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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】水抜き具
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/14 20060101AFI20230518BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
E06B7/14
E04B1/64 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018151194
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026651
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健二
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-325185(JP,A)
【文献】特開2007-182747(JP,A)
【文献】実公昭50-015724(JP,Y1)
【文献】実開昭60-148488(JP,U)
【文献】特開平02-027035(JP,A)
【文献】特開2004-131941(JP,A)
【文献】特開2013-087567(JP,A)
【文献】実公昭49-008023(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/12-7/14,7/26
E04B 1/64,2/56
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁材と水切り部との隙間に配される水抜き具であって、第1開口と、
前記第1開口と連通する第2開口と、が形成された本体部と、
前記本体部に支持され、前記第1開口を開閉可能なフラップと、を備え、
前記フラップは、前記第1開口を開閉する蓋部と、前記蓋部の両端に設けられ、
前記本体部に回動可能に支持された軸部と、を有し、
前記本体部には、前記フラップの前記軸部を支持する内壁部と、前記内壁部を挟んで前記第1開口とは反対側、かつ前記内壁部の下方に位置し、前記第2開口側に向かって下り傾斜する傾斜面と、が形成され、
前記フラップは、前記軸部を含めて、少なくとも前記フラップの上面及び両側面が前記本体部に 包囲されていることを特徴とする水抜き具。
【請求項2】
前記本体部は、前記第1開口と前記第2開口との間に設けられ、
前記本体部から上向き及び横向きの少なくとも一方に延びる板部を有している請求項1記載の水抜き具。
【請求項3】
前記第2開口は、前記板部が延びる方向に向かって開口している請求項記載の水抜き具。
【請求項4】
前記本体部には、前記板部よりも前記第2開口側において、前記板部が延びる方向であって、
前記第2開口が開口する方向とは異なる方向に向かって開口し、
前記第1開口と連通する第3開口が形成されている請求項記載の水抜き具。
【請求項5】
前記第2開口側で前記本体部に接続され、
前記第2開口と連通する案内面が形成された補助部材をさらに備え、
前記案内面は、前記第1開口側に向かって下り傾斜している請求項1記載の水抜き具。
【請求項6】
前記補助部材には、
前記第2開口と連通する補助開口が形成されている請求項記載の水抜き具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物等に用いられる水抜き具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に従来の水抜き具の例が開示されている。これらの水抜き具は、家屋の構造体と、構造体に取り付けられた壁材と、構造体に取り付けられ、壁材の下端との間に隙間が形成される水切り部を有するサッシと、その隙間を塞ぐシーリング材と、を備えた壁構造に用いられる。
【0003】
特許文献1に開示の水抜き具では、排水路に複数の水切り片が配置されている。特許文献2に開示の水抜き具では、排水孔が形成された成形体の内部にスポンジ等の充填材が充填されている。
【0004】
これらの水抜き具は、シーリング材と共に、壁材と水切り部との隙間に配置される。そして、これらの水抜き具は、壁材と構造体との間に浸入した水をシーリング材を挟んで構造体とは反対側まで案内するようになっている。さらに、これらの水抜き具は、風雨による吹き込みにより水が構造体側に逆流することを水切り片又は充填材によって抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-182747号公報
【文献】特開平10-325185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の水抜き具に対しては、風雨による吹き込みにより水が構造体側に逆流することをより確実に抑制することが求められている。
【0007】
本発明は、風雨による吹き込みにより水が構造体側に逆流することをより確実に抑制できる水抜き具を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様の水抜き具は、壁材と水切り部との隙間に配される水抜き具であって、
第1開口と、前記第1開口と連通する第2開口と、が形成された本体部と、
前記本体部に支持され、前記第1開口を開閉可能なフラップと、を備え、
前記フラップは、前記第1開口を開閉する蓋部と、前記蓋部の両端に設けられ、前記本体部に回動可能に支持された軸部と、を有し、
前記フラップは、前記軸部を含めて、少なくとも前記フラップの上面及び両側面が前記本体部に包囲されていることを特徴とする。
【0009】
第1の態様の水抜き具は、壁構造の施工時、壁材と水切り部との隙間に配置される。この水抜き具は、壁構造の施工後、構造体と壁材との間に浸入した水を構造体とは反対側まで案内する。この際、フラップが第2開口を通過して第1開口まで案内された水に押されて揺動して第1開口を開放するので、その水を第1開口から外部に好適に排出できる。そして、風雨による吹き込みがあっても、フラップが吹き込みに押されて第1開口を閉鎖するので、その吹き込みによる水の逆流をより確実に抑制できる。
【0010】
また、この水抜き具では、壁構造の施工時、水抜き具の周囲に硬化する前のシーリング材が充填される場合は、そのシーリング材が水抜き具の本体部に接触する。ここで、フラップは、軸部を含めて、少なくともフラップの上面及び両側面が本体部に包囲されているので、硬化する前のシーリング材が本体部に遮られて、フラップの軸部付近、軸部及び蓋部に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、硬化したシーリング材によってフラップの揺動が妨げられることを防止できる。
【0011】
前記本体部には、フラップの軸部を支持する内壁部と、内壁部を挟んで第1開口とは反対側、かつ内壁部の下方に位置し、第2開口側に向かって下り傾斜する傾斜面と、が形成されている。
【0012】
この場合、傾斜面によって、本体部内におけるフラップの軸部付近に水が溜まることを抑制できるので、内壁部に溜まった水によってフラップの揺動が妨げられることを防止できる。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様の水抜き具では、風雨による吹き込みにより水が構造体側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0014】
本発明の第の態様として、本体部は、第1開口と第2開口との間に設けられ、本体部から上向き及び横向きの少なくとも一方に延びる板部を有していることが望ましい。
【0015】
壁構造の施工時において、壁材と水切り部との隙間に水抜き具を配置してシーリング材を充填する際に、硬化する前のシーリング材が板部に堰き止められる。このため、そのシーリング材が第2開口に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、シーリング材によって、第2開口が狭くなることを防止できる。
【0016】
本発明の第の態様として、第2開口は、板部が延びる方向に向かって開口していることが望ましい。
【0017】
このように配置された第2開口により、構造体と壁材との間に浸入した水を第1開口まで好適に案内できる。
【0018】
本発明の第の態様として、本体部には、板部よりも第2開口側において、板部が延びる方向であって、第2開口が開口する方向とは異なる方向に向かって開口し、第1開口と連通する第3開口が形成されていることが望ましい。
【0019】
壁構造の施工時において、壁材と水切り部との隙間に水抜き具を配置してシーリング材を充填する際に、硬化する前のシーリング材が板部に堰き止められる。このため、そのシーリング材が第2開口及び第3開口に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、シーリング材によって、第2開口及び第3開口が狭くなることを防止できる。そして、第2開口及び第3開口により、構造体と壁材との間に浸入した水を第1開口まで好適に案内できる。つまり、水抜き具は、構造体と壁材との間に浸入した水を2つの方向から導入して外部に効果的に排出できる。
【0020】
本発明の第の態様として、水抜き具は、第2開口側で本体部に接続され、第2開口と連通する案内面が形成された補助部材をさらに備えていることが望ましい。そして、案内面は、第1開口側に向かって下り傾斜していることが望ましい。
【0021】
この場合、構造体と壁材との間に浸入した水を補助部材の案内面によって第1開口に向けてスムーズに案内できる。補助部材は、特に、本発明の水抜き具を2つの壁材が左右方向において接合される接合部の下端に配置した際に、効果的に使用できる。すなわち、壁材の接合部に浸入した水がその接合部に沿って下方に流れた際に、その水を案内面によって受けて、第1開口に向けてスムーズに案内でき、外部に効果的に排出できる。
【0022】
本発明の第の態様として、補助部材には、第2開口と連通する補助開口が形成されていることが望ましい。


【0023】
この場合、上方から補助部材に到達する水を案内面によって第1開口に向けて案内するだけでなく、側方及び構造体側から補助部材に到達する水を補助開口によって第1開口に向けてスムーズに案内することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水抜き具では、風雨による吹き込みにより水が構造体側に逆流することをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施の形態1の水抜き具が適用される建物の壁構造の斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係り、構造体に取り付けられた外壁板及び水抜き具等を示す部分斜視図である。
図3図3は、実施の形態1に係り、構造体に取り付けられた外壁板及び水抜き具等を示す部分断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係り、構造体に外壁板を取り付ける前の準備工程を説明するための部分斜視図である。
図5図5は、実施の形態1に係り、構造体に外壁板を取り付けた後、さらに水抜き具を取り付ける工程を説明するための部分斜視図である。
図6図6は、実施の形態1に係り、外壁板と構造体との間に浸入した水が水抜き具に向かう経路を説明するための部分斜視図である。
図7図7は、実施の形態1に係り、水抜き具の正面図である。
図8図8は、実施の形態1に係り、水抜き具の上面図である。
図9図9は、実施の形態1に係り、水抜き具の下面図である。
図10図10は、実施の形態1に係り、水抜き具の本体部の後面図である。
図11図11は、図7のXI-XI断面を示す断面図である。
図12図12は、図11のXII-XII断面を示す断面図である。
図13図13は、実施の形態2に係り、補助部材を有する水抜き具の分解斜視図である。
図14図14は、実施の形態2に係り、補助部材が接続された状態の水抜き具を示す斜視図である。
図15図15は、実施の形態2に係り、構造体に取り付けられた外壁板、及び水抜き具等を示す部分断面図である。
図16図16は、実施の形態3の水抜き具の斜視図である。
図17図17は、実施の形態4の水抜き具の斜視図である。
図18図18は、実施の形態5の水抜き具の斜視図である。
図19図19は、実施の形態5に係り、構造体に取り付けられた外壁板及び水抜き具等を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施の形態1~5を図面を参照しつつ説明する。なお、図1において、垂直上方向を上と表示し、垂直下方向を下と表示する。また、図1の屋外から屋内に向う方向において水平左方向を左と表示し、水平右方向を右と表示する。そして、図2以降の各図に示す各方向は、図1に対応させて表示する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、建物の構造体8の開口部、本実施の形態の場合は窓を取り付けるための窓枠部8Wの周辺において、複数の外壁板2を構造体8に対して取り付けた状態を示している。図2図5に示すように、窓枠部8Wの上端部分は、柱材80及びアルミニウム製のサッシ89等を含んで構成されている。また、建物の開口部としては、窓枠部に限られるものでなく、その他扉を取り付けるための扉部等が挙げられる。
【0028】
サッシ89は、左右方向に延在する柱材80における屋外方向を向く外面の下端部に固定されている。サッシ89は、柱材80に沿って左右方向に延在している。サッシ89には、水切り部89Aが形成されている。水切り部89Aは、柱材80の外面の下端部側から屋外方向に略水平に突出した後に屈曲し、下向きに延びている。
【0029】
図2及び図3に示すように、実施の形態1の水抜き具100は、外壁板2の下端2Dとサッシ89の水切り部89Aとの第1隙間S1に配置されて、構造体8と外壁板2との間に浸入した水を外部に排出するためのものである。先に実施の形態1の水抜き具100が適用される建物の壁構造を説明し、水抜き具100の具体的構成及び施工方法については後で詳しく説明する。
【0030】
<建物の壁構造>
図1に示すように、本実施の形態では、構造体8は、住宅、施設、倉庫等である建物を構成している。構造体8は、木造軸組構法によって建築されている。構造体8を構成する複数の構造部材としては、左右方向に所定の間隔を有して並ぶ複数の柱部材9等の他、各柱部材9間に配置される間柱等の補助部材が含まれる。各柱部材9の屋外方向を向く外面には、胴縁と呼ばれる支持部材7が図示しない止めネジや釘等の締結具によって固定されている。この支持部材7も構造部材に含まれる。各柱部材9と支持部材7との間には、図1図5に示す防水シート6が敷設されている。
【0031】
なお、構造体8は、本実施の形態の構成に限定されず、木造枠組壁構法等によって建築されてもよい。また、壁材が取り付けられる構造体は、例えば、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、レンガ造等の躯体であってもよいし、屋内の区画壁であってもよい。
【0032】
図1に示すように、外壁板2は、「壁材」の一例である。外壁板2は、四辺形状、より具体的には、左右方向に長い略矩形状の平板部材である。なお、壁材は外壁板に限定されず、例えば、表面に意匠性の高い化粧面を有して建物を外装する化粧板であってもよい。また、屋内の水がかかる可能性のある場所に設けられる屋内用構造パネル、内装板等であってもよい。
【0033】
本実施の形態では、外壁板2は、セメントを含む窯業系材料からなる。なお、外壁板2の材質や形状は上記には限定されない。例えば、外壁板2の材質は、金属系材、木質系材、樹脂系材等を適宜選択できる。外壁板2の形状は、四辺形状で上下に長い略矩形形状の平板部材等を適宜選択できる。
【0034】
複数の外壁板2は、スターター5A及び中間取付具5B等を介して、上下方向及び左右方向に隣接する状態で構造体8に取り付けられて、構造体8の外面を覆っている。スターター5Aは、最も下に位置する外壁板2の下端を支持するためのものである。中間取付具5Bは、上下に隣接する外壁板2を支持するためのものである。スターター5A及び中間取付具5Bの構成は周知であるので、説明は省略する。
【0035】
外壁板2の表面2Fは、例えば、柄のないフラットで光沢のある外装面の他、レンガ柄等のデザインが施された外装面等であり得る。
【0036】
図2に示すように、各外壁板2の左端部には、表側左右接合部21が形成されている。各外壁板2の右端部には、裏側左右接合部22が形成されている。表側左右接合部21及び裏側左右接合部22等の接合部は、「実部」とも呼ばれる。
【0037】
表側左右接合部21は、外壁板2の裏面2Bから表面2Fに向かって段状に形成され、上下方向、すなわち、外壁板2の左端部に沿って延在している。
【0038】
裏側左右接合部22は、外壁板2の表面2Fから裏面2Bに向かって段状に形成され、上下方向、すなわち、外壁板2の右端部に沿って延在している。
【0039】
右方の外壁板2の表側左右接合部21と、左方の外壁板2の裏側左右接合部22とが重なり合うことによって、左右方向に隣接する外壁板2同士の間に、「左右合決り」の接合部2Jが形成されるようになっている。
【0040】
なお、表側左右接合部21及び裏側左右接合部22の少なくとも一方に、予めコーキング材が配置されていてもよい。
【0041】
また、各外壁板2の下端部に表側上下接合部が形成され、各外壁板2の上端部に裏側上下接合部が形成されている。これらが重なり合うことによって、上下方向に隣接する外壁板2同士の間に、「上下合決り」の接合部が形成されるようになっている。
【0042】
図2に示すように、外壁板2が構造体8における窓枠部8Wの上方に取り付けられる場合、外壁板2と、窓枠部8Wを構成するサッシ89との干渉を避けたり、隣接する外壁板2同士の意匠面のずれを防止したりする必要がある。
【0043】
このため、外壁板2は、その一部が必要に応じて適宜切断された上で、構造体8に取り付けられる。この際、図3に示すように、外壁板2における窓枠部8Wの上方に位置する部分と、支持部材7との間に、スペーサ60と、目板部材70の固定片75とが配置された状態で、釘7N等の締結具によって外壁板2が支持部材7に固定されている。
【0044】
より詳しくは、図4に示すように、目板部材70は、鋼板が切り欠き加工や折り曲げ加工等されることにより、固定片75及び目地部73が一体に形成されている。
【0045】
固定片75は、上下方向及び左右方向に延びる平板形状である。目地部73は、固定片75の下端から屋外方向に突出した後に下向きに屈曲し、さらに屋内方向に屈曲している。つまり、目地部73は、断面略C字形状である。目地部73は、その一部が切り欠かれることによって、左右方向において互いに離間する第1目地部71及び第2目地部72を形成している。
【0046】
外壁板2を窓枠部8Wの上方に取り付ける前の準備工程において、目板部材70は、固定片75が支持部材7の屋外方向を向く外面に当接し、かつ目地部73の下端がサッシ89の水切り部89Aに当接する状態とされている。
【0047】
この状態において、第1目地部71における第2目地部72と対向する第1端部71Aは、図5に示す外壁板2の接合部2Jから右方に離間した位置に配置されている。また、第2目地部72における第1目地部71と対向する第2端部72Aは、図5に示す外壁板2の接合部2Jから左方に離間した位置に配置されている。このとき、対向する第1端部71Aと第2端部72Aとには空隙が形成されている。
【0048】
図4に示すように、テープ79が目板部材70と水切り部89Aに貼り付けられている。テープ79は、延伸能の高い樹脂製フィルムの一面に粘着層が形成されてなるテープ、例えばストレッチテープ(登録商標)等である。テープ79は、第1端部71Aと第2端部72Aとの空隙をそれぞれ封止し、かつ固定片75と水切り部89Aの上面とに密着している。
【0049】
図5に示すように、外壁板2は、下端2Dが第1目地部71及び第2目地部72における屋外方向の先端部分に上から当接し、裏面2Bがスペーサ60の屋外方向を向く外面に当接し、接合部2Jが左右方向において第1端部71Aと第2端部72Aとの間に位置する状態とされて、支持部材7に固定されている。これにより、外壁板2の下端2Dがサッシ89の水切り部89Aの上方に配置されて、左右方向に延びる状態となっている。
【0050】
図3及び図5に示すように、外壁板2の下端2Dとサッシ89の水切り部89Aとの間には、第1隙間S1が形成されている。外壁板2の裏面2Bと支持部材7の屋外方向を向く外面との間には、第2隙間S2が形成されている。
【0051】
目板部材70において、目地部73の屋内方向側に位置する一部は、第2隙間S2の下方に位置している。その一方、目地部73の屋外方向側に位置する一部は、第1隙間S1に進入するように配置されている。
【0052】
ここで、図3図5及び図6に示すように、左右方向において間隔を有して互いに対向する第1目地部71及び第2目地部72と、第1目地部71及び第2目地部72に上から当接する外壁板2の下端2Dとによって、第1導水開口H1が形成されている。
【0053】
また、左右方向において間隔を有して互いに対向する第1目地部71及び第2目地部72と、第1目地部71の第1端部71A及び第2目地部72の第2端部72Aを封止するとともに水切り部89Aの一部を覆うテープ79と、第1目地部71及び第2目地部72に上から当接する外壁板2の裏面2Bとによって、第2導水開口H2が形成されている。
【0054】
第1導水開口H1は、第1隙間S1に位置し、外壁板2の表面2F側に開口している。第2導水開口H2は、第2隙間S2に位置し、外壁板2の裏面2Bと支持部材7との間に開口している。第2導水開口H2は、第1導水開口H1と連通している。
【0055】
<水抜き具の具体的構成>
図6図12に示すように、水抜き具100は、本体部101及びフラップ120を備えている。本実施の形態では、本体部101及びフラップ120はそれぞれ、熱可塑性樹脂の射出成形品である。なお、本体部101及びフラップ120の材料や製造方法は上記に限定されず、周知の材料や製造方法を適宜選択できる。
【0056】
本体部101の形状等についての以下の説明では、屋内外方向、左右方向及び上下方向について、本体部101が第1隙間S1に配置された状態を基準とする。また、フラップ120の形状等についての以下の説明では、本体部101が第1隙間S1に配置され、かつフラップ120が第1開口111を閉じた状態を基準とする。
【0057】
図7図11に示す対称面PS1は、本体部101及びフラップ120の左右方向の中央を通過し、かつ屋内外方向及び上下方向に延びる平面である。本体部101及びフラップ120は、対称面PS1について面対称である。このため、本体部101及びフラップ120の形状等についての以下の説明では、それらの右部分について優先的に説明し、それらの左部分についての説明を適宜省略する。
【0058】
本体部101は、上壁102、下壁103、左右の側壁104、104、左右の前壁105、105、左右の内壁部109、109、左右の軸穴109H、109H、左右の傾斜面108、108及び補強壁106を有している。
【0059】
上壁102と下壁103とは、上下方向において互いに対向しつつ屋内外方向及び左右方向に延びている。
【0060】
図8に示すように、上壁102は、上面視略矩形状の平板形状である。上壁102は、左右方向の長さが屋内外方向の長さよりも大きく設定されている。図9に示すように、下壁103も、上壁102と同様の平板形状である。
【0061】
図9及び図12に示すように、下壁103の屋外側端縁103Fにおける左右方向の両端部103F1、103F1は、上壁102の屋外側端縁102Fの真下に位置している。
【0062】
下壁103の屋外側端縁103Fにおける左右方向の中間部103F2は、上壁102の屋外側端縁102Fよりも屋内側にずれた位置にある。
【0063】
下壁103の屋内側端縁103Bは、上壁102の屋内側端縁102Bの真下に位置している。下壁103の屋内側端縁103Bは、屋外方向に向かって上り傾斜するように面取りされている。
【0064】
図6及び図10に示すように、右方の側壁104は、屋内外方向及び上下方向に延びて、上壁102の右端縁と下壁103の右端縁とを接続している。
【0065】
右方の前壁105は、上下方向及び左右方向に延びて、下壁103の屋外側端縁103Fにおける右方の端部103F1と、上壁102の屋外側端縁102Fにおける右方の端部と、右方の側壁104の屋外側端縁とに接続している。右方の前壁105は、正面視略矩形状である。
【0066】
図10図12に示すように、右方の内壁部109は、右方の前壁105の左端縁に接続し、屋内方向及び上下方向に延びている。図11に示すように、右方の内壁部109は、屋内方向に延びる途中において、左向きにクランク状に屈曲している。右方の内壁部109の屋内側端縁は、下壁103の屋内側端縁103Bから屋外方向に離間した位置にある。
【0067】
右方の内壁部109の上下の両端は、右方の側壁104から左方に離間した位置で、上壁102の下面と下壁103の上面とに接続している。
【0068】
右方の軸穴109Hは、右方の内壁部109に形成されている。図12に示すように、右方の軸穴109Hは、右方の前壁105から屋内方向に離間した位置、かつ上壁102の下面に接する位置で、右方の内壁部109を左右方向において貫通している。
【0069】
右方の傾斜面108は、下壁103の上面のうち、右方の側壁104と、右方の前壁105と、右方の内壁部109とに囲まれた領域に形成されて、内壁部109の下方に位置している。右方の傾斜面108は、右方の前壁105に接する屋外側端縁が最も高い位置にあって、屋内方向に下り傾斜している。右方の傾斜面108の屋内側端縁は、右方の内壁部109の屋内側端縁と左右方向において並ぶ位置にある。
【0070】
補強壁106は、対象面PS1と重なる位置で屋内外方向及び上下方向に延びている。補強壁106の上下の両端は、上壁102の下面の中央と、下壁103の上面の中央とに接続している。
【0071】
補強壁106の屋外側端縁は、下壁103の屋外側端縁103Fにおける左右方向の中間部103F2に接している。補強壁106の屋内側端縁は、右方の内壁部109の屋内側端縁と左右方向において並ぶ位置にある。
【0072】
図6図11に示すように、左方の側壁104、左方の前壁105、左方の内壁部109、左方の軸穴109H及び左方の傾斜面108は、右方の側壁104、右方の前壁105、右方の内壁部109、右方の軸穴109H及び右方の傾斜面108と対称面PS1について面対称であるので、説明は省略する。
【0073】
本体部101には、第1開口111、第2開口112、板部117及び第3開口113が形成されている。
【0074】
第1開口111は、上壁102の下面における左右の軸穴109H、109Hよりも屋内側に位置する部分と、下壁103の屋外側端縁103Fにおける左右方向の中間部103F2と、左右の内壁部109、109とによって区画された矩形穴であって、補強壁106によって左右2つに分割されている。
【0075】
右方の傾斜面108は、右方の内壁部109を挟んで第1開口111とは反対側に位置している。左方の傾斜面108は、左方の内壁部109を挟んで第1開口111とは反対側に位置している。
【0076】
第2開口112は、上壁102の屋内側端縁102Bと、下壁103の屋内側端縁103Bと、左右の側壁104の屋内側端縁とによって区画された矩形穴である。
【0077】
第1開口111と第2開口112とは、互いに反対方向に向かって開口している。第2開口112は、上壁102、下壁103、左右の側壁104及び左右の内壁部109、109に囲まれた空間を介して、第1開口111と連通している。
【0078】
図12に示すように、左右の傾斜面108、108は、第2開口112側に向かって下り傾斜している。
【0079】
図6図11に示すように、板部117は、本体部10における第1開口111と第2開口112との間に設けられている。板部117は、本体部101から上向き及び横向きに延びる平板形状である。
【0080】
より詳しくは、板部117は、上壁102における屋内外方向の中間部から上向きに延びる部分と、右方の側壁104における屋内外方向の中間部から右向きに延びる部分と、左方の側壁104における屋内外方向の中間部から左向きに延びる部分とを含み、それらが、平板状に連続している。
【0081】
左右の側壁104の上端縁における板部117よりも屋内側に位置する部分には、上向きに突出して屋内外方向に延びるリブ114R、114Rが形成されている。リブ114R、114Rの屋外側端縁は、板部117に接続している。
【0082】
図3及び図8に示すように、第3開口113は、上壁102における板部117よりも第2開口112側において、板部117が延びる方向であって、第2開口112が開口する方向とは異なる方向に向かって開口している。つまり、第3開口113は、上壁102における板部117と屋内側端縁102Bとの間で、上向きに開口している。
【0083】
第3開口113は、左右2つに分割された矩形穴である。第3開口113は、上壁102、下壁103、左右の側壁104及び左右の内壁部109、109に囲まれた空間を介して、第1開口111と連通している。
【0084】
図6図9に示すように、フラップ120は、蓋部121及び左右の軸部122、122を有している。
【0085】
蓋部121は、正面視略矩形状の平板である。蓋部121の上面は、上壁102の屋外側端縁102Fよりも屋内側において、上壁102の下面に対向している。
【0086】
蓋部121の右側面は、右方の内壁部109に対向している。蓋部121の左側面は、左方の内壁部109に対向している。
【0087】
図7図9及び図11に示すように、右方の軸部122は、蓋部121の右端、すなわち蓋部121の右側面の上端から右向きに突出する円柱軸である。左方の軸部122は、蓋部121の左端、すなわち蓋部121の左側面の上端から左向きに突出する円柱軸である。
【0088】
右方の軸部122は、本体部101の右方の内壁部109に形成された軸穴109Hに挿通されている。左方の軸部122は、本体部101の左方の内壁部109に形成された軸穴109Hに挿通されている。
【0089】
こうして、左右の軸部122、122が本体部101に回動可能に支持されることにより、フラップ120は、本体部101に揺動可能に支持されている。
【0090】
フラップ120の右方の軸部122は、本体部101の上壁102、下壁103、右方の側壁104、右方の前壁105及び右方の内壁部109によって、上側、下側、右側及び屋外側から覆われている。
【0091】
フラップ120の左方の軸部122は、本体部101の上壁102、下壁103、左方の側壁104、左方の前壁105及び左方の内壁部109によって、上側、下側、左側及び屋外側から覆われている。
【0092】
図6図9に示すように、フラップ120の蓋部121の上面は、本体部101の上壁102によって、上側から覆われている。フラップ120の蓋部121の右側面は、本体部101の右方の内壁部109によって、右側から覆われている。フラップ120の蓋部121の左側面は、本体部101の左方の内壁部109によって、左側から覆われている。
【0093】
つまり、フラップ120は、左右の軸部122、122を含めて、少なくともフラップ120の上面及び両側面が本体部101に包囲されている。
【0094】
図2図6図9及び図11に示すように、フラップ120に自重のみが作用する状態では、蓋部121が垂直に垂れ下がって、蓋部121の下面が第1開口111の下端よりも下方に位置する状態となる。この状態で、フラップ120は、第1開口111の周縁に密着する蓋部121によって第1開口111を閉じる。図2に示す風雨による押圧力F1が屋外側からフラップ120に作用する場合にも、フラップ120は、第1開口111を閉じる。
【0095】
図3に示すように、フラップ120は、本体部101内を通過する水によって押されることにより屋外側に揺動し、第1開口111の周縁から離間する蓋部121によって第1開口111を開放する。なお、蓋部121の屋外方向を向く面における左右の軸部122、122の近傍には、突起121A、121Aが形成されている。フラップ120が揺動して第1開口111を開放するときに、突起121A、121Aが上壁102の下面に当接することで、フラップ120の開閉角度が90度未満に規制される。これにより、フラップ120が開いたままの状態になることが抑制される。また、フラップ120が開いた状態で傾斜することにより、図2に示す風雨による押圧力F1を受け易く、押圧力F1によって第1開口111を確実に閉じることができる。
【0096】
なお、図8に示すように、板部117の左右に延びる部分の根元付近には、溝117S、117Sが凹設されており、溝117S、117Sを起点として板部117を折ることができるようになっている。
【0097】
<水抜き具の施工方法>
次に、図5に矢印Y1で示すように、水抜き具100を第1隙間S1に向けて移動させ、水抜き具100の第2開口112側を第1導水開口H1に挿入する。そして、水抜き具100の本体部101の下面に予め貼り付けられた両面テープ等によって、水抜き具100を水切り部89Aに固定する。図示は省略するが、水抜き具100の第1開口111及びフラップ120側は、マスキングテープで覆われた状態とされる。マスキングテープで覆う理由は、第1隙間S1にシーリング材87を充填する際に、シーリング材87が第1開口111及びフラップ120側を経由してフラップ120の蓋部121、軸部122、122及び軸部122付近に入り込むことを防止するためである。
【0098】
次に、図2及び図3に示すように、第1隙間S1にシーリング材87を充填して硬化させる。この際、水抜き具100の本体部101の板部117を第1目地部71及び第2目地部72に当接するように配した上で、板部117と、本体部101の上面及び両側面における板部117よりも屋外側に位置する領域にシーリング材87を密着させる。そして、シーリング材87が硬化した後、水抜き具100から上述したマスキングテープを除去する。こうして、外壁板2を構造体8における窓枠部8Wの上方に取り付ける施工作業が完了する。
【0099】
なお、第1目地部71又は第2目地部72の左右方向の長さが極端に短い場合、溝117S、117Sを起点として板部117を折ることで板部117の大きさを調整して対応することができる。
【0100】
以上の通り、水抜き具100を施工すると、水抜き具100が第1隙間S1に配置された状態で、第1開口111は外壁板2の表面2F側に開口し、第2開口112は第1開口111とは反対方向に、すなわち外壁板2の裏面2B側に向かって開口している。
【0101】
そして、水抜き具100が第1隙間S1に配置された状態で、第2開口112と第3開口113とはそれぞれ、第1導水開口H1と連通している。
【0102】
<作用効果>
実施の形態1の水抜き具100は、図2及び図3に示すように、壁構造の施工時、シーリング材87と共に、外壁板2の下端2Dとサッシ89の水切り部89Aとの第1隙間S1に配置される。この水抜き具100は、壁構造の施工後、構造体8と外壁板2との間に浸入した水をシーリング材87を挟んで構造体8とは反対側まで案内する。
【0103】
より詳しくは、構造体8と外壁板2との間に浸入した水は、図3に矢印YW1で示すように、目板部材70の固定片75、目地部73及びテープ79に沿って移動して第2導水開口H2に浸入し、第1導水開口H1、第2開口112を通過して第1開口111まで案内される。
【0104】
また、構造体8と外壁板2との間に浸入した水は、図3に矢印YW2で示すように、外壁板2の裏面2Bに沿って移動して第2導水開口H2に浸入し、第1導水開口H1、第3開口113を通過して第1開口111まで案内される。
【0105】
図2に示す外壁板2の接合部2Jに浸入した水は、接合部2Jに沿って外壁板2の下端2Dまで移動する。そして、第3開口113を通過して第1開口111まで案内される。
【0106】
フラップ120は、第2開口112又は第3開口113を通過して第1開口111まで案内された水に押されて揺動し、第1開口111を開放する。これにより、その水を第1開口111から外部に好適に排出できる。
【0107】
そして、風雨による吹き込みがあっても、図2に示すように、風雨による押圧力F1が屋外側からフラップ120に作用するので、フラップ120がその吹き込みの押圧力F1によって押されて第1開口111を閉鎖する。その結果、この水抜き具100では、その吹き込みによる水の逆流をより確実に抑制できる。
【0108】
また、この水抜き具100では、壁構造の施工時、図5に示すように、水抜き具100を第1隙間S1に配置した後、水抜き具100の周囲に硬化する前のシーリング材87が充填される際に、そのシーリング材87が水抜き具100の本体部101に接触する。
【0109】
ここで、図6図9に示すように、フラップ120は、左右の軸部122、122を含めて、少なくともフラップ120の上面及び両側面が本体部101に包囲されている。このため、硬化する前のシーリング材87が本体部101に遮られて、フラップ120の左右の軸部122、122、軸部122付近、及び蓋部121に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、硬化したシーリング材87によってフラップ120の揺動が妨げられることを防止できる。
【0110】
したがって、実施の形態1の水抜き具100では、風雨による吹き込みにより水が構造体8側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0111】
また、この水抜き具100では、本体部101の下壁103の上面に形成された左右の傾斜面108、108によって、内壁部109、109に形成された軸穴109H、109Hや、軸穴109H、109Hに挿通されるフラップ120の軸部122、122の周辺に水が溜まることを抑制できるので、内壁部109、109に溜まった水によってフラップ120の揺動が妨げられることを防止できる。
【0112】
さらに、この水抜き具100では、図6等に示すように、本体部101が板部117を有している。これにより、壁構造の施工時において、外壁板2の下端2Dとサッシ89の水切り部89Aとの第1隙間S1に水抜き具100を配置してシーリング材87を充填する際に、硬化する前のシーリング材87が板部117に堰き止められる。このため、そのシーリング材87が第2開口112及び第3開口113に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、シーリング材87によって、第2開口112及び第3開口113が狭くなることを防止できる。
【0113】
なお、左右のリブ114R、114Rは、硬化する前のシーリング材87が板部117の右向き及び左向きに延びる部分を越えた場合に、その越えたシーリング材87を第3開口113の手前で堰き止めることができる。
【0114】
また、この水抜き具100では、図3に矢印YW2で示すように、外壁板2の裏面2B及び下端2Dに沿って移動する水を本体部101の上壁102に形成された第3開口113によって、第1開口111まで好適に案内できる。また、図2に示す外壁板2の接合部2Jに浸入し、接合部2Jに沿って外壁板2の下端2Dまで移動した水を図3に示す第3開口113によって、第1開口111まで好適に案内できる。つまり、水抜き具100は、構造体8と外壁板2との間に浸入した水を第2開口112及び第3開口113によって、2つの方向から導入して外部に効果的に排出できる。
【0115】
さらに、この水抜き具100では、図3に示すように、下壁103の屋内側端縁103Bが第1開口111に向かって上り傾斜している。このような屋内側端縁103Bの傾斜により、屋内側から第2開口112への水の流出がスムーズになる。
【0116】
(実施の形態2)
図13図15に示すように、実施の形態2の水抜き具200は、実施の形態1の水抜き具100に、補助部材250をさらに備えたものである。実施の形態2のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0117】
補助部材250は、熱可塑性樹脂の射出成形品である。なお、補助部材250の材料や製造方法は上記に限定されず、周知の材料や製造方法を適宜選択できる。
【0118】
補助部材250には、左右の第1接合部259、259、案内面255、左右の第1補助開口251、251、左右の第2補助開口252、252及び左右の第2接合部256、256が形成されている。本実施の形態では、左方の第2補助開口252は、右方の第2補助開口252と左右対称の同一形状であるので図示は省略する。左右の第1補助開口251、251及び左右の第2補助開口252、252は、「補助開口」の一例である。
【0119】
右方の第1接合部259は、補助部材250における屋外側かつ右方の角部に形成されている。左方の第1接合部259は、補助部材250における屋外側かつ左方の角部に形成されている。左右の第1接合部259、259はそれぞれ、屋内方向に凹み、かつ上下方向に延びる溝を含んでいる。
【0120】
案内面255は、補助部材250の上壁258における左右方向の中央部が下向きに凹むように形成されてなる。案内面255は、補助部材250の後壁257側から屋外方向に下り傾斜している。
【0121】
右方の第1補助開口251は、右方の第1接合部259と案内面255と上壁258との間で屋外方向に開口している。左方の第1補助開口251は、左方の第1接合部259と案内面255と上壁258との間で屋外方向に開口している。
【0122】
右方の第2補助開口252は、補助部材250の右側面から右向きに開口している。右方の第2補助開口252は、右方の第1補助開口251と連通している。図示は省略するが、左方の第2補助開口252は、補助部材250の左側面から左向きに開口している。左方の第2補助開口252は、左方の第1補助開口251と連通している。
【0123】
右方の第2接合部256は、補助部材250の上壁258における案内面255よりも右方に位置する部分の屋外側を向く端面に形成されている。左方の第2接合部256は、補助部材250の上壁258における案内面255よりも左方に位置する部分の屋外側を向く端面に形成されている。左右の第2接合部256、256はそれぞれ、屋内方向に凹み、かつ左右方向に延びる溝を含んでいる。右方の第2接合部256の溝の右端は、右方の第1接合部259の溝に接続している。左方の第2接合部256の溝の左端は、左方の第1接合部259の溝に接続している。
【0124】
図14に示すように、左右の第1接合部259、259が本体部101の左右の側壁104、104における屋内側端縁に嵌合する。また、図15に示すように、左右の第2接合部256、256が本体部101の上壁102の屋内側端縁102Bに嵌合する。その結果、補助部材250が本体部101に接続される。
【0125】
図14及び図15に示すように、案内面255は、第2開口112側で本体部101の下壁103の屋内側端縁103Bに接続される。案内面255は、第2開口112と連通して、第1開口111側に向かって下り傾斜する状態となる。
【0126】
壁構造の施工時、水抜き具200は、本体部101に補助部材250が接続された状態で、第1隙間S1に配置される。これにより、補助部材250は、第2隙間S2の下方に配置される。
【0127】
このような構成である実施の形態2の水抜き具200では、実施の形態1の水抜き具100と同様に、風雨による吹き込みにより水が構造体8側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0128】
また、この水抜き具200では、構造体8と外壁板2との間に浸入した水は、図15に矢印YW21で示すように、目板部材70の固定片75、目地部73及びテープ79に沿って移動して補助部材250の案内面255に到達するので、傾斜する案内面255によって、その水を第1開口111に向けてスムーズに案内できる。
【0129】
また、図15に矢印YW22で示すように、外壁板2の裏面2Bに沿って移動する水を補助部材250の上壁258によって第3開口113に、案内面255によって第2開口112に好適に案内できる。
【0130】
さらに、図2に示す外壁板2の接合部2Jに浸入し、接合部2Jに沿って外壁板2の下端2Dまで移動した水を補助部材250の上壁258によって第3開口113に、案内面255によって第2開口112に好適に案内でき、外部に効果的に排出できる。
【0131】
また、この水抜き具200では、図13に示すように、側方及び構造体8側から補助部材250に到達する水が左右の第2補助開口252、252から進入して左右の第1補助開口251、251を通過して第2開口112に案内されるので、その水を第1開口111に向けてスムーズに案内することができる。
【0132】
(実施の形態3)
図16に示すように、実施の形態3の水抜き具300は、実施の形態1の水抜き具100から板部117を無くしたものである。実施の形態3のその他の構成は実施の形態1と同様である。例えば、図示は省略するが、本体部101の後面側には、実施の形態1に係る第2開口112がそのまま存在している。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0133】
このような構成である実施の形態3の水抜き具300においても、フラップ120は、左右の軸部122、122を含めて、少なくともフラップ120の上面及び両側面が本体部101に包囲されている。これにより、この水抜き具300では、実施の形態1、2の水抜き具100、200と同様に、風雨による吹き込みにより水が構造体8側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0134】
(実施の形態4)
図17に示すように、実施の形態4の水抜き具400は、実施の形態1の水抜き具100から板部117及び第3開口113を無くしたものである。また、この水抜き具400は、実施の形態1に係る本体部101の上壁102における屋内側に位置する部分に段部402Dを設けたものである。段部402Dは、上壁102における屋外側に位置する部分よりも一段高くなっている。
【0135】
実施の形態4のその他の構成は、実施の形態1と同様である。例えば、図示は省略するが、本体部101の後面側には、実施の形態1に係る第2開口112がそのまま存在している。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0136】
このような構成である実施の形態4の水抜き具400においても、フラップ120は、左右の軸部122、122を含めて、少なくともフラップ120の上面及び両側面が本体部101に包囲されている。これにより、この水抜き具400では、実施の形態1~3の水抜き具100、200、300と同様に、風雨による吹き込みにより水が構造体8側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0137】
また、この水抜き具400では、壁構造の施工時において、外壁板2の下端2Dとサッシ89の水切り部89Aとの第1隙間S1に水抜き具400を配置してシーリング材87を充填する際に、硬化する前のシーリング材87が段部402Dにおける屋外方向を向く面に堰き止められる。このため、そのシーリング材87が第2開口112に到達し難い。その結果、壁構造の施工後、シーリング材87によって、第2開口112が狭くなることを防止できる。
【0138】
(実施の形態5)
図18及び図19に示すように、実施の形態5の水抜き具500は、実施の形態1の水抜き具100に係る本体部101の板部117よりも屋内側に位置する部分を屋内方向に延長したものである。また、この水抜き具500は、この延長部における屋内側の端縁に背面板515を接合することにより、実施の形態1に係る第2開口112を無くしたものである。
【0139】
そして、実施の形態1に係る本体部101の上壁102から第3開口113を無くし、その代わりに、上壁102における板部117よりも屋内側に第2開口512を形成している。第2開口512は、板部117が延びる方向、すなわち上向き及び横向きのうち、上向きに開口し、左右2つに分割された矩形穴である。
【0140】
実施の形態5のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。
【0141】
図19に示すように、壁構造の施工時、水抜き具500が第1隙間S1に配置されると、背面板515は、目板部材70の固定片75に沿うテープ79に当接する状態となり、第2開口512は、第2隙間S2の下方に配置される。
【0142】
このような構成である実施の形態5の水抜き具500においても、フラップ120は、左右の軸部122、122を含めて、少なくともフラップ120の上面及び両側面が本体部101に包囲されている。これにより、この水抜き具500では、実施の形態1~4の水抜き具100、200、300、400と同様に、風雨による吹き込みにより水が構造体8側に逆流することをより確実に抑制できる。
【0143】
また、この水抜き具500では、構造体8と外壁板2との間に浸入した水は、図19に矢印YW51で示すように、目板部材70の固定片75、目地部73及びテープ79に沿って移動して第2開口512に到達する。また、図19に矢印YW52で示すように、外壁板2の裏面2B及び下端2Dに沿って移動する水も、第2開口512に到達する。さらに、図2に示す外壁板2の接合部2Jに浸入し、接合部2Jに沿って外壁板2の下端2Dまで移動した水も、第2開口512に到達する。その結果、この水抜き具500では、第2開口512によって、それらの水を第1開口111まで好適に案内できる。
【0144】
以上において、本発明の形態を実施の形態1~5に即して説明したが、本発明の形態は上記実施の形態1~5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0145】
実施の形態1、2の水抜き具100、200の下壁103を無くした構成も本発明に含まれる。実施の形態3、4、5の水抜き具300、400、500についても同様である。
【0146】
実施の形態1~5では、水抜き具100、200、300、400、500が隣接する外壁板2同士の上下方向に延びる接合部2Jの下方に配置されているがこの構成には限定されない。水抜き具は、隣接する外壁板2同士の上下方向に延びる接合部から左右方向に離れた位置に配置されていてもよい。また、外壁板2から表側左右接合部21及び裏側左右接合部22を無くした構成も本発明に含まれる。
【0147】
実施の形態1の水抜き具100の本体部101に形成された傾斜面108、108の傾斜を無くして、下壁103の上面と面一な平面に変更した構成も本発明に含まれる。また、下壁103の屋内側端縁103Bの傾斜をなくした構成や、下壁103がフラップ120よりも下方かつ屋外方向に延びている構成も本発明に含まれる。
【0148】
実施の形態2では、補助部材250が水抜き具200の本体部101とは別体であるがこの構成には限定されない。例えば、補助部材は、水抜き具の本体部に一体に形成されていてもよい。
【0149】
実施の形態2に係る補助部材250について、上壁258、第1補助開口251及び第2補助開口252を無くし、案内面255の左右方向の長さが第2開口112の左右方向の内幅と等しくなるように、案内面255を拡大した構成、つまり、補助部材における第2開口に連結する部分を全て案内面にした構成も、本発明に含まれる。
【0150】
実施の形態3の水抜き具300から第3開口113をなくした構成も本発明に含まれる。
【0151】
実施の形態5の水抜き具500の第2開口512が開口する方向を上向きから横向きに変更した構成、すなわち左右の側壁104、104に第2開口が開口する構成も本発明に含まれる。
【0152】
実施の形態1~5では、施工時に、テープ79によって目板部材70の第1端部71A及び第2端部72Aの空隙を封止するがこの構成には限定されない。例えば、第1端部71A及び第2端部72Aの空隙が予めテープ等で封止されていてもよい。また、テープで第1端部71A及び第2端部72Aの空隙を封止する代わりに、樹脂板や金属板をその空隙に嵌め込むことにより、その空隙を封止してもよい。さらに、第1端部71A及び第2端部72Aについて、空隙が形成されていない目板部材を使用してもよい。
【0153】
実施の形態1~5では、第1目地部71及び第2目地部72が1つの目板部材70に形成されているがこの構成には限定されない。例えば、左右方向において互いに離間する2つの目板部材の一方に第1目地部が形成され、それらの目板部材の他方に第2目地部が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0154】
100、200、300、400、500…水抜き具
2…壁材(外壁板)
89A…水切り部
S1…壁材と水切り部との隙間(第1隙間)
111…第1開口
112、512…第2開口
101…本体部
120…フラップ
121…蓋部
122…軸部
109…内壁部
108…傾斜面
117…板部
113…第3開口
255…案内面
250…補助部材
251、252…補助開口(251…第1補助開口、252…第2補助開口)
図1
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