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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ジョイントブーツの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/06 20060101AFI20230518BHJP
   B29C 49/48 20060101ALI20230518BHJP
   B29C 49/64 20060101ALI20230518BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20230518BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B29C49/06
B29C49/48
B29C49/64
F16J3/04 D
F16J15/52 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019069647
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020168750
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】本郷 祐嗣
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-015148(JP,A)
【文献】実開昭59-120112(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸に取り付けられる第1筒部と、
前記第1筒部と軸方向に離間して配置される、前記第1筒部より大径の第2筒部と、
前記第1筒部と前記第2筒部とを連結する蛇腹部と、を備えるジョイントブーツの製造方法であって、
第1金型のキャビティに熱可塑性樹脂を射出して、前記第1筒部に対応する第1部と、前記第2筒部に対応する第2部と、前記第1部と前記第2部とを連結する第3部と、を備えるプリフォームを成形する射出工程と、
前記第1金型から前記プリフォームを取り出す離型工程と、
第2金型を用いてブロー成形により前記プリフォームの前記第3部に前記蛇腹部を形成するブロー成形工程と、を備え、
前記プリフォームは、前記第1部と反対側の前記第2部の軸方向に連結される環状部を備え、
前記環状部の径方向および軸方向の厚さは、前記第2部の径方向の厚さよりも厚く、
前記ブロー成形工程では、前記環状部の軸方向の端面を前記第2金型に押し当てた前記プリフォームにガスを吹き込み、前記蛇腹部を形成し、
さらに、前記ブロー成形工程の後、前記環状部を分離する分離工程を備えるジョイントブーツの製造方法。
【請求項2】
前記プリフォームは、前記第2部の軸方向の端面のうち径方向の外側の部位と前記環状部との間を接続する、前記環状部の径方向の厚さよりも薄い環状の薄肉部を備え、
前記分離工程では、前記薄肉部が切断され前記環状部が分離される請求項1記載のジョイントブーツの製造方法。
【請求項3】
前記離型工程の後、前記ブロー成形工程の前に、前記プリフォームの前記第1部、前記第2部および前記環状部の温度よりも前記第3部の温度が高くなるように加熱する加熱工程を備える請求項1又は2に記載のジョイントブーツの製造方法。
【請求項4】
前記ジョイントブーツは、前記第2筒部の内周部に、互いに周方向に離間しつつ径方向の内側へ向けて突出する複数の凸部を備え、前記凸部に肉抜き部が形成され、
前記プリフォームは、前記凸部に対応する第4部を備え、
前記環状部の径方向および軸方向の厚さは、前記第2部の径方向の厚さと前記第4部の径方向の厚さとの間の寸法である請求項1から3のいずれかに記載のジョイントブーツの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジョイントブーツの製造方法に関し、特にプリフォームのブロー成形によるジョイントブーツの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドライブシャフト等に設けられる等速ジョイントにはジョイントブーツが取り付けられる。ジョイントブーツは等速ジョイントへの塵埃や異物の侵入を防ぐと共にグリスを収容する。ジョイントブーツは、軸に取り付けられる第1筒部と、第1筒部より大径の第2筒部と、第2筒部と第1筒部とを連結する蛇腹部と、を備える。
【0003】
特許文献1に開示される技術では、熱可塑性樹脂製のプリフォームのブロー成形によりジョイントブーツを製造する方法において、プリフォームは、第1筒部に対応する第1部と、第2筒部に対応する第2部と、第1部と第2部とを連結する第3部と、第2部に隣接し第2部から軸方向の外側へ離れるにつれて拡径するテーパ部と、を備えている。ブロー成形のときにテーパ部を型で圧潰してシールし、プリフォームにガスを吹き込み、蛇腹部を形成する。蛇腹部の形成後、テーパ部は切り離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-15148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の技術では、プリフォームのテーパ部は第2部とほぼ同じ厚さなので、ブロー成形のときにテーパ部が型で圧潰されると、テーパ部に隣接する第2部が変形するおそれがある。第2部が変形すると、第2部はジョイントブーツの第2筒部に対応するので、第2筒部の寸法精度が低下する。
【0006】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、第2筒部の寸法精度の低下を抑制できるジョイントブーツの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明は、軸に取り付けられる第1筒部と、第1筒部と軸方向に離間して配置される、第1筒部より大径の第2筒部と、第1筒部と第2筒部とを連結する蛇腹部と、を備えるジョイントブーツを製造する方法に関し、第1金型のキャビティに熱可塑性樹脂を射出して、第1筒部に対応する第1部と、第2筒部に対応する第2部と、第1部と第2部とを連結する第3部と、を備えるプリフォームを成形する射出工程と、第1金型からプリフォームを取り出す離型工程と、第2金型を用いてプリフォームのブロー成形により蛇腹部を形成するブロー成形工程と、を備え、プリフォームは、第1部と反対側の第2部の軸方向に連結される環状部を備え、環状部の径方向の厚さは、第2部の径方向および軸方向の厚さよりも厚く、ブロー成形工程では、環状部の軸方向の端面を第2金型に押し当てたプリフォームにガスを吹き込み、蛇腹部を形成し、さらに、ブロー成形工程の後、環状部を分離する分離工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のジョイントブーツの製造方法によれば、プリフォームは、第1部と反対側の第2部の軸方向に連結される環状部を備え、環状部の径方向および軸方向の厚さは、第2部の径方向の厚さよりも厚い。これにより環状部の軸方向の端面を第2金型に押し当てたときに、環状部および環状部に連結される第2部を変形させ難くできる。よって、第2部に対応するジョイントブーツの第2筒部の寸法精度の低下を抑制できる。
【0009】
請求項2記載のジョイントブーツの製造方法によれば、プリフォームは第2部の軸方向の端面のうち径方向の外側の部位と環状部との間を環状の薄肉部が接続する。薄肉部は、環状部の径方向の厚さよりも薄いので、請求項1の効果に加え、分離工程において環状部を分離するときの薄肉部の切断を容易にできる。薄肉部は、第2部の軸方向の端面のうち径方向の外側の部位と環状部との間を接続するので、薄肉部の切断跡が、ジョイントブーツの第2筒部の内周側に突出しないようにできる。これにより薄肉部の切断跡が第2筒部の寸法精度に影響を与えないようにできる。
【0010】
請求項3記載のジョイントブーツの製造方法によれば、離型工程の後、ブロー成形工程の前に、加熱工程により、プリフォームの第1部、第2部および環状部の温度よりも第3部の温度が高くなるように加熱する。環状部の径方向および軸方向の厚さは、特許文献1とは異なり、第2部の径方向の厚さよりも厚いので、環状部の熱容量を大きくできる。さらに特許文献1とは異なり、第2部に隣接する環状部は直接加熱されないので、第2部への熱伝導を抑制できる。その結果、ブロー成形工程において第3部を変形させ易くする一方、第1部、第2部および環状部を変形させ難くできる。よって請求項1又は2の効果に加え、第2部に対応するジョイントブーツの第2筒部の寸法精度の低下をさらに抑制できる。
【0011】
請求項4記載のジョイントブーツの製造方法によれば、ジョイントブーツは、第2筒部の内周部に、互いに周方向に離間しつつ径方向の内側へ向けて突出する複数の凸部を備え、凸部に肉抜き部が形成される。プリフォームは凸部に対応する第4部を備え、環状部の径方向および軸方向の厚さは、第2部の径方向の厚さと第4部の径方向の厚さとの間の寸法である。これにより環状部の成形後の変形を抑制できるので、第2金型に環状部を密着させ易くできる。よって、請求項1から3のいずれかの効果に加え、ブロー成形のときにプリフォームに吹き込まれるガスを第2金型と環状部との間から漏れ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態におけるジョイントブーツの片側断面図である。
図2図1の矢印II方向から見たジョイントブーツの底面図である。
図3】等速ジョイントの断面図である。
図4】第1金型の断面図である。
図5】プリフォームの片側断面図である。
図6図5のVIで示す部分を拡大したプリフォームの部分拡大図である。
図7】加熱装置の断面図である。
図8】第2金型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態におけるジョイントブーツ10の軸線Oを境にした片側断面図である。本実施形態のジョイントブーツ10は、自動車用のトリポートタイプの等速ジョイント20(図3参照)に装着される。ジョイントブーツ10は熱可塑性樹脂(例えばポリエステルやポリウレタン等)により一体成形されている。ジョイントブーツ10は、軸21(図3参照)に取り付けられる第1筒部11と、第1筒部11と軸方向に離間して配置される第2筒部12と、第1筒部11と第2筒部12とを連結する蛇腹部13と、を備えている。第2筒部12の外径は、第1筒部11の外径よりも大きい。
【0014】
図2図1の矢印II方向から見たジョイントブーツ10の底面図である。図2のI-I線は図1の断面図の切断線である。第2筒部12は、外形が円形状に形成されている。第2筒部12の内周部14には、径方向の内側へ向けて突出する複数(本実施形態では3つ)の凸部15が設けられている。凸部15は互いに第2筒部12の周方向に離間している。凸部15には、第2筒部12の軸方向の端面に開口する肉抜き部16が形成されている。肉抜き部16は、凸部15を支える壁部17の厚さを略同一にする。
【0015】
図3はジョイントブーツ10が取り付けられる等速ジョイント20の軸線Oを含む断面図である。等速ジョイント20は、ローラ22をもつ3本のトラニオン23が軸21から突出したトリポート24と、もう片方の軸25に設けたアウタケース26と、を備えている。アウタケース26の内周面にローラ22が転動する。アウタケース26の外周面には、軽量化のため、径方向の内側へ向けて凹む複数(本実施形態では3つ)の凹部27が形成されている。
【0016】
ジョイントブーツ10の第1筒部11は軸21に取り付けられ、第2筒部12はアウタケース26に取り付けられる。第2筒部12は、内周部14に形成された凸部15が、アウタケース26の凹部27の位置に配置される。ジョイントブーツ10の第1筒部11及び第2筒部12はそれぞれバンド28により締め付けられ、軸21とアウタケース26とにそれぞれ固定される。
【0017】
図1に示すようにジョイントブーツ10の第1筒部11には、外周にバンド28(図3参照)が締結される締結部11aと、締結部11aの蛇腹部13側に隣接する第1鍔部11bと、蛇腹部13の反対側の締結部11aに隣接する第2鍔部11cと、が形成されている。バンド28のずれを防ぐため、第1鍔部11b及び第2鍔部11cの外径は締結部11aの外径よりも大きい。
【0018】
同様に第2筒部12には、外周にバンド28(図3参照)が締結される締結部12aと、締結部12aの蛇腹部13側に隣接する第1鍔部12bと、蛇腹部13の反対側の締結部12aに隣接する第2鍔部12cと、が形成されている。バンド28のずれを防ぐため、第1鍔部12b及び第2鍔部12cの外径は締結部12aの外径よりも大きい。
【0019】
第1筒部11の内周部のうち締結部11aの内側には、周方向に延びる複数のリップ18が全周に亘って形成されている。第2筒部12の内周部14のうち締結部12aの内側には、周方向に延びる複数のリップ19が全周に亘って形成されている。バンド28(図3)の締結により、リップ18は軸21に押し付けられ、リップ19はアウタケース26に押し付けられる。リップ18,19によりジョイントブーツ10に収容されるグリスの漏洩を防止する。
【0020】
ジョイントブーツ10は射出工程、離型工程、加熱工程、ブロー成形工程および分離工程を経て製造される。図4はジョイントブーツ10のプリフォーム30を成形する第1金型40の断面図である。図5はプリフォーム30の軸線Oを境にした片側断面図であり、図6図5のVIで示す部分を拡大したプリフォーム30の部分拡大図である。図4に示す矢印I及びIIは、軸線Oの第1方向、及び、第1方向の反対側の第2方向を示す(図8においても同じ)。
【0021】
図4に示すように第1金型40は、プリフォーム30の外周側を成形する外型41と、外型41の内部に配置されプリフォーム30の内周側を成形する中子型42と、を備えている。外型41と中子型42との間にキャビティ43が形成されている。外型41は、プリフォーム30の周方向に複数(本実施形態では2つ)に分割されている。中子型42の先端には、軸方向に上下動できる押出プレート42aが配置されている。外型41のうち中子型42の先端を覆う部位に、ノズル44に通じるゲート45が形成されている。
【0022】
図5に示すようにプリフォーム30は、第1部31と、第1部31と軸方向に離間し第1部31よりも大径の第2部32と、第1部31と第2部32とを連結する第3部33と、を備えている。第1部31は、ジョイントブーツ10(図1参照)の第1筒部11に対応する部位であり、第1金型40により第1筒部11の最終的な製品形状に成形される。第1部31の軸方向の端面に、第1部31を閉塞する閉塞部31aが接続されている。
【0023】
第2部32は、ジョイントブーツ10の第2筒部12に対応する部位である。第2部32の外周面には、軸方向の第1部31側を向く円環状の第1面32b及び第2面32cが形成されている。第1面32bの外径は第2面32cの外径より大きく、第2面32cは第1面32bより第1部31の近くに位置する。第3部33は、ジョイントブーツ10の蛇腹部13に対応する部位である。第3部33は蛇腹部13よりも細く、第1部31から第2部32へ向かって拡径するテーパ状に形成されている。
【0024】
第2部32には、ジョイントブーツ10の凸部15に対応する第4部34が形成されている。第2部32及び第4部34は、第1金型40により第2筒部12及び凸部15の最終的な製品形状に成形される。第4部34には肉抜き部16が成形され、第2部32の外周には締結部12a、第1鍔部12b及び第2鍔部12cが形成される。第2部32の内周にはリップ19が成形されている。プリフォーム30は、第1部31と反対側の第2部32の軸方向に円環状の環状部35が連結されている。環状部35の軸方向の端面35aは、同一の平面上に位置する。
【0025】
図6に示すようにプリフォーム30は、第2部32の軸方向の端面32aのうち径方向の外側の部位と、環状部35の軸方向の第2部32側の端面35bのうち径方向の内側の部位との間を、円環状の薄肉部36が接続する。環状部35の内周面35cは薄肉部36の内周面に円筒状に連なっている。環状部35は断面が矩形状に形成されている。環状部35は、端面35a,35bが軸線Oに垂直な平面となるように形成されている。
【0026】
環状部35の軸方向の厚さT1及び径方向の厚さT2は、第2部32の締結部12aの厚さT3よりも厚い。厚さT1は、軸線Oに平行な直線を環状部35の端面35a,35bで切り取って得られる線分のうち最も長い線分の長さである。厚さT2は、軸線Oに垂直な直線を環状部35の内周面35c及び外周面35dで切り取って得られる線分のうち最も長い線分の長さである。
【0027】
厚さT1及びT2は、第2部32の第2鍔部12cの径方向の厚さT4よりも厚い。薄肉部36の径方向の厚さT5は、厚さT3よりも薄い。厚さT1及びT2は、第4部34のうち径方向の内側に最も突出した部位の厚さT6よりも薄く、厚さT3よりも厚い。本実施形態では、厚さT1,T2,T3,T4,T5はそれぞれ周方向の全周に亘って同一の値である。
【0028】
図4に戻って説明する。第1金型40は、成形されたプリフォーム30を中子型42から取り外す押出ピン46が設けられている。押出ピン46及び押出プレート42aは突出板47に取り付けられている。突出板47はエジェクタロッド48によって押し出される。押出ピン46は、押出ピン46の先端が、成形されたプリフォーム30の環状部35の軸方向の端面35a(図5参照)に当たる位置に配置されている。第1金型40は、プリフォーム30の第4部34に肉抜き部16を成形するコアピン49が配置されている。コアピン49はシリンダ50により軸方向へ可動する。
【0029】
図4図7及び図8を参照してジョイントブーツ10の製造方法について説明する。図7はプリフォーム30を加熱する加熱装置60の断面図であり、図8は加熱されたプリフォーム30をブロー成形する第2金型80の断面図である。
【0030】
図4に示すように第1金型40を閉じた後、射出工程において、ノズル44から射出された熱可塑性樹脂はゲート45を通ってキャビティ43へ流入する。キャビティ43に充填された熱可塑性樹脂が硬化した後、離型工程の第1工程において、まずノズル44を外型41から第1方向(矢印I方向)へ離し、外型41を開く。次にシリンダ50を駆動してコアピン49を第2方向(矢印II方向)へ移動させる。離型工程の第2工程において、エジェクタロッド48によって突出板47を第1方向(矢印I方向)へ押し出す。突出板47に固定された押出ピン46は、プリフォーム30の環状部35の軸方向の端面35aに当たり、突出板47に固定された押出プレート42aは、プリフォーム30の閉塞部31aに当たる。押出ピン46及び押出プレート42aにより中子型42からプリフォーム30を突き出す。中子型42から取り外されたプリフォーム30は室温で冷却(放冷)される。射出工程および離型工程が繰り返されてプリフォーム30が次々に成形される。
【0031】
図7に示すように加熱装置60は、プリフォーム30を支持する支持体61と、支持体61を回転させる回転装置66と、支持体61の周囲に配置されたヒータ74と、支持体61とヒータ74との間に介在するカバー70と、を備えている。加熱装置60はプリフォーム30の第3部33を加熱する装置である。
【0032】
支持体61は、プリフォーム30の環状部35の端面35a(図6参照)が全周に亘って密着する円板状の台部62と、台部62の径方向の外側に接続され軸方向に延びる円環状の壁部63と、台部62の中央から軸方向に突出する軸64と、軸64の先端に配置された円柱状の先端部65と、を備えている。台部62には、台部62を厚さ方向に貫通する穴62aが形成されている。壁部63の径方向の内側に、プリフォーム30の環状部35が配置される。壁部63の台部62からの軸方向の高さは、プリフォーム30の環状部35の軸方向の厚さT1(図6参照)よりも高い。軸64は、プリフォーム30の閉塞部31aが被さる先端部65を支持する。支持体61は、回転装置66によって軸方向(図7上下方向)にも移動する。
【0033】
カバー70は、支持体61に被せられたプリフォーム30に、ヒータ74が発する熱線(本実施形態では遠赤外線)が当たる部位を制限するための部材である。カバー70は、プリフォーム30の径方向に隙間をあけて壁部63と共に第2部32の第2面32cから環状部35までの部位の全体を取り囲む筒状の第1カバー部71と、径方向に隙間をあけて第1部31の全体を取り囲む筒状の第2カバー部72と、を備えている。カバー70には、第1カバー部71と第2カバー部72との間に開口部73が形成されている。開口部73により、プリフォーム30の第3部33の全体にヒータ74の熱線が当たる。カバー70及び壁部63により、プリフォーム30の第1部31、及び、第2部32の第2面32cから環状部35までの部位には熱線が直接当たらない。
【0034】
加熱装置60は、プリフォーム30が被せられた支持体61を回転装置66が回転させながら第3部33の全体をヒータ74が加熱する。加熱により第3部33が軟化したプリフォーム30は、第2金型80(図8参照)によりブロー成形される。
【0035】
図8に示すように第2金型80は、支持体61と、支持体61の外周側を覆う第1外型81及び第2外型82と、を備えている。第1外型81及び第2外型82は蛇腹部13(図1参照)を成形する金型である。第1外型81及び第2外型82は、プリフォーム30の周方向に複数(本実施形態では2つ)に分割されている。第2外型82は、プリフォーム30のうち第1方向(矢印I方向)を向く第2部32の第1面32b及び第2面32cに当接部82aが当接して、プリフォーム30の第1方向への移動を規制する。
【0036】
支持体61には、台部62の穴62aに接続する流路(図示せず)が設けられている。流路は、加圧タンク及び排気タンク(いずれも図示せず)に切り替え可能に接続されている。流路は、加圧タンクのガスをプリフォーム30の内側に送り、排気タンクを用いて第1外型81及び第2外型82の中のガスを排出する。
【0037】
ブロー成形工程において、第1外型81及び第2外型82を型閉めした後、支持体61の壁部63が第2外型82に当たるまで、第2外型82に対して支持体61が軸方向に移動する。これにより、プリフォーム30の第2部32の第1面32b及び第2面32cが第2外型82の当接部82aに押し付けられ、プリフォーム30の環状部35の端面35aが台部62に押し付けられる。その結果、環状部35の端面35aと台部62との間の気密性が確保される。次いで、台部62の穴62aからプリフォーム30の内側へガスが噴射される。これにより第3部33が径方向の外側へ膨らみ、第1外型81及び第2外型82により蛇腹部13(図1参照)が形成される。脱型の後、分離工程において、薄肉部36が全周に亘って切断され環状部35が分離され、同様に閉塞部31aが分離される。これによりジョイントブーツ10が得られる。
【0038】
本実施形態におけるジョイントブーツ10の製造方法によれば、離型工程の第1工程において、第1方向と反対側の第2方向へコアピン49を移動させ第4部34からコアピン49を抜く。第2工程において、コアピン49が抜かれた状態でプリフォーム30が脱型されるので、脱型時にコアピン49にかかる力を減らすことができる。よって、コアピン49の破損およびコアピン49による凸部15(壁部17)の破損を抑制できる。
【0039】
プリフォーム30の環状部35の径方向の厚さT2は、第2部32のうち第4部34以外の部位の径方向の厚さT3,T4よりも厚いので、押出ピン46の先端を環状部35の端面35aに当て易くできる。これにより第2工程においてプリフォーム30を突き出し易くできる。よって、プリフォーム30の離型性を向上できる。なお、環状部35はブロー成形工程の後の分離工程において分離されるので、環状部35の端面35aに押出ピン46の跡が付いてもジョイントブーツ10の外観品質に影響を与えない。
【0040】
プリフォーム30の環状部35の軸方向の厚さT1は、厚さT3,T4よりも厚いので、第2工程において押出ピン46が環状部35を突き破り難くできる。これによりプリフォーム30の離型性をさらに向上できる。
【0041】
プリフォーム30のうち内径が最も大きい第2部32は、第1部31及び第3部33に比べ、射出工程における硬化収縮量が大きいので、離型抵抗が最も大きい。また、第2部32にはリップ19が設けられているので、リップ19の離型抵抗も加わる。環状部35は、離型抵抗が最も大きい第2部32に連結されているので、プリフォーム30の離型性を向上できる。
【0042】
離型工程の後、加熱工程により、プリフォーム30の第1部31、第2部32及び環状部35の温度よりも第3部33の温度が高くなるように加熱される。これによりブロー成形工程において第3部33を変形させ易くできる。また、環状部35の厚さT1,T2は第2部32の厚さT3,T4よりも厚いので、環状部35の熱容量を大きくできる。これにより環状部35を加熱により変形させ難くできる。よって、環状部35が連結された第2部32に対応するジョイントブーツ10の第2筒部12の寸法精度の低下を抑制できる。
【0043】
特に、加熱工程において、プリフォーム30の第2部32の第2面32cから環状部35までが、カバー70及び壁部63に覆われてヒータ74の熱線が直接当たらないので、第2部32に対応する第2筒部12の寸法精度を向上できる。なお、プリフォーム30の第2部32のうち第2面32cは第3部33に隣接しているので、加熱された第3部33からの熱伝導により第2面32cも加熱される。しかし、ブロー成形工程おいて、第2外型82の当接部82aが第2面32cに押し付けられるので、第2面32cの変形は抑えられる。よって、第2筒部12の寸法精度は確保される。
【0044】
プリフォーム30は閉塞部31aによって第1部31が閉じているので、ブロー成形工程において、第1外型81と第1部31との間のガスのシールは不要である。一方、第2金型80の第2外型82の型閉め及び支持体61の軸方向の移動により、支持体61の台部62と環状部35の端面35aとの間の隙間が塞がれる。環状部35の軸方向の厚さT1及び端面35aの径方向の厚さT2は、厚さT3,T4よりも厚いので、端面35aによるシール面を確保できる。さらに、型閉めのとき等に環状部35の端面35aにうねりを生じ難くできるので、シール性を向上できる。よって、ジョイントブーツ10の蛇腹部13を安定して成形できる。
【0045】
環状部35の厚さT1,T2は厚さT3,T4よりも厚いので、環状部35の剛性を高くできる。これにより押出ピン46によってプリフォーム30が突き出されるときに(離型工程)、環状部35の変形を抑制できる。環状部35の変形により端面35aにうねりを生じ難くできるので、ブロー成形工程において環状部35による気密性を確保し易くできる。
【0046】
環状部35の厚さT1,T2は厚さT3,T4よりも厚いので、第2部32の第1面32b及び第2面32cを第2外型82の当接部82aに押し当てたときに環状部35を変形させ難くすることができる。その結果、環状部35に連結される第2部32を変形させ難くできる。よって、第2部32に対応するジョイントブーツ10の第2筒部12の寸法精度の低下を抑制できる。
【0047】
プリフォーム30の第2部32には、ジョイントブーツ10の凸部15に対応する複数の第4部34が設けられている。第4部34の厚さT6は第2部32の厚さより厚く、第4部34は第2部32の周方向に不連続に設けられているので、硬化収縮により第2部32にうねり(変形)が生じ易い。一方、環状部35の厚さT1,T2は、第2部32の厚さT3より厚く、第4部34の厚さT6よりも薄いので、第2部32が変形し易くても、環状部35の端面35aにうねりを生じ難くできる。これにより支持体61の台部62に環状部35の端面35aを密着させ易くできる。よって、ブロー成形のときにプリフォーム30に吹き込まれるガスを漏れ難くできる。特に、環状部35の厚さT1,T2は周方向の全周に亘って同一なので、環状部35にうねり(変形)をさらに生じ難くできる。
【0048】
第2金型80の第2外型82の型閉め及び支持体61の移動により、支持体61の台部62と環状部35の端面35aとの間に隙間が生じないようにされ、第2外型82の当接部82aと第2部32の第1面32b及び第2面32cとの間に隙間が生じないようにされる。プリフォーム30の内側にガスが供給されると、環状部35を膨張させる力が環状部35に加わり、環状部35の外周面35dが壁部63に密着し易くなる。その結果、環状部35による気密性をさらに向上できる。
【0049】
プリフォーム30の第2部32と環状部35とを薄肉部36が接続しているので、薄肉部36が、プリフォーム30の内側にガスが供給されたときの環状部35の膨張を妨げないようにできる。よって、環状部35による気密性を向上できる。
【0050】
薄肉部36は環状部35の径方向の厚さT2よりも薄いので、分離工程において環状部35を分離するときの薄肉部36の切断を容易にできる。薄肉部36は第2部32の軸方向の端面32aのうち径方向の外側の部位と環状部35との間を接続するので、薄肉部36の切断跡が、ジョイントブーツ10の第2筒部12の内周側に突出しないようにできる。これにより薄肉部36の切断跡が第2筒部12の寸法精度に影響を与えないようにできる。
【0051】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、ジョイントブーツ10の形状や材質などは適宜設定できる。
【0052】
実施形態ではトリポートタイプの等速ジョイント20に装着されるジョイントブーツ10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2筒部12が単なる円筒状をなすジョイントブーツに適用することは当然可能である。
【0053】
実施形態では、環状部35の端面35a,35bが軸線Oに垂直であり、端面35a,35bが互いに平行となるように成形される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば環状部35の端面35a,35bを円錐状の面にすることは当然可能である。
【0054】
実施形態では、環状部35の内周面35c及び外周面35dが円筒状の面である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。内周面35cや外周面35dを円錐状の面にすることは当然可能である。
【0055】
実施形態では、射出成形されたプリフォーム30の脱型のときに押出ピン46に加え、押出プレート42aを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。押出プレート42aを省略し、押出ピン46だけを用いて脱型を行うことは当然可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 ジョイントブーツ
11 第1筒部
12 第2筒部
13 蛇腹部
14 内周部
15 凸部
16 肉抜き部
21 軸
30 プリフォーム
31 第1部
32 第2部
33 第3部
34 第4部
35 環状部
35a 端面
36 薄肉部
40 第1金型
43 キャビティ
80 第2金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8