(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】電極および二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20230518BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
(21)【出願番号】P 2019540998
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2018033064
(87)【国際公開番号】W WO2019049937
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017172057
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 純平
(72)【発明者】
【氏名】三村 和矢
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-037078(JP,A)
【文献】特開2018-063912(JP,A)
【文献】国際公開第2009/151054(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、活物質層と、
金属酸化物からなる第一の粒子を含む第一の層と、
金属酸化物からなる第二の粒子を含む第二の層と、を有する電極を有する二次電池であって、
前記電極において、前記電極表面に対して略平行な面における前記第一の粒子の平均断面積が、前記電極表面に対して略平行な面における前記第二の粒子の平均断面積よりも小さく、
前記二次電池がセパレータを有さないことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記電極が、前記集電体と、前記活物質層と、前記第一の層と、前記第二の層と、をこの順序で有する請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第一の粒子が不定形の無機粒子である請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記
第一の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項
1から3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第二の粒子が板状の無機粒子である請求項1から4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記
第二の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項
1から5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第一の層と、前記第二の層との厚さの比(第一の層/第二の層)が0.25~4である請求項1から6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第一の層における前記第一の粒子の含有量が70質量%以上であり、前記第二の層における前記第二の粒子の含有量が70質量%以上である請求項1から7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
集電体と、活物質層と、
金属酸化物からなる不定形の無機粒子および
金属酸化物からなる板状の無機粒子を含む層と、を有する電極を有し、セパレータを有さないことを特徴とする二次電池。
【請求項10】
前記不定形の無機粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記板状の無機粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項9又は10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記不定形の無機粒子と前記板状の無機粒子との合計100質量%に対して、前記不定形の無機粒子の割合が30から70質量%であり、
前記不定形の無機粒子および前記板状の無機粒子を含む層における前記不定形の無機粒子および前記板状の無機粒子の合計の含有量が70質量%以上である請求項9から11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
集電体と、活物質層と、
金属酸化物からなる第一の粒子を含む第一の層と、
金属酸化物からなる第二の粒子を含む第二の層と、を有する電極であって、
前記第一の粒子が不定形の無機粒子であり、
前記第二の粒子が板状の無機粒子であり、
前記電極表面に対して略平行な面における前記第一の粒子の平均断面積が、前記電極表面に対して略平行な面における前記第二の粒子の平均断面積よりも小さいことを特徴とする電極。
【請求項14】
前記集電体と、前記活物質層と、前記第一の層と、前記第二の層と、をこの順序で有する請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記
第一の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項13又は14に記載の電極。
【請求項16】
前記
第二の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項13から15のいずれか1項に記載の電極。
【請求項17】
前記第一の層と、前記第二の層との厚さの比(第一の層/第二の層)が0.25~4である請求項13から16のいずれか1項に記載の電極。
【請求項18】
前記第一の層における前記第一の粒子の含有量が70質量%以上であり、前記第二の層における前記第二の粒子の含有量が70質量%以上である請求項13から17のいずれか1項に記載の電極。
【請求項19】
集電体と、活物質層と、
金属酸化物からなる第一の粒子および
金属酸化物からなる第二の粒子を含む層と、を有する電極であって、
前記第一の粒子が不定形の無機粒子であり、
前記第二の粒子が板状の無機粒子であり、
前記電極表面に対して略平行な面における前記第一の粒子の平均断面積が、前記電極表面に対して略平行な面における前記第二の粒子の平均断面積よりも小さいことを特徴とする電極。
【請求項20】
前記
第一の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項19に記載の電極。
【請求項21】
前記
第二の粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の
金属酸化物からなる請求項19又は20に記載の電極。
【請求項22】
前記不定形の無機粒子と前記板状の無機粒子との合計100質量%に対して、前記不定形の無機粒子の割合が30から70質量%であり、
前記不定形の無機粒子および前記板状の無機粒子を含む層における前記不定形の無機粒子および前記板状の無機粒子の合計の含有量が70質量%以上である請求項19から21のいずれか1項に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、携帯電話、デジタルカメラ、ラップトップコンピュータなどのポータブル機器の電源、車両や家庭用の電源として広く普及している。なかでも、高エネルギー密度で軽量なリチウムイオン二次電池は、生活に欠かせないエネルギー蓄積デバイスになっている。
【0003】
二次電池は、シート状の正極と負極とがセパレータによって隔離されつつ重ね合わされた電極積層体と、電解液と、前記電極積層体および前記電解液を収容する外装体とを有することができる。正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面または両面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層とを有することができる。負極は、負極集電体と、前記負極集電体の片面または両面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層とを有することができる。
【0004】
セパレータの構成としては、例えば特許文献1には、所定の厚さを有する板状の無機微粒子と、所定の粒径を有する球状の有機微粒子と、バインダ樹脂とを有するセパレータが開示されている。特許文献2には、セラミックス物質とバインダが結合して形成される多孔膜を含むセパレータが開示されている。特許文献3には、微粒子フィラーと樹脂結着剤を含む多孔質電子絶縁層が開示されている。
【0005】
一方、特許文献4には、セパレータ以外に、球状又は実質的に球状の無機粒子と非球状の無機粒子とから構成される無機粒子と、バインダとを含む無機粒子層を表面に有する電極を有する非水電解質電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-64566号公報
【文献】特開2009-164130号公報
【文献】国際公開第2005/078828号
【文献】特開2009-70797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの構成を有する二次電池は、更なる電池性能と安全性の向上が望まれている。一方、良好な電池性能および高い安全性を有し、かつ、セパレータを有さない二次電池を開発できれば、製造コストを低減でき、生産性を向上させることができる。
【0008】
本実施形態は、良好な電池性能と高い安全性を有する二次電池を提供可能な電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る電極は、集電体と、活物質層と、第一の粒子を含む第一の層と、第二の粒子を含む第二の層と、を有する電極であって、前記電極表面に対して略平行な面における前記第一の粒子の平均断面積が、前記電極表面に対して略平行な面における前記第二の粒子の平均断面積よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
本実施形態に係る電極は、集電体と、活物質層と、不定形の無機粒子および板状の無機粒子を含む層と、を有する。
【0011】
本実施形態に係る二次電池は、本実施形態に係る電極を有する。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、良好な電池性能と高い安全性を有する二次電池を提供可能な電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電極の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電極の一例を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る電極の一例を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係る電極を負極として用いた電極積層体の一例を示す断面図である。
【
図5】本実施形態に係る電極を負極として用いた二次電池の一例を示す平面図である。
【
図6】本実施形態に係る電極を負極として用いた二次電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[電極]
<第一の実施形態>
第一の実施形態に係る電極は、集電体と、活物質層と、第一の粒子を含む第一の層と、第二の粒子を含む第二の層と、を有する。ここで、前記電極表面に対して略平行な面における前記第一の粒子の平均断面積(以下、「第一の粒子の平均断面積」とも示す)は、前記電極表面に対して略平行な面における前記第二の粒子の平均断面積(以下、「第二の粒子の平均断面積」とも示す)よりも小さい。なお、「電極表面に対して略平行な面」とは、電極表面に対して±5°の範囲内で平行な面を示す。
【0015】
本実施形態に係る電極では、第一の層に含まれる第一の粒子の平均断面積が、第二の層に含まれる第二の粒子の平均断面積よりも小さい。ところで、充電もしくは放電過程で、Liイオン等のイオンは、主として電極の積層方向に向かって拡散することになる。ここで、上述の通り各粒子の断面積のより小さい第一の層の方が、第二の層に比べて、電極の積層方向から見た場合の粒子の間隙の数が大きくなる。したがって、第一の層におけるイオンの拡散距離は、第二の層におけるイオンの拡散距離よりも短くなる。すなわち、第一の層においてはイオンが通りやすく、抵抗が低下するため、電池性能を向上させることができる。一方、第二の層では、イオンが拡散していき第二の層を通り抜ける際、上述の第二の粒子にぶつかる頻度が高くなるため、拡散距離が長くなる。すなわち、第二の層ではイオンが通り抜ける時間を長くすることができる。これにより、例えば電極間の短絡等が生じた場合にも安全性を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電極は、高い電池性能と高い安全性とを両立させることができる。
【0016】
さらに、前記第一の層および前記第二の層はセパレータの機能を有するため、本実施形態に係る電極を用いて二次電池を製造する場合にはセパレータを別途設ける必要がなく、製造コストを低減でき、生産性を向上させることができる。なお、本実施形態に係る電極は正極でも負極でも構わないが、一般に負極の方が正極よりも面積が大きいため、二次電池を製造する際にセパレータを別途設けない場合には、本実施形態に係る電極を負極として適用することが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る電極の一例を
図1に示す。
図1に示される電極は、集電体1と、活物質層2と、第一の層3と、第二の層4とをこの順序で有する。本実施形態に係る電極は、集電体1、活物質層2、第一の層3および第二の層4以外にも他の層を有していてもよい。また、第一の層3および/または第二の層4が複数積層されていてもよい。例えば、
図2に示されるように、第二の層4の上に、さらに第一の層3が形成されていてもよい。この場合、二つの第一の層3に含まれる第一の粒子の平均断面積が第二の層4に含まれる第二の粒子の平均断面積よりも小さければ、二つの第一の層3は互いに同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。また、活物質層2と第一の層3とは互いに接していることが好ましい。また、第一の層3と第二の層4とは互いに接していることが好ましい。なお、
図1および
図2に示される電極では、集電体1の一方の面に活物質層2、第一の層3および第二の層4が形成されているが、集電体1の両方の面に活物質層2、第一の層3および第二の層4が形成されていてもよい。
【0018】
(集電体)
本実施形態に係る電極が正極である場合、正極集電体の材料としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。また、本実施形態に係る電極が負極である場合、負極集電体の材料としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金を用いることができる。集電体は箔状であることができ、その厚さは特に限定されない。
【0019】
(活物質層)
活物質層は活物質を含むことができる。本実施形態に係る電極が正極である場合、正極活物質としては、例えばLiNiO2、LiNi(1-x)CoxO2、LiNix(CoAl)(1-x)O2、Li2MnO3-LiNiO2、LiNixCoyMn(1-x-y)O2などの層状酸化物系材料、LiMn1.5Ni0.5O4、LiMn(2-x)NixO4などのスピネル系材料、LiNiPO4などのオリビン系材料、Li2NiO4F、Li2NiO4Fなどのフッ化オリビン系材料などが挙げられる。これらの材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0020】
本実施形態に係る電極が負極である場合、負極活物質としては、例えば黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素材料、リチウム金属材料、シリコン、スズなどの合金系材料、Nb2O5、TiO2などの酸化物系材料、またはこれらの複合物を用いることができる。これらの材料は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0021】
本実施形態に係る電極は、前記活物質に加えて、結着剤、導電助剤等を含むことができる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、変性アクリロニトリルゴム粒子などが挙げられる。導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
活物質層は集電体上に形成されていれば、その厚さは特に限定されない。
【0023】
(第一の層、第二の層)
本実施形態に係る電極では、第一の層に含まれる第一の粒子の平均断面積が、第二の層に含まれる第二の粒子の平均断面積よりも小さい。そのため、前述したように、第一の層ではLiイオン等のイオンの拡散距離が短く、第二の層ではイオンの拡散距離が長い。このように、本実施形態に係る電極はイオンが通りやすい第一の層と、イオンが通りにくい第二の層とを両方とも有するため、高い電池性能と高い安全性とを両立させることができる。
【0024】
第一の粒子の平均断面積は、抵抗を低下させる観点から、0.05~1.0μm2が好ましく、0.3~0.4μm2がより好ましい。第二の粒子の平均断面積は、安全性向上の観点から、1~36μm2が好ましく、3~12μm2がより好ましい。第一の粒子の平均断面積は第二の粒子の平均断面積の1/3以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましい。なお、各粒子の平均断面積は、顕微鏡等で観察し、画像処理により自動的に算出することができる。画像処理に用いることができるソフトウェアとしては、具体的には、WinROOF2013(商品名、三谷商事(株)製)が挙げられる。
【0025】
第一の層に含まれる第一の粒子は、第一の粒子の平均断面積が第二の粒子の平均断面積よりも小さければ特に限定されないが、不定形の無機粒子であることが、イオンをより通りやすくして抵抗をより低下させることができる観点から好ましい。ここで、「不定形」とは、球状、柱状、板状またはこれらに類似する既定の形状に分類されない形状であり、例えば樹枝状、珊瑚状、仮想した一つの面と接する角部を三点以上有する立体形状(以下、略テトラポット形状とも示す)などが挙げられる。特に、第一の粒子が略テトラポット形状の無機粒子であることが、抵抗低下の観点から好ましい。略テトラポット形状の無機粒子としては、市販品では、例えばAKP-3000(商品名、住友化学(株)製、α-アルミナ)等が挙げられる。
【0026】
前記不定形の無機粒子の材料としては金属酸化物を用いることができ、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、前記材料としてはα-アルミナが好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0027】
前記不定形の無機粒子の比表面積は、0.5~50m2/gであることが好ましく、1~10m2/gであることがより好ましい。なお、前記比表面積はBET法により測定、算出される値である。前記不定形の無機粒子の中心粒径(D50)は、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~1μmであることがより好ましい。なお、前記中心粒径(D50)は粒度分布測定装置(商品名:MT3300、マイクロトラック・ベル(株)製)により測定される値である。
【0028】
第二の層に含まれる第二の粒子は、第二の粒子の平均断面積が第一の粒子の平均断面積よりも大きければ特に限定されないが、板状の無機粒子であることが、イオンが通る速度をより制限することができ、安全性をより向上させることができる観点から好ましい。
【0029】
前記板状の無機粒子の材料としては金属酸化物を用いることができ、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0030】
前記板状の無機粒子の比表面積は、1~10m2/gであることが好ましく、3~7m2/gであることがより好ましい。なお、前記比表面積はBET法により測定、算出される値である。前記板状の無機粒子の中心粒径(D50)は、1~10μmであることが好ましく、3~7μmであることがより好ましい。なお、前記中心粒径(D50)は粒度分布測定装置(商品名:MT3300、マイクロトラック・ベル(株)製)により測定される値である。板状の無機粒子の厚さは、例えば0.1~2μmであることができる。また、板状の無機粒子のアスペクト比(板状の無機粒子の最大長さ/最小長さ)は、例えば1~3であることができる。
【0031】
第一の層中に含まれる第一の粒子の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、90~99質量%であることがより好ましい。第二の層中に含まれる第二の粒子の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、90~99質量%であることがより好ましい。
【0032】
第一の層および第二の層は、さらにバインダとしての樹脂を含むことができる。前記樹脂としては、例えばPVDFなどが挙げられる。
【0033】
第一の層と第二の層との厚さの比(第一の層/第二の層)は、高い電池性能と高い安全性とをより両立させることができる観点から、0.25~4が好ましく、0.33~1.33がより好ましい。第一の層の厚さは、抵抗低下の観点から1μm以上、10μm以下であることが好ましく、1μm以上、4μm以下であることがより好ましい。また、第二の層の厚さは、安全性向上の観点から1μm以上、10μm以下であることが好ましく、4μmを超えて、10μm以下であることがより好ましい。なお、電極が第一の層および/または第二の層を複数有する場合には、前記厚さの比は複数の層の合計の厚さにおける比を示す。例えば、
図2に示されるように電極が第一の層3を二層有する場合には、前記厚さの比は、(二つの第一の層3の合計の厚さ)/(第二の層4の厚さ)を示す。
【0034】
(電極の製造方法)
本実施形態に係る電極の製造方法は特に限定されない。例えば、活物質、結着剤および導電助剤を溶媒中に分散させたスラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥して固化させることで、集電体上に活物質層を形成する。次に、第一の粒子、樹脂および溶媒を含むスラリーを前記活物質層の表面に塗布し、乾燥して固化させることで、活物質層上に第一の層を形成する。次に、第二の粒子、樹脂および溶媒を含むスラリーを前記第一の層の表面に塗布し、乾燥して固化させることで、第一の層上に第二の層を形成する。前記第二の層上に、同様の方法でさらに第一の層を形成してもよい。その後、集電体上に活物質層、第一の層および第二の層が形成されたシートを適当な厚さとなるように圧縮することで、本実施形態に係る電極を得ることができる。
【0035】
<第二の実施形態>
第二の実施形態に係る電極は、集電体と、活物質層と、不定形の無機粒子および板状の無機粒子を含む層(以下、無機粒子混合層とも示す)と、を有する。
【0036】
本実施形態に係る電極の無機粒子混合層は不定形の無機粒子を含むため、該無機粒子由来の空隙の存在により電極表面においてイオンを含む電解液が通りやすくなり、抵抗が低下する。これにより、電池性能を向上させることができる。また、前記無機粒子混合層は板状の無機粒子を含むため、該無機粒子の存在によりイオンが通る速度が制限されるため、例えば電極間の短絡等が生じた場合にも安全性を高めることができる。したがって、本実施形態に係る電極は、高い電池性能と高い安全性とを両立させることができる。
【0037】
さらに、前記無機粒子混合層はセパレータの機能を有するため、本実施形態に係る電極を用いて二次電池を製造する場合にはセパレータを別途設ける必要がなく、製造コストを低減でき、生産性を向上させることができる。なお、本実施形態に係る電極は正極でも負極でも構わないが、一般に負極の方が正極よりも面積が大きいため、二次電池を製造する際にセパレータを別途設けない場合には、本実施形態に係る電極を負極として適用することが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る電極の一例を
図3に示す。
図3に示される電極は、集電体1と、活物質層2と、無機粒子混合層5とをこの順序で有する。本実施形態に係る電極は、異なる無機粒子混合層5を二層以上有していてもよく、集電体1、活物質層2および無機粒子混合層5以外の他の層を有していてもよい。また、活物質層2と無機粒子混合層5とは互いに接していることが好ましい。
【0039】
(集電体、活物質層)
本実施形態に係る集電体および活物質層は、第一の実施形態における集電体および活物質層と同様であることができる。
【0040】
(無機粒子混合層)
本実施形態に係る無機粒子混合層は、不定形の無機粒子および板状の無機粒子を含む。不定形の無機粒子および板状の無機粒子は、第一の実施形態における不定形の無機粒子および板状の無機粒子と同様のものを用いることができる。無機粒子混合層中における不定形の無機粒子と板状の無機粒子との割合は、不定形の無機粒子と板状の無機粒子との合計100質量%に対し、不定形の無機粒子の割合が30~70質量%であることが好ましく、30~40質量%であることがより好ましい。
【0041】
無機粒子混合層中に含まれる不定形の無機粒子および板状の無機粒子の合計の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、90~99質量%であることがより好ましい。
【0042】
無機粒子混合層は、さらにバインダとしての樹脂を含むことができる。前記樹脂としては、例えばPVDFなどが挙げられる。
【0043】
無機粒子混合層の厚さは、電池性能および安全性向上の観点から、2~20μmであることが好ましく、16~20μmであることがより好ましい。
【0044】
(電極の製造方法)
本実施形態に係る電極の製造方法は特に限定されない。例えば、活物質、結着剤および導電助剤を溶媒中に分散させたスラリーを集電体の表面に塗布し、乾燥して固化させることで、集電体上に活物質層を形成する。次に、不定形の無機粒子、板状の無機粒子、樹脂および溶媒を含むスラリーを前記活物質層の表面に塗布し、乾燥して固化させることで、活物質層上に無機粒子混合層を形成する。その後、集電体上に活物質層および無機粒子混合層が形成されたシートを適当な厚さとなるように圧縮することで、本実施形態に係る電極を得ることができる。
【0045】
[二次電池]
本実施形態に係る二次電池は、前記第一の実施形態および前記第二の実施形態の少なくとも一方に係る電極を有する。本実施形態に係る二次電池は、前記第一の実施形態および前記第二の実施形態の少なくとも一方に係る電極を有するため、高い電池性能および高い安全性を有する。さらに、セパレータを別途設ける必要がないため、低い製造コストで、かつ高い生産性で二次電池を製造することができる。すなわち、本実施形態に係る二次電池はセパレータを有さないことができる。なお、前述したように、前記第一の実施形態および前記第二の実施形態の少なくとも一方に係る電極は、正極に適用しても負極に適用してもよいが、負極に適用することが好ましい。また、本実施形態に係る二次電池は、リチウムイオン二次電池であることができる。
【0046】
前記第一の実施形態に係る電極を負極として用いた電極積層体の一例を
図4に示す。
図4に示される電極積層体は、負極集電体1と、負極活物質層2と、第一の層3と、第二の層4と、第一の層3と、正極活物質層6と、正極集電体7と、をこの順序で有する。負極集電体1、負極活物質層2、第一の層3、第二の層4および第一の層3が、第一の実施形態に係る負極に相当する。また、正極活物質層6および正極集電体7が正極に相当する。前記電極積層体では、前記負極の第一の層3、第二の層4および第一の層3がセパレータの役割を果たすため、前記負極と前記正極との間にセパレータを別途有さない。前記電極積層体は、集電体1、活物質層2、第一の層3、第二の層4、正極活物質層6および正極集電体7以外にも他の層を有していてもよい。
【0047】
前記第一の実施形態に係る電極を負極として用いた二次電池の一例を
図5および
図6に示す。
図6は、
図5に示される二次電池のA-A’における断面図を示す。
図5および
図6に示される二次電池100は、負極集電体1の両面に、負極活物質層2、第一の層3、第二の層4および第一の層3がこの順序で積層された負極と、正極集電体7の両面に正極活物質層6が積層された正極と、が交互に複数積層された電極積層体を備える。なお、
図6では、電極積層体を構成する各層の一部(厚さ方向の中間部に位置する層)を図示省略している。前記電極積層体は、電解液(不図示)と共に、可撓性フィルムからなる外装体10に収納されている。前記電極積層体の負極集電体1には負極端子11の一端が、正極集電体7には正極端子12の一端がそれぞれ接続されており、負極端子11の他端側および正極端子12の他端側は、それぞれ外装体10の外部に引き出されている。
【0048】
電解液としては、リチウム塩を溶解させた有機溶媒を用いることができる。リチウム塩としては、リチウムイミド塩、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ブチロラクトン等のγ-ラクトン類、鎖状エーテル類、環状エーテル類などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
外装体には可撓性フィルムからなるケースや缶ケース等を用いることができる。二次電池の軽量化の観点から、外装体には可撓性フィルムを用いることが好ましい。可撓性フィルムには、基材となる金属層の表面と裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層の材料には、電解液の漏出や外部からの水分の浸入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。金属層の少なくとも一方の面には、変性ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂層を設けることができる。可撓性フィルムの熱融着性樹脂層同士を対向させ、電極積層体を収納する部分の周囲を熱融着することで外装体が形成される。熱融着性樹脂層が形成された面とは反対側の面となる外装体表面には、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルムなどの樹脂層を設けることができる。
【0050】
正極端子には、アルミニウムやアルミニウム合金で構成されたものを用いることができる。負極端子には銅や銅合金またはそれらにニッケルメッキを施したものなどを用いることができる。それぞれの端子の他端部側は、外装体の外部に引き出される。それぞれの端子の、外装体の外周部分の熱溶着される部分に対応する箇所には、熱融着性の樹脂を予め設けることができる。
【0051】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0052】
この出願は、2017年9月7日に出願された日本出願特願2017-172057を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0053】
1 集電体(負極集電体)
2 活物質層(負極活物質層)
3 第一の層
4 第二の層
5 無機粒子混合層
6 正極活物質層
7 正極集電体
10 外装体
11 負極端子
12 正極端子
100 二次電池