(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20230518BHJP
C12C 5/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12G3/04
C12C5/02
(21)【出願番号】P 2018242990
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 英二
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 利久
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208986(JP,A)
【文献】特開2018-014952(JP,A)
【文献】特開平10-057044(JP,A)
【文献】特開2015-107103(JP,A)
【文献】特許第6458184(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
C12C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール度数が8.5
~19%であり、
エキス分が0.5~4.5%であり、コハク酸の含有量が39~875ppmであり、
麦芽比率が10%以上であり、
エキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:
(1)Y≧-450X+725、
(2)Y≧250X-625、
(3)Y≦70X+650、
(4)Y≦-500X+2900、
を満たすビールテイスト飲料
(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)。
【請求項2】
前記コハク酸の含有量が40~800ppmである請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
前記エキス分が0.8~4.5%である請求項1又は請求項2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
アルコール度数を8.5
~19%と
し、エキス分を0.5~4.5%とし、コハク酸の含有量を39~875ppmとし、麦芽比率を10%以上とするとともに、エキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:
(1)Y≧-450X+725、
(2)Y≧250X-625、
(3)Y≦70X+650、
(4)Y≦-500X+2900、
を満たすようにする工程を含むビールテイスト飲料
(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)の製造方法。
【請求項5】
アルコール度数が8.5
~19%であり麦芽比率が10%以上であるビールテイスト飲料を飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭を低減する香味向上方法であって、
前記ビールテイスト飲料のエキス分を0.5~4.5%とし、コハク酸の含有量を39~875ppmとするとともに、
前記ビールテイスト飲料のエキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:
(1)Y≧-450X+725、
(2)Y≧250X-625、
(3)Y≦70X+650、
(4)Y≦-500X+2900、
を満たすようにするビールテイスト飲料
(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の多様な嗜好に応えるべく、多くの種類のビールテイスト飲料やその製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、低アルコール発酵麦芽飲料を製造する方法であって、糖化力が80~200WKであり、かつ色度が10~50°EBCである濃色麦芽の発酵原料全体に対する使用比率が10質量%以上であり、最終発酵度を65~85%とし、最終製品の色度が8~16°EBCであることを特徴とする低アルコール発酵麦芽飲料の製造方法が記載されている。
そして、特許文献1には、低アルコール発酵麦芽飲料の製造方法によって得られた最終製品中のアルコール濃度は2~4容量%であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、お酒に強い消費者や、手軽に酔いたいと考える消費者等から、「アルコール度数の高い飲料」に対するニーズが存在するため、本発明者らは、当該ニーズに応えるべく、アルコール度数の高いビールテイスト飲料の創出を検討した。
【0006】
そして、本発明者らは、アルコール度数の高いビールテイスト飲料について、飲料のイメージを大きく左右する「飲んだ後の香味」に焦点を当てて、詳細に香味を考察したところ、ビールテイスト飲料を飲んだ後に、嫌なアルコール臭を強く感じることを確認した。
【0007】
そこで、本発明は、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減したビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
[1]アルコール度数が8.5~19%であり、エキス分が0.5~4.5%であり、コハク酸の含有量が39~875ppmであり、麦芽比率が10%以上であり、エキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:(1)Y≧-450X+725、(2)Y≧250X-625、(3)Y≦70X+650、(4)Y≦-500X+2900、を満たすビールテイスト飲料(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)。
[2]アルコール度数を8.5~19%とし、エキス分を0.5~4.5%とし、コハク酸の含有量を39~875ppmとし、麦芽比率を10%以上とするとともに、エキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:(1)Y≧-450X+725、(2)Y≧250X-625、(3)Y≦70X+650、(4)Y≦-500X+2900、を満たすようにする工程を含むビールテイスト飲料(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)の製造方法。
[3]アルコール度数が8.5~19%であり麦芽比率が10%以上であるビールテイスト飲料を飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭を低減する香味向上方法であって、前記ビールテイスト飲料のエキス分を0.5~4.5%とし、コハク酸の含有量を39~875ppmとするとともに、前記ビールテイスト飲料のエキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、以下の全ての関係式:(1)Y≧-450X+725、(2)Y≧250X-625、(3)Y≦70X+650、(4)Y≦-500X+2900、を満たすようにするビールテイスト飲料(ただし、プリン体の含有量が1.1mg/100mL以下であるものを除く)の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るビールテイスト飲料によると、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減している。
本発明に係るビールテイスト飲料の製造方法によると、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減したビールテイスト飲料を製造することができる。
本発明に係るビールテイスト飲料の香味向上方法によると、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エキス分とコハク酸の含有量とを変化させた場合における「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」の結果を示すグラフ(アルコール度数:9%)である。
【
図2】エキス分とコハク酸の含有量とを変化させた場合における「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」の結果を示すグラフ(アルコール度数:19%)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0012】
[ビールテイスト飲料]
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が所定値以上であり、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たす飲料である。
ここで、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビールのような味わいを奏する、つまり、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。
【0013】
(アルコール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、所定値以上である。
このアルコール度数を所定値以上とすることによって、本発明の課題である飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭がより明確となる。
【0014】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、7.0%(v/v%)以上が好ましく、7.5%以上、8.0%以上、8.0%超、8.3%以上、8.5%以上、8.7%以上、9%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数が所定値以上であることによって、本発明の課題がより明確となる。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、10%以上であってもよく、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、16%以上、17%以上、18%以上、19%以上であってもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数の上限は特に限定されないものの、90%以下が好ましく、50%以下、30%以下、20%以下、19.5%以下、19%以下、17%以下、15%以下、13%以下、10%以下がより好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数が所定値以下であることによって、よりバランスのとれた香味とすることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。そして、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0015】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコールは、麦芽又は麦を原料の一部に使用して発酵させて得られたアルコール(つまり、発酵由来のアルコール)のみから構成されているのが好ましいが、蒸留アルコールを添加して構成されていてもよいし、蒸留アルコールの添加のみで構成されていてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料において、発酵由来のアルコールに基づくアルコール度数の下限は特に限定されないものの、例えば、1%以上、1.5%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、8.1%以上、8.3%以上、8.5%以上、8.7%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、20%以上である。発酵由来成分(発酵由来のアルコール)をより多く含むことで、よりバランスのとれた香味とすることができる。また、発酵由来のアルコールに基づくアルコール度数の上限は特に限定されないものの、例えば、50%以下、30%以下、20%以下、17%以下、15%以下、13%以下、10%以下である。
本実施形態に係るビールテイスト飲料において、添加された蒸留アルコールに基づくアルコール度数の下限は特に限定されないものの、例えば、0%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、8.1%以上、8.3%以上、8.5%以上、8.7%以上、9%以上、10%以上、11%以上、12%以上、13%以上、14%以上、15%以上、20%以上である。また、添加された蒸留アルコールに基づくアルコール度数の上限は特に限定されないものの、例えば、50%以下、30%以下、20%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.1%以下である。
【0016】
蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、麦スピリッツ(例えば、大麦スピリッツ、小麦スピリッツ)等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
【0017】
(エキス分)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、エキスを含有する。このエキスとは、飲料中に含まれる不揮発性成分である。そして、エキス分とは、温度15度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数である(酒税法第三条)。
エキス分は、後記する関係式を満たすことによって、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」(以下、適宜「アルコール臭」という)の低減に寄与するだけでなく、「味の厚み」の増強にも大きな影響を与える。
【0018】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、後記する関係式を満たせばよいが、次のような範囲とするのが好適である。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、0.8%(w/v%)以上が好ましく、1.0%以上、1.5%以上、1.8%以上、2.0%以上、2.5%以上、2.8%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料のエキス分が所定値以上であることによって、アルコール臭の低減効果をより確実に発揮させるとともに、味の厚みを増強させることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のエキス分は、4.5%以下が好ましく、4.2%以下、4.0%以下、3.8%以下、3.5%以下、3.2%以下がより好ましい。ビールテイスト飲料のエキス分が所定値以下であることによって、アルコール臭の低減効果と味の厚みの増強効果とをさらに確実に発揮させることができる。
【0019】
なお、ビールテイスト飲料のエキス分は、例えば、不揮発性成分(食物繊維等)の添加によって調製することもできるし、麦芽比率、副原料比率、酵母添加率、発酵助成剤の使用等によっても調製することができる。
また、ビールテイスト飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重(日本酒度)及びアルコール度を測定して算出することができる。
【0020】
(コハク酸)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、コハク酸(succinic acid)を含有する。そして、コハク酸は、カルボン酸の一種である。
コハク酸の含有量は、後記する関係式を満たすことによって、「アルコール臭」の低減に寄与するだけでなく、「マイルドな酸味」の増強や、「味の厚み」の増強にも影響を与える。
【0021】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のコハク酸の含有量は、後記する関係式を満たせばよいが、次のような範囲とするのが好適である。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のコハク酸の含有量は、40ppm(mg/L)以上が好ましく、50ppm以上、100ppm以上、150ppm以上、200ppm以上、220ppm以上、250ppm以上、300ppm以上、350ppm以上、400ppm以上、450ppm以上がより好ましい。ビールテイスト飲料のコハク酸の含重量が所定値以上であることによって、アルコール臭の低減効果をより確実に発揮させるとともに、マイルドな酸味を増強させ、味の厚みを増強させることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のコハク酸の含有量は、800ppm以下が好ましく、750ppm以下、700ppm以下、650ppm以下、600ppm以下、550ppm以下がより好ましい。ビールテイスト飲料のコハク酸の含有量が所定値以下であることによって、アルコール臭の低減効果とマイルドな酸味の増強効果と味の厚みの増強効果とをさらに確実に発揮させることができる。
【0022】
なお、ビールテイスト飲料のコハク酸の含有量は、例えば、添加するコハク酸の含有量で調製することもできるし、発酵工程での発酵時間の調整、使用する酵母の選択、発酵前液(麦汁、仕込液)の溶存酸素量やアミノ酸含有量の調整等によっても調製することができる。
また、ビールテイスト飲料のコハク酸の含有量は、例えば、分析カラムとしてShodexRSpakKC-811を用いたHPLCで測定することができる。また、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.24 有機酸」に記載されている方法によっても測定することができる。
【0023】
(エキス分とコハク酸の含有量とに基づく関係式)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、エキス分をX%、コハク酸の含有量をYppmとした場合に、(1)Y≧-450X+725、(2)Y≧250X-625、(3)Y≦70X+650、及び、(4)Y≦-500X+2900を満たす。
図1、2は、エキス分とコハク酸の含有量とが「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」に与える影響を示す図であり、
図1、2の「◎」と「〇」と「△」は「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」が弱くなっている(低減されている)場合の結果を示しており、「×」は十分には低減されていない場合の結果を示している。なお、
図1、2の式1等が示す直線は、関係式1の等号付き不等号を等号に代えた直線である。
【0024】
この
図1、2の結果から確認できるように、関係式(1)、(2)、(3)、(4)を満たすことによって、ビールテイスト飲料の「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」を低減できることがわかる。
なお、これらの関係式は、ビールテイスト飲料の「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」がエキス分とコハク酸の含有量とから大きな影響を受けていることに着目して作成したものであり、各関係式の定数は、多くの実験結果から導き出したものである。
【0025】
別実施形態として、以下のような関係式を用いることもできる。
例えば、XY座標上において後記するサンプル3-1とサンプル4-2との「X:エキス分(%)」及び「Y:コハク酸の含有量(ppm)」の値を通る直線を算出し、当該直線に基づいた関係式(直線の等号を等号付き不等号に代えた関係式であって、後記するサンプル3-3が範囲内となる関係式)を用いてもよい。
同様に、後記するサンプル3-1とサンプル1-2との各値を通る直線に基づく関係式を用いてもよい。また、後記するサンプル1-2とサンプル2-2との各値を通る直線に基づく関係式を用いてもよい。また、後記するサンプル2-2とサンプル3-4との各値を通る直線に基づく関係式を用いてもよい。また、後記するサンプル3-4とサンプル4-3との各値を通る直線に基づく関係式を用いてもよい。また、後記するサンプル9-3とサンプル9-7との各値を通る直線に基づく関係式を用いてもよい。
【0026】
(麦芽比率:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率は、所定範囲内となっているのが好ましい。
ここで、「麦芽比率」とは、詳細には、ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める麦芽の重量の比率である。なお、麦芽とは、麦を発芽させ焙燥した後に根を除いたものである。また、麦とは、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率は、66%(重量%)以下が好ましく、50%未満、40%以下、30%以下がより好ましい。ビールテイスト飲料の麦芽比率が所定値以下(又は未満)であることによって、飲んだ後に嫌なアルコール臭を感じるという課題がより明確化する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率の下限は特に限定されないものの、1%以上が好ましく、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料の麦芽比率が所定値以上であることによって、より味の厚みを増強させることができる。
【0028】
(麦:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に麦を含んでいてもよい。麦とは、発芽させていない状態の麦であり、前記と同様、大麦、小麦、ライ麦、燕麦等であるが、大麦が好ましい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料において、原料中における麦(特に、大麦)の含有比率は特に限定されないものの、例えば、1%(重量%)以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上であり、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下であればよい。
【0029】
(糖類:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に糖類(糖質原料)を含んでいてもよい。糖類(糖質原料)とは、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される糖類であれば特に制限されない。また、糖類は、単糖類、二糖類及び三糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよく、更に四糖以上の糖類を含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってもよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料において、原料中における糖類の含有比率は特に限定されないものの、例えば、1%(重量%)以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上であり、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下であればよい。
【0030】
(苦味価)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価(Bitterness Unit:BU)が所定範囲であればよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、特に限定されないものの、例えば、1以上、10以上、15以上、20以上、30以上であり、50以下、40以下、30以下、25以下、20以下である。
なお、ビールテイスト飲料の苦味価は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。
【0031】
(リナロール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、リナロールを含有していてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のリナロールの含有量は、特に限定されないものの、例えば、3.5ppb(μg/L)以上、5ppb以上、10ppb以上、30ppb以上、50ppb以上、100ppb以上であり、200ppb以下、150ppb以下、100ppb以下、80ppb以下である。
なお、ビールテイスト飲料のリナロールの含有量は、例えば、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)によって測定することができる。
【0032】
(酢酸エチル)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸エチルを含有していてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチルの含有量は、特に限定されないものの、例えば、10ppm(mg/L)以上、20ppm以上、30ppm以上、40ppm以上、50ppm以上であり、150ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、40ppm以下である。
【0033】
(酢酸イソアミル)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酢酸イソアミルを含有していてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸イソアミルの含有量は、特に限定されないものの、例えば、1ppm(mg/L)以上、2ppm以上、3ppm以上、4ppm以上であり、10ppm以下、5ppm以下、3ppm以下、2ppm以下である。
なお、ビールテイスト飲料の酢酸エチル、酢酸イソアミルの含有量は、BCOJビール分析法(財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編集1996年4月1日発行)の「8.22 低沸点香気成分」の方法にしたがい、FID検出器付きガスクロマトグラフ(装置名:Agilent 6890ガスクロマトグラフ)を用いて測定することができる。
【0034】
(発泡性)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であるのが好ましい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の20℃におけるガス圧は、特に限定されないものの、例えば、2.0kg/cm2以上、2.2kg/cm2以上、2.3kg/cm2以上、2.4kg/cm2以上であり、5.0kg/cm2以下、4.0kg/cm2以下、3.0kg/cm2以下である。
【0035】
(その他)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、酢酸、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0036】
(容器詰めビールテイスト飲料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が所定値以上であり、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすことから、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減している。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、マイルドな酸味が増強しているとともに、味の厚みが増強している。
【0038】
[ビールテイスト飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、アルコール度数を所定値以上とし、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすようにする工程を含み、詳細には、発酵前工程と、発酵工程と、発酵後工程と、を含む。
【0039】
(発酵前工程)
発酵前工程では、前記した麦芽、必要に応じて、麦、糖類、酵素、各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を得る。そして、糖化液を適宜ろ過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を調製する。
【0040】
発酵前工程において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料(麦芽や麦)を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、前記した糖類や麦由来原料に含まれる糖類である。
【0041】
発酵前工程で使用するホップは、特に限定されず、例えば、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0042】
(発酵工程)
発酵工程は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、予め温度が所定の範囲内(例えば、0~40℃の範囲)に調製された発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製し、発酵を行う。
【0043】
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
【0044】
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び各種成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1~20%とすることができる。
【0045】
(発酵後工程)
発酵後工程は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程としては、例えば、発酵工程により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。なお、精密ろ過に代えて、発酵後液を加熱することにより殺菌することとしてもよい。発酵後工程における一次ろ過、二次ろ過、加熱は、ビールテイスト飲料を製造する際に使用される一般的な設備で行うことができる。
なお、発酵後工程には、前記した容器に充填する工程も含まれる。
【0046】
発酵後工程によって得られたビールテイスト飲料のアルコール度数、エキス分、コハク酸の含有量等が前記した所定範囲内又は所定値以上となり、各関係式を満たすように製造されていればよい。例えば、各工程のいずれかにおいて、蒸留アルコール、不揮発成分(例えば、食物繊維)、コハク酸を添加してもよいし、発酵後工程において、各指標や含有量が所定値以上になっていない場合は、適宜、蒸留アルコール、不揮発成分、コハク酸等を添加してもよい。
【0047】
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発酵工程を経ないで製造することもできる。つまり、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、非発酵飲料として製造されてもよい。
この場合、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、混合タンクに、水、不揮発成分、コハク酸、添加剤、麦芽エキス、蒸留アルコールなどの原料を適宜投入する調合工程(混合工程)と、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を行う後処理工程と、を含むこととなる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、アルコール度数を所定値以上とし、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすようにする工程を含むことから、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減したビールテイスト飲料を製造することができる。
【0049】
[ビールテイスト飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、アルコール度数が所定値以上のビールテイスト飲料を飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭を低減する香味向上方法であって、アルコール度数を所定値以上とし、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすようにする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「ビールテイスト飲料」において説明した値と同じである。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、アルコール度数を所定値以上とし、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすようにすることから、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭を低減することができる。
【実施例】
【0051】
[実施例1]
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0052】
[サンプルの準備]
麦芽比率が約25%となるように麦芽(粉砕した大麦麦芽)、大麦、糖類(液糖)、並びに、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させてビールテイスト飲料(ベース液)を得た。
【0053】
そして、ベース液に対して、適宜、蒸留アルコール、不揮発成分(難消化性デキストリン)、コハク酸を添加し、各成分の含有量等が表に示す値となる各サンプルを準備した。
【0054】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、選抜された識別能力のあるパネル3名が下記評価基準に則って「マイルドな酸味」、「味の厚み」、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0055】
(マイルドな酸味:評価基準)
マイルドな酸味の評価については、「マイルドな酸味が非常に強い」場合を5点、「マイルドな酸味が非常に弱い、又は、酸味がマイルドではない」場合を1点として5段階で評価した。そして、マイルドな酸味の評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
詳細には、マイルドな酸味とは、尖った酸味ではなく、旨味の感じられるまろやかな酸味である。
なお、マイルドな酸味については、サンプル1-1(1点)を基準として評価した。
【0056】
(味の厚み:評価基準)
味の厚みの評価については、「味の厚みが非常に大きい」場合を5点、「味の厚みが非常に小さい」場合を1点として5段階で評価した。そして、味の厚みの評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
なお、味の厚みについては、サンプル1-1(1点)を基準として評価した。
【0057】
(飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭:評価基準)
飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭の評価については、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が非常に弱い」場合を5点、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が非常に強い」場合を1点として5段階で評価した。そして、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭の評価については、点数が高いほど、好ましいと判断できる。
なお、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭については、サンプル1-3(1点)を基準として評価した。
【0058】
各表には、各サンプルの各評価結果を示す。そして、各表における「発酵アルコール」は、ベース液に基づくアルコール(最終製品におけるアルコール度数)であり、「添加アルコール」は、ベース液に対して添加した蒸留アルコール(最終製品におけるアルコール度数)である。また、「エキス分」、「コハク酸」は、最終製品の指標や含有量である。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
(結果の検討)
サンプル1-1~1-3、2-1~2-2、3-1~3-5、4-1~4-4、5-1~5-2の「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」に関する結果を
図1に示した。
なお、
図1中の「◎」は、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」が4点以上であり、「〇」は4点未満3点以上であり、「×」は3点未満である。
この
図1の結果から明らかなように、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすサンプルは、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減していることが確認できた。
【0065】
また、各サンプルの「マイルドな酸味」の結果から明らかなように、コハク酸の含有量が所定範囲内であり、エキス分が所定範囲内であると、マイルドな酸味が増強していることが確認できた。
また、各サンプルの「味の厚み」の結果から明らかなように、エキス分が所定範囲内(又は、所定値以上)であると、味の厚みが増強していることが確認できた。
【0066】
[実施例2]
次に、アルコール度数を変化させた場合についても本発明の効果を発揮し得るか否かの確認を行った。
【0067】
なお、実施例2は、前記した実施例1と比較すると、サンプルのアルコール度数(添加した蒸留アルコールの量)が異なるだけであり、その他の[サンプルの準備]、[試験内容]等は同じであった。
【0068】
【0069】
(結果の検討)
サンプル6-1は、アルコール度数が高かったため、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」の点数が若干低かったものの、アルコール度数の高さを考慮すると「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」の低減効果は十分である(2.5点以上となっている)と判断できた。
なお、サンプル6-1は、「マイルドな酸味」、「味の厚み」についても良好な結果となった。
【0070】
[実施例3]
次に、麦芽比率を変化させた場合についても本発明の効果を発揮し得るか否かの確認を行った。
【0071】
[サンプルの準備]
麦芽比率が約40%となるように麦芽(粉砕した大麦麦芽)、糖類、エンドウタンパク(ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める比率が1%未満)、並びに、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させてビールテイスト飲料(ベース液)を得た。
そして、ベース液に対して、適宜、蒸留アルコール、不揮発成分(難消化性デキストリン)、コハク酸を添加し、各成分の含有量等が表に示す値となるサンプルを準備した。
【0072】
[試験内容]
試験内容は、実施例1と同じであった。
【0073】
【0074】
(結果の検討)
サンプル7-1の結果から、麦芽比率が実施例1、2の値から変化しても、アルコール度数が所定値以上であって、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たせば、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減していることが確認できた。
【0075】
[実施例4]
次に、アルコール度数を非常に高く設定した場合についても本発明の要件が同様に適用できるか否かの確認を行った。
【0076】
実施例3で作成したベース液に対して、適宜、蒸留アルコール、不揮発成分(難消化性グルカン)、コハク酸を添加し、各成分の含有量等が表に示す値となる各サンプルを準備した。
【0077】
[試験内容]
試験内容は、実施例1と同じであった。
ただし、マイルドな酸味と味の厚みとについては、サンプル8-1(1点)を基準として評価し、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭については、サンプル8-3(1点)を基準として評価した。
【0078】
【0079】
【0080】
(結果の検討)
サンプル8-1~8-6、9-1~9-8の「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」に関する結果を
図2に示した。
なお、
図2中の「◎」は、「飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭」が4点以上であり、「〇」は4点未満3点以上であり、「△」は3点未満2.5点以上であり、「×」は2.5点未満である。
この
図2の結果から明らかなように、エキス分とコハク酸の含有量とに基づく所定の関係式を満たすサンプルは、アルコール度数を非常に高く設定した場合であっても、飲んだ後に感じる嫌なアルコール臭が低減していることが確認できた。
そして、
図1の結果(アルコール度数9%)と
図2の結果(アルコール度数19%)とを照らし合わせると明らかなように、アルコール度数が所定値以上となっていれば、本発明が規定する要件を問題なく適用できることが確認できた。
【0081】
また、各サンプルの「マイルドな酸味」の結果から明らかなように、アルコール度数を非常に高く設定した場合であっても、コハク酸の含有量が所定範囲内であり、エキス分が所定範囲内であると、マイルドな酸味が増強していることが確認できた。
また、各サンプルの「味の厚み」の結果から明らかなように、アルコール度数を非常に高く設定した場合であっても、エキス分が所定範囲内(又は、所定値以上)であると、味の厚みが増強していることが確認できた。