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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/58 20100101AFI20230518BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20230518BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20230518BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20230518BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20230518BHJP
   F21V 7/28 20180101ALI20230518BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/60
B01J19/12 C
F21V3/10 330
F21V7/00 300
F21V7/28
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019148245
(22)【出願日】2019-08-10
(65)【公開番号】P2021028965
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】紫藤 和孝
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120751(JP,A)
【文献】特開2006-269398(JP,A)
【文献】特開2018-174183(JP,A)
【文献】特開2018-069214(JP,A)
【文献】特開2014-036128(JP,A)
【文献】特開2011-124492(JP,A)
【文献】特開2009-205969(JP,A)
【文献】特開2004-074455(JP,A)
【文献】特開2015-222341(JP,A)
【文献】特開2017-191760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347849(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102460746(CN,A)
【文献】実開平03-032942(JP,U)
【文献】特開2008-016394(JP,A)
【文献】特開平06-036610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 1/00-15/04
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に配置された複数の発光素子と、を有する光源ユニットと、
前記複数の発光素子の光軸に対して略垂直に配置されるカバーガラスと、
前記複数の発光素子の光が通過する光通過領域を画定するように、前記複数の発光素子と前記カバーガラスとの間に配置される一対の仕切板と、
前記光源ユニット、前記カバーガラス及び前記仕切板を収容するケースと、
を備え、
前記一対の仕切板は、前記カバーガラスに向かって広がるように、前記複数の発光素子の光軸に対して所定の角度で傾斜し、
前記一対の仕切板の互いに対向する面の前記複数の発光素子側に、前記複数の発光素子からの光を導光するミラー面を有し、前記カバーガラス側に、前記光通過領域内で発生する迷光を吸収する光吸収部を有し、
前記複数の発光素子から前記カバーガラスまでの距離をL1、前記複数の発光素子の光軸から前記カバーガラスと前記各仕切板との交点までの距離をL2、前記光吸収部の長さをL3、前記所定の角度をθ、としたときに、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする光照射装置。
【数1】
【請求項2】
基板と、前記基板の表面に配置された複数の発光素子と、を有する光源ユニットと、
前記複数の発光素子の光軸に対して略垂直に配置されるカバーガラスと、
前記複数の発光素子の光を導光するミラー面がそれぞれ形成された一対の仕切板と、
前記光源ユニット、前記カバーガラス及び前記仕切板を収容するケースと、
を備え、
前記一対の仕切板は、前記カバーガラスに向かって広がるように、前記複数の発光素子の光軸に対して所定の角度で傾斜しており、
前記複数の発光素子から前記カバーガラスまでの距離をL1、前記複数の発光素子の光軸から前記カバーガラスと前記各仕切板の延長線との交点までの距離をL2、前記カバーガラスから前記各仕切板の端部までの距離をL3、前記所定の角度をθ、としたときに、以下の条件式(1)を満たし、
【数2】
前記ケースの内面に、前記ケース内で発生する迷光を吸収する光吸収部を有することを特徴とする光照射装置。
【請求項3】
前記複数の発光素子のそれぞれを封止する複数の封止レンズをさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記各封止レンズは、該封止レンズの出射面の中心部において、該封止レンズの光軸方向に突出するように形成された凸部を有することを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記光源ユニットを複数有し、
前記複数の光源ユニットは、それぞれ、発光波長の異なる前記発光素子を有し、
前記光軸方向から見たときに、前記凸部の形状が、前記発光素子の発光波長に応じて異なる
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記複数の発光素子の光が、紫外線波長域の光であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源としてLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備えた光照射装置に関し、特に、発光素子からの光を導光する反射ミラーを備えた光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット枚葉印刷用のインキとして、紫外光の照射により硬化する紫外線硬化型インキが用いられている。また、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等、FPD(Flat Panel Display)のシール剤として、紫外線硬化樹脂が用いられている。このような紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂の硬化には、一般に、紫外光を照射する光照射装置が用いられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の光照射装置は、複数の発光素子を有する発光素子モジュールと、複数の発光素子モジュールを包囲するように配置された反射筒部(反射ミラー)と、を備え、各発光素子から出射された紫外光を反射筒部によってミキシングして、前面パネル(カバーガラス)から出射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-215661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成によれば、各発光素子から出射された紫外光が反射筒部(反射ミラー)によってミキシングされて出射されるため、照射対象物上において、均一な光強度分布が得られる。しかしながら、特許文献1の構成においては、紫外光が前面パネル(カバーガラス)を通って出射するため、紫外光の一部がカバーガラスの表面及び裏面で反射してしまうと、光通過領域内に意図しない迷光(戻り光)が発生するといった問題がある。また、光通過領域内に発生する迷光が意図しない方向に出射されてしまうと、照射対象物上の、本来光照射を意図していない領域に光の像(いわゆるゴースト)が形成されてしまうといった問題も発生する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カバーガラスを有する構成であっても、迷光の発生が低減された光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討した結果、カバーガラスの表面及び裏面での反射によって迷光が発生するが、照射対象物上に意図しない光の像(いわゆるゴースト)を形成するのは、カバーガラスへの入射角が比較的大きい(例えば、6°以上の)光の反射光であり、発光素子からの光を導光するミラーの長さを適切に調節したり、迷光を吸収する光吸収部を適切に配置したりすることにより、かかる迷光の発生を低く抑えることが可能であるとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
つまり、本発明の光照射装置は、基板と、基板の表面に配置された複数の発光素子と、を有する光源ユニットと、複数の発光素子の光軸に対して略垂直に配置されるカバーガラスと、複数の発光素子の光が通過する光通過領域を画定するように、複数の発光素子とカバーガラスとの間に配置される一対の仕切板と、光源ユニット、カバーガラス及び仕切板を収容するケースと、を備え、一対の仕切板は、カバーガラスに向かって広がるように、複数の発光素子の光軸に対して所定の角度で傾斜し、一対の仕切板の互いに対向する面の複数の発光素子側に、複数の発光素子からの光を導光するミラー面を有し、カバーガラス側に、光通過領域内で発生する迷光を吸収する光吸収部を有し、複数の発光素子からカバーガラスまでの距離をL1、複数の発光素子の光軸からカバーガラスと各仕切板との交点までの距離をL2、光吸収部の長さをL3、所定の角度をθ、としたときに、以下の条件式(1)を満たすことを特徴とする。
【数1】
【0009】
このような構成によれば、光通過領域内で発生する迷光が光吸収部によって吸収されるため、ゴーストの発生が抑制され、均一な光強度分布が得られる。
【0011】
また、別の観点からは、本発明の光照射装置は、基板と、基板の表面に配置された複数の発光素子と、を有する光源ユニットと、複数の発光素子の光軸に対して略垂直に配置されるカバーガラスと、複数の発光素子の光を導光するミラー面がそれぞれ形成された一対の仕切板と、光源ユニット、カバーガラス及び仕切板を収容するケースと、を備え、一対の仕切板は、カバーガラスに向かって広がるように、複数の発光素子の光軸に対して所定の角度で傾斜しており、複数の発光素子からカバーガラスまでの距離をL1、複数の発光素子の光軸からカバーガラスと各仕切板の延長線との交点までの距離をL2、カバーガラスから各仕切板の端部までの距離をL3、所定の角度をθ、としたときに、以下の条件式(1)を満たし、
【数2】
ケースの内面に、ケース内で発生する迷光を吸収する光吸収部を有することを特徴とする
【0012】
また、複数の発光素子のそれぞれを封止する複数の封止レンズをさらに備えることができる。また、この場合、各封止レンズは、封止レンズの出射面の中心部において、封止レンズの光軸方向に突出するように形成された凸部を有することができる。また、この場合、光源ユニットを複数有し、複数の光源ユニットは、それぞれ、発光波長の異なる発光素子を有し、光軸方向から見たときに、凸部の形状が、発光素子の発光波長に応じて異なることが望ましい。
【0013】
また、複数の発光素子の光が、紫外線波長域の光であることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、カバーガラスを有する構成でありながらも、迷光の発生が低減された光照射装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施例1に係る光照射装置の構成を示す光線図である。
図3図3は、本発明の実施例1に係る光照射装置から出射される紫外光の様子を説明する図である。
図4図4は、本発明の比較例1に係る光照射装置の構成を示す光線図である。
図5図5は、本発明の比較例1に係る光照射装置から出射される紫外光の様子を説明する図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係る光照射装置の構成を示す図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態に係る光照射装置の構成を示す図である。
図8図8は、図7のQ部の詳細を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置100の構成を示す図であり、図1(a)は正面図であり、図1(b)は、図1(a)のA-A線断面図である。本実施形態の光照射装置100は、例えば、周辺露光装置等に組み込まれて、照射対象物W(図1において不図示)上の矩形状の照射エリアP(図1において不図示)に対し、紫外線波長域の光(以下、「紫外光」という。)を照射する装置である。なお、以下、本明細書においては、光照射装置100から出射される紫外光の長手方向(LED素子114の並び方向)をX軸方向、短手方向(つまり、図1の上下方向)をY軸方向、X軸及びY軸と直交する方向をZ軸方向と定義して説明する。
【0018】
図1に示すように、光照射装置100は、LEDユニット110(光源ユニット)と、仕切板120と、カバーガラス130と、アパーチャ140と、これらの部品を収容又は固定するケース150と、を備えている。
【0019】
本実施形態のLEDユニット110は、X軸に平行な2辺とY軸に平行な2辺を有する矩形状の基板112と、基板112上に、X軸方向に所定のピッチ(例えば、10mm)で並ぶ複数のLED素子114(発光素子)と、各LED素子114を封止するように配置された封止レンズ116と、冷却装置118と、を備えている。
【0020】
各LED素子114には、任意の形状のものを使用することができるが、本実施形態では、2mm(X軸方向長さ)×2mm(Y軸方向長さ)の矩形状の外形を有するものを使用している。各LED素子114は、基板112上に搭載されて、基板112と電気的に接続されている。基板112は、ガラスエポキシ樹脂、セラミックス等から成る電子回路基板であり、不図示のLED駆動回路に接続されており、各LED素子114には、基板112を介してLED駆動回路からの駆動電流が供給されるようになっている。各LED素子114に駆動電流が供給されると、各LED素子114が駆動電流に応じた光量で発光し、所定の光量の紫外光が出射される。なお、本実施形態においては、各LED素子114は、LED駆動回路から駆動電流の供給を受けて、波長395nmの紫外光を出射するように構成されている。
【0021】
封止レンズ116は、各LED素子114を封止すると共に、各LED素子114から出射された紫外光を所定の広がり角の紫外光に成形する半球型又は砲弾型のレンズであり、例えば、紫外光を透過可能なシリコーン系の樹脂によって形成される。
【0022】
冷却装置118は、基板112の裏面に密着するように配置され、各LED素子114で発生した熱を放熱する、いわゆる空冷ヒートシンクである。冷却装置118は、アルミニウムや銅等の熱伝導性の良好な材料からなる複数の放熱フィン(不図示)と、冷却ファン(不図示)等を備え、冷却ファンによって生成される気流によって、複数の放熱フィンが一様に冷却されるようになっている。LEDユニット110に電力が供給され、各LED素子114から紫外光が出射されると、LED素子114の自己発熱により温度が上昇し、発光効率が著しく低下するといった問題が発生するが、本実施形態においては、冷却装置118によって各LED素子114が一様に冷却されるため、かかる問題の発生が抑制される。
【0023】
仕切板120は、各LED素子114からの紫外光を導光すると共に、ケース150内で紫外光が通過する領域(光通過領域)を画定する一対の板状の部材である。本実施形態の一対の仕切板120は、LED素子114の光軸AXを対称軸として線対称となるように、光軸AXをY軸方向から挟み、前方(Z軸の正方向側)に向かって所定の傾斜角度θで広がるように配置されている。また、各仕切板120の内面(対向する面)のLED素子114側にはミラー面121が形成され、各仕切板120の内面(対向する面)のカバーガラス130側には光吸収部123(図1の灰色部)が形成されている。
【0024】
ミラー面121は、各LED素子114からの紫外光をカバーガラス130に向けて導光する部材である。また、光吸収部123は、カバーガラス130の表面又は裏面で反射された戻り光(以下、「迷光」という。)を吸収する部材であり、本実施形態においては、ミラー面121のカバーガラス130側の一部を黒色の無電解ニッケルめっき又はクロムめっきを施すことによって形成される。本実施形態においては、光吸収部123によってケース150内の不要な迷光を吸収することによって、迷光に起因するゴースト(意図しない出射光)の発生を抑制している。より具体的には、LED素子114からカバーガラス130までの距離をL1、光軸AXから仕切板120の端部まで(つまり、カバーガラス130と仕切板120との交点まで)の距離をL2、X軸方向から見たときの光吸収部123の長さをL3、光軸AXに対するミラー面121の傾斜角度(つまり、仕切板120の傾斜角度)をθ、としたときに、以下の条件式(1)を満たすように構成し、ミラー面121に対して、ミラー面121の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光が入射しないようになっている。つまり、ミラー面121の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光は、光吸収部123で吸収されるようになっている。
【数3】
【0025】
カバーガラス130は、ケース150の先端側(Z軸方向側)に配置され、出射窓として機能する、ガラス製の板状部材である。
【0026】
アパーチャ140は、光軸AXをY軸方向から挟むように、カバーガラス130の外側(Z軸方向側)に配置され、カバーガラス130から出射される紫外光を規制する、一対の金属の板状部材である。アパーチャ140のY軸方向の間隔を調整することにより、Y軸方向の照射範囲を調整することができるようになっている。
【0027】
以下、本実施形態の光照射装置100の具体的な構成について、実施例(実施例1)及び比較例(比較例1)を挙げてさらに詳述する。
【実施例1】
【0028】
実施例1の光照射装置100は図1に示した構成であり、上記の条件式(1)を満たすものである。図2は、本実施例の具体的な構成を示す光線図であり、図2(a)は、カバーガラス130に対して入射角:2°で入射する光線、図2(b)は、カバーガラス130に対して入射角:5.25°で入射する光線、図2(c)は、カバーガラス130に対して入射角:8°で入射する光線を示している。なお、本実施例においては、LED素子114からカバーガラス130までの距離をL1:106mm、光軸AXから仕切板120の端部までの距離をL2:36.377mm、X軸方向から見たときの光吸収部123の長さをL3:67mm、光軸AXに対するミラー面121の傾斜角度(つまり、仕切板120の傾斜角度)をθ:18°としている。なお、図2においては、説明の便宜のため、冷却装置118、ケース150等を省略し、ミラー面121は実線で示し、光吸収部123は破線で示している。
【0029】
図2(a)に示すように、カバーガラス130に対して入射角:2°で入射する光線の場合、その殆どがカバーガラス130を透過して、照射対象物W上の矩形状の照射エリアPに入射する。また、仮にカバーガラス130に対して入射角:2°で入射する光線の一部がカバーガラス130の表面で反射されて、迷光が発生したとしても、かかる迷光は光強度が十分に小さい上に、ミラー面121によって反射されて再びカバーガラス130に対して入射角:2°で入射して、照射対象物W上の矩形状の照射エリアPに入射するため、いわゆるゴーストとなるものではない。
【0030】
図2(b)に示すように、カバーガラス130に対して入射角:5.25°で入射する光線の場合、その殆どがカバーガラス130を透過して、照射対象物W上の矩形状の照射エリアPに入射する。また、仮にカバーガラス130に対して入射角:5.25°で入射する光線の一部がカバーガラス130の表面で反射されて、迷光が発生したとしても、かかる迷光は光強度が十分に小さい上に、ミラー面121によって反射されて、光吸収部123に入射するため、光吸収部123で吸収される。従って、かかる迷光は、いわゆるゴーストとなるものではない。
【0031】
図2(c)に示すように、カバーガラス130に対して入射角:8°で入射する光線の場合、その一部がカバーガラス130を透過して、照射対象物W上の矩形状の照射エリアPに入射するが、他の一部がカバーガラス130の表面で反射されて、迷光が発生する。しかし、かかる迷光は光吸収部123に入射して、吸収されてしまうため、いわゆるゴーストとなるものではない。
【0032】
このように、本実施例においては、上記の条件式(1)を満たし、強度的に無視できない、ミラー面121の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光を、光吸収部123で吸収するように構成し、これによってゴーストの発生を抑制している。図3は、本実施例の光照射装置100から出射される紫外光の様子を説明する図であり、光照射装置100のカバーガラス130に対して略垂直となるように、Y-Z平面に平行なスクリーンを配置して、光照射装置100から出射される紫外光を投影したものである。図3に示すように、光照射装置100のカバーガラス130から出射される紫外光は、Z軸方向(図3の上方向)に離れるに従って広がり、スクリーン上には略台形状の紫外光の像が略均一な明るさで観測される。
【比較例1】
【0033】
図4は、比較例の光照射装置100Zの構成を示す光線図である。図4に示すように、本比較例の光照射装置100Zは、光吸収部123を備えず、各仕切板120の内面(対向する面)全体にミラー面121が形成されている点で、実施例1の光照射装置100と異なる。なお、図4は、図2(c)と同様、カバーガラス130に対して入射角:8°で入射する光線を示している。また、実施例1と同様、本変形例においても、LED素子114からカバーガラス130までの距離をL1:106mm、光軸AXに対するミラー面121の傾斜角度(つまり、仕切板120の傾斜角度)をθ:18°としている。
【0034】
図4に示すように、カバーガラス130に対して入射角:8°で入射する光線の場合、その一部がカバーガラス130を透過して、照射対象物W上の矩形状の照射エリアPに入射するが、他の一部がカバーガラス130の表面で反射されて、迷光が発生する。そして、かかる迷光はミラー面121によって反射されて再びカバーガラス130に対して入射角:28°で入射し、照射対象物W上の照射エリアPの外側を照射する。つまり、照射対象物W上にはゴースト(意図しない出射光)が発生する。図5は、本比較例の光照射装置100Zから出射される紫外光の様子を説明する図であり、光照射装置100Zのカバーガラス130に対して略垂直となるように、Y-Z平面に平行なスクリーンを配置して、光照射装置100Zから出射される紫外光を投影したものである。図5に示すように、光照射装置100Zのカバーガラス130から出射される紫外光は、Z軸方向(図5の上方向)に離れるに従って広がり、スクリーンの略中央部には、略台形状の紫外光の像が略均一な明るさで観測されるものの、該紫外光の像の左右に三角形状のゴーストが観測される。そして、図5図3を比較すると明らかなように、実施例1の光照射装置100においてはゴーストが殆ど発生していないことがわかる。
【0035】
このように、本実施形態においては、上記の条件式(1)を満たし、強度的に無視できない、ミラー面121の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光を、光吸収部123で吸収するように構成し、これによってゴーストの発生を抑制している。従って、照射エリアPにおいては意図したとおりの(つまり、設計値通りの)光量分布が得られる。
【0036】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0037】
例えば、本実施形態の光照射装置100は、紫外光を出射する装置であるものとして説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、本発明は、白色光等、一般的な照明装置に適用することも可能である。
【0038】
また、本実施形態においては、上記の条件式(1)を満たし、ミラー面121の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光を、光吸収部123で吸収するように構成したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。各仕切板120の内面のカバーガラス130側に光吸収部123を形成すると迷光が減少するため、光照射装置100の用途によっては必ずしも条件式(1)を満たす必要はない。
【0039】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係る光照射装置200の構成を示す断面図である。本実施形態の光照射装置200は、仕切板220の長さが短く、各仕切板120の内面(対向する面)にミラー面221のみが形成され、ケース150の内壁面に光吸収材223が貼付されている点で、第1の実施形態の光照射装置100と異なる。そして、本実施形態においては、LED素子114からカバーガラス130までの距離をL1、光軸AXからカバーガラス130と仕切板120の延長線との交点までの距離をL2、X軸方向から見たときのカバーガラス130から仕切板120の端部までの距離をL3、光軸AXに対するミラー面121の傾斜角度(つまり、仕切板120の傾斜角度)をθ、として、上記の条件式(1)を満たすように構成されている。
【0040】
つまり、本実施形態の構成によれば、強度的に無視できない、ミラー面221の傾斜角度θの1.3倍以上の迷光は、ミラー面221に当たらずに、光吸収材223に到達し、光吸収材223で吸収される。従って、第1の実施形態の光照射装置100と同様、ゴーストの発生が抑制される。
【0041】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る光照射装置300の構成を示す図であり、図7(a)は正面図であり、図7(b)は、図7(a)のA-A線断面図である。また、図8は、図7のQ部の詳細を説明する拡大図であり、図8(a)は、拡大平面図であり、図8(b)は、図8(a)のB-B断面図である。図7及び図8に示すように、本実施形態の光照射装置300は、3つのLEDユニット110、110A、110Bを備える点で第1の実施形態の光照射装置100と異なっている。
【0042】
3つのLEDユニット110、110A、110Bは、それぞれ、異なる発光波長のLED素子114、114A、114Bを有しており、本実施形態においては、LED素子114からは波長365nmの紫外光が出射され、LED素子114Aからは波長385nmの紫外光が出射され、LED素子114Bからは波長405nmの紫外光が出射されるようになっている。
【0043】
また、図8に示すように、本実施形態においては、各LED素子114、114A、114Bを封止すると共に、各LED素子114、114A、114Bから出射される紫外光に指向性を付与する封止レンズ116、116A、116Bを備えている。本実施形態の封止レンズ116、116A、116Bは、それぞれ、光軸116x、116Ax、116Bxと垂直な方向の断面が略円形の半球状の形状を呈しており、各LED素子114、114A、114Bから出射された紫外光が、封止レンズ116、116A、116Bを通過する構成となっている。また、各封止レンズ116、116A、116Bの出射面の略中心部(つまり、頂点部)には、Z軸方向(光軸方向)に突出する、凸部116a、116Aa、116Baが形成されている。凸部116a、116Aa、116Baは、それぞれ各114、114A、114Bを識別するための識別マークとして機能する部位であり、図8(a)において破線で示すように、本実施形態においては、凸部116aは四角柱状に突出し、凸部116Aaは三角柱状に突出し、また凸部116Baは円柱状に突出している。
【0044】
このように、本実施形態においては、封止レンズ116、116A、116Bが、識別マークとして機能する凸部116a、116Aa、116Baを有しているため、封止レンズ116、116A、116Bが取り付けられた後であっても、凸部116a、116Aa、116Baの形状から、その直下に位置するLEDの種類(つまり、波長)を特定することができる。また、本実施形態の光照射装置300は、Y軸方向において、波長の異なる3種類のLED素子114、114A、114Bを有するため、Y軸方向において非対称となり、方向性を有するものとなるが、凸部116a、116Aa、116Baの形状の違いから、光照射装置300の方向性を認識することができる。従って、光照射装置300の取り付け工程において、光照射装置300の取り付け姿勢(つまり、向き)を間違えることもない。
【0045】
なお、図7(b)に示すように、本実施形態においても第1の実施形態と同様、一対の仕切板120が、LEDユニット110、110A、110Bの光路をY軸方向から挟み、前方(Z軸の正方向側)に向かって所定の傾斜角度θで広がるように配置されている。また、各仕切板120の内面(対向する面)にはミラー面121が形成され、各仕切板120の内面(対向する面)のカバーガラス130側には光吸収部123(図7の灰色部)が形成されている。また、図7(b)に示すように、本実施形態においては、Y軸方向において最も外側に位置するLED素子114(又は114B)からカバーガラス130までの距離をL1、LED素子114(又は114B)の光軸AXから仕切板120の端部まで(つまり、カバーガラス130と仕切板120との交点まで)の距離をL2として、上記条件式(1)を満たすように構成されている。
【0046】
なお、本実施形態においては、発光波長の異なる3つのLEDユニット110、110A、110Bを備える構成を説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、LEDユニット110の数及び発光波長は、光照射装置300の仕様に応じて適宜設定される。
【0047】
また、本実施形態の3つのLEDユニット110、110A、110Bは、それぞれ、発光波長の異なるLED素子114、114A、114Bを有しているとしたが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、全てのLEDユニット110、110A、110Bに同一のLED素子を搭載する(つまり、1種類の発光波長で構成する)こともできる。
【0048】
また、本実施形態の複数のLED素子114、114A、114Bは、X軸方向に沿って等間隔に整列配置され、全体として正方格子状に配置されるものとしたが、このような構成に限定されるものではなく、全体として千鳥状に配置されてもよく、またランダムに配置されてもよい。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
100、200、300 :光照射装置
100Z :光照射装置
110、110A、110B :LEDユニット
112 :基板
114、114A、114B :LED素子
116、116A、116B :封止レンズ
116a、116Aa、116Ba :凸部
116x、116Ax、116Bx :光軸
118 :冷却装置
120、220 :仕切板
121、221 :ミラー面
123、223 :光吸収部
130 :カバーガラス
140 :アパーチャ
150 :ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8