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▶ エージーシー グラス ユーロップの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】自動運転車のためのガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/10 20060101AFI20230518BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20230518BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20230518BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20230518BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20230518BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C03C4/10
B32B17/06
B60J1/00 H
C03C3/087
C03C17/36
C03C27/12 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019553235
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018058183
(87)【国際公開番号】W WO2018178284
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】17163903.2
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ランブリット, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】サルトナエ, ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】フラセレ, クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】コリン, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】コリニョン, マクシム
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528968(JP,A)
【文献】国際公開第2016/202606(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/202689(WO,A1)
【文献】特開平8-210042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
C03C27/00-29/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.750~1650nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有し、且つ外部面及び内部面を有する少なくとも1つのガラスシート、
b.赤外線フィルター
を含む自動車グレイジングであって、750~1650nmの波長域、好ましくは750~1000nmの波長域における赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、前記ガラスシートの前記内部面上の赤外線フィルター層のないゾーンに配置される、自動車グレイジング。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガラスシートは、5m-1~10m-1の吸収係数を有することを特徴とする、請求項1に記載のグレイジング。
【請求項3】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、前記グレイジングの前記内部面に光学的に連結されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のグレイジング。
【請求項4】
少なくとも1つの熱可塑性中間層と一緒に積層された外部及び内部ガラスシートを含む積層グレイジングであり、前記外部及び内部ガラスシートは、5m-1~15m-1の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートであり、前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、面4上に配置されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車グレイジング。
【請求項5】
グレイジングの光透過率の値は、グレイジングの近赤外線透過率の値よりも低いことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガラスシートは、可視光を吸収及び/又は反射する少なくとも1つの近赤外線透明コーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
- Cr 0.0001~0.06%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
- Cr 0.0015~1%
- Co 0.0001~1%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.02~1%
- Cr 0.002~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
- 全鉄(Feとして表される) 0.002~1%
- Cr 0.001~0.5%
- Co 0.0001~0.5%
- Se 0.0003~0.5%
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項11】
赤外線フィルター層の系は、それぞれの機能層が誘電体コーティングによって包囲されるように、赤外線放射を反射する材料のn個の機能層(ここで、n≧1である)と、n+1個の誘電体コーティングとを含む多層スタックであることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項12】
前記赤外線フィルター層の系は、銀ベースであることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項13】
前記赤外線フィルター層の系は、脱コーティングゾーンが与えられているコーティングであり、脱コーティングゾーンの上に赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが配置されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項14】
前記赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARをベースとし、且つ車両の周りの周囲環境を3Dマッピングすることを可能にするLIDAR系であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項15】
反射防止コーティングが、前記自動車グレイジングの表面上に与えられていることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のグレイジング。
【請求項16】
ウインドシールドであることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のグレイジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線ベースのリモートセンシングデバイス、特にLiDARセンサーを含むガラスに関する。特に、本発明は、自動運転車に集積化される新世代LiDARセンサーを含むガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、将来的に完全に使用される自動運転車を一層多く使用する傾向がある。例えば、ドライバーレスカ―、セルフドライビングカー、ロボットカーとも呼ばれる未来的な自動運転車は、その環境を感知することが可能であり、且つ人間の入力なしで操縦することが可能な車両である。
【0003】
自動運転車両は、レーダー、LiDAR(光検出及び測距(Light Detection And Ranging)の頭字語)、GPS、走行距離計(Odometry)及びコンピュータビジョンを使用して周囲を検出する。先進的制御システムは、適切な操縦経路並びに障害物及び適切な標識を識別するためにセンサー情報を翻訳する。自動運転車は、道路上の種々の自動車を区別するためにセンサーデータを分析することが可能である制御システムを有し、これは、所望の目的地への経路を計画するために非常に有用である。
【0004】
今日、自動運転車は、自動車金属ボディ全体に沿って飛び出ている「マッシュルーム様」LiDARセンサーを含む。それらの「マッシュルーム」は、例えば、ルーフ上又は自動車外部リアビューミラー上に配置される。美的でないことに加えて、それらは、外観上印象的であり、且つ外部センサーと互換性がない非常に滑らかで曲線的な未来の自動車のデザインを作成するカーデザイナーの予想と一致しない多くのスペースを取る。LiDARセンサーがバンパー又はヘッドライトシステム中に包埋され得るが、これは、ダメージ及び外部気候条件へのより高い暴露などの他の欠点を意味する。
【0005】
集積化されたLiDARを有するウインドシールドも周知である。しかしながら、新世代のLiDARは、光学的特性に関する要求がより厳しく、したがって従来のウインドシールド構造に対して完全に適合しない。特に、非熱伝導ガラス又は被覆ガラス、特に被覆ウインドシールドは、自動車メーカーによって温熱快適性の理由のためにより一層使用されている。
【0006】
ウインドシールド上部の後部でのセンサーの集積が幾何学的距離概算のために良好な位置、路面上でのより良好な視界及び交通状況に関する良好な概観などの他の利点を伴うことも知られている。加えて、この配置はまた、ワイパーによる繰り返しのアパーチャークリーニング、低リスクの石による引掻傷、シームレスな美しさ、及びより一般にセンサーを運転するためのより良好に制御された環境をもたらす。したがって、自動運転車のための「マッシュルーム」などの外観上印象的であり、且つ美的でないLiDARセンサー又はバンパー若しくはヘッドライドシステムなどの他の感度が良い位置で集積されたLiDARの使用に代わるものが必要とされている。
【0007】
本発明によれば、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスLiDARセンサーは、走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARをベースとする新世代LIDARであり、且つ車両の周囲環境を3Dマッピングすることが可能である。したがって、IRベースのセンサーは、車両周囲の正確なマッピングを作成することを可能にし、このマッピングを使用して、正確に自動運転車を運転し、且つ障害物によるいずれの衝撃も防がれる。
【0008】
LiDAR(Lidar、LIDAR又はLADARとも記載される)は、赤外線(IR)レーザー光で標的を照射することによって距離を測定する技術である。それらは、特に走査、回転、フラッシュ又は固体状態LiDARである。LiDARの走査又は回転は、フラッシュ及び固体状態LiDARが対象物に反射する光パルスを放出しながら、移動するレーザービームを使用することである。
【0009】
したがって、Lidarが集積化されたガラスが可能な解決策であると考えられなかったため、従来技術からの解決策では、特にLiDAR新世代に関する必要条件に答えることができない。
【0010】
現在、IR信号が、十分な強度を有して車体又は自動車のウインドシールド又はバックライトなどのガラス部分を通過することを可能にする解決策はない。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、高い検出範囲、最小のデザイン変更及びより高い安全性と組み合わせて、LiDAR新世代センサーが自動運転車内部に集積化され得る解決策を提案する。
【0012】
この解決策は、センサーが適切に作動するために十分なIR透過を示すウインドシールド又は自動車グレイジング上でのLiDARセンサーの集積化によって可能である。
【0013】
簡単のために、以下の記載中のガラスシートのナンバリングは、グレイジングに関して慣習的に使用されるナンバリング命名法を参照する。したがって、車両外部の環境と接触するグレイジングの面は、側面1として知られており、内部媒質、すなわち乗客区画と接触する面は、面2と呼ばれる。積層グレイジングに関して、車両の外部環境と接触するガラスシートは、側面1として知られており、内部、すなわち乗客区画と接触する面は、面4と呼ばれる。
【0014】
疑義の回避のために、「外部」及び「内部」という用語は、車両中でのグレイジングとしての設置中のグレイジングの方向を意味する。
【0015】
同様に疑義の回避のために、本発明は、自動車、列車、飛行機など、またドローンなどの他の車両の全ての輸送手段のために適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明は、
a.750~1650nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有し、且つ外部面及び内部面を有する少なくとも1つのガラスシート、
b.赤外線フィルター
を含む自動車グレイジングに関する。
【0017】
本発明によれば、750~1650nmの波長域で動作する赤外線ベースのリモートセンシングデバイスが、ガラスシートの内部面上の赤外線フィルターのないゾーンに配置される。
【0018】
本発明によれば、ガラスシートは、750~1650nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有する。赤外線域におけるガラスシートの低い吸収を数量化するために、本記載では、吸収係数は、750~1650nmの波長域で使用される。吸収係数は、吸光度と、所与の環境における電磁放射線によって横断された光路長さとの間の比率によって定義される。それは、m-1で表される。したがって、それは、材料の厚さに依存しないが、吸収した放射の波長及び材料の化学的性質の関数である。
【0019】
ガラスの場合、選択された波長λにおける吸収係数(μ)は、材料(thick=厚さ)の透過率(T)及び屈折率nの測定から算出することができる。n、ρ及びTは、選択された波長λの関数である。
式中、ρ=(n-1)/(n+1)である。
【0020】
本発明によるガラスシートは、好ましくは、本発明に関連する光学技術において一般に使用される750~1650nmの波長域において、従来のガラスと比較して非常に低い吸収係数を有する。特に、本発明によるガラスシートは、750~1650nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有する。
【0021】
好ましくは、ガラスシートは、750~1650nmの波長域において5m-1~10m-1の吸収係数を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、ガラスシートは、750~1000nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有する。
【0023】
低い吸収は、最終IR透過が材料の光路によってそれほど影響されないという追加的な利点を提供する。それは、高い開口角を有する大視域(FOV)センサーに関して、特にセンサーがグレイジングに光学的に連結される場合、種々の角度において認知された強度(異なる領域においてイメージである)がより均一であるであろうことを意味する。
【0024】
したがって、自動運転車両が道路建設又は障害など、自動運転作動のために不適切な予想外の運転環境に遭遇するとき、本発明によるグレイジングを通して車両センサーが車両及び予想外の運転環境についてのデータを取り込むことができる。取り込まれたデータは、遠位のオペレーター又は中央インテリジェンスユニットに送信されることが可能である。遠位のオペレーター又はユニットは、車両を運転するか、又は種々の車両システムで実行されるべきコマンドを自動運転車両に出すことができる。遠位のオペレーター/ユニットに送信された取り込まれたデータは、取り込まれたデータの限定的な下位グループを送信することによってなど、バンド幅を浪費しないように最適化することができる。
【0025】
本発明によれば、ガラスシートは、特に750~1650nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有する、種々の部類に属し得るガラスから製造される。したがって、ガラスは、ソーダライム-シリカ型ガラス、アルミノ-シリケート、ボロシリケート等であり得る。
【0026】
好ましくは、高レベルの近赤外線放射透過を有するガラスシートは、エクストラクリアガラス(extra-clear glass)である。
【0027】
好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの重量パーセントで表される以下の全含有量:
SiO 55~85%
Al 0~30%
0~20%
NaO 0~25%
CaO 0~20%
MgO 0~15%
O 0~20%
BaO 0~20%
を含む。
【0028】
より好ましくは、本発明のベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される含有量において:
SiO 55~78%
Al 0~18%
0~18%
NaO 0~20%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0029】
より低い生産コストの理由のため、より好ましくは、本発明による少なくとも1つのガラスシートは、ソーダライムガラスから製造される。有利には、本実施形態によると、ベースガラス組成物は、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
SiO 60~75%
Al 0~6%
0~4%
CaO 0~15%
MgO 0~10%
NaO 5~20%
O 0~10%
BaO 0~5%
を含む。
【0030】
そのベース組成物に加えて、ガラスは、性質及び望ましい効果の量によって適合される他の成分を含み得る。
【0031】
その美しさ又はその色に弱い影響を及ぼすか又は影響を及ぼさない、高い赤外線(IR)において非常に透明なガラスを得るために本発明において提案される解決策は、ガラス組成物において低い鉄の量及び特定の含有量の範囲のクロムを組み合わせることである。
【0032】
したがって、第1の実施形態によれば、ガラスシートは、好ましくは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0001~0.06%
を含む組成を有する。
【0033】
そのような低濃度の鉄及びクロムを組み合わせたガラス組成物は、赤外線反射に関して特に良好な性能を示し、且つ可視において高い透明度を示し、また顕著な色を示さず、「エクストラクリア」と呼ばれるガラスに近い。これらの組成物は、国際出願の国際公開第2014128016A1号パンフレット、国際公開第2014180679A1号パンフレット、国際公開第2015011040A1号パンフレット、国際公開第2015011041A1号パンフレット、国際公開第2015011042A1号パンフレット、国際公開第2015011043A1号パンフレット及び国際公開第2015011044A1号パンフレットに記載されており、これらは、参照により本出願に組み込まれる。この第1の特定の実施形態によれば、組成物は、好ましくは、ガラスの全重量に対して0.002重量%~0.06重量%の(Crとして表される)クロム含有量を含む。そのようなクロムの含有量により、赤外線反射をさらに改善することが可能となる。
【0034】
第2の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全Fe(Feとして表される) 0.002~0.06%
Cr 0.0015~1%
Co 0.0001~1%
を含む組成を有する。
【0035】
そのようなクロム及びコバルトベースのガラス組成物は、美しさ/色(青みがかった中性から強度の着色、さらに不透明まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13198454.4号明細書に記載されている。
【0036】
第3の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.02~1%
Cr 0.002~0.5%
Co 0.0001~0.5%
を含む組成を有する。
【0037】
好ましくは、本実施形態によれば、組成物は、0.06%<全鉄≦1%を含む。
【0038】
クロム及びコバルトをベースとするそのような組成物は、色及び光透過率に関して、市場に出ているブルー及びグリーンガラスに匹敵するが、赤外線反射に関して特に良好な性能を有するブルー-グリーン範囲の着色ガラスシートを得るために使用される。そのような組成物は、参照により本出願に組み込まれる欧州特許出願公開第15172780.7号明細書に記載されている。
【0039】
第4の実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~1%
Cr 0.001~0.5%
Co 0.0001~0.5%
Se 0.0003~0.5%
を含む組成を有する。
【0040】
そのようなクロム、コバルト及びセレンベースのガラス組成物は、美しさ/色(グレー中性からグレー-ブロンズ範囲のわずかな着色強度まで)に関して興味深い可能性を提供しながら、赤外線反射に関して特に良好な性能を示した。そのような組成物は、欧州特許出願公開第15172779.9号明細書に記載されており、これは、参照により本出願に組み込まれる。
【0041】
第1の代替実施形態によれば、ガラスシートは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%
CeO 0.001~1%
を含む組成を有する。
【0042】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第13193345.9号明細書に記載されている。
【0043】
別の代替実施形態によれば、ガラスは、ガラスの全重量パーセントとして表される以下の含有量:
全鉄(Feとして表される) 0.002~0.06%、及び
以下の成分の1種:
- 0.01~1重量%の範囲の量のマンガン(MnOとして算出される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のアンチモン(Sbとして表される);
- 0.01~1重量%の範囲の量のヒ素(Asとして表される)、又は
- 0.0002~0.1重量%の範囲の量の銅(CuOとして表現される)
を含む組成を有する。
【0044】
そのような組成物は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第14167942.3号明細書に記載されている。
【0045】
本発明によれば、自動車グレイジングは、平面シートの形態であり得る。グレイジングは、曲線状であり得る。これは、通常、リアウインドウ、サイドウインドウ若しくはルーフ又は特にウインドシールドのための自動車グレイジングの場合である。
【0046】
自動車用途において、赤外線における高い透過率のガラスシートの存在は、車両が日光に曝露されるときに温熱快適性の維持に貢献しない。本発明の提案される手段は、高い選択性(TL/TE)、好ましくは1より高い又は1.3より高い選択性を有するグレイジングを提供することである。したがって、エネルギー透過率及び温熱快適性を適切な条件下に維持するために、すでに明示された要素を別として、本発明によるグレイジングは、日光放射から選択的に赤外線をフィルターするための手段を含む。
【0047】
代わりに、本発明によるガラスとの組合せにおいて、50、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2又は1%より低いIR透過率を有するフィルタリング層を使用することが有利であり得る。
【0048】
有利には、赤外線フィルターは、それぞれの機能層が誘電体コーティングによって包囲されるように、赤外線放射を反射する材料をベースとするn個の機能層(ここで、n≧1である)と、n+1個の誘電体コーティングとを含む多層スタックを有する反射層である。
【0049】
赤外線反射層の一部分である機能層は、貴金属から有利に形成される。それらは、銀、金、パラジウム、白金又はそれらの混合物若しくは合金をベースとし得、銅又はアルミニウム単独、合金又は1種以上の貴金属との合金もベースとし得る。好ましくは、全ての機能層は、銀をベースとする。非常に高い赤外線放射反射効率を有するものは、貴金属である。それは、マグネトロンデバイス中に容易に導入され、且つそのコストは、特にその有効性に関して高額ではない。有利には、銀は、例えば、1~10質量%の数パーセントのパラジウム、アルミニウム又は銅でドープされるか、又は銀合金として使用され得る。
【0050】
赤外線反射層の一部分である誘電体、透明コーティングは、スパッタリングによって堆積されたフィルムの分野でも周知である。適切な材料は多く、本明細書において全リストを作成することは有用でない。これらは、一般に、酸化物、オキシ窒化物又は金属窒化物である。最も一般的なものの中でも、例えば、SiO、TiO、SnO、ZnO、ZnAlO、Si、AlN、Al、ZrO、Nb、YO、TiZrYO、TiNbo、HfO、MgO、TaO、CrO及びBi並びにその混合物が挙げられる。また、以下の材料:AZO、ZTO、GZO、NiCrO、TXO、ZSO、TZO、TNO、TZSO、TZAO及びTZAYOも挙げることができる。AZOという用語は、好ましくは、中性又はわずかに酸化雰囲気のいずれかで堆積させ、噴霧させる酸化物によって形成されたセラミック標的から得られた、アルミニウム又は亜鉛及びアルミニウムの混合酸化物でドープされた酸化亜鉛に関する。同様に、ZTO又はGZOという表現は、中性又はわずかに酸化雰囲気のいずれかでセラミック標的から得られたチタン及び亜鉛又は亜鉛及びガリウムの混合酸化物にそれぞれ関する。TXOという用語は、酸化チタンセラミック標的から得られた酸化チタンに関する。ZSOという用語は、酸化雰囲気で堆積された合金の金属標的から、又は対応する酸化若しくは中性雰囲気若しくはわずかに酸化のセラミック標的から得られた混合亜鉛-スズ酸化物を意味する。TZO、TNO、TZSO、TZAO又はTZAYOという表現は、中性又はわずかに酸化雰囲気のいずれかでセラミック標的から得られた混合チタンジルコニウム酸化物、チタン-ニオブ、チタン-ジルコニウム-スズ、チタン-ジルコニウム-アルミニウム又はチタン-ジルコニウム-アルミニウム-イットリウムにそれぞれ関する。これらの全ての上記材料は、本発明で使用される誘電体フィルムを形成するために使用することができる。
【0051】
好ましくは、1つ又は複数の機能層と直接接触して1つ又はそれぞれの機能層の下に配置された誘電体コーティングは、アルミニウム若しくはガリウムで任意選択的にドープされた酸化亜鉛又は酸化スズとの合金をベースとする層を含む。酸化亜鉛は、特にそれがコストに関する場合、機能層の安定性及び耐食性に対して特に好ましい効果を有し得る。それは、銀ベースの層の電気伝導率の改善にも貢献し、したがって低放射率が得られる。
【0052】
スタックの種々の層は、例えば、既知のマグネトロンデバイスにおいて減圧マグネトロンスパッタリング下でスパッタリングされる。しかしながら、本発明は、層堆積のこの特定の方法に限定されない。
【0053】
本発明の特定の実施形態によれば、アセンブリのこれらの層は、積層体に挿入されたか、又はガラスシート上に直接適用された特にPETのキャリアシート上に配列され得る。
【0054】
上記に基づく金属層の代替として、赤外線反射層は、それがバンドパスフィルターとして機能するように複数の非金属層を含むことができる(バンドは、領域赤外線電磁スペクトル付近を中心とする)。
【0055】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車グレイジングは、少なくとも1つの熱可塑性中間層によって積層された外部及び内部ガラスシートを含む積層グレイジングであり、且つ外部及び内部ガラスシートは、750~1650nm、好ましくは750~1000nmの波長域において5m-1~15m-1の吸収係数を有する高レベルの近赤外線放射透過ガラスシートである、積層グレイジングである。次いで、赤外放射を反射する層は、好ましくは、車両上に載置され、且つ外部環境と接触する第1のガラスシートの内部面上を意味する面2上に配置される。
【0056】
本発明の別の実施形態によれば、赤外線フィルターは、赤外線を吸収する熱可塑性中間層である。そのような熱可塑性中間層は、例えば、ITOでドープされたPVBである。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、赤外線フィルターは、着色ガラスである。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、ガラスシートは、赤外線透過率の値よりも低い光透過率の値を有する。特に、本発明の別の実施形態によれば、可視域における光透過率の値は、10%未満であり、且つ近赤外線透過率の値は、50%より高い。
【0059】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、良好なレベルの作動性能を保証しながら、外側から非美的要素のセンサーを隠すために、少なくとも1つのIR透過吸収(着色)及び/又は反射コーティングで被覆される。このコーティングは、例えば、可視光域において透過を有さない(又は非常に低い)が、用途のために重要な赤外線域において高い透過性を有する少なくとも1層のブラックインクから構成され得る。そのようなインクは、400~750nm域において<5%及び850~1650nm域において>70%の透過率を達成することが可能である、例えば、株式会社セイコーアドバンス又は帝国インキ製造株式会社によって製造される市販品のような有機化合物から製造可能である。コーティングは、単一の自動車グレイジング要素に関して面1若しくは/及び面2上に、又は積層自動車用グレイジングに関して面1若しくは/及び面4上にその耐久性次第で提供され得る。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、ガラスシートは、高いIR透過率を維持しながら、選択的に可視域を反射するように最適化された多層コーティングで被覆され得る。したがって、Kromatix(登録商標)製品において観察されるものなどのいくつかの特性が求められる。そのような層が適切なガラス組成物に堆積される場合、これらの特性は、完全系の全体の低IR吸光度を保証する。コーティングは、単一の自動車グレイジング要素に関して面1若しくは/及び面2上に、又は積層自動車グレイジングに関して面1若しくは/及び面4上にその耐久性次第で提供され得る。
【0061】
本発明によれば、LiDAR機器は、少なくとも1つのレーザー発信器と、光捕収剤(望遠鏡又は他の光学素子)を含む少なくとも受信器と、光を電気信号及び求める情報を抽出する電子プロセス鎖信号に変換する少なくとも光検出器とから構成される光電子システムである。
【0062】
LiDARは、赤外線フィルター層がないゾーンにおける1つのガラスシートグレイジングの場合、ガラスシートの内部面(すなわち面2)上に配置される。
【0063】
好ましくは、LiDARは、グレイジングの上部に配置され、より好ましくは反射鏡ホルダーに閉鎖される。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、自動車グレイジングは、IRフィルタリング手段が存在しないガラスシートのゾーンにおいて、LiDARが内部ガラスシートの内部面、すなわち面4に配置される積層グレイジングである。
【0065】
本発明の好ましい実施形態によれば、自動車グレイジングは、ウインドシールドである。したがって、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスは、赤外線反射層がないゾーンにおいてウインドシールドの面4上に配置される。実際に、赤外線反射コーティングの場合、コーティングがないゾーンは、例えば、この機能を保証するために、面4(又は1つのガラスシートグレイジングの場合には面2)上で、コーティングがないこの領域においてLiDARが配置される様式で脱コーティング又はマスキングによって提供される。コーティングがない領域は、一般に、赤外線ベースのリモートセンシングデバイスの形状及び寸法を有する。赤外線吸収フィルムの場合、この機能を保証するために、フィルムなしでこの領域に配置されているLiDARの寸法でフィルムを切断する。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、自動車グレイジングは、超薄グレイジングである。
【0067】
有利には、IRベースのリモートセンシングデバイスは、グレイジングの内部面に光学的に連結される。例えば、ガラス及びLiDARの外部レンズの屈折率に適合する軟質材料が使用され得る。
【0068】
本発明の別の有利な実施形態によれば、ガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層でコーティングされる。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する多孔性シリカをベースとする層であり得るか、又はいくつかの層(スタック)、特に低屈折率及び高屈折率を有し、且つ低屈折率を有する層を末端とする誘電体材料交代性層の層のスタックから構成され得る。そのようなコーティングは、単一のグレイジングに関して面1若しくは/及び2上に、又は積層グレイジングに関して面1若しくは/及び4上に提供され得る。テクスチャガラスシートも使用され得る。反射を回避するために、エッチング又はコーティング技術も使用され得る。