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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】工作物を機械加工する工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/70 20060101AFI20230518BHJP
   B23Q 1/72 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B23Q1/70
B23Q1/72 Z
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018171274
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2019077025
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】10 2017 216 446.8
(32)【優先日】2017-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505377326
【氏名又は名称】ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ズッカート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ エンゲル
(72)【発明者】
【氏名】レネ ペッシュ
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-034919(JP,A)
【文献】特開2002-160115(JP,A)
【文献】特開2000-061766(JP,A)
【文献】実開平02-150134(JP,U)
【文献】実開平05-060748(JP,U)
【文献】特開平10-052784(JP,A)
【文献】特開平11-042529(JP,A)
【文献】特開2002-346804(JP,A)
【文献】特開2003-127044(JP,A)
【文献】西独国特許第01112376(DE,B)
【文献】中国特許出願公開第102528090(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103624614(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104723155(CN,A)
【文献】特開平09-168909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 1/00-1/76
B23Q 5/00-5/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物を機械加工する工作機械であって、
少なくとも1つの垂直ガイドが配置されている支持部と、
該工作機械で工作物を機械加工する機械加工ユニットであって、前記支持部の少なくとも1つの前記垂直ガイドの上で垂直に移動可能であるように案内される前記機械加工ユニットと、
少なくとも1つの駆動装置及び少なくとも1つのギアボックスを有する駆動機構であって、前記支持部の少なくとも1つの前記垂直ガイドに沿って垂直方向に前記機械加工ユニットの移動を駆動するように指定される前記駆動機構と、
を備え、
前記機械加工ユニットは、前記駆動機構の少なくとも1つの前記ギアボックスの1つ又は複数のギアボックス部から懸架されており、該機械加工ユニットの重心が、前記駆動機構の上の該機械加工ユニットの懸架機構の有効点と連動して共通の垂直方向直線に配置されるようになっており、
前記駆動機構は、前記機械加工ユニットの前記移動中に該機械加工ユニットに対してその位置を維持するように配置され、前記支持部に対する前記懸架機構の前記有効点の位置は実質的に一貫している、工作機械。
【請求項2】
前記懸架機構の前記有効点は、1つの前記ギアボックスの場合、該懸架機構自体に配置され、複数の前記ギアボックスの場合、複数の前記ギアボックスの場合に前記懸架機構を形成する個々の前記懸架機構の中心に実質的に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記機械加工ユニットは、前記垂直方向における移動中に前記支持部に一貫したトルクが作用するように、前記駆動機構の少なくとも1つの前記ギアボックスの1つ又は複数の前記ギアボックス部から懸架されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記機械加工ユニットは、前記垂直方向における移動中に前記支持部の少なくとも1つ
の前記垂直ガイドに実質的にトルクが作用しないように、前記駆動機構の少なくとも1つの前記ギアボックスの1つ又は複数の前記ギアボックス部から懸架されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
記機械加工ユニットの前記重心は、該機械加工ユニットの前記移動中に前記垂直方向直線に沿って移動することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記駆動機構は、自動ロック駆動機構として構成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記駆動機構は、少なくとも1つのねじ駆動装置を含むことを特徴とする、請求項に記載の工作機械。
【請求項8】
1つの前記ギアボックスの場合、前記機械加工ユニットの少なくとも1つの前記垂直ガイドは、該機械加工ユニットの前記重心が、該機械加工ユニットの前記移動において前記ねじ駆動装置のねじ切りバーと実質的に同心であるように配置されるように、配置されていることを特徴とする、請求項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記ねじ切りバーは、前記垂直方向直線に対して軸方向であるように配置されていることを特徴とする、請求項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記駆動機構は、少なくとも1つのギア及びラックの組合せを含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項11】
1つの前記ギアボックスの場合、前記機械加工ユニットの少なくとも1つの前記垂直ガイドは、該機械加工ユニットの前記重心が、該機械加工ユニットの前記移動において、ギアホイールのピッチ円と前記ラックのピッチ線との接触点において実質的に案内されるように、配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記機械加工ユニットは、ワークスピンドルを支持するスピンドル担持体を備えることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項13】
前記スピンドル担持体は、ピボット軸を中心に前記ワークスピンドルを枢動させるピボット装置を備えることを特徴とする、請求項12に記載の工作機械。
【請求項14】
前記ピボット軸は、前記ワークスピンドルのスピンドル軸に対して、垂直又は斜めで配置されていることを特徴とする、請求項13に記載の工作機械。
【請求項15】
前記ワークスピンドルを保持する前記スピンドル担持体の枢動可能部であって、それにより前記ワークスピンドルが前記ピボット軸を中心に枢動可能である枢動可能部が、該枢動可能部及び前記ワークスピンドルの共通の重心が、前記ピボット軸と前記垂直方向直線との交差点に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項13又は14に記載の工作機械。
【請求項16】
前記支持部は、機械ベッドの上に配置されている機械スタンドとして構成されていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項17】
前記支持部は、水平に移動可能であるように取り付けられているスライド部を備えることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項18】
前記スライド部は、ガントリー工作機械の水平に移動可能なガントリー構造上のガイドに取り付けられるように配置されていることを特徴とする、請求項17に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物(workpiece:ワークピース)を機械加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工具支持機械加工ユニットは、特に工具支持ワークスピンドルを有する、工作機械の最も本質的な構成部品のうちの1つを表す。上記工具支持機械加工ユニットは、それが支持する工具により、工作物に対して直接、材料を取り除くプロセスを行うため、作製する部品の精度に関して重要な役割が割り当てられる。したがって、工具支持機械加工ユニットは、事前定義されたパラメーターによって記述される輪郭を可能な限り正確に工作物に与えることが、特に重要である。
【0003】
通常、上記に対して、それぞれの精度及び再現性を有する数値制御可能な軸が実質的に関与している。しかしながら、軸を制御するパラメーターは、例えば環境条件、工作物の重量等に応じて、対応する方法で補正されなければならない。
【0004】
さらに、例えば、数値制御可能な軸を作動させることにより工作機械内の質量が再配置されるとき、工作機械自体の構造が、制御パラメーターの補正の「程度」に実質的な影響を与える可能性がある。これにより、ワークスピンドルに収納される機械加工ユニットの工具の実際の位置に比較的大きいずれがもたらされる可能性があり、これらの或る程度のずれは、困難を伴わずには、かつ数値制御可能な軸の複雑な軌道補正を採用せずには、補正することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、特に、容易な軌道補正が可能となり、かつ機械加工プロセスの精度が同時に向上するように、上記問題を回避することができる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的が達成されるために、本発明により、請求項1に記載の工作物を機械加工する工作機械が提案される。従属請求項は、本発明による工作機械の有利な例示的な実施形態に関する。
【0007】
工作物を機械加工する本発明による工作機械は、少なくとも1つの垂直ガイドが配置されている支持部と、この工作機械で工作物を機械加工する機械加工ユニットであって、支持部の少なくとも1つの垂直ガイドの上で垂直に移動可能であるように案内される機械加工ユニットと、少なくとも1つの駆動装置及び少なくとも1つのギアボックスを有する駆動機構であって、支持部の少なくとも1つの垂直ガイドに沿って垂直方向に機械加工ユニットの移動を駆動するように指定される駆動機構とを備え、機械加工ユニットは、駆動機構の少なくとも1つのギアボックスの1つ又は複数のギアボックス部から懸架されており、この機械加工ユニットの重心が、駆動機構の上のこの機械加工ユニットの懸架機構(suspension)の有効点と連動して共通の垂直方向直線に配置されるようになっている。
【0008】
機械加工ユニットの重心が、懸架機構の有効点内に、又は有効点を通って延びる垂直方向直線上に位置するように配置されている、本発明による工作機械の構造により、機械加工ユニットの垂直ガイド及び水平ガイドに対して、例えば垂直ガイドの場合はわずかに小
さいトルク、又は例えば水平ガイドの場合は一貫したトルクが作用することが可能になり、上記トルクは、機械加工ユニットの質量と懸架機構の有効点からの間隔とによって生成されるものである。
【0009】
この措置により、それぞれの数値制御可能な軸の容易な軌道補正を行うことができ、その理由は、工作機械の従来の構造においてガイドに発生するトルクに著しく影響を与える機械加工ユニットの垂直位置を考慮しなければならないことが、実質的にそれほど必要でなくなるためである。これは、上記構造的措置により、ガイドに対する機械加工ユニットの質量の影響が一定のままであるため、機械加工ユニットの作動の幾何学的精度が向上し、したがって、機械加工される工作物の精度が向上することになるため、特に有利である。
【0010】
機械加工ユニットの懸架機構の最適化により、工作機械の移動部品の軌道の補正における1つの問題を、回避するか又は実質的に一貫した値に簡略化することがそれぞれ可能となり、それにより、より単純な軌道補正とは別に、工作物の製造における精度の向上を達成することができた。
【0011】
本発明による工作機械の1つの有利な改良形態において、懸架機構の有効点は、1つのギアボックスの場合、この懸架機構自体に配置され、複数のギアボックスの場合、複数のギアボックスの場合に懸架機構を形成する個々の懸架機構の中心に実質的に配置されることにある。
【0012】
それにより、機械加工ユニットの重心が、機械加工ユニットの垂直位置とは無関係に、工作機械の垂直ガイド及び水平ガイドの場合にいかなるトルクも発生させないか又は少なくとも一貫したトルクを発生させることが確実になる。
【0013】
本発明による工作機械の更なる有利な改良形態は、機械加工ユニットは、垂直方向における移動中に支持部に一貫したトルクが作用するように、駆動機構の少なくとも1つのギアボックスの1つ又は複数のギアボックス部から懸架されていることにある。
【0014】
本発明による工作機械は、機械加工ユニットは、垂直方向における移動中に支持部の少なくとも1つの垂直ガイドに実質的にトルクが作用しないように、駆動機構の少なくとも1つのギアボックスの1つ又は複数のギアボックス部から懸架されているという点で更に有利に改良することができる。
【0015】
両方の改良により、特に機械加工ユニットの移動の、工作機械内の質量の再配置によって生成される可変の荷重及びトルクによる数値制御される軸の補正の程度を低くすることができる。
【0016】
本発明による工作機械は、駆動機構が、機械加工ユニットの移動中に支持部に対してその位置を維持するように配置され、機械加工ユニットに対する懸架機構の有効点の位置は実質的に一貫しているという点で更に有利に改良することができる。
【0017】
本発明による工作機械の1つの有利な改良形態は、駆動機構が、機械加工ユニットの移動中にこの機械加工ユニットに対してその位置を維持するように配置され、支持部に対する懸架機構の有効点の位置は実質的に一貫していることにある。
【0018】
本発明による工作機械は、駆動機構及び懸架機構の有効点の両方が、機械加工ユニットの移動中に支持部に対してそれらの位置を維持するように配置されるように改良されることが更に有利である可能性がある。
【0019】
本発明による工作機械は、駆動機構及び懸架機構の有効点の両方が、機械加工ユニットの移動中にこの機械加工ユニットに対してそれらの位置を維持するように配置されているという点で更に有利に改良することができる。
【0020】
懸架機構及び上述した駆動機構の位置決めのこの4つの可能な設計実施形態は、工作機械に対する応用及び要件セットに応じて適用することができる例示的な変形として理解されるべきである。
【0021】
1つの利点は、例えば、懸架機構の有効点又は懸架点それぞれが機械加工ユニットと連動して移動する間、同時に熱源を表す駆動機構の駆動装置が、機械加工ユニットの支持体又は支持部それぞれの上に留まることとすることができる。それにより、熱源(駆動機構の駆動装置)を工作物により近接している機械加工領域から有利に遠ざけることができ、それにより、駆動装置の加熱作用は、機械加工プロセスに小さい程度にしか影響を与えない。
【0022】
対照的に、駆動機構の駆動装置が、機械加工ユニットの質量を増大させるように機械加工ユニットと連動して案内されることもまた有利である可能性がある。それにより、機械加工ユニットは、工作物の機械加工プロセスにおいて急に発生する力に対して、幾分かより大きい慣性で対応することができ、それにより、機械加工プロセスの結果にプラスの影響を与えることができる。
【0023】
本発明による工作機械は、懸架機構の有効点及び/又は機械加工ユニットの重心が、この機械加工ユニットの移動中に垂直方向直線に沿って移動するという点で有利に改良することができる。
【0024】
それにより、機械加工ユニットのガイドに作用しているトルクの状態が、機械加工ユニットの垂直位置とは無関係に、いかなる特定の程度までも変化しないことを確実にすることができる。さらに、それにより、数値制御可能な軸を補正することに関する複雑さを著しく低減させることができる。
【0025】
さらに、本発明による工作機械は、駆動機構が自動ロック駆動機構として構成されているという点で有利に改良することができる。
【0026】
自動ロック駆動機構により、機械加工ユニットを垂直軸に沿って位置決めすることができ、駆動機構は、駆動装置によって動かされることなしには、機械加工ユニットの位置のいかなる更なる調整も可能ではないため、この位置で更なる固定措置又はロック機構は不要である。
【0027】
本発明による工作機械は、駆動機構が、少なくとも1つのねじ駆動装置、好ましくは少なくとも1つのボールねじ駆動装置を含むという点で更に有利に改良することができる。
【0028】
自動ロック装置機構の応用としてねじ駆動装置が既知であり、上記ねじ駆動装置は、それぞれのねじピッチにより、ねじ支持要素(ねじ切り要素、例えば、ボールねじ、台形ねじ又は別の形態のねじを有するねじ切りバー(threaded bar))が、電気、空気圧又は液圧駆動装置によって対応して駆動される場合にのみ、機械加工ユニットの垂直位置の再調整を可能にする。
【0029】
本発明による工作機械の有利な改良形態は、1つのギアボックスの場合、機械加工ユニットの少なくとも1つの垂直ガイドは、この機械加工ユニットの重心が、この機械加工ユ
ニットの移動において、特に垂直方向直線に沿って、ねじ駆動装置のねじ切りバーと実質的に同心であるように配置されるように、配置されていることにある。
【0030】
さらに、本発明による工作機械は、ねじ切りバーが、垂直方向直線に対して軸方向であるように配置されているという点で有利に改良することができる。
【0031】
駆動機構が、例えば、垂直方向に沿って機械加工ユニットを移動させるために1つの駆動装置及び1つのギアボックスを有する場合、機械加工ユニットの重心が懸架機構の点(懸架点)に直接配置されることが、極めて有利である可能性がある。その理由は、重心が、ここではねじ切りバーの断面に直接位置し、したがって、一方では、牽引又は圧縮に関して排他的にねじ切りバーに対して応力を加え、同時に、機械加工ユニットの垂直ガイドに対し、ガイドのガイドラインからの機械加工ユニットの重心の間隔によって生成されるトルクを受け取る必要を実質的になくす、という点にある。それにより、ガイドに突き当たる力が著しく低減するため、機械加工ユニットの垂直方向における著しくより正確な案内を可能にすることができる。
【0032】
本発明による工作機械は、駆動機構が、少なくとも1つのギア及びラックの組合せ、好ましくは少なくとも1つの斜歯ギア及びラックの組合せを含むという点で有利に改良することができる。
【0033】
さらに、それぞれの駆動ギアホイールを有するラックの形態で駆動機構を具現化することができ、この実施形態は、ねじ駆動装置の自動ロック特性を有していない。
【0034】
本発明による工作機械は、1つのギアボックスの場合、機械加工ユニットの少なくとも1つの垂直ガイドは、この機械加工ユニットの重心が、この機械加工ユニットの移動において、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との接触点において実質的に案内されるという点で更に有利に改良することができる。
【0035】
この点での状態は、ねじ切りバーの状態と非常に類似しており、それにより、例えば、駆動機構が、機械加工ユニットの重心が懸架機構の点に直接配置されるように(本明細書では、懸架点は、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との間の接触点である)、機械加工ユニットを垂直方向に沿って移動させる1つの駆動装置及び1つのギアボックスを有する場合、極めて有利である可能性がある。ここでのラックには、牽引又は圧縮に関して排他的に応力が加えられ、機械加工ユニットの垂直ガイドは、ガイドのガイドラインからの機械加工ユニットの重心の間隔によって生成されるトルクを受け取ることが同時に不要になる。ガイドに突き当たる力が著しく低減するため、それにより機械加工ユニットの垂直方向における著しくより正確な案内を可能にすることができる。
【0036】
本発明による工作機械は、機械加工ユニットがワークスピンドルを支持するスピンドル担持体を備えるという点で有利に改良することができる。
【0037】
さらに、本発明による工作機械は、スピンドル担持体が、ピボット軸を中心にワークスピンドルを枢動させるピボット装置を備えるという点で有利に改良することができる。
【0038】
それにより、機械加工ユニットのワークスピンドルに対する異なる応用可能性が可能となり、その理由は、スピンドル担持体により上記ワークスピンドルをワークスピンドルの垂直位置合せに関して例えば+90度~-90度の広い角度範囲で枢動させることができるためであり、その角度範囲は、部分的により大きいように選択することもできる。これは、例えば、ワークスピンドルに対する供給ラインの屈曲挙動によって決まる可能性がある。
【0039】
本発明による工作機械において、ピボット軸は、ワークスピンドルのスピンドル軸に対して、垂直又は斜め、好ましくは45度の角度で配置されるように改良されることが更に有利である可能性がある。
【0040】
それにより、ワークスピンドル又はワークスピンドルの工具受けはそれぞれ、例えば0度~90度の角度範囲で(ピボット軸の場合、例えば、スピンドル軸に対して45度に設定される)枢動させることができる。
【0041】
本発明の工作機械の特に有利な改良形態は、結果として、ワークスピンドルを保持するスピンドル担持体の枢動可能部であって、それによりワークスピンドルがピボット軸を中心に枢動可能である枢動可能部が、この枢動可能部及びワークスピンドルの共通の重心が、ピボット軸と垂直方向直線との交差点に位置するように配置されることになる。
【0042】
それにより、ワークスピンドル又はスピンドル担持体の枢動可能部はそれぞれ、機械加工ユニットの重心のいかなる再配置も行うことなく特に有利に枢動させることができ、その理由は、ワークスピンドル及び枢動可能部の共通の重心が、枢動するにも関わらず再配置されないためである。それにより、ガイドに作用している機械加工ユニットの移動質量によって生成されるトルクの影響を、一定に又はわずかに小さいように更に維持することができる。
【0043】
本発明の工作機械の更に有利な改良形態は、支持部が、機械ベッドの上に配置されている機械スタンドとして構成されていることにある。
【0044】
それにより、機械支持体は、その機械ベッドに対する位置において、固定されているように設計することができ、それにより、機械加工ユニットにワークスピンドルの作動が直接発生する。
【0045】
本発明による工作機械は、支持部が、水平に移動可能であるように取り付けられているスライド部を備えるという点で有利に改良することができる。
【0046】
さらに、本発明による工作機械は、スライド部が、ガントリー工作機械の水平に移動可能なガントリー構造上のガイドに取り付けられるように配置されているという点で有利に改良することができる。
【0047】
有利には、本発明による工作機械の懸架機構の設計は、ガントリー工作機械の移動可能なガントリー構造においても使用することができる。
【0048】
工作物を機械加工する本発明による工作機械により、機械加工ユニットの作動において移動する質量が、機械加工ユニットの垂直位置(上記垂直位置は、本来は、そこで作用しているトルクに著しい影響を与えるものである)とは特に無関係に、ガイドに一貫したトルクを発生させるか、又は、特定のガイドでは、実際にはわずかに小さいトルクを発生させるため、各場合に案内される要素の軌道の必要な補正を簡略化することができる。これは、数値制御可能な軸のための軌道を補正する場合に有利である可能性があり、これにより、工作機械の幾何学的精度が向上したため、製造精度が向上することになる。
【0049】
更なる態様及びその利点とともに、上述した態様及び特徴の利点及びより特化したあり得る実施形態について、以下、添付の図に関する記載及び説明によって記述するが、上記記載及び説明は、決して限定するものとして解釈させるようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明による工作機械の一実施形態の斜視図を概略的に示す図である。
図2図1の本発明による工作機械の一実施形態の側面図を概略的に示す図である。
図3図1の本発明による工作機械の一実施形態の正面図を概略的に示す図である。
図4図1の本発明による工作機械の機械加工ユニットの懸架機構の詳細図を概略的に示す図である。
図5】機械加工ユニットを移動させるためのギアボックスとしてねじ駆動装置を有する、本発明による工作機械の一実施形態の詳細図を概略的に示す図である。
図6a】駆動機構が1つのギアボックス(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構の有効点を概略的に示す図である。
図6b】駆動機構が2つのギアボックス(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構の有効点を概略的に示す図である。
図6c】駆動機構が3つのギアボックス(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構の有効点を概略的に示す図である。
図7a】垂直ガイドの変更された配置を有する本発明による工作機械の一実施形態を概略的に示す図である。
図7b】垂直ガイドの変更された配置を有する本発明による工作機械の一実施形態を側面図で概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
添付の図を参照して、本発明の例又は例示的な実施形態それぞれについて、以下詳細に説明する。本明細書の図において同じか又は同様の要素は、同じ参照符号によって参照する可能性がある。本発明は、以下に記載する例示的な実施形態に及びその具現化された特徴に決して限定も制限もそれぞれされるものではなく、例示的な実施形態の変更形態、特に、それぞれ記載した例の特徴の変更により又は記載した例の個々の特徴若しくは複数の特徴の組合せにより、独立請求項の保護の範囲に含まれるそれらの変更形態を、更に含むことが留意されるべきである。
【0052】
図1は、本発明による工作機械100の一実施形態の斜視図を例示的に概略的に示す。工作機械100は、例示的に、ガントリー構造であり、機械足部の上に設置することができる機械ベッド70と、工作物クランプテーブル80とを有し、工作物クランプテーブル80の上に、例示的に上記機械ベッド70の上に配置されている工作物を機械加工のためにクランプすることができる。
【0053】
図2は、図1の本発明による工作機械の一実施形態の側面図を例示的に概略的に示す。図3は、図1の本発明による工作機械の一実施形態の正面図を例示的に概略的に示す。
【0054】
水平ガイド71が、例示的に、機械ベッド70の両側にX方向に水平に配置されており、ガントリースタンド60が、例示的に、上記水平ガイド71の上でX方向において水平に移動可能であるように案内される。ガントリースタンド60の水平移動が駆動されるために、それぞれのねじ切りバー72が、例示的に、ガイド71と平行であるように両側に配置されており、上記ねじ切りバー72は、例示的に、駆動装置73によって駆動される。
【0055】
水平ガイド61が、例示的に、ガントリースタンド60の前側にY方向において水平に配置されており、支持部30が、例示的に、上記水平ガイド61の上でY方向において水平に移動可能であるように案内される。支持部の水平移動が駆動されるために、ねじ切りバー62が、例示的に、ガイド61と平行であるように配置されており、上記ねじ切りバ
ー62は、例示的に、駆動装置63によって駆動される。
【0056】
機械加工ユニット10が、例示的に、Z方向において垂直に移動可能であるように、支持部30の上に保持されており、例示的に、工具支持ワークスピンドル16が例示的に配置されているスピンドル担持体ユニット13が、機械加工ユニットの下側に保持されている。スピンドル担持体ユニット13は、例示的に、垂直軸を中心に回転するように更に指定され、さらに、スピンドル担持体ユニット13は、例示的に、水平ピボット軸を更に有する。図5による代替の実施形態では、ピボット軸を斜角で(例えば、垂直回転軸に対して45度)傾斜させることもできる。
【0057】
回転軸及びピボット軸により、上述した軸X、Y及びZの3並進自由度に加えて、ワークスピンドル16にクランプされた工具と工作物クランプテーブル80にクランプされた工作物との相対移動の2回転自由度が提供される。したがって、工作機械100は、例示的に、5軸工作機械として構成されている。
【0058】
機械加工ユニット10は、例示的に、垂直ガイド18によって垂直に移動可能である。しかしながら、本発明による機械加工ユニット10は、ガイド18によって支持部30から懸架されているのではなく、例示的に、支持部30に例示的に締結されている懸架部50から懸架されている。例示的に、機械加工ユニット10に、2つのねじ切りバー22が垂直に配置されており、上記2つのねじ切りバー22は、機械加工ユニット10の上側で駆動装置21によって駆動される。
【0059】
図4は、図1からの本発明による工作機械の機械加工ユニットの懸架機構の詳細図を示す。機械加工ユニット10は、例示的に、ねじ切りバー22が懸架部50において懸架点11から懸架されているという点で、懸架部50における懸架点11から懸架されている。
【0060】
図6bの方法と類似する方法で、本明細書における機械加工ユニット10の懸架機構は、2つの懸架部50の2つの懸架点11を有するように具現化され、上記2つの懸架点11は水平面に位置し、懸架機構の有効点12は、厳密に2つの懸架部50の懸架点11の間に位置する(この目的で図6bを参照されたい)。本発明によれば、機械加工ユニット10は、懸架機構の有効点12と水平直線上にある、スピンドル担持体ユニット13を有する機械加工ユニット10全体の重心101が、厳密に2つの懸架部50の懸架点11の間に位置するように、設計されている(図5及びその説明による原理も参照されたい)。
【0061】
したがって、機械加工ユニット10の垂直Z位置とは無関係に、スピンドル担持体ユニット13を有する機械加工ユニット10の重量全体が、ねじ切りバー22が懸架される2つの懸架点11に常に均等に圧力をかける。これには、機械加工ユニット10のZ位置とは無関係に、Z方向における機械加工ユニット10の移動において常に同じ重量が懸架部50から懸架され、したがって、懸架部50により支持部30に対して常に同じトルクが作用する、という有利な効果がある。本明細書における機械加工ユニット10の垂直ガイド18は、支持部のガイド要素32に対して常に応力が取り除かれ、したがって、実質的にこのガイドに対していかなるトルクも発生しない。
【0062】
さらに、懸架部50により、機械加工ユニット10のZ位置とは無関係に、支持部30に対して常に同じトルクが作用し、それにより、機械加工ユニット10のZ位置とは無関係に、ガントリー部60の前側において支持部30の水平ガイド61にも常に同じトルクが作用し、それにより、位置決め精度は、(例えば、CNC機械コントローラーの数値補償により)一度設定しなければならないが、ガントリー部60に対して支持部30から作用する力及びトルクは機械加工ユニット10のZ位置とは無関係であるため、Z位置によ
って決まるいかなる補償作用も行う必要はない。
【0063】
図5は、機械加工ユニット10を移動させるためのギアボックス22としてねじ駆動装置を有する、本発明による工作機械100の一実施形態の詳細図を、例示的に概略的に示す。
【0064】
本明細書における機械加工ユニット10は、例示的に、懸架機構11により支持部30に接続されており、懸架機構11は、垂直方向に、(本明細書では例示的にギアボックス22として)回転可能に取り付けられたねじ切りバーによって再調整可能であり、ねじ切りバーは、ねじ切りバーを回転させることにより、支持部30に対する機械加工ユニット10の位置を垂直方向に再調整することができるような例示的な方法で、駆動装置21によって駆動可能である。
【0065】
本明細書では、図5に見られるような実施形態において、ねじ切りバーは、回転しているとき、垂直方向において機械加工ユニット10の移動に追従することが分かる。これは、駆動機構20の駆動装置21及びギアボックス22が、機械加工ユニット10に固定して接続され、懸架機構11が、支持部30に固定して接続されていることを意味する。
【0066】
さらに、図5において工作機械100の構造の側面図に視覚化しているように、機械加工ユニット10の重心101が、例示的に側面視でねじ切りバーの上に位置することが分かる。駆動機構20が、機械加工ユニット10の垂直位置決めのために1つの駆動装置21及び1つのギアボックス22のみを有する場合、機械加工ユニット10の重量全体が、ガイド18、32がなくても、牽引/圧縮に関してねじ切りバーに対して一様にかつZ位置とは無関係に応力を加えるために、重心101は、したがって、1つのねじ切りバーに実質的に位置する。2つのねじ切りバーが設けられる場合(図3を参照されたい)、懸架機構の有効点12は、厳密に懸架点11の間にあり、機械加工ユニット10の重量全体が、ガイド18、32がなくても、牽引/圧縮に関してねじ切りバーに対して一様にかつZ位置とは無関係に応力を加えるために、重心101は、したがって、ねじ切りバーの間に実質的に位置する。
【0067】
これには、機械加工ユニット10の垂直移動においてかつ機械加工ユニット10の様々な位置において、(懸架機構11の有効点12と一致する)懸架機構11の重心101からの間隔により、実質的にいかなるトルクも生成されないため、ガイド18、32に対して、有意な程度まで応力が取り除かれるという利点がある。したがって、機械加工ユニット10のガイド18、32は、著しく低い荷重に対して構想することができ、及び/又は、機械加工ユニット10の垂直位置決め中に案内される長さ全体にわたって、機械加工ユニット10のより高い案内精度を保証することができる。
【0068】
本発明による工作機械100の構造により、荷重の吸収と案内精度との間に或る程度の分離がある。それとは対照的に、従来の構造の場合、案内精度と荷重の吸収の大部分とは、それぞれのガイドによって確立される。これにより、ガイドによって荷重が大部分吸収されなければならない場合、ガイドに沿って移動可能な質量又は荷重それぞれの再配置においてガイドが変形することになる可能性がある。ガイドが、無限に剛性があるように決して構成することができないことにより、従来の構造の場合、案内の精度と荷重の吸収との間に常に妥協を見出さなければならない。
【0069】
本発明による工作機械100により、特に、機械加工ユニット10の重心101がねじ切りバーに位置するように、機械加工ユニット10の荷重/質量全体が駆動機構20に(又は、図5に示すように、それぞれギアボックス22のねじ切りバーに)圧力をかけるため、こうした妥協を大幅に回避することができる。それにより、(懸架機構11の有効点
12と一致する)懸架機構11の重心101からの間隔によるトルク(上記トルクは、ガイド18、32によって吸収されなければならない)の生成が回避される。それにより、ガイド18、32は、機械加工ユニット10の垂直位置決めのために著しく低い荷重のみを吸収すればよく、これにより、ガイド18、32の全長にわたる案内精度が大幅に向上することになる。
【0070】
駆動装置21及びギアボックス22を有する駆動機構20の構造とは別に、機械加工ユニット10の垂直位置決めに対して、例えば、2つ以上の駆動装置21と対応して2つ以上のギアボックス22とがまたあり得る。これにより、懸架機構11の有効点12は、懸架機構11のそれぞれの配置の中心に実質的に位置することになる(例えば、図6b及び図6cを参照されたい)。機械加工ユニット10の重心101は、この例では、機械加工ユニット10の重心101と懸架機構11の有効点12とが、共通の垂直方向直線23を有するように位置決めされる。この例では、本明細書では垂直方向直線23の重心101からの間隔により、ガイド18、32によって吸収されなければならないいかなる実質的なトルクも生成されることなく、機械加工ユニット10の重心101は、機械加工ユニット10の垂直位置決め中に上記垂直方向直線23に沿って移動することができる。
【0071】
しかしながら、少なくとも1つの駆動装置21と少なくとも1つのギアボックス22とを有する駆動機構20が支持部30に締結され、それにより、懸架機構11が、機械加工ユニット10に締結され、かつ機械加工ユニット10の垂直位置決めにおいて、機械加工ユニット10と連動して移動するように、本発明による工作機械100を構成することもできる。
【0072】
ねじ切りバーを有する駆動機構20の設計実施形態とは別に、駆動機構20はまた、ラック及びギアホイールの組合せとして具現化することもできる。本明細書における駆動装置21は、(例えば、電気的に、液圧式に又は空気圧式に)ギアホイールを回転させ、それにより、対応して並進するようにラックを移動させる。
【0073】
本明細書におけるねじ切りバーを有する駆動機構20の実施形態と比較した実質的な相違は、駆動機構20とともに懸架機構11の有効点12(この場合、この有効点12は、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との間の接触点にある)の両方が、それらの支持部30に対する位置を維持し(駆動機構20は、この例では支持部30に対して締結されている)、又は機械加工ユニット10に対する位置を維持する(駆動機構20は、この例では機械加工ユニット10に締結されている)という点にある。
【0074】
機械加工ユニット10は、ワークスピンドル16が設けられるスピンドル担持体13を更に有する。スピンドル担持体13により、例えば、機械テーブルの上に又は別の装置の上若しくは中にそれぞれクランプされるクランプ済みの工作物を、機械加工ユニット10の作動により工作機械100の数値制御可能な軸を制御するプログラムに対応して機械加工することができる。
【0075】
スピンドル担持体13は、ピボット装置14を更に有することができ、それにより、ピボット軸17に従って、ワークスピンドル16が設けられるスピンドル担持体13の枢動可能部15を枢動させることができる。
【0076】
本明細書におけるピボット軸17は、スピンドル担持体13の枢動可能部15が+90度~-90度の角度範囲で枢動するのを可能にすることができる。それぞれのピボット軸17を有するピボット装置14の更なる実施形態は、ピボット軸17が、垂直方向直線23に又はワークスピンドル16のスピンドル軸に関してそれぞれ、好ましくは45度の角度で位置合せされるというものであり得る。それにより、スピンドル担持体13の枢動可
能部15に設けられるワークスピンドル16のスピンドル軸を、0度~90度の角度範囲で枢動させることができる。
【0077】
ワークスピンドル16とスピンドル担持体13の枢動可能部15との共通の重心が、ピボット軸17と垂直方向直線23との交差点に配置されるように、ピボット軸17を特に有利に位置合せすることができる。それにより、ワークスピンドル16とスピンドル担持体13の枢動可能部15との共通の重心のいかなる再配置もなしに、したがって、機械加工ユニット10の重心(全体的な重心)のいかなる再配置も発生することなく、ピボット軸17を中心にワークスピンドル16を枢動させることができる。
【0078】
図5の例示的な実施形態に図示するように、機械加工ユニット10は、断面が矩形であるガイドレール18を有するガイド18、32によって案内される。本明細書におけるガイドレール18は、機械加工ユニット10に固定して接続されており、それにより、上記ガイドレール18は、機械加工ユニット10の垂直位置決めに追従する。支持部30に固定して接続されているガイドスライド32が、支持部30に対する機械加工ユニット10の確実かつ正確な案内を保証する。
【0079】
本明細書におけるガイド18、32の設計実施形態は、大きく変更することができる。ガイドレール18の矩形断面とは別に、ガイドレール18に対して、例えば、丸いか又は三角形の断面もまた有利である可能性がある。上述したあり得る設計実施形態は網羅的ではなく、単に例として理解されるべきである。
【0080】
レール18の断面と、対応して選択されるべきガイドスライド32の形状とは別に、ガイド18、32のタイプもまた、非常に可変に設計することができる。従来の摩擦ガイドとは別に、いわゆるボール循環式ガイドもまた使用することができ、本明細書におけるボールの循環は、ガイドスライド32に常に提供される。上記ボール循環式ガイドには、非常に剛性があるように具現化することができ、そこで、従来の摩擦ガイドより著しく低い摩擦係数又は抵抗係数をそれぞれ有することができるという利点がある。
【0081】
支持部30は、スライド部31を更に有することができ、それにより、垂直に案内される機械加工ユニット10を水平方向に沿って移動させることができる。スライド部31は、ガイドレール18用の支持構造体として、又はガイドスライド32用の支持構造体として更に使用することができ、本明細書ではともに機械加工ユニット10の垂直位置決め用の駆動装置21及びギアボックス22並びに機械加工ユニット10の水平位置決め用の駆動装置及びギアボックスを有することができ、そこでは、スライド部31は、水平位置決め中に連動して移動する。
【0082】
図6aは、駆動機構20が1つのギアボックス22(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構11の有効点12を概略的に示す。それにより、懸架機構11の有効点12は、ねじ駆動装置(ねじ切りバー)に直接位置し、それにより、機械加工ユニット10の重心101は、有利に、有効点12に直接配置されるか、又は少なくとも垂直方向直線23(図6aには図示せず、この目的で図5を参照されたい)に位置する。機械加工ユニット10の垂直位置決めにより、機械加工ユニット10の重心101は、垂直方向直線23に沿って案内され、したがって、工作機械100のそれぞれのガイド(例えば、ガイド18、32)において一貫したトルク又はごくわずかに小さいトルクを発生させる。
【0083】
図6bは、駆動機構20が2つのギアボックス22(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構11の有効点12を概略的に示す。それにより、懸架機構11の有効点12は、2つの懸架機構11(実質的にねじ切りバーの中心に位置するその懸架点を有する)の中心に実質的に位置し、それにより、有効点12は、懸架機構11から実質的に同
一の間隔(L1=L2)を有する。それにより、機械加工ユニット10の重心101は、有利に有効点12に直接配置することができるか、又は、少なくとも垂直方向直線23(図6bには図示せず、この目的で図5を参照されたい)に位置することができる。そのために、機械加工ユニット10の垂直位置決め、ここでの機械加工ユニット10の重心101もまた、垂直方向直線23に沿って案内することができ、それにより、この重心101は、工作機械100のそれぞれのガイド(例えば、ガイド18、32)に一貫したトルク又はごくわずかに小さいトルクを発生させる。
【0084】
図6cは、駆動機構20が3つのギアボックス22(ここでは、ねじ駆動装置)を有する場合の懸架機構11の有効点12を概略的に示す。それにより、懸架機構11の有効点12は、3つの懸架機構11(実質的にねじ切りバーの中心に位置するその懸架点を有する)の空間的配置の中心に実質的に位置し、それにより、有効点12は、懸架機構11から実質的に同一の間隔(L1=L2=L3)を有する。それにより、機械加工ユニット10の重心101は、有利に有効点12に直接配置することができるか、又は、少なくとも垂直方向直線23(図6bには図示せず、この目的で図5を参照されたい)に位置することができる。そのために、機械加工ユニット10の重心101はこの点でもまた、機械加工ユニット10の垂直位置決めにより、垂直方向直線23に沿って案内することができ、ここでもまた、重心101は、工作機械100のそれぞれのガイド(例えば、ガイド18、32)に一貫したトルク又はごくわずかに小さいトルクを発生させる。
【0085】
ギア及びラックの組合せを有する駆動機構20の一実施形態の場合の有効点12の位置は、図6a~図6cに図示するように、ねじ駆動装置の場合の有効点12の位置に関して類似する。これは、1つのラック及び1つのギアホイールの場合、懸架機構11の有効点12は、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との接触点に直接位置する(この目的で、図6a及びそれぞれの説明を参照されたい)こと、2つのラックと対応して2つのギアホイールとの場合、懸架機構11の有効点12は、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との接触点の中心(L1=L2)に実質的に位置する(この目的で、図6b及びそれぞれの説明を参照されたい)こと、及び、3つのラックと対応して3つのギアホイールとの場合、懸架機構11の有効点12は、ギアホイールのピッチ円とラックのピッチ線との接触点の空間的配置の中心(L1=L2=L3)に実質的に位置する(この目的で、図6c及びそれぞれの説明を参照されたい)ことを意味し、したがって、工作機械100のそれぞれのガイド(例えば、ガイド18、32)において一貫したトルク又はごくわずかに小さいトルクを発生させる。
【0086】
図7aは、垂直ガイド18、32の変更された配置を有する、本発明による工作機械100の一実施形態を概略的に示す。図7aでは、変更された垂直ガイド18、32の設計実施形態を幾分かよりよく見ることができるように、本明細書において1つの駆動装置21及び1つのギアボックス22を有する駆動機構20は図示していない。
【0087】
ガイド18、32は、ガイドスライド32がここでは機械加工ユニット10に締結され、それにより、機械加工ユニット10の垂直位置決めにおいて上記スライドガイド32が一緒に移動するように、変更されている。したがって、ガイドレール18は、支持部30に又はスライド部31に対応して締結されている。
【0088】
ガイド18、32のこうした設計実施形態の場合、スピンドル担持体13に保持されているワークスピンドル16、又はワークスピンドル16から受け取られる工具のそれぞれの垂直間隔が、ガイドスライド32に関して常に一貫しており、それにより、ガイドスライド32が、機械加工ユニット10のいかなる任意の位置においても支持点として機能するという利点がある。例えば、工具に対して、水平方向に作用する力が生成される場合、機械加工ユニット10は、支持点(本明細書では、ガイドスライド32)により、支持部
30に又はスライド部31に固定して接続される変形構造体のように挙動する。
【0089】
例えば、工具に作用する既知の力の場合、及び、機械加工ユニット10の既知の構造条件の場合、機械加工ユニット10の剛性挙動は、ここでは、有利に非常に容易に予測することができる。支持点(ガイドスライド32)が、機械加工ユニット10に関して常に同じ位置を有するため、機械加工ユニット10の剛性挙動は、支持部30/スライド部31に対する機械加工ユニット10の全ての垂直位置において一貫しており、その理由は、ワークスピンドル16、又はワークスピンドル16に収納される工具それぞれと、支持点(ガイドスライド32)との間の間隔のいかなる変更も行われないためである。これにより、ここで、機械加工ユニット10の垂直位置決めとは無関係に、数値制御された軸の非常に正確な補正が可能になる。
【0090】
図7bは、垂直ガイド18、32の変更された配置を有する、本発明による工作機械100の一実施形態を側面図で概略的に示す。図7bでも、変更された垂直ガイド18、32の設計実施形態を幾分かよりよく見ることができるように、本明細書において1つの駆動装置21及び1つのギアボックス22を有する駆動機構20は図示していない。
【0091】
図7aと比較すると、図7bにおける機械加工ユニット10は、2つの異なる垂直位置で更に示しており、図では左側の機械加工ユニット10は、垂直下方位置に見ることができ、図では右側の機械加工ユニット10は、垂直上方位置に見ることができる。
【0092】
2つの図を比較した場合、いかにガイドスライド32は、機械加工ユニット10のそれぞれの垂直位置において機械加工ユニット10に追従し、それにより、ワークスピンドル16又はワークスピンドル16に収納される工具それぞれのガイドスライド32からの間隔が、常に一貫しているかが分かる。これにより、既に上述したように、機械加工ユニット10の垂直位置とは無関係に、既知の力の場合に常に同一の剛性挙動がもたらされる。
【符号の説明】
【0093】
10 機械加工ユニット
11 懸架機構
12 懸架機構の有効点
13 スピンドル担持体
14 ピボット装置
15 スピンドル担持体の枢動可能部
16 ワークスピンドル
17 ピボット軸
18 ガイドレール(Zガイド)
20 駆動機構
21 駆動装置(Z-駆動装置)
22 ギアボックス(ねじ切りバー)
23 垂直方向直線
30 支持部
31 スライド部
32 ガイドスライド
50 懸架部
60 ガントリー部
61 ガイド(Yガイド)
62 ねじ切りバー
63 Y-駆動装置
70 機械ベッド
71 ガイド(Xガイド)
72 ねじ切りバー
73 X-駆動装置
80 工作物クランプテーブル
100 工作機械
101 機械加工ユニットの重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b