(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】粒子画像撮像方法及び粒子速度分布作成方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20230518BHJP
G01P 13/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G01H9/00 Z
G01P13/00 E
(21)【出願番号】P 2019238135
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:一般社団法人日本音響学会、刊行物名:日本音響学会2019年秋季研究発表会 講演要旨、発行日:2019年8月21日 集会名:日本音響学会2019年秋季研究発表会、立命館大学びわこ・くさつキャンパス、開催日:2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 真平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕造
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105857(JP,A)
【文献】国際公開第2007/049693(WO,A1)
【文献】特開昭48-082874(JP,A)
【文献】特開2004-020385(JP,A)
【文献】特開2007-085784(JP,A)
【文献】特開2012-145502(JP,A)
【文献】武岡成人,阿久津真理子,及川靖広,山崎芳男,高速度カメラを用いたPIV法による音場収録,日本音響学会講演論文集,日本,日本音響学会,2010年03月,2010年春季,pp. 1451-1452,[検索日 2023.04.26] インターネット:<URL : http://old.acoust.ias.sci.waseda.ac.jp/publications/happyou/asj/asj-takeoka-2010march.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01P 13/00-13/04
G01P 5/00- 5/26
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数f
Sの純音が卓越する定常音場に散布されたトレーサ粒子に対し、光源から周波数f
Lで点滅する光シートを照射する工程と、
前記光シートが照射された前記トレーサ粒子を撮像手段で撮像して、下記式(1)で得られる周波数f
Aの振動成分を含む複数の粒子画像を得る工程と、
を含み、
前記撮像手段は、フレームレート(fps)が前記周波数f
Aの2倍以上である、粒子画像撮像方法。
【数1】
【請求項2】
請求項1において、
前記フレームレートは、前記周波数f
Lよりも低い値である、粒子画像撮像方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において得られた2時刻の前記粒子画像を用いて粒子画像流速測定法により流速分布を得る工程と、
前記流速分布を時間軸上でフーリエ変換して気流による直流成分を除いて、前記周波数f
Aの振動成分からなる擬似粒子速度分布を得る工程と、
前記擬似粒子速度分布における擬似粒子速度にf
S/f
Aを乗じることで粒子速度分布を得る工程と、
を備える、粒子速度分布作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場を可視化するための粒子画像撮像方法及び粒子速度分布作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
未知の音響現象について調べる際、音場を可視化する試みがこれまで数多くなされている。それらの中でも、PIV(粒子画像流速測定法)によりカメラを用いて空気の振動を撮影する手法は、粒子速度の空間的な分布を非接触で測定できるという大きな利点がある(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】武岡成人、外3名、「高速度カメラを用いたPIV法による音場収録」、日本音響学会講演論文集、2010年3月、p.1451-1452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、音による振動は一般的なカメラでは写すことのできない周期の短い振動である。そのため、従来のPIVを音場に用いるには少なくとも高速度カメラが必要である。
【0005】
そこで、本発明は、高速度カメラを用いることなくPIVにより音場を可視化するための粒子画像撮像方法及び粒子速度分布作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0007】
[1]本発明に係る粒子画像撮像方法の一態様は、
周波数fSの純音が卓越する定常音場に散布されたトレーサ粒子に対し、光源から周波数fLで点滅する光シートを照射する工程と、
前記光シートが照射された前記トレーサ粒子を撮像手段で撮像して、下記式(1)で得られる周波数fAの振動成分を含む複数の粒子画像を得る工程と、
を含み、
前記撮像手段は、フレームレート(fps)が前記周波数fAの2倍以上であることを特徴とする。
【0008】
【数1】
[2]上記粒子画像撮像方法の一態様において、
前記フレームレートは、前記周波数f
Lよりも低い値とすることができる。
【0009】
[3]本発明に係る粒子速度分布作成方法の一態様は、
上記粒子画像撮像方法の一態様において得られた2時刻の前記粒子画像を用いて粒子画像流速測定法により流速分布を得る工程と、
前記流速分布を時間軸上でフーリエ変換して気流による直流成分を除いて、前記周波数
fAの振動成分からなる擬似粒子速度分布を得る工程と、
前記擬似粒子速度分布における擬似粒子速度にfS/fAを乗じて粒子速度分布を得る工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る粒子画像撮像方法の一態様によれば、高速度カメラを用いることなくPIVにより音場を可視化するための粒子画像を得ることができる。また、本発明に係る粒子速度分布作成方法の一態様によれば、高速度カメラを用いることなくPIVにより音場が可視化された粒子速度分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒子画像撮像方法及び粒子速度分布作成方法のフローチャートである。
【
図3】周波数f
Sと周波数f
Aとの関係を説明する模式図である。
【
図5】スピーカーを停止した状態の流速分布を示す図である。
【
図6】位相0(rad)としたときの粒子速度分布を示す図である。
【
図7】位相π/2(rad)としたときの粒子速度分布を示す図である。
【
図8】位相π(rad)としたときの粒子速度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1.粒子画像撮像方法及び流速分布作成方法の概要
図1~
図8を用いて粒子画像撮像方法及び粒子速度分布作成方法の一実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る粒子画像撮像方法(S10)及び粒子速度分布作成方法(S20)のフローチャートである。
図1に示すように、粒子速度分布作成方法(S20)は、粒子画像撮像方法(S10)の後に実行される。そして、粒子画像撮像方法(S10)は、照射する工程(S12)と、粒子画像を得る工程(S14)と、を含む。粒子画像撮像方法(S10)は、粒子速度分布作成方法(S20)と別工程としてもよい。
【0015】
1.1.粒子画像撮像装置
まず、
図2を用いて、粒子画像撮像方法(S10)に用いる粒子画像撮像装置1について説明する。
図2は、粒子画像撮像装置1の概要を示す模式図である。
【0016】
図2に示すように、粒子画像撮像装置1は、音源ユニット10と、光源ユニット20と、音響管30と、ビデオカメラ40と、演算部42と、を備える。
【0017】
音源ユニット10は、周波数fSの純音が卓越する定常音場を生成する。音源ユニット10は、音響管30の一端に取り付けられたスピーカー12と、スピーカー12に電気的に接続された増幅器14及び発振器16とを備える。スピーカー12は、純音を出力することで、音響管30内に1次モードを励起する。
【0018】
音響管30は、透明な壁体で構成された直方体である。音響管30は、外部からの気流の影響を受けないように密閉された内部空間を有する。音響管30の長手方向(
図2におけるZ軸に沿った方向)の一端にスピーカー12が取り付けられ、他端に騒音計32が取り付けられる。音響管30の壁体は、粒子画像を撮像可能な程度に少なくとも一部が透明であればよく、透明な壁体としては例えばアクリル板やガラス板等で構成される。音響管30の内部には、スピーカー12からの出力により、音響管30の長手方向に1次モードが励起され、周波数f
Sの純音が卓越する定常音場が形成される。騒音計32は、音響管30の内部の音圧レベルを測定する。
【0019】
また、音響管30の内部には、気体例えば空気や不活性ガス等の中にトレーサ粒子が散布される。トレーサ粒子は、PIVで用いられる公知の気相用のトレーサ粒子を採用することができ、例えばたばこや線香の煙、オイルミスト等である。
【0020】
ここでは、周波数fSの純音が卓越する定常音場を音響管30として設けたが、これに限らず、ビデオカメラ40で粒子画像を撮像可能な気流の影響が少ない空間を採用することができる。
【0021】
光源ユニット20は、周波数fSの純音が卓越する定常音場に散布されたトレーサ粒子に対して周波数fLで点滅する光シート28を照射する。光源ユニット20は、光シート28を照射する光源である照射装置22と、モーター24と、モーター24により回転する円板26と、を備える。照射装置22は、例えばYVO4レーザーやYAGレーザー等による光シート28を照射することができる。円板26には所定間隔でスリットが形成されている。照射装置22の前で円板26をモーター24により回転させることで、光シート28を周波数fLで点滅させることができる。光源ユニット20の構成はこれに限らず、PIVに用いられる公知の光源を採用することができ、例えばパルス発光が可能なレーザー照射装置であってもよい。
【0022】
光シート28は、音響管30の透明な壁体を透過する、
図2におけるY-Z方向に沿って広がる薄い光シートである。
【0023】
ビデオカメラ40は、音響管30の内部において光シート28の照射を受けたトレーサ粒子からの散乱光を撮像する。ビデオカメラ40は、所定のフレームレート(fps:frames per second)で画像を撮像でき、そのフレームレートは、従来のPIVによる音場の可視化に用いられる高速度カメラに比べて小さいものを採用できる。ビデオカメラ40は、市販のデジタル式のビデオカメラを採用することができる。
【0024】
ビデオカメラ40で撮像された画像データは、演算部42によるPIVにより画像解析され、さらにフーリエ変換して所望の流速分布を作成することができる。演算部42は、パーソナルコンピューターを採用することができ、例えば、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置で構成される。
【0025】
1.2.粒子画像撮像方法
次に、
図1~
図3を用いて、粒子画像撮像方法(S10)の一実施態様について説明する。
図3は、周波数f
Sと周波数f
Aとの関係を説明する模式図であり、横軸が時間、縦軸がトレーサ粒子の変位を示す。
【0026】
図1に示すように、粒子画像撮像方法(S10)は、照射する工程(S12)と、粒子画像を得る工程(S14)と、を含む。
【0027】
照射する工程(S12)は、周波数f
Sの純音が卓越する定常音場に散布されたトレーサ粒子に対し、光源から周波数f
Lで点滅する光シート28を照射する工程である。
図2に示す粒子画像撮像装置1では、スピーカー12からの出力により、空気中に線香の煙等のトレーサ粒子が散布された音響管30の内部が周波数f
Sの純音が卓越する定常音場となり、光源ユニット20から周波数f
Lで点滅する光シート28がトレーサ粒子に照射される。
【0028】
図3において破線で示す短い周期の正弦波がスピーカー12から出力された周波数f
Sの純音を示す。周波数f
Sは任意の周波数であるが、ここでは例えば121Hzの純音として説明する。
【0029】
また、
図3において網掛けされていない範囲(矢印で示す位置)で光源ユニット20から周波数f
Lで点滅する光シート28が照射されることを示す。この光シート28の点滅により、音響管30内のトレーサ粒子が周波数f
Lで光る。周波数f
Lは、ビデオカメラ40のフレームレートと周波数f
Sにより定まるが、ここでは例えば120Hzで点滅するものとして説明する。
【0030】
粒子画像を得る工程(S14)は、光シート28が照射されたトレーサ粒子を撮像手段で撮像して、下記式(1)で得られる周波数f
Aの振動成分を含む複数の粒子画像を得る工程である。
図2に示す粒子画像撮像装置1では、ビデオカメラ40が周波数f
Lで光るトレーサ粒子を撮像し、例えば、ビデオカメラ40内部の記憶装置に複数の粒子画像が記憶される。光源ユニット20の点滅によるストロボ効果で、
図3に示すように、トレーサ粒子が見かけ上少なくとも周波数f
Aで振動することになる。そのため、これらの複数の粒子画像からは、トレーサ粒子が周波数f
Aの振動成分と、音響管30内の気流による移動と、を含む見かけ上の移動について観察が可能である。
【0031】
【0032】
例えば、音響管30内が気流によるトレーサ粒子の移動を無視できるほど気流が小さい場合には、これらの複数の粒子画像でPIVを用いて流速を測定することで音場をあらかじめ設定された複数の観測点における流速ベクトルとして可視化することができる。
【0033】
粒子画像を得る工程(S14)に用いる撮像手段は、フレームレート(fps)が周波数fAの2倍以上である。本例における粒子画像撮像装置1は、上記式(1)によれば周波数fAは1Hz(=121Hz-120Hz)であるので、ビデオカメラ40のフレームレートはその2倍で2(fps)以上となる。従来のPIVによる音場の可視化では121Hzの振動を撮像するのに242(fps)以上のフレームレートを有するカメラが必要であったが、本実施形態によれば、フレームレートが2(fps)以上であればよいので、例えば30(fps)~60(fps)の一般的なビデオカメラ40を用いてPIVにより音場を可視化するための粒子画像を得ることができることになる。
【0034】
また、ビデオカメラ40のフレームレートは、周波数fLよりも低い値とすることが好ましい。ビデオカメラ40のフレームレートが周波数fLよりも低い値であれば、ビデオカメラ40で点滅するトレーサ粒子を撮像することができる。
【0035】
例えば、粒子画像撮像装置1に使うビデオカメラ40が決まっていれば、周波数fAがそのフレームレートの半分以下の値になるように、上記式(1)に基づいて周波数fS及び周波数fLを設定してもよい。
【0036】
1.3.流速分布を得る工程
次に、後述する
図1の粒子速度分布作成法(S20)以外の流速分布を得る工程について説明する。流速分布を得る工程は、
図1の粒子画像撮像方法(S10)によって得られた2時刻の粒子画像を用いて公知のPIVを用いて粒子速度分布を得ることができる。
【0037】
上述のように音響管30内に気流がない状態であれば、2時刻の粒子画像を用いてPIVにより粒子速度分布を得ることが可能であるが、粒子画像撮像方法(S10)で得られる粒子画像は実際に音によって振動する粒子の周波数よりも低い周波数である。そのため、粒子画像撮像方法(S10)で得られる粒子画像は気流の影響を受けやすい。
【0038】
2.粒子速度分布作成方法
図1及び
図4~
図8を用いて、粒子速度分布作成方法(S20)の一態様について説明する。
図4は、粒子画像の一例であり、
図5は、スピーカー12を停止した状態の流速分布を示す図であり、
図6は、位相0(rad)としたときの粒子速度分布を示す図であり、
図7は、位相π/2(rad)としたときの粒子速度分布を示す図であり、
図8は、位相π(rad)としたときの粒子速度分布を示す図である。
図4~
図8の画像は、いずれも画像を右に90度回転させた(Z軸が図の左右に延びる)状態で示し、したがって、各画像の左側に
図2の音響管30におけるスピーカー12が配置され、下側に光源ユニット20が配置される。
【0039】
図4は、光シート28の厚みによる濃淡の他にトレーサ粒子の拡散過程で生じた縞模様が見える。
【0040】
図5は、スピーカー12の出力を停止した状態の流速分布を示す図である。具体的には、流速分布は、粒子画像撮像装置1のスピーカー12の出力を停止した状態で、音響管30内に煙を封入後1時間以上後に撮像された2時刻の粒子画像からPIVにより得た流速分布(瞬時値)である。
図5における矢印が流速ベクトルであり、
図5によれば音響管30内で空気が対流していることがわかる。このように粒子画像が気流の影響を受ける場合には、以下に説明する粒子速度分布作成方法(S20)が好適である。
【0041】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る粒子速度分布作成方法(S20)は、流速分布を得る工程(S22)と、擬似粒子速度分布を得る工程(S24)と、粒子速度分布を得る工程(S26)と、を備える。
【0042】
2.1.流速分布を得る工程
流速分布を得る工程(S22)は、粒子画像撮像方法(S10)において得られた2時刻の粒子画像を用いて粒子画像流速測定法(以下、「PIV」)により流速分布を得る工程である。2時刻はなるべく短い時間間隔であることが望ましいが、従来のような高速度カメラを用いていないので、ビデオカメラ40で撮像された複数の粒子画像における任意のフレームとその一つ前のフレームとを2時刻の粒子画像としてPIVにより流速分布を得ることが好ましい。
【0043】
ここで「流速」は、単に気流による流速だけを意味するものではなく、音による粒子の移動速度を含むものとして説明する。流速分布は、トレーサ粒子が音響管30内部の対流による影響を受けているので、気流による直流成分に加えて音による振動成分が含まれる。また、流速分布における振動成分は、ストロボ効果により振動を見かけ上遅くした擬似
的な振動成分である。後述する擬似粒子速度分布は、流速分布から気流による直流成分を除くことにより、ストロボ効果により振動を見かけ上遅くした擬似的な音による振動成分だけの擬似粒子速度を示す分布となる。
【0044】
PIVは、演算部42に記憶されている公知のPIV解析ソフトウェアを用いることができる。PIVは、画像相関を利用して粒子群の移動距離を定量化するものである。PIVとしては、直接相関法やFFTを用いて相関値を計算することができ、例えば、2つの連続するフレームに露光された粒子画像を解析する相互相関PIVを採用できる。PIV解析ソフトウェアとしては、例えば、Python OpenPIV Library v.0.20.9、ZVECTOR、VisiVector DP2D/3D等を採用することができる。
【0045】
2.2.擬似粒子速度分布を得る工程
擬似粒子速度分布を得る工程(S24)は、流速分布を時間軸上でフーリエ変換して気流による直流成分を除いて、周波数fAの振動成分からなる擬似粒子速度分布を得る工程である。
【0046】
上述の流速分布を得る工程(S22)によって得られる流速分布は、
図5を用いて上述したように気流による直流成分が含まれるので、流速分布における各観測点での流速ベクトルを時間軸上でフーリエ変換することにより気流による直流成分を除くことができる。これにより得られた擬似粒子速度分布は、観測点における周波数f
Aの振動成分からなる擬似粒子速度ベクトルの分布である。フーリエ変換は、演算部42により行うことができる。
【0047】
2.3.粒子速度分布を得る工程
粒子速度分布を得る工程(S26)は、擬似粒子速度分布における擬似粒子速度にfS/fAを乗じることで粒子速度分布を得る。
【0048】
上述の擬似粒子速度分布を得る工程(S24)によって得られる擬似粒子速度分布は、ストロボ効果により実際の粒子速度のfA/fS倍の大きさの見かけ上の速度ベクトルの分布であるため、各擬似粒子速度にfS/fAを乗じることで実際の粒子速度分布を得ることができる。すなわち、本工程では、ストロボ効果で振動が遅くなった分を逆算して実際の粒子速度を得るのである。
【0049】
図6~
図8は、流速分布における各点での1Hz成分(周波数f
A成分)について、画像の中央での管軸方向(Z軸方向)成分の位相をそれぞれ0(rad)、π/2(rad)、π(rad)としたときの分布を平面上に再配置した擬似粒子速度分布を得た後、各点の擬似粒子速度にf
S/f
Aを乗じて得られた粒子速度分布の一例である。
図6~
図8において、図の左側がスピーカー側である。このように、音響管30内で生じている1次モードの、音響管30の中央付近での粒子速度を正しく測定することができる。
【0050】
本発明に係る流速分布作成方法の一態様によれば、従来のような高速度カメラを用いることなくPIVにより音場が可視化された粒子速度分布を得ることができる。カメラの選択の自由度が広がることにより、安価、高感度及び大きな画素数をもったカメラを採用できる。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発
明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0052】
1…粒子画像撮像装置、10…音源ユニット、12…スピーカー、14…増幅器、16…発振器、20…光源ユニット、22…照射装置、24…モーター、26…円板、28…光シート、30…音響管、32…騒音計、40…ビデオカメラ、42…演算部