(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/091 20060101AFI20230518BHJP
F16D 11/04 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
F16H3/091
F16D11/04 C
(21)【出願番号】P 2018549892
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2017057000
(87)【国際公開番号】W WO2017162826
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2019-12-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511247389
【氏名又は名称】キネテイツク・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ロバート・ウィリアム
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】久島 弘太郎
【審判官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532968(JP,A)
【文献】特開平1-224545(JP,A)
【文献】特開平8-253040(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第1324765(GB,A)
【文献】特開平5-44796(JP,A)
【文献】特開2012-172793(JP,A)
【文献】特開2011-237003(JP,A)
【文献】特表2008-531948(JP,A)
【文献】特開平5-296323(JP,A)
【文献】特開平5-106723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動部材をそれぞれ支持する入力軸と、出力軸と、少なくとも1つの架橋軸とを備える多重ギアレンジ変速機であって、
架橋軸は、トルク入力部またはトルク出力部に接続されておらず、
架橋軸上の駆動部材は、入力軸および/または出力軸のいずれかに支持された駆動部材と動作可能に協働して、少なくとも2つのギアレンジにグループ分けされた複数のそれぞれの結果として生じる変速比に対応する複数の選択可能な負荷経路を介して、入力軸と出力軸との間で負荷を伝達し、
各軸は、軸に選択的に回転可能に固定されることができる
2つ以上の駆動部材を有し、
ギアレンジを上下させる連続的な変速比は、入力軸または出力軸いずれかのうち一方からの異なるそれぞれの駆動部材を含む負荷経路を使用して、トルク伝達を中断することなく、選択可能であり、
連続的なギアレンジは、入力軸または出力軸いずれかのうち他方からの異なるそれぞれの駆動部材を含む負荷経路を使用して、トルク伝達を中断することなく、選択可能であり、さらに、
選択されたギアレンジの上位または下位の選択された
変速比から、次の利用可能なギアレンジの次の利用可能な
変速比への移行は、現在選択されている
変速比の負荷経路に関与していない入力軸および出力軸からの駆動部材を備える新しい負荷経路の選択を含み、
軸に選択的に回転可能に固定可能なあらゆる駆動部材が、トルクが2つの対向する方向で伝達されることを可能にするように固定され、
軸に選択的に回転可能に固定可能な駆動部材が、そのような各駆動部材の両側で軸とともに回転するドッグハブを係合することによってそのように固定され、
一の駆動部材用の前進駆動ドッグハブが、
別の駆動部材用の後進駆動
ドッグハブに機械的に連結され、これらの2つのドッグハブをそのような駆動部材に同時に係合させることができないようにする、
多重ギアレンジ変速機。
【請求項2】
変速機が、三角形の構成に配置された入力軸と、出力軸と、唯一の架橋軸とを備える請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
入力軸上のあらゆる駆動部材が、軸に選択的に回転可能に固定可能である請求項1または2に記載の変速機。
【請求項4】
出力軸上のあらゆる駆動部材が、軸に選択的に回転可能に固定可能である請求項1から3のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項5】
入力軸および/または出力軸が、一対の駆動部材を支持し、前記一対の駆動部材のうちの1つの駆動部材は、軸の端部に配置されており、それらの駆動部材のうちの1つの駆動部材のための前進駆動ドッグハブが、それらの駆動部材のうち他方のための後進駆動
ドッグハブに機械的に連結されて、それらの2つのドッグハブをそれらの駆動部材に同時に係合させることができないようにする請求項1に記載の変速機。
【請求項6】
架橋軸上の少なくとも1つの端部の駆動部材が、軸に選択的に回転可能に固定可能な請求項1から5のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項7】
架橋軸上の両方の端部の駆動部材が、軸に選択的に回転可能に固定可能な請求項6に記載の変速機。
【請求項8】
入力軸
の駆動部材、出力軸
の駆動部材、および
、架橋軸
の駆動部
材が、これらの軸を横切る単純な平歯車列を形成する請求項1から7のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項9】
出力軸および架橋軸のそれぞれの駆動部材が、これらの軸を横切る複合歯車列または遊星歯車列を形成する請求項1から8のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項10】
架橋軸が、一緒に回転し、入力軸および出力軸上の駆動部材それぞれと動作可能に協働する2つの異なるサイズの部品を備えた少なくとも1つの複合駆動部材を備えて、3つの軸を横切る複合歯車列を形成する請求項9に記載の変速機。
【請求項11】
駆動部材のサイズおよび構成が、変速機の最下位
の変速比から最上位
の変速比に進む際に、ギアレンジ間の移行を含む
変速比内のあらゆる段階が実質的に等しい段階であるように選択される請求項1から10のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の変速機を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機に関するものであり、特に、排他的ではないが変速を実現するための車両用変速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2014/049317号パンフレットは、本明細書の
図1に示されているQ-Shiftギアボックスとして知られているギアボックスを記載している。示されているギアボックスは、4つの選択可能な変速比を有し、車での使用に適している。重量出力比の低い大型車両(例えば、トラックおよび貨物自動車)は、典型的にはさらに選択可能な変速比を必要とする。Q-Shiftギアボックスがさらに選択可能な変速比を有するためには、対向する伝達軸にさらに多くの歯車が連結される必要がある。Q-Shiftギアボックスは、選択可能な変速比の数が増えるにつれて長くなり、これは、変速機を収容するスペースが限られていることから、一部の車両では実用的ではない。本発明の態様は、この問題に対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、複数の駆動部材をそれぞれ支持する入力軸と、出力軸と、少なくとも1つの架橋軸とを備える多重ギアレンジ変速機が提供され、架橋軸は、トルク入力部またはトルク出力部に接続されておらず、架橋軸上の駆動部材は、入力軸および/または出力軸のいずれかに支持された駆動部材と動作可能に協働して、少なくとも2つのギアレンジにグループ分けされた複数のそれぞれの結果として生じる変速比に対応する複数の選択可能な負荷経路を介して、入力軸と出力軸との間で負荷を伝達し、各軸は、軸に選択的に回転可能に固定されることができる1つ以上の駆動部材を有し、ギアレンジを上下させる連続的な変速比は、入力軸または出力軸いずれかのうち一方からの異なるそれぞれの駆動部材を含む負荷経路を使用して選択可能であり、連続的なギアレンジは、入力軸または出力軸いずれかのうち他方からの異なるそれぞれの駆動部材を含む負荷経路を使用して選択可能であり、さらに、選択されたギアレンジの上位または下位の選択された歯車から、次の利用可能なギアレンジの次の利用可能な歯車への移行は、現在選択されている歯車の負荷経路に関与していない入力軸および出力軸からの駆動部材を備える新しい負荷経路の選択を含む。
【0005】
前述したように、トルク伝達を中断することなく、またはクラッチを踏むことなく、ギアチェンジ(変速)を完了するプライマリギアボックスが知られており、プライマリギアボックスには例えば、前述のQシフトギアボックスが含まれる。多くの変速比を有する広いギアレンジを必要とする車両(例えば重量物車両)では、単純な2軸ギアボックスは実用的ではない。しかしながら、追加のレンジ切替ギアボックスの使用は、トルク伝達のクラッチ遮断および中断を伴うことがあり、プライマリギアボックスの利点の一部を失うことになる可能性がある。
【0006】
この第1の態様による変速機では、入力軸または出力軸のいずれか一方からの異なるそれぞれの駆動部材を含む負荷経路を使用して、ギアレンジを上下させる連続的な変速比を選択することができ、これにより、Qシフト式変速機の場合のように、トルク伝達を中断することなくギアチェンジが可能になる。
【0007】
さらに、選択されたギアレンジの上位または下位の選択された歯車から、次の利用可能なギアレンジの次の利用可能な歯車への移行は、現在選択されている歯車の負荷経路に関与していない入力軸および出力軸からの駆動部材を備える新しい負荷経路の選択を含み、これにより、トルク伝達を中断することなくギアレンジの移行が可能になる。
【0008】
好ましい実施形態では、特定のギアレンジを特徴付ける負荷経路機構とは、通常、出力軸上で選択された特定の駆動部材であり、出力軸上の駆動部材は、それぞれの(高速のための)上位のギアレンジに対応して増大するサイズで配置される。この状況では、特定の駆動部材が入力軸上で選択されて、ギアレンジ内の歯車を切り替え、入力軸上の駆動部材もまた、ギアレンジ内のそれぞれの(高速のための)上位の歯車に対応して増大するサイズで配置される。
【0009】
通常、このような変速機は、(端から見て)三角形の構成に配置された入力軸と、出力軸と、唯一の架橋軸とを備える。
【0010】
通常、入力軸上の駆動部材はいずれも、軸に選択的に回転可能に固定されることができる。同様に、通常、出力軸上の駆動部材はいずれも、軸に選択的に回転可能に固定されることができる。本変速機は、エンジンの加速および制動の両方を伝達するために、トルクが2つの対向する方向で伝達される必要がある車両に特に使用される。したがって、軸に選択的に回転可能に固定されることができる駆動部材はいずれも、(恒久的に固定された駆動部材に関して)トルクが2つの対向する方向で伝達されるように固定されることが好ましい。
【0011】
軸に選択的に回転可能に固定されることができる駆動部材は、そのような各駆動部材の両側で(軸とともに回転する)ドッグハブを係合することによってそのように固定されてもよく、(Qシフト機構の場合のように)一方の駆動部材用の前進駆動ドッグハブが、他方の前記駆動部材用の後進駆動ハブに機械的に連結され、これらの2つのドッグハブをこのような駆動部材に同時に係合させることができないようにする。これにより、ギアレンジ内でのギアチェンジ時のロックアップが回避される。
【0012】
同様に、その両端に一対のそのような駆動部材を備える任意の特定の軸(入力軸および/または出力軸など)では、これらの駆動部材のうち一方のための前進駆動ドッグハブが、(例えば、軸に沿って延びる剛性の細長いカップリングによって)それらの駆動部材のうち他方のための後進駆動ハブに機械的に連結されてもよく、それらの2つのドッグハブもそれらの駆動部材に同時に係合させることができないようにする。これにより、異なるギアレンジ間の移行時のロックアップが回避される。
【0013】
架橋軸は、軸に選択的に回転可能に固定可能な少なくとも1つの駆動部材を有していなければならず、駆動部材は、架橋軸から連結されるか、連結解除されることができ、この部材は、通常、架橋軸の一端にあるべきである。理想的には、架橋軸の他端は、通常、軸に選択的に回転可能に固定可能な同様の駆動部材を有するべきである。3つ以上の駆動部材を有する架橋軸の場合、端部駆動部材の間に配置された中間駆動部材が架橋軸に恒久的に固定されることが可能である(例えば、架橋軸からの切り離しが重要であるギアレンジの切替に関与する必要がないため)。
【0014】
好ましい実施形態では、入力軸および出力軸のあらゆる駆動部材が軸に選択的に回転可能に固定され、駆動部材の1つが入力軸または出力軸のいずれかに回転可能に固定される切替が、選択可能な結果として生じる変速比のレンジを切り替えさせるのに対して、入力軸または出力軸の他方に駆動部材のいずれが回転可能に固定されるかを切り替えることにより、各レンジの変速比が個別に選択される。通常、駆動部材の1つが出力軸に回転可能に固定される切替が、選択可能な結果として生じる変速比のレンジを切り替えさせるのに対して、入力軸に駆動部材のいずれが回転可能に固定されるかを切り替えることにより、各レンジの変速比が個別に選択される。
【0015】
入力軸、出力軸および架橋軸のそれぞれの駆動部材は、これらの軸を横切る単純な平歯車列を単に形成してもよい。例えば、入力軸、出力軸および架橋軸のそれぞれの端部駆動部材は、軸を横切る単一の整列した歯車列を形成するために直線に沿って位置してもよい。これは、最小駆動部材(レンジ内の最下位歯車)に対して可能である。(駆動部材がそれよりも大きい)後の歯車では、さらに複雑な歯車列を使用して必要な変速比の増加が達成されてもよい。例えば、出力軸および架橋軸のそれぞれの駆動部材は、これらの軸を横切る複合歯車列または遊星歯車列を形成してもよい。
【0016】
特に、架橋軸は、一緒に回転し、入力軸および出力軸上の駆動部材それぞれと動作可能に協働する2つの異なるサイズの部品を備える少なくとも1つの複合駆動部材を備えてもよく、それによって3つの軸を横切る複合歯車列を形成する。このような複合駆動部材は、(例えば、中間駆動部材のための)架橋軸に恒久的に固定されてもよく、または(例えば端部複合駆動部材のための)架橋軸に選択的に回転可能に固定されてもよい。
【0017】
理想的には、駆動部材のサイズおよび構成は、変速機の最下位歯車から最上位歯車に進む際に、ギアレンジ間の移行を含む歯車内のあらゆる段階が実質的に等しい段階であるように選択される。これは、歯車が真に順次的であり、いくつかの従来技術のレンジ切替ギアボックスの場合のように、レンジ切替後に歯車がいずれも冗長でないことを意味する。
【0018】
特に、架橋軸から出力軸への選択可能な接続の比は、好ましくは、非レンジ切替シフトと同様に、レンジ切替シフトに関して入力軸から出力軸への比の切替を確実にするのに適しているべきである。架橋軸から出力軸への接続部のうち1つは、架橋軸上の歯車と噛合する出力軸上の歯車であってよく、これは入力軸上の歯車とも噛合するが、必要な比を提供するために、他の接続部が、架橋軸上の追加の歯車、または遊星歯車接続などの別の歯車接続を経由する必要がある。
【0019】
疑義を避けるために、入力軸および出力軸とは、変速機のトルク入力部およびトルク出力部とそれぞれ動作可能に接続している軸を意味する。架橋軸は、それらの間でトルク負荷を伝達する(例えば軸受内で)それらの間に位置する中間軸であり、それ自体はトルク入力部またはトルク出力部に接続されていない。各前記軸上の駆動部材は、使用時に変速機のトルク入力部とトルク出力部との間で負荷を伝達するために少なくとも1つの他の前記軸によって支持される駆動部材と動作可能に協働するように配置されるが、入力軸および出力軸上の駆動部材は互いに直接動作可能に協働しない。
【0020】
好ましくは、駆動部材は、以下に参照されるQシフト機構によって軸に選択的に回転可能に固定される。この機構では、各駆動部材は、一時的に固定されて、それぞれの正および負のトルク接続時に駆動部材の対向する側面と一時的に同時に係合する一対のドッグハブによってその軸とともに回転して、2つの対向するトルク方向でエンジンの加速と制動とをそれぞれ伝達する。ドッグハブは、(例えば、スプライン結合によって)それらが常に軸とともに回転するように取り付けられるが、選択機構の作動によって軸方向に摺動して駆動部材と係合/係合解除するようにされる。ドッグハブ面と、駆動部材の側面との相補的な突起は、正および負のトルク接続を提供するために係合されてもよく、トルク接続の逆転時に徐々に係合(引込み)および係合解除することができるように形状付けられてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、複数の駆動部材をそれぞれ支持する複数の軸を備えた変速機が提供され、各前記軸上の駆動部材は、使用時に変速機のトルク入力部とトルク出力部との間で負荷を伝達するために少なくとも1つの他の前記軸によって支持された駆動部材と動作可能に協働するように配置され、変速機は、トルク入力部とトルク出力部との間の負荷経路を切り替えることにより、使用時に複数のそのグループのそれぞれから、トルク入力部とトルク出力部との間のそれぞれの結果として生じる変速比が選択されることができるように構成され、選択可能な結果として生じる変速比の各前記グループは、そのグループ内の選択可能な結果として生じる変速比に共通の一対の軸間で負荷を伝達するための負荷経路機構を有する。
【0022】
そのような変速機の任意の機構および詳細は、従属請求項12から23に記載されている。しかしながら、第1の態様に関連して上述した任意の機構もこの第2の態様に組み込まれてもよい。
【0023】
本発明の別の態様によれば、請求項25に記載の車両が提供される。
【0024】
これより、非限定的な例として添付の図面を参照して、本発明の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】公知の従来技術のギアボックスの概略斜視図である。
【
図2a】本発明の一実施形態による変速機の概略平面図であって、(明確にするために)隠されたドッグハブを示す概略平面図である。
【
図2b】本発明の一実施形態による変速機の概略平面図であって、存在するがニュートラルな状態にあるドッグハブを示す概略平面図である。
【
図3】第1の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図4】第2の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図5】第3の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図6】第4の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図7】第5の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図8】第6の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図9】第7の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図10】第8の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図11】第9の選択可能な変速比構成で示された
図2bの変速機の概略平面図である。
【
図12】係合解除された構成で示された既知の歯車および関連するドッグハブ構成の概略平面図である。
【
図13】様々な角度からの分解概略図で
図12の特徴を示す図である。
【
図14】係合構成で示された
図12の構成の概略平面図である。
【
図15】本発明の他の実施形態による変速機の概略平面図である。
【
図16】本発明のさらなる実施形態による変速機の概略線図である。
【
図17】その間の遊星歯車接続を有する架橋軸および出力軸の概略線図である。
【
図18】その間の遊星歯車接続を有する架橋軸および出力軸の概略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2aおよび
図2bは、本発明の第1の実施形態による車両用変速機10を示す。理解を容易にするために、
図2aは、ドッグハブが取り外された状態の変速機を示し、
図2bは、ニュートラルな状態の変速機を示す。
【0027】
変速機10は、相互に平行に配置された入力軸12、架橋軸14および出力軸16を有する。入力軸12は、左から右へ径が漸増する第1から第3の歯車18a、20a、22aを支持する。架橋軸14は、一次歯車18bと、二次歯車20b
1と、三次歯車20b
2と、複合歯車である四次歯車22bとを支持する。四次歯車22bは、第2の部分22b
2よりも小径の第1の部分22b
1を有する。出力軸16は、左から右へ径が漸増する第1から第3の歯車18c、20c、22cを支持する。各軸12、14、16に歯車の異なる組合せを回転可能に選択的に固定させて、トルク入力機構とトルク出力機構との間の負荷経路を選択的に切り替えることによって、変速機10のトルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比を切り替えることができる。個々の選択可能な変速比構成(
図3から
図11)間の漸進的なシフトが、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の全体的な結果として生じる変速比に同様の段階的変化をもたらすように、各歯車のサイズおよび歯の数が選択される。
【0028】
具体的には、架橋軸14上の一次歯車18bが、入力軸上の第1の歯車18aおよび出力軸16上の第1の歯車18cに噛合する。架橋軸14上の二次歯車20b1は、出力軸16上の第2の歯車20cに噛合する。架橋軸14上の三次歯車20b2は、入力軸12上の第2の歯車20aに噛合する。架橋軸14上の四次歯車22bの第1の(小径)部分22b1が、出力軸16上の第3の歯車22cに噛合するのに対して、四次歯車22bの第2の(大径)部分22b2は、入力軸12上の第3の歯車22aに噛合する。
【0029】
架橋軸14上の二次歯車20b1と三次歯車20b2とを除いた前述の歯車はいずれも、軸受によって、それらのそれぞれの軸に取り付けられている。このような軸受は、平滑なスラストワッシャと針状ころ軸受との組合せを含むことができ、したがって、歯車をそれらのそれぞれの軸上に軸方向および半径方向に配置するが、それらのそれぞれの軸に対して回転自在に配置する。架橋軸14上の二次20b1および三次歯車20b2は、例えば、溶接によって、架橋軸14に恒久的に回転可能に固定される。
【0030】
この構成では、変速機10がニュートラルな状態にあるため、
図2bのトルク入力機構13とトルク出力機構15との間に負荷経路は存在しない。この状態では、各軸に選択的に回転可能に固定された歯車は、入力軸12上の第3の歯車22aと出力軸16上の第1の歯車18cとを含む。トルク入力機構13に(例えば、車両用パワートレイン内の変速機10の上流のエンジンまたはモータから)トルクが加えられると、入力軸12、したがって第3の歯車22aが駆動回転される。トルクは、架橋軸14に対して回転自在な架橋軸14上の四次歯車18bを介して、出力軸16上の第3の歯車22cに直接伝達される。しかしながら、第3の歯車22cは出力軸22cに対して回転可能に固定されておらず、駆動回転時に出力軸16にトルクを伝達しない。同様に、トルク出力機構13にトルクが加えられると(負のトルク状態、例えば、運転者が車両のスロットルから足を離した場合に生じる可能性がある)、出力軸16、したがって第1の歯車18cが駆動回転される。トルクは、架橋軸14に対して回転自在な架橋軸14上の一次歯車18bを介して、入力軸12上の第1の歯車18aに直接伝達される。しかしながら、第1の歯車18aは、入力軸12に対して回転不能に固定され、駆動回転時に入力軸12にトルクを伝達しない。
【0031】
ニュートラル(
図2b)から変速機10の第1の選択可能な変速比構成(
図3)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。
【0032】
図3を参照すると、変速機10の第1の選択可能な変速比構成では、各軸に選択的に回転可能に固定される歯車には、入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bと、架橋軸14上の四次歯車22bと、出力軸16上の第3の歯車22cとが含まれ、架橋軸上の二次歯車および三次歯車20b
1、20b
2が架橋軸に恒久的に回転可能に固定されていることに留意されたい。この構成では、トルク入力機構13にトルクが加えられると、入力軸12、したがって第1の歯車18aが駆動回転される。架橋軸上の一次歯車18bとの噛合係合により、トルクが伝達され、架橋軸14が回転する。架橋軸14上の四次歯車22bが回転し、噛合係合により出力軸16の第3の歯車22cにトルクが伝達され、それによって、出力軸16を介してトルクがトルク出力機構15に伝達されて、車両用パワートレインの下流の構成要素を駆動回転させる。
【0033】
図3の各軸に回転可能に固定された歯車の特定の組合せによって形成された負荷経路は、L1と表示されている。異なる軸に回転可能に固定された歯車の第2から第9のそれぞれの組合せ(変速機10の第2から第9の選択可能な変速比構成を生じさせる)が
図4から
図11に示されている。軸に回転可能に固定された歯車の異なる組合せによって形成されたそれぞれの負荷経路は、L2からL9と表示されている。
【0034】
二次歯車20b1および三次歯車20b2のみが架橋軸14に恒久的に固定されていることに留意して、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2014/049317号パンフレットに記載された技術を用いて、それらが取り付けられている軸に選択的に回転可能に他の歯車を固定されることができる。特に国際公開第2014/049317号パンフレットの第9頁第12行から第12頁第16行に教示されているように、その両側のドッグハブを移動させて歯車と係合させることによって、歯車が軸に選択的に回転可能に固定される。完全性のために、国際公開第2014/049317号パンフレットに記載されている技術の概要は以下の通りである。
【0035】
図12は、例えば
図2bの入力軸12によって支持された第1の歯車18aと同様に、軸102によって支持された歯車100のクローズアップを示す。
図13は、様々な機構を示すために異なる角度から示された
図12の構成要素の分解図である。これらの図を参照して、歯車100は、2つのスプライン部104、106の間の軸102に取り付けられている。歯車100の両側のスプライン部104、106には、第1および第2の切替部材108、110(または、ドッグハブとも呼ばれる)が取り付けられている。これは、各ドッグハブ108、110の歯部112をそれぞれのスプライン部104、106に噛合させることによって達成される。ドッグハブ108、110は、軸102に沿って摺動することができるが、軸102に回転可能に固定される。
【0036】
各傾斜機構114は、2つのドッグハブ108、110の各側面の周りに円周方向に延びる。図示された実施形態では、傾斜した端部114aでそれぞれ終端する3つのこのような傾斜機構は、時計回りまたは反時計回りのいずれかの方向に、2つのドッグハブの各側面の周りに円周方向に延びる。対応する傾斜機構114は、歯車100の各側面の周りに円周方向に延びる。図示された実施形態では、傾斜した端部114aでそれぞれ終端する3つのこのような傾斜機構114は、隣接するドッグハブ108、110上の直面する傾斜機構114の方向と反対方向に、歯車100の各側面の周りに円周方向に延びる。
【0037】
ドッグハブ108、110が
図12のように歯車100から軸方向に分離されると、歯車100と軸102とは互いに相対的に回転することができる。しかしながら、
図14のように、軸102に沿ってドッグハブ108、110を移動させて歯車100と係合させることによって、具体的には、係合される歯車100に向けてドッグハブ108、110を付勢することによって、軸102に歯車100が回転可能に固定されることができる。引き続き
図14を参照すると、(例えば、軸102をAの方向に回転させ、それによって第1のドッグハブ108もAの方向に回転させることによって、または代替として歯車100を駆動回転させ、歯車100をBの方向に回転させることによって)第1のドッグハブ108と歯車100とを係合した状態で互いに第1の方向に捩じることにより、インターロック傾斜機構114の相互係合された傾斜した端部114aのために、そのような構成要素の一方が他方を駆動回転させる。しかしながら、第1のドッグハブ108と歯車100とを係合した状態で互いに逆方向に捩じると、各構成要素の傾斜部114が互いに乗り上げ、第1のドッグハブ108と歯車100とが別個に付勢される。
【0038】
同様に、歯車100の反対側の第2のドッグハブ108および傾斜機構114にも前述のことが当てはまるが、それらは逆に構成されている。特に、(例えば、入力軸12をBの方向に回転させ、それによって第2のドッグハブ110もBの方向に回転させることによって、または代替として歯車100を駆動回転させ、歯車100をAの方向に回転させることによって)第2のドッグハブ110と歯車100とを係合した状態で互いに第1の方向に捩じることにより、インターロック傾斜機構114の相互係合された傾斜した端部114aのために、そのような構成要素の一方が他方を駆動回転させる。しかしながら、第2のドッグハブ110と歯車100とを係合した状態で互いに逆方向に捩じると、各構成要素の傾斜部114が互いに乗り上げ、第2のドッグハブ110と歯車100とが別個に付勢される。
【0039】
変速機10に使用されるドッグハブの完全な説明がここで提供される。
【0040】
図2bを見直すと、入力軸12は、第1から第4のドッグハブ32a、34a、36a、38aを支持している。さらに、これらのドッグハブは、入力軸12に対して回転可能に固定されているが、前述のようにその長さに沿って移動されることができる。入力軸12に沿った様々なドッグハブの位置に応じて、第1のドッグハブ32aは、入力軸12と第1の歯車18aとの間でトルクを伝達することができ、第2のドッグハブ34aは、入力軸12と第1または第2の歯車18a、20aとの間でトルクを伝達することができ、第3のドッグハブ36aは、入力軸12と第2または第3の歯車20a、22aとの間でトルクを伝達することができ、第4のドッグハブ38aは、入力軸12と第3の歯車22aとの間でトルクを伝達することができる。
【0041】
架橋軸14は、第1から第4のドッグハブ32b、34b、36b、38bを支持する。さらに、これらのドッグハブは、架橋軸14に対して回転可能に固定されているが、その長さに沿って移動されることができる。架橋軸14に沿った様々なドッグハブの位置に応じて、第1および第2のドッグハブ32b、34bはそれぞれ、架橋軸14と一次歯車18bとの間でトルクを伝達することができ、第3および第4のドッグハブ36b、38bはそれぞれ、架橋軸14と(複合歯車であることが想起される)四次歯車22bとの間でトルクを伝達することができる。
【0042】
出力軸16は、第1から第4のドッグハブ32c、34c、36c、38cを支持する。さらに、これらのドッグハブは、出力軸16に対して回転可能に固定されているが、その長さに沿って移動されることができる。出力軸16に沿った様々なドッグハブの位置に応じて、第1のドッグハブ32cは、出力軸16と第1の歯車18cとの間でトルクを伝達することができ、第2のドッグハブ34cは、出力軸16と第1または第2の歯車18c、20cとの間でトルクを伝達することができ、第3のドッグハブ36cは、出力軸16と第2または第3の歯車20c、22cとの間でトルクを伝達することができ、第4のドッグハブ38cは、出力軸16と第3の歯車22cとの間でトルクを伝達することができる。
【0043】
先に
図14に示した構成を論じる際に示唆されているように、場合によっては歯車がドッグハブを駆動回転させるため、ドッグハブが歯車を駆動回転させるとは限らない。これをさらに詳細に説明するために、
図3を参照する。正のトルク状態では(すなわち、エンジンまたはモータからのトルクが、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の変速機10を介して車両用パワートレインの下流の構成要素に伝達される場合)、入力軸12上の第1のドッグハブ32aが、第1の歯車18aを駆動回転させる。さらに、入力軸12を介してトルク入力機構13からトルクが伝達されて第1のドッグハブ32aを回転させ、これにより第1の歯車18aを駆動係合して回転させる。ただし、例えば出力軸16上の第3の歯車22cに着目すると、この歯車は第4のドッグハブ38cを駆動回転させる。さらに、四次歯車22bから、第4のドッグハブ38cを駆動係合して回転させる出力軸16上の第3の歯車22cにトルクが伝達され、これにより、その後、出力軸16およびトルク出力機構15を回転させる。
【0044】
変速機が正のトルク状態にある場合(すなわち、エンジンまたはモータからのトルクが、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の変速機10を介して車両用パワートレインの下流の構成要素に伝達される場合)にのみ負荷される歯車と係合するドッグハブは、前進駆動ドッグハブと呼ばれることができる。同様に、変速機が正のトルク状態にある場合に負荷されない歯車と係合するドッグハブは、後進駆動ドッグハブと呼ばれることができ、そのようなドッグハブは、変速機が負のトルク状態にある場合(例えば、変速機10を介して、トルクがトルク出力機構15からトルク入力機構13へ伝達されている場合)にのみ負荷される。例を挙げてこれを示すために、引き続き
図3を参照すると、入力軸12上の第1のドッグハブ32aと出力軸16上の第4のドッグハブ38cとは、変速機10が正のトルク状態にある場合にのみ負荷されるため、前進駆動ドッグハブである。しかしながら、入力軸12上の第2のドッグハブ34aと出力軸16上の第3のドッグハブ36cとは、変速機10が負のトルク状態にある場合にのみ負荷されるため、後進駆動ドッグハブである。
図3から
図11に示されたそれぞれの選択可能な変速比構成では、前進駆動ドッグハブは「F」で示されている。
【0045】
国際公開第2014/049317号パンフレットの第12頁第17行から第15頁第32行には、それぞれのドッグハブを操作し、選択された変速比に応じて特定の位置に移動させる好適な技術が記載されている。そのような技術が使用されて、選択された変速比に応じて、変速機10の別個の軸上のドッグハブを特定の位置に操作し、それによって前述のそれぞれの負荷経路を生じさせることができる(
図3から
図11)。しかしながら、国際公開第2014/049317号パンフレットの第19頁第10行から第18行に記載されているように、選択された変速比に応じてドッグハブを必要な位置に操作するために、様々な他の技術が使用されることができることが認識されている。
【0046】
様々な選択可能な変速比に進むために、変速機10のドッグハブによって行われる必要がある特定の動作が説明される。
【0047】
ニュートラルから第1
トルク入力機構13とトルク出力機構15との間に負荷経路が存在しないニュートラル状態(
図2b)から、第1の選択可能な変速比構成(
図3)へ進むために、入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車22aとの係合から離脱され、出力軸16上の第1および第2のドッグハブ32c、34cが第1の歯車18cとの係合から離脱される。続いて、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aと係合するように移動され、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bと係合するように移動され、架橋軸14上の第3および第4のドッグハブ36b、38bが四次歯車22bと係合するように移動され、出力軸16上の第3および第4のドッグハブ36c、38cが第3の歯車22cと係合するように移動される。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると(すなわち、変速機10が正のトルク状態にある場合)、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L1に沿ってトルクが伝達される。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L1に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0048】
さらに詳細には、第1の選択可能な変速比構成(
図3)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第1および第2のドッグハブ32a、34aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32aが第1の歯車18aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の一次歯車18bにトルクが伝達される>一次歯車18bにより、前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32bが回転駆動される>これにより、第1のドッグハブ18bに対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定されていることから、第4のドッグハブ38bが架橋軸14とともに回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38bが四次歯車22bを回転駆動させる>噛合係合により、出力軸16上の第3の歯車22cにトルクが伝達される>第3の歯車22cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ38cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0049】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第2のドッグハブ34a、架橋軸14上の第2および第3のドッグハブ34b、36bならびに出力軸16上の第3のドッグハブ36cはいずれも後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L1に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0050】
第1から第2
変速機10の第2の選択可能な変速比構成(
図4)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第1の選択可能な変速比構成から第2の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aとの係合から離脱され、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bとの係合から離脱され、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aと係合するように移動される。ただし、架橋軸14上の第3および第4のドッグハブ36b、38bは四次歯車22bと係合したままであり、出力軸16上の第3および第4のドッグハブ36c、38cは第3の歯車22cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L2に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L2に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0051】
ここで、変速機10が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第1の選択可能な変速比構成(
図3)から第2の選択可能な変速比構成(
図4)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第1の選択可能な変速比構成(
図3)にある間、入力軸12上の第2のドッグハブ34a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第1の歯車18aとの係合から第2の歯車20aと係合するように移動される。第2の歯車20aと係合し、これと同期すると、第2のドッグハブ34aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第2の歯車20aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、第1の負荷経路L1に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第2の歯車20aが第1の歯車18aよりも遅く回転し、したがって第2の歯車20aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第2のドッグハブ34aは、第2の歯車20aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第2の歯車20aを駆動回転させることにより負荷されるようになる。
【0052】
これに続いて、第2の歯車20aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第3の駆動ドッグハブ36aが、最小のバックラッシュで
図14のように第2の歯車20aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第2の歯車20aの直径は、第1の歯車18の直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第1の歯車18aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第2の歯車20aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0053】
第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L2(
図4参照)に沿ってトルクが伝達され始める。入力軸12上の第1のドッグハブ32aと架橋軸12上の第1および第2のドッグハブ32b、34bとは負荷されていないため、負荷経路L2に沿ってトルクが伝達され始めると、第1の歯車18aおよび一次歯車18bとの係合から外されることができる。
【0054】
さらに詳細には、第2の選択可能な変速比構成(
図4)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第2および第3のドッグハブ34a、36aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の三次歯車20b
2にトルクが伝達される>これにより、三次歯車20b
2に対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定されていることから、第4のドッグハブ38bが架橋軸14とともに回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38bが四次歯車22bを回転駆動させる>噛合係合により、出力軸16上の第3の歯車22cにトルクが伝達される>第3の歯車22cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ38cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0055】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第3のドッグハブ36a、架橋軸14上の第3のドッグハブ36bおよび出力軸16上の第3のドッグハブ36cはいずれも後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L2に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0056】
第1の選択可能な変速比構成から第2の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第1の選択可能な変速比構成から第2の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0057】
第2の選択可能な変速比構成(
図4)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機が第1の選択可能な変速比構成(
図2b)にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0058】
第2から第3
変速機10の第3の選択可能な変速比構成(
図5)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第2の選択可能な変速比構成から第3の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aとの係合から離脱され、架橋軸14上の第3および第4のハブ36b、38bが四次歯車22bとの係合から離脱され、入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車22aと係合するように移動される。ただし、出力軸16上の第3および第4のドッグハブ36c、38cは、第3の歯車22cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L3に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L3に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0059】
ここで、変速機10が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第2の選択可能な変速比構成(
図4)から第3の選択可能な変速比構成(
図5)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機10が第2の選択可能な変速比構成(
図4)にある間、入力軸12上の第3のドッグハブ36a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第2の歯車20aとの係合から第3の歯車22aと係合するように移動される。第3の歯車22aと係合し、これと同期すると、第3のドッグハブ36aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第3の歯車22aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分との間の変速比の差は、第2の負荷経路L2に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第3の歯車22aが第2の歯車20aよりも遅く回転し、したがって第3の歯車22aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第3のドッグハブ36aは、第3の歯車22aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第3の歯車22aを駆動回転させることにより負荷されるようになる。
【0060】
これに続いて、第3の歯車22aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第4のドッグハブ38aが、最小のバックラッシュで
図14のように第3の歯車22aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第3の歯車22aの直径は、第2の歯車20aの直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第2の歯車20aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第3の歯車22aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0061】
第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L3(
図5参照)に沿ってトルクが伝達され始める。入力軸12上の第2のドッグハブ34aは負荷されていないため、負荷経路L3に沿ってトルクが伝達されると、第2の歯車20aとの係合から外されることができる。さらに、架橋軸14に沿ってではなく、四次歯車22bを介してトルクが直接伝達されるため、負荷経路L3に沿ってトルクが伝達されると、第3および第4のドッグハブ36b、38bは負荷されず、四次歯車22bとの係合から外されることができる。
【0062】
さらに詳細には、第3の選択可能な変速比構成(
図5)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第3および第4のドッグハブ36a、38aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2にトルクが伝達される>これにより、四次歯車22bの第1の(小径)部分22b
1も回転する>噛合係合により、出力軸16上の第3の歯車22cにトルクが伝達される>第3の歯車22cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ38cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0063】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第4のドッグハブ38aおよび出力軸16上の第3のドッグハブ36cは、ともに後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L3に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0064】
第2の選択可能な変速比構成から第3の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に別の段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第2の選択可能な変速比構成から第3の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトはまた、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0065】
第3の選択可能な変速比構成(
図5)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機が第2または第1の選択可能な変速比構成(
図4)にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0066】
第3から第4
変速機10の第4の選択可能な変速比構成(
図6)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第3の選択可能な変速比構成から第4の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車20aとの係合から離脱され、出力軸16上の第3および第4のハブ36c、38cが第3の歯車22cとの係合から離脱され、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aと係合され、架橋軸12上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bと係合され、出力軸16上の第2および第3のドッグハブ34c、36cが第2の歯車20cと係合される。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L4に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L4に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0067】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第3の選択可能な変速比構成(
図5)から第4の選択可能な変速比構成(
図6)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第3の選択可能な変速比構成(
図5)にある間、入力軸12上の第4のドッグハブ38a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第3の歯車22aとの係合から移動され、これは、第4のドッグハブ38aが後進駆動ドッグハブであり、変速機10の正のトルク状態では負荷されないために可能となる。続いて、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aと係合するように移動され、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bと係合するように移動され、出力軸16上の第2および第3のドッグハブ34c、36cが第2の歯車20cと係合するように移動される。これにより、第3のドッグハブ36cも後進駆動ドッグハブであるため、負荷経路L3に沿って正のトルクが伝達されている間、第3の歯車22cから出力軸16上の第3のドッグハブ36cが離脱されることができる。こうして、負荷経路L3ではなくL4に沿ってトルクが伝達され始める。続いて、入力軸12上の第3のドッグハブ36aおよび出力軸16上の第4のドッグハブ38cは、トルクが負荷経路L4に沿って伝達されることにより負荷されなくなり、入力軸12上の第3の歯車22aおよび出力軸16上の第3の歯車22cとの係合から外されることができる。
【0068】
さらに具体的には、第3の選択可能な変速比構成(
図5)から第4の選択可能な変速比構成(
図6)へのアップシフト中に、第4の選択可能な変速比構成の前進駆動ドッグハブの各々が(言い換えれば、そのような前進駆動ドッグハブのいずれもが)、それぞれが移動されて接触する歯車に同期して初めて、負荷経路L3ではなくL4に沿ってトルクが伝達され始める。このような前進駆動ドッグハブは、入力軸12上の第1のドッグハブ32a、架橋軸14上の第1のドッグハブ32bおよび出力軸16上の第3のドッグハブ36cである。ここで、第4の選択可能な変速比構成(
図6)の後進駆動ドッグハブに関して、その前進駆動ドッグハブが上述のようにそれぞれの歯車と同期すると、対応する後進駆動ドッグハブが、最小のバックラッシュでその歯車とインターロック係合状態になる。このようにして、第4の選択可能な変速比構成の後進駆動ドッグハブが係合される。そのようなドッグハブは、入力軸12上の第2のドッグハブ34a、架橋軸14上の二次ドッグハブ34bおよび出力軸16上の二次ドッグハブ34cである。
【0069】
第3の選択可能な変速比構成から第4の選択可能な変速比構成にアップシフトする間、変速機10のロックアップ状態を回避するために、入力軸12上の第1の歯車18aの前進駆動ドッグハブ(すなわち、第1のドッグハブ32a)が第1の歯車18aと係合される前に、入力軸12上の第3の歯車22aの後進駆動ドッグハブ(すなわち、第4のドッグハブ38a)が第3の歯車22aとの接触から離脱される必要がある。これを達成する1つの方法は、一方が左または右に移動する場合には、他方もそのように移動し、逆も同様であるように、入力軸12上の第1のドッグハブ32aと第4のドッグ38aとの間に機械的接続を設けることである。このようにして、第1のドッグハブ32aを右に移動させて入力軸12上の第1の歯車18aと係合させると、第4のドッグハブ38aも右に移動するが、第3の歯車22aから離れるため、両者は同時に係合することができない。同じ効果を達成する他の方法も可能であり、前述の開示を読んだ当業者には明らかであることが理解される。
【0070】
第4の選択可能な変速比構成の前進駆動ドッグハブが、出力軸18a上の第1の歯車、架橋軸14上の一次歯車18bおよび出力軸16上の第2の歯車20cそれぞれと、どの順序で接触し、同期するかは問題ではない。しかしながら、前述したように、そのような前進駆動ドッグハブの各々が、それらが移動されて接触する歯車と同期して初めて、負荷経路L4に沿ってトルクが伝達され始める。
【0071】
上述の同期の順序は、変速機10の特定の構成に応じて異なる可能性がある。例えば、ドッグハブ位置の切替を操作するために使用される異なる機構によって、第4の選択可能な変速比構成の前進駆動ドッグハブが、わずかに異なる時間にそれぞれの歯車に接触することがある。さらに、歯車を軸に連結する軸受によってもたらされる摩擦の程度の差が、第4の選択可能な変速比の前進駆動ドッグハブをわずかに異なる時間にそれぞれの歯車と同期させることがある。
【0072】
一部の変速機10では、軸受がそうした程度の摩擦を受け続けると、ドッグハブによって歯車が係合されていなくても、これらの歯車がトルクを受け、それらが取り付けられて回転する軸によって本質的に引きずられるのに十分な摩擦を軸受が受ける場合がある。これにより、ドッグハブによって係合されていない場合であっても、歯車のなかには、例えば別途、別の速度で回転している別の歯車によって噛合されていない限り、それらが取り付けられている軸と実質的に同じ速度で回転するものがある可能性がある。しかしながら、別の変速機10では、軸受が受ける摩擦が少ないことがあり、したがって、ドッグハブによって係合されない限り、歯車は基本的にフリーホイールとなる。軸受が受ける摩擦の程度は、変速を実現する際に必要とされる同期の程度に影響を及ぼす。例えば、第3の選択可能な変速比と第4の選択可能な変速比との間のシフトでは、入力軸12上の第1の歯車18a、架橋軸14上の一次歯車18bおよび出力軸上の第1の歯車18cは、それらを取り付ける軸受によってそれぞれの軸に連結されているに過ぎず、ドッグハブによって軸に回転可能に連結されていないことが
図5から明白である。このように、そのような軸受によってもたらされる摩擦が十分に低く、第3の変速比構成(
図5)が十分な時間にわたって係合されると、本質的に空転している歯車は減速する。その結果、続いて第4の選択可能な変速比構成(
図6)にアップシフトすると、入力軸12上の第1の歯車18aおよび架橋軸14上の一次歯車18bが、それらが取り付けられた軸受によってもたらされる摩擦のために、そのような軸の回転速度に近づいて回転していた場合よりも高い同期が、入力軸12上の第1のドッグハブ32aおよび架橋軸14上の第1のドッグハブ32bによって必要とされる。
【0073】
前述のように、必要とする同期が少なくて済むことから、さらに滑らかな変速が達成可能となるため、車両およびドライバーの乗り心地が改善される。
【0074】
第3の選択可能な変速比構成と第4の選択可能な変速比構成との間の例示的なアップシフト動作のさらに具体的な詳細がここで提供される。
【0075】
変速機10が第3の選択可能な変速比構成(
図5)にある間、入力軸12上の第1の歯車18aは入力軸12に対して回転自在であるため、第4の変速比構成(
図6)にシフトすると、入力軸12、したがってそれに回転可能に固定された第1のドッグハブ32aは、第1の歯車18aよりも速く回転する。したがって、変速機10の正のトルク状態では、第1のドッグハブ18aは、第1の歯車32aに付勢されると、その歯車に追従し(同期し)、負荷され、第1の歯車18aを駆動回転させ始める。言い換えれば、第1のドッグハブ18aは、前進駆動ドッグハブとして機能する。
【0076】
この後、第1の歯車18aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第2のドッグハブ34aが、最小のバックラッシュで
図14のように第1の歯車18aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第1の歯車18aとの噛合係合により、架橋軸14上の一次歯車18bが駆動回転される。こうして、前進駆動ドッグハブとして機能する架橋軸14上の第1のドッグハブ32bが、回転するにつれて一次歯車18bによって駆動係合され、その後、架橋軸14が一次歯車18bと同じ速度で回転する。これにより、
図14のように、後進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34bが、一次歯車18bとインターロック係合状態になることが可能になる。
【0077】
架橋軸14上の二次歯車20b
1の直径は、四次歯車22bの第1の(小径)部分22b
1の直径よりも大きい。さらに、i)架橋軸14上の二次歯車20b
1と、出力軸16上の第2の歯車20cとの間の接続部分と、ii)架橋軸14上の四次歯車22bの第1の(小径)部分22b
1と、出力軸16上の第3の歯車22cとの間の接続部分との間の変速比の差は、架橋軸14の所定の回転速度では、出力軸16上の第2の歯車20cが第3の歯車22cよりも速く駆動されるような差である。このように、第2の歯車20cは、第3のドッグハブ36cに追従し(同期し)、これを駆動回転させ、こうして第3のドッグハブ36cが負荷され、前進駆動ドッグハブとして機能し、これにより、続いてトルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L4(
図6参照)に沿ってトルクが伝達される。
【0078】
この後、出力軸16上の第2の歯車20cは出力軸16と同じ速度で回転し、これにより、出力軸16上の第2のドッグハブ34cが、最小のバックラッシュで
図14のように第2の歯車20cとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第3のドッグハブ36aは負荷経路L5に位置していないため、負荷経路L4に沿ってトルクが伝達され始めるともはや負荷されず、第2の歯車20aとの係合から外されることができる。さらに、出力軸12は第3の歯車22cよりも速く回転するため、第4のドッグハブ38cは、これらの構成要素の前述した傾斜部が互いに乗り上げるために、第3の歯車22cとの係合から外に押し出される。
【0079】
第4の選択可能な変速比構成(
図6)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第1および第2のドッグハブ32a、34aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ34aが第1の歯車18aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の一次歯車18bにトルクが伝達される>一次歯車18bによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32bが回転駆動される>これにより、第1のドッグハブ32bに対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定された二次歯車が回転する>噛合係合により、出力軸16上の第2の歯車20cにトルクが伝達される>第2の歯車20cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ36cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0080】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第2のドッグハブ34a、架橋軸14上の第2のドッグハブ34bおよび出力軸16上の第2のドッグハブ34cは、後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L4に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0081】
第3の選択可能な変速比構成から第4の選択可能な変速比構成へのシフトには、入力軸12に沿ったブロックシフトと、出力軸16に沿った単一のシフトとが含まれることに留意されたい。i)架橋軸14上の二次歯車20b1と、出力軸16上の第2の歯車20cとの間の接続部分と、ii)架橋軸14上の四次歯車22bの第1の(小径)部分22b1と、出力軸16上の第3の歯車30cとの間の接続部分との間の変速比の差は、これまでに説明した結果として生じる変速比の3段階の切替(すなわち、第1から第2または第2から第3の前述した変速比構成にシフトすることに起因する結果として生じる変速比の段階の3倍)に相当する。しかしながら、これにより、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差と相まって、変速機10の第3の変速比構成から第4の変速比構成へのシフト時に、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間にみられる結果として生じる変速比の切替は、変速比構成の1段階の切替に相当する(すなわち、前述したように、第1から第2または第2から第3にシフトすることに起因する段階的切替に相当する)。
【0082】
さらに、いくつかの実施形態では、第3の選択可能な変速比構成から第4の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0083】
所定のエンジンまたはモータ速度では、第4の選択可能な変速比構成(
図6)へのシフトの結果として起こる出力軸16の回転速度の増加のために、車両は、変速機が第3のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0084】
第4から第5
変速機10の第5の選択可能な変速比構成(
図7)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第4の選択可能な変速比構成から第5の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aとの係合から離脱され、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bとの係合から離脱され、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aと係合するように移動される。ただし、出力軸16上の第2および第3のドッグハブ34c、36cは、第2の歯車20cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L5に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L5に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0085】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第4の選択可能な変速比構成(
図6)から第5の選択可能な変速比構成(
図7)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第4の選択可能な変速比構成(
図6)にある間、入力軸12上の第2のドッグハブ34a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第1の歯車18aとの係合から第2の歯車20aと係合するように移動される。第2の歯車20aと係合し、これと同期すると、第2のドッグハブ34aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第2の歯車20aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、第1の負荷経路L4に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第2の歯車20aが第1の歯車18aよりも遅く回転し、したがって第2の歯車20aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第2のドッグハブ34aは、第2の歯車20aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第2の歯車20を駆動回転させることにより負荷されるようになる。
【0086】
これに続いて、第2の歯車20aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第3のドッグハブ28aが、最小のバックラッシュで
図14のように第2の歯車20aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第2の歯車20aの直径は、第1の歯車18の直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第1の歯車18aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第2の歯車20aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0087】
第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L5(
図7参照)に沿ってトルクが伝達され始める。入力軸12上の第1のドッグハブ32aと架橋軸12上の第1および第2のドッグハブ32b、34bとは負荷されていないため、負荷経路L5に沿ってトルクが伝達されると、第1の歯車18aおよび一次歯車18bとの係合から外されることができる。
【0088】
さらに詳細には、第5の選択可能な変速比構成(
図7)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第2および第3のドッグハブ34a、36aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の三次歯車20b
2にトルクが伝達される>これにより、三次歯車20b
2に対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14上の二次歯車20b
1が回転する>噛合係合により、出力軸16上の第2の歯車20cにトルクが伝達される>第2の歯車20cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ36cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0089】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第3のドッグハブ36aおよび出力軸16上の第2のドッグハブ34cは、後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L5に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0090】
第4の選択可能な変速比構成から第5の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第4の選択可能な変速比構成から第5の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0091】
第5の選択可能な変速比構成(
図7)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機が第4のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0092】
第5から第6
変速機10の第6の選択可能な変速比構成(
図8)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第5の選択可能な変速比構成から第6の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aとの係合から離脱され、架橋軸14上の第3および第4のハブ36b、38bが四次歯車22bと係合するように移動され、入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車22aと係合するように移動される。ただし、出力軸16上の第2および第3のドッグハブ34c、36cは、第2の歯車20cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L6に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L6に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0093】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第5の選択可能な変速比構成(
図7)から第6の選択可能な変速比構成(
図8)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第5の選択可能な変速比構成(
図7)にある間、入力軸12上の第3のドッグハブ36a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第2の歯車20aとの係合から第3の歯車22aと係合するように移動される。第3の歯車22aと係合し、これと同期すると、第3のドッグハブ36aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第3の歯車22aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分との間の変速比の差は、第5の負荷経路L5に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第3の歯車22aが第2の歯車20aよりも遅く回転し、したがって第3の歯車22aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第3のドッグハブ36aは、第3の歯車22aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第3の歯車22aを駆動回転させることにより負荷されるようになる。これに続いて、第3の歯車22aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第4のドッグハブ38aが、最小のバックラッシュで
図14のように第3の歯車22aとインターロック係合状態になることが可能になる。
【0094】
入力軸12上の第3の歯車22aと噛合係合することにより、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2が駆動回転される。こうして、前進駆動ドッグハブとして機能する架橋軸14上の第4のドッグハブ38bが、回転するにつれて四次歯車22bによって駆動係合され、その後、架橋軸14が四次歯車22bと同じ速度で回転する。これにより、
図14のように、後進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36bが、四次歯車22bの他方の側とインターロック係合状態になることが可能になる。
【0095】
入力軸12上の第3の歯車22aの直径は、第2の歯車20aの直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b2との間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第2の歯車20aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第3の歯車22aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0096】
入力軸12上の第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aの前進駆動ドッグハブとして機能し始め、架橋軸14上の第4のドッグハブ38bが四次歯車22bの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L6(
図8参照)に沿ってトルクが伝達され始める。第2のドッグハブ34aは負荷されていないため、負荷経路L6に沿ってトルクが伝達されると、第2の歯車20aとの係合から外されることができる。
【0097】
さらに詳細には、第6の選択可能な変速比構成(
図8)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第3および第4のドッグハブ36a、38aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2にトルクが伝達される>四次歯車22bによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38bが回転駆動される>これにより、第4のドッグハブ38bに対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定された二次歯車が回転する>噛合係合により、出力軸16上の第2の歯車20cにトルクが伝達される>第2の歯車20cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36cが回転駆動される>これにより、第3のドッグハブ36cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0098】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第4のドッグハブ38a、架橋軸14上の第3のドッグハブ36bおよび出力軸16上の第2のドッグハブ34cはいずれも後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L6に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0099】
第5の選択可能な変速比構成から第6の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に別の段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第5の選択可能な変速比構成から第6の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトはまた、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0100】
第6の選択可能な変速比構成(
図8)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機が第5のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0101】
第6から第7
変速機10の第7の選択可能な変速比構成(
図9)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第6の選択可能な変速比構成から第7の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車20aとの係合から離脱され、架橋軸14上の第3および第4のハブ36b、38bが四次歯車38bとの係合から離脱され、出力軸16上の第2および第3のドッグハブ34c、36cが第2の歯車34cとの係合から離脱され、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aと係合され、出力軸16上の第1および第2のドッグハブ32c、34cが第1の歯車18cと係合される。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L7に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L7に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0102】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第6の選択可能な変速比構成(
図8)から第7の選択可能な変速比構成(
図9)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第6の選択可能な変速比構成(
図8)にある間、入力軸12上の第4のドッグハブ38a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第3の歯車22aとの係合から移動される。これは、第4のドッグハブ38aが後進駆動ドッグハブであり、変速機10の正のトルク状態では負荷されないために可能となる。続いて、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aと係合するように移動され、出力軸16上の第1および第2のドッグハブ32c、34cが第1の歯車18cと係合するように移動され、これにより、出力軸16上の第2のドッグハブ34cは後進駆動ドッグハブでもあるために、正のトルクが負荷経路L6に沿って伝達されている間に、第2の歯車20cから離脱することができる。こうして、負荷経路L6ではなくL7に沿ってトルクが伝達され始める。続いて、入力軸12上の第3のドッグハブ36a、架橋軸14上の第3および第4のドッグハブ36b、38bならびに出力軸16上の第3のドッグハブ36cは、トルクが負荷経路L7に沿って伝達されることにより負荷されなくなり、入力軸12上の第3の歯車22a、架橋軸14上の四次歯車22bおよび出力軸16上の第2の歯車20cとの係合から外されることができる。
【0103】
さらに具体的には、第6の選択可能な変速比構成(
図8)から第7の選択可能な変速比構成(
図9)へのアップシフト中に、第7の選択可能な変速比構成の前進駆動ドッグハブの各々が(言い換えれば、そのような前進駆動ドッグハブのいずれもが)、それぞれが移動されて接触する歯車に同期して初めて、負荷経路L6ではなくL7に沿ってトルクが伝達され始める。このような前進駆動ドッグハブは、入力軸12上の第1のドッグハブ32aおよび出力軸16上の第2のドッグハブ34cである。ここで、第7の選択可能な変速比構成(
図9)の後進駆動ドッグハブに関して、その前進駆動ドッグハブが上述のようにそれぞれの歯車と同期すると、対応する後進駆動ドッグハブが、最小のバックラッシュでその歯車とインターロック係合状態になる。このようにして、第7の選択可能な変速比構成の後進駆動ドッグハブが係合される。そのようなドッグハブは、入力軸12上の第2のドッグハブ34aおよび出力軸16上の第1のドッグハブ32cである。
【0104】
第6の選択可能な変速比構成から第7の選択可能な変速比構成にアップシフトする間、変速機10のロックアップ状態を回避するために、入力軸12上の第1の歯車18aの前進駆動ドッグハブ(すなわち、第1のドッグハブ32a)が第1の歯車18aと係合される前に、入力軸12上の第3の歯車22aの後進駆動ドッグハブ(すなわち、第4のドッグハブ38a)を第3の歯車22aとの接触から離脱させる必要がある。これを達成する方法は、第3の選択可能な変速比構成と第4の選択可能な変速比構成との間のアップシフトに関連して既に説明されている。
【0105】
第7の選択可能な変速比構成の前進駆動ドッグハブが、入力軸12上の第1の歯車18aおよび出力軸16上の第1の歯車18cそれぞれと、どの順序で接触し、同期するかは問題ではない。しかしながら、前述したように、両方の前進駆動ドッグハブが、それらが移動されて接触する歯車と同期して初めて、負荷経路L7に沿ってトルクが伝達され始める。同期の順序は、変速機10の特定の構成に応じて異なる可能性があり、これに影響を及ぼす要因は、第3の選択可能な変速比構成と第4の選択可能な変速比構成との間のアップシフトに関連して既に説明されている。
【0106】
第6の選択可能な変速比構成と第7の選択可能な変速比構成との間の例示的なアップシフト動作のさらに具体的な詳細がここで提供される。
【0107】
変速機が第6の変速比構成(
図8)にある間、入力軸12上の第1の歯車18aは入力軸12に対して回転自在であるため、第7の変速比構成(
図9)にシフトすると、入力軸12、したがってそれに回転可能に固定された第1のドッグハブ32aは、第1の歯車18aよりも速く回転する。したがって、変速機10の正のトルク状態では、第1のドッグハブ18aは、第1の歯車32aに付勢されると、その歯車に追従し(同期し)、負荷され、第1の歯車18aを駆動回転させ始める。言い換えれば、第1のドッグハブ18aは、前進駆動ドッグハブとして機能する。
【0108】
この後、第1の歯車18aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第2のドッグハブ34aが、最小のバックラッシュで
図14のように第1の歯車18aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第1の歯車18aとの噛合係合により、架橋軸14上の一次歯車18bが駆動回転される。一次歯車18bは架橋軸14に対して回転自在であり、トルクは一次歯車18bを介して出力軸16上の第1の歯車18cに伝達される。
【0109】
架橋軸14上の一次歯車18bの直径は、架橋軸14上の二次歯車20b
1の直径よりも大きい。さらに、i)架橋軸14上の一次歯車18bと、出力軸16上の第1の歯車18cとの間の接続部分と、ii)架橋軸14上の二次歯車20b
1と、出力軸16上の第2の歯車20cとの間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、出力軸16上の第2の歯車20cが第6の選択可能な変速比構成(
図8)で駆動される回転速度よりも、出力軸16上の第1の歯車18cが第7の選択可能な変速比構成(
図9)で速く駆動されるような差である。このように、第7の選択可能な変速比構成(
図9)を選択すると、第1の歯車18cは、第2のドッグハブ34cに追従し(同期し)、これを駆動回転させ、こうして第2のドッグハブ34cが負荷され、前進駆動ドッグハブとして機能し、これにより、続いてトルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L7(
図9参照)に沿ってトルクが伝達される。
【0110】
この後、出力軸16上の第1の歯車18cは出力軸16と同じ速度で回転し、これにより、出力軸16上の第1のドッグハブ32cが、最小のバックラッシュで
図14のように第1の歯車18cとインターロック係合状態になることが可能になる。続いて、負荷経路L7に沿ってトルクが伝達されると、入力軸12上の第3のドッグハブ36aと、架橋軸14上の第3のドッグハブ38bと、架橋軸14の第4のドッグハブ38bとは負荷されなくなるため、入力軸12上の第3の歯車22aおよび架橋軸14上の四次歯車22bとの係合から外されることができる。さらに、負荷経路L7に沿ってトルクが伝達され始めると、出力軸16は第2の歯車34cよりも速く回転し始め、第3のドッグハブ36cは、これらの構成要素の前述した傾斜部が互いに乗り上げるために、第2の歯車34cとの係合から外に押し出される。
【0111】
第7の選択可能な変速比構成(
図9)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第1および第2のドッグハブ32a、34aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32aが第1の歯車18aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の一次歯車18bにトルクが伝達される>噛合係合により、出力軸16上の第1の歯車18cにトルクが伝達される>第1の歯車18cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34cが回転駆動される>これにより、第2のドッグハブ34cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0112】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第2のドッグハブ34aおよび出力軸16上の第1のドッグハブ32cは、後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L7に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0113】
第6の選択可能な変速比構成から第7の選択可能な変速比構成へのシフトには、入力軸12に沿ったブロックシフトと、出力軸16に沿った単一のシフトとが含まれることに留意されたい。i)架橋軸14上の一次歯車18bと、出力軸16上の第1の歯車18cとの間の接続部分と、ii)架橋軸14上の二次歯車20b1と、出力軸16上の第2の歯車20cとの間の接続部分との間の変速比の差は、結果として生じる変速比の3段階の切替(すなわち、第1から第2、第2から第3、第3から第4などの前述した変速比構成にシフトすることに起因する結果として生じる変速比の段階の3倍)に相当する。しかしながら、これにより、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差と相まって、変速機10の第6の変速比構成から第7の変速比構成へのシフト時に、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間にみられる結果として生じる変速比の切替は、変速比構成の1段階の切替に相当する(すなわち、前述したように、第1から第2、第2から第3、第3から第4などにシフトすることに起因する段階的切替に相当する)。
【0114】
さらに、いくつかの実施形態では、第6の選択可能な変速比構成から第7の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0115】
所定のエンジンまたはモータ速度では、第7の選択可能な変速比構成(
図9)へのシフトの結果として起こる出力軸16の回転速度の増加のために、車両は、変速機が第6のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0116】
第7から第8
変速機10の第8の選択可能な変速比構成(
図10)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第7の選択可能な変速比構成から第8の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第1および第2のドッグハブ32a、34aが第1の歯車18aとの係合から離脱されるのに対して、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aと係合するように移動され、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bと係合される。ただし、出力軸16上の第1および第2のドッグハブ32c、34cは、第1の歯車18cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L8に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L8に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0117】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第7の選択可能な変速比構成(
図9)から第8の選択可能な変速比構成(
図10)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第7の選択可能な変速比構成(
図9)にある間、入力軸12上の第2のドッグハブ34a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第1の歯車18aとの係合から第2の歯車20aと係合するように移動される。第2の歯車20aと係合し、これと同期すると、第2のドッグハブ34aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第2の歯車20aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、第7の負荷経路L7に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第2の歯車20aが第1の歯車18aよりも遅く回転し、したがって第2の歯車20aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第2のドッグハブ34aは、第2の歯車20aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第2の歯車20aを駆動回転させることにより負荷されるようになる。
【0118】
これに続いて、第2の歯車20aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第3の駆動ドッグハブ36aが、最小のバックラッシュで
図14のように第2の歯車20aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第2の歯車20aの直径は、第1の歯車18の直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第1の歯車18aと、架橋軸14上の一次歯車18bとの間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第1の歯車18aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第2の歯車20aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0119】
このように入力軸上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aと係合するように移動される間に、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bが一次歯車18bと係合するように移動される。
【0120】
したがって、第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L8(
図10参照)に沿ってトルクが伝達され始める。入力軸12上の第1のドッグハブ32aは負荷されていないため、負荷経路L8に沿ってトルクが伝達されると、第1の歯車18aとの係合から外されることができる。
【0121】
さらに詳細には、第8の選択可能な変速比構成(
図10)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第2および第3のドッグハブ34a、36aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34aが第2の歯車20aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の三次歯車20b
2にトルクが伝達される>これにより、三次歯車20b
2に対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定されていることから、第1のドッグハブ32bが架橋軸14とともに回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32bが一次歯車18bを回転駆動させる>噛合係合により、出力軸16上の第1の歯車18cにトルクが伝達される>第1の歯車18cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34cが回転駆動される>これにより、第2のドッグハブ34cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0122】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第3のドッグハブ36a、架橋軸14上の第2のドッグハブ34bおよび出力軸16上の第1のドッグハブ32cはいずれも後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L8に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0123】
第7の選択可能な変速比構成から第8の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第7の選択可能な変速比構成から第8の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0124】
第8の選択可能な変速比構成(
図10)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機10が第7のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0125】
第8から第9
変速機10の第9の選択可能な変速比構成(
図11)に進むためには、各軸に回転可能に固定された歯車の全体的な組合せの切替が必要である。さらに、第8の選択可能な変速比構成から第9の選択可能な変速比構成に進むために、入力軸12上の第2および第3のドッグハブ34a、36aが第2の歯車20aとの係合から離脱されるのに対して、入力軸12上の第3および第4のハブ36a、38aが第3の歯車22aと係合するように移動され、架橋軸14上の第3および第4のドッグハブ36b、38bが四次歯車22bと係合するように移動される。ただし、架橋軸14上の第1および第2のドッグハブ32b、34bは一次歯車18bに係合したままであり、出力軸16上の第1および第2のドッグハブ32c、34cは第1の歯車18cと係合したままである。その後、入力軸12が正転方向に回転駆動されると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L9に沿ってトルクが伝達される。逆トルク状態では、トルク出力機構15とトルク入力機構13との間の負荷経路L9に沿って逆方向にトルクが伝達される。
【0126】
ここで、変速機が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に、第8の選択可能な変速比構成(
図10)から第9の選択可能な変速比構成(
図11)に切り替えるのに必要なドッグハブ位置の変化がさらに詳細に説明される。変速機が第8の選択可能な変速比構成(
図10)にある間、入力軸12上の第3のドッグハブ36a(後進駆動ドッグハブとして機能する)は、第2の歯車20aとの係合から第3の歯車22aと係合するように移動される。第3の歯車22aと係合し、これと同期すると、第3のドッグハブ36aは前進駆動ドッグハブとして機能し、第3の歯車22aを駆動回転させる。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分との間の変速比の差は、負荷経路L8に沿ってトルクが伝達されている際に、入力軸12上の第3の歯車22aが第2の歯車20aよりも遅く回転し、したがって第3の歯車22aが入力軸12自体よりも遅く回転するような差である。したがって、第3のドッグハブ36aは、第3の歯車22aに付勢されると、追従し(同期し)、その歯車の前進駆動ドッグハブとして機能し始め、第3の歯車22aを駆動回転させることにより負荷されるようになる。
【0127】
これに続いて、第3の歯車22aは入力軸12と同じ速度で回転し、これにより、第4のドッグハブ38aが、最小のバックラッシュで
図14のように第3の歯車22aとインターロック係合状態になることが可能になる。入力軸12上の第3の歯車22aの直径は、第2の歯車20aの直径よりも大きい。さらに、i)入力軸12上の第3の歯車22aと、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2との間の接続部分と、ii)入力軸12上の第2の歯車20aと、架橋軸14上の三次歯車20b
2との間の接続部分との間の変速比の差は、入力軸12の所定の回転速度では、第2の歯車20aのみが入力軸12に回転可能に固定された場合よりも、第3の歯車22aが入力軸12に回転可能に固定された場合の方が、架橋軸14が速く回転されるような差である。
【0128】
上述のように入力軸12上の第3および第4のドッグハブ36a、38aが第3の歯車22aと係合するように移動される間に、架橋軸14上の第3および第4のドッグハブ36b、38bが四次歯車22bと係合するように移動される。
【0129】
したがって、入力軸12上の第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aの前進駆動ドッグハブとして機能し始めると、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の負荷経路L9(
図11参照)に沿ってトルクが伝達され始める。入力軸12上の第2のドッグハブ34aは負荷されていないため、負荷経路L9に沿ってトルクが伝達され始めると、第2の歯車20aとの係合から外されることができる。
【0130】
さらに詳細には、第9の選択可能な変速比構成(
図11)が係合されると、以下のように正のトルクが変速機10を介して伝達される。トルク入力機構13が(例えば、エンジンまたはモータによって)正転方向に回転駆動される>トルク入力機構13に動作可能に接続された入力軸12が同じ速度で回転する>これにより、入力軸12に回転可能に固定された第3および第4のドッグハブ36a、38aが回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第3のドッグハブ36aが第3の歯車22aを駆動回転させる>噛合係合により、架橋軸14上の四次歯車22bの第2の(大径)部分22b
2にトルクが伝達される>四次歯車22bにより、前進駆動ドッグハブとして機能する第4のドッグハブ38bが回転駆動される>これにより、第4のドッグハブ38bに対して回転可能に固定されていることから、架橋軸14が回転する>架橋軸14に回転可能に固定されていることから、第1のドッグハブ32bが架橋軸14とともに回転する>前進駆動ドッグハブとして機能する第1のドッグハブ32bが一次歯車18bを回転駆動させる>噛合係合により、出力軸16上の第1の歯車18cにトルクが伝達される>第1の歯車18cによって、前進駆動ドッグハブとして機能する第2のドッグハブ34cが回転駆動される>これにより、第2のドッグハブ34cに対して回転可能に固定されていることから、出力軸16が回転する>これにより、出力軸16に動作可能に接続されていることから、トルク出力機構15が同じ速度で回転する>これにより、トルク出力機構15が車両用パワートレインの下流の構成要素を回転駆動させる。
【0131】
上述した正のトルク状態では、入力軸12上の第4のドッグハブ38a、架橋軸14上の第2および第3のドッグハブ34b、36bならびに出力軸16上の第1のドッグハブ32cは後進駆動ドッグハブとして機能する。これは、それらが負荷されていないことを意味する。しかしながら、逆トルク状態では、負荷経路L9に沿って逆方向にトルクが伝達され、この場合、後進駆動ドッグハブが負荷され、前進駆動ドッグハブはもはや負荷されない。
【0132】
第8の選択可能な変速比構成から第9の選択可能な変速比構成へのシフトは、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に別の段階的変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、第8の選択可能な変速比構成から第9の選択可能な変速比構成へのこのようなシフトはまた、トルク入力機構13とトルク出力機構15との間の結果として生じる変速比に1.23:1の変化を生じさせ得る。
【0133】
第9の選択可能な変速比構成(
図11)へのシフトの結果として起こる架橋軸14の回転速度の増加は、出力軸16、ひいてはトルク出力機構15の回転速度に、対応する増加をもたらす。その結果、所定のエンジンまたはモータ速度では、車両は、変速機が第8のまたは他の以前の選択可能な変速比構成にあった場合よりも速い速度で走行することができる。
【0134】
追加情報
変速機10が正のトルク状態にある間(すなわち、変速機10を介して車両用パワートレインに沿って動力が伝達されている間)に変速比のアップシフトが起こり得ることから、これは、車両の駆動力を失うことなくアップシフトが起こり得ることを意味する。この利点は、アップシフトを実現するためにクラッチを接続/切断する必要がある車両よりも速い車両加速を行うことができることである。
【0135】
ダウンシフトは、これまでに説明したのと同じ動作の機構によって完了するが、逆方向に、負のトルクが伝達されている間(すなわち、変速機10を介してトルク出力機構15からトルク入力機構13にトルクが伝達されている場合)(例えば運転者が車両のスロットルから足を持ち上げた際に起こり得る)に完了する。
【0136】
前述の変速機10では、入力軸12、架橋軸14および出力軸16はそれぞれ、同じ概念上の平面に沿って延びている。言い換えれば、入力軸12に垂直な概念上の直線が、架橋軸14および出力軸16をも通って延びている。しかしながら、いくつかの実施形態では、入力軸12、架橋軸14および出力軸16は、同じ概念上の平面に沿って延びていなくてもよく、その場合、
図15のように入力軸12を出力軸16に近づける三角形の向きに配置されることができる。
【0137】
前述した変速機10に対して変速比シフトを実現するために、適切なドッグハブの移動を生じさせるための1つの好適な機構の詳細がここに提供される。この機構では、変速比シフトを実現するのに必要なドッグハブの移動は、既に言及した国際公開第2014/049317号パンフレットの第12頁第17行から第15頁第32行に記載されているのと同様に、シフト軸によって制御される。さらに、入力軸12、架橋軸14および出力軸16のそれぞれは、関連するシフト軸が回転された際にその上にドッグハブを移動させるために、それ自体のそれぞれのシフト軸に関連付けられている。そのような構成では、入力軸12のシフト軸は、各変速比シフトに対して30度ずつ回転して割り出される。出力軸16のシフト軸は、入力軸12のシフト軸の3つ目の割出ごとに出力軸16のシフト軸を30度回転させる割出機構により、入力軸12のシフト軸に連結される。架橋軸14のシフト軸はまた、入力軸12のシフト軸に適合され、その軸のレートの10分の3で回転するようになっている。これにより、架橋軸14のシフト軸は、ニュートラルおよび第1から第9の選択可能な変速比構成に対応する10個の位置を有する。ここに述べた3つのシフト軸の各々は、ニュートラルと第1から第9の選択可能な変速比構成との間のシフトを実現するのに必要なドッグハブの適切な移動を引き起こすのに必要な溝パターンを有するシフトバレルを支持する。先に、変速機10のロックアップ状態を回避するために、入力軸12上の第1のドッグハブ32aと第4のドッグハブ38aとの間に機械的接続が設けられて、それらがそれぞれ同じように、また反対に移動するようにすることができると述べた。このような機械的接続を含む実施形態では、入力軸12のシフト軸は、1つ少ないシフトバレルを有する。例えば、第1のドッグハブ32aの移動を制御するシフトバレルが設けられず、第4のドッグハブ38aの移動を制御するシフトバレルが設けられてもよい。それにもかかわらず、第1のドッグハブ32aは、第4のドッグハブ38aとの機械的接続のために第4のドッグハブ38aとともに移動するため、ギアボックスのロックアップの可能性を最小限に抑えながら各変速比構成を選択することが可能になる。他の実施形態では、第4のドッグハブ38aの移動を制御するシフトバレルが設けられず、第1のドッグハブ32aの移動を制御するシフトバレルが設けられてもよい。
【0138】
前述した変速機10の選択可能な変速比構成の数は、入力軸12に沿う追加の歯車および架橋軸14上の噛合歯車を含むことによって増大されることができる。ただし、出力軸16は依然として3つの歯車を有する。入力軸12に含まれる(例えば、前述の第2の歯車20aと第3の歯車22aとの間の)任意のこのような追加の歯車は、同様の構成を有するため、その両側のドッグハブによって入力軸に回転可能に連結可能であり得る。その一方で、架橋軸14に含まれる(例えば、前述の三次歯車20b2と四次歯車22bとの間の)任意の追加の歯車は、入力軸12上のそれぞれの追加の歯車と噛合してもよく、また、前述の架橋軸14に固定された二次歯車20b1および三次歯車20b2と同様に、架橋軸14に回転可能に固定されてもよい。例えば、入力軸12に沿った6つの歯車は、18種類の選択可能な変速比構成を有する6×3変速機構成をもたらす(式6×3では、数字6は、入力軸12上の歯車の数に関し、数字3は、出力軸16上の歯車の数に関する)。しかしながら、例えば、入力軸12上に4つの歯車を有し、出力軸16上に2つの歯車を有する4×2構成のようなさらに単純な変速機構成も可能である。さらに、例えば、架橋軸14上に追加のドッグハブおよび歯車を使用することによって、16種類の選択可能な変速比構成を有する4×4のような他の変速機構成も可能である。
【0139】
図16は、変速機の例示的な4×2バージョンの概略線図である。変速機100は、入力軸102と、架橋軸104と、出力軸106とを有する。入力軸102によって支持された歯車108、110、112、114は、前述したものと同様の方法でドッグハブによって回転可能に固定されることができる。入力軸上の左右の大部分のドッグハブ(一方が前進駆動ドッグハブであり、他方が後進駆動ドッグハブである)は機械的に連結されているため、歯車108および114に同時に係合することができないように示されている。架橋軸104上の第1の歯車116は、前述したものと同様の方法でドッグハブによって回転可能に固定されることができる。第2、第3、第4および第5の歯車118、120、122、124は、架橋軸104に回転可能に固定されている。出力軸106に関しては、その両側のドッグハブによって、出力軸106によって支持された第1の歯車126は回転可能に固定されることができる。さらに、出力軸106によって支持された第2の歯車128は、その両側のドッグハブによって回転可能に固定されることができる。第1/第2の歯車対126、128の前進駆動ドッグハブおよび後進駆動ドッグハブは、機械的に連結されているため、歯車126、128に同時に係合することができないように示されている。軸102、104、108に回転可能に固定された変速機100の歯車の全体的な組合せを切り替えることによって、変速機のトルク入力部130とトルク出力部132(入力軸102および出力軸106にそれぞれ動作可能に連結されている)との間の負荷経路と結果として生じる変速比とが切り替えられることができる。また、出力軸106の第1の歯車126のみが出力軸に回転可能に連結されている場合には、入力軸102と架橋軸104とに回転可能に固定された歯車の組合せを切り替えることにより、第1のグループからのそれぞれの結果として生じる変速比が選択されることができる。しかしながら、出力軸106の第2の歯車128のみが出力軸に回転可能に連結されている場合には、入力軸102と架橋軸104とに回転可能に固定された歯車の組合せを切り替えることにより、第2のグループからのそれぞれの結果として生じる変速比が選択されることができる。
【0140】
図3から
図5を検証すると、第1から第3の選択可能な変速比に進むには、入力軸12および架橋軸14に固定された歯車を切り替えて、負荷経路に必要な変化をもたらして、異なる選択可能な変速比を生じさせることが必要である。しかしながら、出力軸16に固定された歯車にはこのような切替は生じない。これは、次の3つの選択可能な変速比(すなわち、第4から第6の変速比)に進む間に同様に生じ、その後、3つの選択可能な変速比(すなわち第7から第9の変速比)に進む間に再び生じる。i)第3および第4の変速比構成と、ii)第6および第7の変速比構成との間のシフトは、入力軸12および架橋軸14上のドッグハブの移動によって選択可能な変速比のレンジの切替を引き起こすため、レンジ切替シフトと呼ばれることができる。その結果、第1から第3の前述の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第1のレンジと考えられることができる。同様に、第4から第6の前述の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第2のレンジと考えられることができる。したがって、第7から第9の前述の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第3のレンジと考えられることができる。
【0141】
図中の符号12で示される軸は、変速機10のトルク入力部と動作可能に接続された入力軸として説明されているが、他の実施形態では、図中の符号12で示される軸が変速機10のトルク出力部に動作可能に接続された出力軸であるように、変速機10が車両の内側で他の方法で接続されてもよい。それに対応して、図中の符号16で示される軸に同じことが適用される。
【0142】
ここまでは、架橋軸14と出力軸16との間のそれぞれの歯車接続は、互いに噛合し、それによって支持された歯車の対という観点から説明されてきた。しかしながら、他の変速機の実施形態では、架橋軸14と出力軸16との間の1つ以上のそのような歯車接続が、遊星歯車組を含み得ることが想定される。言い換えれば、使用時に、その時点で係合されているものに応じて、各遊星歯車組の構成を介して、架橋軸14と出力軸16との間でトルクが伝達されてもよい。有利には、遊星歯車組が一対の平歯車よりも大きな比を提供する能力(例えば、単一の遊星歯車段は3:1から5:1までの比を容易に提供することができる)により、使用時にトルク入力機構13とトルク出力機構15との間で達成可能な結果として生じる変速比のレンジが増大し、これは、戦車などの高出力トルクを必要とする大型車両に有用である。
【0143】
例えば、
図17は、架橋軸204および出力軸206を示し、これにより、場合によっては少なくとも1つの遊星歯車組を介してトルクがそれらの間で伝達されることができる。特に、架橋軸204に取り付けられた第1の平歯車208は、それらが取り付けられている軸204、206にそのような歯車が回転可能に固定されている場合、例えば、それらと噛合する別の平歯車209により、1.2:1の変速比接続を介して出力軸206にトルクを伝達することができる。架橋軸204に取り付けられた第2の平歯車210は、それらが取り付けられている軸204、206にそのような歯車210と、遊星歯車組211の出力部とが回転可能に固定されている場合、遊星歯車組211によって、異なる変速比接続(例えば、3:1の接続)を介して出力軸206にトルクを伝達することができる。架橋軸204に取り付けられた第3の平歯車212は、それらが取り付けられている軸204、206にそのような歯車212と、遊星歯車列213の出力部とが回転可能に固定されている場合、(互いに直列の2つ以上の遊星歯車組を備える)遊星歯車列213によって、また別の異なる変速比接続(例えば9:1の接続)を介して出力軸206にトルクを伝達することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、選択可能な変速比の広がり/レンジがどのように増加されることができるかは明らかである。それにもかかわらず、
図2から
図11を参照して説明された例示的な実施形態では、選択可能な変速比の広がり/レンジは(1.23)
8=5.24であると述べられている。しかしながら、
図17を参照して説明されたように、架橋軸14と出力軸16との間に1つ以上の遊星歯車組を設けることにより、選択可能な変速比の広がり/レンジを増大させることができ、重量出力比の低い車両(大型トラックや主力戦車など)に変速機をさらに適合させることができる。
【0145】
前述を達成する1つの方法が
図18に示されており、ここでは、例示的な遊星歯車組211および遊星歯車列213の構成要素が示されている。図示の実施形態では、太陽歯車211aが、平歯車210からトルクを受け取り、遊星歯車211cと回転が制限されたリング歯車211dとを介して出力部211bにトルクを伝達するように配置されている。遊星歯車列213は、2つの同様に構成された互いに直列の遊星歯車組を含む。出力軸206に設けられ、遊星歯車組111への出力部211bの両側に配置されたドッグハブが使用されて、前述のものと同様の方法で出力軸206に遊星歯車組を回転可能に連結することができることが理解されよう。同様に、出力軸206に設けられ、遊星歯車列213への出力部の両側に配置されたドッグハブが使用されて、同様の方法で出力軸206に遊星歯車組を回転可能に連結することができる。
【0146】
前述の変速機10では、架橋軸14に選択的に連結されることができる歯車には、一次歯車18bおよび(複合歯車である)四次歯車22bが含まれる。しかしながら、他の実施形態では、トルク入力部13とトルク出力部15との間の変速比の必要とされる切替を実現するのに適した方法で、複合四次歯車22bが、代わりに、架橋軸14にそれぞれ回転可能に固定されることができる2つの別個の歯車に置き換えられることができる。さらに、i)架橋軸14によって支持される各歯車(すなわち、架橋軸14に恒久的に固定されるものを含め、それによって支持されるあらゆる歯車)の順序と、ii)これらの歯車と、入力軸12および出力軸16によって支持される歯車との間のそれぞれの変速比とは、使用時に実現される必要がある入力軸12と出力軸16との間の変速比のあらゆる段階的切替を可能にするために、当業者によって自由に選択される。
【0147】
一般的に、前述の変速機10は、変速機のトルク入力部13とトルク出力部15との間で負荷を伝達するために、それぞれが歯車18a、20a、22a、18b、20b1、20b2、22b、18c、20c、22cを支持する複数の軸12、14、16を備える変速機10として説明されることができ、変速機は、トルク入力部とトルク出力部との間の負荷経路を切り替えることにより、使用時にその複数のグループの各々(第1から第3、第4から第6、第7から第9)から、トルク入力部とトルク出力部との間のそれぞれの結果として生じる変速比が選択されることができるように構成され、選択可能な結果として生じる変速比の各前記グループは、そのグループ内の選択可能な結果として生じる変速比に共通の一対の軸間で負荷を伝達するための負荷経路機構を有する。第1から第3の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第1のグループを確立し、架橋軸14上の四次歯車22bと出力軸16上の第3の歯車22cとの間の接続部分は、第1から第3の選択可能な変速比構成(
図3から
図5)のそれぞれに共通の負荷経路機構である。第4から第6の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第2のグループを確立し、架橋軸14上の二次歯車20b1と出力軸16上の第2の歯車20cとの間の接続部分は、第4から第6の選択可能な変速比構成(
図6から
図8)のそれぞれに共通の負荷経路機構である。第7から第9の選択可能な変速比構成は、選択可能な変速比の第3のグループを確立し、架橋軸14上の一次歯車18bと出力軸16上の第1の歯車18cとの間の接続部分は、第7から第9の選択可能な変速比構成(
図9から
図11)のそれぞれに共通の負荷経路機構である。
【0148】
本発明の様々な態様および実施形態がこれまで説明されてきたが、本発明の範囲は、本明細書に述べられた実施形態に限定されず、代わりに、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるすべての構成ならびにそれに対する変更および改変を包含するように拡大されることが理解されるであろう。