(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】樹脂組成物、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20230518BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20230518BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20230518BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230518BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230518BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G03F7/027 515
C08F290/00
C08G59/18
G03F7/004 501
G03F7/004 512
H05K1/03 610L
H05K3/28 D
H05K3/28 F
(21)【出願番号】P 2018182665
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐川 成弘
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】石附 直弥
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-214057(JP,A)
【文献】特開2017-120395(JP,A)
【文献】特開2015-92228(JP,A)
【文献】特開2015-7759(JP,A)
【文献】特開2017-107182(JP,A)
【文献】特開2015-64546(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159381(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089987(WO,A1)
【文献】特開2016-147945(JP,A)
【文献】特開2005-24659(JP,A)
【文献】特開2001-278947(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172433(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン性不飽和基およびカルボキシル基を含む樹脂、
(B)平均粒径が0.5μm以上2.5μm以下である無機充填材、
(C)エポキシ樹脂、並びに、
(D)光重合開始剤
を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分が、(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂を含有し、
(A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S
(A)が、以下の式(I):
5≦S
(A)≦110 ・・・(I)
を満たし、
ここで、
(B)成分の平均粒径は、レーザー回折・散乱法により測定された体積基準の粒度分布のメディアン径であり、
溶解速度は、厚み約2μmの樹脂膜を形成し、23℃のアルカリ溶液としての1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(pH:11.7)に浸漬した場合における、1秒あたりの樹脂膜の厚み[nm]の減少量を示し、ここで、厚み約2μmの樹脂膜の形成は、スピンコートで塗布膜を形成し、その後、該塗布膜を120℃で3分間乾燥することによって行われる、
樹脂組成物。
【請求項2】
プリント配線板のソルダーレジストを形成するための樹脂組成物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
【請求項4】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板では、はんだが不要な部分へはんだが付着するのを抑制するとともに、回路基板が腐食するのを抑制するための永久保護膜として、ソルダーレジストを設けることがある。ソルダーレジストとしては、例えば特許文献1に記載されているような感光性樹脂組成物を使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソルダーレジストは、基板間をはんだ付けして接続するため、配線パターンを有する導体層の一部が露出するような微細な開口パターンを有することが求められている。また、はんだの密着性の観点から、この開口部の断面形状は、逆テーパ状にならないことが求められており、特に、開口部の側面が層平面に対して垂直に近いことが求められている。ここで、逆テーパ状の断面形状とは、開口部の径が奥の方ほど広い形状をいい、具体的には、開口頂面よりも開口底面が広い形状をいう。本明細書では、このように断面形状が逆テーパ状になりにくい性質を「アンダーカット耐性」に優れるということがある。なお、上述の課題は、樹脂組成物を用いてソルダーレジストを形成する場合以外においても生じる課題である。
【0005】
本発明の課題は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂、(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、(C)エポキシ樹脂、並びに、(D)光重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)成分が、(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂を含有する、樹脂組成物を用いることにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
また、本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂、(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、(C)エポキシ樹脂、並びに、(D)光重合開始剤を含有する樹脂組成物であって、(A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)が、以下の式(I):
5≦S(A)≦110 ・・・(I)
を満たす樹脂組成物を用いることにより、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂、
(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、
(C)エポキシ樹脂、並びに、
(D)光重合開始剤
を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分が、(A-1) ナフタレン骨格含有樹脂を含有する、樹脂組成物。
[2] (A-1)成分が、ナフトールアラルキル型樹脂である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A-1)成分の含有量が、(A)成分中の不揮発成分を100質量%とした場合、5質量%以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、10質量%以上30質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (A)成分が、(A-2) (A-1)成分以外の酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)が、以下の式(I):
5≦S(A)≦110 ・・・(I)
を満たす、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (A)エチレン性不飽和基およびカルボキシル基を含む樹脂、
(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、
(C)エポキシ樹脂、並びに、
(D)光重合開始剤
を含有する樹脂組成物であって、
(A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)が、以下の式(I):
5≦S(A)≦110 ・・・(I)
を満たす、樹脂組成物。
[9] プリント配線板のソルダーレジストを形成するための樹脂組成物である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する、感光性フィルム。
[11] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する支持体付き感光性フィルム。
[12] [1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含むプリント配線板。
[13] [12]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物;当該樹脂組成物を用いて得られる、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施例において用いた評価用積層体の断面図であって、絶縁層に形成された丸形のビアホールの中心軸を通る平面で切断したときの状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物]
以下、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物について詳細に説明する。
【0012】
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂、(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、(C)エポキシ樹脂、並びに、(D)光重合開始剤を含有する樹脂組成物である。第一実施形態に係る樹脂組成物の(A)成分は、(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂を含有する。本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物を用いることにより、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0013】
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(E)反応性希釈剤、(F)有機溶剤、(G)その他の添加剤を含み得る。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂>
樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂を含有する。
【0015】
エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基が挙げられ、光ラジカル重合の反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基、アクリロイル基及びこれらの組み合わせを包含する。(A)成分は、エチレン性不飽和基を含むため、光ラジカル重合が可能である。(A)成分の1分子当たりのエチレン性不飽和基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。また、(A)成分が1分子当たり2個以上のエチレン性不飽和基を含む場合、それらのエチレン性不飽和基は、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0016】
また、(A)成分がカルボキシル基を含むため、当該(A)成分を含有する樹脂組成物は、アルカリ溶液(例えば、アルカリ性現像液としての1質量%の炭酸ナトリウム水溶液)に対し溶解性を示す。(A)成分の1分子当たりのカルボキシル基の数は、1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0017】
本実施形態では、(A)成分は、(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂を含有する。(A)成分は、必要に応じて、さらに(A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み得る。この(A-2)成分は、(A-1)成分以外の(A)成分の一例である。
【0018】
<(A-1)ナフタレン骨格含有樹脂>
(A-1)成分は、(A)成分に属する樹脂であるため、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含有する樹脂である。このため、(A-1)成分は、光ラジカル重合が可能であり、かつ、(A-1)成分を含有する樹脂組成物は、いずれも、アルカリ溶液に対し溶解性を示す。
【0019】
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高めることができる。また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のエチレン性不飽和基を持つことが好ましい。これにより、架橋位置(架橋点)を調整できるので、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性をコントロールすることができる。より好ましくは、エチレン性不飽和基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。エチレン性不飽和基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基(例えば、エポキシ基、グリシジル基)で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基を導入することができる。
【0020】
(A-1)成分は、1分子中に、複数個のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、樹脂組成物のアルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対する溶解性を高めることができる。(A-1)成分は、ナフタレン骨格1個につき、2個以下のカルボキシル基を持つことが好ましい。これにより、溶解性の制御ができる。より好ましくは、カルボキシル基は、ナフタレン骨格が有する置換基に含まれている。カルボキシル基をナフタレン骨格の置換基に含ませるためには、第1の前駆体として、例えば、ナフトールのOH基のH原子が、エポキシ基を含有する置換基で置換された化合物を用意し、第1の前駆体に対して、エチレン性不飽和結合を有する化合物(例えば不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸)を付加させ、これによって2級水酸基を有する第2の前駆体を得て、第2の前駆体に対して、カルボン酸無水物(例えばテトラヒドロフタル酸)を付加させることで得ることができる。これにより、ナフタレン骨格が有する置換基に、エチレン性不飽和基と、カルボキシル基の双方を導入することができる。
【0021】
また、(A-1)成分は、ナフタレン骨格含有樹脂である。ナフタレン骨格含有樹脂とは、1分子中に1個以上のナフタレン骨格を含有する化合物をいう。(A-1)成分は、(C)~(E)成分に対して良好に混ざり合うことができるので、樹脂組成物における組成の偏りを抑制できる。また、(A-1)成分は、アルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対して適切な範囲の溶解速度で溶解できる。また、(A-1)成分を含む樹脂組成物をアルカリ性現像液で現像した場合に、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が樹脂組成物中に局所的に発生することを抑制できる。したがって、樹脂組成物のアンダーカット耐性を改善でき、好ましくは開口パターンの側面を層平面に対して垂直に近づけることができる。
【0022】
また、(A-1)成分として、ナフタレン骨格含有樹脂を用いると、通常は、分子の剛性が高くなるので樹脂組成物中の分子の動きが抑制され、その結果、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度がより高くなり、硬化物の平均線熱膨張率がより低下する。さらに、(A-1)成分の作用により、通常は、熱膨張又は熱収縮によって生じる内部応力に対する硬化物の耐性が向上するので、温度変化による硬化物の破損を抑制することができる。
【0023】
(A-1)成分は、1分子中に、1つのナフタレン骨格を含んでいてもよく、2個以上のナフタレン骨格を含んでいてもよい。
【0024】
(A-1)成分は、例えば、下記式(1)に示す構造を含有する樹脂である。(A-1)成分は、下記式(1)に示す構造を複数個(例えば1~10個、好ましくは1~6個)有していてもよく、下記式(1)に示す構造を複数個有する場合、(A-1)成分は、それら複数個の下記式(1)に示す構造を構造単位(繰り返し単位)として含んでいてもよい。また、下記式(1)中、R1と結合した結合手は、ナフタレン骨格が有する炭素原子のうち結合可能な炭素原子のいずれに結合していてもよい。よって、R1が結合した結合手は、R1及びOR’以外と結合した式(1)中の結合手(以下、「末端結合手」ということがある。)と、同じベンゼン環の炭素原子と結合していてもよく、異なるベンゼン環の炭素原子と結合していてもよい。例えば、ナフタレン骨格における末端結合手と、R1と結合した結合手との位置の組み合わせは、1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、1,7位、1,8位、2,3位、2,6位、2,7位であってもよい。
【0025】
【0026】
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。R1の炭素原子数は、通常1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6である。また、アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、等が挙げられる。
【0027】
R1及びR2が有しうる置換基は、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールアルキル基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、オキソ基等が挙げられる。
【0028】
上記式(1)中、Xは、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Xの炭素原子数は、通常6~30、好ましくは6~20、より好ましくは6~10である。アリーレン基は、例えば、フェニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ビフェニレン基である。
【0029】
Xが有しうる置換基は、例えば、R1及びR2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
【0030】
上記式(1)において、aは、0又は1を表す。ここで、aは、基Xの数である。
【0031】
上記式(1)において、sは、0又は1を表す。ここで、s及びtは、それぞれ、基R1及び基R2の数である。また、上記式(1)において、tは、0又は1を表す。ただし、s及びtは、s+tが0にはならない。中でも、a=1の場合、s及びtがいずれも1であることが好ましい。a=0の場合、s及びtの一方が0であることが好ましい。
【0032】
上記式(1)中、OR’は、ナフタレン骨格上の置換基である。上記式(1)中、R’は、それぞれ独立してエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む有機基を表す。
【0033】
R’は、好ましくは、下記式(2)に示す基を表す。
【化2】
【0034】
上記式(2)中、R3は、3価の基を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい3価の炭化水素基(ただし、炭素-炭素結合(C-C結合)の間にヘテロ原子が介在していてもよい)を表し、中でも、置換基を有していてもよい3価の脂肪族炭化水素基が好ましい。このR3は、置換基を有していてもよいエポキシ基含有置換基の3価の残基であってもよい。R3が有しうる置換基は、例えば、R1及びR2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。
【0035】
上記式(2)中、R4は、エチレン性不飽和基を含む有機基を表す。エチレン性不飽和基を含む有機基の好ましい例としては、(メタ)クリロイルオキシ基が挙げられる。「(メタ)クリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基及びそれらの組み合わせを包含する。
【0036】
上記式(2)中、R5は、カルボキシル基を含む有機基である。カルボキシル基を含む有機基の例は、-OCO-R6-COOHである。ここで、R6は、2価の基を表す。R6としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましい。R6の炭素原子数は、通常1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖状若しくは分岐鎖状の非環式アルキレン基;飽和若しくは不飽和の2価の脂環式炭化水素基;フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等が挙げられる。中でも、2価の脂環式炭化水素基及びアリーレン基が好ましく、4-シクロヘキセニレン基及びフェニレン基が特に好ましい。また、R6が有しうる置換基は、例えば、R1及びR2が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。-OCO-R6-COOH中の-CO-R6-COOHは、通常、カルボン酸無水物の残基である。カルボン酸無水物の例は、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物である。
【0037】
上記式(1)中、cは、通常1~6、好ましくは1~3、より好ましくは1~2の整数を表す。ここで、cは、基OR’の数である。
【0038】
<(A-1)成分の第1の例(a=1)>
(A-1)成分の好ましい例は、ナフトールアラルキル型樹脂である。「ナフトールアラルキル型樹脂」とは、ナフトールアラルキレン基からOH基のH原子を除いた構造の基を含有する樹脂である。
【0039】
好ましいナフトールアラルキル型樹脂は、上記式(1)においてa=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(3)に示す構造を含有する樹脂である。
【化3】
【0040】
上記式(3)中、R1、R2、X、s、t、R’及びcは、前述と同じである。s及びtがいずれも1であることが好ましい。
【0041】
ナフトールアラルキル型樹脂のより好ましい樹脂は、上記式(3)において、c=1、s=1、かつ、t=1の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(4)又は(5)に示す構造の2価の基を含有するナフトールアラルキル型樹脂である。
【0042】
【0043】
【0044】
上記式(4)又は(5)中、R1、R2、X、R’及びcは、前述と同じである。上記式(4)又は(5)に示されるナフトールアラルキル型樹脂は、後述する合成例2で用いたナフトールアラルキル型エポキシ樹脂Bを材料として合成可能な樹脂である。ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂Bは、例えば、新日鉄住金化学株式会社製「ESN-475V」(エポキシ当量325)として入手可能である。
【0045】
<(A-1)成分の第2の例(a=0)>
(A-1)成分のうち、ナフトールアラルキル型樹脂以外(a=0)の好ましい例は、上記式(1)において、c=2、s=1、かつ、t=0の構造を含有する樹脂であり、例えば、下記式(6)に示す構造の2価の基を含有するナフタレン骨格含有樹脂である。
【化6】
【0046】
上記式(6)中、R1、R及びR’は、前述と同じである。上記式(6)に示されるナフタレン骨格含有樹脂は、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂A(1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、エポキシ当量162)を材料として合成可能な樹脂である(後述の合成例1参照)。ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂Aは、例えば、大日本インキ化学工業社製「EXA-4700」として入手可能である。
【0047】
(A-1)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましく、2000以上であることがよりさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、10000以下であることが好ましく、8000以下であることがより好ましく、7500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0048】
(A-1)成分の酸価としては、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を向上させるという観点から、0.1mgKOH/g、0.5mgKOH/g以上又は1mgKOH/g以上であることが好ましい。他方で、硬化物の微細パターンがアルカリ溶液に溶け出す事を抑制し、アンダーカット耐性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A-1)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は以下の方法により測定することができる。まず、測定樹脂溶液約1gを精秤した後、その樹脂溶液にアセトンを30g添加し、樹脂溶液を均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式(7)により酸価を算出する。
式:A=10×Vf×56.1/(Wp×I) ・・・(7)
【0049】
なお、上記式(7)中、Aは酸価[mgKOH/g]を表し、VfはKOHの滴定量[mL]を表し、Wpは測定樹脂溶液質量[g]を表し、Iは測定樹脂溶液の不揮発成分の割合[質量%]を表す。
【0050】
(A-1)成分のアルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A-1)は、以下の式(II):
5≦S(A-1)≦110 ・・・(II)
を満たすことが好ましい。アルカリ溶液に対する溶解速度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。より詳細には、(A-1)成分の溶解速度の加重平均値S(A-1)は、より好ましくは6nm/sec以上、さらに好ましくは10nm/sec以上、特に好ましくは15nm/sec以上であり、好ましくは100nm/sec以下、より好ましくは90nm/sec以下、さらに好ましくは80nm/sec以下である。(A-1)成分の溶解速度の加重平均値S(A-1)が前記範囲にあることにより、樹脂組成物がアルカリ現像液に溶解する溶解速度が過度に遅くなったり速くなったりすることを抑制できる。よって、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が局所的に発生することを抑制できる。したがって、アンダーカット耐性を改善でき、好ましくは開口パターンの側面を層平面に対して垂直に近づけることができる。
【0051】
さらに好ましくは、(A-1)成分として複数種類のナフタレン骨格含有樹脂を用いる場合、ナフタレン骨格含有樹脂の各々の溶解速度[nm/sec]が、前記範囲にある。これにより、上記加重平均値S(A-1)が前記範囲を確実に満たすことができる。
【0052】
(A-1)成分は、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、(A)成分中の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量を5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、20質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、通常100質量%以下であり、アンダーカット耐性の向上という観点から、80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることが更に好ましい。
【0053】
(A-1)成分は、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量を5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、15質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、アンダーカット耐性の向上という観点から、30質量%以下とすることが好ましく、29質量%以下とすることがより好ましく、28質量%以下とすることが更に好ましい。
【0054】
<(A-1)成分の製造方法>
(A-1)成分は、ナフタレン骨格、エチレン性不飽和基、及びカルボキシル基を含有する樹脂を有する化合物であれば、上述した例に限られることはなく、特に制限はないが、その一態様としては、ナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格含有エポキシ化合物)に不飽和カルボン酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂等が挙げられる。酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂の製造方法について説明する。まず、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物に不飽和カルボン酸を反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得、次いで、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させる。このようにして酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得ることができる。
【0055】
ナフタレン骨格含有エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を1個以上有する化合物であれば使用可能であり、例えば、モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロオキシナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂、ビナフトール型エポキシ樹脂等の、分子中にナフタレン骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
モノヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1-グリシジルオキシナフタレン、2-グリシジルオキシナフタレンが挙げられる。ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,3-ジグリシジルオキシナフタレン、1,4-ジグリシジルオキシナフタレン、1,5-ジグリシジルオキシナフタレン、1,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,3-ジグリシジルオキシナフタレン、2,6-ジグリシジルオキシナフタレン、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン等が挙げられる。
【0057】
ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビ-(2-グリシジルオキシ)ナフチル、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチル等が挙げられる。
【0058】
ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂としては、例えば1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-ビス(2-グリシジルオキシナフチル)メタンが挙げられる。
【0059】
これらのなかでも1分子中にナフタレン骨格を2個以上有する、ポリヒドロキシビナフタレン型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合反応によって得られるナフタレン型エポキシ樹脂が好ましく、特に1分子中にエポキシ基を3個以上有する1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)-1’-(2’-グリシジルオキシナフチル)メタン、1-(2,7-ジグリシジルオキシ)-1’-(2’-グリシジルオキシ)ビナフチル、1,1’-ビ-(2,7-ジグリシジルオキシ)ナフチルが平均線熱膨張率に加えて耐熱性に優れる点で好ましい。
【0060】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸等が挙げられ、これらは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸が感光性樹脂組成物の光硬化性を向上させる観点から好ましい。なお、本明細書において、上記のナフタレン型エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物であるナフタレン型エポキシ化合物エステル樹脂を「ナフタレン型エポキシ化合物(メタ)アクリレート」と記載する場合があり、ここでナフタレン型エポキシ化合物のエポキシ基は、通常、(メタ)アクリル酸との反応により実質的に消滅している。「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート、アクリレート及びその組み合わせを包含する。アクリル酸とメタクリル酸とをまとめて「(メタ)アクリル酸」ということがある。
【0061】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸が硬化物の現像性及び絶縁信頼性向上の点から好ましい。
【0062】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、触媒存在下で不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とを反応させ不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得た後、不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂とカルボン酸無水物とを反応させてもよい。
【0063】
この際に用いる触媒の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の各種アミン化合物類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のホスホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するホスホニウム塩類;トリメチルスルホニウム塩、ベンジルテトラメチレンスルホニウム塩、フェニルベンジルメチルスルホニウム塩またはフェニルジメチルスルホニウム塩等のスルホニウム塩類であって、代表的な対アニオンとして、カルボキシレート、ハイドロオキサイド等を有するスルホニウム塩類;燐酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸のような酸性化合物類等が挙げられる。反応は、50℃~150℃の範囲で行うことができ、80℃~120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0064】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、有機溶剤を使用してもよく、有機溶剤としては、後述する(F)有機溶剤と同様の有機溶剤を使用することができる。
【0065】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を得るにあたって、ハイドロキノン等の重合阻害剤を使用してもよい。この際に用いる重合阻害剤の量は、不飽和カルボン酸とナフタレン骨格含有エポキシ化合物とカルボン酸無水物との合計質量に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.0005質量%~1質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.001質量%~0.5質量%の範囲である。
【0066】
酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂としては、酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。酸変性ナフタレン骨格含有エポキシ(メタ)アクリレートとは、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物を使用し、不飽和カルボン酸として(メタ)アクリル酸を使用して得られる酸変性不飽和ナフタレン骨格含有エポキシエステル樹脂を指す。
【0067】
(A-1)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エチレン性不飽和基及びナフタレン骨格含有エポキシ化合物を反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性ナフタレン骨格含有(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記した酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0068】
<(A-2)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂>
(A-2)成分としての酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートにカルボキシル基が導入された構造を有する化合物である。ただし、この(A-2)成分には、前記(A-1)成分は含まれない。
【0069】
(A-2)成分の一態様としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細は、ビスフェノール型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートを得、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物とを反応させることで酸変性ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0070】
(A-2)成分の別態様としては、ビフェニル型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた、酸変性ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。詳細は、ビフェニル型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレートを得、ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレートとカルボン酸無水物とを反応させることで酸変性ビフェニル型エポキシ(メタ)アクリレートを得ることができる。
【0071】
(A-2)成分のさらに別態様としては、上述したエポキシ化合物以外のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。そのようなエポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂等の縮合環骨格を含有するエポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ポリグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等のグリシジル基含有アクリル樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0072】
このような酸変性エポキシ(メタ)アクリレートは市販品を用いることができ、具体例としては、日本化薬社製の「ZAR-2000」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)、「ZFR-1491H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、「ZFR-1533H」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水テトラヒドロフタル酸の反応物)、「ZCR-1569H」(酸変性ビフェニル型エポキシアクリレート:ビフェニル型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)、昭和電工社製の「PR-300CP」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び酸無水物の反応物)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
(A-2)成分の他の態様としては、(メタ)アクリル酸を重合して得られる構造単位に有する(メタ)アクリル樹脂に、エポキシ化合物の(メタ)アクリレートを反応させてエチレン性不飽和基を導入した不飽和変性(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。エポキシ化合物の(メタ)アクリレートは、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに不飽和基導入の際に生じたヒドロキシル基にカルボン酸無水物を反応させることも可能である。カルボン酸無水物としては上記したカルボン酸無水物と同様のものを使用することができ、好ましい範囲も同様である。
【0074】
このような不飽和変性(メタ)アクリル樹脂は市販品を用いることができ、具体例としては、昭和電工社製の「SPC-1000」、「SPC-3000」、ダイセル・オルネクス社製「サイクロマーP(ACA)Z-250」、「サイクロマーP(ACA)Z-251」、「サイクロマーP(ACA)Z-254」、「サイクロマーP(ACA)Z-300」、「サイクロマーP(ACA)Z-320」等が挙げられる。
【0075】
(A-2)成分の重量平均分子量としては、成膜性の観点から、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、20000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましく、14000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0076】
(A-2)成分の酸価としては、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を向上させるという観点から、酸価が0.1mgKOH/g以上であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上であることがより好ましく、1mgKOH/g以上であることが更に好ましい。他方で、硬化物の微細パターンがアルカリ溶液溶け出す事を抑制し、アンダーカット耐性を向上させるという観点から、酸価が150mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以下であることがより好ましく、100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。ここで、酸価とは、(A-2)成分に存在するカルボキシル基の残存酸価のことであり、酸価は先述の方法により測定することができる。
【0077】
(A-2)成分のアルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A-2)は、以下の式(III):
1≦S(A-2)≦150 ・・・(III)
を満たすことが好ましく、より好ましくは、以下の式(IIIa):
1≦S(A-2)≦131 ・・・(IIIa)
を満たす。これにより、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を(A-1)成分の含有量を考慮して調整して、アンダーカット耐性をコントロールすることができる。溶解速度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0078】
さらに好ましくは、(A-2)成分として複数種類の酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を用いる場合、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂の各々の溶解速度[nm/sec]が、前記の範囲にあることがより好ましい。これにより、上記加重平均値S(A-2)が前記範囲を確実に満たすことができる。
【0079】
(A-2)成分は、アルカリ溶液に対する溶解性の調整という観点から、(A)成分の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量が(A-1)成分の含有量と同じか又はそれよりも少ないことが好ましく、より好ましくは、(A-2)成分の含有量が、(A)成分の不揮発成分を100質量%とした場合、(A-1)成分の含有量の50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。(A-2)成分の含有量は、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、30質量%以下とすることが好ましく、20質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以下とすることが更に好ましく、下限は、通常、0質量%であるが、(A-1)成分と組み合わせて用いる場合、下限を0.1質量%又は0.2質量%としてもよい。
【0080】
(A-2)成分は、耐熱性及び機械的強度、例えば、平均線熱膨張係数、ガラス転移温度を調整する観点から、(A-1)成分と組み合わせて用いることが好ましい。
【0081】
<(A-3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む任意の樹脂>
(A)成分は、上述した(A-1)成分及び(A-2)成分に組み合わせて、更に(A-3)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む任意の樹脂を含んでいてもよい。この(A-3)成分には、(A-1)成分及び(A-2)成分は含まない。
【0082】
(A-3)成分の重量平均分子量及び酸価は、任意であるが、上述した(A-2)成分の重量平均分子量及び酸価と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、(A-2)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。
【0083】
<(A)成分の全体の特性>
(A)成分の重量平均分子量は、下限としては、成膜性の観点から、500以上又は1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることがさらに好ましい。上限としては、現像性の観点から、20000以下であることが好ましく、15000以下であることがより好ましく、14500以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0084】
(A)成分のアルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)は、以下の式(I):
5≦S(A)≦110 ・・・(I)
を満たすことが好ましい。アルカリ溶液に対する溶解速度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。より詳細には、(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)は、通常5nm/sec以上、より好ましくは10nm/sec以上、さらに好ましくは15nm/sec以上であり、通常110nm/sec以下、好ましくは100nm/sec以下、より好ましくは90nm/sec以下、さらに好ましくは80nm/sec以下である。(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)が前記範囲にあることにより、樹脂組成物がアルカリ現像液に溶解する溶解速度が過度に遅くなったり速くなったりすることを抑制できる。よって、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が局所的に発生することを抑制できる。したがって、アンダーカット耐性を改善でき、好ましくは開口パターンの側面を層平面に対して垂直に近づけることができる。
【0085】
さらに好ましくは、(A)成分として複数種類のエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂を用いる場合、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂の各々の溶解速度[nm/sec]が、前記の範囲にあることがより好ましい。これにより、上記加重平均値S(A)が前記範囲を確実に満たすことができる。
【0086】
(A)成分は、樹脂組成物のアルカリ溶液に対する溶解性を調整するという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、その含有量を10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上とすることがより好ましく、20質量%以上とすることがさらに好ましい。上限は、アンダーカット耐性の向上という観点から、30質量%以下とすることが好ましく、29.5質量%以下とすることがより好ましく、29質量%以下とすることが更に好ましい。
【0087】
<(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材>
樹脂組成物は、(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材を含有する。樹脂組成物が(B)成分を含有しても(つまり、無機充填材の平均粒径が大きい場合であっても)、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供可能となる。また、(B)成分を用いることにより、通常は、硬化物の平均線熱膨張率を低くできる。
【0088】
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
無機充填材の平均粒径は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、0.5μm以上であり、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1μm以上である。該平均粒径の上限は、露光時の光反射を抑制して優れた現像性を得る観点から、2.5μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、よりさらに好ましくは1.3μm以下である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、アドマテックス社製「SC4050」、「アドマファイン」、電気化学工業社製「SFPシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製「SP(H)シリーズ」、堺化学工業社製「Sciqasシリーズ」、日本触媒社製「シーホスターシリーズ」、新日鉄住金マテリアルズ社製の「AZシリーズ」、「AXシリーズ」、堺化学工業社製の「Bシリーズ」、「BFシリーズ」等が挙げられる。
【0090】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0091】
無機充填材の比表面積は、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得る観点から、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは3m2/g以上、特に好ましくは5m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下、50m2/g以下又は40m2/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0092】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。
【0093】
(B)成分の含有量は、平均線熱膨張率が低い硬化物を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上が好ましく、より好ましくは60.5質量%以上、さらに好ましくは61質量%以上である。上限は、露光時の光反射を抑制して優れた現像性を得る観点から、例えば、90質量%以下、85質量%以下、82質量%以下、又は80質量%以下である。
【0094】
<(C)エポキシ樹脂>
樹脂組成物は、(C)エポキシ樹脂を含有する。(C)成分を含有させることにより、(C)成分同士の反応、又は、(C)成分と(A)成分との反応が可能となり、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高めることができる。但し、ここでいう(C)成分は、(A)成分に属するエポキシ樹脂は含めない。
【0095】
(C)成分としては、例えば、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、及びパーフルオロアルキル型エポキシ樹脂等のフッ素含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ビスフェノールS型エポキシ樹脂;ビキシレノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリスフェノール型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;グリシジルエステル型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;線状脂肪族エポキシ樹脂;ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂;複素環式エポキシ樹脂;スピロ環含有エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;トリメチロール型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられ、密着性を向上させるという観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂がよりに好ましい。また、耐熱性を向上させる観点からはナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂がより好ましい。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(C)成分は、密着性及び耐熱性を向上させる観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びテトラフェニルエタン型エポキシ樹脂の少なくともいずれかを含有することが好ましく、双方を含有することがより好ましい。
【0096】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。(C)成分としては、2以上のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0097】
エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」、「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、新日鉄住金化学社製「YD-8125G」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学社製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、ダイキン工業社製の「E-7432」、「E-7632」(パーフルオロアルキル型エポキシ樹脂)、DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「YSLV-80XY」(テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」、三菱化学社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学社製の「1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0098】
(C)成分の含有量は、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高める観点から、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0099】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.~1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0100】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000、より好ましくは250~3000、さらに好ましくは400~1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0101】
<(D)光重合開始剤>
樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。(D)成分を含有させることにより、樹脂組成物を効率的に光硬化させることができる。
【0102】
(D)成分は、特に制限されないが、例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤;エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、ベンゾイルエチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,4-ジエチルチオキサントン、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサンド等が挙げられ、また、スルホニウム塩系光重合開始剤等も使用できる。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0103】
(D)成分の具体例としては、IGM社製の「Omnirad907」、「Omnirad369」、「Omnirad379」、「Omnirad819」、「OmniradTPO」、BASF社製の「IrgacureTPO」、「IrgacureOXE-01」、「IrgacureOXE-02」、ADEKA社製の「N-1919」等が挙げられる。
【0104】
(D)成分の含有量は、樹脂組成物を十分に光硬化させ、樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐溶解性を高めるという観点から、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。一方、感度過多による現像性の低下を抑制するという観点から、上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0105】
さらに、樹脂組成物は、(D)成分と組み合わせて、光重合開始助剤として、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類を含んでいてもよいし、ピラリゾン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、チオキサントン類などのような光増感剤を含んでいてもよい。これらはいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0106】
<(E)反応性希釈剤>
樹脂組成物は、更に(E)反応性希釈剤を含有し得る。(E)成分を含有させることにより、光反応性を向上させることができる。(E)成分としては、例えば、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する25℃で液体、固体又は半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
【0107】
代表的な感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのモノまたはジアクリレート類、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなどのアクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド若しくはε-カプロラクトンの付加物の多価アクリレート類(例:DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等フェノール類、あるいはそのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物などのアクリレート類、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルから誘導されるエポキシアクリレート類、メラミンアクリレート類、及び/又は上記のアクリレートに対応するメタクリレート類などが挙げられる。これらのなかでも、多価アクリレート類または多価メタクリレート類が好ましく、例えば、3価のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N,N',N'-テトラキス(β-ヒドロキシエチル)エチルジアミンの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、3価以上のアクリレート類またはメタクリレート類としては、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート、トリ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ホスフェート、ジ(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、(3-(メタ)アクリロイル-2-ヒドロキシルオキシプロピル)ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート等のリン酸トリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これら感光性(メタ)アクリレート化合物はいずれか1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0108】
(E)成分を配合する場合の含有量は、光硬化を促進させ、かつ硬化物としたときにべたつきを抑制するという観点から、樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%~10質量%が好ましく、3質量%~8質量%がより好ましい。
【0109】
<(F)有機溶剤>
樹脂組成物は、更に(F)有機溶剤を含有し得る。(F)成分を含有させることにより樹脂ワニスの粘度を調整できる。(F)有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート(EDGAc:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、エチルジグリコールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。有機溶剤を用いる場合の含有量は、樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0110】
<(G)その他の添加剤>
樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない程度に、(G)その他の添加剤を更に含有し得る。(G)その他の添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、有機充填材、メラミン、有機ベントナイト等の微粒子、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディン・グリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の着色剤、ハイドロキノン、フェノチアジン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、リン系化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤、フェノール系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤等の熱硬化樹脂、等の各種添加剤を添加することができる。
【0111】
<製造方法>
樹脂組成物は、上述した成分を混合することにより製造することができる。混合に際し、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌してもよい。樹脂組成物は、例えば(F)有機溶剤を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。
【0112】
[2.本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物]
以下、本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物について詳細に説明する。
【0113】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物は、(A)エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂、(B)平均粒径が0.5μm以上である無機充填材、(C)エポキシ樹脂、並びに、(D)光重合開始剤を含有する樹脂組成物である。第二実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)が、以下の式(I):
5≦S(A)≦110 ・・・(I)
を満たす。アルカリ溶液に対する溶解速度は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。アルカリ溶液としては、通常、現像に用いる現像液を挙げることができる。溶解速度を対比可能にするためには、アルカリ溶液として、23℃でpHが一定(pH:11.7)の1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。アルカリ溶液の温度及びpHは、溶解速度に大きな影響を与えない限り、適宜変更してもよい。
【0114】
本発明の第二実施形態に係る樹脂組成物を用いることにより、アンダーカット耐性に優れる硬化物を得ることができる。
【0115】
<(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分>
第二実施形態に係る樹脂組成物が含む(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分については、(A)成分が(A-1)成分を含有しなくてもよいこと、及び、(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)が式(I)を満たすことを除いて、第一実施形態に係る樹脂組成物が含む(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と同様である。これにより、第一実施形態に係る樹脂組成物と同じ利点を得ることができる。
【0116】
(A)成分の含有量、重量平均分子量及び酸価は、任意であるが、第一実施形態において上述した(A)成分の含有量、重量平均分子量及び酸価と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、第一実施形態において(A)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。(B)成分の含有量、平均粒径及び比表面積は、任意であるが、第一実施形態において上述した(B)成分の含有量、平均粒径及び比表面積と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、第一実施形態において(B)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。(C)成分の含有量、エポキシ当量及び重量平均分子量は、任意であるが、第一実施形態において上述した(C)成分の含有量、エポキシ当量及び重量平均分子量と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、第一実施形態において(C)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。(D)成分の含有量は、任意であるが、第一実施形態において上述した(D)成分の含有量と同じ範囲にあることが好ましい。これにより、第一実施形態において(D)成分の項で説明したのと同じ利点を得ることができる。
【0117】
本実施形態に係る樹脂組成物が含む(A)成分の、アルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)は、上記式(I)を満たす。より詳細には、(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)は、通常5nm/sec以上、より好ましくは6nm/sec以上、さらに好ましくは10nm/sec以上、特に好ましくは15nm/sec以上であり、通常110nm/sec以下、好ましくは100nm/sec以下、より好ましくは90nm/sec以下、さらに好ましくは80nm/sec以下である。(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)が前記範囲にあることにより、樹脂組成物がアルカリ現像液に溶解する溶解速度が過度に遅くなったり速くなったりすることを抑制できる。よって、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が局所的に発生することを抑制できる。したがって、アンダーカット耐性を改善でき、好ましくは開口パターンの側面を層平面に対して垂直に近づけることができる。
【0118】
(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)を上述した範囲に収める方法としては、例えば、(A-1)成分を含む(A)成分を採用する方法が挙げられる。ただし、例えば、(A-1)成分以外の(A)成分の種類及び量を適切に調整して、(A)成分の溶解速度の加重平均値S(A)を上述した範囲に収めてもよい。
【0119】
(A)成分として複数種類のエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂を用いる場合、エチレン性不飽和基及びカルボキシル基を含む樹脂の各々の溶解速度[nm/sec]が、前記の範囲内にあることがより好ましい。溶解速度[nm/sec]が5~110の範囲内、より好ましくは5~100の範囲内にある(A)成分としては、後述する合成例1によって得られる樹脂溶液(A-1a)、合成例2によって得られる樹脂溶液(A-1b)及び日本化薬社製の「ZAR-2000」(酸変性ビスフェノール型エポキシアクリレート:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリル酸、及び無水コハク酸の反応物)を挙げることができる。
【0120】
<(E)成分、(F)成分及び(G)成分>
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(E)反応性希釈剤、(F)有機溶剤、(G)その他の添加剤を含み得る。第二実施形態に係る樹脂組成物が含み得る(E)成分、(F)成分及び(G)成分については、第一実施形態に係る樹脂組成物が含み得る(E)成分、(F)成分及び(G)成分と同様である。これにより、第一実施形態に係る樹脂組成物と同じ利点を得ることができる。
【0121】
<製造方法>
樹脂組成物は、上述した成分を混合することにより製造することができる。混合に際し、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または撹拌してもよい。樹脂組成物は、例えば(F)有機溶剤を含むことにより、樹脂ワニスとして得ることができる。
【0122】
<樹脂組成物の物性、用途>
本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物又は第二実施形態に係る樹脂組成物を光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、アンダーカット耐性に優れるという特性を示す。即ちアンダーカット耐性に優れる絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。アンダーカットは、順テーパ形状を抑止する観点から、好ましくは+10μm以下、より好ましくは+5μm以下、さらに好ましくは+4μm以下、よりさらに好ましくは+3μm以下である。下限は、逆テーパ形状を抑止する観点から、好ましくは-5μm以下、より好ましくは-4μm以下、さらに好ましくは-3μm以下である。アンダーカットの値は、後述する<現像性、クラック耐性、及びアンダーカット耐性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0123】
また、本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物を光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、現像性に優れるという特性を示す傾向にある。このため、通常は、未露光部に樹脂等の残渣が存在しない。残渣がない最小ビアホール径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。下限は特に限定されないが、1μm以上等とし得る。現像性の評価は、後述する<現像性、クラック耐性、及びアンダーカット耐性の評価>に記載の方法に従って評価することができる。
【0124】
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物を光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、平均線熱膨張率が低いという特性を示す傾向にある。即ち平均線熱膨張率が低い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。平均線熱膨張率は、好ましくは45ppm/℃以下、より好ましくは40ppm/℃以下、さらに好ましくは36ppm/℃以下、35ppm/℃以下である。下限は特に限定されないが、10ppm/℃以上等とし得る。平均線熱膨張率は、後述する<平均線熱膨張率、及びガラス転移温度の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0125】
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物を光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、ガラス転移温度が高いという特性を示す傾向にある。即ちガラス転移温度が高い絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。ガラス転移温度は、好ましくは135℃超、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。上限は特に限定されないが、300℃以下等とし得る。ガラス転移温度は、後述する<平均線熱膨張率、及びガラス転移温度の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0126】
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物を光硬化させた後、190℃で90分間熱硬化させた硬化物は、クラック耐性に優れるという特性を示す。即ちクラック耐性に優れる絶縁層及びソルダーレジストをもたらす。-65℃と150℃との間の昇温試験を500回繰り返しても、クラック及び剥離は認められない。クラック耐性の評価は、後述する<現像性、クラック耐性、及びアンダーカット耐性の評価>に記載の方法に従って評価することができる。
【0127】
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、感光性フィルム、支持体付き感光性フィルム、プリプレグ等の絶縁樹脂シート、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)、ソルダーレジスト、アンダ-フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。なかでも、プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物(樹脂組成物の硬化物を絶縁層としたプリント配線板)、層間絶縁層用樹脂組成物(樹脂組成物の硬化物を層間絶縁層としたプリント配線板)、メッキ形成用樹脂組成物(樹脂組成物の硬化物上にメッキが形成されたプリント配線板)、及びソルダーレジスト用樹脂組成物(樹脂組成物の硬化物をソルダーレジストとしたプリント配線板)として好適に使用することができる。
【0128】
[感光性フィルム]
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物を用いることにより、当該樹脂組成物を含有する感光性フィルムを得ることができる。例えば、樹脂組成物を、樹脂ワニス状態で支持基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることで樹脂組成物層を形成して、感光性フィルムとすることができる。また、予め支持体上に形成された感光性フィルムを支持基板に積層して用いることもできる。感光性フィルムは様々な支持基板に積層させることができる。支持基板としては主に、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。
【0129】
[支持体付き感光性フィルム]
本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物層が支持体上に層形成された支持体付き感光性フィルムの形態で好適に使用することができる。つまり、支持体付き感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に設けられた、本発明の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む。
【0130】
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルアセテートフィルム等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0131】
市販の支持体としては、例えば、王子製紙社製の製品名「アルファンMA-410」、「E-200C」、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人社製の製品名「PS-25」等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるが、これらに限られたものではない。これらの支持体は、樹脂組成物層の除去を容易にするため、シリコーンコート剤のような剥離剤を表面に塗布してあるのがよい。支持体の厚さは、5μm~50μmの範囲であることが好ましく、10μm~25μmの範囲であることがより好ましい。厚さを5μm以上とすることで、現像前に行う支持体剥離の際に支持体が破れることを抑制することができ、厚さを50μm以下とすることで、支持体上から露光する際の解像度を向上させることができる。また、低フィッシュアイの支持体が好ましい。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0132】
また、紫外線等の活性エネルギー線による露光時の光の散乱を低減するため、支持体は透明性に優れるものが好ましい。支持体は、具体的には、透明性の指標となる濁度(JIS K6714で規格化されているヘーズ)が0.1~5であるものが好ましい。さらに樹脂組成物層は保護フィルムで保護されていてもよい。
【0133】
支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層側を保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムとしては上記の支持体と同様の材料により構成されたフィルムを用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、1μm~40μmの範囲であることが好ましく、5μm~30μmの範囲であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲であることが更に好ましい。厚さを1μm以上とすることで、保護フィルムの取り扱い性を向上させることができ、40μm以下とすることで廉価性がよくなる傾向にある。なお、保護フィルムは、樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方が小さいものが好ましい。
【0134】
本発明の支持体付き感光性フィルムは、当業者に公知の方法に従って、例えば、本発明の樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。具体的には、まず、真空脱泡法等で樹脂組成物中の泡を完全に除去した後、樹脂組成物を支持体上に塗布し、熱風炉あるいは遠赤外線炉により溶剤を除去し、乾燥せしめ、ついで必要に応じて得られた樹脂組成物層上に保護フィルムを積層することにより支持体付き感光性フィルムを製造することができる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性や樹脂ワニス中の有機溶剤量によっても異なるが、30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスにおいては、80℃~120℃で3分間~13分間で乾燥させることができる。樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、樹脂組成物層の総量に対して5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。樹脂組成物層の厚さは、取り扱い性を向上させ、かつ樹脂組成物層内部の感度及び解像度が低下するのを抑制するという観点から、5μm~500μmの範囲とすることが好ましく、10μm~200μmの範囲とするのがより好ましく、15μm~150μmの範囲とするのが更に好ましく、20μm~100μmの範囲とするのが更に一層好ましく、20μm~60μmの範囲とするのが殊更好ましい。
【0135】
樹脂組成物の塗布方式としては、たとえば、グラビアコート方式、マイクログラビアコート方式、リバースコート方式、キスリバースコート方式、ダイコート方式、スロットダイ方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、チャンバーグラビアコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよく、また異なる方式を複数組み合わせて塗布してもよい。中でも、均一塗工性に優れる、ダイコート方式が好ましい。また、異物混入等をさけるために、クリーンルーム等の異物発生の少ない環境で塗布工程を実施することが好ましい。
【0136】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。該絶縁層は、ソルダーレジストとして使用することが好ましい。
【0137】
詳細には、本発明のプリント配線板は、上述の感光性フィルム、又は支持体付き感光性フィルムを用いて製造することができる。以下、絶縁層がソルダーレジストである場合について説明する。
【0138】
<塗布及び乾燥工程>
樹脂組成物を樹脂ワニス状態で直接的に回路基板上に塗布し、有機溶剤を乾燥させることにより、回路基板上に感光性フィルムを形成する。
【0139】
回路基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された基板をいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっている基板も、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0140】
塗布方式としては、スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられているが、その他にも均一に塗布できる塗布方式であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコート方式、ホットメルトコート方式、バーコート方式、アプリケーター方式、ブレードコート方式、ナイフコート方式、エアナイフコート方式、カーテンフローコート方式、ロールコート方式、グラビアコート方式、オフセット印刷方式、ディップコート方式、刷毛塗り、その他通常の塗布方式はすべて使用できる。塗布後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等で乾燥を行う。乾燥条件は、80℃~120℃で3分間~13分間とすることが好ましい。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0141】
<ラミネート工程>
また、支持体付き感光性フィルムを用いる場合には、樹脂組成物層側を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネートする。ラミネート工程において、支持体付き感光性フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じて支持体付き感光性フィルム及び回路基板をプレヒートし、樹脂組成物層を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。支持体付き感光性フィルムにおいては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。
【0142】
ラミネート工程の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70℃~140℃とし、圧着圧力を好ましくは1kgf/cm2~11kgf/cm2(9.8×104N/m2~107.9×104N/m2)、圧着時間を好ましくは5秒間~300秒間とし、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下とする減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネート工程は、バッチ式であってもロールを用いる連続式であってもよい。真空ラミネート法は、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニッコー・マテリアルズ社製バキュームアップリケーター、名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、日立インダストリイズ社製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー社製真空ラミネーター等を挙げることができる。このようにして、回路基板上に感光性フィルムが形成される。
【0143】
<露光工程>
塗布及び乾燥工程、あるいはラミネート工程により、回路基板上に感光性フィルムが設けられた後、次いで、マスクパターンを通して、樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。活性光線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量はおおむね10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。露光方法にはマスクパターンをプリント配線板に密着させて行う接触露光法と、密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法とがあるが、どちらを用いてもかまわない。また、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合は、支持体上から露光してもよいし、支持体を剥離後に露光してもよい。
【0144】
ソルダーレジストは、本発明の樹脂組成物を使用することから、現像性に優れる。このため、マスクパターンにおける露光パターンとしては、例えば、回路幅(ライン;L)と回路間の幅(スペース;S)の比(L/S)が100μm/100μm以下(すなわち、配線ピッチ200μm以下)、L/S=80μm/80μm以下(配線ピッチ160μm以下)、L/S=70μm/70μm以下(配線ピッチ140μm以下)、L/S=60μm/60μm以下(配線ピッチ120μm以下)のパターンが使用可能である。なお、ピッチは、回路基板の全体にわたって同一である必要はない。
【0145】
<現像工程>
露光工程後、樹脂組成物層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像で、光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、パターンを形成することができる。
【0146】
上記ウエット現像の場合、現像液としては、通常、アルカリ溶液が用いられ、なかでもアルカリ水溶液による現像工程が好ましい。また、現像方法としては、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法が適宜採用される。
【0147】
現像液として使用されるアルカリ溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の炭酸塩又は重炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩の水溶液や、水酸化テトラアルキルアンモニウム等の金属イオンを含有しない有機塩基の水溶液が挙げられ、金属イオンを含有せず、半導体チップに影響を与えないという点で水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液が好ましい。
これらのアルカリ性現像液は、現像効果の向上のため、界面活性剤、消泡剤等を現像液を含むことができる。上記アルカリ溶液のpHは、例えば、8~13の範囲であることが好ましく、9~12の範囲であることがより好ましく、10~12の範囲であることがさらに好ましい。また、上記アルカリ性現像液の塩基濃度は、0.1質量%~10質量%とすることが好ましい。上記アルカリ性現像液の温度は、樹脂組成物層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、通常、室温であり、20℃~50℃とすることが好ましい。
【0148】
現像液として使用される有機溶剤は、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0149】
このような有機溶剤の濃度は、現像液全量に対して2質量%~90質量%であることが好ましい。また、このような有機溶剤の温度は、現像性にあわせて調節することができる。さらに、このような有機溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。単独で用いる有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0150】
パターン形成においては、必要に応じて、上記した2種類以上の現像方法を併用して用いてもよい。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等があり、高圧スプレー方式が解像度向上のためには好適である。スプレー方式を採用する場合のスプレー圧としては、0.05MPa~0.3MPaが好ましい。
【0151】
上述した第一実施形態又は第二実施形態に係る樹脂組成物によれば、前記の現像工程において、アンダーカットの発生を効果的に抑制できる。
【0152】
<熱硬化(ポストベーク)工程>
上記現像工程終了後、熱硬化(ポストベーク)工程を行い、ソルダーレジストを形成する。ポストベーク工程としては、高圧水銀ランプによる紫外線照射工程やクリーンオーブンを用いた加熱工程等が挙げられる。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05J/cm2~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃~220℃で20分間~180分間の範囲、より好ましくは160℃~200℃で30分間~120分間の範囲で選択される。
【0153】
<その他の工程>
プリント配線板は、ソルダーレジストを形成後、さらに穴あけ工程、デスミア工程を含んでもよい。これらの工程は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。
【0154】
ソルダーレジストを形成した後、所望により、回路基板上に形成されたソルダーレジストに穴あけ工程を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ工程は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ工程が好ましい。
【0155】
デスミア工程は、デスミア処理する工程である。穴あけ工程において形成された開口部内部には、一般に、樹脂残渣(スミア)が付着している。斯かるスミアは、電気接続不良の原因となるため、この工程においてスミアを除去する処理(デスミア処理)を実施する。
【0156】
デスミア処理は、乾式デスミア処理、湿式デスミア処理又はこれらの組み合わせによって実施してよい。
【0157】
乾式デスミア処理としては、例えば、プラズマを用いたデスミア処理等が挙げられる。プラズマを用いたデスミア処理は、市販のプラズマデスミア処理装置を使用して実施することができる。市販のプラズマデスミア処理装置の中でも、プリント配線板の製造用途に好適な例として、ニッシン社製のマイクロ波プラズマ装置、積水化学工業社製の常圧プラズマエッチング装置等が挙げられる。
【0158】
湿式デスミア処理としては、例えば、酸化剤溶液を用いたデスミア処理等が挙げられる。酸化剤溶液を用いてデスミア処理する場合、膨潤液による膨潤処理、酸化剤溶液による酸化処理、中和液による中和処理をこの順に行うことが好ましい。膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等を挙げることができる。膨潤処理は、ビアホール等の形成された基板を、60℃~80℃に加熱した膨潤液に5分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。酸化剤溶液としては、アルカリ性過マンガン酸水溶液が好ましく、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解した溶液を挙げることができる。酸化剤溶液による酸化処理は、膨潤処理後の基板を、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させることにより行うことが好ましい。アルカリ性過マンガン酸水溶液の市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ド-ジングソリューション・セキュリガンスP」等が挙げられる。中和液による中和処理は、酸化処理後の基板を、30℃~50℃の中和液に3分間~10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0159】
乾式デスミア処理と湿式デスミア処理を組み合わせて実施する場合、乾式デスミア処理を先に実施してもよく、湿式デスミア処理を先に実施してもよい。
【0160】
絶縁層を層間絶縁層として使用する場合も、ソルダーレジストの場合と同様に行うことができ、熱硬化工程後に、穴あけ工程、デスミア工程、及びメッキ工程を行ってもよい。
【0161】
メッキ工程は、絶縁層上に導体層を形成する工程である。導体層は、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて形成してもよく、また、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成してもよい。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができる。
【0162】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、プリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0163】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0164】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0165】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0166】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0167】
(合成例1:樹脂溶液(A-1a)の合成)
以下の式(8)に示すナフタレン骨格含有エポキシ樹脂A(1,1’-ビス(2,7-ジグリシジルオキシナフチル)メタン、エポキシ当量162、大日本インキ化学工業社製「EXA-4700」)162部を、ガス導入管、撹拌装置、冷却管及び温度計を備えたフラスコに入れ、カルビトールアセテート340部を加え、加熱溶解し、ハイドロキノン0.46部と、トリフェニルホスフィン1部を加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72部を徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を、80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物80部を加え、8時間反応させ、冷却させた。このようにして、固形物の酸価が90mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%、以下、「樹脂溶液(A-1a)」と略称する)を得た。
【0168】
【0169】
樹脂溶液(A-1a)は、少なくとも下記式(9)に示す樹脂を含むことが確認された。
【0170】
【0171】
(合成例2:樹脂溶液(A-1b)の合成)
合成例1において、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂Aを、以下の式(10)に示すナフトールアラルキル型エポキシ樹脂B(エポキシ当量325、新日鉄住金化学株式会社製「ESN-475V」)325部に変更した。以上の事項以外は合成例1と同様の操作を行った。このようにして、固形物の酸価60mgKOH/gの樹脂溶液(不揮発分70%、以下、「樹脂溶液(A-1b)」と略称する)を得た。
【0172】
【0173】
樹脂溶液(A-1b)は、少なくとも下記式(11)に示す構造を含む樹脂を含むことが確認された。
【0174】
【0175】
<実施例1~7、比較例1~2>
下記表1に示す配合割合で各成分を配合し、高速回転ミキサーを用いて樹脂ワニスを調製した。次に、支持体としてアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーT6AM」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。調製した樹脂ワニスをかかる離型PETのアルキド樹脂系離型剤で処理された面に乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μmになるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で6.5分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を有する支持体付き感光性フィルムを得た。
【0176】
物性評価における測定方法及び評価方法について説明する。
【0177】
<樹脂組成物の溶解速度の評価>
樹脂溶液(A-1a)、樹脂溶液(A-1b)並びに後述する樹脂ZFR-1491H、ZAR-2000及びZCR-1569Hをそれぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEAc)に添加し、不揮発成分35重量%の溶液を調製した。該溶液を、シリコンウエハー上に塗布し、スピンコートを行って塗布膜を得た。その後、塗布膜を120℃で3分間乾燥して厚み約2μmの樹脂膜を形成した。樹脂膜の膜厚は、触針式膜厚計(株式会社東京精密社製、「SURFCOM 130A」)にて測定した。その後、樹脂膜を、シリコンウエハーごと、23℃のアルカリ溶液としての1質量%の炭酸ナトリウム水溶液(pH:11.7)に浸漬した。そして、樹脂膜が消失するまでの消失時間を計測した。樹脂膜の消失は、樹脂膜の表面での反射光による干渉縞が消失することを目視することで確認した。したがって、消失時間は、樹脂膜をアルカリ溶液に浸漬を開始した時刻から消失が確認された時刻までの時間である。そして、各樹脂膜につき、1秒あたりの樹脂膜の厚み[nm]の減少量を示す溶解速度[nm/sec]を算出した。30分浸漬しても溶解が認められなかった樹脂膜については、溶解速度を1nm/secとした。結果は下記の通りであった。
(A-1)成分:
・A-1a:100nm/sec
・A-1b:6nm/sec
(A-2)成分:
・ZFR-1491H:131nm/sec
・ZAR-20000:39nm/sec
・ZFR-1491H:1nm/sec
実施例及び比較例の各々において、下記の式(IV)にて(A)成分のアルカリ溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値S(A)を算出した。
S(A)=Σ{s(A)×R(A)} ・・・(IV)
ここで、上記式(IV)中、s(A)は、個々の(A)成分のアルカリ溶液に対する溶解速度である。上記式(IV)中、R(A)は、(A)成分中の不揮発性成分を100質量%とした場合の、各樹脂(A)の質量割合である。
【0178】
<現像性、クラック耐性、及びアンダーカット耐性の評価>
(評価用積層体の形成)
厚さ18μmの銅層をパターニングした回路が形成されているガラスエポキシ基板(銅張積層板)の銅層に対して有機酸を含む表面処理剤(CZ8100、メック社製)による処理にて粗化を施した。次に実施例1~7及び比較例1~2により得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層が銅回路表面と接するように配置し、真空ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、VP160)を用いて圧着し、前記銅張積層板と、前記樹脂組成物層と、前記支持体とがこの順に積層された積層体を形成した。圧着条件は、真空引きの時間30秒間、圧着温度80℃、圧着圧力0.7MPa、加圧時間30秒間とした。該積層体を室温30分以上静置し、該積層体の支持体側から、丸穴形成用の露光パターンが形成された石英ガラスマスク及びパターン形成装置を用いて、紫外線で露光を行った。用いた石英ガラスマスクには、直径50μm/60μm/70μm/80μm/90μm/100μmの全6種の丸穴を描画できるパターンが設けられていた。室温にて30分間静置した後、前記積層体から支持体を剥がし取った。該積層板上の樹脂組成物層の全面に、アルカリ性現像液としての30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。これにより、実施例1~7及び比較例2では、丸穴部分が溶出し、樹脂組成物層にビアホールが形成され、他方、比較例1では、ビアホールが形成されなかった。スプレー現像後、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに180℃、30分間の加熱処理を行った。これにより、樹脂組成物層が硬化し、実施例1~7及び比較例2では、開口部(ビアホール)を有する絶縁層を銅張積層板上に有する評価用積層体を得た。また、比較例1では、ビアホールが形成されていない絶縁層を銅張積層板上に有する評価用積層体を得た。
【0179】
(現像性の評価)
評価用積層体に形成したビアホールをSEMで観察(倍率1000倍)し、全6種のビアホールのうち、残渣が無い最小ビアホール径を特定した。評価用積層体に開口(ビアホール)が確認できない場合は、最小ビアホール径の特定が不可能であると判断し、「×」と評価した。
【0180】
(クラック耐性の評価)
評価用積層体を、-65℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、175℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルによる処理を500回繰り返す試験を行った。試験後、評価用積層体のクラック及び剥離の程度を光学顕微鏡(ニコン社製、「ECLIPSE LV100ND」)により観察し、次の基準で評価した。
○:クラック及び剥離のいずれも認められない。
×:クラック及び剥離の一方又は双方が認められる。
【0181】
(アンダーカット耐性の評価)
図1は、実施例において用いた評価用積層体の断面図である。
図1に示すように、評価用積層体100は、銅張積層板110上に設けられた樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層120に、開口部としての直径100μmのビアホール130を有していた。評価用積層体100の絶縁層120を、ビアホール130の中心軸を通る平面で切断し、その断面をSEMによって断面観察を行い、
図1に示す開口頂面140の半径(x[μm])と開口底面150の半径(y[μm])とを測定し、その差x-y[μm]を求めることにより、アンダーカットの値[μm]を算出した。評価用積層体に開口(ビアホール)が確認できない場合は、アンダーカットの値の算出が不可能であると判断し、「×」と評価した。
【0182】
<平均線熱膨張率、及びガラス転移温度の測定>
(評価用硬化物の形成)
実施例、比較例で得られた支持体付き感光性フィルムの樹脂組成物層に100mJ/cm2の紫外線で露光を行い光硬化させた。その後、樹脂組成物層の全面に、アルカリ性現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレー圧0.2MPaにて2分間のスプレー現像を行った。スプレー現像後、1J/cm2の紫外線照射を行い、さらに190℃、90分間の加熱処理を行い、硬化物を形成した。その後、支持体を剥がし取って、評価用硬化物とした。
【0183】
(平均線熱膨張率の測定)
評価用硬化物を幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310、リガク社製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張率(ppm/℃)を算出した。
【0184】
(ガラス転移温度の測定)
評価用硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(EXSTAR6000、SIIナノテクノロジー社製)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて測定した。得られたtanδのピークトップをガラス転移温度(℃)として算出した。
【0185】
【0186】
使用した成分は下記の通りである。
(A)成分:
(A-1)成分
・A-1a:合成例1で合成した樹脂溶液(A-1a)
・A-1b:合成例2で合成した樹脂溶液(A-1b)
(A-2)成分
・ZFR-1491H:ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、不揮発成分濃度70%)
・ZAR-2000:ビスフェノールA型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価99mgKOH/g、不揮発成分濃度70%)
・ZCR-1569H:ビフェニル型エポキシアクリレート(日本化薬社製、酸価98mgKOH/g、不揮発成分濃度70%)
(B)成分:
・SC2050:溶融シリカ(アドマテックス製、平均粒径0.5μm、比表面積5.9m2/g)100質量部に対して、アミノシラン(信越化学社製、KBM573)0.5質量部で表面処理したもの
(C)成分:
・NC3000H:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、エポキシ当量約272)
・1031S:テトラキスヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(三菱化学社製、エポキシ当量約200)
(D)成分:
・IrgacureTPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)(BASF社製)
(E)成分:
・DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、アクリル当量約96)
(F)成分:
・EDGAc:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
・MEK:メチルエチルケトン
・(B)成分の含有量:樹脂組成物の不揮発成分を100質量%とした場合の(B)成分の含有量[質量%]
・溶解速度の加重平均値S(A):(A)成分のアルカリ性溶液に対する溶解速度[nm/sec]の質量割合に基づく加重平均値
・アンダーカットの値:直径100μmのビアホールにおけるアンダーカットの値[μm]
【0187】
<検討>
上記表1の結果から、本発明の樹脂組成物を用いた実施例1~7では優れたアンダーカット耐性を有することがわかった。このことは、(A-1)成分自身がアルカリ溶液(例えばアルカリ性現像液)に対して適切な範囲の溶解速度で溶解でき、かつ(A-1)成分を含む樹脂組成物をアルカリ性現像液で現像した場合に、意図に反して溶け過ぎる部分、意図に反して溶けない部分が樹脂組成物中に局所的に発生することを抑制できるからであると考えられる。その一因として、(A-1)成分が(C)~(E)成分に対して良好に混ざり合い、樹脂組成物における組成の偏りを抑制できたためと推測される。
【0188】
また、実施例1~7では、比較例1及び2に比べて、良好な現像性、耐熱性、機械的強度及びクラック耐性を有することがわかった。具体的には、実施例1~7では、平均線熱膨張率が低く、かつガラス転移温度が高いこともわかった。このことは、(A-1)成分が、ナフタレン骨格含有樹脂を用いると、通常は、分子の剛性が高くなるので樹脂組成物中の分子の動きが抑制され、その結果、樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度がより高くなり、硬化物の平均線熱膨張率がより低下するからであると考えられる。さらに、(A-1)成分の作用により、通常は、熱膨張又は熱収縮によって生じる内部応力に対する硬化物の耐性が向上することから、温度変化による硬化物の破損を抑制することができたと考えられる。
【0189】
また、実施例4~6によれば、(A-1)成分及び(A-2)成分を組み合わせて用いることにより、実施例1~4及び7の溶解速度の加重平均値S(A)、平均線熱膨張率及びガラス転移温度の値を調節することができることが分かる。さらに、実施例1~5と実施例6及び7の対比によれば、樹脂溶液(A-1a)を用いることにより、最小ビアホール径を小さく抑えることができ、また、アンダーカットの値を+10μm~-5μmの範囲内においても正の値にとどめることができる傾向にあり、他方、樹脂溶液(A-1b)を用いることにより、樹脂溶液(A-1a)を単独で用いた場合よりも溶解速度の荷重平均値S(A)を高めることができ、これにより、開口パターンの側面を層平面に対して垂直に近づけることができることが分かる。
【0190】
一方、比較例1及び2では、(A-1)成分を用いていないため、アンダーカット耐性が悪かった。(A)成分の溶解速度が低すぎること又は溶解速度が高すぎることが原因として考えられる。
【0191】
各実施例において、(E)成分等を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
【符号の説明】
【0192】
100 評価用積層体
110 銅張積層板
120 絶縁層
130 ビアホール
140 開口頂面
150 開口底面