(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
(21)【出願番号】P 2021519442
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018984
(87)【国際公開番号】W WO2020230789
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019091374
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】堀越 良爾
(72)【発明者】
【氏名】阿比留 真
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297470(JP,A)
【文献】特開2018-105989(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0038358(KR,A)
【文献】特開2017-2246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08G 59/17
C08G 59/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂、光開始剤及び熱硬化剤を含む、液晶滴下工法用シール剤であって、
硬化性樹脂が、オリゴマーA及びオリゴマーBを含み、
オリゴマーAが、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物であ
って、
ビスフェノールF型の構造を有する化合物であるか、又は、
オリゴマーAが、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上である、下記式(1):
【化1】
〔式中、
G
1
及びG
2
は、独立に、グリシジル基又はメチルグリシジル基であり、
R
11
は、水素原子又はメチル基であり、
X
1
は、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-O-基、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-(O-R
1
)
n1
-O-基(式中、R
1
は、炭素原子数1~6のアルキレンであり、n1は、1~10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5~30のヘテロアリール基であり、
Y
1
は、炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基、炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基又は基:-R
2
-(O-R
2
)
n2
-(式中、R
2
は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、n2は、0又は1~6の整数である)であり、ここで、炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基における炭素原子数1~4のアルキレン基は、非置換であるか、又は、トリフルオロメチル基若しくはフェニル基で置換されているが、
但し、分子中のベンゼン環の数は3以上であり、
Y
1
は、以下:
【化2】
で表される基ではない〕
で表されるエポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物であり、
オリゴマーBが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物からなる群から選択される1種以上であ
り、
ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂であり、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂であり、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、ビスフェノールADとエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂である、液晶滴下工法用シール剤。
【請求項2】
オリゴマーAが、1分子中にベンゼン環を3つ以上有
し、かつ、ビスフェノールF型の構造を有する化合物である、請求項1に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【請求項3】
オリゴマーBが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物である、請求項1
又は2に記載の液晶滴下工法用シール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法用シール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の製造方法において、滴下工法は真空下でシール剤の閉ループ内に液晶を直接滴下、貼り合わせ、真空開放を行うことでパネルを作製することができる工法である。この滴下工法では、液晶の使用量の低減、液晶のパネルへの注入時間の短縮等のメリットが数多くあり、現在の大型基板を使った液晶パネルの製造方法として主流となっている。滴下工法を含む方法では、シール剤・液晶を塗布して、貼り合わせた後、ギャップだし、位置あわせを行い、シール剤の硬化を主に紫外線硬化により行っている。
【0003】
特許文献1には、液晶滴下工法用シール剤の原料として、フェノール性水酸基を1以上有するフェノール化合物に、アルキレンカーボネート又はハロアルコール化合物を付加させ、さらにグリシジルエーテル化させたエポキシ樹脂、及びこのエポキシ樹脂を、カルボン酸、カルボン酸無水物又はフェノール化合物で変性した変性エポキシ樹脂が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶パネルの狭額縁化に伴い、シール剤と配向膜がオーバーラップする傾向にある。これにより、配向膜に対する接着性が求められている。また、同時にシール剤の線幅が狭くなる傾向にある。これにより、低透湿性が求められている。
【0006】
よって、本発明は、配向膜に対する接着性に優れ、低透湿性に優れる硬化物を与える、液晶滴下工法用シール剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の構成を有する。
[1]硬化性樹脂、光開始剤及び熱硬化剤を含む、液晶滴下工法用シール剤であって、
硬化性樹脂が、オリゴマーA及びオリゴマーBを含み、
オリゴマーAが、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物であり、
オリゴマーBが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物からなる群から選択される1種以上である、液晶滴下工法用シール剤。
[2]オリゴマーAが、1分子中にベンゼン環を3つ以上有する、[1]の液晶滴下工法用シール剤。
[3]オリゴマーAが、ビスフェノールF型の構造を有する、[1]又は[2]の液晶滴下工法用シール剤。
[4]オリゴマーBが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル変性した化合物である、[1]~[3]のいずれかの液晶滴下工法用シール剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配向膜に対する接着性に優れ、低透湿性に優れる硬化物を与える、液晶滴下工法用シール剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本明細書において、「グリシジル基」とは、2,3-エポキシプロピル基を意味する。「メチルグリシジル基」とは、2,3-エポキシ-2-メチルプロピル基を意味する。「エポキシ基」とは、グリシジル基及びメチルグリシジル基の少なくとも一方を含む。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基(CH2=CH2-C(=O)-)及びメタクリロイル基(CH2=CH(CH3)-C(=O)-)の少なくとも一方を含む。「置換されていてもよい」とは、「置換又は非置換」を意味する。
【0010】
[液晶滴下工法用シール剤]
液晶滴下工法用シール剤は、硬化性樹脂、光開始剤及び熱硬化剤を含み、硬化性樹脂が、オリゴマーA及びオリゴマーBを含み、オリゴマーAが、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物であり、オリゴマーBが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物からなる群から選択される1種以上である。
【0011】
(硬化性樹脂)
硬化性樹脂は、オリゴマーA及びオリゴマーBを含む。
【0012】
<オリゴマーA>
オリゴマーAは、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂(以下、「原料エポキシ樹脂」ともいう。)を部分(メタ)アクリル変性した化合物である。ここで、エポキシ樹脂を「部分(メタ)アクリル変性した」とは、エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が(メタ)アクリル変性されていることを意味する。
【0013】
<<原料エポキシ樹脂>>
<<<エポキシ当量>>>
原料エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200g/epo以上である。このようなエポキシ当量を有する原料エポキシ樹脂を用いることで、オリゴマーAの1分子中における官能基濃度が低くなり、配向膜に対する接着性に優れる液晶滴下工法用シール剤が得られる。原料エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200~400g/epoであることが好ましく、230~330g/epoであることがより好ましく、260~320g/epoであることが特に好ましい。本明細書において、エポキシ当量は、JISK7236:2001(ISO3001:1999に対応)に準拠して求められる。
【0014】
<<<芳香環量>>>
原料エポキシ樹脂の芳香環量は、0.43以上である。このような芳香環量を有する原料エポキシ樹脂を用いて得られたオリゴマーAを、後述するオリゴマーBと組み合わせることで、低透湿性に優れる液晶滴下工法用シール剤が得られる。原料エポキシ樹脂の芳香環量は、0.43~0.60であることが好ましく、0.43~0.55であることがより好ましく、0.48~0.53であることが特に好ましい。
【0015】
本明細書において、芳香環量は、原料エポキシ樹脂に占める芳香環構造の割合を意味する。即ち、芳香環量は、以下の式(数1)によって求められる値である。
芳香環量=原料エポキシ樹脂の1分子中における芳香環構造の分子量の総数÷原料エポキシ樹脂の1分子の分子量 (数1)
【0016】
また、芳香環構造の分子量は、芳香環を構成する炭素原子の重量に基づく。例えば、フェニル基、フェニレン基等のベンゼン環が1つの基は、ベンゼン環(炭素原子数6の環)を構成する炭素原子の分子量の合計(即ち、72)である。また、ナフタレン環(炭素原子数10の環)及びアントラセン環(炭素原子数14の環)のような縮合環の基は、当該縮合環を構成する炭素原子の分子量の合計(即ち、120及び168)である。なお、芳香環がヘテロ芳香環の場合の芳香環構造の分子量は、当該ヘテロ芳香環を構成するヘテロ原子及び炭素原子の重量に基づく。オリゴマーAを構成する芳香環基は、ヘテロ原子を含まないことが好ましい。
【0017】
<<<好ましい原料エポキシ樹脂の態様>>>
このような原料エポキシ樹脂として、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
【0019】
〔式中、
G1及びG2は、独立に、グリシジル基又はメチルグリシジル基であり、
R11は、水素原子又はメチル基であり、
X1は、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-O-基、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-(O-R1)n1-O-基(式中、R1は、炭素原子数1~6のアルキレンであり、n1は、1~10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5~30のヘテロアリール基であり、
Y1は、炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基、炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基又は基:-R2-(O-R2)n2-(式中、R2は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、n2は、0又は1~6の整数である)であるが、
但し、分子中のベンゼン環の数は3以上である〕
【0020】
式(1)中、G1及びG2は、独立に、グリシジル基又はメチルグリシジル基である。合成が容易である観点から、G1及びG2は、同一であって、グリシジル基であることが好ましい。
【0021】
式(1)中、R11は、水素原子又はメチル基である。合成が容易である観点から、R11は、水素原子であることが好ましい。
【0022】
式(1)中、X1は、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-O-基、置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリール-(O-R1)n1-O-基(式中、R1は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、n1は、1~10の整数である)、又は、置換されていてもよい総原子数5~30のヘテロアリール基である。
【0023】
炭素原子数6~20のアリール基は、単環又は多環の芳香族炭化水素基であり、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ターフェニリル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基及びビフェニリル基であることが好ましい。
【0024】
炭素原子数6~20のアリール基の置換基は、特に限定されず、炭素原子数1~4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルメルカプト基、シクロアルキル基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数1~4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0026】
アルコキシ基におけるアルキル部分の例示は、前記した炭素原子数1~4のアルキル基の例示が挙げられる。アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。アルキルカルボニル基及びアルキルメルカプト基におけるアルキル基の例示は、前記した炭素原子数1~4のアルキル基の例示が挙げられる。アルキルカルボニル基として、アセチル基、プロパノイル基、2-メチルプロパノイル基、ブタノイル基等が挙げられる。アルキルメルカプト基として、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基、i-プロピルメルカプト基、ブチルメルカプト基、i-ブチルメルカプト基、sec-ブチルメルカプト基、tert-ブチルメルカプト基等が挙げられる。シクロアルキル基は、炭素原子数3~20の単環又は多環の脂肪族炭化水素基であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0027】
炭素原子数1~4のアルキレン基は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基)、プロピリデン基(プロパン-1,1-ジイル基)、イソプロピリデン基(プロパン-2,2-ジイル基)、テトラメチレン基、ブチリデン基(ブタン-1,1-ジイル基)、イソブチリデン基(2-メチルプロパン-1,1-ジイル基)等が挙げられる。また、炭素原子数1~6のアルキレン基は、前記の炭素原子数1~4のアルキレン基に加えて、ペンタメチレン基、2-メチルペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサメチレン基等の炭素原子数5及び6のアルキレン基が含まれる。
【0028】
総原子数5~30のヘテロアリール基は、炭素原子の他に、少なくとも酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1以上のヘテロ原子を含む単環又は多環の複素環基であり、フタルイミジル基、イミダゾリル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、イソチオクロメニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基等が挙げられる。総原子数5~30のヘテロアリール基の置換基は、前記した炭素原子数6~20のアリール基の置換基が挙げられる。
【0029】
X1は、フェノキシ基、4-tert-ブチル-フェノキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、フタルイミジル基、フェニル-(OCH2CH2)n1a-O-基(式中、n1aは2~10の整数を表す)が好ましく、フェノキシ基がより好ましい。
【0030】
式(1)中、Y1は、炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基、炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基又は基:-R2-(O-R2)n2-(式中、R2は、炭素原子数1~6のアルキレン基であり、n2は、0又は1~6の整数である)である。
【0031】
炭素原子数6~20のアリーレン基は、単環又は多環の芳香族基であり、フェニレン基、ナフチレン基、及びアントラセニレン基が挙げられ、好ましくはフェニレン基である。
【0032】
炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基における炭素原子数1~4のアルキレン基及び炭素原子数6~20のアリーレン基の例示は、前記したとおりである。炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基として、エチレン-1,4-フェニレン基が好ましい。炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基における各基への結合の順序はいずれであってもよいが、X1を含む基が結合する酸素原子には、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基における、炭素原子数6~20のアリーレン基が結合しているのが好ましい。
【0033】
炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基における炭素原子数1~4のアルキレン基及び炭素原子数6~20のアリーレン基の例示は、前記したとおりである。炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基として、1,3-フェニレンビスメチレン基(m-キシリレン基)及び1,4-フェニレンビスメチレン基(p-キシリレン基)が好ましい。
【0034】
炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基における炭素原子数1~4のアルキレン基及び炭素原子数6~20のアリーレン基の例示は、前記したとおりである。炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基として、下記の基:
【化2】
(式中、R
21及びR
22は、互いに独立して、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基又はフェニル基である)が好ましく、
【化3】
が特に好ましい。
【0035】
式(1)中、Y1は、炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基、炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン基、又は、炭素原子数6~20のアリーレン-炭素原子数1~4のアルキレン-炭素原子数6~20のアリーレン基であるのが好ましい。好ましいY1を有するエポキシ化合物は、X1及びY1がいずれも芳香環を有する。X1及びY1がいずれも芳香環を有するエポキシ化合物を用いると、得られる硬化物の低透湿性がより優れる。
【0036】
また、式(1)において、X1及びY1が有するベンゼン環の数の合計が3以上である。X1及びY1が有するベンゼン環の数の合計が2であるエポキシ樹脂を用いると、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂とはならない場合があり、配向膜に対する接着性が劣る場合及び/又は透湿性が高くなる場合がある。
【0037】
このような式(1)で表されるエポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂におけるG1及び/又はG2の一部が、基:-CH2CR13(OR31)CH2O-Z(式中、R13は、水素原子又はメチル基であり、R31は、水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり、Zは、(メタ)アクリロイル基である)に置き換わった化合物である。
【0038】
上記式(1)で示されるエポキシ化合物及び上記式(1)で示されるエポキシ化合物を部分(メタ)アクリル変性した化合物は、特開2017-002246号公報に記載の方法により製造することができる。
【0039】
<<オリゴマーAの好ましい態様>>
オリゴマーAは、低透湿性の観点から、1分子中にベンゼン環を3つ以上有することが好ましく、1分子中にベンゼン環を3~6有することがより好ましく、1分子中にベンゼン環を4~6有することが特に好ましい。ここで、縮合環を有する基は、縮合環を構成する単環におけるベンゼン環の数をいう。例えば、ナフタレン環はベンゼン環の数が2であり、ピレン環はベンゼン環の数が4である。オリゴマーAが1分子中にベンゼン環を3つ以上有する場合、当該ベンゼン環は、独立して存在する(即ち、縮合環を含まない)ことが好ましい。
【0040】
また、オリゴマーAは、低透湿性の観点から、ビスフェノールF型の構造を有することが好ましく、1分子中にベンゼン環を3つ以上有し、かつ、ビスフェノールF型の構造を有することが特に好ましい。ここで、ビスフェノールF型の構造とは、下記:
【化4】
で表される構造である。このような特に好ましい化合物としてビスフェノールF型の構造の他に、フェニル基を1つ有する化合物が挙げられる。
【0041】
オリゴマーAは、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。なお、オリゴマーAは、後述するオリゴマーBに相当する成分ではない。即ち、オリゴマーAは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物ではない。
【0042】
<オリゴマーB>
オリゴマーBは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂及びそれらの部分(メタ)アクリル変性化合物(即ち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物及びビスフェノールAD型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物)からなる群から選択される1種以上である。ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)とエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂である。ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)とエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂である。ビスフェノールAD型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAD(1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン)とエピクロルヒドリンとの縮合生成物であるエポキシ樹脂である。
【0043】
配向膜に対する密着性の観点から、オリゴマーBは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂を部分(メタ)アクリル変性した化合物からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
オリゴマーBは、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0044】
<その他の硬化性樹脂>
オリゴマーA及びオリゴマーB以外の硬化性樹脂(以下、「オリゴマーC」ともいう。)としては、特に限定されず、液晶滴下工法用シール剤の主剤として用いられる従来のエチレン性不飽和基及び/又はエポキシ基を有する樹脂が挙げられる。
【0045】
エポキシ基を有する樹脂であるオリゴマーCは、エポキシ基を1以上有するものであれば特に限定されない。このようなエポキシ基を有する樹脂としては、原料エポキシ樹脂、及び原料エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が挙げられる。ここで、「原料エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂」は、エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43未満であるエポキシ樹脂;エポキシ当量が200g/epo未満であり、かつ、芳香環量が0.43以上であるエポキシ樹脂;又は、エポキシ当量が200g/epo未満であり、かつ、芳香環量が0.43未満であるエポキシ樹脂である。エポキシ基を有する樹脂であるオリゴマーCは、特開2017-214462号公報に記載されている、フェノール性水酸基を1以上有する化合物に、アルキレンカーボネート又はハロアルコールを付加させ、さらにグリシジルエーテル化させたエポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
エチレン性不飽和基を有する樹脂であるオリゴマーCとしては、エポキシ基を有する樹脂であるオリゴマーCの、エポキシ基の全部が(メタ)アクリル変性された化合物等が挙げられる。
【0047】
エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する樹脂であるオリゴマーCとしては、原料エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の部分(メタ)アクリル変性化合物等が挙げられる。
【0048】
オリゴマーCは、上記した以外に、WO2014/057871、特開2017-002204号公報等に記載されており、適宜選択できる。なお、オリゴマーCは、ケイ素原子を有さないことが好ましい。
【0049】
(光開始剤)
光重合開始剤は、光のエネルギーを吸収することによって活性化し、ラジカルを発生する化合物を意味する。光重合開始剤は、特に限定されず、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサトン類、α-アシロキシムエステル類、フェニルグリオキシレート類、ベンジル類、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類及びアントラキノン類の重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、液晶への溶解性が低く、また、それ自身で光照射時に分解物がガス化しないような反応性基を有するものが好ましい。このような好ましい重合開始剤として、例えばEYレジンKR-2(ケイエスエム社製)等が挙げられる。また、ラジカル重合開始剤として、WO2012/077720に記載されている、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ジメチルアミノ安息香酸とを反応させて得られる化合物、及び、少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物と、ヒドロキシチオキサントンとを反応させて得られる化合物との混合物である重合開始剤が好ましい。
【0050】
(熱硬化剤)
熱硬化剤は、特に限定されないが、アミン系硬化剤、例えば有機酸ジヒドラジド化合物、アミンアダクト、イミダゾール及びその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、エポキシ変性ポリアミン、およびポリアミノウレア等が挙げられ、VDH(1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)及びLDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等の有機酸ジヒドラジド;ADEKA社から、アデカハードナーEH5030S、味の素ファインテクノ社から、アミキュアPN-23、アミキュアPN-30、アミキュアMY-24、アミキュアMY-H等として市販されているアミンアダクトが好ましい。これらの硬化剤は、単独で用いても、複数で用いてもよい。
【0051】
(更なる成分)
液晶滴下工法用シール剤は、更に、フィラー、カップリング剤等の更なる成分を含むことができる。更なる成分は、それぞれ、単独又は2種以上の組合せであってもよい。
【0052】
フィラーは、液晶滴下工法用シール剤の粘度制御や液晶滴下工法用シール剤を硬化させた硬化物の強度向上、または線膨張性を抑えることによって液晶滴下工法用シール剤の接着信頼性を向上させる等の目的で添加される。フィラーは、特に限定されず、液晶滴下工法用シール剤に対して用いられる公知の無機フィラー及び有機フィラーが挙げられる。
【0053】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。
【0054】
有機フィラーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子、及び高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェルタイプ粒子等が挙げられる。
【0055】
フィラーは、市販品を用いることができる。無機フィラーの市販品としては、ガラスフィラー(日本フリット社製「CF0023-05C」)、アモルファスシリカ(日本触媒社製「シーホスターKE-P250」)、フュームドシリカ(チキソ付与剤)(キャボット・スペシャリティーケミカルズ社製「TG-308F」)、球状シリカ(日本フリット社製「CF0018-WB15C」)、シリカ粒子(シーホスターKEシリーズ(KE-C50等))等が挙げられる。また、有機フィラーの市販品としては、コアシェルタイプ粒子として、ゼフィアックシリーズ(F-351等、アイカ工業社製)等が挙げられる。
フィラーは、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってもよい。
【0056】
カップリング剤は、液晶表示基板との接着性をさらに良好とすることを目的として添加される。カップリング剤は、特に限定されず、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0057】
フィラー、カップリング剤以外の更なる成分は、液晶滴下工法用シール剤に添加される添加剤として公知の成分や市販品が挙げられる。
【0058】
(組成)
オリゴマーA及びオリゴマーBの合計100重量部に対して、オリゴマーAの含有量は、1~99重量部であることが好ましく、10~95重量部であることがより好ましく、40~90重量部であることが特に好ましい。
【0059】
オリゴマーAの合計100重量部に対して、好ましいオリゴマーAの含有量は、1~100重量部であることが好ましく、50~99重量部であることがより好ましく、90~95重量部であることが特に好ましい。
【0060】
オリゴマーBの合計100重量部に対して、好ましいオリゴマーBの含有量は、1~100重量部であることが好ましく、50~99重量部であることがより好ましく、90~95重量部であることが特に好ましい。
【0061】
硬化性樹脂の合計100重量に対する、オリゴマーAの含有量及びオリゴマーBの含有量の合計は、50~100重量部であることが好ましく、70~100重量部であることが特に好ましい。なお、硬化性樹脂において、オリゴマーA及びオリゴマーB以外の成分は、オリゴマーCである。
【0062】
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂の合計100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、1~5重量部であることがより好ましい。
【0063】
熱硬化剤の含有量は、硬化性樹脂の合計100重量部に対して、1~50重量部であることが好ましく、5~40重量部であることがより好ましい。
【0064】
フィラーの含有量は、硬化性樹脂の合計100重量部に対して、1~50重量部であることが好ましく、5~30重量部であることがより好ましい。
【0065】
カップリング剤の含有量は、硬化性樹脂の合計100重量部に対して、0.1~10重量部であることが好ましく、0.5~5重量部であることがより好ましい。
【0066】
液晶滴下工法用シール剤の合計100重量部にして、硬化性樹脂の含有量は、40重量部以上100重量部未満であることが好ましく、60重量部以上100重量部未満であることがより好ましい。
【0067】
(用途)
液晶滴下工法用シール剤の硬化物は、液晶表示体をシールするために用いられる。液晶表示体は、特に限定されず、従来の液晶滴下工法用シール剤が適用される液晶表示体を用いることができる。液晶滴下工法用シール剤は、紫外線等のエネルギー線の照射により、熱を加えることにより、又は紫外線等のエネルギー線の照射の、前、後又は同時に熱を加えることにより硬化させることができる。
【実施例】
【0068】
次に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0069】
(使用製品)
実施例及び比較例で使用した成分は以下のとおりである。実施例及び比較例の液晶滴下工法用シール剤は、表に記載された組成になるように、以下の成分を混合することにより調製した。なお、表における値は重量部である。
【0070】
1.オリゴマーA
(1)化合物1
【化5】
化合物1は以下の方法で得た。
【0071】
(化合物1の製造)
フェニルグリシジルエーテル(EX-141、ナガセケムテックス社製)166g、レヂトップBPF-SG(ビスフェノールF)(群栄化学工業社製)200g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)10g、トルエン(関東化学社製)600gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、120℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、1%水酸化ナトリウム水溶液2000gで1回、水2000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(EX-141-ビスフェノールF開環体)336gを得た。
【0072】
EX-141-ビスフェノールF開環体330g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)1742g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)35gを温度計、冷却管、ディーン-スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた2Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、282gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しトルエン900g、メチルイソブチルケトン300gを加え1500mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物1a、原料エポキシ樹脂)395gを得た。
【0073】
化合物1aを200g、メタクリル酸(東京化成社製)35g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)212mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)50mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、部分メタクリル化エポキシ化合物(化合物1)を得た。
【0074】
(2)化合物2
【化6】
化合物2は、特開2017-002246号公報の第106段落~第111段落に記載の方法に従って得た。
【0075】
(3)化合物3
【化7】
化合物3は以下の方法で得た。
【0076】
(化合物3の製造)
フェニルグリシジルエーテル(EX-141、ナガセケムテックス社製)50g、BisP-AP(本州化学工業社製)116g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)3.1g、トルエン(関東化学社製)200gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、120℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)200gを加え、1%水酸化ナトリウム水溶液500gで4回、水500mLで4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(EX-141-BisP-AP開環体)124gを得た。
【0077】
EX-141-BisP-AP開環体100g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)421g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)8.4gを温度計、冷却管、ディーン-スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、68gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しトルエン250g、メチルイソブチルケトン250gを加え500mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物3a、原料エポキシ樹脂)120gを得た。
【0078】
化合物3aを50g、メタクリル酸(東京化成社製)7.2g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)22mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)11mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、部分メタクリル化エポキシ化合物(化合物3)を得た。
【0079】
(4)化合物4
【化8】
化合物4は以下の方法で得た。
【0080】
(化合物4の製造)
ビフェニル型単官能エポキシ樹脂(OPP-G、三光社製)75g、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)(関東化学社製)91g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)3.1g、トルエン(関東化学社製)200gを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、120℃で8時間攪拌した。反応終了後に混合物を室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン(関東化学社製)200gを加え、1%水酸化ナトリウム水溶液1000gで2回、水1000mLで2回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物の開環体(OPP-G-ビスフェノールA開環体)135gを得た。
【0081】
OPP-G-ビスフェノールA開環体100g、エピクロロヒドリン(和光純薬社製)406g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(東京化成社製)8.2gを温度計、冷却管、ディーン-スターク・トラップ、滴下ロート、攪拌機を取り付けた1Lの三口丸底フラスコに入れた。次いで、混合物を50トール(torr)の減圧下攪拌しながら約50℃に加熱し、66gの48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製)を3時間かけて滴下した。共沸で留出した水/エピクロロヒドリン混合物のうち、エピクロロヒドリンを反応系に戻しながら攪拌を続けた。添加終了後、3時間にわたり攪拌を継続した。次いで、反応混合物を室温に冷却しトルエン250g、メチルイソブチルケトン250gを加え500mLの水で4回洗浄した。得られた有機相の溶媒を減圧留去により除去し、黄色透明粘稠物のグリシジルエーテル体(化合物4a、原料エポキシ樹脂)113gを得た。
【0082】
化合物4aを50g、メタクリル酸(東京化成社製)7.0g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)21mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)11mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、部分メタクリル化エポキシ化合物(化合物4)を得た。
【0083】
2.オリゴマーB
(1)化合物5
【化9】
化合物5は以下の方法で得た。
【0084】
(化合物5の製造)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA-830CRP、DIC社製)を200g、メタクリル酸(東京化成社製)54g、触媒であるトリフェニルホスフィン(東京化成社製)328mg、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン、関東化学社製)50mgを温度計、攪拌機を取り付けたフラスコに入れ、100℃で8時間撹拌した。反応終了後、部分メタクリル化エポキシ化合物(化合物5)を得た。
【0085】
(2)化合物6
【化10】
化合物6は、WO2014/057871の第92段落に記載された方法に従って得た。
【0086】
3.オリゴマーC
(1)化合物7
【化11】
化合物7は、特開2017-214462号公報の第131段落~第135段落に記載の方法に従って得た。
【0087】
4.光開始剤
(1)光開始剤1
【化12】
光開始剤1は、WO2012/077720の第58段落に記載された方法に従って得た。
【0088】
(2)光開始剤2
【化13】
光開始剤2は、WO2012/077720の第60段落に記載された方法に従って得た。
【0089】
5.熱硬化剤
ポリアミン系化合物(EH-5030S、ADEKA社製、活性水素当量105g/eq)
【0090】
6.その他の成分
(1)フィラー
・有機フィラー;コアシェルタイプ粒子(ゼフィアックF-351、アイカ工業社製)
・無機フィラー;二酸化ケイ素粒子(シーホスターKE-C50、日本触媒社製)
・無機フィラー;フュームドシリカ(チキソ付与剤)(TG-308F、キャボット・スペシャルティケミカルズ社製)
(2)カップリング剤
・シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBM-403、信越化学工業社製)
【0091】
(エポキシ当量の測定)
化合物1~7のメタクリル酸変性前のエポキシ樹脂(原料エポキシ樹脂)についてのエポキシ当量は、JISK7236:2001により測定した。
【0092】
(芳香環量)
化合物1~7のメタクリル酸変性前のエポキシ樹脂についての芳香環量は、対応する原料エポキシ樹脂の構造式に基づいて算出した。
【0093】
(接着強度)
純水洗浄後乾燥させたITO基板(403005XG-10SQ1500A、ジオマテック社製)にエアディスペンサーを用いてポリイミド系配向液(サンエバーSE-7492、日産化学工業社製)を滴下(0.4MPa、5.0秒)した後、スピンコーターにて10秒で5000rpmに達し、その後20秒キープする条件で均一塗布した。均一塗布した後、85℃のホットプレート上でプリベーク(1分)、230℃のオーブンでポストベーク(60分)し、ポリイミド配向膜付基板を作製した。
【0094】
液晶滴下工法用シール剤を、6μmスペーサーを散布したITO基板、ポリイミド配向膜付基板(30mm×30mm×0.5mmt)上の15mm×3mm、15mm×21mmの位置に、貼り合わせ後の液晶滴下工法用シール剤の直径が1.5~2.5mmφの範囲となるように点塗布した。その後、同種の基板(23mm×23mm×0.5mmt)を貼り合わせ、紫外線を積算光量3,000mJ/cm2で照射(照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機社製)して硬化させ、120℃オーブンで1時間熱硬化を行い、試験片を作製した。オートグラフ(TG-2kN、ミネベア社製)を用い、試験片を固定して基板の15mm×25mmの位置を5mm/分の速度で押し抜き、ITO基板同士(ITO/ITO)及びポリイミド基板同士(PI/PI(TN))の接着強度を測定した。
【0095】
(透湿度)
液晶滴下工法用シール剤を、直径3.6mm~3.8mm厚さ0.28mm~0.32mmになるように100mm×100mm厚さ0.1mmのPETフィルムにより挟み、100mW/cm2の紫外線照射照度で両面を1,500mJ/cm2ずつの光エネルギーで照射を行い、120℃の熱風オーブンで1時間熱硬化を行い透湿度測定用のサンプルとした。透湿度測定はJISK0208:1976に準じ、65℃/95%の恒温恒湿槽を用い、透湿カップ法での重量変化より、透湿度を算出した。透湿度の単位はg/(m2・24h)である。
【0096】
(液晶テストセルにおけるシールパス試験)
配向膜(SE-5662・日産化学工業株式会社製)付きITOガラス基板上(厚さ0.7mm)に、シールディスペンサーを用いて、液晶滴下工法用シール剤を、それぞれ25mm×25mmの枠状のパターンにディスペンス塗布した。その後、基板上に液晶(MLC-6609・メルク株式会社製)を液晶滴下工法により滴下して上下基板を貼り合わせ、3分後に紫外線(UV照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機社製、積算光量:3,000mJ/cm2)を照射して光硬化させ、その後120℃の熱風オーブンで60分熱硬化を行い、テストセルを作製した。
作製した液晶テストセルについて、シールパスがあるものを×、シールパスが見られないものを○とした。
【0097】
結果を表1及び表2にまとめる。
【0098】
【0099】
【0100】
実施例の液晶滴下工法用シール剤は、配向膜に対する接着性に優れ、低透湿性に優れる硬化物を与えた。また、実施例の液晶滴下工法用シール剤は、シールパス試験においてシールパスが見られず、液晶をシールできた。
実施例1及び2の比較により、オリゴマーBがビスフェノールF型の構造を有する場合、低透湿性に優れていた。
実施例1及び3の比較により、オリゴマーAがビスフェノールF型の構造を有する場合、低透湿性に優れていた。
実施例1及び4の比較により、オリゴマーA及びオリゴマーBの合計100重量部に対して、オリゴマーAの含有量が少なくなる場合、低透湿性に優れていた。
実施例4~6の比較により、オリゴマーAの原料エポキシ樹脂のエポキシ当量及び芳香環量がより好ましい範囲である場合、低透湿性に優れていた。特に、実施例5及び6の比較により、オリゴマーAの原料エポキシ樹脂のエポキシ当量が大きくなる場合、低透湿性により優れていた。
【0101】
一方、比較例1の液晶滴下工法用シール剤は、オリゴマーAのみを含むため、比較例1の液晶滴下工法用シール剤を用いて得られた硬化物は、透湿性が高かった。
比較例2の液晶滴下工法用シール剤は、オリゴマーBのみを含むため、比較例2の液晶滴下工法用シール剤は、配向膜に対する接着性に劣っており、比較例2の液晶滴下工法用シール剤を用いて得られた硬化物は、透湿性が高かった。
比較例3の液晶滴下工法用シール剤は、オリゴマーBを2種含む。また、比較例3の液晶滴下工法用シール剤は、オリゴマーAの代わりに、「エポキシ当量が200g/epo未満であり、かつ、芳香環量が0.43以上である、オリゴマー」である化合物5を含むため、比較例3の液晶滴下工法用シール剤は、配向膜に対する接着性に劣っており、比較例3の液晶滴下工法用シール剤を用いて得られた硬化物は、透湿性が高かった。
比較例4の液晶滴下工法用シール剤は、オリゴマーAの代わりに、「エポキシ当量が200g/epo以上であり、かつ、芳香環量が0.43未満である、オリゴマー」である化合物7を含むため、比較例4の液晶滴下工法用シール剤を用いて得られた硬化物は、透湿性が高かった。