは最初に、無莢膜突然変異体JD908が、鼻咽頭に定着し得ないことを確認した(データ示さず)。次いで、マウスの群に、10μlのPBS中の10
6個の対数増殖期の野生型(wt)莢膜形成細菌を鼻腔内接種した。全ての接種材料に、Pn3Pアーゼ又は緩衝液対照のいずれかを追加した。群に0日目、0及び3日目、又は0.3、及び7日目のいずれかで酵素を投与して複数回投与の効果を評価した。10日目にマウスを麻酔し、細菌負荷を定量した。鼻腔洗浄液を得、段階希釈し、プレーティングして細菌負荷を計数した。ビヒクル対照処理マウスは、単一用量のPn3Pアーゼのみにより処理したマウスよりも有意に高い細菌負荷で定着された。2回又は3回用量のPn3Pアーゼの投与により、動物洗浄液の大多数がいかなる生存細菌コロニーも欠いた(
図14A)。肺ホモジネート及び血清試料は、細菌負荷の証拠を示さなかった(データ示さず)。シグネチャー炎症促進性サイトカインレベルを鼻腔洗浄液中でELISAにより計測した(52)。ビヒクル対照マウスは、Pn3Pアーゼ処理動物と比較して有意に増加したサイトカインIL-6及びTNFαのレベルを有し、それはこの群における細菌負荷に対する継続した宿主炎症応答を反映した(
図14B~C)(52)。IL-6及びTNFαの有意な低減は、0日目の単一用量のPn3Pアーゼの後でも、ほとんどの動物において観察された。単一用量群におけるより高い細菌負荷を有するマウスは、この群における増加したサイトカインレベルに寄与した。
【0148】
Pn3Pアーゼは致死チャレンジからマウスを保護する
Pn3Pアーゼをその保護能についてさらに評価し、治療剤としてのPn3Pアーゼの有用性を評価するため、本発明者らは、腹腔内(I.P.)敗血症モデルを用いた(53、54)。マウスの群に、5×10
3CFUの対数増殖期のSpnのWU2の3型株を感染させた。本発明者らは、感染の0時間、12、又は24時間後に投与された5μg又は0.5μgの単一用量の効果を評価した。熱不活化酵素により処理した対照群は、感染の48時間以内に死亡した。酵素用量又は投与のタイミングにかかわらず、全ての処理群は疾病の徴候を示さず、I.P.チャレンジからの完全な保護が認められた(
図15)。
【0149】
考察
この試験は、病原性細菌、血清3型SpnのCPSを標的化する炭水化物分解酵素(グリコシドヒドロラーゼ)、Pn3Pアーゼの保護的役割を評価することを目的とした。Spnにより引き起こされる侵襲性肺炎球菌疾患(IPD)は、ヒト健康に対して大きな脅威であり、驚くべき死亡率を伴う。世界的なワクチン接種プログラム及び抗生物質の使用にかかわらず、Spnは、世界規模で史上最悪の感染因子のままである。肺炎球菌ワクチンは経験的に作製され、特に高齢及び免疫減衰個体間で免疫原性が変動し/不十分である。IPDに対する抗生物質の広範な使用は、薬物耐性肺炎球菌株の拡散をもたらした(34、35)。この研究は、IPDに対する現行のワクチン及び抗生物質による解決策の欠点に対する代替的な標的化治療アプローチを提供する。
【0150】
第1に、本発明者らは、Pn3Pアーゼが、細胞に対して殺菌効果を有さずに生存肺炎球菌から莢膜を効率的に除去させ得ることを実証した。インビトロアッセイを介して、本発明者らは、Pn3Pアーゼ処理がマクロファージ細胞系による食作用に対する細菌の感受性を増加させることを観察した。これらの結果は、有望であった。それというのも、莢膜は、Spnの宿主食細胞による飲み込みの耐性を可能とする主要な宿主免疫回避構成成分であるためである(9)。次いで、本発明者らは、酵素処理が好中球による補体媒介殺傷を有意に増加させることを結論付けた。単一用量のPn3Pアーゼは、3型Spnによるネズミ鼻咽頭定着を有意に低減させ、それは酵素がリスクがある集団におけるこの血清型による定着を制御するための予防的措置として機能し得ることを示した。最後に、腹腔内チャレンジを実施して敗血症モデルにおけるPn3Pアーゼの保護能を評価した。とりわけ、感染の24時間後に投与された0.5μgの単一低用量は、細菌チャレンジからチャレンジマウスの100%を保護し得た一方、対照処理動物は、48時間よりも長く生存しなかった。このモデルにおけるPn3Pアーゼの堅牢な保護能は、酵素的活性が、低用量においても莢膜を効率的に分解するために宿主内で十分であることを実証する。
【0151】
Pn3Pアーゼが肺炎球菌感染についての治療潜在性を有することを考慮すると、酵素の適用に付随する実際的な問題、例えば、免疫原性、投与経路、及び基質特異性に対処する必要がある(55)。チャレンジ実験におけるPn3Pアーゼに対して生成される抗体力価の本発明者らの予備評価は、有効用量の酵素に対して生成されるIgM応答もIgG応答も観察しなかった。将来的な研究は、Pn3Pアーゼに対する体液性及び細胞免疫応答を評価し、菌血症モデルについての代替的な投与経路、例えば、静脈内経路、又は肺炎モデルについてのエアロゾル化スプレーを調査する。エアロゾルスプレーによる気道への酵素送達の有用な例は、嚢胞性線維症患者における分泌DNAによる気道閉塞を緩和させるために使用されるPulmozymeとして公知の組換えヒトデオキシリボヌクレアーゼである(56)。治療剤としてのPn3Pアーゼの使用に伴う別の潜在的な問題は、宿主グリカンに対するその活性である。Pn3Pと構造的に類似する哺乳動物グリカンに対するPn3Pアーゼの緩和した基質特異性を評価する必要がある。
【0152】
治療酵素としてのPn3Pアーゼの高い潜在性に加え、このグリコシルヒドロラーゼは、それが現在確立されているグリコシルヒドロラーゼCarbohydrate Active enZYme(CAZY)ファミリーに収まらない点で構造/機能の観点から特有の特性を有する(57)。このタンパク質の構造的特性のさらなる試験は、他の特有の細菌CPSに向かう活性を有する構造的に類似する酵素の発見をもたらし得る。将来的な調査は、他の蔓延する肺炎球菌血清型及び他の莢膜形成病原性細菌に対する使用のための酵素の存在を探索する。早期研究に基づくと、Pn3Pアーゼを発現する天然種は、2つの追加の肺炎球菌CPSを分解する能力を有する(58、59)。このPn3Pアーゼを発現するパエニバシラス属(Paenibacillus)種は土壌から単離された一方(26、42、59)、なぜこの種が、ヒト病原体の莢膜を分解し得るそのような酵素を有するように進化するか疑問を呈するのが適切である。それらが共進化関係を示す、酵素についての天然基質であるか否かも、他の土壌生息微生物又は植物が類似のグリカン残基及び結合を発現するか否かも、依然として探索されていない。
【0153】
ここで提示される結果は、CPSの酵素的加水分解が、Spn及び潜在的に他の重要な莢膜形成病原体、例えば、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus)(MRSA)により引き起こされる疾患に有効な代替的又は補完的治療アプローチであり得ることを示す。まとめると、この研究は、他の致死細菌病原体をその莢膜多糖の標的化を介して衰弱させる、グリコシドヒドロラーゼ、Pn3Pアーゼの保護的役割の最初の包括的評価として機能する。
【0154】
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64.Puchta A,Verschoor CP,Thurn T,Bowdish DM.2014.Characterization of inflammatory responses during intranasal colonization with Streptococcus pneumoniae J Vis Exp:e50490.
【0155】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に利用可能な材料(例えば、例として、例えば、GenBank及びRefSeqにおける、例えば、ヌクレオチド配列寄託書、並びに例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBにおけるアミノ酸配列寄託書、並びにGenBank及びRefSeqにおけるアノテートコード領域からの翻訳物)の完全な開示は、参照により全体として組み込まれる。刊行物において参照される補足材料(例えば、補足表、補足図、補足材料及び方法、並びに/又は補足実験データ)は、同様に参照により全体として組み込まれる。本出願の開示及び参照により本明細書に組み込まれる任意の文献の開示間に任意の不一致が存在する場合、本出願の開示が優先するものとする。上記の詳細な説明及び実施例は、明確な理解のために挙げられているにすぎない。そこから不要な限定を理解すべきでない。本開示は、示され、記載される厳密な詳細に限定されず、それは当業者に明らかな変動が特許請求の範囲により定義される本開示内に含まれるためである。
【0156】
特に示されない限り、構成成分の量、分子量、並びに本明細書及び特許請求の範囲において使用される上記のものを表現する全ての数字は、全ての例において用語「約」により修飾されるものとして理解すべきである。したがって、特に逆の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示により得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、及び特許請求の範囲と均等物の公開主義を限定する試みとしてでなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数字に照らして、及び通常の四捨五入技術を適用することにより解釈すべきである。
【0157】
広い範囲の開示を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であることにもかかわらず、具体例に記載の数値は、可能な限り厳密に報告される。しかしながら、全ての数値は本質的に、それらのそれぞれの試験計測値に見出される標準偏差から必然的に生じるある範囲を含有する。
【0158】
全ての見出しは読者の便宜のためであり、規定のない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用すべきでない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む遺伝子改変細胞であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する遺伝子改変細胞。
(項目2)
コード領域を含むポリヌクレオチドを含む遺伝子改変細胞であって、前記コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する遺伝子改変細胞。
(項目3)
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、項目1又は2に記載の遺伝子改変細胞。
(項目4)
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目3に記載の遺伝子改変細胞。
(項目5)
真核細胞である、項目1又は2に記載の遺伝子改変細胞。
(項目6)
哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞である、項目5に記載の遺伝子改変細胞。
(項目7)
原核細胞である、項目1又は2に記載の遺伝子改変細胞。
(項目8)
大腸菌(E.coli)である、項目7に記載の遺伝子改変細胞。
(項目9)
前記タンパク質が、異種アミノ酸配列を含む、項目1又は2に記載の遺伝子改変細胞。
(項目10)
前記異種アミノ酸配列が、タグを含む、項目9に記載の遺伝子改変細胞。
(項目11)
項目1又は2に記載の遺伝子改変細胞を含む組成物。
(項目12)
単離成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物であって、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する組成物。
(項目13)
前記タンパク質が、精製されている、項目12に記載の組成物。
(項目14)
単離ポリヌクレオチドを含む組成物であって、前記ポリヌクレオチドは、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするコード領域を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有する組成物。
(項目15)
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64から選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、項目12又は14に記載の組成物。
(項目16)
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
薬学的に許容可能な担体を含む、項目12又は14の組成物。
(項目18)
Pn3Pアーゼ活性を有するタンパク質の発現に好適な条件下で細胞をインキュベートすること
を含む方法であって、前記細胞は、コード領域を含むポリヌクレオチドを含み、前記コード領域は、成熟Pn3Pアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、前記タンパク質は、Pn3Pアーゼ活性を有し、前記細胞は、前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する方法。
(項目19)
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記細胞が、遺伝子改変細胞であり、前記ポリヌクレオチドが、外因性ポリヌクレオチドである、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記タンパク質を単離することをさらに含む、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記タンパク質を精製することをさらに含む、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記細胞が、真核細胞である、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記細胞が、哺乳動物細胞、酵母細胞、又は昆虫細胞である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記細胞が、原核細胞である、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記原核細胞が、大腸菌(E.coli)である、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記タンパク質が、異種アミノ酸配列を含む、項目18~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記異種アミノ酸配列が、タグを含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させること
を含む方法であって、前記接触を、III型莢膜多糖の酵素的加水分解に好適な条件下で行い、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上のIII型莢膜多糖の量を、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して低減させる方法。
(項目31)
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の沈着を増加させる方法であって、
III型莢膜多糖を含む肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を、Pn3Pアーゼ活性を含む成熟Pn3Pアーゼタンパク質と接触させることを含み、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の表面上の少なくとも1つの補体構成成分の前記沈着を、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較して増加させる方法。
(項目32)
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、項目30又は31に記載の方法。
(項目33)
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)の複製に好適な条件で存在する、項目30又は31に記載の方法。
(項目35)
前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質が、単離Pn3Pアーゼタンパク質である、項目30又は31に記載の方法。
(項目36)
前記接触が、前記肺炎球菌(S.pneumoniae)を、前記成熟Pn3Pアーゼタンパク質を発現する遺伝子改変細胞に曝露させることを含む、項目31又は32に記載の方法。
(項目37)
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、前記Pn3Pアーゼタンパク質と接触させていない前記肺炎球菌(S.pneumoniae)と比較してマクロファージによる食作用に対する増加した感受性、好中球による増加した補体媒介殺傷、又はそれらの組合せを有する、項目31又は32に記載の方法。
(項目38)
前記肺炎球菌(S.pneumoniae)が、対象中に存在する、項目31又は32に記載の方法。
(項目39)
対象における感染を治療する方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
(項目40)
対象における症状を治療する方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染を有し、又は有するリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
(項目41)
対象における定着を減少させる方法であって、
Pn3Pアーゼ活性を有する成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む有効量の組成物を、血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)が定着しており、又は定着しているリスクがある対象に投与すること
を含む方法。
(項目42)
前記タンパク質が、配列番号2から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、アミノ末端アミノ酸は、配列番号2の残基2~64のいずれか1つから選択され、カルボキシ末端アミノ酸は、配列番号2の残基1545である、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸41~1545と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記対象が、ヒトである、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
治療法における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
(項目46)
医薬品としての使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
(項目47)
病態の治療における使用のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質。
(項目48)
肺炎、肺炎球菌髄膜炎、中耳炎、菌血症、敗血症、又はそれらの組合せの治療用医薬品の調製のための、本明細書に開示の成熟Pn3Pアーゼタンパク質の使用。
(項目49)
血清3型肺炎球菌(S.pneumoniae)により引き起こされる感染又は症状の治療又は予防における使用のための、本明細書に記載の成熟Pn3Pアーゼタンパク質を含む組成物。
(項目50)
本明細書に記載の1つ以上の特徴部を含むタンパク質、組成物、又は方法。
【配列表】