(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ダクト型送風装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20230518BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20230518BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20230518BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B60H1/00 102L
B60H1/00 102S
B60H1/34 651Z
F24F13/06 A
F24F13/02 D
(21)【出願番号】P 2019034795
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】大江 広行
(72)【発明者】
【氏名】水田 竜司
(72)【発明者】
【氏名】堀田 聖志
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-133028(JP,A)
【文献】特開2011-158182(JP,A)
【文献】特開2016-203669(JP,A)
【文献】特開2017-185951(JP,A)
【文献】特開2018-043719(JP,A)
【文献】特開2018-058551(JP,A)
【文献】特許第7215935(JP,B2)
【文献】実開平01-176512(JP,U)
【文献】国際公開第2014/184958(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F24F 13/06
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒型のダクト筐体と、該ダクト筐体内に挿入され、螺旋流路をダクト筐体内に形成するスクリュー部材と、該ダクト筐体の外周部に設けられ、該外周部の略接線方向に空気流を吹き出す吹出口と、を備えたダクト型送風装置において、
該吹出口は、第1吹出口と第2吹出口とからなり、該第1吹出口の吹出方向と第2吹出口の吹出方向は
、相違して形成され
該第1吹出口と第2吹出口は、複数対の該第1吹出口と該第2吹出口が、長尺の該ダクト筐体の外周部の長手方向に連続して、交互に並べて配設され、
該第1吹出口と第2吹出口との間の該ダクト筐体内に、中央隔壁が設けられて、該ダクト筐体内が該中央隔壁を介して2つに分割され、
両側の該ダクト筐体内に挿入された前記スクリュー部材の端部が、該中央隔壁に固定され、両側の該ダクト筐体の端部側から該中央隔壁に向けて送風するように構成されたことを特徴とするダクト型送風装置。
【請求項2】
前記第1吹出口と第2吹出口は、各々の吹出開口端が、前記ダクト筐体の長手方向に1列に揃えて配置されたことを特徴とする請求項1記載のダクト型送風装置。
【請求項3】
前記ダクト筐体には、外周部に第1吹出口と第2吹出口用の吹出開口が別々に形成され、別個に成形した該第1吹出口と第2吹出口が、該各々の吹出開口の外側を覆って、該ダクト筐体に固着されたことを特徴とする請求項1または2記載のダクト型送風装置。
【請求項4】
前記第1吹出口と第2吹出口の内部に、隔壁が送風方向と平行に設けられたことを特徴とする請求項3記載のダクト型送風装置。
【請求項5】
前記ダクト筐体を具備した第1ダクト部材と第2ダクト部材が、間隔をおいて平行に配置され、通風チャンバーが、該第1ダクト部材と第2ダクト部材の両側端部に連通接続され、両側の該通風チャンバーの外側に空気導入部が設けられ、該空気導入部と反対側の該通風チャンバーに、空気噴出口が内側を向けて設けられたことを特徴とする請求項1記載のダクト型送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室内の空調に使用されるレジスタに関し、特に車室内の天井部などに、省スペースで設置することができ、車室上部などの比較的広い範囲に、送風することができるダクト型送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の換気や空調の空気吹き出し口に使用する空気吹出調整用の送風装置として、円筒型のダクト筐体内に、スクリュー部材を挿入して螺旋壁を形成し、螺旋壁によってダクト筐体内に螺旋流路(通風路)を形成したダクト型送風装置が、下記特許文献1などで知られている。
【0003】
このダクト型送風装置は、ワンボックスカーなどの車室内の天井部などに沿って、比較的長尺の箇所に配設され、車室内の広い範囲に送風するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このダクト型送風装置は、ダクト筐体の外周部に、スリット状で吹出口がダクト筐体の全長に渡って、或いは一定の間隔をおいて設けられ、長尺の吹出口から送風が一定方向(ダクトの略接線方向)にのみ吹き出される。
【0006】
このため、例えば、車室の天井部の隅部などに沿って、ダクト型送風装置が配設された場合、吹出口の方向は、車室の中央部近傍に向けて配置されたとしても、一定方向のみとなるため、使用時、ダクト筐体の吹出口から車室内に吹き出される送風方向は、略一定方向である。
【0007】
このため、例えば、短距離の送迎用バスのように、車室内に多くの乗員が立って乗車する場合、一部の乗員には空調空気が送風されるが、他の乗員には、送風が届かないという不具合があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、車室内の広い範囲に効率良く送風することができるダクト型送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のダクト型送風装置は、
円筒型のダクト筐体と、該ダクト筐体内に挿入され、螺旋流路をダクト筐体内に形成するスクリュー部材と、該ダクト筐体の外周部に設けられ、該外周部の略接線方向に空気流を吹き出す吹出口と、を備えたダクト型送風装置において、
該吹出口は、第1吹出口と第2吹出口とからなり、該第1吹出口の吹出方向と第2吹出口の吹出方向は、相違して形成され
該第1吹出口と第2吹出口は、複数対の該第1吹出口と該第2吹出口が、長尺の該ダクト筐体の外周部の長手方向に連続して、交互に並べて配設され、
該第1吹出口と第2吹出口との間の該ダクト筐体内に、中央隔壁が設けられて、該ダクト筐体内が該中央隔壁を介して2つに分割され、
両側の該ダクト筐体内に挿入された前記スクリュー部材の端部が、該中央隔壁に固定され、両側の該ダクト筐体の端部側から該中央隔壁に向けて送風するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
この発明のダクト型送風装置によれば、ダクト部材のダクト筐体内を送風される空気流は螺旋流路内を旋回(回転)しながら先端部に向けて進み、その回転(螺旋の旋回)方向に開口した吹出口から接線方向に向けて効率良く送風されるので、ダクトの先端部付近に集中して空気流が送風されることはなく、長手方向の広い範囲に効率良く送風することができる。
【0011】
また、例えばバスなどの車両で、ダクト型送風装置が車室の天井部に設置された場合、車室内に立って乗車する乗員に対し、天井部の広い範囲に効率よく冷暖房用空気を送ることができ、冷暖房効果を向上させることができる。
また、第1吹出口と第2吹出口は、複数対の第1吹出口と第2吹出口が、長尺のダクト筐体の外周部の長手方向に連続して、交互に並べて配設され、第1吹出口と第2吹出口との間のダクト筐体内に、中央隔壁が設けられて、ダクト筐体内が中央隔壁を介して2つに分割され、両側のダクト筐体内に挿入されたスクリュー部材の端部が、中央隔壁に固定され、両側のダクト筐体の端部側から中央隔壁に向けて送風する。このため、長尺のダクト型送風装置を容易に製造することができ、使用時、ダクト型送風装置の両側端部から空気流を導入し、空調空気を効率よく車室内に送風することができる。
【0012】
ここで、上記第1吹出口と第2吹出口は、各々の吹出開口端が、ダクト筐体の長手方向に1列に揃えて配置された構成とすることができる。これによれば、ダクト型送風装置の外観には、ダクト筐体の長手方向に、1列に揃えて配置された第1吹出口と第2吹出口の吹出開口端が1列に現れ、送風方向が相違するにも拘わらず、ダクト型送風装置に良好なデザイン性を保持させることができる。
【0013】
また、上記ダクト型送風装置において、上記ダクト筐体には、ダクトの外周部に第1吹出口と第2吹出口用の吹出開口が別々に形成され、別個に成形した該第1吹出口と第2吹出口が、該各々の吹出開口の外側を覆って、該ダクト筐体に固着される構成とすることができる。これによれば、ダクト筐体と吹出口とが別個に成形されるため、各種の車種に合わせてダクト型送風装置を、合成樹脂成形により製作する場合、共通部品を使用しながら、適用する車種に合わせたダクト型送風装置を、低コストで容易に製造することができる。
【0014】
またここで、上記第1吹出口と第2吹出口は、内部に隔壁を送風方向と平行に設けることができる。
【0016】
またここで、上記ダクト型送風装置において、ダクト筐体を具備した第1ダクト部材と第2ダクト部材が、間隔をおいて平行に配置され、通風チャンバーが、第1ダクト部材と第2ダクト部材のダクト筐体の両側端部に連通接続され、両側の通風チャンバーの外側に空気導入部が各々設けられ、空気導入部と反対側の通風チャンバーに、空気噴出口を設ける構成とすることができる。
【0017】
これによれば、ダクト型送風装置が、例えばバスなどの車室の天井部に設置された場合、車室内に立って乗車する乗員に対し、第1吹出口と第2吹出口及び空気噴出口から、天井部の広い範囲に効率良く冷暖房用空気を送ることができ、特に、天井部の前後両側端部に停滞しやすい空気を押し流し、冷暖房効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダクト型送風装置によれば、車室内の天井部或いは側壁部などに沿って、簡単に設置することができ、車室内の広い範囲に送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態を示すダクト型送風装置の、下側から斜め上側を見たときの全体斜視図である。
【
図2】Aは同レジスタの1個のダクト部材の正面図、Bは同ダクト部材の右側面図である。
【
図9】筐体ケースとスクリュー部材の斜視図である。
【
図10】ダクト型送風装置の下から見た正面図である。
【
図13】下側から斜め上側を見たときの、吹出方向を示す説明斜視図である。
【
図14】第2実施形態を示すダクト型送風装置の、下側から斜め上側を見たときの全体斜視図である。
【
図18】ダクト筐体とスクリュー部材の部分斜視図である。
【
図19】下側から斜め上側を見たときの、吹出方向を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図13は第1実施形態のダクト型送風装置を示している。このダクト型送風装置は、車室内の天井部に設置されるダクト型のレジスタであり、
図1に示すように、両側に第1ダクト部材2と第2ダクト部材3が間隔をおいて平行に配置される。両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3の両側端部には、各々、通風チャンバー20が掛け渡すように連通接続され、ダクト型送風装置は、全体として方形枠状に形成される。
【0021】
両側に第1ダクト部材2と第2ダクト部材3には、各々、第1吹出口5と第2吹出口6がダクトの軸方向(長手方向)に沿って、交互に配置され、さらに、両側の通風チャンバー20の内側に、各々、空気噴出口22が、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3で囲う天井空間の内側に、空気を噴出するように設けられ、車室内に立って乗車する多くの乗員に対し、送風を行うようになっている。両側の通風チャンバー20の外側には、空調装置の送風ダクトに接続される空気導入口21が設けられる。
【0022】
両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3には、各々、円筒型のダクト筐体4が設けられ、
図9に示す如く、ダクト筐体4内にスクリュー部材7が挿入固定され、ダクト筐体4内に螺旋流路10が形成される。ダクト筐体4の外周部には、外周部の横断面円の略接線方向に空気流を吹き出す第1吹出口5と第2吹出口6が、交互に隣接して設けられる。
【0023】
第1吹出口5と第2吹出口6は、ダクト筐体4内に螺旋流路10によって作られる旋回空気流が吹き出される方向に形成される。両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3における第1吹出口5と第2吹出口6は、
図1、
図5,6に示すように、下方と斜め内側に向けて送風し、且つ通風チャンバー20の空気噴出口22から方形枠状のダクト型でレジスタの内側に、効率良く送風するようになっている。また、空気噴出口22は、
図11,12に示す如く、送風方向に向けて絞り形状に形成され、流速の速い送風を、ダクト型送風装置の内側に向けて、前後両側から送風するように形成される。
【0024】
図8,9に示すように、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3のダクト筐体4内に、スクリュー部材7が配設されて、ダクト内に螺旋流路10が形成されるが、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3では、
図1に示すように、スクリュー部材7のねじの方向は相違して設定される。つまり、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3内のスクリュー部材7のねじ方向は、ダクト部材を前後側から見たとき、ねじの送り方向への回転が外側から下方に向かうように、相反方向に設定される。
【0025】
さらに、両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3のダクト筐体4の中央部には、中央隔壁9(
図3)が設けられ、ダクト型送風装置の前後両側の通風チャンバー20から供給された空気が中央隔壁9で止まり、その前後のダクト筐体4の第1吹出口5と第2吹出口6から、効率良く、空気を吹き出すことができるようになっている。
【0026】
第1ダクト部材2と第2ダクト部材3のダクト筐体4内における、中央隔壁9の両側に、スクリュー部材7が挿入されるが、両側のスクリュー部材7のねじ方向は、相互に反対方向に設定される。つまり、中央隔壁9の両側のスクリュー部材7は、前後両側から中央部に向けて、右側のダクト部材が右ねじ方向、左側のダクト部材が左ねじ方向に設定される。また、中央隔壁9には、その両側面にスクリュー部材7の端部が固定され、スクリュー部材7を固定支持する機能も有している。
【0027】
空気吹出口となる第1吹出口5と第2吹出口6は、ダクト筐体4の外周部接線位置で且つ接線方向つまり螺旋の回転方向(ねじの送り方向への回転)に向けて取り付けられる。また、第1吹出口5と第2吹出口6は、
図4~
図6に示すように、吹出方向が相違して取り付けられる。つまり、第2吹出口6は、鉛直方向の真下に向けて取り付けられ、第1吹出口5は、真下鉛直方向から内側に、例えば約45°だけ傾斜して取り付けられている。この第1吹出口5の傾斜角度は90°までの角度であれば、任意の角度とすることができる。
【0028】
また、第1吹出口5と第2吹出口6は、ダクト筐体4とは別の部材として成形され、吹出口としてダクト筐体4の外周部に取り付けられる。ダクト筐体4の外周部の所定位置(吹出口位置)に、予め、
図5,6に示す如く、吹出開口5b、6bがダクト筐体4に形成される。
【0029】
第1吹出口5と第2吹出口6の長さ(ダクトの軸方向の長さ)は、スクリュー部材7の1ピッチ分の長さと略同一に形成され、また、
図7~
図9に示すように、第1吹出口5と第2吹出口6内には、送風方向と平行に、内側に2枚の隔壁5c、6cが設けられる。これにより、第1吹出口5と第2吹出口6は、各々、3通路に分離され、分離された3通路の吹出口から、所定の方向に送風するように形成される。第1吹出口5と第2吹出口6は、各々2枚の隔壁5c、6cにより補強されるとともに送風をガイドされる。また、各第1吹出口5と第2吹出口6の長さを、螺旋流路10の略1ピッチ分とすることにより、各々の吹出口からの吹出流量を揃えるようにしている。
【0030】
第1ダクト部材2と第2ダクト部材3を製造する場合、例えばダクト筐体4を合成樹脂のブロー成形で形成し、所定位置に吹出開口5b、6bを打ち抜き、別に吹出口部材として成形した第1吹出口5と第2吹出口6の吹出口部材を、ダクト筐体4の吹出開口5b、6bの外側に、その外側から覆って、固定するように製造する。これにより、ダクト筐体4と吹出口部材は、共通部品として低コストで量産することができ、各種の長さや大きさのダクト型送風装置を、容易に且つ安価に製造することができる。
【0031】
なお、
図4~
図6の例では、吹出開口5bと吹出開口6bは、ダクトの軸方向から見た場合、約45°の相違角度で形成され、第1吹出口5の吹出開口端5aと第2吹出口6の吹出開口端6aも、約45°の相違角度で形成される。この吹出開口端5aと吹出開口端6aの角度は、ダクト型送風装置の長さや大きさに応じて、任意に設定することができる。
【0032】
また、上記のように、第1ダクト部材2、第2ダクト部材3のダクト筐体4は中央隔壁9で仕切られ、両端の通風チャンバー20から中央隔壁9に向けて空気流が送風される。このため、第1ダクト部材2、第2ダクト部材3の各々の第1吹出口5、第2吹出口6において、通風チャンバー20側から中央部の中央隔壁9に近づくほど、螺旋流路10内で、圧力損失を受けて徐々に空気圧が低下しやすい。
【0033】
このためには、ダクト筐体4の吹出開口5bと吹出開口6bは、通風チャンバー20側から中央部の中央隔壁9に近づくほど、開口面積が大きくなるように形成することができる。これにより、ダクト筐体4の螺旋流路10内で、圧力損失を受けて徐々に圧力が低下する空気流に対し、吹出口の開口面積を大きくすることにより、圧力低下による送風量の減少を補償し、第1ダクト部材2、第2ダクト部材3の全体で、均一な流量の空気流を、第1吹出口5の吹出開口端5aと第2吹出口6の吹出開口端6aから吹き出すことができる。
【0034】
上記構成のダクト型送風装置は、車室の天井部に設置され、下側からレジスタを見上げた場合、
図10に示すように、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3が平行に位置し、その両側に通風チャンバー20が配置され、全体として方形枠状の形態となり、レジスタは天井パネルの内側に配設される。
【0035】
両側に平行に位置する第1ダクト部材2と第2ダクト部材3には、各々、吹出方向が鉛直に対し内側に約45°傾斜した第1吹出口5と鉛直真下に向く第2吹出口6とが、交互に軸方向に沿って配置される。
図5,6に示すように、第1吹出口5と第2吹出口6は、天井パネルに設けた天井吹出口に接続され、第1吹出口5と第2吹出口6及び空気噴出口22から、天井部中央近傍に向けて送風が行われることとなる。
【0036】
両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3において、各々の第1吹出口5と第2吹出口6の配列は、
図10に示すように、相違した配列となっている。つまり、第1ダクト部材2では、
図10の左端から第2吹出口6、第1吹出口5の順で配置され、第2ダクト部材3では、左端から第1吹出口5、第2吹出口6の順で配置される。これにより、車室内の天井部全体において、送風が偏らず、空気流を送風するようになっている。図示しない車両用空調装置の空調用ダクトは、ダクト型送風装置の前後両側の空気導入口21に接続される。
【0037】
次に、上記構成のダクト型送風装置の動作を説明する。空調装置が動作して両側の空気導入口21から空気が通風チャンバー20内に導入されると、空気流は、前後両側の通風チャンバー20から、左右両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3に入り、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3内の螺旋流路10内を、各々、相互に反対方向に、旋回しながら中央部に向けて進む。
【0038】
螺旋流路10を進む間、旋回する空気流が、
図5,6に示すように、第1吹出口5と第2吹出口6の箇所で、螺旋流路10から第1吹出口5、第2吹出口6に入り、第1吹出口5の吹出開口端5aからは、内側中央部近傍に向けて空気流が吹き出され、第2吹出口6の吹出開口端6aからは、真下近傍に向けて空気流が吹き出される。同時に、両側の通風チャンバー20の空気噴出口22から天井中央部に向けて空気流が噴出する。
【0039】
送風時、螺旋流路10内を旋回して流れる空気流には遠心力が作用し、これにより、空気流は、ダクト筐体4の外周壁に沿って流れ、接線方向で且つ旋回方向に向けて開口する吹出開口5b、6bから、
図5,6、に示す如く、真下及び斜め下方に向けて、位置に関わらず、均一な流量で送風される。
【0040】
このとき、
図13に示すように、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3においては、交互に配置された第1吹出口5の吹出開口端5aと第2吹出口6の吹出開口端6aから、内側中央部近傍に向けた空気流と真下近傍に向けた空気流が吹き出され、同時に両側の通風チャンバー20の空気噴出口22から天井中央部に向けて空気流が噴出する。これにより、天井空間内の広い範囲にわたり、空気が吹き出され、車室内に立って乗車する多くの乗員に対し、空調空気の送風を行うことができる。
【0041】
また、
図10に示すように、左右両側の第1ダクト部材2と第2ダクト部材3とでは、第1吹出口5と第2吹出口6の長手方向に位置が、相違して配置される。つまり、
図10の右側から第1ダクト部材2と第2ダクト部材3を見た場合、第1ダクト部材2では、第1吹出口5、第2吹出口6、第1吹出口5、第2吹出口6の順に配置され、第2ダクト部材3では、第2吹出口6、第1吹出口5、第2吹出口6、第1吹出口5の順に配置される。このため、平面的な天井空間において、送風が集中する箇所や送風が不足する箇所を、できる限り少なくし、車室内に立って乗車する多くの乗員に対し、空調空気の送風を行うことができる。
【0042】
特に、夏季など気温の高い季節に、暑くなりやすい車室の天井部に冷気を送風する際、第1ダクト部材2と第2ダクト部材3に設けた多くの第1吹出口5と第2吹出口6から、相違した位置と方向に冷気を送風するため、多くの乗員が車両に立って乗った場合でも、略全ての乗員に冷気を直接風として送風し、心地よい冷気を感じさせることができる。
【0043】
このように、第1ダクト部材2、第2ダクト部材3のダクト筐体4内を送風される空気流は、螺旋流路10内を旋回(回転)しながら進み、その回転(螺旋の旋回)方向に開口した第1吹出口5、第2吹出口6から接線方向に向けて効率良く送風され、同時に両側の空気噴出口22から天井中央部に向けて空気流が噴出するので、ダクトの先端部付近に集中して空気流が送風されることはなく、天井部の広い範囲に効率良く送風することができる。したがって、例えばバスなどの車両で、ダクト型送風装置が車室の天井部に設置された場合、車室内に立って乗車する乗員に対し、天井部の広い範囲に効率良く冷暖房用空気を送ることができ、冷暖房効果を向上させることができる。
【0044】
図14~
図19は第2実施形態のダクト型送風装置を示している。この実施形態では、
図14に示す如く、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33に設けた、第1吹出口35の吹出開口端35aと第2吹出口36の吹出開口端36aの位置が、ダクトの軸方向(長手方向)に沿って一列に揃えて配置される。なお、上記実施形態と同様の部分については、図面に上記実施形態と同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
このダクト型送風装置は、
図14に示すように、両側に第1ダクト部材32と第2ダクト部材33が間隔をおいて平行に配置される。両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33の両側端部には、各々、通風チャンバー20が掛け渡すように連通接続され、ダクト型送風装置は、全体として方形枠状に形成される。
【0046】
両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33には、各々、第1吹出口35と第2吹出口36がダクトの軸方向(長手方向)に沿って、交互に配置され、さらに、両側の通風チャンバー20の内側に、各々、空気噴出口22が、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33で囲う天井空間の内側に、空気を噴出するように設けられる。両側の通風チャンバー20の外側には、空調装置の送風ダクトに接続される空気導入口21が設けられる。
【0047】
第1ダクト部材32と第2ダクト部材33に、各々、円筒型のダクト筐体4が設けられ、
図17に示す如く、ダクト筐体4内にスクリュー部材7が挿入固定され、ダクト筐体4内に螺旋流路10が形成される。ダクト筐体4の外周部には、外周部の横断面円の略接線方向に空気流を吹き出す第1吹出口35と第2吹出口36が、交互に隣接して設けられる。
【0048】
第1吹出口35と第2吹出口36は、ダクト筐体4内に螺旋流路10によって作られる旋回空気流が吹き出される方向に向けて設けられる。両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33における第1吹出口35と第2吹出口36は、
図16に示すように、下方と斜め内側に向けて送風し、且つ通風チャンバー20の空気噴出口22から方形枠状のダクト型でレジスタの内側に、効率良く送風するようになっている。
【0049】
図17に示すように、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33のダクト筐体4内に、スクリュー部材7が配設されて、ダクト内に螺旋流路10が形成されるが、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33では、スクリュー部材7のねじの方向が相反方向に設定される。つまり、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33内のスクリュー部材7のねじ方向は、ダクト部材を前後側から見たとき、ねじの送り方向への回転が外側から下方に向かうように、設定される。
【0050】
さらに、両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33のダクト筐体4の中央部には、中央隔壁9(
図14)が設けられ、ダクト型送風装置の前後両側の通風チャンバー20から供給された空気が中央隔壁9で止まり、その前後のダクト筐体4の第1吹出口35と第2吹出口36から、効率良く、空気を吹き出すことができるようになっている。この中央隔壁9には、その両側面にスクリュー部材7の端部が固定され、スクリュー部材7を固定支持する機能も有している。
【0051】
空気吹出口となる第1吹出口35と第2吹出口36は、ダクト筐体4の外周部接線位置で接線方向(螺旋の回転方向)に向けて取り付けられ、且つ第1吹出口35と第2吹出口36は、吹出方向が相違するように形成され、取り付けられる。
【0052】
つまり、第2吹出口36は、
図16に示す如く、鉛直方向の真下に向けて送風するように取り付けられ、第1吹出口35は、真下鉛直方向から内側に、例えば約45°だけ傾斜して送風するように、略直角に曲げられて形成されている。また、第1吹出口35の吹出開口端35aと第2吹出口36の吹出開口端36aは、
図14に示すように、ダクトの軸方向に沿って、1列に揃えて位置するように形成される。これにより、交互に配置された第1吹出口35と第2吹出口36の送風方向を相違させつつ、それらの吹出開口端35a、36aを1ライン上に揃えることにより、車室内の天井部におけるデザインの向上を図り、見栄えを良好にしている。
【0053】
また、第1吹出口35と第2吹出口36は、ダクト筐体4とは別の部材として成形され、吹出口としてダクト筐体4の外周部に取り付けられる。ダクト筐体4の外周部の所定位置(吹出口位置)に、予め、吹出開口35b、36bがダクト筐体4に形成される。
【0054】
第1吹出口35と第2吹出口36の長さ(ダクトの軸方向の長さ)は、スクリュー部材7の1ピッチ分の長さと略同一に形成され、また、
図17に示すように、第1吹出口35と第2吹出口36内には、送風方向と平行に、内側に2枚の隔壁35c、36cが設けられる。これにより、第1吹出口35と第2吹出口36は、各々、3通路に分離され、分離された3通路の吹出口から、所定の方向に送風するように形成される。第1吹出口35と第2吹出口36は、2枚の隔壁35c、36cにより補強されるとともに送風をガイドされる。また、各第1吹出口35と第2吹出口36の長さを、螺旋流路10の略1ピッチ分とすることにより、各々の吹出口からの吹出流量を揃えるようにしている。
【0055】
次に、上記構成のダクト型送風装置の動作を説明する。空調装置が動作して両側の空気導入口21から空気が通風チャンバー20内に導入されると、空気流は、前後両側の通風チャンバー20から、左右両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33に入り、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33内の螺旋流路10内を、各々、相互に反対方向に、旋回しながら中央部に向けて進む。
【0056】
螺旋流路10を進む間、旋回する空気流が、
図19に示すように、第1吹出口35と第2吹出口36の箇所で、螺旋流路10から第1吹出口35、第2吹出口36に入り、第1吹出口35の吹出開口端35aからは、内側中央部近傍に向けて空気流が吹き出され、第2吹出口36の吹出開口端36aからは、真下近傍に向けて空気流が吹き出される。同時に、両側の通風チャンバー20の空気噴出口22から天井中央部に向けて空気流が噴出する。
【0057】
送風時、螺旋流路10内を旋回して流れる空気流には遠心力が作用し、これにより、空気流は、ダクト筐体4の外周壁に沿って流れ、接線方向で且つ旋回方向に向けて開口する吹出開口35b、36bから、
図16、19に示す如く、真下及び斜め下方に向けて、均一な流量で送風される。
【0058】
このとき、
図19に示すように、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33においては、交互に配置された第1吹出口35の吹出開口端35aと第2吹出口36の吹出開口端36aから、内側中央部近傍に向けた空気流と真下近傍に向けた空気流が吹き出され、同時に両側の通風チャンバー20の空気噴出口22から天井中央部に向けて空気流が噴出する。これにより、天井空間内の広い範囲にわたり、空気が吹き出され、車室内に立って乗車する多くの乗員に対し、空調空気の送風を行うことができる。
【0059】
また、
図19に示すように、左右両側の第1ダクト部材32と第2ダクト部材33とでは、第1吹出口35と第2吹出口36の長手方向に位置が、相違して配置される。つまり、
図19の右側から第1ダクト部材32と第2ダクト部材33を見た場合、第1ダクト部材32では、第2吹出口36、第1吹出口35、第2吹出口36、第1吹出口35の順に配置され、第2ダクト部材33では、第1吹出口35、第2吹出口36、第1吹出口35、第2吹出口36の順に配置される。このため、平面的な天井空間において、送風が集中する箇所や送風が不足する箇所を、できる限り少なくし、車室内に立って乗車する多くの乗員に対し、空調空気の送風を行うことができる。
【0060】
このように、第1ダクト部材32と第2ダクト部材33における、第1吹出口35と第2吹出口36の吹出開口端35a,36aが、ダクト筐体4の長手方向に1列に揃えて配置されるので、送風方向を相違させつつ、車室内の天井パネルの下面などに現れる吹出開口端の見栄えを向上させ、デザイン性を高めることができる。
【符号の説明】
【0061】
2 第1ダクト部材
3 第2ダクト部材
4 ダクト筐体
5 第1吹出口
5a 吹出開口端
5b 吹出開口
5c 隔壁
6 第2吹出口
6a 吹出開口端
6b 吹出開口
7 スクリュー部材
9 中央隔壁
10 螺旋流路
20 通風チャンバー
21 空気導入口
22 空気噴出口
32 第1ダクト部材
33 第2ダクト部材
35 第1吹出口
35a 吹出開口端
35b 吹出開口
35c 隔壁
36 第2吹出口
36a 吹出開口端