(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】移動体管理装置、及び、移動体管理方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230518BHJP
【FI】
G05D1/02 K
G05D1/02 P
(21)【出願番号】P 2019040510
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-12-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、膨大な数の自律型モビリティシステムを支える多様な状況に応じた周波数有効利用技術の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀屋 智之
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067183(JP,A)
【文献】特開2019-003296(JP,A)
【文献】特開2010-120129(JP,A)
【文献】特開2014-168824(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175360(WO,A1)
【文献】特開2009-026209(JP,A)
【文献】特開2006-146491(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116486(WO,A1)
【文献】特開2016-177640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ装置の撮影画像を用いて、対象者の視界の方向及び範囲を示し、かつ、遮蔽物によって前記視界が遮られる領域を除く視界情報を特定する特定部と、
前記対象者に対してサービスを提供する移動体を、前記対象者を含む所定の範囲を回避して前記視界情報の前方の位置に移動させる経路を探索する探索部と、
前記移動体に対して前記経路に従
って移動
し、前記対象者が前記視界情報の前方の位置に到来するまで前記位置に待機し、前記対象者が前記位置に到来した場合に前記サービスの提供を開始するよう指示する指示部と、
を備えた、移動体管理装置。
【請求項2】
複数の前記移動体のうち、前記経路に従う移動の予測時間が最短の移動体を選択する選択部をさらに備え、
前記指示部は、選択された前記移動体に対して前記移動を指示する、
請求項1に記載の移動体管理装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記経路の状態に応じて、前記移動の予測時間を調整する、
請求項2に記載の移動体管理装置。
【請求項4】
前記経路の状態は、前記経路における混雑度を含む、
請求項3に記載の移動体管理装置。
【請求項5】
前記特定部は、複数の前記視界情報の前方の位置を特定し、
前記探索部は、複数の前記移動体を、前記複数の前記視界情報の前方の位置それぞれに移動させる経路を探索し、
探索した前記経路に基づいて、それぞれの前記位置に移動させる移動体を選択する選択部をさらに備え、
前記指示部は、選択された前記移動体に対して前記移動を指示する、
請求項1に記載の移動体管理装置。
【請求項6】
前記探索部は、前記サービスを提供するエリアにおける所定の領域とは異なる領域に前記位置を設定する、
請求項1から5の何れか1項に記載の移動体管理装置。
【請求項7】
サーバ装置が、
カメラ装置の撮影画像を用いて、対象者の視界の方向及び範囲を示し、かつ、遮蔽物によって前記視界が遮られる領域を除く視界情報を特定し、
前記対象者に対してサービスを提供する移動体を、前記対象者を含む所定の範囲を回避して前記視界情報の示す視界の前方の位置に移動させる経路を探索し、
前記移動体に対して前記経路に従
って移動
し、前記対象者が前記視界情報の前方の位置に到来するまで前記位置に待機し、前記対象者が前記位置に到来した場合に前記サービスの提供を開始するよう指示する、
移動体管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体管理装置、及び、移動体管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自ら判断して自律的に行動する自律型ロボット、または遠隔操作により行動する非自律型ロボットを用いて、接客、案内、手助けを必要とする人(例えば、高齢者、障害者、車椅子の方、迷子)の手助け、警備、清掃、運搬等の様々なサービスを提供するシステムが開発されている。
【0003】
このようなシステムでは、ロボットの行動決定等に用いるために、ロボットの運用領域の各所に設けられた監視カメラ等の情報収集装置によって、運用領域内に存在する人物の属性情報(位置情報を含む)を収集し、収集された属性情報をサーバ装置からロボットに無線通信等を用いて送信することが行われる。なお、非自律型ロボットの場合は、属性情報に加えて、属性情報に基づき決定されたロボットの移動経路を指示する情報もサーバ装置からロボットに送信される。
【0004】
このような従来技術として、複数の移動ロボット(非自律型ロボット)と、移動ロボットと無線通信するサーバ装置とを備える移動ロボット制御システムであって、サーバ装置が各移動ロボットと無線通信し、複数の移動ロボットを一元的に制御する技術が知られる(特許文献1参照)。
【0005】
また、万引き等の抑止のための次の防犯システムが知られている。ロボットが、自律移動して来店者に近づいて来店者の映像を近距離で撮影し、撮影した映像をサーバ装置へ送信する。サーバ装置は、ロボットから受信した映像に基づき、来店者が注意対象者であるか否かを判定する(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-134794号公報
【文献】特開2018-181159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようにロボットが人に対してサービスを提供するシステムでは、ロボットがサービスを受ける人に対して不快感を与えないことが求められる。
【0008】
本開示の非限定的な実施例は、ロボットがサービスを受ける人に対して不快感を与えることを防止する技術の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る移動体管理装置は、カメラ装置の撮影画像を用いて、対象者の視界の方向及び範囲を示し、かつ、遮蔽物によって前記視界が遮られる領域を除く視界情報を特定する特定部と、前記対象者に対してサービスを提供する移動体を、前記対象者を含む所定の範囲を回避して前記視界情報の前方の位置に移動させる経路を探索する探索部と、前記移動体に対して前記経路に従って移動し、前記対象者が前記視界情報の前方の位置に到来するまで前記位置に待機し、前記対象者が前記位置に到来した場合に前記サービスの提供を開始するよう指示する指示部と、を備える。
【0010】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の非限定的な実施例によれば、ロボットがサービスを受ける人に対して不快感を与えることを防止できる。
【0012】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態1に係る管理システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係るサーバ装置の構成例を示す図
【
図3】実施の形態1に係るサーバ装置の処理例を示すフローチャート
【
図4】実施の形態1に係る経路探索及びロボット選択を説明するための図
【
図5】実施の形態2に係るサーバ装置の処理例を示すフローチャート
【
図6】実施の形態2に係る進行方向の特定及び経路探索を説明するための図
【
図7】実施の形態1及び2に係る視界情報を説明するための図
【
図8】本開示に係るサーバ装置のハードウェア構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、管理システム1の構成例を示す。
【0017】
図1に示すように、管理システム1は、サーバ装置10と、監視カメラ20と、ロボット30とを有する。サーバ装置10と監視カメラ20は、有線又は無線のネットワーク40を通じて接続される。サーバ装置10とロボット30は、無線のネットワーク40を通じて接続される。監視カメラ20の数は、
図1に示す数に限られず、1台であってもよいし、複数台であってもよい。ロボット30の数は、
図1に示す数に限られず、1台であってもよいし、複数台であってもよい。
【0018】
監視カメラ20は、所定のエリア内の様々な位置に設置される。監視カメラ20は、撮影した画像(以下「撮影画像」という)を、ネットワーク40を通じて、サーバ装置10へ送信する。所定のエリアは、ショッピングモール、地下街、駅、空港及び公共施設等、建物内であってよい。所定のエリアは、公園、球場、動物園等、屋外であってもよい。撮影画像は、静止画像及び動画像の何れであってもよい。
【0019】
サーバ装置10は、移動体管理装置の一例であり、監視カメラ20から受信した撮影画像に基づいて、ロボット30によるサービスを求める人(以下「対象者」という)2を特定する。例えば、対象者2は、ロボット30による接客を求める人、及び、ロボット30による案内を求める人である。例えば、対象者2は、子供、高齢者、障害者、及び、車椅子の人等、ロボット30による手助けを求める人である。例えば、対象者2は、ロボット30による警護を求める人、ロボット30による清掃を求める人、ロボット30による荷物の運搬を求める人である。
【0020】
また、サーバ装置10は、特定した対象者2に対してサービスを提供するロボット30を決定する。サーバ装置10は、決定したロボット30に対して、特定した対象者2の位置の付近へ向かうよう指示する。なお、サーバ装置10の構成については後述する。
【0021】
ロボット30は、移動体装置の一例であり、サーバ装置10から受信した指示に基づいて、対象者2の位置の付近に移動し、対象者2に対してサービスを提供する。ロボット30はどのような大きさ及び形状であってもよい。
【0022】
<サーバ装置の構成>
図2は、サーバ装置10の構成例を示す。
【0023】
図2に示すように、サーバ装置10は、画像受信部101、対象者特定部102、進行方向特定部103、経路探索部104、ロボット選択部105、及び、ロボット指示部106を有する。
【0024】
画像受信部101は、ネットワーク40を通じて、監視カメラ20から撮影画像を受信する。
【0025】
対象者特定部102は、撮影画像に基づいて、対象者2を特定する。例えば、対象者特定部102は、撮影画像から、近くに保護者又は介助者のいない、子供、高齢者、障害者又は車椅子の人を検出した場合、その人を対象者2に特定する。対象者特定部102は、所定の画像解析によって、撮影画像から対象者2を特定してよい。子供及び高齢者等の所定の属性を有する対象者2を特定する画像解析の手法は、様々なものが知られている。ここでは詳しい説明については省略するが、例えば、機械学習の利用が考えられる。また、近くに保護者等がいるか否かは、例えば、特定した子供等と類似の軌跡で移動している他者がいるか否かによって判定できる。また、その際に、公知の年齢推定の技術等を併用することによって、複数の子供であるか、或いは、保護者と子供の組であるかを区別できる。
【0026】
進行方向特定部103は、撮影画像に基づいて、対象者2の位置及び進行方向を特定する。例えば、進行方向特定部103は、撮影画像を撮影した監視カメラ20の位置から、対象者2の位置を特定する。例えば、進行方向特定部103は、撮影画像から時間経過に伴う対象者2の移動方向を解析することにより、対象者2の移動方向を特定する。進行方向特定部103が特定する進行方向は、予測であってよい。また、予測に限らず、対象者2の目的地の情報等を基に進行方向を特定してもよい。
【0027】
経路探索部104は、対象者2の位置及び進行方向に基づいて、ロボット30を、対象者2に対してサービスを提供する位置(以下「移動先位置」という)へ移動させる経路(以下「移動経路」という)を探索する。経路探索には、既知のアルゴリズムが使用されてよい。例えば、経路探索には、ダイクストラ法が使用されてよい。ただし、経路探索には、他のアルゴリズムが使用されてもよい。ここで、経路探索部104は、移動先位置を、対象者2の進行方向に設定する。また、経路探索部104は、移動先位置までの移動経路の探索において、対象者2を含む所定の範囲を回避する移動経路を探索する。別言すると、経路探索部104は、対象者2を含む所定の範囲を通過する移動経路を探索しない。これにより、対象者2の進行方向に回り込むような移動経路が探索され、対象者2の死角(背後等)から近づくような移動経路が探索されない。よって、対象者2に対して不快感や驚きを与えない移動経路を探索できる。なお、経路探索部104は、各ロボット30の位置情報を、各ロボット30からネットワーク40を通じて取得してよい。また、経路探索部104が移動経路の探索に用いるエリアの地図情報は、サーバ装置10に予め保持されてもよいし、ネットワーク40を通じて取得されてもよい。
【0028】
ロボット選択部105は、各ロボット30の移動経路に基づいて、対象者2に対してサービスを提供するロボット(以下「サービス提供ロボット」という)を選択する。例えば、ロボット選択部105は、移動先位置に到着する時間が最短のロボット30を、サービス提供ロボットに選択する。なお、ロボット選択部105の詳細については後述する。
【0029】
ロボット指示部106は、サービス提供ロボットに対して、ネットワーク40を通じて、移動先位置への移動を指示する情報(以下「移動指示情報」という)を送信する。移動指示情報には、サービス提供ロボットの移動先位置までの移動経路を示す情報(以下「移動経路情報」という)が含まれてよい。
【0030】
<処理フロー>
次に、
図3に示すフローチャートを参照して、サーバ装置10の処理の一例を説明する。
【0031】
対象者特定部102は、撮影画像に基づいて、サービスの対象者2を特定する(S101)。進行方向特定部103は、撮影画像に基づいて、対象者2の位置及び進行方向を特定する(S102)。
【0032】
経路探索部104は、対象者2に対してサービスを提供可能なロボット30を選択する(S103)。例えば、経路探索部104は、対象者2の位置から所定の距離以内に位置するロボット30を、サービスを提供可能なロボット30に選択してよい。又は、経路探索部104は、対象者2と同じフロア(階床)に位置するロボット30を、サービスを提供可能なロボット30に選択してよい。また、ロボット30がそれぞれ異なる機能を有する場合、経路探索部104は、対象者2の属性に対応して異なるロボット30を選択してよい。例えば、車椅子の人に対するサービスを想定する場合、車椅子を押す力を有するロボット30が選択される方が、道案内のみしか行えないロボット30が選択されるよりも好ましい。また、経路探索部104は、他の対象者2にサービスを提供中のロボット30については、サービス提供可能なロボット30に選択しなくてよい。
【0033】
経路探索部104は、S103にて選択した各ロボット30の移動先位置までの移動経路を探索する(S104)。ここで、経路探索部104は、上述の通り、移動先位置を対象者2の進行方向に設定し、対象者2を含む所定の範囲を回避する移動経路を探索する。
【0034】
ロボット選択部105は、S104にて探索した各ロボット30が移動経路に従って移動した場合に移動先位置に到着すると予測される時間(以下「移動予測時間」という)を算出する(S105)。ロボット選択部105は、S105にて算出した移動予測時間が最短のロボット30を、サービス提供ロボットに選択する(S106)。
【0035】
ロボット指示部106は、S106のサービス提供ロボットに対して、当該サービス提供ロボットの移動経路情報を含む移動指示情報を送信する(S107)。
【0036】
移動指示情報を受信したサービス提供ロボットは、移動指示情報に含まれる移動経路情報に従って、自律的に移動先位置まで移動してよい。ここで、自律的とは、指示された経路情報に単純に従うのではなく、ロボット30自身の保有するセンサの情報等を用いて、ロボット30自身の判断で経路を修正することを意味してよい。例えば、サービス提供ロボットは、監視カメラ20では撮影できない位置に障害物や人物が存在する場合に、それらを回避するよう経路を修正してよい。なお、この場合も、自律的に選択する経路が、対象者2の回避範囲400に入らないよう制御することにより、対象者2に与える不快感を抑制できる。そして、サービス提供ロボットは、移動先位置において対象者2の到来を待機し、対象者2が移動先位置に到来したタイミングでサービスの提供(例えば声かけ)を行ってよい。
【0037】
<経路探索部の詳細>
次に、
図4を参照して、経路探索部104の処理の一例について詳細に説明する。
【0038】
図4において、ロボット30A、30B、30Cは、対象者2に対して、サービスを提供可能なロボットである。この場合、経路探索部104は、次のように移動経路を探索してよい。
【0039】
まず、経路探索部104は、対象者2を中心とする半径Rの範囲(以下「回避範囲」という)400を設定する。
【0040】
次に、経路探索部104は、対象者2の進行方向Fかつ回避範囲400よりも外側に、移動先位置Pを設定する。移動先位置Pは、
図4に示すように回避範囲400の境界に沿った位置に設定されてよい。或いは、移動先位置Pは、回避範囲400の境界から外側に離れた位置に設定されてよい。また、移動先位置Pは、進行方向Fの通路内の何れかに設定されてよい。
【0041】
経路探索部104は、ロボット30A、30B、30Cのそれぞれについて、回避範囲400の通過を回避して移動先位置に到着する移動経路401A、401B、401Cを探索する。これにより、
図4に示すように、ロボット30Cが回避範囲400を通過して移動先位置Pに到着する移動経路401Xは、探索されない。すなわち、ロボット30Cが対象者2の死角から近づくような移動経路401Xは探索されない。よって、ロボット30Cが対象者2に対して死角から近づいて対象者2に不快感を与えることを防止できる。
【0042】
なお、回避範囲400は、
図4に示すような円形に限られない。例えば、回避範囲400は、対象者2の進行方向及び背後方向が、対象者2の左右方向よりも遠方に広がる楕円形又は長方形等であってもよい。
【0043】
<ロボット選択部の詳細>
次に、
図4を参照して、ロボット選択部105の処理の一例について詳細に説明する。
【0044】
図4において、ロボット30A、30B、30Cにそれぞれ対応する移動経路401A、401B、401Cのうち、移動経路401Aは、移動先位置Pまでの移動距離が最短である。したがって、ロボット選択部105は、移動経路の状態を考慮しない場合、移動予測時間が最短である移動経路401Aに対応するロボット30Aを、サービス提供ロボットに選択してよい。
【0045】
ロボット選択部105は、移動経路の状態を考慮する場合、各移動経路の状態に応じて、各移動経路401A、401B、401Cにそれぞれに対応する移動予測時間を算出する。移動経路の状態の例は、移動経路における混雑度、移動経路における段差の数、及び/又は、移動経路における上り坂の数などである。
【0046】
混雑度が大きい場合、ロボット30の移動速度が低下し得る。よって、ロボット選択部105は、混雑度の大きい移動経路については、混雑度が小さい場合よりも、移動予測時間を長く算出してよい。なお、混雑度は、移動経路を撮影した撮影画像の解析によって算出されてよい。
【0047】
また、段差の数が多い場合、ロボット30の移動速度が低下しうる。よって、ロボット選択部105は、段差の数が多い移動経路については、段差の数が少ない(又は段差がない)場合よりも、移動予測時間を長く算出してよい。
【0048】
また、上り坂の数が多い場合、ロボット30の移動速度が低下し得る。よって、ロボット選択部105は、上り坂の数が多い移動経路については、上り坂の数が少ない(又は上り坂がない)場合よりも、移動予測時間を長く算出してよい。
【0049】
このようにして、移動経路の状態を考慮した結果、例えば、移動経路401Aの移動予測時間が、移動経路401Bの移動予測時間よりも長い場合、ロボット選択部105は、移動経路401Bに対応するロボット30Bを、サービス提供ロボットに選択してよい。
【0050】
(実施の形態2)
実施の形態1では、対象者2の1つの移動方向を特定する例について説明した。実施の形態2では、対象者2の複数の移動方向を特定する例について説明する。なお、実施の形態1で説明済みの内容については、実施の形態2では説明を省略することがある。また、実施の形態2におけるサーバ装置10の構成は
図2と同様であり、各構成の一部の動作が実施の形態1と異なっている。そこで、以下の処理フローの説明により、実施の形態2におけるサーバ装置10の各構成の説明を兼ねるものとする。
【0051】
<処理フロー>
次に、
図5に示すフローチャートを参照して、サーバ装置10の処理の一例を説明する。
【0052】
対象者特定部102は、撮影画像に基づいて、サービスの対象者2を決定する(S201)。進行方向特定部103は、撮影画像に基づいて、対象者2の位置及び複数の進行方向を特定する(S202)。なお、対象者特定部102の詳細については後述する。
【0053】
経路探索部104は、
図3のS103と同様、対象者2に対してサービスを提供可能なロボット30を選択する(S203)。
【0054】
経路探索部104は、S202にて特定した複数の進行方向のそれぞれに対応する移動先位置を設定する(S204)。
【0055】
経路探索部104及びロボット選択部105は、S204にて設定した各移動先位置について、
図3のS104~S106と同様の処理を行う(S205、S206、S207)。これにより、複数の移動先位置にそれぞれ対応する複数のサービス提供ロボットが選択される。
【0056】
ロボット指示部106は、各サービス提供ロボットに対して、移動経路情報を含む移動指示情報を送信する(S208)。
【0057】
移動指示情報を受信した各サービス提供ロボットは、移動指示情報に含まれる移動経路情報に従って、自律的に移動先位置まで移動してよい。そして、各サービス提供ロボットは、移動先位置において対象者2の到来を待機し、対象者2が移動先位置に到来したタイミングでサービスの提供(例えば声かけ)を行ってよい。
【0058】
<進行方向特定部の詳細>
次に、
図6を参照して、進行方向特定部103の処理の一例について詳細に説明する。
【0059】
図6において、対象者2は、十字路に向かって直進している。この場合、進行方向特定部103は、十字路における進行方向として、直進方向F1、右折方向F2、及び左折方向F3を特定する。すなわち、進行方向特定部103は、複数の互いに異なる進行方向を特定する。複数の進行方向は、例えば、地図情報を利用し、対象者2の位置または進行方向から選択し得る全ての経路を探索することによって特定できる。なお、広い範囲で探索を行うと、特定される進行方向の数が膨大なものとなるため、探索する範囲を対象者2の現在位置から所定の範囲内に限定してもよい。
【0060】
<経路探索部の詳細>
次に、
図6を参照して、経路探索部104の処理の一例について詳細に説明する。
【0061】
図6において、ロボット30A、30B、30Cは、対象者2に対して、サービスを提供可能なロボットである。この場合、経路探索部104は、次のように移動経路を探索してよい。
【0062】
まず、経路探索部104は、実施の形態1と同様に、回避範囲400を設定する。
【0063】
次に、経路探索部104は、進行方向特定部103によって特定された直進方向F1、右折方向F2、及び左折方向F3のそれぞれに対応する移動先位置P1、P2及びP3を設定する。移動先位置P1,P2,P3は、実施の形態1と同様に、回避範囲400の外側に設定される。
【0064】
次に、経路探索部104は、ロボット30A、30B、30Cのそれぞれが、実施の形態1と同様の条件に基づいて、移動先位置P1に到着する移動経路を探索する。そして、ロボット選択部105は、実施の形態1と同様に、各移動経路の移動予測時間に基づいて、ロボット30A、30B、30Cのうち、移動先位置P1に移動させるロボット30を選択する。
図6は、移動先位置P1に対して、移動経路401Aに対応するロボット30Aが選択された例を示す。
【0065】
次に、経路探索部104は、ロボット30B、30Cのそれぞれが、実施の形態1と同様の条件に基づいて、移動先位置P2に到着する移動経路を探索する。ロボット30Aは、上記のとおり、移動先位置P1への移動に選択されたので、移動先位置P2への移動経路の探索の対象から除外されてよい。そして、ロボット選択部105は、実施の形態1と同様に、各移動経路の移動予測時間に基づいて、ロボット30B、30Cのうち、移動先位置P2に移動させるロボットを選択する。
図6は、移動先位置P2に対して、移動経路401Bに対応するロボット30Bが選択された例を示す。
【0066】
移動先位置P3に移動させるロボットについても同様に選択される。
図6は、移動先位置P3に対して、移動経路401Cに対応するロボット30Cが選択された例を示す。
【0067】
これにより、直進方向F1に設定した移動先位置P1にはロボット30Aが、右折方向F2に設定した移動先位置P2にはロボット30Bが、左折方向F3に設定した移動先位置P3にはロボット30Cが移動し、対象者2の到来を待機する。よって、対象者2が、何れの進行方向に進んだとしても、ロボット30A、30B、30Cの何れかが対象者2に対してサービスを提供できる。
【0068】
<変形例>
次に、実施の形態1及び2における変形例について説明する。
【0069】
図7に示すように、進行方向に変えて又は進行方向と共に、対象者2の視界の方向及び範囲を示す視界情報501が用いられてもよい。視界情報501は、例えば、対象者2の顔の向きを特定し、正面方向の所定の角度を算出することによって得ることができる。また、地図情報などを参照して正面方向に壁などの視界を遮る遮蔽物が存在することを検知し、遮蔽物によって遮られる領域を視界情報501から除いてもよい。この場合、
図7に示すように、移動先位置は、視界情報の前方に設定されてよい。これにより、対象者2に対してサービスを提供するロボット30が対象者2の視界の外から急に現れ、対象者2に不快感又は驚きを与えることを防止できる。
【0070】
また、経路探索部104は、コーナーから急にロボット30が現れるなど、対象者2を驚かす又は対象者2が気づきにくい移動経路を、探索結果から除外してもよい。
【0071】
また、経路探索部104は、エリア内に位置する何れのロボット30でも、移動先位置への適切な移動経路を探索できない場合、当該エリアに隣接するエリアに位置するロボットを呼んでもよい。
【0072】
経路探索部104は、ロボット30と対象者2が遭遇する位置を予測し、予測した位置を移動先位置として移動経路を探索してもよい。
【0073】
経路探索部104は、エリアにおける各領域の安全度に基づいて、移動先位置を設定又は調整してもよい。例えば、経路探索部104は、安全度が所定の閾値未満である領域(以下「低安全度領域」という)には、移動先位置を設定しなくてもよい。低安全度領域は、例えば、階段、エスカレータ及び/又はエレベータ付近の領域、工事中付近の領域などである。これにより、ロボット30は安全な領域にてサービスを提供できる。
【0074】
経路探索部104は、低安全度領域に移動先位置を設定する場合、安全度が所定の閾値以上である領域よりも、精緻に移動先位置を設定してよい。例えば、経路探索部104は、低安全度領域において、対象者2にとって安全度が最も高い位置に移動先位置を設定してよい。例えば、経路探索部104は、車道又は線路等を含む低安全度領域に移動先位置を設定する場合、対象者2よりも車道又線路に近い位置に移動先位置を設定してよい。これにより、ロボット30が対象者2にサービスを提供する際に、対象者2が驚いて車道又は線路の方へ移動することを予防でき、対象者2の安全性が高まる。
【0075】
ロボット選択部105は、移動予測時間と異なる基準からも移動経路の状態を評価してよい。例えば、下り坂の数などが考えられる。下り坂ではロボット30の移動時間自体は短くなる可能性が高いが、転倒し易くなったり、急な飛び出しなどへの対応が難しくなったりする。そのため、下り坂の数が多い移動経路については、下り坂の少ない移動経路よりも選択されにくくなるようにしてもよい。他の例としては、経路の細さなどが考えられる。この場合、ロボット選択部105は、移動予測時間と他の基準との双方を考慮してもよいし、他の基準のみを考慮してもよい。
【0076】
実施の形態2において、複数の移動先位置について途中まで経路が同じであれば、同一のロボット30を割り当ててもよい。この場合、移動先位置までの経路が分岐する段階において、このロボット30をどの移動先位置に割り当てるか再度選択を行う。移動先位置は、対象者2の移動に伴って絞り込まれていく可能性が高いため、このようにすることにより、対象者2に対するサービス提供に必要なロボット30の数を抑制できる。
【0077】
なお、上述における移動指示情報は、ロボット30への送信に限られない。例えば、移動指情報は、エリアに位置する警備員の携帯端末に対して送信されてもよい。例えば、移動指示情報は、対象者2の視界に入りやすい警備員の携帯端末に対して送信されてもよい。
【0078】
<本開示のまとめ>
本開示において、移動体管理装置の一例であるサーバ装置10は、監視カメラ20の撮影画像を用いて対象者2の進行方向を特定する対象者特定部102と、対象者2に対してサービスを提供する移動体の一例であるロボット30を、対象者2を含む所定の範囲を回避して進行方向の位置に移動させる経路を探索する経路探索部104と、ロボット30に対して経路に従う移動を指示するロボット指示部106と、を備える。これにより、ロボット30が対象者2を含む所定の範囲を回避して、対象者2の進行方向の位置へ移動する経路が探索される。別言すると、ロボット30が対象者2を含む所定の範囲を通過して進行方向の位置へ移動する経路が探索されない。これにより、ロボット30が対象者2の死角から対象者2へ接近することを防止できるため、ロボット30が対象者2に対して不快感を与えることを防止できる。
【0079】
サーバ装置10は、複数のロボット30のうち、経路に従う移動の予測時間が最短のロボット30を選択するロボット選択部105をさらに備えてよい。ロボット指示部106は、その選択されたロボット30に対して移動を指示してよい。これにより、ロボット30を最短時間で進行方向の位置へ移動させることができる。
【0080】
ロボット選択部105は、経路の状態に応じて、移動の予測時間を調整してよい。経路の状態には、経路における混雑度が含まれてよい。これにより、経路の状態を考慮せずに移動の予測時間を算出する場合と比べて、高い精度で予測時間を算出できる。
【0081】
対象者特定部102は、複数の進行方向を特定してよい。経路探索部104は、複数のロボット30を、複数の進行方向のそれぞれの位置に移動させる経路を探索してよい。ロボット選択部105は、探索した経路に基づいて、それぞれの進行方向の位置に移動させるロボット30を選択してよい。ロボット指示部106は、選択されたロボット30に対して移動を指示してよい。これにより、予測される複数の進行方向の各位置にロボット30を移動させることができるので、対象者2が何れの進行方向を選んだとしても、何れかのロボット30が対象者2に対してサービスを提供できる。
【0082】
経路探索部104は、サービスを提供するエリアにおける所定の領域とは異なる領域に、進行方向の位置を設定してよい。これにより、所定の領域には進行方向の位置が設定されないので、所定の領域においてロボット30が対象者2に対してサービスを提供することを防止できる。例えば、階段又はエスカレータ付近に所定の領域を設定することにより、ロボット30は、階段又はエスカレータ付近において対象者2に対してサービスを提供しないので、対象者2の安全性が確保される。
【0083】
なお、上述において、「算出」、「決定」、「特定」、「選択」及び「判断」といった用語は互いに読み替え可能である。
【0084】
以上、本開示に係る実施形態について図面を参照して詳述してきたが、上述したサーバ装置10の機能は、コンピュータプログラムにより実現され得る。
【0085】
図8は、各装置の機能をプログラムにより実現するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。このコンピュータ2100は、キーボード又はマウス、タッチパッドなどの入力装置2101、ディスプレイ又はスピーカーなどの出力装置2102、CPU(Central Processing Unit)2103、ROM(Read Only Memory)2104、RAM(Random Access Memory)2105、ハードディスク装置又はSSD(Solid State Drive)などの記憶装置2106、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)又はUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの記録媒体から情報を読み取る読取装置2107、ネットワーク40を介して通信を行う送受信装置2108を備え、各部はバス2109により接続される。
【0086】
そして、読取装置2107は、上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置2106に記憶させる。あるいは、送受信装置2108が、ネットワーク40に接続された他のサーバ装置と通信を行い、他のサーバ装置からダウンロードした上記各装置の機能を実現するためのプログラムを記憶装置2106に記憶させる。
【0087】
そして、CPU2103が、記憶装置2106に記憶されたプログラムをRAM2105にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAM2105から順次読み出して実行することにより、上記各装置の機能が実現される。
【0088】
なお、
図2に示した機能的な構成、および、
図8に示したハードウェア構成は一例であり、互いに通信可能な複数の装置が相互に連携する形で実現してもよい。このような構成の一例としては、一部の処理を行うエッジコンピュータと他の処理を行うクラウドサーバとによる構成などが考えられる。この場合、経路の探索、経路の評価、対象者2の検出等、他のシステムでも利用できる処理及び/又は比較的負荷の大きな処理は、クラウドサーバによって実行されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示の一態様は、移動体装置を管理するシステムに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 管理システム
2 対象者
10 サーバ装置
20 監視カメラ
30、30A、30B、30C ロボット
40 ネットワーク
101 画像受信部
102 対象者特定部
103 進行方向特定部
104 経路探索部
105 ロボット選択部
106 ロボット指示部