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特許7281341帳票処理装置、帳票処理システムおよび帳票処理装置における帳票処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】帳票処理装置、帳票処理システムおよび帳票処理装置における帳票処理方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/32 20190101AFI20230518BHJP
   G07D 11/60 20190101ALI20230518BHJP
   G06Q 20/18 20120101ALI20230518BHJP
【FI】
G07D11/32
G07D11/60
G06Q20/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019100223
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020194406
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荷山 晋一
(72)【発明者】
【氏名】野崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂本 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 成美
【審査官】平野 貴也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-012378(JP,A)
【文献】特開2008-299560(JP,A)
【文献】特開2002-032829(JP,A)
【文献】特開昭57-150065(JP,A)
【文献】特開昭63-086095(JP,A)
【文献】特開2020-027352(JP,A)
【文献】特開2004-164353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00 - 3/16,
9/00 - 13/00
G07F 19/00
G06Q 20/00 - 20/42,
40/00 - 40/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票を取り込むための取込口と、所定の情報を操作表示するための表示操作部とが設けられた装置本体と、
前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた帳票から、当該帳票の画像データを取得して、当該画像データの中から支払額情報を取得する取得手段と、
支払額情報の入力を受け付ける受付手段と、
第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付け、第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける決済手段と、
前記第2支払取引の決済の完了に応じて当該第2支払取引の内容を出力する出力手段と
前記取得手段によって取得された前記画像データに基づいて、その画像データに対応する帳票の種別を特定する特定手段と、
前記特定手段が帳票の種別を特定できない場合には、前記第2支払取引を案内する案内手段とを含み、
前記受付手段が、前記表示操作部に表示される第2支払取引開始操作表示が操作されることに基づいて支払額情報の入力の受け付けを開始する手段を含み、
前記案内手段が、前記第2支払取引開始操作表示、および前記第2支払取引開始操作表示を操作するように案内する案内表示を、前記表示操作部に表示する手段を含む、帳票処理装置。
【請求項2】
記受付手段は、数字、文字またはコードの入力を受け付けることによって、支払額情報の入力を受け付ける、請求項1に記載の帳票処理装置。
【請求項3】
前記第1支払取引および前記第2支払取引のどちらかを選択するための選択手段をさらに含み、
前記選択手段が、前記第2支払取引を開始するために操作される操作表示であって、前記第2支払取引開始操作表示とは別の第2支払取引開始選択表示を含み、
前記受付手段が、前記表示操作部に表示される前記第2支払取引開始選択表示が操作されることに基づいて支払額情報の受け付けを開始する手段を含む、請求項2に記載の帳票処理装置。
【請求項4】
前記第2支払取引開始操作表示は、前記第2支払取引開始選択表示と異なる態様である、請求項3に記載の帳票処理装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記第2支払取引の内容が記載された記録媒体を発行する、請求項1~4のいずれか一項に記載の帳票処理装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記第2支払取引の内容を外部送信する、請求項1~5のいずれか一項に記載の帳票処理装置。
【請求項7】
前記受付手段は、前記第2支払取引についての支払期限の情報の入力を受け付けることができ、
前記受付手段が受け付けた支払期限が切れている場合には、前記決済手段は、前記第2支払取引を中止する、請求項1~6のいずれか一項に記載の帳票処理装置。
【請求項8】
前記受付手段は、支払額情報を入力する者を特定するための個人情報の入力を受け付ける、請求項1~7のいずれか一項に記載の帳票処理装置。
【請求項9】
帳票に記録されている支払額を支払い、かつ前記帳票の一部を返却する支払取引を行うための帳票処理システムであって、
帳票を取り込むための取込口が設けられた装置本体と、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた前記帳票から支払額情報を取得する取得手段と、支払額情報の入力を受け付ける受付手段と、前記支払取引に含まれる第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付け、前記支払取引に含まれる第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける決済手段と、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた前記帳票の一部を前記第1支払取引の決済の後に返却する返却手段とを有する帳票処理装置と、
前記決済手段によって決済された前記支払取引を、当該支払取引が前記第1支払取引および前記第2支払取引を含む複数の支払種別のいずれであるかを表す取引種別情報、ならびに当該支払取引について前記帳票の一部の返却が完了したか否かを表す取引状態情報に関連付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された個々の前記第1支払取引および個々の前記第2支払取引について、前記取引状態情報に基づいて当該支払取引が完了したか未完了のままかを決定する端末とを含む、帳票処理システム。
【請求項10】
未完了のままになっている前記支払取引の情報を締めのタイミングに報知する報知手段をさらに含む、請求項9に記載の帳票処理システム。
【請求項11】
帳票を取り込むための取込口と、所定の情報を操作表示するための表示操作部とが設けられた装置本体と、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた帳票から、当該帳票の画像データを取得して、当該画像データの中から支払額情報を取得する取得手段と、支払額情報の入力を受け付けるための受付手段とを含む帳票処理装置における帳票処理方法であって、
第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付ける第1決済ステップと、
前記表示操作部に表示される第2支払取引開始操作表示が操作されることに基づいて、前記受付手段による支払額情報の受け付けを開始する受付ステップと、
前記第1決済ステップの代わりに、第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける第2決済ステップと、
前記第2決済ステップの完了に応じて前記第2支払取引の内容を出力する出力ステップと
前記取得手段によって取得された前記画像データに基づいて、その画像データに対応する帳票の種別を特定する特定ステップと、
前記特定ステップにおいて帳票の種別が特定できない場合に、前記表示操作部に前記第2支払取引開始操作表示、および前記第2支払取引開始操作表示を操作するように案内する案内表示を表示する表示ステップとを含む、帳票処理装置における帳票処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帳票処理装置と、帳票処理装置を含む帳票処理システムと、帳票処理装置における帳票処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、金融機関に設置される帳票処理装置を開示している。帳票処理装置が取引可能な種別の帳票を受け入れた場合、帳票処理装置の制御部は、この帳票から得られたデータを用いて精算処理を実行する。帳票処理装置が種別を特定できない帳票を受け入れた場合、制御部は、この帳票を顧客に返却し、金融機関の窓口に問い合わせるよう表示操作部によって顧客に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-40480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、帳票処理装置において精算処理できない帳票については、帳票処理装置の代わりに、窓口の係員が精算処理を手作業で実行する必要がある。そのため、帳票処理装置では、窓口の業務を低減して使い勝手の向上を図るために改善の余地がある。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、使い勝手の向上を図れる帳票処理装置、帳票処理システムおよび帳票処理装置における帳票処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、帳票から支払額情報を取得する取得手段と、支払額情報の入力を受け付ける受付手段と、第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付け、第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける決済手段と、前記第2支払取引の決済の完了に応じて当該第2支払取引の内容を出力する出力手段とを含む、帳票処理装置である。
【0007】
また、本発明は、前記帳票処理装置が、帳票を取り込むための取込口が設けられた装置本体をさらに含み、前記取得手段が、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた帳票から当該帳票の画像データを取得して、当該画像データの中から支払額情報を取得し、前記受付手段が、数字、文字またはコードの入力を受け付けることによって、支払額情報の入力を受け付けることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記帳票処理装置が、前記第1支払取引および前記第2支払取引のどちらかを選択するための選択手段をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記帳票処理装置が、前記取得手段によって取得された前記画像データに基づいて、その画像データに対応する帳票の種別を特定する特定手段と、前記特定手段が帳票の種別を特定できない場合には、前記第2支払取引を案内する案内手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記出力手段が、前記第2支払取引の内容が記載された記録媒体を発行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記出力手段が、前記第2支払取引の内容を外部送信することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記受付手段が、前記第2支払取引についての支払期限の情報の入力を受け付けることができ、前記受付手段が受け付けた支払期限が切れている場合には、前記決済手段が、前記第2支払取引を中止することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記受付手段が、支払額情報を入力する者を特定するための個人情報の入力を受け付けることを特徴とする。
前記受付手段が、前記表示操作部に表示される第2支払取引開始操作表示が操作されることに基づいて支払額情報の入力の受け付けを開始する手段を含んでいてもよい。前記案内手段が、前記第2支払取引開始操作表示、および前記第2支払取引開始操作表示を操作するように案内する案内表示を、前記表示操作部に表示する手段を含んでいてもよい。
前記選択手段が、前記第2支払取引を開始するために操作される操作表示であって、前記第2支払取引開始操作表示とは別の第2支払取引開始選択表示を含んでいてもよい。前記受付手段が、前記表示操作部に表示される前記第2支払取引開始選択表示が操作されることに基づいて支払額情報の受け付けを開始する手段を含んでいてもよい。
前記第2支払取引開始操作表示は、前記第2支払取引開始選択表示と異なる態様であってもよい。
【0014】
また、本発明は、支払額情報の入力を受け付ける受付手段と、支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける決済手段とを有する帳票処理装置と、前記決済手段による決済が完了した支払取引を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された個々の支払取引について、支払取引が完了したか未完了のままかを決定する端末とを含む、帳票処理システムである。
【0015】
また、本発明は、前記帳票処理システムが、未完了のままになっている前記支払取引の情報を所定のタイミングに報知する報知手段をさらに含むことを特徴とする。前記所定のタイミングが、締めのタイミングであってもよい。
前記帳票処理システムが、帳票に記録されている支払額を支払い、かつ前記帳票の一部を返却する支払取引を行うためのシステムであってもよい。前記帳票処理装置が、帳票を取り込むための取込口が設けられた装置本体と、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた前記帳票から支払額情報を取得する取得手段とを備えていてもよい。前記決済手段が、前記支払取引に含まれる第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付け、前記支払取引に含まれる第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付けてもよい。前記記憶手段が、前記決済手段によって決済された前記支払取引を、当該支払取引が前記第1支払取引および前記第2支払取引を含む複数の支払種別のいずれであるかを表す取引種別情報、ならびに当該支払取引について前記帳票の一部の返却が完了したか否かを表す取引状態情報に関連付けて記憶してもよい。前記端末が、前記記憶手段に記憶された個々の前記第1支払取引および個々の前記第2支払取引について、前記取引状態情報に基づいて当該支払取引が完了したか未完了のままかを決定してもよい。
【0016】
また、本発明は、帳票から支払額情報を取得する取得手段と、支払額情報の入力を受け付ける受付手段とを含む帳票処理装置における帳票処理方法であって、第1支払取引の決済として、前記取得手段が帳票から取得した支払額情報に基づく支払いを受け付ける第1決済ステップと、前記第1決済ステップの代わりに、第2支払取引の決済として、前記受付手段が受け付けた支払額情報に基づく支払いを受け付ける第2決済ステップと、前記第2決済ステップの完了に応じて第2支払取引の内容を出力する出力ステップとを含む、帳票処理装置における帳票処理方法である。
前記帳票処理装置が、帳票を取り込むための取込口と、所定の情報を操作表示するための表示操作部とが設けられた装置本体とをさらに備えていてもよい。前記取得手段が、前記取込口から前記装置本体内に取り込まれた帳票から、当該帳票の画像データを取得して、当該画像データの中から支払額情報を取得してもよい。
前記帳票処理方法が、前記表示操作部に表示される第2支払取引開始操作表示が操作されることに基づいて、前記受付手段による支払額情報の受け付けを開始する受付ステップと、前記取得手段によって取得された前記画像データに基づいて、その画像データに対応する帳票の種別を特定する特定ステップと、前記特定ステップにおいて帳票の種別が特定できない場合に、前記表示操作部に前記第2支払取引開始操作表示、および前記第2支払取引開始操作表示を操作するように案内する案内表示を表示する表示ステップとをさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帳票処理装置に関して使い勝手の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態において用いられる帳票の一例を示す模式図である。
図2】領収印の記入後に分離された状態における帳票を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る帳票処理システムの概要を示す模式図である。
図4】帳票処理システムを構成する帳票処理装置の斜視図である。
図5】帳票処理装置の内部構造を示す模式的な側面図である。
図6】帳票処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
図7】支払取引の際に帳票処理装置において行われる処理の内容を示すフローチャートである。
図8】帳票処理装置の表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図9】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図10】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図11】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図12】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図13】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図14】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図15】支払取引の際に帳票処理装置において行われる処理の内容を示すフローチャートである。
図16】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図17】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図18】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図19】帳票処理装置から発行されるレシートの模式図である。
図20】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
図21】帳票処理システムを構成するサーバーに記憶されるテーブルを示す図である。
図22】変形例に係る支払取引の際に帳票処理装置において行われる処理の内容を示すフローチャートである。
図23】表示操作部の表示内容の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1および図2は、この発明の一実施形態において用いられる帳票Fの一例を示す模式図である。帳票Fは、例えば行政機関や販売業者等が発行する納付書または払込票である。帳票Fは、税金や公共料金や商品の代金等の料金を支払うべき顧客等の利用者に郵送等によって届けられた後に、利用者によって料金の支払いのために銀行等の金融機関に持ち込まれる。
【0020】
帳票Fの全体は、例えば長方形状に形成された紙片である。帳票Fでは、料金の支払い後に利用者に返却される領収書F1と、帳票Fが持ち込まれた金融機関等にて保管される控えF2とが、帳票Fの長手方向LDに並んで配置されている。控えF2は、例えば、料金の支払い後に金融機関等において保管される納入書F2Aと、料金の支払い後に帳票Fの発行元である行政機関や販売業者等の支払い先に送付される納入通知書F2Bとを含んでもよい。
【0021】
領収書F1、納入書F2Aおよび納入通知書F2Bのそれぞれの表面FAには、それぞれのタイトルTと、支払うべき料金の額つまり支払額に関する情報Jと、枠状の押印欄Rとが予め印刷されている。なお、情報Jには、文字や数字に限らず、コード(バーコード等の二次元コード)といった様々な記号が含まれる。情報Jは、支払額に関する支払額情報J1と、料金を支払う期限つまり支払期限の情報J2とを少なくとも含む。
【0022】
利用者に届いた時点における帳票Fは、図1に示すように、領収書F1と控えF2とが一体化された状態にある。帳票Fには、領収書F1と控えF2との境界線L1(破線参照)が設けられている。控え2Fには、納入書F2Aと納入通知書F2Bとの境界線L2(一点鎖線参照)が設けられている。境界線L1および境界線L2のそれぞれは、帳票Fにおいて長手方向LDと直交する短手方向SDに沿って直線状に延びて、帳票Fを横切っている。境界線L1および境界線L2は、帳票Fに予め印刷された直線である。この実施形態では、境界線L1には、短手方向SDに沿って境界線L1上を直線状に延びるミシン目Mが形成されている。
【0023】
利用者が帳票Fを金融機関における有人の窓口に持ち込んだ場合、窓口の係員は、帳票Fに記載されている支払額情報J1から、支払額を利用者に伝える。なお、利用者が金融機関を訪れた日が、帳票Fに記載された情報J2における支払期限を徒過している場合には、延滞金が発生している場合がある。また、帳票Fの発行元から利用者への督促が既に行われている場合には、延滞金に加えて督促手数料も発生している場合がある。そこで、窓口の係員は、延滞金額および督促手数料額といった加算額を調べ、支払額情報J1に記載された支払額に加算額を加算した合計額を、支払うべき料金の総額として利用者に伝える。利用者は、係員から伝えられた料金を現金にて支払ったり、利用者自身等の口座から支払い先に振り込む手続きをしたりする等によって、料金について決済する。
【0024】
決済が完了すると、係員は、図2に示すように、決済完了の証拠情報である領収印Aを帳票Fにおける各押印欄R内に記入する。その後、係員は、帳票Fを、領収書F1と控えF2とに分離する。係員が領収書F1を利用者に手渡すと、利用者と係員との間における支払取引が完了する。つまり、決済が完了しただけでは、支払取引は未完了であり、領収印Aが記入された領収書F1が決済完了後に利用者に手渡されることによって支払取引全体が完了する。
【0025】
控えF2は、金融機関によって一旦回収され、その後、納入書F2Aと納入通知書F2Bとに分離されてから、それぞれの送り先に送られる。なお、納入書F2Aと納入通知書F2Bとを分離する際には、境界線L2をハサミ等で切断してもよいし、予め境界線L2にミシン目Mを設けておいて、境界線L1と同様の手順で、納入書F2Aと納入通知書F2Bとをミシン目Mにおいて分離してもよい。
【0026】
図3は、この発明の一実施形態に係る帳票処理システム100の概要を示す模式図である。帳票処理システム100は、金融機関に設けられている。帳票処理システム100は、金融機関における例えばATM(Automated Teller Machine)コーナーに設置された帳票処理装置1と、金融機関のバックヤード等に設置された記憶手段および報知手段の一例としてのサーバー101と、金融機関の窓口に設置された報知手段の一例としての端末102とを含む。
【0027】
帳票処理装置1とサーバー101と端末102とは、有線または無線の通信回線で構成されたLAN(Local Area Network)103を介して通信可能に接続されている。なお、サーバー101は、帳票処理装置1または端末102の一部であってもよい。この実施形態では、金融機関の出入口等に、コンシエルジュと呼ばれる接客係が駐在していることを想定している。記入機関を訪れた利用者は、何か不明なことがあれば、まず接客係に相談する。
【0028】
帳票処理装置1は、先程の説明において帳票Fに関して利用者と係員との間において行われた支払取引を利用者との間において行う自動取引装置であり、詳しくは、以降で詳説する。サーバー101は、帳票処理装置1での決済が完了した支払取引の情報を取引履歴として記憶している。端末102は、いわゆるパソコンであって、窓口の係員によって操作される。端末102は、サーバー101に記憶された個々の支払取引について、支払取引全体が完了したか未完了のままかを決定する。
【0029】
図4は、この発明の一実施形態に係る帳票処理装置1の斜視図である。帳票処理装置1は、縦長のボックス形状の装置本体2を含む。装置本体2における正面側の側面である前面3では、上側領域3Aが下側領域3Bよりも後側に一段ずれることにより、上側領域3Aと下側領域3Bとの間には水平に延びる境界領域3Cが形成されている。
【0030】
上側領域3Aの上側部分には、例えばタッチパネル付きの液晶モニターによって構成された表示操作部4が設けられている。表示操作部4は、受付手段、選択手段および案内手段の一例として機能する。上側領域3Aにおいて表示操作部4よりも右側の領域には、後側へ窪んだ窪み3Dが形成されている、窪み3Dには、左右に細長いスリット状のレシート取出口5およびカード出入口6と、PINパッド等によって構成された入力部7とが上下に並んで設けられている。上側領域3Aにおいて表示操作部4よりも下側には、左右に細長いスリット状の取込排出口8と、取込排出口8の下端を縁取って前側へ水平に突出した板状のトレイ9とが設けられている。
【0031】
前面3の下側領域3Bの上部において例えば右寄りの領域には、左右に細長いスリット状の紙幣投入口10および紙幣出金口11が上下に並んで設けられている。紙幣投入口10および紙幣出金口11は、下側領域3Bと境界領域3Cとに跨って略L字状に折り曲げられたシャッター12によって一括開閉される。下側領域3Bの上部において紙幣投入口10および紙幣出金口11よりも左側の領域には、硬貨出金口13が設けられ、境界領域3Cにおいて左右方向において硬貨出金口13と同じ位置には、硬貨投入口14が設けられている。硬貨出金口13および硬貨投入口14は、シャッター12と同様に略L字状に折り曲げられたシャッター15によって一括開閉される。なお、シャッター12は、紙幣投入口10だけを開閉するシャッターと、紙幣出金口11だけを開閉するシャッターとに分かれていてもよい。同様に、シャッター15は、硬貨出金口13だけを開閉するシャッターと、硬貨投入口14だけを開閉するシャッターとに分かれていてもよい。
【0032】
なお、表示操作部4、レシート取出口5、カード出入口6、入力部7、取込排出口8、紙幣投入口10、紙幣出金口11、硬貨出金口13および硬貨投入口14のそれぞれの位置は、利用者にとってアクセスしやすい位置であれば、任意に変更できる。また、紙幣投入口10と紙幣出金口11とが紙幣入出金口としてまとめられてもよいし、硬貨出金口13と硬貨投入口14とが硬貨入出金口としてまとめられてもよい。
【0033】
帳票処理装置1で行える支払取引には、帳票Fを用いた自動取引である第1支払取引と、第1支払取引とは別の支払取引であって帳票Fを用いなくてもよい第2支払取引とがある。第1支払取引について簡単に説明すると、利用者は、まず、帳票処理装置1の前に立つ。そして、利用者は、帳票処理装置1の前後方向において長手かつ水平な姿勢にあって表面が上向きになった帳票Fを、領収書F1が最後尾となるように、つまり控えF2が先頭となるようにトレイ9に載せて取込排出口8に挿入する。これにより、帳票Fが取込排出口8から装置本体2内に取り込まれる。すると、帳票処理装置1では、帳票Fに印刷された支払額情報J1(図1等参照)が読み取られて、支払額が表示操作部4に表示される。支払額について現金決済する利用者は、開放された紙幣投入口10や硬貨投入口14に現金を投入する。支払額についてキャッシュカードによって口座決済したい利用者は、自身のキャッシュカードをカード出入口6に挿入した後に、入力部7によって暗証番号等を入力する。
【0034】
現金決済および口座決済のいずれかが完了すると、帳票処理装置1内では、帳票Fにおける各押印欄R内に領収印Aが記入され、帳票Fが、ミシン目Mにおいて切断されて、領収書F1と控えF2とに分離される(図2参照)。控えF2は、帳票処理装置1内に回収され、領収書F1は、取込排出口8から装置本体2の外に排出されて利用者に返却される。現金決済で釣銭が発生した場合には、釣銭が、紙幣出金口11や硬貨出金口13から利用者に返却される。口座決済の場合には、口座の残高等を示したレシートがレシート取出口5から発行される。現金決済および口座決済のそれぞれの場合において、今回の支払取引の内容を示したレシートがレシート取出口5から発行されてもよい。
【0035】
このように第1支払取引は、決済、帳票Fへの領収印Aの記入、帳票Fの分離および利用者への領収書F1の返却が、帳票処理装置1内で完結する支払取引である。一方、第2支払取引は、帳票処理装置1での取り扱い対象外の帳票Fについて、利用者が支払額を主に手入力して支払額の決済を帳票処理装置1にて行い、帳票Fへの領収印Aの記入と帳票Fの分離と利用者への領収書F1の返却とを窓口の係員によって行う支払取引である。以下では、第1支払取引を「通常取引」といい、第2支払取引を「手入力取引」ということがある。第1支払取引および第2支払取引については、後で詳しく説明する。
【0036】
次に、帳票処理装置1の要部について説明する。図5は、帳票処理装置1の上部における内部構造を右側から見た模式図である。図5における左側は、帳票処理装置1の前側であり、図5における右側は、帳票処理装置1の後側であり、図5の紙面に垂直な方向は、帳票処理装置1の左右方向である。以下では、帳票処理装置1の前後方向、左右方向および上下方向を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、図4にて説明したレシート取出口5、カード出入口6および入力部7等の図示が図5では省略されている。帳票処理装置1の装置本体2内の上部には、帳票処理部20が設けられている。
【0037】
帳票処理部20に関連して、装置本体2内には、取込排出口8に挿入された帳票Fを搬送するための搬送路21が設けられている。搬送路21は、装置本体2内にて搬送される帳票Fの軌跡に沿って延びるスペースである。搬送路21の幅方向は、左右方向と一致している。搬送路21は、取込排出口8から装置本体2の後面22の手前まで後側へ水平に延びる第1搬送路21Aと、第1搬送路21Aの後端から湾曲した後に下側へ延びる第2搬送路21Bと、第2搬送路21Bの下端から湾曲した後に前側へ延びる第3搬送路21Cとを含む。
【0038】
取込排出口8に挿入されて搬送路21内に取り込まれた帳票Fは、第1搬送路21A、第2搬送路21Bおよび第3搬送路21Cにおいて、この順番にて搬送される。そのため、搬送路21では、帳票Fの搬送方向(以下では単に「搬送方向」という)において、第1搬送路21Aが、取込排出口8に近い上流側に位置し、第3搬送路21Cが、取込排出口8から離れた下流側に位置している。搬送路21内にて搬送される帳票Fは、通常では、帳票Fにおける二辺(図1に示す上下の二辺)が前後方向と整合した姿勢を保って、前後方向に沿って進行する。帳票処理部20は、搬送部(返却手段)25と、回収部26と、取込排出部27と、分離部(返却手段)28と、取得手段の一例としての読取部29と、アライメント部31と、記入部33と、検出部34とを含む。
【0039】
搬送部25は、搬送路21の全域に分散して配置された複数の搬送ローラ40を複数含む。各搬送ローラ40は、左右方向に細長く延びる円柱体である。搬送部24は、これらの搬送ローラ40を正逆回転させるモータ(図示せず)も含む。正回転する搬送ローラ40は、この搬送ローラ40の外周面に接触した帳票Fを搬送路21内において搬送方向の下流側へ搬送する。逆回転する搬送ローラ40は、この搬送ローラ40の外周面に接触した帳票Fを搬送路21内において搬送方向の上流側へ搬送する。搬送ローラ40は、対をなして対向配置されて搬送路21内において接触していてもよい。対になった2つのローラは、その間に帳票Fを挟持した状態にて互いに反対の方向に回転することによって、この帳票Fを搬送路21内において上流側または下流側へ搬送する。なお、後述する他のローラ(補正ローラ47は除く)についても、取込排出ローラ41と同様に構成される。
【0040】
回収部26は、分離後の帳票Fにおける控えF2(図2参照)を収納するために装置本体2内に確保されたスペースである。回収部26は、第3搬送路21Cにおいて搬送方向における下流側の端部、つまり第3搬送路21Cの前端部に接続されている。
【0041】
取込排出部27は、取込排出口8に挿入された帳票Fを第1搬送路21A内に取り込んだり、第1搬送路21A内の帳票Fの全部または一部を取込排出口8に排出したりするための構成である。取込排出部27は、第1搬送路21Aにおいて取込排出口8に隣接した前端部を上下から挟むように配置された少なくとも一対の取込排出ローラ41と、これらの取込排出ローラ41を正逆回転させるモータ(図示せず)とを含む。
【0042】
分離部28は、帳票Fをミシン目Mにおいて分離するための構成であって、第1搬送路21Aにおいて取込排出部27よりも搬送方向の下流側、つまり後側に配置されている。分離部28は、切断部材42と、アクチュエータ43と、第1ローラ44および第2ローラ45と、第1ローラ44および第2ローラ45を正逆回転させるモータ(図示しない)とを含む。
【0043】
切断部材42は、金属製または樹脂製のカッターであり、その刃先42Aの刃渡り方は、左右方向に延びている。切断部材42は、刃先42Aが第1搬送路21Aを横切れるように、第1搬送路21Aに対して交差または直交する移動方向(図5では上下方向)に移動可能である。図5に示すように待機位置にある切断部材42は、その移動方向における一方側(図5では上側)へ第1搬送路21Aから離れている。アクチュエータ43は、例えばモータによって構成されていて、切断部材42を移動方向に沿って移動させる。
【0044】
第1ローラ44および第2ローラ45のそれぞれは、第1搬送路21Aに沿って少なくとも一対ずつ設けられている。各対における2つの第1ローラ44は、第1搬送路21A内において接触するように互いに対向配置され、各対における2つの第2ローラ45は、第1搬送路21A内において接触するように互いに対向配置されている。なお、第1ローラ44および第2ローラ45のそれぞれは、左右方向から見て重なるように、左右方向に並んで複数配置されていてもよい。第1ローラ44は、搬送方向において、第2ローラ45よりも上流側に位置し、切断部材42は、搬送方向において、第1ローラ44と第2ローラ45との間に位置している。
【0045】
読取部29は、第1搬送路21Aにおいて分離部28よりも搬送方向の下流側に配置され、第1搬送路21Aを左右方向に横切っている。読取部29は、帳票Fの表面のイメージを上側から光学的に読み取って帳票Fの画像データを取得するためのものであり、例えば、CIS(Contact Image Sensor)等のラインセンサによって構成されている。
【0046】
アライメント部31は、帳票Fの姿勢を矯正して斜行状態を解消つまり斜行補正するための構成であり、第1搬送路21Aにおいて搬送方向における分離部28の周囲に配置されている。アライメント部31は、位置決め部46と、補正ローラ47と、補正ローラ47を回転させるモータ(図示せず)とを含む。
【0047】
位置決め部46は、前後に長手のブロック状に形成されている。位置決め部46において第1搬送路21Aに臨んだ側面は、第1搬送路21A内における帳票Fの進行方向に沿って平坦な寄せ当て面である。補正ローラ47は、前後方向において位置決め部46と同じ位置に配置されて、第1搬送路21Aに臨んでいる。補正ローラ47は、他のローラとは異なり、前後方向に延びる回転軸線(図示せず)まわりに回転する。第1搬送路21A内において搬送される帳票Fは、回転する補正ローラ47に接触することによって、位置決め部46の寄せ当て面に寄せられる。帳票Fが進行方向に対して傾斜した斜行状態にて搬送される場合があるが、この帳票Fが寄せ当て面に寄せられることによって、この帳票Fの姿勢が矯正されて斜行状態が解消する。
【0048】
記入部33は、第1搬送路21Aにおいて読取部29よりも搬送方向の下流側つまり第1搬送路21Aの後端部において、上側から第1搬送路21Aに臨んで配置されている。記入部33の下端面は、帳票Fにおける各押印欄R内に領収印A(図2参照)を記入するための押印部33Aが設けられている。押印部33Aには、領収印Aを反転させたものと一致した模様が刻まれている。押印部33Aは、この模様だけで構成されてもよいし、押印部33Aの一部または全部が、ドットインパクトプリンタ等によって構成された印刷ヘッド(図示せず)によって構成されてもよい。この場合、領収印Aの全体や、領収印Aにおける支払日の日付部分が、印刷ヘッドによって再現されて帳票Fに印刷される。記入部33は、領収印A以外の情報を帳票Fに記入できてもよい。帳票処理部20は、記入部33を昇降させるアクチュエータ等の駆動部(図示せず)も含む。
【0049】
検出部34は、一例として、搬送方向における読取部29と記入部33との間に配置されている。検出部34は、例えばフォトインタラプタであって、第1搬送路21Aを上下に挟んで配置された発光素子34Aおよび受光素子34Bを含む。発光素子34Aと受光素子34Bとの間に帳票Fが存在しない状態では、発光素子34Aによって発行された検知光(図示せず)が受光素子34Bによって受光される。発光素子34Aと受光素子34Bとの間に帳票Fが存在すると、検知光が帳票Fによって遮光される。発光素子34Aと受光素子34Bとの間を帳票Fが通過すると、検知光が再び受光素子34Bに受光される。検出部34は、このような検知光の遮光や受光によって、発光素子34Aと受光素子34Bとの間における帳票Fの通過を検出する。
【0050】
図6は、帳票処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。帳票処理装置1の装置本体2内には、帳票処理部20の他に、出力手段の一例としてのレシート印刷部51と、決済手段の一例としてのカード処理部52および現金処理部53とが設けられている。レシート印刷部51は、レシートを印刷するプリンタ等であり、レシート印刷部51としてレーザプリンタやサーマルプリンタを用いることができる。レシート印刷部51は、レシートを印刷してレシート取出口5に排出する。カード処理部52は、口座決済のために、カード出入口6に挿入されたキャッシュカードから必要な情報を読み取ったり、支払取引の中止や終了に応じてキャッシュカードをカード出入口6から排出したりする。現金処理部53は、現金決済のために、紙幣投入口10や硬貨投入口14に投入された現金を計数して収納したり、釣銭を算出したり、釣銭等の返却用の現金を紙幣出金口11や硬貨出金口13に投出したりする。
【0051】
帳票処理装置1は、取得手段、受付手段、決済手段、出力手段、特定手段および案内手段の一例としての制御部54を含む。制御部54は、CPUやROMやRAM等を含んだマイクロコンピュータによって構成されている。制御部54には、表示操作部4、入力部7、帳票処理部20、レシート印刷部51、カード処理部52および現金処理部53のそれぞれが電気的に接続されている。制御部54は、表示操作部4における表示内容を制御したり、利用者等による表示操作部4のタッチパネルや入力部7の操作を受け付けたりする。制御部54は、支払取引のために、帳票処理部20、レシート印刷部51、カード処理部52および現金処理部53のそれぞれに対して、それぞれの処理を実行させる。特に、制御部54と帳票処理部20の読取部29とは、OCR(Optical Character Reader)を構成している。
【0052】
帳票処理装置1は、制御部54に対して電気的に接続される別の部品として、シャッター用アクチュエータ55と、出力手段の一例としてのインターフェース(I/F)部56と、記憶部57とをさらに含む。制御部54は、シャッター用アクチュエータ55を動作させることによってシャッター12やシャッター15を開閉させる。I/F部56は、前述したLAN103に接続されていて、制御部54は、I/F部56を介してサーバー101や端末102等と通信することができる(図3参照)。
【0053】
記憶部57には、様々な情報が記憶されているが、特に、帳票処理装置1での取り扱い対象となる帳票Fの種別が、テンプレート等にまとめられて予め記憶されている。具体的には、記憶部57には、読取部29が取得した画像データを制御部54が文字認識する場合に参照される辞書情報57Aが記憶されている。この辞書情報57Aは、対応する種別の帳票Fにおける文字や数字等の記載を認識するためのデータであり、取り扱い対象の帳票Fの種別に応じて複数設けられている。辞書情報57Aは、帳票Fの種別毎に応じた特徴情報を含む。特徴情報として、帳票Fの形状や大きさ、文字、数字等の記載位置、文字、数字の種別等が挙げられる。
【0054】
また、辞書情報57Aにおける特徴情報は、帳票Fのサイズや罫線の特徴的なパターンといった外見上の識別情報、帳票Fにおける押印欄Rの位置情報、ミシン目Mの有無、および、帳票Fにおける分離位置の情報を含む。このように、辞書情報57Aは、帳票Fの画像データに含まれる帳票Fの画像から、帳票Fの種別を識別するための識別用データとして機能する。制御部54は、I/F部56を介して外部の辞書サーバー(図示せず)と通信して、この辞書サーバーに記憶された最新の特徴情報を取得して辞書情報57Aを更新することができてもよい。
【0055】
辞書情報57Aが存在して記憶部57に登録された帳票Fは、帳票処理装置1での取り扱い対象となる帳票Fであり、辞書情報57Aが記憶部57に登録されていない帳票Fは、帳票処理装置1での取り扱い対象外の帳票Fである。取り扱い対象外の帳票Fには、例えば支払額情報J1等の一部の情報が手書きされている帳票Fも含まれる。
【0056】
支払取引の際に帳票処理装置1において行われる処理の内容を、図7のフローチャートを主に参照して説明する。待機状態における帳票処理装置1の表示操作部4には、図8に示す待機画面61が表示されている。待機画面61には、案内文61Aが表示されるとともに、取引開始キー62、手入力取引選択キー(第2支払取引開始選択表示)63および係員呼出キー64といったタッチキーも表示される。なお、以下で語尾に「キー」と付く名称のものは、全てタッチキーである。
【0057】
帳票Fを持参して金融機関にやって来た利用者は、この帳票Fによる支払取引の仕方について接客係に尋ねる。この帳票Fが通常取引の対象であれば、接客係は、帳票処理装置1での処理が可能である旨を利用者に伝えて利用客を帳票処理装置1まで誘導し、待機画面61の取引開始キー62にタッチするよう促す。取引開始キー62がタッチされると、帳票処理装置1の制御部54は、通常取引が選択されたことを受け付ける。一方、手入力取引選択キー63がタッチされると、制御部54は、手入力取引が選択されたことを受け付ける。このように、表示操作部4における取引開始キー62および手入力取引選択キー63のどちらかにタッチすることによって、通常取引および手入力取引のどちらかを選択することができる。係員呼出キー64がタッチされると、制御部54は、例えば帳票処理装置1に設けられたブザー(図示せず)を鳴らすことによって、係員を呼び出す。
【0058】
取引開始キー62がタッチされることによって通常取引が選択されると(ステップS1)、制御部54は、利用者の帳票Fを取り込む(ステップS2)。具体的には、まず、取引開始キー62のタッチに応じて、制御部54は、図9に示す開始画面65を表示操作部4に切替表示する。なお、待機画面61と開始画面65との間には、破れやすい帳票Fを挿入しない等の注意を促す注意画面(図示せず)が表示されてもよい。
【0059】
開始画面65には、係員呼出キー64が表示されるとともに、帳票Fの挿入を促す旨の案内文65Aと、今回の取引をキャンセルするためにタッチされる取消キー66とが表示される。開始画面65には、帳票処理装置1において帳票Fを差し込む位置を示すイラストが表示されてもよい。案内文65Aを見た利用者が、表面FAが上向きになった帳票Fを、控えF2が先頭となるように取込排出口8に挿入する。この帳票Fにおいて控えF2側の先端部が一対の取込排出ローラ41の間に挟まると、制御部54は、取込排出ローラ41および搬送ローラ40を正回転させることにより、帳票Fを取込排出口8から装置本体2内の第1搬送路21Aに取り込む(ステップS2)。これにより、帳票Fは、前後方向に長手かつ水平な姿勢を維持しながら、控えF2を先頭として第1搬送路21A内において後側へ搬送され、読取部29を通過する。
【0060】
帳票Fが読取部29を通過する際に、制御部54は、帳票Fの表面FAの画像データを読取部29によって読み取る(ステップS3)。ステップS3では、制御部54は、OCR処理として、帳票Fから読み取った表面FAの画像データを記憶部57の辞書情報57Aに照合することによって、その画像データに対応する帳票Fの種別を特定する。制御部54が種別を特定できた帳票Fは、帳票処理装置1において受付可能な帳票Fである。さらに、制御部54は、OCR処理として、当該画像データに含まれる文字や数字を識別することによって、当該画像データの中から支払額情報J1等を取得する。
【0061】
制御部54が種別を特定できなかった帳票Fは、帳票処理装置1において受付不可能な対象外の帳票Fである。制御部54は、帳票Fの種別を特定できなかった場合には(ステップS4でNO)、搬送ローラ40および取込排出ローラ41を逆転させることによって、この帳票Fを取込排出口8から返却する(ステップS5)。なお、取込排出口8は、帳票Fを取り込むため取込口と、帳票Fを排出するため排出口とに分かれていてもよい。
【0062】
制御部54は、帳票Fの種別を特定できた場合には(ステップS4でYES)、この受付可能な帳票Fを搬送路21内にて一時保留した状態において、図10に示す確認画面67を表示操作部4に切替表示する(ステップS6)。確認画面67には、係員呼出キー64および取消キー66が表示されるとともに、支払内容の確認を促す旨の案内文67Aと支払額表示欄67Bと、納付書表示キー68と、確認キー69とが表示される。制御部54は、ステップS3において帳票Fから読み取った支払額情報J1における支払額を、支払額表示欄67Bに表示する。利用者によって納付書表示キー68がタッチされると、制御部54は、ステップS3において読み取った帳票Fの表面FAの画像データそのものを表示操作部4に表示させる。
【0063】
支払額を確認した利用者が確認キー69にタッチすると、制御部54は、図11に示す入力画面70を表示操作部4に切替表示して、利用者を特定するための個人情報の入力を受け付ける(ステップS7)。入力画面70には、係員呼出キー64および取消キー66が表示されるとともに、個人情報の入力を促す旨の案内文70Aと、個人情報表示欄70Bと、入力キー71と、削除キー72と、続行キー73とが表示される。この実施形態における個人情報は、一例として利用者の電話番号であり、これに応じて、入力キー71はテンキーである。利用者は、入力キー71を操作することによって自身の電話番号を入力する。制御部54は、利用者が入力した電話番号を個人情報表示欄70Bに表示させる。利用者は、間違った電話番号を入力した場合には、削除キー72にタッチして入力内容を削除し、電話番号を入力し直すことができる。なお、入力画面70では、利用者の氏名等といった他の個人情報が入力できてもよい。
【0064】
電話番号を入力した利用者が続行キー73にタッチすると、制御部54は、前述した現金決済または口座決済等による決済を行う(ステップS8)。例えば現金決済の際には、制御部54は、図12に示す支払画面74を表示操作部4に切替表示する。支払画面74には、係員呼出キー64および取消キー66が表示されるとともに、入金を促す旨の案内文74Aと、支払額表示欄74Bと、入金額表示欄74Cと、釣銭額表示欄74Dと、完了キー75とが表示される。支払画面74には、帳票処理装置1において現金を投入する位置を示すイラストが表示されてもよい。
【0065】
制御部54は、ステップS3において帳票Fから読み取った支払額情報J1における支払額を、支払額表示欄74Bに表示する。制御部54は、利用者によって紙幣投入口10や硬貨投入口14に投入された現金の総額を、入金額として入金額表示欄74Cに表示する。入金額が支払額よりも多い場合には、制御部54は、その差額を釣銭額として釣銭額表示欄74Dに表示する。入金額が支払額以上になった状態において利用者が完了キー75にタッチすると、決済が完了する。このように、ステップS8では、制御部54は、第1支払取引の一例である通常取引の決済として、ステップS3にて帳票Fから取得した支払額情報J1に基づく支払いを受け付ける。
【0066】
決済完了後に、制御部54は、今まで搬送路21内にて一時保留していた帳票Fの押印および分離を行う(ステップS9)。具体的には、制御部54は、搬送ローラ40を逆転させることによって帳票Fを取込排出口8へ向けて搬送し、その際、アライメント部31によって帳票Fの姿勢を矯正する。そして、制御部54は、第1搬送路21A内での搬送方向における帳票Fの位置を搬送部25によって調整してから、記入部33を下降させて記入部33の押印部33Aを帳票Fの表面FAに接触させ、表面FAの該当箇所に領収印Aを記入する。その後、制御部54は、押印後の帳票Fのミシン目Mが分離部28の切断部材42の真下に到達するまで帳票Fを搬送部25によって搬送する。そして、制御部54は、待機位置の切断部材42を少なくともミシン目Mまで下降させて帳票Fを分離する。
【0067】
控えF2が先頭となるように取り込まれた帳票Fでは、分離後において、領収書F1が控えF2よりも取込排出口8に近くに位置して一対の第1ローラ44によって挟まれていて、控えF2が一対の第2ローラ45によって挟まれている。この状態において、制御部54は、第1ローラ44と、第1ローラ44よりも上流側の搬送ローラ40および取込排出ローラ41とを逆回転させる。これにより、領収書F1は、第1搬送路21A内を前進して取込排出口8から装置本体2の外に排出されて、利用者に返却される(ステップS10)。
【0068】
領収書F1を返却する際、制御部54は、図13に示す返却画面76を表示操作部4に切替表示する。返却画面76には、係員呼出キー64が表示されるとともに、領収書F1の受け取りを促す旨の案内文76Aと、領収書F1等の返却物の取り忘れを注意する旨の注意文77とが表示される。返却画面76には、帳票処理装置1において領収書F1が返却される位置を示すイラストが表示されてもよい。また、釣銭がある場合には、領収書F1の返却後に釣銭が返却される旨の案内文が、返却画面76に表示されてもよい。
【0069】
また、領収書F1の返却と同じタイミングにおいて、制御部54は、第2ローラ45と、第2ローラ45よりも下流側の搬送ローラ40とを正回転させる。これにより、控えF2は、第1搬送路21A内を後進し、第2搬送路21Bおよび第3搬送路21Cを順に通過して、装置本体2内の回収部26に回収される。
【0070】
釣銭がある場合には、制御部54は、シャッター12およびシャッター15において該当するシャッターを開いて、釣銭を返却する(ステップS11)。その際、制御部54は、図14に示す釣銭画面78を表示操作部4に切替表示する。釣銭画面78には、係員呼出キー64および注意文77が表示されるとともに、釣銭の受け取りを促す旨の案内文78Aと、釣銭額表示欄78Bとが表示される。制御部54は、釣銭額を釣銭額表示欄78Bに表示する。釣銭画面78には、帳票処理装置1において釣銭が返却される位置を示すイラストが表示されてもよい。
【0071】
そして、制御部54は、今回の支払取引に関する情報を、取引情報としてサーバー101に送信する(ステップS12)。取引情報は、取引番号と、今回の支払取引の種別(取引種別情報。通常取引または手入力取引)と、取引日時(例えば決済が完了した日時)と、利用者の個人情報(この実施形態では電話番号)と、取引状態フラグ(取引状態情報)とを少なくとも含む(後述する図21を参照)。取引番号は、帳票F毎に異なる識別番号であって、納付書連番とも呼ばれ、制御部54によって割り当てられる。取引状態フラグは、決済後に押印済みの領収書F1が利用者に返却されることによって支払取引が完全に完了したか、押印済みの領収書F1が利用者に返却されないことによって支払取引が未完了であるかについての情報を含む。通常取引の場合には、ステップS12の段階では支払取引が完全に完了しているので、取引状態フラグは「完了」である。なお、帳票処理装置1では、複数枚の帳票Fを取り込んで一時保留することができることによって、1回の通常取引において複数枚の帳票Fを処理できてもよい。
【0072】
一方、利用者が持参した帳票Fが手入力取引の対象である場合の処理の内容を、図15のフローチャートを主に参照して説明する。この場合、接客係は、利用客を帳票処理装置1まで誘導し、待機画面61(図8参照)の手入力取引選択キー63にタッチするよう促す。手入力取引選択キー63がタッチされることによって手入力取引が選択されると(ステップS1)、制御部54は、図16に示す入力画面79を表示操作部4に切替表示する。入力画面79には、係員呼出キー64、取消キー66および続行キー73が表示されるとともに、支払期限の入力を促す旨の案内文79Aと、支払期限表示欄79Bと、入力キー80とが表示される。入力キー80は、例えばテンキーである。利用者は、入力キー80を操作することによって、帳票Fに記載された支払期限の情報J2(図1参照)を入力する。制御部54は、この情報J2の入力を受け付けて、支払期限を支払期限表示欄79Bに表示する。
【0073】
支払期限を入力した利用者が続行キー73にタッチすることによって支払期限の入力を確定させると(ステップS21にてYES)、制御部54は、支払期限と本日の日付とを照合することによって、今回の手入力取引の対象である帳票Fが期限切れか否かを確認する(ステップS22)。支払期限が本日の日付よりも前の場合、つまり、期限切れの場合には、前述したように、延滞金の計算等のために窓口の係員による処理が必要である。そこで、支払期限が切れている場合には(ステップS22にてYES)、制御部54は、図17に示す案内画面81を表示操作部4に切替表示する(ステップS23)。案内画面81には、係員呼出キー64が表示されるとともに、帳票処理装置1において今回の手入力取引を受け付けることができない旨の案内文81Aと、帳票Fを持って窓口に向かうことを利用者に促す旨の案内文81Bとが表示される。このように、支払期限が切れている場合には、制御部54は、手入力取引を中止する。そのため、今回の手入力取引は、窓口の係員によって引き継がれて正確に実行される。なお、通常取引の場合には、制御部54は、辞書情報57Aに基づいて延滞金等の加算額を計算し、帳票処理装置1内において当初の支払額とともに加算額の支払いも受け付けることができる。
【0074】
期限切れでない場合(ステップS22にてNO)、制御部54は、図18に示す支払画面82を表示操作部4に切替表示して、支払画面82において、利用者による支払額の入力、つまり帳票Fに記載された支払額情報J1の入力を受け付ける(ステップS24)。なお、帳票Fには、支払額情報J1を示す二次元コードが記載されていてもよく、その場合には、利用者が、帳票処理装置1に設けられた二次元コードリーダー等の読取部(図示せず)に当該二次元コードにかざすことによって、制御部54は、支払額情報J1の入力を受け付けてもよい。支払画面82には、係員呼出キー64、取消キー66および完了キー75が表示されるとともに、支払額の入力を促す旨の案内文82Aと、個別金額表示欄82Bと、合計金額表示欄82Cと、テンキー83とが表示される。
【0075】
利用者がテンキー83を操作して1件分つまり1枚の帳票Fの支払額を入力して確定キー83Aにタッチすると、制御部54は、1件分の個別金額表示欄82Bを表示し、この個別金額表示欄82Bに支払額を表示する。2枚目以降の帳票Fがあれば、利用者がテンキー83を操作して支払額を入力して確定キー83Aにタッチする度に、2枚目以降の帳票Fに対応する個別金額表示欄82Bおよび支払額が上から順に表示される。この実施形態では、1回の手入力取引において最大9枚分の個別金額表示欄82Bが表示可能であり、その旨が案内文として支払画面82に表示されてもよい。また、支払額の入力前の段階において、9枚分の個別金額表示欄82Bが表示されていてもよい。各個別金額表示欄82Bには削除キー84が表示されるので、利用者は、取り消したい個別金額表示欄82Bの削除キー84にタッチすることによって、この個別金額表示欄82Bまたはこの個別金額表示欄82B内の支払額を支払画面82から削除することができる。合計金額表示欄82Cには、支払画面82に表示された全ての個別金額表示欄82Bの支払額の合計が表示される。
【0076】
必要分の帳票Fの支払額を入力し終えた利用者が完了キー75にタッチすると、制御部54は、帳票F毎に取引番号を割り当て、対応する支払額に紐付ける。また、制御部54は、ステップS7と同様に入力画面70(図11参照)を表示して、利用者による個人情報の入力を受け付け(ステップS25)、対応する取引番号に紐付ける。個人情報の入力を受け付けた制御部54は、ステップS8と同様に支払画面74(図12参照)を表示して、決済を行う(ステップS26)。ステップS26では、制御部54は、第2支払取引の一例である手入力取引の決済として、ステップS24にて受け付けた支払額情報J1に基づく支払いを受け付ける。
【0077】
釣銭がある場合には、制御部54は、ステップS11と同様にシャッター12やシャッター15を開いて、釣銭を返却する(ステップS27)。そして、制御部54は、今回の手入力取引の決済の完了に応じて、当該手入力取引の内容を出力する(ステップS28)。具体的には、制御部54は、図19に示すレシート85をレシート印刷部51によって印刷してレシート取出口5から発行する。レシート85には、タイトル85Aと、レシート85を窓口へ持って行く旨を利用者に促す案内文85Bと、今回の手入力取引の取引内容85Cとが記載されている。取引内容85Cとして、取引番号と、取引番号に対応する個人情報(ここでは電話番号)と、決済された支払額とが取引番号毎に羅列されていて、支払額の合計金額も記載されている。なお、制御部54は、窓口において取引を受け付ける順番である受付番号を自動採番してレシート85に記載してもよいし、受付番号が記載された番号札をレシート85に続いて発行してもよい。もちろん、番号札は、利用者もしくは接客係の操作、またはレシート85の発行に応じて、帳票処理装置1とは別の発券機(図示せず)から発行されてもよい。なお、レシート85は、記録媒体の一例であり、記録媒体として、レシート85の代わりに、例えば磁気カードを用いてもよい。
【0078】
制御部54は、レシート85の発行に応じて、図20に示す発行画面86を表示操作部4に切替表示する。発行画面86には、係員呼出キー64および注意文77が表示されるとともに、釣銭およびレシート85を受け取って窓口に向かうことを利用者に促す旨の案内文86Aと、釣銭額表示欄86Bとが表示される。発行画面86には、帳票処理装置1においてレシート85および釣銭が返却される位置を示すイラストが表示されてもよい。制御部54は、釣銭額を釣銭額表示欄86Bに表示する。なお、釣銭がない場合には、案内文86Aにおいて釣銭の受け取りに関する文言が省略されて、釣銭額表示欄86Bが非表示になる。
【0079】
さらに、制御部54は、ステップS28の処理の一環として、今回の手入力取引の内容、つまり取引番号毎の取引情報を、I/F部56によってサーバー101に外部送信する。取引情報は、前述したように、取引番号と、今回の支払取引の種別(ここでは手入力取引)と、取引日時(決済が完了した日時)と、利用者の個人情報と、取引状態フラグとを含む。手入力取引の場合には、利用者の帳票Fは押印済みでないので、ステップS28の時点における取引状態フラグは「未完了」である。
【0080】
サーバー101は、図21に示すテーブル87を記憶している。テーブル87では、帳票処理装置1から送信された通常取引および手入力取引のそれぞれにおける取引情報が、取引番号順にまとめられている。これにより、個々の支払取引について、支払取引全体の完了および未完了を把握できる。
【0081】
手入力取引の場合において帳票処理装置1での決済を済ませた利用者がレシート85および帳票Fを窓口に持参して窓口の係員に手渡すと、係員は、受け取った帳票Fに記載された支払額と、レシート85に記載された取引番号毎の支払額とを見比べる。帳票Fに記載された支払額とレシート85に記載された支払額とが一致すれば、係員は、この帳票Fについての決済が完了したものと判断して、この帳票Fにおける各押印欄R内に領収印Aを記入して、この帳票Fを分離し、分離後の領収書F1を利用者に手渡す。
【0082】
係員が複数の帳票Fを受け取った場合において、全ての帳票Fの支払額と、レシート85におけるいずれかの取引番号の支払額との照合が無事済んで、押印および分離(領収書F1の返却)が済むと、今回の手入力取引が完了したことになる。これに応じて、係員は、端末102を操作して、今回の手入力取引における全ての取引番号に紐付けられた取引状態フラグを「未完了」から「完了」に更新するようにサーバー101に指示を送信する。サーバー101の制御部(図示せず)は、この指示の受信に応じて、テーブル87において該当する取引番号に紐付けられた取引状態フラグを「未完了」から「完了」に更新する(図21における取引番号が1~9である取引状態フラグを参照)。
【0083】
なお、端末102の画面(図示せず)にテーブル87が表示されてもよい。この場合、窓口の係員は、利用者からレシート85を受け取って確認しなくても、利用者から聞き出した個人情報によって本人認証を行い、テーブル87内において当該個人情報に紐付けられた取引情報を特定することができる。この場合の取引情報には支払額の情報が含まれてもよく、これにより、係員は、取引情報における支払額の情報と帳票Fの支払額情報J1とを照合し、帳票Fの押印および分離の処理に進むことができる。なお、個人情報として、利用者の顔や指紋等の生体情報を用いてもよく、その場合には、帳票処理装置1や端末102にはカメラ等の生体情報取得手段が設けられ、窓口では生体情報による本人認証(いわゆる生体認証)が行われる。
【0084】
テーブル87に記憶された取引情報は、当日分の取引情報であり、その日の営業時間の終了等の締めのタイミングにおいて、消込処理として、テーブル87から削除されて、サーバー101における別の記憶領域に履歴して記憶される。このタイミングにおいて、取引状態フラグが「未完了」のままになっている取引番号に対応する帳票Fは、窓口にて押印および分離がされることなく、利用者によって持ち帰られてしまったものと思われる。
【0085】
そこで、締めのタイミングにおいて、取引状態フラグが「未完了」のままになっている取引番号がテーブル87に存在する場合には、その旨がサーバー101や端末102にて係員に対して報知される。報知の一例として、サーバー101や端末102の画面(図示せず)に、未完了の手入力取引が存在することが強調表示されてもよいし、ブザー等によって警報が発せられてもよい。これにより、係員は、取引状態フラグが「未完了」のままになっている取引番号に紐付けられた電話番号に基づいて利用者に連絡し、帳票Fの押印および分離のために窓口に訪れるよう促すことができる。これにより、支払取引全体を完了させることができる。なお、締めのタイミングに限らず、「未完了」の個々の取引番号について、テーブル87に記憶されてから所定時間が経過したそれぞれのタイミングに報知が行われてもよい。つまり、未完了のままになっている支払取引の情報が、所定のタイミングにサーバー101や端末102から報知されればよい。
【0086】
以上のように、帳票処理装置1での取り扱い対象である帳票Fの場合、帳票処理装置1では、通常取引の一環として、この帳票Fから取得した支払額情報J1に基づいて決済でき、その後の押印および分離も済ませて通常処理の全体を完了させることができる。一方、帳票処理装置1での取り扱い対象でない帳票Fの場合、帳票処理装置1では、利用者が帳票Fに記載された支払額情報J1を入力すれば、手入力取引の一環として、支払額情報J1に基づく決済ができる。これにより、決済後の帳票Fが持ち込まれた窓口の係員は、この帳票Fについて決済に係る手作業をせずに済むし、帳票処理装置1から出力された当該第2支払取引の内容に基づいて手入力取引を完了させることができる。これにより、取り扱い対象外の帳票Fであっても、その支払取引における大半を帳票処理装置1においてワンストップ処理することができる。そのため、窓口では、決済に伴う現金の取り扱いが不要となることにより、業務の負担軽減を図れる。さらに、対象および対象外の全ての帳票Fについて帳票処理装置1において決済手続きが一元化されることにより、これらの決済内容をまとめて集計できるので、例えば締め作業の時間短縮も図れる。なお、帳票処理装置1での取り扱い対象である帳票Fについては、通常取引だけでなく、手入力取引でも決済できる。
【0087】
前述した実施形態では、接客係の誘導を受けた利用者が、待機画面61(図8参照)を操作することによって、通常取引か手入力取引かを選択する。以下では、接客係が存在しない場合を想定した帳票処理装置1での処理の変形例について、図22のフローチャートを参照しながら説明する。図22では、図7の処理ステップと同じ処理ステップには、図7と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。
【0088】
接客係が存在しない場合には、利用者は、取り敢えず帳票Fを帳票処理装置1の取込排出口8に挿入する。これに応じて、帳票処理装置1の制御部54は、利用者の帳票Fを取り込んで(ステップS2)、この帳票Fの表面FAの画像データを読み取って(ステップS3)、この帳票Fの受付可否を判断する(ステップS4)。受付可能な帳票Fであれば(ステップS4にてYES)、制御部54は、通常取引として、前述したステップS6~S12の処理を実行する。
【0089】
種別を特定できない受付不可能な帳票Fであれば(ステップS4にてNO)、制御部54は、この帳票Fを取込排出口8から返却して(ステップS5)、図23に示す選択画面88を表示操作部4に切替表示する(ステップS31)。選択画面88には、係員呼出キー64、取消キー66および続行キー(第2支払取引開始操作表示)73が表示されるとともに、今回の帳票Fについて決済はできるものの押印や領収書F1の返却ができない旨の案内文88Aと、手入力取引として支払取引を続行する場合には続行キー73にタッチすべき旨の案内文88Bとが表示される。つまり、制御部54は、帳票Fの種別を特定できない場合には、表示操作部4の選択画面88によって手入力取引を利用者に案内する。
【0090】
選択画面88を見た利用者が続行キー73にタッチすることによって、手入力取引での続行を選択すると(ステップS32においてYES)、制御部54は、手入力取引として、前述したステップS21~S28(図15参照)の処理を実行する。これにより、手入力取引の決済を帳票処理装置1で実行できる。なお、受付不可能な帳票Fの場合(ステップS4にてNO)、制御部54は、利用者による選択画面88での選択(ステップS31およびS32)を省略して、ステップS21以降の手入力取引を速やかに開始してもよい。一方、選択画面88を見た利用者が取消キー66にタッチすると(ステップS32においてNO)、制御部54は、今回の取引がキャンセルされたものと判断して、待機状態に戻る。
【0091】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0092】
例えば、帳票処理装置1は、金融機関でなく、コンビニエンスストア等の店舗に設置されてもよい。その場合には、店舗の店員が、前述した窓口の係員の役割を担う。
【0093】
支払期限を考慮しなくてもよい場合には、支払期限に関するステップS21~ステップS23の処理が省略されてもよい。
【0094】
前述した実施形態では、種別を特定できなかった帳票Fを、帳票処理装置1にて受付不可能な帳票Fとしているが、種別を特定できても帳票処理装置1での通常処理の対象外と指定されている帳票Fも、帳票処理装置1にて受付不可能な帳票Fとして手入力取引の対象としてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 帳票処理装置
2 装置本体
4 表示操作部
8 取込排出口
29 読取部
51 レシート印刷部
52 カード処理部
53 現金処理部
54 制御部
56 I/F部
85 レシート
100 帳票処理システム
101 サーバー
102 端末
F 帳票
J1 支払額情報
J2 支払期限の情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図23