IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図1
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図2
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図3
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図4
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図5
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図6
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図7
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図8
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図9
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図10
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図11
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図12
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図13
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図14
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図15
  • 特許-外壁パネルの設計支援装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】外壁パネルの設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230518BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20230518BHJP
   G06F 30/27 20200101ALI20230518BHJP
【FI】
G06F30/13
E04B1/00 ESW
G06F30/27
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019030201
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020135590
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勝司
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035176(JP,A)
【文献】特開2006-299728(JP,A)
【文献】特開2015-028720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E04B 1/00
G06F 30/27
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルの外郭を構成する外郭フレーム、及び当該外郭フレームによって囲繞された架構面内に設けられた桟材を有する外壁パネルの設計支援装置であって、
前記架構面内において前記桟材の配置が禁止される配置禁止領域の情報を入力する情報入力手段と、
前記配置禁止領域を避けるようにして前記架構面内に前記桟材が配置された、前記桟材の配置パターンを設計する配置パターン設計手段と、
を具備し、
前記配置パターン設計手段は、
複数の前記配置パターンをランダムに生成する配置パターン生成手段と、
前記配置パターン生成手段によって生成された複数の前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定する決定処理を行う配置パターン決定手段と、
を具備し、
遺伝的アルゴリズムに基づいて前記配置パターンを決定し、
前記配置パターン生成手段は、
前記桟材が、前記配置禁止領域を囲繞するように、かつ、当該配置禁止領域の外周縁に沿うように配置された前記配置パターンを生成し、
前記配置禁止領域の外周縁を構成する各辺に対して配置順を設定し、当該配置順に基づいて前記桟材を前記各辺に沿って1本づつ順に配置することにより前記配置パターンを生成する、
外壁パネルの設計支援装置。
【請求項2】
前記配置パターン生成手段は、
配置しようとする前記桟材が前記外郭フレーム又は既に配置済みの他の前記桟材に突き当たるまで延伸させるようにして前記配置パターンを生成する、
請求項1に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【請求項3】
前記配置パターン設計手段は、
前記配置パターン生成手段によって生成された前記配置パターンを、前記桟材の配置順を示す文字の並びにより表現する表現処理を行う表現処理手段を具備し、
前記配置パターン決定手段は、
前記表現処理が行われた前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定する、
請求項2に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【請求項4】
前記表現処理手段は、
前記並びにおける前記文字の位置と前記桟材の配置位置とが対応するように、前記配置パターンを表現する、
請求項3に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【請求項5】
前記表現処理手段は、
前記配置禁止領域が複数設けられる場合、前記配置禁止領域それぞれに対して前記並びを生成し、前記配置禁止領域それぞれの前記並びを所定の規則に基づいて連結することにより、前記配置パターンを表現する、
請求項3又は請求項4に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【請求項6】
前記配置パターン決定手段による前記決定処理は、
前記配置パターン生成手段によって生成された前記配置パターンの中から、評価関数を用いて算出される評価が高い前記配置パターンを選択する処理を含んでおり、
前記評価関数は、
配置される複数の前記桟材の長さの合計が短いほど前記評価が高くなるように構成される、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【請求項7】
前記配置禁止領域は、開口部として形成される、
請求項から請求項6までのいずれか一項に記載の外壁パネルの設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁パネルの設計支援装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁パネルの設計支援装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、住宅の外壁パネルの形状や模様等のデータを蓄積し、蓄積したデータを加工又は流用することにより、外壁パネルの姿図を自動生成する技術が開示されている。特許文献1においては、これにより、設計者の手操作による作業負担を削減し、生産が行われるまでの準備期間の短縮化を図ることができるとされている。
【0004】
しかしながら、外壁パネルの外郭形状の種類が増加すると、外壁パネルの骨組みを構成する桟材の配置パターンが多様化する。さらに、外壁パネルに換気孔や設備開口などの開口部が形成される場合、桟材の配置パターンはさらに多様化し、膨大な組み合わせの配置パターンが存在することとなる。このため、特許文献1に記載の技術のように、蓄積したデータを加工又は流用するだけでは、膨大な組み合わせの桟材の配置パターンから適切な配置パターンを決定することが困難となる。このため、配置パターンの設計に係る負担が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-247288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、桟材の配置パターンの設計に係る負担を軽減することができる外壁パネルの設計支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、外壁パネルの外郭を構成する外郭フレーム、及び当該外郭フレームによって囲繞された架構面内に設けられた桟材を有する外壁パネルの設計支援装置であって、前記架構面内において前記桟材の配置が禁止される配置禁止領域の情報を入力する情報入力手段と、前記配置禁止領域を避けるようにして前記架構面内に前記桟材が配置された、前記桟材の配置パターンを設計する配置パターン設計手段と、を具備し、前記配置パターン設計手段は、複数の前記配置パターンをランダムに生成する配置パターン生成手段と、前記配置パターン生成手段によって生成された複数の前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定する決定処理を行う配置パターン決定手段と、を具備し、遺伝的アルゴリズムに基づいて前記配置パターンを決定し、前記配置パターン生成手段は、前記桟材が、前記配置禁止領域を囲繞するように、かつ、当該配置禁止領域の外周縁に沿うように配置された前記配置パターンを生成し、前記配置禁止領域の外周縁を構成する各辺に対して配置順を設定し、当該配置順に基づいて前記桟材を前記各辺に沿って1本づつ順に配置することにより前記配置パターンを生成するものである。
【0010】
請求項においては、前記配置パターン生成手段は、配置しようとする前記桟材が前記外郭フレーム又は既に配置済みの他の前記桟材に突き当たるまで延伸させるようにして前記配置パターンを生成するものである。
【0011】
請求項においては、前記配置パターン設計手段は、前記配置パターン生成手段によって生成された前記配置パターンを、前記桟材の配置順を示す文字の並びにより表現する表現処理を行う表現処理手段を具備し、前記配置パターン決定手段は、前記表現処理が行われた前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定するものである。
【0012】
請求項においては、前記表現処理手段は、前記並びにおける前記文字の位置と前記桟材の配置位置とが対応するように、前記配置パターンを表現するものである。
【0013】
請求項においては、前記表現処理手段は、前記配置禁止領域が複数設けられる場合、前記配置禁止領域それぞれに対して前記並びを生成し、前記配置禁止領域それぞれの前記並びを所定の規則に基づいて連結することにより、前記配置パターンを表現するものである。
【0014】
請求項においては、前記配置パターン決定手段による前記決定処理は、前記配置パターン生成手段によって生成された前記配置パターンの中から、評価関数を用いて算出される評価が高い前記配置パターンを選択する処理を含んでおり、前記評価関数は、配置される複数の前記桟材の長さの合計が短いほど前記評価が高くなるように構成されるものである。
【0015】
請求項においては、前記配置禁止領域は、開口部として形成されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、桟材の配置パターンの設計に係る負担を軽減することができる。また、桟材によって配置禁止領域の外周縁を構成することができる。
【0019】
請求項においては、外壁パネルの強度を向上させることができる。
【0020】
請求項においては、桟材の配置パターンを適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0021】
請求項においては、桟材の配置パターンをより適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0022】
請求項においては、配置禁止領域が複数設けられる場合であっても、桟材の配置パターンを適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0023】
請求項においては、桟材の長さの合計が短い配置パターンが決定されるので、コストの低減を図ることができる。
【0024】
請求項においては、桟材によって開口部の外周縁を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る設計支援装置を用いて設計及び製造される外壁パネルを示した正面図。
図2】(a)図1のA-A断面図。(b)架構面を示した正面図。
図3】本発明の一実施形態に係る設計支援装置のブロック図。
図4】本発明の一実施形態に係る設計支援装置を用いた外壁パネルの設計方法のフローチャート。
図5】情報入力手段に入力される基本情報を示す図。
図6】桟材の配置パターンの決定処理を示すフローチャート。
図7】桟材の配置パターンの一例(第1パターン)を示す概略図。
図8】桟材の配置パターンの一例(第2パターン)を示す概略図。
図9】桟材の配置パターンの一例(第3パターン)を示す概略図。
図10】桟材の配置パターンの一例(第4パターン)を示す概略図。
図11】桟材の配置パターンの一例(第5パターン)を示す概略図。
図12】遺伝子の交叉の方法を示した図。
図13】第二実施形態における、情報入力手段に入力される基本情報を示す図。
図14】第二実施形態における、桟材の配置パターンの一例(第6パターン)を示す概略図。
図15】第二実施形態における、桟材の配置パターンの一例(第7パターン)を示す概略図。
図16】第二実施形態における、遺伝子の交叉の方法を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る設計支援装置100を用いて設計及び製造される外壁パネル1の構成について説明する。
【0027】
外壁パネル1は、住宅等の建物の外壁を構成する部材である。外壁パネル1は、正面視矩形状に形成される。外壁パネル1は、主として外装面材10、外郭フレーム20及び桟材30を具備する。なお、外壁パネル1は、屋内面側(前側)にも面材を備えることができるが、図1及び図2においては図示を省略している。
【0028】
外装面材10は、外壁パネル1のうち屋外側に位置する部分である。外装面材10は、正面視矩形板状に形成される。外装面材10は、開口部11を具備する。
【0029】
開口部11は、外装面材10の一部が開口するように形成された部分である。開口部11は、換気孔、設備開口、サッシ開口、玄関出入口等の役割を果たすために設けられる。開口部11は、外装面材10を前後方向に貫通するように形成される。開口部11は、正面視矩形状に形成される。開口部11は、外装面材10の略中央に形成される。
【0030】
外郭フレーム20は、外壁パネル1の外郭を構成するものである。外郭フレーム20は、正面視矩形の枠状に形成される。外郭フレーム20は、外装面材10を囲むように形成される。外郭フレーム20は、外装面材10の外周縁(矩形の4辺)に沿うように形成される。図2(b)に示すように、外郭フレーム20によって囲繞された領域が、架構面21となる。
【0031】
桟材30は、外壁パネル1の骨組みを構成するものである。桟材30は、角柱状に形成される。桟材30は、架構面21内に設けられる。桟材30の両端部は、外郭フレーム20又は他の桟材30に固定される。桟材30は、開口部11を避けるようにして配置される。より詳細には、桟材30は、開口部11を囲むように、かつ、開口部11の外周縁(矩形の4辺)に沿うように配置される。このように設けられた桟材30によって、開口部11の外周縁を構成することができる。
【0032】
上記のように構成された外壁パネル1は、設計支援装置100によって設計(設計支援)が行われ、この設計に基づいて製造される。以下では、図3を用いて、本発明の一実施形態に係る設計支援装置100の構成について説明する。
【0033】
本発明の一実施形態に係る設計支援装置100は、外壁パネル1を設計(外壁パネル1の設計を支援)するものである。設計支援装置100としては、例えばパーソナルコンピュータが用いられる。設計支援装置100は、情報入力手段110及び配置パターン設計手段120を具備する。
【0034】
情報入力手段110は、外壁パネル1の基本情報を入力するためのものである。この基本情報には、外壁パネル1の形状の情報や、開口部11の形状や位置の情報が含まれる。
【0035】
配置パターン設計手段120は、桟材30の配置パターンを設計するものである。本明細書において、「配置パターン」とは、桟材30がどのように配置されるか(桟材30の数、桟材30それぞれの形状及び位置等)を示すものである。配置パターン設計手段120は、遺伝的アルゴリズムに基づいて、桟材30の配置パターンを決定する。配置パターン設計手段120は、配置パターン生成手段121、表現処理手段122及び配置パターン決定手段123を具備する。
【0036】
配置パターン生成手段121は、桟材30の複数の配置パターンをランダムに生成するものである。
【0037】
表現処理手段122は、配置パターン生成手段121によって生成された配置パターンを遺伝子表現する表現処理を行うものである。
【0038】
配置パターン決定手段123は、配置パターン生成手段121によって生成され、表現処理手段122によって表現処理された複数の配置パターンを用いて、適切な配置パターンを決定する決定処理を行うものである。
【0039】
次に、図4から図12を用いて、設計支援装置100を用いた外壁パネル1の設計方法について、具体的に説明する。
【0040】
まず、外壁パネル1の基本情報の入力が行われる(図4に示すステップS10)。基本情報は、情報入力手段110により入力される。図5に示すように、基本情報には、外壁パネル1の形状(幅W及び高さHの寸法)、開口部11の形状(幅W及び高さHの寸法)及び位置が含まれる。ここで、外壁パネル1の幅Wは当該外壁パネル1の左右方向の長さであり、外壁パネル1の高さHは当該外壁パネル1の上下方向の長さである。開口部11の幅Wは当該開口部11の左右方向の長さであり、開口部11の高さHは当該開口部11の上下方向の長さである。開口部11の位置は、正面視における外壁パネル1の左下角部を原点とし、この原点を基準としたXY座標として表される。図5において、X1及びY1は、外壁パネル1及び開口部11の左下角部の位置を示すものであり、X2及びY2は、外壁パネル1及び開口部11の右上角部の位置を示すものである。
【0041】
次に、設計制約条件の入力を行う(図4に示すステップS20)。設計制約条件は、情報入力手段110により入力される。「設計制約条件」とは、後述するステップS30(より詳細にはステップS31)において桟材30の配置パターンを生成する際のルールである。具体的には、設計制約条件には、以下に示す(1)~(3)の内容が含まれる。
【0042】
(1)桟材30は、開口部11を避けるようにして配置される。より詳細には、桟材30は、開口部11を囲むように、かつ、開口部11の外周縁(矩形の4辺)に沿って配置される。よって、1つの開口部11につき4本の桟材30が配置されることとなる。
(2)各桟材30の長さ及び位置については、4本の桟材30の長さ及び位置を一度に決定するのではなく、1本ずつ桟材30の長さ及び位置を決定する。
(3)各桟材30の長さは、当該桟材30を配置しようとする場所及び時点において、最長の長さとなるように決定される。すなわち、各桟材30は、外郭フレーム20又は既に配置済みの他の桟材30に突き当たるまで延伸するように設けられる。
【0043】
次に、桟材30の配置パターンを遺伝的アルゴリズムに基づいて決定する決定処理を行う(図4に示すステップS30)。桟材30の配置パターンの決定は、配置パターン設計手段120によって行われる。
【0044】
ここで、ステップS20で入力された設計制約条件を満たすように桟材30を配置する場合、前述の如く、1つの開口部11につき4本の桟材30が必要となる。桟材30の配置パターンの数は、桟材30の本数nの階乗n!となる。すなわち、開口部11が1つ設けられる場合、4!=24通りとなる。開口部11が2つ設けられる場合、8!=約4万通りとなる。開口部11が3つ設けられる場合、12!=約5億通りとなる。開口部11が4つ設けられる場合、16!=約21兆通りとなる。このように、開口部11の数が増えるに従い、桟材30の配置パターンの数(組み合わせ)は膨大となる。このため、仮に配置パターンそれぞれについて一つ一つ適不適を計算するとなると、計算効率が低下し、設計に多くの時間が必要になる。
【0045】
そこで、本実施形態においては、桟材30の配置パターンを遺伝的アルゴリズムに基づいて決定する。以下、桟材30の配置パターンの決定処理(ステップS30)について、図6を用いて具体的に説明する。なお、前述の如く、遺伝的アルゴリズムに基づく決定処理は、開口部11の数が多い場合(すなわち、桟材30の配置パターンの数が膨大である場合)に特に有用であるが、説明の平易化のために開口部11が1つである例(図1及び2参照)を挙げて説明を行う。
【0046】
まず、図6に示すステップS31において、配置パターン設計手段120(配置パターン生成手段121)は、複数の配置パターン(個体)をランダムに生成する。このステップにおいて、配置パターン設計手段120(配置パターン生成手段121)は、考え得る膨大な数の配置パターンのうち、いくつかの配置パターンをランダムに生成する。ここでは、N個の配置パターンを生成するものとする。この処理において、配置パターン(個体)は、ステップS10で入力された外壁パネル1の基本情報、及びステップS20で入力された設計制約条件に基づいて生成される。
【0047】
ステップS20で入力された設計制約条件に基づいて桟材30を配置する場合、開口部11の4辺に沿う桟材30をどのような順番で配置するかによって、異なる配置パターンが生成されることとなる。以下では、1番目に配置される桟材を桟材30a、2番目に配置される桟材を桟材30b、3番目に配置される桟材を桟材30c、4番目に配置される桟材を桟材30dということとする。
【0048】
図7は、桟材30が、正面視において開口部11の左辺、上辺、右辺、下辺の順に(正面視時計回りに)配置された場合の配置パターン(第1パターン)を示している。まず、1番目の桟材30aが、開口部11の左辺に沿って(長手方向を上下方向に向けて)配置される。このとき、他の桟材30は未だ配置されていないので、桟材30aは外郭フレーム20に突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30aの上端は外郭フレーム20の上端に当接し、桟材30aの下端は外郭フレーム20の下端に当接するように、桟材30aが配置される。
【0049】
次に、2番目の桟材30bが、開口部11の上辺に沿って(長手方向を左右方向に向けて)配置される。このとき、桟材30aが既に配置済みであるので、桟材30bは桟材30a及び外郭フレーム20に突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30bの左端は既に配置済みの桟材30aと当接するように、桟材30bの右端は外郭フレーム20の右端に当接するように、桟材30bが配置される。
【0050】
次に、3番目の桟材30cが、開口部11の右辺に沿って(長手方向を上下方向に向けて)配置される。このとき、桟材30bが既に配置済みであるので、桟材30cは桟材30b及び外郭フレーム20に突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30cの上端は桟材30bに当接し、桟材30cの下端は外郭フレーム20の下端に当接するように、桟材30cが配置される。
【0051】
次に、4番目の桟材30dが、開口部11の下辺に沿って(長手方向を左右方向に向けて)配置される。このとき、桟材30a及び桟材30cが既に配置済みであるので、桟材30dは桟材30a及び桟材30cに突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30dの左端は桟材30aに当接し、桟材30dの右端は桟材30cに当接するように、桟材30dが配置される。
【0052】
このようにして、図7に示すような桟材30の第1パターン(個体)が生成される。
【0053】
図8は、桟材30が、正面視において開口部11の左辺、上辺、下辺、右辺の順に配置された場合の配置パターン(第2パターン)を示している。
【0054】
1番目の桟材30a及び2番目の桟材30bは、図7に示す第1パターンと同様に配置される。
【0055】
次に、3番目の桟材30cが、開口部11の下辺に沿って(長手方向を左右方向に向けて)配置される。このとき、桟材30aが既に配置済みであるので、桟材30cは桟材30a及び外郭フレーム20に突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30cの左端は桟材30aに当接し、桟材30cの右端は外郭フレーム20の右端に当接するように、桟材30cが配置される。
【0056】
次に、4番目の桟材30dが、開口部11の右辺に沿って(長手方向を上下方向に向けて)配置される。このとき、桟材30b及び桟材30cが既に配置済みであるので、桟材30cは桟材30b及び桟材30cに突き当たるまで延伸させるように配置される。つまり、桟材30dの上端は桟材30bに当接し、桟材30dの下端は桟材30cに当接するように、桟材30dが配置される。
【0057】
このようにして、図8に示すような桟材30の第2パターン(個体)が生成される。
【0058】
図9は、桟材30が、正面視において開口部11の左辺、右辺、上辺、下辺の順に配置された場合の配置パターン(第3パターン)を示している。図10は、桟材30が、正面視において開口部11の左辺、下辺、右辺、上辺の順に配置された場合の配置パターン(第4パターン)を示している。図11は、桟材30が、正面視において開口部11の上辺、右辺、下辺、左辺の順に配置された場合の配置パターン(第5パターン)を示している。図9図10及び図11においても、前記設計制約条件に基づいて1本ずつ桟材30が配置されることにより、配置パターン(個体)が生成される。
【0059】
このようにして、例えば図7から図11に示すようなN個のランダムな配置パターンが、現世代の配置パターン(個体)として生成される。配置パターン設計手段120は、当該ステップS31の処理を行った後、ステップS32に移行する。
【0060】
図6に示すステップS32において、配置パターン設計手段120(表現処理手段122)は、ステップS10で生成されたN個の配置パターン(個体)を遺伝子表現する表現処理を行う。
【0061】
桟材30の配置パターン(個体)の遺伝子表現には、順序数表現が用いられる。具体的には、桟材30の配置パターン(個体)は、桟材30の配置順を示す1~nの整数を遺伝子として表現される。そして、桟材30の配置パターン(個体)は、当該遺伝子の並び(数字列)により表現される。ここで、配置順とは、ステップS31において桟材30の配置パターンが生成される際に、各桟材30が配置される順番のことをいう。つまり、1番目に配置される桟材30aの配置順を示す整数は「1」である。2番目に配置される桟材30bの配置順を示す整数は「2」である。3番目に配置される桟材30cの配置順を示す整数は「3」である。4番目に配置される桟材30dの配置順を示す整数は「4」である。
【0062】
そして、前記数字列においては、配置順を示す整数(1~n)が所定の順番で並べられる。配置順を示す整数(1~n)は、前記数字列における当該整数(1~n)の位置と、桟材30の配置位置とが対応するように並べられる。具体的には、前記数字列においては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順を示す整数、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順を示す整数、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順を示す整数、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順を示す整数、の順(開口部11の左辺から正面視時計回り)で並べられる。
【0063】
例えば、図7に示す第1パターンにおいては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目である。よって、図7に示す第1パターンは、[1,2,3,4]と遺伝子表現される。
【0064】
図8に示す第2パターンにおいては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目である。よって、図8に示す第2パターンは、[1,2,4,3]と遺伝子表現される。
【0065】
図9に示す第3パターンにおいては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目である。よって、図9に示す第3パターンは、[1,3,2,4]と遺伝子表現される。
【0066】
図10に示す第4パターンにおいては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目である。よって、図10に示す第4パターンは、[1,4,3,2]と遺伝子表現される。
【0067】
図11に示す第5パターンにおいては、開口部11の左辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目、開口部11の上辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11の右辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目、開口部11の下辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目である。よって、図11に示す第5パターンは、[4,1,2,3]と遺伝子表現される。
【0068】
配置パターン設計手段120は、当該ステップS32の処理を行った後、ステップS33に移行する。
【0069】
図6に示すステップS33において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、ステップS32で表現処理された現世代の配置パターン(個体)に対して適応度の評価を行う。適応度とは、その配置パターン(個体)がどれだけ優れているか(ある基準に対してどれだけ適応しているか)を示すものである。適応度は、評価関数を用いて求められる。評価関数は、配置される全て(4つ)の桟材30の長さの合計が短いほど値が大きくなるように、すなわち評価(適応度)が高くなるように構成される。
【0070】
配置パターン設計手段120は、当該ステップS33の処理を行った後、ステップS34に移行する。
【0071】
図6に示すステップS34において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、各配置パターン(個体)の適応度に基づいて、複数の配置パターン(個体)の中から、2つの配置パターン(親)をランダムに選択する。この選択においては、例えば、配置パターン(個体)の適応度が高いほど、選択される確率が高くなるように設定することができる。ここでは、親1の配置パターン(個体)として[1,4,3,2]、親2の配置パターン(個体)として[4,1,2,3]が選択されたとする(図12参照)。
【0072】
配置パターン設計手段120は、当該ステップS34の処理を行った後、ステップS35に移行する。
【0073】
図6に示すステップS35において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、ステップS34で選択した現世代の2つの配置パターン(親1及び親2)について交叉を行う。より詳細には、図12に示すように、まず2つの交叉点がランダムに決定される(手順1)。例えば、遺伝子表現された配置パターンにおいて、左から1番目の整数(遺伝子)と2番目の整数(遺伝子)との間、及び3番目の整数(遺伝子)と4番目の整数(遺伝子)との間が交叉点とされる。そして、2つの交叉点の間の整数(遺伝子)を、2つの配置パターン間で互いに交換する。具体的には、親1の遺伝子|4,3|と、親2の遺伝子|1,2|とを互いに交換する(手順2)。そして、交叉後の各配置パターンにおいて、整数(遺伝子)が他の整数(遺伝子)と重複しないように任意の方法で再配置を行う(手順3)。個体数がN個になるまで上記の動作を繰り返す。こうして、次世代の配置パターンを生成する。
【0074】
配置パターン設計手段120は、当該ステップS35の処理を行った後、ステップS36に移行する。
【0075】
図6に示すステップS36において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、ステップS35で生成した次世代の配置パターン(個体)に対して適応度の評価を行う。適応度の評価方法は、ステップS33と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0076】
配置パターン設計手段120は、当該ステップS36の処理を行った後、ステップS37に移行する。
【0077】
図6に示すステップS37において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、次世代が最終世代(第G世代)であるか否かを判定する。ここで、最終世代(第G世代)とは、何世代まで配置パターン(個体)を生成するか(ステップS34からS36までの処理を何度行うか)を示すものであり、「G(最大世代数)」の値は予め設定される。配置パターン設計手段120は、次世代が最終世代(第G世代)でないと判定した場合(ステップS37で「NO」)、ステップS34に処理を戻す。これにより、ステップS34からS36までの処理がG回繰り返され、最終世代(第G世代)の配置パターン(個体)が生成される。
【0078】
配置パターン設計手段120は、ステップS37において次世代が最終世代(第G世代)であると判定した場合(ステップS37で「YES」)、ステップS38に移行する。
【0079】
図6に示すステップS38において、配置パターン設計手段120(配置パターン決定手段123)は、最終世代(第G世代)の中で最も適応度の高い配置パターン(個体)を、解として出力する。そして、出力された解を、最終的な配置パターンとする。これにより、最終的な配置パターンを決定することができる。当該ステップS38の処理が終わると、図6に示す制御は終了し、これにより図4に示す制御も終了する。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る設計支援装置100によれば、桟材30の配置パターンの決定に遺伝的アルゴリズムを用いることにより、桟材30の配置パターンの数が膨大となった場合であっても、最適な(最適に近い)配置パターンを決定することができる。このため、配置パターンそれぞれについて一つ一つ適不適を計算する必要がなく、設計に要する時間を短縮することができる。したがって、桟材30の配置パターンの設計に係る負担を軽減することができる。
【0081】
また、配置パターン生成手段121は、配置パターンの生成において、桟材30が外郭フレーム20又は他の桟材30に突き当たるまで延伸させる。これにより、桟材30が外壁パネル1の骨組みとなり、外壁パネル1の強度を向上させることができる。
【0082】
また、表現処理手段122は、桟材30の配置順を示す整数(1~n)の数字列(並び)における当該整数(1~n)の位置と、当該桟材30の配置位置(開口部11の矩形の4辺のうちどの辺に沿って配置されるか)とが対応するように、ランダムに生成された複数の配置パターンを遺伝子表現する。このような遺伝子表現により、桟材30がどのように配置されているかを適切に表現することができる。ひいては、表現処理後に行われる桟材30の配置パターンの決定をし易くすることができる。
【0083】
また、配置パターンの決定においては、評価関数によって算出される値が高い(評価が高い)配置パターンほど、次世代に残る確率が高く、また、最終世代において、評価関数によって算出される値が最も高い(評価が最も高い)配置パターンが、最終的な配置パターンとして決定される。そして、評価関数は、配置される複数の桟材30の長さの合計が短いほど評価が高くなるように構成されている。このため、桟材30の量が少ない配置パターンが決定され易くなる。これにより、桟材30の削減を図ることができ、ひいてはコストの低減を図ることができる。
【0084】
以上の如く、本実施形態に係る設計支援装置100は、外壁パネル1の外郭を構成する外郭フレーム20、及び当該外郭フレーム20によって囲繞された架構面21内に設けられた桟材30を有する外壁パネル1の設計支援装置100であって、前記架構面21内において前記桟材30の配置が禁止される開口部11(配置禁止領域)の情報を入力する情報入力手段110と、前記開口部11を避けるようにして前記架構面21内に前記桟材30が配置された、前記桟材30の配置パターンを設計する配置パターン設計手段120と、を具備し、前記配置パターン設計手段120は、遺伝的アルゴリズムに基づいて前記配置パターンを決定するものである。
このように構成することにより、桟材30の配置パターンの設計に係る負担を軽減することができる。
【0085】
また、前記配置パターン設計手段120は、複数の前記配置パターンをランダムに生成する配置パターン生成手段121と、前記配置パターン生成手段121によって生成された複数の前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定する決定処理を行う配置パターン決定手段123と、を具備し、前記配置パターン生成手段121は、前記桟材30が、前記開口部11を囲繞するように、かつ、当該開口部11の外周縁に沿うように配置された前記配置パターンを生成するものである。
このように構成することにより、桟材30によって開口部11の外周縁を構成することができる。
【0086】
また、前記配置パターン生成手段121は、複数の前記桟材30のそれぞれを順に配置することにより前記配置パターンを生成するものであり、配置しようとする前記桟材30が前記外郭フレーム20又は既に配置済みの他の前記桟材30に突き当たるまで延伸させるようにして前記配置パターンを生成するものである。
このように構成することにより、外壁パネル1の強度を向上させることができる。
【0087】
また、前記配置パターン設計手段120は、前記配置パターン生成手段121によって生成された前記配置パターンを、前記桟材30の配置順を示す整数(文字)の並びにより表現する表現処理を行う表現処理手段122を具備し、前記配置パターン決定手段123は、前記表現処理が行われた前記配置パターンを用いて前記配置パターンを決定するものである。
このように構成することにより、桟材30の配置パターンを適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0088】
また、前記表現処理手段122は、前記並びにおける前記整数の位置と前記桟材30の配置位置とが対応するように、前記配置パターンを表現するものである。
このように構成することにより、桟材30の配置パターンをより適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0089】
また、前記配置パターン決定手段123による前記決定処理は、前記配置パターン生成手段121によって生成された前記配置パターンの中から、評価関数を用いて算出される評価が高い前記配置パターンを選択する処理(ステップS34及びS38)を含んでおり、前記評価関数は、配置される複数の前記桟材30の長さの合計が短いほど前記評価が高くなるように構成されるものである。
このように構成することにより、桟材30の長さの合計が短い配置パターンが決定されるので、コストの低減を図ることができる。
【0090】
また、配置禁止領域は、開口部11として形成されるものである。
このように構成することにより、桟材30によって開口部11の外周縁を構成することができる。
【0091】
なお、本実施形態に係る開口部11は、配置禁止領域の実施の一形態である。配置禁止領域とは、架構面21内において桟材30の配置が禁止される領域のことをいう。
【0092】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、本実施形態においては、外壁パネル1の形状は正面視矩形状であるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。例えば、矩形の一部が切り欠かれたような形状とすることができる。また、切欠き部(カット部)の形状や数は任意とすることができる。
【0094】
ここで、切欠き部(カット部)の形状や数によっては、外壁パネル1の形状が複雑になる場合がある。この場合、従来、配置パターンを決定するための新たなルールを作成する等の事前準備が必要となっていた。一方、本実施形態に係る設計支援装置100を用いることにより、このような事前準備を不要とすることができ、ひいては設計に係る負担を軽減することができる。
【0095】
また、本実施形態においては、配置禁止領域は開口部11であるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、外壁パネル1が矩形の一部が切り欠かれたような形状に形成されたものである場合、外壁パネル1の外形を矩形として扱い、切欠き(カット部)を配置禁止領域として扱うようにしてもよい。
【0096】
また、本実施形態においては、適応度を求めるための評価関数(ステップS33及びS36)は、配置される全て(4つ)の桟材30の長さの合計が短いほど評価(適応度)が高くなるように構成されるものとしたが、評価の基準はこれに限定されるものではない。例えば、評価関数は、左右方向に沿って(開口部11の上辺及び下辺に沿って)配置される桟材30の長さが長いほど、評価を高くなるように構成されていてもよい。また、評価の基準は、複数の項目であってもよく、それぞれの項目の合計で評価(適応度)を算出するようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態においては、配置パターンの遺伝子表現(ステップS32)においては、配置順を示す整数が開口部11の左辺から正面視時計回りの順で並べられるものとしたが、当該整数の並び順はこれに限定されるものではなく、任意の順とすることができる。
【0098】
また、本実施形態においては、外壁パネル1の基本情報の入力(ステップS10)の後、設計制約条件の入力(ステップS20)を行うものとしたが、ステップS20の処理の後にステップS10の処理を行うようにしてもよい。また、設計制約条件は、既に(予め)入力されているのであれば、改めて入力する必要はない。つまり、設計制約条件の入力(ステップS20)は、必ずしも設計の都度行う必要があるものではない。
【0099】
また、本実施形態においては、開口部11は外装面材10の略中央に形成されるものとしたが、開口部11の位置は任意とすることができる。
【0100】
また、本実施形態においては、開口部11は1つ設けられるものとしたが、開口部11の数は任意の数とすることができる。以下では、開口部11が2つ設けられた場合を第二実施形態として説明する。
【0101】
以下では、図4図6及び図13から図16を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態においては、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
【0102】
まず、第二実施形態に係る外壁パネル2の構成について説明する。第二実施形態において、外装面材10は2つの開口部11を具備する(図14及び図15参照)。以下では、2つの開口部11のうち、左側の(X座標の小さい)開口部11を開口部11aと称し、右側の(X座標の大きい)開口部11を開口部11bと称することとする。
【0103】
次に、第二実施形態に係る外壁パネル2の設計方法について説明する。
【0104】
図4に示すステップS10(外壁パネル1の基本情報の入力)においては、図13に示すように、基本情報として、外壁パネル1の形状(幅W及び高さHの寸法)、及び2つの開口部11a・11bの形状(幅W及び高さHの寸法)及び位置が入力される。
【0105】
図6に示すステップS31(複数の配置パターン(個体)のランダム生成)においては、第一実施形態と同様に、配置パターン(個体)は、ステップS20で入力された設計制約条件に基づいて生成される。前記設計制約条件によれば、1つの開口部11につき4本の桟材30が配置されるため、開口部11が2つ設けられる第二実施形態においては、延べ8本の桟材30が配置される。以下では、配置パターン(個体)の生成に際して、1番目に配置される桟材を桟材30a、2番目に配置される桟材を桟材30b、3番目に配置される桟材を桟材30c、4番目に配置される桟材を桟材30d、5番目に配置される桟材を桟材30e、6番目に配置される桟材を桟材30f、7番目に配置される桟材を桟材30g、8番目に配置される桟材を桟材30hということとする。
【0106】
図14は、桟材30が、開口部11aの左辺、上辺、右辺、下辺、開口部11bの左辺、上辺、右辺、下辺の順に配置された場合の配置パターン(第6パターン)を示している。
【0107】
開口部11が複数設けられる場合、図6に示すステップS32(表現処理)においては、数字列において配置順を示す整数は、X座標の小さい開口部11から順に(つまり、開口部11a、開口部11bの順に)並べられる。図14に示す第6パターンにおいては、開口部11aの左辺に沿って配置される桟材30の配置順は1番目、開口部11aの上辺に沿って配置される桟材30の配置順は2番目、開口部11aの右辺に沿って配置される桟材30の配置順は3番目、開口部11aの下辺に沿って配置される桟材30の配置順は4番目である。よって、開口部11aに係る配置パターンは、[1,2,3,4]と遺伝子表現される。一方、開口部11bの左辺に沿って配置される桟材30の配置順は5番目、開口部11bの上辺に沿って配置される桟材30の配置順は6番目、開口部11bの右辺に沿って配置される桟材30の配置順は7番目、開口部11bの下辺に沿って配置される桟材30の配置順は8番目である。よって、開口部11bに係る配置パターンは、[5,6,7,8]と遺伝子表現される。そして、開口部11aに係る遺伝子表現[1,2,3,4]と、開口部11bに係る遺伝子表現[5,6,7,8]とを連結させる。配置順を示す整数は、X座標の小さい開口部11から順に並べられるため、図14に示す第6パターンは、[1,2,3,4,5,6,7,8]と遺伝子表現される。
【0108】
図15は、桟材30が、開口部11bの上辺、右辺、下辺、開口部11aの左辺、上辺、右辺、下辺、開口部11bの左辺の順に配置された場合の配置パターン(第7パターン)を示している。
【0109】
図6に示すステップS32(表現処理)においては、前述の遺伝子表現方法に基づいて、図15に示す第7パターンは、[4,5,6,7,8,1,2,3]と表現される。
【0110】
このように、開口部11(配置禁止領域)が複数設けられる場合、開口部11それぞれに対して数字列で遺伝子表現を行い、各開口部11の数字列(遺伝子表現)を、所定の規則(配置順を示す整数はX座標の小さい開口部11から順に並べられる、という規則)に基づいて連結することにより、配置パターンが表現される。
【0111】
図6に示すステップS34(選択)において、親1の配置パターン(個体)として図14に示す配置パターン(第6パターン)が選択され、親2の配置パターン(個体)として図15に示す配置パターン(第7パターン)が選択されたとする(図16参照)。
【0112】
図6に示すステップS35(交叉)においては、ステップS34で選択した現世代の2つの配置パターン(親1及び親2)について交叉が行われる。図16に示すように、遺伝子表現された配置パターンにおいて、例えば、左から2番目の整数(遺伝子)と3番目の整数(遺伝子)との間、及び5番目の整数(遺伝子)と6番目の整数(遺伝子)との間が交叉点とされる(手順1)。そして、2つの交叉点の間の整数(遺伝子)を、2つの配置パターン間で互いに交換する。具体的には、親1の遺伝子|3,4,5|と、親2の遺伝子|6,7,8|とを互いに交換する(手順2)。そして、交叉後の各配置パターンにおいて、整数(遺伝子)が他の整数(遺伝子)と重複しないように任意の方法で再配置を行う(手順3)。個体数がN個になるまで上記の動作を繰り返す。こうして、次世代の配置パターンを生成する。
【0113】
以降の処理は第一実施形態と同様である。こうして、開口部11が複数設けられる場合であっても、最適な(最適に近い)配置パターンを決定することができる。
【0114】
以上の如く、第二実施形態に係る設計支援装置100において、前記表現処理手段122は、前記開口部11(配置禁止領域)が複数設けられる場合、前記開口部11それぞれに対して前記並びを生成し、前記開口部11それぞれの前記並びを所定の規則に基づいて連結することにより、前記配置パターンを表現するものである。
このように構成することにより、開口部11(配置禁止領域)が複数設けられる場合であっても、桟材30の配置パターンを適切に表現することができ、ひいては配置パターンを決定し易くすることができる。
【0115】
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0116】
例えば、第二実施形態においては、図6に示すステップS32(表現処理)において、数字列において配置順を示す整数は、X座標の小さい開口部11から順に並べられるものとしたが、当該整数の並び順はこれに限定されるものではなく、任意の順とすることができる。
【0117】
また、第二実施形態においては、開口部11a・11bそれぞれに対して4本ずつ、計8本の桟材30が配置されるものとしたが、開口部11aに対して配置される桟材30と開口部11bに対して配置される桟材30とが重複する場合(例えば、開口部11a・11bのX座標又はY座標が互いに同一である場合)は、開口部11aと開口部11bとで桟材30を共通化することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 外壁パネル
11 開口部
20 外郭フレーム
21 架構面
30 桟材
100 設計支援装置
110 情報入力手段
120 配置パターン設計手段
121 配置パターン生成手段
122 表現処理手段
123 配置パターン決定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16