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特許7281391Vベルトの角度測定方法、及び、角度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】Vベルトの角度測定方法、及び、角度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G01B11/26 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019220619
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2020139941
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019032864
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】金山 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】原 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 利樹
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-116542(JP,A)
【文献】特開2001-153645(JP,A)
【文献】特開平09-318345(JP,A)
【文献】特開2004-117321(JP,A)
【文献】登録実用新案第3126827(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を照射可能な光源、及び前記レーザー光の反射光を受光可能な受光部を有する1つのレーザー変位計を、固定されたVベルトの幅方向に移動させるとともに、固定されたVベルトの傾斜面及び底部に、所定間隔で前記光源からレーザー光を照射し、前記受光部で受光した反射光に基づき、前記Vベルトの幅方向をX軸、及び、前記Vベルトの厚み方向をY軸とする、座標値を複数取得するステップと、
前記Vベルトの傾斜面に対応し、前記Vベルトの種類及び型番に応じて設定される区間において前記取得された複数の座標値に基づき、前記Vベルトの傾斜面に対応する近似直線を算出し、前記Vベルトの底部に対応する区間において前記取得された複数の座標値に基づき、前記Vベルトの底部に対応する近似直線を算出するステップと、
算出した前記Vベルトの傾斜面に対応する近似直線と、算出した前記Vベルトの底部に対応する近似直線とのなす角に基づき、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出するステップと、を含む、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を測定する、角度測定方法。
【請求項2】
合格となる傾斜角度範囲を設定するステップと、
前記算出した、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度が、前記合格となる傾斜角度範囲内にあると判断した場合、合格判定をするステップと、を更に含む、請求項1に記載の角度測定方法。
【請求項3】
Vベルトを固定する設置台と、
レーザー光を照射可能な光源、及び前記レーザー光の反射光を受光可能な受光部とを有する1つのレーザー変位計と、
前記1つのレーザー変位計を、前記設置台に固定された前記Vベルトの幅方向に移動させることが可能な移動機構と、
以下の処理が実行される制御装置と、を有する角度測定装置。
(a)前記移動機構により前記設置台に固定されたVベルトの幅方向に前記1つのレーザー変位計を移動させるとともに、当該Vベルトの傾斜面及び底部に、所定間隔で前記光源から前記レーザー光を照射し、前記受光部で受光した反射光に基づき、前記Vベルトの幅方向をX軸、及び、前記Vベルトの厚み方向をY軸とする、座標値を複数取得する処理と、
(b)前記Vベルトの傾斜面に対応し、前記Vベルトの種類及び型番に応じて設定される区間において前記取得された複数の座標値に基づき、前記Vベルトの傾斜面に対応する近似直線を算出し、前記Vベルトの底部に対応する区間において前記取得された複数の座標値に基づき、前記Vベルトの底部に対応する近似直線を算出する処理と、
(c)算出した前記Vベルトの傾斜面に対応する近似直線と、算出した前記Vベルトの底部に対応する近似直線とのなす角に基づき、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出する処理。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vベルトの傾斜面の角度を算出可能な角度測定方法、及び、角度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Vベルトは、動力を伝達する摩擦伝動ベルトとして知られている。このVベルトは、V角度で形成される摩擦伝動面(V字状側面:傾斜面)を有し、駆動プーリと従動プーリとの間に張力をかけて巻き掛けられ、V字状側面がプーリ(駆動プーリ及び従動プーリ)のV溝と接触した状態でプーリ間を回転走行することで動力を伝達する。
【0003】
Vベルトには、摩擦伝動面(V字状側面)が、露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面が、カバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがある。さらに、ローエッジVベルトには、ベルトの下面(内周面)に、または、下面(内周面)と上面(外周面)の両方に、コグを設けて屈曲しやすくしたローエッジコグドVベルトがある。
【0004】
ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトは、一般産業機械、農業機械、自動車エンジンでの補機などの駆動に用いられるほか、自動二輪車などのベルト式無段変速装置にて変速ベルトとして用いられている。なお、ローエッジVベルトには、プーリに対する耐側圧性を向上させるためにゴム層に短繊維を配合したり、その短繊維をプーリとの摺動性(摩擦係数)を改良するために伝動面に露出させたりすることもある。
【0005】
上記のようにVベルトは、駆動プーリ側から従動プーリ側に、確実に動力を伝達するために、VベルトのV字状側面がプーリ(駆動プーリ及び従動プーリ)のV溝と確実に接触する必要がある。即ち、VベルトのV字状側面の傾斜角度が、プーリのV溝の傾斜角度に適合する必要がある。
【0006】
そこで、Vベルトの製造工程や、使用して摩耗した状態の、VベルトのV字状側面の傾斜角度を測定する測定方法・測定器等が必要とされている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-017703号公報
【文献】特開2006-030168号公報
【文献】登録実用新案第3125253号公報
【文献】登録実用新案第3126827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~4に記載の、VベルトのV字状側面の傾斜角度の測定方法・測定器等では、直接、測定器具がVベルトに接触して、傾斜角度を測定することから、VベルトのV字状側面を押圧してしまい正確な傾斜角度を測定できない場合がある。また、特許文献4のベルト角度測定器では、VベルトのV字状側面の任意の2つの測定ポイント間の変位量から傾斜角度を求めていることから、作業者の測定ポイントの選択により、傾斜角度の測定値にバラツキが発生してしまう。更に、直接、測定器具をVベルトに接触させて傾斜角度を測定することから、測定に時間を要し、生産性が低くなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の課題は、非接触方式で、Vベルトの傾斜面の角度を算出可能とし、作業者による測定のバラツキを抑制することができる、角度測定方法及び角度測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、固定されたVベルトの傾斜面に、所定間隔でレーザー光を照射し、その反射光に基づき、前記Vベルトの幅方向をX軸、及び、前記Vベルトの厚み方向をY軸とする、座標値を複数取得するステップと、
前記取得された複数の座標値に基づき、近似直線を算出するステップと、
前記近似直線と、前記Vベルトの底部の前記Vベルトの幅方向の直線とのなす角に基づき、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出するステップと、を含む、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を測定する、角度測定方法である。
【0011】
上記方法によれば、Vベルトの傾斜面の傾斜角度を非接触で測定することができる。また、Vベルトの傾斜面を所定間隔で取得した多数の座標値に基づき、Vベルトの傾斜面に近似させた、近似直線を算出していることから、Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出するに際して、測定毎のバラツキを抑制することができる。即ち、測定精度を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、上記角度測定方法において、合格となる傾斜角度範囲を設定するステップと、
前記算出した、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度が、前記合格となる傾斜角度範囲内にあると判断した場合、合格判定をするステップと、を更に含むことを特徴としている。
【0013】
上記方法によれば、予め、Vベルトの傾斜角度の合格範囲を設定していることから、Vベルトの傾斜角度の合格判定を自動的に行うことができる。
【0014】
また、本発明は、Vベルトを固定する設置台と、
レーザー光を照射可能な光源と、
前記レーザー光の反射光を受光可能な受光部と、
以下の処理が実行される制御装置と、を有する角度測定装置である。
(a)前記設置台に固定された前記Vベルトの傾斜面に、所定間隔で前記光源から前記レーザー光を照射し、前記受光部で受光した反射光に基づき、前記Vベルトの幅方向をX軸、及び、前記Vベルトの厚み方向をY軸とする、座標値を複数取得する処理と、
(b)前記取得された複数の座標値に基づき、近似直線を算出する処理と、
(c)前記近似直線と、前記Vベルトの底部の前記Vベルトの幅方向の直線とのなす角に基づき、前記Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出する処理。
【0015】
上記構成によれば、Vベルトの傾斜面の傾斜角度を非接触で測定することができる。また、Vベルトの傾斜面を所定間隔で取得した多数の座標値に基づき、Vベルトの傾斜面に近似させた、近似直線を算出していることから、Vベルトの傾斜面の傾斜角度を算出するに際して、測定毎のバラツキを抑制することができる。即ち、測定精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
非接触方式で、Vベルトの傾斜面の角度を算出可能とし、作業者による測定のバラツキを抑制することができる、角度測定方法及び角度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る、角度測定装置の上面概略図である。
図2】本実施形態に係る、角度測定装置の正面概略図である。
図3】ベルトセット時の説明図である。
図4】ベルトセット時の説明図である。
図5】ベルト厚み押え部の動作態様の説明図である。
図6】ベルト幅押え部の動作態様の説明図である。
図7】ベルト角度の測定手順の説明図である。
図8】測定データに基づくベルト角度計算結果を示す図である。
図9】パーソナルコンピュータのモニタに表示する、ベルト角度の合否判定の説明図である。
図10】従来のベルト角度測定器の説明写真である。
図11】従来のベルト角度測定器を使用した、測定データに基づくベルト角度計算結果を示す図である。
図12】実施例に係る、連続測定の結果及びヒストグラムである。
図13】実施例に係る、再セット測定の結果及びヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、角度測定装置1を使用して、無端状のローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のV字状側面21・22(傾斜面に相当)のベルト角度(図2に示す、「V字状側面21の傾斜角度θ1」+「V字状側面22の傾斜角度θ2」=ベルト角度参照)を測定する。
【0019】
(ローエッジコグドVベルト2)
ローエッジコグドVベルト2は、Vベルトの一種であり、動力を伝達する摩擦伝動ベルトである。このローエッジコグドVベルト2は、無端状で、その内周面側に複数のコグ20が設けられており、屈曲しやすくされている。また、ローエッジコグドVベルト2は、図2のベルト幅方向の断面図に示すように、コグ20部分も含めて、所定の傾斜角度を有するV字状側面21・22を有している。なお、本実施形態では、ローエッジコグドVベルト2を測定対象としているが、Vベルトであれば測定可能である。例えば、ローエッジVベルト、ラップドVベルト、ベルトの内周面と外周面の両方に、コグを設けて屈曲しやすくしたローエッジコグドVベルトであってもよい。
【0020】
(角度測定装置1の構成)
角度測定装置1は、図1及び図2に示すように、無端状のローエッジコグドVベルト2の一方の側面を支持する、四角柱状の2本の第1支持部3と、ローエッジコグドVベルト2の外周面を支持する、四角柱状の2本の第2支持部4と、2本の第2支持部4の間に設けられ、ローエッジコグドVベルト2の外周面を、円弧形状を保持したまま下方から支持する第3支持部5(設置台に相当)と、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分の、ベルト長手方向の両脇を支持する一対のストッパー6と、ローエッジコグドVベルト2の内周面を、ベルト厚み方向に移動して押さえることができる、ベルト厚み押え部7と、ローエッジコグドVベルト2の他方の側面をベルト幅方向に移動して押さえることができる、一対のベルト幅押え部8と、ローエッジコグドVベルト2の内周面側でベルト幅方向に移動可能な、レーザー変位計9と、各種動作制御等を実行するパーソナルコンピュータ10(制御装置に相当)とを備えている。
【0021】
ベルト厚み押え部7は、パーソナルコンピュータ10からの指令により、油圧シリンダー71の上下方向(ベルト厚み方向)の動作制御により下方(図2の上側から下側へ)に移動して、第3支持部5に支持された(載置された)、ローエッジコグドVベルト2の内周面を押さえることができる。これにより、第3支持部5とベルト厚み押え部7との間で、ローエッジコグドVベルト2を、ベルト厚み方向に固定することができる。
【0022】
ベルト幅押え部8は、パーソナルコンピュータ10からの指令により、油圧シリンダー81の前後方向(ベルト幅方向)の動作制御により前側(図1の右側から左側へ)に移動して、2本の第1支持部3に支持された、ローエッジコグドVベルト2の他方の側面を押さえることができる。これにより、第1支持部3とベルト幅押え部8との間で、ローエッジコグドVベルト2を、ベルト幅方向に固定することができる。
【0023】
レーザー変位計9は、レーザー光をローエッジコグドVベルト2の内周面側に照射可能な光源91、及び、光源91から照射されたレーザー光が、ローエッジコグドVベルト2の内周面で反射した光を受光可能な受光部92を備えている。そして、レーザー変位計9は、パーソナルコンピュータ10からの指令により、光源91からレーザー光をローエッジコグドVベルト2の内周面側に照射しながら、油圧シリンダー93の前後方向(ベルト幅方向)の動作制御により後側(図1の左側から右側へ)に移動することができる。
【0024】
これにより、油圧シリンダー93によるレーザー変位計9のベルト幅方向の移動(変位)を、ローエッジコグドVベルト2のベルト幅方向の位置(変位)として計測することができる(後述する測定データのX軸)。また、受光部92で受光した、レーザー光の反射光に基づき算出した距離(レーザー変位計9とローエッジコグドVベルト2の内周面との間の距離)から、レーザー変位計9のベルト幅方向の移動に伴う、ローエッジコグドVベルト2の厚みを計測(計算)することができる(後述する測定データのY軸)。即ち、ローエッジコグドVベルト2のベルト幅方向をX軸、及び、ローエッジコグドVベルト2のベルト厚み方向をY軸とする、座標値を取得することができる。本実施形態では、レーザー変位計9のベルト幅方向の移動に伴い、所定間隔でレーザーを照射することにより、多数の座標値を取得する。具体的には、ローエッジコグドVベルト2をベルト幅方向に端から端まで測定した場合、約2万個の座標値を取得する。
【0025】
パーソナルコンピュータ10は、ソフトウェアにより、角度測定装置1の測定動作・計算を統括管理するコンピュータであり、CPUや、RAM、ROM、不揮発性メモリー等の記憶装置、入力装置、測定結果等を表示するモニタを備えている。
【0026】
(測定方法)
次に、パーソナルコンピュータ10のソフトウェアによって、角度測定装置1を動作制御して、ローエッジコグドVベルト2のV字状側面21・22(傾斜面に相当)のベルト角度(図2に示す、「V字状側面21の傾斜角度θ1」+「V字状側面22の傾斜角度θ2」=ベルト角度参照)を測定する手順について説明する。
【0027】
(1:ベルトセット)
まず、図3に示すように、測定者が、ローエッジコグドVベルト2を、2本の第1支持部3(ローエッジコグドVベルト2の一方の側面を支持)、及び、2本の第2支持部4(ローエッジコグドVベルト2の外周面を支持)によって支持されるように、第3支持部5の上に載置する(ベルトセット)。なお、ベルトセットの前に、測定するVベルトの種類、型番(大きさ(幅、厚み)、使用形態)などの入力を行う(条件設定)。
【0028】
次に、図4に示すように、レーザー変位計9の光源91からレーザー光をローエッジコグドVベルト2の内周面に仮照射しながら、測定者が、ローエッジコグドVベルト2を、第3支持部5上で、ベルト長手方向に動かして(回転させて)、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分(頂点部分)に、レーザー光が照射されるようにセッティングする。これにより、一対のストッパー6の間(およそ中間)に、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分が配置され、一対のストッパー6が、コグ20部分のベルト長手方向の両脇を支持した状態になる。
【0029】
次に、測定者が、パーソナルコンピュータ10において、測定開始の指令を入力すると、まず、ベルト厚み押え部7が、油圧シリンダー71の動作制御により下方(図5の上側から下側へ)に移動して、第3支持部5に載置された、ローエッジコグドVベルト2の、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分のベルト長手方向の両脇を押さえる。これにより、第3支持部5とベルト厚み押え部7との間で、ローエッジコグドVベルト2を、ベルト厚み方向に固定することができる。
【0030】
次に、ベルト幅押え部8が、油圧シリンダー81の動作制御により前側(図6の右側から左側へ)に移動して、2本の第1支持部3に支持された、ローエッジコグドVベルト2の他方の側面(図5に示すローエッジコグドVベルト2の右側)を押さえる。これにより、2本の第1支持部3とベルト幅押え部8との間で、ローエッジコグドVベルト2を、ベルト幅方向に固定することができる。
【0031】
(2:形状測定)
次に、パーソナルコンピュータ10からの指令により、レーザー変位計9が、光源91からレーザー光を、ローエッジコグドVベルト2の、ベルト角度の測定対象となるコグ20に照射しながら、油圧シリンダー93の動作制御により後側(図1左側から右側へ)に移動する。即ち、レーザー光が、ローエッジコグドVベルト2の、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分(頂点部分)を、ベルト幅方向に端から端まで横断する。
【0032】
ここで、油圧シリンダー93によるレーザー変位計9のベルト幅方向の移動(変位)を、ローエッジコグドVベルト2のベルト幅方向の位置(変位)として計測する。また、受光部92で受光した、レーザー光の反射光に基づき算出した距離(レーザー変位計9とローエッジコグドVベルト2のコグ20部分との間の距離)から、レーザー変位計9のベルト幅方向の移動に伴う、ローエッジコグドVベルト2の厚みを計測(計算)する。即ち、ローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のベルト幅方向をX軸、及び、ローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のベルト厚み方向をY軸とする、座標値を取得することができる。本実施形態では、レーザー変位計9のベルト幅方向の移動に伴い、所定間隔でレーザーを照射することにより、約2万点の座標値を取得する。取得した座標値は、パーソナルコンピュータ10に送信され、記憶装置に記憶される。なお、取得する座標値は、少なくとも3つ以上が好ましい。
【0033】
(3:形状測定結果に基づく形状表示)
次に、パーソナルコンピュータ10の算出により、図7の測定データに示すように、ローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のベルト幅方向をX軸、ローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のベルト厚み方向をY軸として、取得した約2万点の座標値をそれぞれ線で結び、ローエッジコグドVベルト2の、ベルト角度の測定対象となるコグ20部分のベルト幅方向の形状を、測定データとしてモニタに表示する(形状測定)。
【0034】
(4:ベルト角度計算)
次に、パーソナルコンピュータ10は、図8に示すように、事前に設定した、ベルト厚み方向のA-B区間、且つ、ベルト幅方向C-D区間において取得された、全ての座標値に基づき、ローエッジコグドVベルト2の一方のV字状側面21の傾きに相当する、近似直線L1を算出する。同様に、事前に設定した、ベルト厚み方向のA-B区間、且つ、ベルト幅方向E-F区間において取得された、全ての座標値に基づき、ローエッジコグドVベルト2の他方のV字状側面22の傾きに相当する、近似直線L2を算出する。なお、本実施形態では、近似直線L1・L2の算出方法としは、最小二乗法を使用して計算しているが、これに限らず、公知の計算方法により算出してもよい。また、事前に設定される、ベルト厚み方向のA-B区間、ベルト幅方向C-D区間、ベルト幅方向E-F区間については、Vベルトの種類、型番(大きさ(幅、厚み)、使用形態)などによって予め条件化しておくことが望ましい(測定者によるバラツキを無くすため)。
【0035】
次に、パーソナルコンピュータ10は、算出した近似直線L1と、ローエッジコグドVベルト2の底部23(内周面)のベルト幅方向に対応する直線L3とのなす角θ(L)(V字状側面21と底部23との間の角度)を算出する。同様に、近似直線L2と、直線L3とのなす角θ(R)(V字状側面22と底部23との間の角度)を算出する。ここで、ローエッジコグドVベルト2の底部23(内周面)のベルト幅方向に対応する直線L3は、X軸と平行な直線を採用してもよい。また、直線L3は、事前に設定した、ベルト幅方向の所定区間(ローエッジコグドVベルト2の底部23に相当する区間)において取得された、全ての座標値に基づき、近似直線として算出してもよい。
【0036】
次に、パーソナルコンピュータ10は、近似直線L1と直線L3とのなす角θ(L)から、90°を引いた値を、V字状側面21の「傾斜角度θ1」として算出する。同様に、近似直線L2と直線L3とのなす角θ(R)から、90°を引いた値を、V字状側面22の「傾斜角度θ2」として算出する。そして、「傾斜角度θ1」+「傾斜角度θ2」=「ベルト角度」として算出する(図9参照)(角度計算)。
【0037】
上記算出した、「傾斜角度θ1」、「傾斜角度θ2」、「ベルト角度」の具体的な値は、図9に示すように、パーソナルコンピュータ10のモニタに、測定された、ローエッジコグドVベルト2のコグ20部分のベルト幅方向の形状・数値(ベルト幅やベルト厚みの値など)とともに表示される。なお、これらの測定データは、パーソナルコンピュータ10の上位パソコンに送信され、情報管理、実績収集、分析に使用される。
【0038】
次に、パーソナルコンピュータ10は、上記算出された「ベルト角度」が、予め設定しておいた、製品規格(性能)上、合格となるベルト角度の範囲内にあるか否かを判定する。なお、製品規格(性能)上、合格となるベルト角度の範囲は、パーソナルコンピュータ10において、Vベルトの種類、型番(大きさ(幅、厚み)、使用形態)などによって予め設定・条件化しておくことが望ましい。
【0039】
そして、上記算出された「ベルト角度」が、予め設定しておいた、製品規格(性能)上、合格となるベルト角度の範囲内にあると判定された場合、パーソナルコンピュータ10のモニタに「合格」の表示を行う。なお、上記算出された「ベルト角度」が、合格となるベルト角度の範囲内にないと判定された場合には、パーソナルコンピュータ10のモニタに「不合格」の表示を行う。その後、「ベルト角度」の合否判定や、数値結果等が記憶装置に記憶され、保存される。
【0040】
例えば、製品規格(性能)上、合格となるベルト角度の範囲を、「24°≦ベルト角度<25°」に予め設定した場合、上記算出された「ベルト角度」が、「24.48°」であれば、モニタに「合格」の表示がなされる。一方、上記算出された「ベルト角度」が、「25.10°」であれば、モニタに「不合格」の表示がなされる。これにより、予め、ローエッジコグドVベルト2のベルト角度の合格範囲を設定していることから、ローエッジコグドVベルト2のベルト角度の合格判定を自動的に行うことができる。
【0041】
上記実施形態では、算出されるベルト角度は、「傾斜角度θ1」+「傾斜角度θ2」=「ベルト角度」としているが、ベルト角度の定義を、「傾斜角度θ1」、「傾斜角度θ2」、近似直線L1と直線L3とのなす角θ(L)、近似直線L2と直線L3とのなす角θ(R)などの角度と規定してもよく、或いは、これらの組み合わせによって規定してもよい。
【0042】
上記実施形態の角度測定装置1によれば、ローエッジコグドVベルト2のV字状側面21・22の傾斜角度を非接触で測定することができる。また、ローエッジコグドVベルト2のV字状側面21・22を所定間隔で取得した多数の座標値に基づき、ローエッジコグドVベルト2のV字状側面21・22に近似させた、近似直線L1、近似直線L2を算出していることから、ローエッジコグドVベルト2の、V字状側面21の「傾斜角度θ1」、V字状側面22の「傾斜角度θ2」、更には、「傾斜角度θ1」+「傾斜角度θ2」=「ベルト角度」を算出するに際して、測定毎のバラツキを抑制することができる。即ち、ベルト角度等の測定精度を高めることができる。
【実施例
【0043】
次に、本発明に係る角度測定装置と、従来のベルト角度測定器(特許文献4等参照)とを用いて、繰り返しVベルト(ローエッジコグドVベルト)のベルト角度を測定した時の繰り返し精度(測定値の差異)を評価する。
【0044】
(従来のベルト角度測定器を使用したベルト角度測定)
ここで、従来のベルト角度測定器として、形状測定機(ミツトヨ製:コントレーサCV3000)を使用した、Vベルト(ローエッジコグドVベルト)のベルト角度の測定手順について簡単に説明する。
【0045】
まず、図10に示すように、Vベルトを、ベルトセット治具に載置し(ベルトセット)、形状測定機から伸びる針と、測定するVベルトの部位の位置合わせを行う(条件設定)。
【0046】
次に、形状測定機から伸びる針を、ベルトセット治具に載置された、Vベルトのベルト幅方向に沿わせて移動させることにより、針の動き(ベルト幅方向の変位、及び、ベルト厚み方向の変位)を測定する(形状測定)。
【0047】
次に、パーソナルコンピュータの算出により、図11の測定データに示すように、Vベルトのベルト幅方向をX軸、Vベルトのベルト厚み方向をY軸として、Vベルトのベルト幅方向の形状を、測定データとしてモニタに表示する。
【0048】
次に、測定者は、パーソナルコンピュータ(専用ソフトウェアを使用)において、図11に示すように、Vベルトの一方のV字状側面に相当する、測定データの任意の2点(A点及びB点)を選択し、選択したA点とB点を通る直線L21を作成する。同様に、Vベルトの他方のV字状側面に相当する、測定データの任意の2点(C点及びD点)を選択し、選択したC点とD点を通る直線L22を作成する(4点選択)。
【0049】
次に、パーソナルコンピュータは、作成した直線L21と、Vベルトの底部23(内周面)のベルト幅方向に対応する直線L23とのなす角θ(L)(一方のV字状側面と底部23との間の角度)を算出する。同様に、直線L22と、直線L23とのなす角θ(R)(他方のV字状側面と底部23との間の角度)を算出する。
【0050】
次に、パーソナルコンピュータは、直線L21と直線L23とのなす角θ(L)から、90°を引いた値を、一方のV字状側面の「傾斜角度θ1」として算出する。同様に、直線L22と直線L23とのなす角θ(R)から、90°を引いた値を、他方のV字状側面の「傾斜角度θ2」として算出する。そして、「傾斜角度θ1」+「傾斜角度θ2」=「ベルト角度」として算出する(角度計算)。そして、算出した「ベルト角度」等をパーソナルコンピュータのモニタに表示する。
【0051】
(測定対象となるVベルト)
本発明の角度測定装置(レーザー)と従来のベルト角度測定器(従来)の測定精度を評価するにあたって、測定対象となるVベルトについて説明する。測定対象となるVベルトは、ローエッジコグドVベルトであり、表1に示す3種類を用意した(Vベルト1、Vベルト2、Vベルト3)。
【0052】
【表1】
【0053】
(評価方法)
本発明の角度測定装置(レーザー)と従来のベルト角度測定器(従来)において、それぞれ3種類のVベルト(Vベルト1、Vベルト2、Vベルト3)のベルト角度を、20回連続で測定し(Vベルトをセットして、測定開始指令を連続で20回押して測定)、測定した20回分のベルト角度の中の、最高値(Max)と最小値(Min)との差(バラツキ(R))を求めた。そして、その差が小さいほどバラツキが小さいと判断した。また、測定した20回分のベルト角度の平均値をそれぞれ算出し、その平均値の差(従来との差)に基づき、本発明の角度測定装置(レーザー)が従来のベルト角度測定器(従来)と比べて遜色ないかを評価した。その連続測定の結果及びヒストグラムを図12に示す。
【0054】
また、本発明の角度測定装置(レーザー)と従来のベルト角度測定器(従来)において、それぞれ3種類のVベルト(Vベルト1、Vベルト2、Vベルト3)のベルト角度を、測定毎に再セットして20回測定した(測定毎に、Vベルトを再セットした後、測定開始指令を押して測定)。その再セット測定の結果及びヒストグラムを図13に示す。
【0055】
(評価)
連続測定、再セット測定ともに、本発明の角度測定装置(レーザー)は従来のベルト角度測定器(従来)に比べて、バラツキ(R)は小さく、測定精度は従来同等以上であった。
バラツキが小さくなった要因としては、本発明の角度測定装置(レーザー)は、直接、測定器具がVベルトに接触せずに、ベルト角度を測定することから、VベルトのV字状側面等を押圧せずに正確なベルト角度を測定できることが考えられる。
【0056】
また、本発明の角度測定装置では、レーザー変位計を使用して取得した、多数の座標値から算出された近似直線を利用して、ベルト角度を算出していることから、従来のベルト角度測定器に比べて、バラツキ(R)を小さくすることができた。
【0057】
また、ベルト角度の平均値の差(従来との差)は小さく、本発明の角度測定装置(レーザー)は、従来のベルト角度測定器(従来)と比べても遜色ないと評価することができた。
【0058】
(サンディング仕様のVベルトの測定)
本発明の角度測定装置(レーザー)において、サンディング仕様のVベルト(ローエッジコグドVベルト)のベルト角度の測定精度を評価するために、本発明の角度測定装置(レーザー)と従来のベルト角度測定器(従来)において、それぞれ3種類のVベルト(表2のVベルト4、Vベルト5、Vベルト6参照)のベルト角度を、測定毎に再セットして20回測定し(測定毎に、Vベルトを再セットした後、測定開始指令を押して測定)、バラツキ(R)、平均値の差(従来との差)を測定した。その測定の結果を表3に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
(評価)
本発明の角度測定装置(レーザー)は従来のベルト角度測定器(従来)に比べて、バラツキ(R)は小さく、ベルト角度の測定精度は従来同等以上であった。従って、本発明の角度測定装置(レーザー)は、サンディング仕様のVベルトであっても問題なく、ベルト角度を測定可能である。
【0062】
(測定時間の評価)
次に、本発明の角度測定装置(レーザー)と従来のベルト角度測定器(従来)において、Vベルトのベルト角度を、1回測定するのに要した時間を計測した。その結果を、表4及び表5に示す。従来のベルト角度測定器では、手動のベルトセット、手動の条件設定、自動の形状測定、手動の4点選択、自動の角度計算の合計時間を計測した(表4参照)。また、本発明の角度測定装置(レーザー)では、手動の条件設定、半手動のベルトセット、自動の形状測定、自動の角度計算の合計時間を計測した(表5参照)。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表4及び表5の計測結果によれば、本発明の角度測定装置(レーザー)において、ベルト角度を測定する時間は、従来のベルト角度測定器(従来)に比べて、大幅に短縮することができたことを確認することができた。
【符号の説明】
【0066】
1 角度測定装置
2 ローエッジコグドVベルト
20 コグ
21 V字状側面
22 V字状側面
23 底部
3 第1支持部
4 第2支持部
5 第3支持部
6 ストッパー
7 ベルト厚み押え部
8 ベルト幅押え部
9 レーザー変位計
91 光源
92 受光部
10 パーソナルコンピュータ
L1・L2 近似直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13