(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】机
(51)【国際特許分類】
A47B 3/08 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A47B3/08 C
(21)【出願番号】P 2023000767
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598137423
【氏名又は名称】藤沢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岩 和樹
(72)【発明者】
【氏名】守屋 仁司
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076186(JP,A)
【文献】実開昭62-024751(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 3/08
A47B 91/00-91/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、
下部にキャスタが結合された第1脚部と、
前記第1脚部に対して移動可能な第2脚部と、
前記天板が水平位置にあるときに前記第1脚部と前記第2脚部とを相対移動させ、前記キャスタおよび前記第2脚部の両方が床面に接触した第1状態と、前記キャスタは床面に接触しているが、前記第2脚部は床面に接触していない第2状態と、を切り替える切替部材と、
を備え、
前記第1状態のとき、前記第1脚部および前記第2脚部の両方によって前記天板を支持して
おり、
前記切替部材は、カムを含み、
前記カムは、前記第1状態から前記第2状態への切り替えの間、および、前記第2状態から前記第1状態への切り替えの間、前記第1脚部に常時接触している、
机。
【請求項2】
前記机が前記切替部材によって前記第1状態から前記第2状態に切り替えられた後、使用者が前記切替部材から手を離しても前記机の前記第2状態が維持される、
請求項
1に記載の机。
【請求項3】
前記第1脚部は、第1面、第2面、および前記第1面と前記第2面との間に形成された頂点を有し、
前記カムは、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるときに、前記第1脚部上を回転し、
前記カムは、前記第1状態のとき、前記第1面と接触しており、前記第2状態のとき、前記第2面と接触している、
請求項
1に記載の机。
【請求項4】
前記カムは、第1面、第2面、および前記第1面と前記第2面との間に形成された頂点を有し、
前記カムは、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるときに、前記第1脚部上を回転し、
前記第1状態のとき、前記カムの前記第1面が前記第1脚部と接触しており、前記第2状態のとき、前記カムの前記第2面が前記第1脚部と接触している、
請求項
1または
3に記載の机。
【請求項5】
前記第1脚部は、第1面および第2面を有し、
前記カムは、第1面および第2面を有し、
前記第1状態のとき、前記カムの前記第1面が前記第1脚部の第1面と接触しており、前記第2状態のとき、前記カムの前記第2面が前記第1脚部の第2面と接触している、
請求項1または2に記載の机。
【請求項6】
前記天板は、水平位置と垂直位置との間で回転可能であり、
前記天板を前記垂直位置に回転させたとき、前記机は、前記切替部材によって、前記第1脚部と前記第2脚部とが相対移動し、前記キャスタは床面に接触しているが、前記第2脚部は床面に接触していない状態になる、
請求項1または2に記載の机。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、机に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板が水平位置にあるときに、キャスタを床面に接触させることにより、床面上を移動可能である机が知られている。
【0003】
特許文献1は、水平状態の使用位置と、略垂直状態の収納位置とに回動可能に設けられる天板部と、前記天板部を支持する支持脚と、該支持脚の下部に昇降可能に設けられるキャスタと、該キャスタを昇降させる昇降手段と、前記支持脚の下部に設けられ、前記キャスタが上昇された際に該キャスタに代わって床面に接して移動机を支持するアジャスタ部と、前記天板部が前記略垂直状態にある際、及び該天板部が前記略垂直状態から前記水平状態に戻された際に、前記昇降手段により前記キャスタが下降して床面に接し、当該移動机を移動可能な第1状態を保持する第1状態保持手段と、前記天板部が前記水平状態にある際に、前記第1状態を解除し、前記昇降手段により前記キャスタを上昇させ、前記アジャスタ部が床面に接して当該移動机を移動不能な第2状態を保持する第2状態保持手段と、を備えることを特徴とする移動机を開示している。
【0004】
特許文献2は、使用位置と収納位置とに移動可能である天板本体と、前記天板本体が前記使用位置にあるときに、支持軸を中心に非移動位置と移動位置とに揺動可能であるカムと、前記支持軸に接続され、前記天板本体が前記使用位置にあるときに前記天板本体を支持する第1脚と、前記第1脚に対して移動可能であり、前記天板本体が前記収納位置にあるときに支持面を介して前記天板本体を支持する第2脚とを備え、前記カムが前記非移動位置にあるときに、前記支持面は前記カムの対向部と対向し、前記カムが前記移動位置にあるときに、前記支持面は前記カムの当接部と当接することを特徴とする跳上げ式机を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6761641号公報
【文献】特許第5785145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の机では、キャスタを床面に接触させるときには、アジャスタを床面から浮かせ、逆に、アジャスタを床面に接触させるときには、キャスタを床面から浮かせる構造になっているため、構造が複雑になる。
【0007】
特許文献2に開示の机では、天板が使用位置にあるとき、カムの対向部とインナー脚の支持面との間には隙間がある。したがって、天板が使用位置にあるとき、天板は、インナー脚によっては支持されておらず、脚フレームのみで支持されているため、机が安定感に欠けるおそれがある。
【0008】
本発明は、天板が水平位置にあるときに、床面上を移動可能な状態と移動不能な状態とを切り替えることができる、新規な構造を有する机を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
天板と、
下部にキャスタが結合された第1脚部と、
前記第1脚部に対して移動可能な第2脚部と、
前記天板が水平位置にあるときに前記第1脚部と前記第2脚部とを相対移動させ、前記キャスタおよび前記第2脚部の両方が床面に接触した第1状態と、前記キャスタは床面に接触しているが、前記第2脚部は床面に接触していない第2状態と、を切り替える切替部材と、
を備え、
前記第1状態のとき、前記第1脚部および前記第2脚部の両方によって前記天板を支持している、
机。
【0010】
(項目2)
前記切替部材は、カムを含み、
前記カムは、前記第1状態から前記第2状態への切り替えの間、および、前記第2状態から前記第1状態への切り替えの間、前記第1脚部に常時接触している、
項目1に記載の机。
【0011】
(項目3)
前記机が前記切替部材によって前記第1状態から前記第2状態に切り替えられた後、使用者が前記切替部材から手を離しても前記机の前記第2状態が維持される、
項目1または2に記載の机。
【0012】
(項目4)
前記第1脚部は、第1面、第2面、および前記第1面と前記第2面との間に形成された頂点を有し、
前記カムは、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるときに、前記第1脚部上を回転し、
前記カムは、前記第1状態のとき、前記第1面と接触しており、前記第2状態のとき、前記第2面と接触している、
項目2に記載の机。
【0013】
(項目5)
前記カムは、第1面、第2面、および前記第1面と前記第2面との間に形成された頂点を有し、
前記カムは、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えるときに、前記第1脚部上を回転し、
前記第1状態のとき、前記カムの前記第1面が前記第1脚部と接触しており、前記第2状態のとき、前記カムの前記第2面が前記第1脚部と接触している、
項目2または4に記載の机。
【0014】
(項目6)
前記天板は、水平位置と垂直位置との間で回転可能であり、
前記天板を前記垂直位置に回転させたとき、前記机は、前記切替部材によって、前記第1脚部と前記第2脚部とが相対移動し、前記キャスタは床面に接触しているが、前記第2脚部は床面に接触していない状態になる、
項目1から5のいずれか1項に記載の机。
【発明の効果】
【0015】
本発明の机では、机が第1状態にあるときに、天板を第1脚部および第2脚部の両方で支持することができる。これにより、机の安定感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】机が第1状態にあるときのカムの側面図である。
【
図8】天板が垂直位置にあるときの机の側面図である。
【
図9A】天板がロック部材によって水平位置でロックされている状態を示す側面図である。
【
図9B】ロック部材によるロックが解除され、天板が回転可能になった状態を示す側面図である。
【
図9C】天板がロック部材によって垂直位置でロックされている状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の机1000について図面を参照しつつ説明する。机1000の使用状態に合わせ、
図1に示す上下方向および前後方向を、机1000の上下方向および前後方向として説明する。
【0018】
<1.机の構造の概要>
図1に示すように、机1000は、主に、天板10と、一対の第1脚部20と、一対の第2脚部30と、一対の脚部切替機構Xと、一対の天板ロック機構Yと、を備える。
【0019】
天板10は、平面視で長方形である。一対の第1脚部20、一対の第2脚部30、一対の脚部切替機構Xおよび一対の天板ロック機構Yは、天板10の長手方向両側にそれぞれ配置されている。
【0020】
図1および
図2に示すように、天板10の長手方向両端にはそれぞれ、ブラケット40が配置されている。ブラケット40の詳細な構造については後述する。一対のブラケット40の間には、一対のブラケット40と結合されており、かつ、天板10の長手方向に延びる一対の支持パイプ50が配置されている。天板10は、一対のブラケット40上および一対の支持パイプ50上に配置されると共に、ネジなどによって、一対のブラケット40に固定されている。
【0021】
なお、以下で、机1000の各構成要素について説明する場合、天板10の長手方向中央に向かう方向を「内方」と表記し、内方とは反対方向を「外方」と表記することがある。
【0022】
一対の第1脚部20は同一の構造を有しているため、一方の第1脚部20の構造についてのみ説明する。
【0023】
図1に示すように、第1脚部20は、第1脚部本体21と、第1脚部本体21の下部に結合されたキャスタ22と、を備える。第1脚部本体21の大部分は、後述する第2脚部本体31の内部に配置されている。キャスタ22は、第1脚部本体21に着脱可能にまたは着脱不能に結合されている。
【0024】
第1脚部本体21の上端は、第2脚部本体31の上端よりも上方に延出している。
図3に示すように、第1脚部本体21の上端は、第1面21a、第2面21bおよび頂点21cを有する。第1面21aおよび第2面21bは、それらの上端で互いに結合されると共に、下方に向かうにしたがい互いに離隔するように延びている。このように、第1脚部本体21の上端は、三角形の形状を有している。
【0025】
後述するように、カム85は、第1脚部本体21の上端を滑りながら回転する。したがって、カム85との摩擦抵抗を減らすために、第1脚部本体21の上端は、滑らかな面であることが好ましい。また、カム85との摩擦抵抗を減らすために、第1脚部本体21の少なくとも上端は、樹脂で構成されることが好ましい。例えば、第1脚部本体21は、金属製のフレームと、金属製のフレームの上端に取り付けられ、第1脚部本体21の三角形の上端を構成する樹脂製部材と、から構成されていてもよい。
【0026】
一対の第2脚部30は同一の構造を有しているため、一方の第2脚部30の構造についてのみ説明する。
【0027】
図1に示すように、第2脚部30は、第2脚部本体31と、第2脚部本体31の下部に結合されたアジャスタ32と、を備える。第2脚部本体31は中空のパイプから成る。アジャスタ32は、第2脚部本体31に着脱可能にまたは着脱不能に結合されている。アジャスタ32は、机1000の高さを調節するための部材である。
【0028】
<1-1.脚部切替機構>
脚部切替機構Xは、天板10が床面に対して平行な水平位置にあるときに、第1脚部20と第2脚部30とを相対移動させ、キャスタ22およびアジャスタ32の両方が床面に接触している第1状態(
図1参照)と、キャスタ22は床面に接触しているが、アジャスタ32は床面に接触していない第2状態(
図7参照)と、を切り替えるための機構である。
【0029】
机1000が第1状態にあるとき、キャスタ22およびアジャスタ32の両方が床面に接触しているため、机1000を、全く移動させることができない、または、ほとんど移動させることができない。
【0030】
机1000が第2状態にあるとき、アジャスタ32は床面に接触しておらず、キャスタ22のみが床面に接触しているため、机1000を移動させて、机1000の位置を変えることができる。
【0031】
図1から
図6を参照して、一対の脚部切替機構Xの構造について説明する。一対の脚部切替機構Xは同一の構造を有しているため、一方の脚部切替機構Xの構造についてのみ説明する。
【0032】
図2に示すように、脚部切替機構Xは、ブラケット40、中間部材60、貫パイプ70、切替部材80、第1付勢部材90および第1連動部材100から構成されている。
【0033】
一対のブラケット40は、同一の構造を有しているため、一方のブラケット40についてのみ説明する。
図2および
図4に示すように、ブラケット40は、板状のブラケット本体41と、円筒部42と、ストッパ43と、を備える。
【0034】
ブラケット本体41は、天板10の裏面にネジなどによって結合されると共に、天板10から下方に延びている。ブラケット本体41は、後述する切替部材80の軸部82を挿入するための円形の貫通穴41aを有する。また、ブラケット本体41は、後述するロック部材200の軸部220を挿入するための円形の貫通穴41bを有する。円筒部42は、貫通穴41bの周囲から外方に延びている。ストッパ43は、後述する切替部材80の接触部84が接触することで、切替部材80(カム85)の回転を停止させるための部分である。ストッパ43は、例えば、ブラケット本体41から外方に突出する円柱状または円筒状のピンである。
【0035】
図2に示すように、中間部材60は、板状の中間部材本体61と、円筒部62と、支持部63と、第1ロック部64と、第2ロック部65と、を備える。
【0036】
中間部材本体61は、切替部材80の軸部82を挿入するための円形の貫通穴61aを有する。円筒部62は、貫通穴61aの周囲から外方に延出している。支持部63は、第1付勢部材90の一端部を支持している(
図1参照)。支持部63は、例えば中間部材本体61から外方に突出する円柱状または円筒状のピンであり、円筒部62よりも下方に配置されている。第1ロック部64および第2ロック部65は、中間部材本体61から外方に突出する円柱状または円筒状のピンである。第1ロック部64および第2ロック部65の機能については後述する。
【0037】
図2に示すように、貫パイプ70の両端はそれぞれ、一対の中間部材60に結合されている。また、
図4に示すように、貫パイプ70は、一対の第2脚部本体31の間で延びており、ボルトなどによって、一対の第2脚部本体31に結合されている。したがって、一対の第2脚部30は、貫パイプ70、中間部材60およびブラケット40を介して、天板10と間接的に結合されている。また、一対の第2脚部30は、貫パイプ70によって結合されているため、一方の第2脚部30が第1脚部20に対して上下動したとき、その動きに合わせて他方の第2脚部30も上下動する。
【0038】
図2に示すように、切替部材80は、板状の切替プレート81と、軸部82と、切替レバー83と、接触部84と、カム85と、を備える。
【0039】
軸部82は、切替プレート81から内方に突出している。軸部82は、軸部82の中心軸に対して垂直な断面視で、多角形(例えば、正方形または長方形)のパイプまたは中実部材から成る。軸部82は、中間部材本体61の貫通穴61a、ブラケット本体41の貫通穴41aおよび第1連動部材100内に挿入されており、ボルトなどによって、第1連動部材100に結合されている(
図4参照)。
【0040】
切替レバー83は、切替プレート81と結合されており、軸部82よりも後方に延びている。使用者が切替レバー83を操作することにより、切替部材80は、軸部82を中心に回転する。
【0041】
接触部84は、切替プレート81の上部から内方に延びており、机1000が第1状態にあるとき、後述するロックプレート210の一部分の上に配置されている(
図1参照)。
【0042】
カム85は、軸部82よりも前方の位置で切替プレート81に結合されている。
図5に示すように、カム85は、少なくとも第1面85a、第2面85bおよび第3面85cを有する。第1面85aは、机1000が第1状態にあるときに、第1脚部本体21の第1面21aに接触している(
図1参照)。第2面85bは、机1000が第2状態にあるときに、第1脚部本体21の第2面21bに接触している(
図7参照)。第3面85cは、天板10が垂直位置にあるときに、第1脚部本体21の第2面21bに接触している(
図8参照)。後述するように、天板10が垂直位置にあるとき、キャスタ22は床面に接触しているが、アジャスタ32は床面から浮いている。このように、カム85は、第1面85aが第1脚部本体21の第1面21aと接触しているときよりも、第2面85bおよび第3面85cが第1脚部本体21の第2面21bに接触しているときの方が、第2脚部30が第1脚部20に対して上方に位置するような寸法に設計されている。
【0043】
図5に示すように、本実施形態において、カム85のうち少なくとも第1脚部本体21の上端と接触する面は多角形である。また、カム85は、カム85の中心線Oに対して対称の形状である。第1面85aは、机1000が第1状態にあるときの側面視で、前方に向かうにしたがい、下方に傾斜している。第2面85bは、机1000が第1状態にあるときの側面視で、前方に向かうにしたがい上方に傾斜するように第1面85aから延びている。第1面85aと第2面85bとは交差しており、それにより、カム85は頂点85dを有している。第3面85cは、中心線Oに対して、第1面85aと対称の面であり、机1000が第1状態にあるときの側面視で、後方に向かうにしたがい、上方に傾斜している。
【0044】
カム85は、第1脚部本体21の上端に接触したままで、第1脚部本体21の上端を滑りながら回転する。したがって、第1脚部本体21の上端との摩擦抵抗を減らすために、カム85のうち少なくとも第1脚部本体21の上端と接触する面は、滑らかな面であることが好ましい。また、第1脚部本体21の上端との摩擦抵抗を減らすために、カム85は、樹脂製であることが好ましい。
【0045】
軸部82が中間部材本体61の貫通穴61aおよびブラケット本体41の貫通穴41aに挿入されており、カム85が第1脚部本体21の上端に常時接触しているため、一対の第1脚部20は、中間部材本体61、ブラケット本体41および切替部材80を介して、天板10と間接的に結合されている。
【0046】
第1付勢部材90は、切替レバー83を上方に回転させるのを補助するために設けられている。
図2および
図4に示すように、第1付勢部材90は、例えばトーションバネであり、円筒部62および軸部82の周囲に巻き付けられている。第1付勢部材90の一端部は、支持部63に接触しており、第1付勢部材90の他端部は、切替プレート81に接触している。
【0047】
第1連動部材100は、一方の切替部材80の動作を、他方の切替部材80に伝達して、一対の切替部材80の動作を連動させるための部材である。
図2および
図4に示すように、第1連動部材100は、一対のブラケット40の間で延びている。第1連動部材100は、切替部材80の軸部82と相補的形状を有する角パイプから成る。第1連動部材100内には、一対の軸部82がそれぞれ挿入されている。また、第1連動部材100は、ボルトなどによって、一対の軸部82それぞれと結合されている。一対の軸部82が第1連動部材100と結合していることにより、一方の切替部材80を回転させると、他方の切替部材80も回転する。また、後述するように、軸部82および第1連動部材100は、天板10を水平位置と垂直位置との間で回転させる際の回転シャフト(回転軸)としても機能する。
【0048】
<1-2.机の第1状態と第2状態との切り替え>
主に
図1、
図6および
図7を参照して、机1000を、第1状態から第2状態に切り替える手順、および、第2状態から第1状態に切り替える手順について説明する。
【0049】
図1および
図6に示すように、机1000が第1状態にあるとき、カム85の第1面85aが、第1脚部本体21の上端の第1面21aに接触している。また、キャスタ22およびアジャスタ32の両方が床面に接触している。したがって、天板10は、第1脚部20および第2脚部30の両方によって支持されている。また、アジャスタ32が床面に接触しているため、机1000は、全く移動不能であるか、または、わずかにしか移動できない。よって、机1000の第1状態は、机1000の使用状態でもある。
【0050】
使用者が切替レバー83を引き上げると(切替レバー83の移動方向を
図1に矢印D1で示す)、切替部材80は、軸部82を中心として回転する。カム85は、第1脚部本体21の上端に接触したまま回転して、頂点85d(
図5参照)が第1脚部本体21の上端の頂点21c(
図3参照)を乗り越える。そして、
図7に示すように、カム85の第2面85bが、第1脚部本体21の上端の第2面21bに接触する。切替部材80は、接触部84が、ストッパ43に接触することで停止する。
【0051】
中間部材60、貫パイプ70、ブラケット40および天板10などの部材は、カム85の回転に伴い、第1脚部20に対して引き上げられる。第2脚部30は、中間部材60および貫パイプ70と結合されているため、カム85の回転に伴い、第2脚部30も第1脚部20に沿って引き上げられる。第2脚部30が第1脚部20に対して引き上げられることにより、アジャスタ32が床面から離れる。第1脚部20は上方に移動しないため、キャスタ22は床面に接触したままである。こうして、机1000は、第2状態になる。
【0052】
机1000が第2状態にあるとき、アジャスタ32は床面に接触していないため、天板10は、第1脚部20によって支持されており、第2脚部30によっては支持されていない。また、机1000が第2状態にあるとき、キャスタ22は床面に接触したままであるため、机1000は移動可能状態となっており、机1000の位置を調節することができる。
【0053】
机1000を第2状態から第1状態に切り替えるためには、切替レバー83を逆回転させればよい。すなわち、使用者が切替レバー83を下げることにより(切替レバー83の移動方向を
図7に矢印D2で示す)、カム85は第1脚部本体21の上端に接触したまま回転して、頂点85dが、第1脚部本体21の上端の頂点21cを乗り越える。そして、
図1に示すように、カム85の第1面85aが、第1脚部本体21の上端の第1面21aに接触する。切替部材80は、接触部84が、後述するロックプレート210に接触することで停止する。第2脚部30および第2脚部30に結合された中間部材60などの部材は、自重により、第1脚部20に対して下がる。第2脚部30が下がることにより、アジャスタ32が床面に接触する。こうして、机1000は、第2状態から第1状態に戻る。
【0054】
<1-3.天板ロック機構>
次に、天板10を、水平位置および垂直位置で固定するための天板ロック機構Yについて、
図1、
図2および
図4を参照して説明する。なお、垂直位置とは、天板10を床面に対して垂直または垂直に近い角度に傾斜させることにより複数の机1000を重ねて収納できる天板10の位置を意味し、天板10が床面に対して90度である場合に限らず、床面に対する天板10の角度が90度よりも小さい場合(例えば、80度)も含む。
【0055】
一対の天板ロック機構Yは、同一の構造を有しているため、一方の天板ロック機構Yの構造についてのみ説明する。
【0056】
図1および
図2に示すように、天板ロック機構Yは、ロック部材200、第2付勢部材300、第2連動部材400、ならびに中間部材60の第1ロック部64および第2ロック部65から構成されている。
【0057】
図2に示すように、ロック部材200は、ロックプレート210と、軸部220と、ロック解除レバー230と、を備える。
【0058】
ロックプレート210は、その下部に、凹部210aを有している。凹部210aには、第1ロック部64または第2ロック部65が係合する(
図9Aおよび
図9C参照)。
【0059】
軸部220は、ロックプレート210から内方に突出している。軸部220は、軸部220の中心軸に対して垂直な断面視で、多角形(例えば、正方形または長方形)のパイプまたは中実部材から成る。軸部220は、ブラケット40の貫通穴41bおよび第2連動部材400内に挿入されており、ボルトなどによって、第2連動部材400と結合されている。
【0060】
ロック解除レバー230は、軸部220よりも後方の位置で、ロックプレート210に結合されている。使用者がロック解除レバー230を操作することにより、ロック部材200は、軸部220を中心として回転する。
【0061】
第2付勢部材300は、ロック部材200を下方に付勢している。
図2および
図4に示すように、第2付勢部材300は、例えばトーションバネであり、円筒部42とロックプレート210との間に配置されると共に、軸部220の周囲に巻き付けられている。第2付勢部材300の一端部は、ブラケット本体41に接触しており(
図4参照)、第2付勢部材300の他端部は、ロックプレート210の上部に接触している(
図1参照)。使用者がロック解除レバー230を引き上げた後、ロック解除レバー230から手を離すと、ロック解除レバー230の自重および第2付勢部材300の弾性力(復元力)により、ロック部材200は自動的に逆回転して元の位置に戻る。
【0062】
図2に示すように、第2連動部材400は、一方のロック部材200の動作を、他方のロック部材200に伝達し、一対のロック部材200の動作を連動させるための部材である。第2連動部材400は、一対のブラケット40の間で延びている。第2連動部材400は、ロック部材200の軸部220と相補的形状を有する角パイプから成る。第2連動部材400内には、一対の軸部220が挿入されている。第2連動部材400は、ボルトなどによって、一対の軸部220それぞれと結合されている。一対の軸部220が第2連動部材400と結合していることにより、一方のロック部材200の回転に応じて、他方のロック部材200も回転する。
【0063】
<1-4.天板の水平位置と垂直位置との切替>
図1、
図8、
図9Aから
図9Cを参照して、天板10を水平位置から垂直位置に、またはその逆に移動させる手順について説明する。
図9Aは、
図1から切替部材80を省略した図である。
図9Bは、
図9Aからロック部材200を回転させた状態を示している。
図9Cは、
図8から切替部材80を省略した図である。
【0064】
図9Aに示すように、天板10が水平位置にあるとき、ロックプレート210の凹部210a内に第1ロック部64が係合している。これにより、天板10は水平位置で固定されているため、天板10を回転させることはできない。
【0065】
図9Aに示す状態から、使用者が、第2付勢部材300の弾性力に抗してロック解除レバー230を引き上げる(ロック解除レバー230の移動方向を
図9Aに矢印D3で示す)。ロック解除レバー230を引き上げると、
図9Bに示すように、ロック部材200が軸部220を中心に回転し、ロックプレート210が第1ロック部64から離脱する。これにより、天板10のロックが解除され、天板10が回転可能になる。
【0066】
使用者は、ロック解除レバー230を引き上げたまま、天板10を水平位置から垂直位置に回転させる。天板10は、第1連動部材100を中心に回転する。天板10が
図8に示す垂直位置に移動した後、使用者がロック解除レバー230から手を離すと、ロック解除レバー230の自重および第2付勢部材300の弾性力によりロック解除レバー230が逆方向に回転し、
図9Cに示すように、ロックプレート210の凹部210a内に第2ロック部65が係合する。第2ロック部65が凹部210aに係合することにより、天板10が垂直位置でロックされ、回転不能になる。
【0067】
図8に示すように、天板10が水平位置から垂直位置に回転すると、切替部材80(カム85)も天板10と一緒に回転する。カム85は、第1脚部本体21の上端に接触したまま回転して、第1脚部本体21の上端の頂点21cを乗り越える。そして、カム85の第3面85cが、第1脚部本体21の上端の第2面21bに接触する。これにより、第2脚部30は、第1脚部20に対して引き上げられる。したがって、天板10が垂直位置にあるとき、キャスタ22のみが床面に接触しており、アジャスタ32は床面から浮いている。よって、机1000は移動可能である。
【0068】
天板10を垂直位置から水平位置に移動させるためには、使用者がロック解除レバー230を引き上げ(ロック解除レバー230の移動方向を
図9Cに矢印D4で示す)、ロックプレート210の凹部210aと第2ロック部65との係合を解除する。その後、使用者が、天板10を垂直位置から水平位置に回転させ、ロック解除レバー230から手を離すことで、ロックプレート210の凹部210aと第1ロック部64とが係合し、天板10が水平位置でロックされる。
【0069】
上記では、机1000が第1状態にあるときから天板10を垂直位置に移動させる手順について説明したが、同じ手順で、机1000が第2状態にあるときから天板10を垂直位置に移動させることができる。
【0070】
<2.特徴>
本発明の机1000では、
図1に示すように、机1000が第1状態にあるときに、キャスタ22およびアジャスタ32の両方が床面に接触している。したがって、天板10は、第1脚部20および第2脚部30の両方によって支持されている。これにより、机1000の安定感を向上させることができる。
【0071】
本発明の机1000では、
図1および
図7に示すように、机1000の第1状態と第2状態とを切り替えるときに、カム85は、第1脚部本体21の上端に接触したまま回転する。したがって、第1状態と第2状態との切り替えに際して、カム85を回転させる距離を短くすることができる(すなわち、切替レバー83を上げるまたは下げる距離を短くすることができる)ため、第1状態と第2状態との切替操作が行いやすくなる。
【0072】
図7に示すように、机1000が第1状態から第2状態に切り替わった後、使用者が切替レバー83から手を離しても、切替部材80が逆回転することはなく、第2状態が維持される。すなわち、机1000が第2状態になった後、机1000が自動的に第1状態に切り替わることはない。したがって、机1000が第2状態のときに、使用者の手が空くため、使用者が机1000を移動させやすくなる。
【0073】
図3に示すように、第1脚部本体21の上端を構成する第1面21aと第2面21bは、それらの間の角度が180度未満であるように交差しており、第1面21aと第2面21bとの間には、頂点(角部)21cが形成されている。これにより、机1000が第2状態から第1状態に意図せず切り替わることを防止できる。すなわち、机1000が第2状態から第1状態に移行するとき、カム85は、第1脚部本体21の上端の頂点21cを乗り越えなければならない。カム85が、第1脚部本体21の上端の頂点21cを乗り越えるためには、切替レバー83に重力以外の外力を加える必要がある。したがって、机1000が一旦第2状態になると、自動的に第1状態に切り替わることはない。
【0074】
図5に示すように、カム85の第1面85aと第2面85bは、それらの間の角度が180度未満であるように交差しており、第1面85aと第2面85bとの間には頂点(角部)85dが形成されている。これにより、机1000が第2状態から第1状態に意図せず切り替わることを防止できる。すなわち、カム85は頂点85dを有しているため、カム85は第1脚部本体21の上端上で容易には回転しない。第2面85bが第1脚部本体21の上端に接触している状態から第1面85aが第1脚部本体21の上端に接触している状態にカム85を回転させるためには、切替レバー83に重力以外の外力を加える必要がある。したがって、机1000が一旦第2状態になると、自動的に第1状態に切り替わることはない。
【0075】
図8に示すように、天板10を垂直位置に回転させたときに、キャスタ22は床面に接触しているが、アジャスタ32は床面に接触していない。これにより、机1000を移動させて、複数の机1000を重ねて収納することができる。
【0076】
<3.変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に、本発明の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、単独で、または、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせて、上記実施形態に適用できる。
【0077】
(1)第2脚部30はアジャスタ32を備えていなくてもよく、第2脚部本体31が直接床面に接触してもよい。あるいは、第2脚部30は、アジャスタ32の代わりに、床面および第2脚部本体31の下端が傷つくことを防止するための、第2脚部本体31の下端に取り付けられたキャップを備えていてもよい。
【0078】
(2)カム85は、多角形でなくてもよい。また、カム85は、中心線Oに対して対称の形状である必要はなく、第1面85aが第1脚部本体21の第1面21aに接触しているときよりも、第2面85bおよび第3面85cが第1脚部本体21の第2面21bに接触しているときの方が、第2脚部30が第1脚部20に対して上方に位置するような形状であればよい。
【0079】
(3)天板10は、水平位置に固定されたままであり、垂直位置に回転できなくてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1000 机
10 天板
20 第1脚部
21a 第1面
21b 第2面
21c 頂点
22 キャスタ
30 第2脚部
80 切替部材
85 カム
85a 第1面
85b 第2面
85d 頂点
【要約】
【課題】天板が水平位置にあるときに、床面上を移動可能な状態と移動不能な状態とを切り替えることができる、新規な構造を有する机を提供する。
【解決手段】机1000は、天板10と、下部にキャスタ22が結合された第1脚部20と、第1脚部20に対して移動可能な第2脚部30と、切替部材80と、を備える。切替部材80は、天板10が水平位置にあるときに第1脚部20と第2脚部30とを相対移動させ、キャスタ22および第2脚部30の両方が床面に接触した第1状態と、キャスタ22は床面に接触しているが、第2脚部30は床面に接触していない第2状態と、を切り替える。机1000が第1状態のとき、第1脚部20および第2脚部30の両方によって天板10を支持している。
【選択図】
図1