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特許7281449個人向けのガイドや、コンテンツ及びサービスや、ターゲットを絞った広告を、意図的なユーザ登録なしで提供するためのユーザ認識方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】個人向けのガイドや、コンテンツ及びサービスや、ターゲットを絞った広告を、意図的なユーザ登録なしで提供するためのユーザ認識方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/4415 20110101AFI20230518BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H04N21/4415
G06F3/01 510
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020512394
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 SG2018050432
(87)【国際公開番号】W WO2019045644
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】PCT/SG2017/050426
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】515166749
【氏名又は名称】ホーム コントロール シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,クォック フン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,キョウ ザヤル
(72)【発明者】
【氏名】テイ,チン ガン
(72)【発明者】
【氏名】チー,チェン ウィー
【審査官】富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/070646(WO,A1)
【文献】特開2000-163572(JP,A)
【文献】特表2009-510645(JP,A)
【文献】特開2010-087596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0028872(US,A1)
【文献】特開2011-077965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体センサのセットを使用して、ユーザの生体情報を取り込む処理と、
ユーザの生体情報をユーザの生体的なデータセットに変換する処理と、
前記生体的なデータセットが既存の一時的な仮ID(identity)のいずれかと一致するか否かを判断する処理と、
前記生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれとも一致しない場合に、前記生体的なデータセットに関連付けるユーザの一時的な仮IDを生成する処理と、
前記一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たしているか否かを判断する処理と、
前記一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たす場合に、ユーザの一時的な仮IDをユーザの仮IDに変換する処理と、を含み、
前記一時的な仮IDに関連付けられた生体的なデータセットの数が所定の値を超える場合、前記仮ID基準のセットが満たされるユーザ認識方法。
【請求項2】
請求項1において、前記生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれかと一致するか否かを判断する処理は、
前記生体的なデータセットが、既存の一時的な仮IDのいずれかに関連付けられた生体的なデータセットと一致するか否かを判断する処理を含んでいるユーザ認識方法。
【請求項3】
請求項1において、前記生体的なデータセットが少なくとも一の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、該生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致するか、複数の既存の一時的な仮IDと一致するか、を判断する処理を、さらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項4】
請求項3において、前記生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、該生体的なデータセットと、一致する既存の一時的な仮IDと、の間のオーバーラップ率を計算する処理と、
該オーバーラップ率がオーバーラップ基準を満たしているか否かを判断する処理と、
該オーバーラップ率が前記オーバーラップ基準を満たしている場合、前記一致する既存の一時的な仮IDに前記生体的なデータセットを関連付ける処理と、をさらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項5】
請求項4において、前記オーバーラップ率が数値範囲内にある場合に、前記オーバーラップ基準が満たされるユーザ認識方法。
【請求項6】
請求項3において、前記生体的なデータセットが複数の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、前記複数の既存の一時的な仮IDを組み合わせることで、一時的な仮IDの組合せを形成する処理と、
該一時的な仮IDの組合せに前記生体的なデータセットを関連付ける処理と、をさらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項7】
請求項において、前記一時的な仮IDを前記仮IDに変換する前に、前記一時的な仮IDに関連付けられた生体的なデータセットを集約する処理を、さらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項8】
請求項1において、ユーザの前記仮IDにユーザプロファイルを関連付ける処理を、さらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項9】
請求項において、前記ユーザプロファイルは、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動のうちの少なくとも1つに基づいて生成され、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動は、ユーザの生体情報の取込の前または後の閾値時間内に取得されるユーザ認識方法。
【請求項10】
請求項において、前記生体センサのセットを利用して、第2のユーザの第2の生体情報を取り込む処理と、
前記第2のユーザの前記第2の生体情報を第2の生体的なデータセットに変換する処理と、
該第2の生体的なデータセットが特定の仮IDと一致することを判断する処理と、
該特定の仮IDに関連付けられたユーザプロファイルに基づいて、個人向けのサービスを前記第2のユーザに提供する処理と、をさらに含んでいるユーザ認識方法。
【請求項11】
ユーザの生体情報を取り込むように構成された生体センサのセットと、
少なくとも一のプロセッサと、を含み、
該少なくとも一のプロセッサは、
ユーザの生体情報をユーザの生体的なデータセットに変換し、
該生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれかと一致するか否かを判断し、
該生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれとも一致しない場合に、前記生体的なデータセットに関連付けるユーザの一時的な仮IDを生成し、
該一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たすか否かを判断し、
該一時的な仮IDが前記仮ID基準のセットを満たしている場合に、ユーザの一時的な仮IDをユーザの仮IDに変換するように構成され
前記一時的な仮IDに関連付けられた生体的なデータセットの数が所定の値を超える場合、前記仮ID基準のセットが満たされるユーザ認識装置。
【請求項12】
請求項11において、前記生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれかと一致するか否かを判断するために、前記少なくとも一のプロセッサは、
前記生体的なデータセットが、既存の一時的な仮IDのいずれかに関連付けられた生体的なデータセットと一致するか否かを判断するように構成されているユーザ認識装置。
【請求項13】
請求項11において、前記少なくとも一のプロセッサは、さらに、
前記生体的なデータセットが少なくとも一の既存の一時的な仮IDと一致する場合、前記生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致するか、複数の既存の一時的な仮IDと一致するか、を判断するように構成されているユーザ認識装置。
【請求項14】
請求項13において、前記少なくとも一のプロセッサは、さらに、
前記生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、前記生体的なデータセットと、一致する既存の一時的な仮IDと、の間のオーバーラップ率を計算し、
前記オーバーラップ率がオーバーラップ基準を満たすか否かを判断し、
前記オーバーラップ率が前記オーバーラップ基準を満たしている場合、前記一致する既存の一時的な仮IDに前記生体的なデータセットを関連付けるように構成されているユーザ認識装置。
【請求項15】
請求項13において、前記少なくとも一のプロセッサは、さらに、
前記生体的なデータセットが前記複数の既存の一時的な仮IDと一致する場合、複数の既存の一時的な仮IDを組み合わせて一時的な仮IDの組合せを形成し、
前記一時的な仮IDの組合せに前記生体的なデータセットを関連付けるように構成されているユーザ認識装置。
【請求項16】
請求項11において、前記少なくとものプロセッサは、さらに、
ユーザの前記仮IDにユーザプロファイルを関連付けるように構成されているユーザ認識装置。
【請求項17】
請求項16において、前記ユーザプロファイルは、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動のうちの少なくとも1つに基づいて生成され、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動は、ユーザの生体情報の取込の前または後の閾値時間内に取得されるユーザ認識装置。
【請求項18】
請求項16において、前記生体センサのセットは、さらに、前記生体センサのセットを利用して第2のユーザの第2の生体情報を取り込むように構成され、
前記少なくとものプロセッサは、さらに、
前記第2のユーザの前記第2の生体情報を第2の生体的なデータセットに変換し、
前記第2の生体的なデータセットが特定の仮IDと一致することを判断し、
前記特定の仮IDに関連付けられたユーザプロファイルに基づいて、個人向けのサービスを前記第2のユーザに提供するように構成されているユーザ認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2017年8月29日出願の「SUBTLE USER RECOGNITION」と題した国際特許出願番号PCT/SG2017/050426の優先権を主張しており、この国際特許出願の全部が参照されて本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示の様々な態様は、一般に、人間とコンピュータとの相互作用に関し、より具体的には、意図的なユーザ登録なしのユーザ認識に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ワールドワイドウェブおよびメディア装置(例えば、パーソナルコンピューティング装置、メディアストリーミング装置、オーバーザトップ(OTT)ボックス、ケーブルセットトップボックス(STB)、衛星テレビ受信機、スマートテレビ、デジタルビデオレコーダ、ゲームコンソール)で利用可能なコンテンツがますます増えており、インフォテインメントコンテンツの量は、興味のあるアイテムを見つけようとする視聴者を容易に圧倒する。従来、テレビ(TV)のガイドや検索機能などのツールは、チャンネルを1つずつ番号の昇順で一覧表示する。換言すれば、チャンネルとTVコンテンツは、個々のユーザに関係なく標準的な方法で編成されている。また、特定の視聴者グループを対象とし、彼らを惹き付けるコンテンツ編成も珍しくない。例えば、ニュースに特化したチャンネルや、スポーツだけに特化したチャンネルなどである。チャンネルやTV番組の数が増え続けるにつれ、視聴者は興味があるコンテンツを見つけるためにTVガイドを閲覧する時間が増える。そこで、視聴者の個々の興味に適合するようにコンテンツの配信と提示をカスタマイズする方法が求められている。
【0004】
国勢調査統計や投票や世論調査など、サービスプロバイダによって展開される広範な特徴付けおよび分類技術は、広く定義された地理的領域において多数の世帯をひとまとめにする傾向がある。
【0005】
サービスプロバイダの顧客(またはユーザ)は、サービスプロバイダを呼び出してアカウントを確立することで、特定のチャンネルセットへのアクセスを提供する様々なパッケージを利用できるようになる。アカウントを設定する際、顧客は、名前、性別、生年月日、婚姻状況、自宅の住所、クレジットカード番号、請求情報、および雇用情報を提供する。サービスプロバイダは、この情報を顧客の識別データとして使用し、その後、名前や住所などの情報の一部を使用して世帯識別子を生成し、広告や分析レポートなどの商用目的でデータサービスプロバイダおよび/または第三者のプロバイダに送信する。サービスプロバイダは、カスタマイズされた番組ガイドを提供するため、STBやOTTボックスなど、世帯識別子に対応するメディア装置からの視聴履歴、検索履歴、購入履歴などを分析する。しかしながら、サービスプロバイダは、視聴者/世帯の個々のメンバーを識別できないため、個人に特化したガイド&プログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、コンテンツ推奨、など、個人向けのサービスを提供することができない。
【0006】
パーソナライズ技術は、特定のタイプのインフォテインメントに対するユーザのニーズを「理解」するために開発が進められている。推奨サービスの提供のためにはユーザに関する情報が必要である。
【0007】
ユーザは、様々な方法でメディア装置をカスタマイズする。ユーザは、TV番組を録画して保存し、自分だけの音楽プレイリスト、独自のチャンネル/コンテンツラインナップ、その他の設定、または個人向けの視聴ガイドを生成する。多くの場合、ユーザプロファイルのセットアップ中でのパスワードまたはパスコードの入力や、その後、ユーザの個人設定にアクセスするためのユーザ認証または識別のためのパスワードまたはパスコードの再入力が必要となる。通常、例えばTVのリモコンのキー押しやタブレットまたはパソコンのキーボード入力などの手動入力によりこれらを行うことができる。手動入力には、メニューに移動してパスワードまたはパスコードを入力するための複数のステップが含まれる。これにより、ユーザの使用感が妨げられる。さらに、ユーザは、しばしばパスワードまたはパスコードを忘れてしまう。
【0008】
パスワードまたはパスコードに加えて、身体的特性のうち選択された特徴をデジタル的に計測し、照合データベースにファイルされた各個人のものと比較することで、個人のIDを検証する生体認証を利用する手法も一般的である。特定のユーザに関連付けられる生体情報には、網膜スキャン、音声署名、顔署名、指紋スキャンなどがある。
【0009】
ユーザには、世帯の家族メンバー毎に異なるプロファイルを生成し管理するための管理者権限が与えられる。新しいユーザのユーザ識別情報は、顔の特徴に基づく生体情報を利用して設定可能である。管理者は、ユーザプロファイル設定の一環として、Randallの顔の特徴に関する情報を入力するための入力デバイスの前に、新しいユーザであるRandallを立たせると良い。この意図的な手順は、承認(enrolment)あるいは登録と呼ばれる手順である。
【0010】
生体認証を使用する他の方法は、指紋スキャナを使用して、STBが起動されたときにユーザの識別情報を識別する方法である。STBは、(新たな)ユーザに対し、指紋をスキャンできるようにリモコンに設けられた指紋スキャナに指を置くこと、名前、年齢、性別などの個人情報および視聴権限設定を入力すること、を要求する。STBは、個人情報、視聴権限および個人識別子を含む識別情報を、指紋スキャンデータと共に記憶ユニットに記憶させ、(新たな)ユーザの指紋を登録/承認(enroll)する。これにより、サービスプロバイダのサーバは、識別情報が関連付けられたユーザに対し、個人向けのプログラムガイドを送信できるようになる。
【0011】
上述の方法では、システムを使用する前、あるいはシステムがユーザの認識に失敗したとき、基本的には登録によってユーザが意図的に自身を「登録」する必要がある。このような「押売り(hard-selling)」的な手法は、その手順を行うことによって得られる恩恵が理解されない限り、全てのユーザに適しているとは言えない。また、指紋/顔の特徴の取込みレベルが十分でなくシステムが登録を失敗すれば、ユーザが何度も登録を繰り返さなければならず、ユーザがフラストレーションを感じるおそれがある。全てではないほぼ全てのシステムでは、ユーザが次のアクションに移行できるようになる前に、成功するまで登録/承認(enrolment)を継続することをユーザに要求する。
【0012】
それ故、ユーザがコンテンツやサービスにアクセスしているときにユーザの視聴習慣や視聴行動を学習し、視聴履歴、検索履歴、購入履歴、好みのチャンネルなど、ユーザが興味を持っているプログラムの種類を知ることにより、承認(enrolment)や登録の意図的なステップを経ることなく、ユーザを識別する自然で巧妙な方法が望ましく、また、プログラムガイドを個人に特化し、ターゲットを絞った広告や推奨コンテンツやユーザが好むサービスを送信するサービスプロバイダのサーバを備えることが望ましい。
【0013】
一部のユーザは、自身の生体情報の承認(enrolment)あるいは登録を煩わしく感じたり、登録中に識別情報(例えば、名前および年齢)を提供することに慎重であったりする。残念ながら、従来のシステムでは、ユーザが自分の個人情報を送信することに同意する必要があり、同意しなければ、個人向けの広告や個人向けのプログラムガイドなどのサービスを受けることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以下、このような態様の基本的な理解を提供するために、1または複数の態様の簡略化された概要を説明する。この概要は、考えられる全ての態様の包括的な概要ではなく、また、全ての態様の主要または重要な要素を特定したり、一部または全ての態様の範囲を記述したりすることを意図するものではない。その唯一の目的は、後述のより詳細な説明の前置きとして、1または複数の態様のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することにある。
【0015】
本開示は、リモコン機器と一体化されるか、メディア装置に接続されたセンサを活用し、メディア装置によるコンテンツサービスをユーザが利用しているときにユーザの仮ID(identity)を生成し、これにより、生体的な特徴をユーザに登録または承認(enroll)させることなく世帯の中で異なるユーザを認識する方法および装置を説明するものである。仮IDが生成された場合、同じユーザをより適切に識別できるよう、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、およびコンテンツに関するユーザの視聴行動が、複数の仮IDに関連付けられる。それ以降の利用では、個人向けのガイド&プログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、または推奨コンテンツなどの個人向けのサービスが、サービスプロバイダによって巧妙かつ自然な方法でユーザに提供される。ユーザに関連付けられた仮IDが送信された場合、ユーザが個人識別情報を提供する必要がなくなり、それ故、個人に対して身体的、経済的、感情的な危害を及ぼす能力を、悪意のある当事者が備え得るおそれを抑制できる。
【0016】
本開示の一態様では、ユーザ認識のための方法、コンピュータ可読媒体、及び装置を提示する。装置は、生体センサのセットを使用し、ユーザの生体情報を取り込む。装置は、ユーザの生体情報をユーザの生体的なデータセットに変換する。装置は、生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれかと一致するか否かを判断する。装置は、生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれとも一致しない場合に、生体的なデータセットに関連付けられるユーザの一時的な仮IDを生成する。装置は、一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たすか否かを判断する。装置は、一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たす場合に、ユーザの一時的な仮IDをユーザの仮IDに変換する。
【0017】
前述及び関連する目的を達成するために、1または複数の態様は、以下で十分に説明され、特に特許請求の範囲で示される特徴を含んでいる。以下の説明および添付の図面は、1または複数の態様の特定の例示的な特徴を詳細に説明している。しかしながら、これらの特徴は、様々な態様の原理が採用され得る様々な方法のうちのいくつかを示しているに過ぎず、この説明は、そのような全ての態様及びそれらと等価なものを含むことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1A、1B、1Cは、指紋の登録の例を示している。
【0019】
図2図2は、図1A図1Cに関して、指紋の登録の例を説明するフローチャートである。
【0020】
図3図3は、ユーザがメディア装置によるコンテンツおよびサービスを利用しているときに、登録プロセスなしでユーザを識別し、ユーザの仮IDを生成する方法のフローチャートである。
【0021】
図4図4A~4Cは、新たに利用可能な生体的なデータセットが一の一時的な仮IDと一致する場合の操作の例を示す。
【0022】
図5図5は、新たに利用可能なデータセットが複数の一時的な仮IDと一致する場合の動作の例を示している。
【0023】
図6図6は、承認(enrolment)プロセスなしで、個人向けのコンテンツおよびサービスを提供するユーザを識別するための例示的なシステムを示す図である。
【0024】
図7図7は、ユーザインターフェースダッシュボードの一例を示す図である。
【0025】
図8図8は、映画ジャンルのリストがユーザインターフェースダッシュボードに提示され、「コメディ」映画ジャンルが選択されている様子を示す図である。
【0026】
図9図9は、ユーザが承認(enrolment)プロセスを実行することなく、サービスプロバイダがカスタマイズされたコンテンツを提供できるように仮IDが生成されたことを示すために、ユーザインターフェースダッシュボード上に通知が表示されたことを示している。
【0027】
図10図10は、仮ID「ユーザ1」が割り当てられているユーザのカスタマイズされた設定を示すユーザインターフェースダッシュボードを示している。
図11図11は、仮ID「ユーザ1」が割り当てられているユーザのカスタマイズされた設定を示すユーザインターフェースダッシュボードを示している。
【0028】
図12図12は、サービスプロバイダが個人向けのガイドやプログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、または推奨コンテンツなど、より良い個人向けのサービスをユーザに提供できるよう、ニューラルネットワークサービスがデータを収集して複数の仮IDを同じユーザにさらに関連付ける様子を示す表を示している。
【0029】
図13図13は、例示した装置における異なる手段/構成部間のデータフローを示すデータフローの概念図である。
【0030】
図14図14は、処理システムを採用する装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図され、本明細書で説明される概念が実施され得る唯一の構成を表すことを意図しない。詳細な説明には、様々な概念を完全に理解可能とするための具体的な詳細が含まれる。しかし、これら具体的な詳細によらず上記の概念を実施し得ることは、当業者にとって明らかである。実施例では、そのような概念が不明瞭にならないよう、周知の構造と構成部とをブロック図の形式により示している。
【0032】
次に、ユーザ認識のいくつかの態様について、様々な装置および方法を参照して示す。これらの装置および方法は、以下の詳細な説明の通り、様々なブロック、構成部、回路、プロセス、アルゴリズムなど(「要素」と総称する)によって添付する図面に示される。これらの要素は、電子的なハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせを利用して実現され得る。これらの要素がハードウェアとして実現されるか、ソフトウェアとして実現されるかは、特有のアプリケーションやシステム全体に課される設計上の制約に依存する。
【0033】
例として、要素または要素の一部またはいずれかの要素の組み合わせは、1または複数のプロセッサを含む「処理システム」として実現され得る。プロセッサの例には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックスプロセッシングユニット(GPUs)、中央処理装置(CPUs)、アプリケーションプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSPs)、縮小命令セットコンピューティング(RISC)プロセッサ、システムオンチップ(SoC)、ベースバンドプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、プログラマブルロジックデバイス(PLDs)、ステートマシン、ゲートロジック、ディスクリートハードウェア回路、および本出願全体で説明される様々な機能を実行するように構成された他の適切なハードウェア、が含まれる。処理システムの1または複数のプロセッサは、ソフトウェアを実行可能である。ソフトウェアは、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェア構成部、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、プロシージャ、関数等を意味するように広く解釈され、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語など、と呼ばれる。
【0034】
したがって、1または複数の例示的な実施形態では、記載された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組合せで実現され得る。ソフトウェアで実現される場合、機能は、コンピュータ可読媒体において、1または複数の命令またはコードとして記憶またはエンコードされ得る。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ記憶媒体が含まれる。記憶媒体としては、コンピュータがアクセス可能なあらゆる媒体を利用可能である。限定ではなく例示であれば、そのようなコンピュータ可読媒体には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、他の磁気記憶装置、これらの形式のコンピュータ可読媒体の組み合わせ、またはコンピュータがアクセスできる命令またはデータ構造の形でコンピュータが実行可能なコードを記憶するために利用可能な他のあらゆる媒体、が含まれる。
【0035】
本開示の一態様では、ユーザが自分の生体的な特徴を登録または承認(enroll)させる必要なく、センサ技術を活用して世帯の中で異なるユーザを認識可能である。特定のユーザに関連付けられる生体的な情報には、網膜スキャン、音声署名、顔署名、指紋スキャンなどがある。生体センサの技術には、リモコンに組み込まれた指紋センサ、TVに取り付けられたカメラ、リモコンに埋め込まれたマイクなど、がある。
【0036】
ある実施形態では、ユーザが意図的なステップを実行する必要なくユーザ認識を達成するシステムおよび方法を提供する。生体的な情報は、例えば、リモコンユニットなどの携帯機器の指紋センサを利用して取り込まれる。指紋フレームに基づいて、ユーザの仮IDを決定すると良い。ユーザの仮IDが関連付けられた視聴プロファイルは、ある期間においてユーザが利用したコンテンツに基づいて生成または修正される。
【0037】
ある実施形態では、リモコン機器と一体化されるか、メディア装置に接続されたセンサを活用し、ユーザがメディア装置によるコンテンツおよびサービスを利用しているときにユーザの仮IDを生成することでユーザが識別される。仮IDが生成された場合、同じユーザをより良く識別できるよう、ユーザのコンテンツの好み(例えば、視聴履歴、検索履歴、購入履歴、好みのチャンネル、興味のある番組の種類など)、ユーザの視聴習慣(例えば、時間帯、時間数、解像度の好み、音量レベルなど)、およびコンテンツに関するユーザの視聴行動(例えば、早送りの箇所、巻き戻し、または一時停止の箇所など)が、複数の仮IDに関連付けられる。それ以降の利用では、ユーザが事前に自身の承認(enroll)を得たり登録したりする必要すらなく、個人向けのガイドやプログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、またはコンテンツやサービスの推奨など、個人向けのサービスがサービスプロバイダによって巧妙かつ自然な方法でユーザに提供され得る。ユーザに関連付けられた仮IDが送信された場合、ユーザは個人識別情報を提供する必要がなくなり、それ故、個人に対して身体的、経済的、感情的な危害を及ぼす能力を、悪意の当事者が備え得るおそれを抑制できる。
【0038】
本開示の実施形態は、特に指紋に関する。指紋という用語は、指(親指を含む)の紋様(尾根と谷とによる図形的な表象)を意味する。しかし、この方法は、指紋に限定されず、マニューシャポイントのセットによって表現できる紋様である例えば、指、手のひら、足の指および足の裏の紋様にも適用可能である。ある実施形態のマニューシャは、分岐あるいは終点という固有、かつ、計測可能な物理的な点である。
【0039】
本開示で説明された多くの実施形態は、指紋生体認証に関連するが、ユーザの仮IDを生成し、興味のあるプログラムの種別のようにユーザが好むコンテンツや、ユーザの視聴習慣や、コンテンツに関する視聴行動を関連付け、ユーザが事前に自身の承認(enroll)を得たり登録したりする必要なく巧妙かつ自然な方法で個人向けのサービスを提供する方法および手順は、例えば、顔または虹彩認識センサや、音声署名用のマイクや、ユーザの保持スタイルを区別する接触あるいはグリップセンサ(静電容量、機械、圧力センサなど)や、デバイスの周縁にあって静脈パターンデータを特定する光学センサなど、従来のアプリケーションにおいて承認(enrolment)/登録が必要な他の生体センサにも適用可能である。
【0040】
従来の指紋照合は、登録およびマッチングという2つの別々の処理ステージを含んでいる。指紋照合は、登録によって初期化でき、その間、アニメーション/ハイライトによる画面上での図形的な指紋表示、および一般的には指紋を重複させながら異なる角度での指紋センサへの押し付けを繰り返させる指示など、システムによって指定された順序によって複数の指紋画像が連続して取り込まれる。画面は、ユーザに視覚的な合図を提示するため、スマートフォンやTV画面などの携帯機器あるいはディスプレイ装置などにあると良い。基準指紋テンプレートは、登録の際、全てのマニューシャ表象についてマニューシャの和集合を取ることにより、許容可能なテンプレートとなるように形成される。これにより、登録プロセスは正常に終了する。ユーザは、必要に応じて、複数の指または同じ指を複数回登録することで、1または複数の基準指紋テンプレートを生成できる。指紋のマッチングでは、登録後に入力された指紋スキャンの取得、および1または複数の基準指紋テンプレートとの比較、が実行される。
【0041】
図1A、1B、1Cは、指紋の登録例を示す。図1Aのように、ユーザは、指を指紋センサの上に置くように促される。指紋画像が取得された場合、例えばマニューシャ抽出などの特徴抽出が実行される。完全なテンプレートを形成するために抽出された情報の量は、図1Bに示すように、異なる色の線で部分的に完成された指紋画像でアニメーション化され、その進行状況がユーザに示される。ユーザは、システムがテンプレートを完成できるよう、様々な角度または方向で指をセンサに置いたり離したりを繰り返して登録を継続する必要があり、システムがテンプレートを完成できると、図1Cに示すように通知がなされる。その後、このテンプレートは、例えば個人向けのプログラムとガイドなどのカスタマイズされたサービスをシステムが提供するに当たり、ユーザのIDを照合するための指紋スキャンとの比較に利用される。多くのシステムは、例えばタッチセンサまたはスワイプセンサなどの小さなセンサによって生成された一連の画像から指紋テンプレートを再構築しようする。指紋生体認証の分野では、センサのサイズを小さくすることでセンサのコストを削減しており、小さなセンサが一般的である。指紋を組み合わせる多くのマニューシャベースの方法は、少なくとも予め定められた最小幅の指紋を登録してテンプレートを形成できるよう、決定済みのマニューシャの特徴あるいは画像的な重なりを利用する。登録の間、必要なマニューシャの特徴または重なりを含む画像セットを受け取ることができるまで、ユーザは、指を置いたり離したりを繰り返すように指示される。登録の間、登録の全部が完了しない限り、ユーザは次のステージに移動できない。ユーザが登録を途中でやめた場合、指紋情報がデータベースに存在しなくなるため、登録を要するアプリケーション(個人向けのプログラムやガイドの受信など)を利用する際、登録を最初から再開する必要が生じる。
【0042】
図2は、図1A~1Cを参照して指紋の登録例を説明するフローチャートである。ある実施形態では、指紋登録は装置上で実行される。
【0043】
204において、テンプレート記憶領域に指紋が存在していない場合、装置は、ユーザに登録を促す。ある実施形態では、装置は、ユーザに指紋の登録を促すため、図1Aに示されるものと同様のユーザインターフェースを提示する。
【0044】
206において、装置は、指紋センサを介して指紋を取り込む。取込指紋データは、取込記憶領域210によって記憶される。
【0045】
208において、装置は、取込指紋データを取得し、取込記憶領域210の取込済みの指紋に対して指紋データを関連付ける。
【0046】
216において、装置は、指紋に関する十分な情報が取得できたか否かを判断する。十分な情報が得られた場合、装置は218に進む。十分な情報が得られなかった場合は、装置は214に進む。
【0047】
214において、装置は、次の指紋取込を準備する。その後、装置は、206に戻って指紋を取り込む。ある実施形態では、装置は、206~216に亘る処理中に、図1Bに示すものと同様のユーザインターフェースを提示する。
【0048】
218において、装置は、登録された指紋特徴をテンプレート記憶領域230に記憶させる。234において、装置は、登録プロセスが完了したことをユーザに知らせる。ある実施形態では、装置は、図1Cに示すものと同様のユーザインターフェースを提示する。
【0049】
図3は、ユーザがメディア装置によるコンテンツおよびサービスを利用しているときに、登録プロセスなしでユーザを識別してユーザの仮IDを生成する方法のフローチャートである。ある実施形態では、リモコン機器またはスマートデバイスなどの携帯機器に取り付けられた指紋センサをセンサ技術として利用する。一実施形態では、スマートフォンをリモコン機器として利用する。スマートフォンは、指紋データを取り込むための指紋センサを備えていると良い。別の実施形態では、コンソールまたは携帯機器に取り付けられた顔または虹彩認識センサをセンサ技術として利用する。さらに別の実施形態では、携帯機器に埋め込まれた音声署名用のマイクをセンサ技術として利用する。ある実施形態では、方法の処理は、装置(例えば、それぞれ図13および14を参照して以下で説明する装置1302または1302’)によって実行され得る。
【0050】
コスト削減は別として、センサが小さいほど、ラップトップコンピュータ、スマートデバイス、リモコン、またはドアロック、南京錠、あるいはthumb driveなどの記憶媒体等、セキュリティで保護された機器のような一般的なデバイスへの埋込が容易になるので、小型であることは指紋センサにとって望ましい特性である。ある実施形態では、感知領域が6mm×6mmで、有効解像度が120×120ピクセルの静電容量式タッチセンサが、リモコン機器と一体化されている。図3に記載された方法は反復的であり、ユーザがメディア装置によるコンテンツサービスを利用しながらデバイスを使用している限り繰り返し実行される。
【0051】
301において、指紋画像は、指紋センサを介して取り込まれる。302では、入力されてくる指紋画像が電子的に処理され、終点と分岐点とよりなる隆線及びマニューシャポイントのスケルトン画像に、生体的なデータセットとして記憶媒体に記憶されるマニューシャポイントの空間的位置および各マニューシャポイントの基準(reference)が付与さえる。指紋画像からのマニューシャポイント抽出の技術は、該当する技術分野で周知であり、ここでは説明しない。
【0052】
例えば、濡れた指紋や、切り傷が多い指紋や、センサを覆うように指が正しく配置されないことに起因して部分的あるいは全部が空白になっている画像など、理想的ではない皮膚の状態や本質的に低品質の指に起因し、取り込まれた指紋画像のかなりのパーセンテージは品質が不足している。低品質の生体的なデータセットには、有効なマニューシャポイントがほとんど含まれていない場合がある。303において、装置は、生体的なデータセットの品質が良好であるか否かを判断する。生体的なデータセットの品質が良好である場合、装置は304に進む。生体的なデータセットの品質が低い場合、装置は生体的なデータセットを破棄し、301に戻る。
【0053】
304において、良好なデータセットを、取込済みの全てのデータセットと比較する。305において、装置は、データセットが取込済みのデータセットのいずれかと一致するか否かを判断する。データセットが取込済みのデータセットと一致する場合、このデータセットは、取込済みのデータセットに関連付けされたTIDと一致すると判断される。データセットが一のTIDと一致する場合、装置は313に進む。データセットが複数のTIDと一致する場合、装置は311に進む。データセットが既存のTIDのいずれとも一致しない場合、装置は306に進む。
【0054】
初回の処理ループでは、良好なデータセットが1つだけ取り込まれており、それ故、304(後で詳細に説明する)の処理は実行されない。この場合、データセットが良好な品質を有すると判断された後(303)、装置は直接306に進むことができる。
【0055】
306において、装置は、一時的な仮ID(TID)の生成を決定する。307において、装置は、生体的なデータセットを新しいTIDに関連付ける。
【0056】
308において、装置は、TIDに関連付けられたデータセットの数が所定の閾値を超えるか否かを判断する。TIDに関連付けられたデータセットの数が所定の閾値を超える場合、装置は309に進む。TIDに関連付けられたデータセットの数が所定の閾値を超えない場合、装置は301に戻る。
【0057】
ある実施形態では、閾値は、6から20の範囲から選択された値である。閾値は、試験データに基づいて経験的に決定すると良い。例えば、閾値6によれば、センサが一体化された携帯機器を使用しているとき、ユーザのいずれかの指に関連付けされているTIDを、より短い時間で仮ID(PID)に昇格させて割当可能である。低い閾値6を適用することの欠点は、精度の低下にあり、これは、本質的に小さいセンササイズに関係している。20以上の高い閾値によれば、センサが一体化された携帯機器がメディア装置によるコンテンツサービスを利用するための長い使用期間に亘ってデータセットを蓄積するため、ユーザの指を関連付ける際の精度を向上できる。
【0058】
ステップ309において、冗長性または重複を破棄して記憶領域内のデータサイズを削減するために、TIDのデータセットを集約する。未集約のTIDのデータセットは後続の比較で使用できるので、309の処理はオプションである。
【0059】
310において、TIDはPIDに昇格する。一部の実施形態において、第1のPIDはPID1として割り当てられる。後続の処理ループでは、例えばPID2、PID3、PID4など、順次昇格するTIDに昇順で番号が付される。
【0060】
小さいセンサによると、センサ上におけるユーザの指の不適切な配置との組み合わせにより、重複領域のマニューシャの数が少なくなる場合がある。この方法では、2つの指紋が同じ指のものか否かを判別するために指の網羅率(finger coverage)を増やすと良い。以降の処理ループでは、マニューシャポイントの取込と生体的なデータセットへの変換とが上記のように繰り返され、305において決定された1または複数の既存のTIDと一致するデータセットが生成される。
【0061】
図4A~4Cは、新たに利用可能となった生体的なデータセットが一の一時的な仮ID400に一致する場合の処理の例を示す。TID400には、先に指紋から抽出されたマニューシャポイント410を含む生体的なデータセット401が関連付けられている。新たに利用可能となった生体的なデータセット402、403、404は、それぞれ、生体的なデータセット401と一致しており、それ故、図4A、4B、4Cでそれぞれ示すように、TID400と一意に一致する。
【0062】
図3に戻って313では、一の一致が見つかった結果、装置は、一致する生体的なデータセット(例えば、生体的なデータセット401と402)間のオーバーラップ率を決定する。オーバーラップ率は、合計ポイント数に対して、一致している生体的なポイント数のパーセンテージとして計算できる。図4Aでは、生体的なデータセット401と402との間のオーバーラップは60%である(すなわち、5つのうち3つ)。
【0063】
314において、オーバーラップ率が所定の閾値と比較される。ある実施形態では、オーバーラップ率が閾値範囲内にある場合、装置は315に進む。オーバーラップ率が閾値範囲内にない場合、装置は316に進む。
【0064】
閾値範囲は、試験データに基づいて経験的に決定しても良い。一実施形態では、装置は、20%から80%のオーバーラップ率のとき、新たに利用可能となったデータセット(例えば、図4Aの生体的なデータセット402)を、一致するTID(例えば、TID400)に追加する(315)。そして、装置は、上述したように、TID400のデータセットの数が所定の閾値を超えているか否かを判断する(308)。
【0065】
新たに利用可能となったデータセット(例えば、図4Bの生体的なデータセット403)と、一致するデータセット(例えば、生体的なデータセット401)と、の間のオーバーラップ率が20%未満である場合(例えば、図4Bに示されるように7つのうち1つ)、新しく利用可能となったデータセット(例えば、生体的なデータセット403)は、同じ指に由来しており指の網羅率を増加させ得るものである旨の保証の信頼性のレベルが高くないことから、これを破棄し(316)、データサイズを削減すると良い。新しく利用可能となったデータセット(例えば、図4Cの生体的なデータセット404)と、一致するデータセット(例えば、生体的なデータセット401)と、の間のオーバーラップ率が80%を超える場合(例えば、図4Cに示すように4つのうち4つ)、新たに利用可能となったデータセット(例えば、生体的なデータセット404)は、指の網羅率を増加させ得る有用な情報を提供し得ないことから、これを破棄し(316)、データサイズを削減すると良い。これは、ユーザが、同じか非常に近い位置に指を複数回置いたときに発生し得る。
【0066】
図5は、新たに利用可能となったデータセットが、複数の一時的な仮IDと一致する場合の処理の例を示している。一実施形態では、ユーザが指の左側を複数回センサ上に置き、これにより、いくつかのデータセット(例えば、生体的なデータセット505、506)が正常に生成され、TID(例えば、TID501)に関連付けられる。この後、ユーザは同じ指の右寄りの側を複数回センサ上に置く。これにより、同じ指のデータセットである一方、異なるTID(例えばTID502)が生成される。この問題は、新しく利用可能になったデータセットに複数の一致があるか否かを判断することで(図3の305において)、克服できる。ユーザが最終的に、指の左側及び右側の両方の画像が重なるような位置で同じ指を置いた場合、複数の一致が検出され得る。例えば、生体的なデータセット515は、図5の生体的なデータセット506および513とオーバーラップしている。TID501は、2つの生体的なデータセット505および506に関連付けられている一方、TID502は、4つのデータセット507、509、510、および513に関連係付けられている。
【0067】
図3に戻って311では、より多くのデータセット(例えば、図5のTID502)を伴うTIDが選択され得る。312において、装置は、複数の一致しているTID(例えば、TID501および502)のデータセットを、選択したTID(例えば、TID502)に組み合わせると共に、他のTID(例えば、TID501)を削除する。次に、装置は、組合せのTID(例えば、TID502)に関連付けられたデータセットの数が所定の閾値を超えるか否かを判断し(308)、組合せのTIDに関連付けられたデータセットの数が閾値を超えたとき、TIDをPIDに昇格させる(310)。
【0068】
上述のように、本開示では、リモコン機器と一体化されるか、メディア装置に接続されたセンサを活用してユーザを識別し、メディア装置によるコンテンツおよびサービスをユーザが利用している時にユーザの仮ID(PID)を生成する方法および装置について説明している。仮IDが生成された場合、ユーザのコンテンツの好み(例えば、視聴履歴、検索履歴、購入履歴、好みのチャンネル、興味のある番組の種類など)、ユーザの視聴習慣(例えば、時間帯、時間数、解像度の好み、音量レベルなど)、およびコンテンツに関するユーザの視聴行動(例えば、早送りの箇所、巻き戻し、または一時停止の箇所など)は、PIDに関連付けられる。その後の使用では、個人向けのガイドやプログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、またはコンテンツやサービスの推奨などの個人向けのサービスが、ユーザが事前に自身の承認(enroll)を得たり登録したりする必要すらなく巧妙かつ自然な方法で、サービスプロバイダによってユーザに提供され得る。ユーザに関連付けられた仮IDが送信された場合、ユーザは個人識別情報を提供する必要がなくなり、それ故、個人に対して身体的、経済的、感情的な危害を及ぼす能力を、悪意の当事者が備え得るおそれを抑制できる。
【0069】
ある実施形態では、本開示で実行される処理は、個人向けのメディア利用の文脈で説明できる。図6は、承認(enrolment)プロセスなしで、個人向けのコンテンツおよびサービスのユーザを識別するためのシステム600の例を示す図である。同図中の例えばストリーミングメディア装置、セットトップボックスなどのメディア装置601は、コンテンツ提示装置602と動作可能なように接続される。メディア装置601およびコンテンツ提示装置602は、例えばスマートTVなど1つの装置に一体化され得る。リモコン機器603は、無線リモコン、スマートフォン、またはタブレットコンピューティング端末などの携帯機器の形態をとり得る。リモコン機器603は、ユーザ604の生体情報を取り込むための1または複数のセンサを含んでいる。リモコン機器603は、クラウドで利用可能なクラウドサービス605を介してメディア装置601およびコンテンツ提示装置602などの他のシステムとの間で、情報およびデータを通信する。これにより、リモコン機器603は、ユーザを識別するために必要なデータを収集するためにだけ動作でき、自身ではデータの処理能力が不足していても、クラウドサービス605がさらなる処理を実行できる。ニューラルネットワークサービス607(後で詳しく説明する)は、クラウドサービス605を介して実行できる。コンテンツ提示装置602は、メディア装置601を介してサービスプロバイダから提供されたコンテンツを、ユーザ604が操作、閲覧、利用するためのユーザインターフェースダッシュボード606を表示する。コンテンツは、プレミアムチャンネル、放送番組、およびインターネットベースの事柄を含み得る。コンテンツには、例えば、ニュース、スポーツ、天気、ビジネス、ショッピング、交通、株式などが含まれ、健康とフィットネス、ドキュメンタリー、コメディ、SF、アクション/冒険、ホラー、ロマンス、ドラマなど、様々なコンテンツの種類あるいはジャンルが提供される。
【0070】
図7は、ユーザインターフェースダッシュボード700の例を示す図である。ある実施形態では、ユーザインターフェースダッシュボード700は、図6を参照して上述したユーザインターフェースダッシュボード606であっても良い。ユーザインターフェースダッシュボード700は、メニュー701、背景ウィンドウ702、お気に入りコンテンツ703のリスト、および推奨コンテンツ704のリストを含んでいる。メニュー701は、例えば「お気に入り」705、「次を見る」、「TV番組」、「オンデマンド映画」、「設定」など、コンテンツおよびデバイス設定を管理するための選択を含んでいる。ユーザインターフェースダッシュボード700によって提供されるオプションは、リモコン機器(例えば、図6に関連して説明されるリモコン機器603)に設けられるナビゲーションキー(例えば、上/下、左/右矢印キー、「選択」キーなど)を利用して選択できる。
【0071】
一実施形態では、指紋センサは、リモコン機器の「選択」キーと一体化されている。ユーザが「選択」キーと一体化された指紋センサに指を置いて「選択」キーを押したときに指紋画像が取り込まれ、そして生体情報が取り込まれて抽出され、図3のフローチャートを参照して上述したように仮IDが生成される。図3を参照して上述した方法は、リモコン機器(例えば、リモコン機器603)、メディア装置(例えば、メディア装置601)、またはクラウドサービス(例えば、クラウドサービス605)のうちの1または複数で完全に実行される。
【0072】
ある実施形態では、リモコンのナビゲーションキーを利用して選択されたオプションは、ユーザの選択に応じて強調表示される(例えば、お気に入り705)。ユーザに関するID情報が不明な場合は、サービスプロバイダがデフォルトの設定とコンテンツを提供する。このサンプルユーザインターフェースにおける703および704のコンテンツのリストは、アクション/アドベンチャー映画のジャンルのものである(例えば、パイレーツ・オブ・カリビアン、ワンダーウーマン、ジュラシック・パークなど)。デフォルト設定でリストされるコンテンツは、ユーザの多様な好みに応えるために、様々な映画ジャンル(コメディ、ドラマ、ミュージカル、ホラーなど)が混在している。背景ウィンドウ702には、お気に入りのコンテンツ703のリスト中の第1のコンテンツの写真、あるいは初期設定の配色(例えば、青、黒など)によるブランクスクリーンが表示される。サービスプロバイダは、ユーザが背景ウィンドウ702を変更し(例えば、「設定」オプションを選択することによって)、カスタマイズされた配色や、ユーザがメディア装置に読み込ませた写真(例えば、家族の写真、風景写真、またはタスクのリマインダー)の表示、を可能にしている。
【0073】
図8は、ユーザインターフェースダッシュボード710に提示された映画ジャンル712のリストを示す図であり、「コメディ」711の映画ジャンルが選択されている。ある実施形態では、ユーザインターフェースダッシュボード710は、図6で参照して上述したユーザインターフェースダッシュボード606であっても良い。ユーザが「選択」キーを押して選択を確定させると、ユーザインターフェースダッシュボード710は、図9で示すように、より多くの選択肢を表示する。
【0074】
ユーザは、選択された映画の再生を承認するか閲覧を続けるかを選択できると共に、あらすじをプレビューするか予告編を再生するかを選択できる。一定の期間に亘って「選択」キーを押す操作が複数回行われることで、システムは、選択されたTIDを例えばユーザ1のPIDに昇格させるのに十分な信頼性を確保できる。ユーザ1への割当は、サービスプロバイダに通知される。サービスプロバイダは、バックグラウンドで収集された多くの他のデータにPIDを関連付け、データ収集と仮IDの割当の更新を続行するか、カスタマイズされたガイドやコンテンツのユーザへの提供を開始するか、を決定する。ユーザに関連付けされた仮IDがクラウドで送信された場合、ユーザは個人識別情報を提供する必要がなくなり、それ故、個人に対して身体的、経済的、感情的な危害を及ぼす能力を、悪意の当事者が備え得るおそれを抑制できる。
【0075】
図9は、ユーザが承認(enrolment)プロセスを経由しなくても仮IDが生成され、これによりサービスプロバイダによるカスタマイズされたコンテンツの提供が可能になったことを示す通知721が、ユーザインターフェースダッシュボード720上で表示されることを示している。実際のアプリケーションでは、通知721は微妙であり、ユーザに知らされない場合もある。
【0076】
図10および11は、カスタマイズされたユーザ(例えば、ユーザ604)の設定が仮ID「ユーザ1」に割り当てられたことを表すユーザインターフェースダッシュボード730および740を示している。背景ウィンドウ731および741には、ユーザの好みに応じた個人向けの画像または配色が表示される。ユーザは、閲覧中に、「お気に入りに追加」の選択肢732を選択することによって、今すぐあるいは後で視聴する映画を選択できる。選択されたコンテンツは、図7で示すコンテンツ703の初期設定のリストではなく好みのコンテンツ742のリスト中に表示される。サービスプロバイダは、743に示すように、ユーザの視聴習慣と視聴行動から収集されたデータを使用し、好みのコンテンツのジャンルや好みのコンテンツプロバイダなどの推奨コンテンツを提供する。このようにして、ユーザは、自身が興味のないコンテンツを迂回できる。
【0077】
ある実施形態では、本開示に記載されている処理に関して適用される生体センサの技術によっては、同じユーザに対して複数の仮IDが生成される場合がある。リモコン機器と一体化された指紋センサの例の場合、メディア装置によるコンテンツを利用しながら操作する際、ユーザが例えば左親指と右親指など異なる指を使用することで、ある期間に亘って2つの仮IDが生成される可能性がある。リモコン機器に音声署名用のマイクが一体化された他の例では、例えば背後の騒音やユーザが風邪をひいている等、環境や健康などの外部要因に起因する音声署名の変化により、複数の仮IDが生成される可能性がある。
【0078】
図6に戻って、ニューラルネットワークサービス607は、コンテンツ(例えばユーザが興味を持っているプログラムの種類)のデータおよびユーザの視聴習慣と視聴行動のデータを収集してそのデータをユーザ604の仮IDに関連付ける手段を提供するよう、クラウドサービス605により実現できる。
【0079】
図12は、サービスプロバイダが個人向けのガイドおよびプログラム、ユーザが選択した好みのもの、ターゲットを絞った広告、または推奨コンテンツなど、より良い個人向けサービスをユーザに提供するために、ニューラルネットワークサービス607が、どのようにデータを収集し複数の仮IDを同じユーザにさらに関連付けるかを示す表である。ある実施形態では、コンテンツを視聴する際のユーザの視聴習慣(例えば、時間帯、時間数など)、およびコンテンツに関して様々な機能を実行するユーザの視聴行動(例えば、早送りの箇所、巻き戻し、または一時停止の箇所など)がモニターされ、属性752、コンテンツ753の種類として、仮ID751に関連付けられて利用される。仮ID751(例えば、ユーザ1、ユーザ2、ユーザ3等)は、図3を参照して上述した処理により、サービスプロバイダに通知される。ユーザ1が、日曜日の午後8時に1~2時間ほどNetflixでコメディ映画を視聴する習慣を有し、ユーザ3が同様の視聴習慣と映画ジャンルを有すると仮定した場合、ニューラルネットワークサービス607は、高い信頼性と高い確率で、ユーザ1とユーザ3が同じユーザであると推測する。ニューラルネットワークサービス607は、サービスプロバイダが同様の広告およびコンテンツ推奨をユーザ1とユーザ3に向けて提供することを可能にする。
【0080】
説明した多くの実施形態は指紋生体認証に関連しているが、ユーザの仮IDを生成すると共に、ユーザが好むコンテンツやコンテンツサービスに対するユーザの視聴習慣・視聴行動に複数の仮IDを関連付けることで、事前にユーザが自身の承認(enroll)を得たり登録したりする必要なく巧妙かつ自然な方法で個人向けのガイドとコンテンツサービスを提供する方法および手順は、例えば、顔または虹彩認識センサや、音声署名用のマイクや、ユーザの保持スタイルを区別する接触あるいはグリップセンサ(静電容量、機械、圧力センサなど)や、デバイスの周縁にあって静脈パターンデータを特定する光学センサ等、従来のアプリケーションにおいて承認(enrolment)/登録が必要な他の生体センサに適用することも良い。
【0081】
図13は、装置1302の例における異なる手段/構成部間のデータフローを示す概念的なデータフロー図1300である。装置1302は、1または複数のリモコン機器(例えば、リモコン機器603)、メディア装置(例えば、メディア装置601)、またはクラウドサービス(例えば、クラウドサービス605)を含んでいる。装置1302は、生体センサ1350のセットから受け取った生体情報を、生体的なデータセットに変換するように構成された生体情報処理部1304を含んでいる。一実施形態における生体情報処理部1304は、図3の302を参照して上述した処理を実行可能である。ある実施形態では、生体センサ1350のセットは、装置1302の一部であり得る。ある実施形態では、生体センサ1350のセットは、装置1302から分離できる。
【0082】
装置1302は、生体情報処理部1304から受け取った生体的なデータセットに基づいてPIDを生成するように構成されたPID生成部1306を含んでいる。一実施形態では、PID生成部1306は、図3の304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316を参照して上述した処理を実行し得る。
【0083】
装置1302は、PIDに関連付けられるべきユーザプロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部1308を含み得る。装置1302は、ユーザの生体的なデータセットおよび一致するPIDに関連するユーザプロファイルに基づいて、個人向けのサービスを提供するように構成された個人向けサービス構成部1310を含み得る。
【0084】
装置1302は、前述の図3のフローチャートにおけるアルゴリズムのブロックをそれぞれ実行する追加の構成部を含んでいても良い。そして、前述の図3のフローチャートの各ブロックは、構成部によって実行しても良く、装置がそれらの構成部のうちの1または複数を含んでいても良い。これらの構成部は、上記のプロセス/アルゴリズムを実行するように特に構成されたハードウェア的な構成部であっても良く、上記のプロセス/アルゴリズムを実行するように構成されたプロセッサにより実現される構成部であっても良く、プロセッサによって実行可能なようにコンピュータ可読媒体に記録された構成部であっても良く、それらを組み合わせた構成部であっても良い。
【0085】
図14は、処理システム1414を採用する装置1302’のハードウェア構成の例を示す図1400である。装置1302’は、図13を参照して上述した装置1302であっても良い。処理システム1414は、一般的にバス1424によって表されるバスアーキテクチャを利用して実行され得る。バス1424は、処理システム1414の特定の用途および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数の相互接続バスおよびブリッジを含んでいる。バス1424は、プロセッサ1404、構成部1304、1306、1308、1310、生体センサ1430、およびコンピュータ可読媒体/メモリ1406によって表される1または複数のプロセッサおよび/またはハードウェア構成部、を含む様々な回路を相互に接続する。また、バス1424は、タイミングソース、周辺機器、電圧レギュレータ、および電力管理回路など、様々な他の回路を接続するが、それらは該当する技術分野で周知であるのでこれ以上、説明しない。
【0086】
処理システム1414には、トランシーバ1410が組み合わせられている。トランシーバ1410には、1または複数のアンテナ1420が接続されている。トランシーバ1410は、伝送媒体を介して他の様々な装置と通信するための手段を提供する。トランシーバ1410は、1または複数のアンテナ1420から信号を受信し、受信した信号から情報を抽出し、抽出した情報を処理システム1414に提供する。さらに、トランシーバ1410は、処理システム1414から情報を受け取り、受け取った情報に基づいて1または複数のアンテナ1420に作用する信号を生成する。
【0087】
処理システム1414は、コンピュータ可読媒体/メモリ1406を組み合わせたプロセッサ1404を含んでいる。プロセッサ1404は、コンピュータ可読媒体/メモリ1406が記憶するソフトウェアの実行を含む一般的な処理を担当する。ソフトウェアは、プロセッサ1404によって実行され、これにより、上記の特定の装置の機能として上述した各種の機能が処理システム1414によって実現される。また、コンピュータ可読媒体/メモリ1406は、ソフトウェアを実行する際、プロセッサ1404によって取り扱われるデータを記憶するために使用可能である。さらに、処理システム1414は、構成部1304、1306、1308、1308の少なくとも1つを含むと良い。構成部は、コンピュータ可読媒体/メモリ1406に常駐/記憶されると共にプロセッサ1404で実行されるソフトウェア構成部、プロセッサ1404に組み合わせられる1または複数のハードウェア構成部、あるいはそれらの構成部の組み合わせであっても良い。
【0088】
以下、本開示の様々な態様を説明する。
【0089】
実施例1は、ユーザ認識のための方法または装置である。装置は、生体センサのセットを使用して、ユーザの生体情報を取り込む。装置は、ユーザの生体情報をユーザの生体的なデータセットに変換する。この装置は、生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれかと一致するか否かを判断する。生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれとも一致しない場合には、生体的なデータセットに関連付けられるユーザの一時的な仮IDを生成する。この装置は、一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たすか否かを判断する。一時的な仮IDが仮ID基準のセットを満たす場合には、ユーザの一時的な仮IDがユーザの仮IDに変換される。
【0090】
実施例2では、生体的なデータセットが既存の一時的な仮IDのいずれと一致するか否かを判断できるよう、生体的なデータセットが、既存の一時的な仮IDのいずれかに関連付けられた生体的なデータセットと一致するか否かを判断する装置、を実施例1の内容に任意に含めることができる。
【0091】
実施例3では、生体的なデータセットが少なくとも一の既存の一時的な仮IDと一致する場合、生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致するか、複数の既存の一時的な仮IDと一致するか、を更に判断する装置、を実施例1及び2のいずれか一つの内容に任意に含めることができる。
【0092】
実施例4では、さらに、生体的なデータセットが一の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、生体的なデータセットと一致する既存の一時的な仮IDとの間のオーバーラップ率を計算し、このオーバーラップ率がオーバーラップ基準を満たすか否かを判断し、そして、オーバーラップ率がオーバーラップ基準を満たしている場合に、生体的なデータセットを、一致する既存の一時的な仮IDに関連付ける装置、を実施例3の内容に任意に含めることができる。
【0093】
実施例5では、オーバーラップ率が数値範囲内にある場合にオーバーラップ基準が満たされ得ること、を実施例4の内容に任意に含めることができる。
【0094】
実施例6では、さらに、生体的なデータセットが複数の既存の一時的な仮IDと一致する場合に、複数の既存の一時的な仮IDを組み合わせて一時的な仮IDの組合せを形成し、一時的な仮IDの組合せに生体的なデータセットを関連付ける装置、を実施例3~5のいずれか1つの内容に任意に含めることができる。
【0095】
実施例7では、一時的な仮IDに関連付けられた生体的なデータセットの数が所定の値を超える場合に、仮ID基準のセットが満たされること、を実施例1~6のいずれか1つの内容に任意に含めることができる。
【0096】
実施例8では、一時的な仮IDが仮IDに変換される前に、一時的な仮IDに関連付けられた生体的なデータセットをさらに集約する装置、を実施例7の内容に任意に含めることができる。
【0097】
実施例9では、ユーザプロファイルをユーザの仮IDにさらに関連付ける装置、を実施例1~8のいずれか1つの内容に任意に含めることができる。
【0098】
実施例10では、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動のうちの少なくとも1つに基づいてユーザプロファイルが生成され、ユーザのコンテンツの好み、ユーザの視聴習慣、またはコンテンツに関するユーザの視聴行動は、ユーザの生体情報の取込の前または後の閾値時間内に取得されること、を実施例9の内容に任意に含めることができる。
【0099】
実施例11では、さらに、生体センサのセットを使用して第2のユーザの第2の生体情報を取り込み、第2のユーザの第2の生体情報を第2の生体的なデータセットに変換し、第2の生体的なデータセットが特定の仮IDと一致することを判断し、そして特定の仮IDに関連付けられたユーザプロファイルに基づいて、第2のユーザに個人向けのサービスを提供する装置、を実施例9~10のいずれか1つの内容に任意に含めることができる。
【0100】
例示したプロセス/フローチャートにおけるブロックの特定の順序あるいは階層は、アプローチの一例である。設計上の都合に応じて、プロセス/フローチャートのブロックの特定の順序あるいは階層は、再配置が可能である。また、一部のブロックを組み合わせたり省略したりすることも良い。付随する方法クレームは、順序の一例で様々なブロックの要素を示すものであり、具体的な順序あるいは階層に限定されることを意図していない。
【0101】
先の説明は、当業者が本明細書で説明される様々な態様を実施できるようにするために提供されている。これらの態様に対する様々な修正は、当業者には直ちに明らかであり、本明細書で定義される包括的な原理は、他の態様に適用されても良い。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言に整合する全範囲が与えられるべきであり、単数形での要素への言及は、特にそのように述べられていない限り、「1つだけ」を意味することを意図せず、むしろ「1つ以上」を意味する。「例示的」という単語は、本明細書では、「例、事例、または例証としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として説明される任意の態様は、必ずしも、他の態様よりも好ましい或いは有利であると解釈されるべきではない。特に明記しない限り、「いくつか」という用語は1または複数を意味している。「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」は、A、B、および/またはCの任意の組み合わせを含み、複数のA、複数のB、または複数のCを含むことができる。具体的には、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」の組合せは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、またはAとBとCの場合があり、このような組み合わせは、いずれも、A、B、またはCの1つ以上の要素を含むことができる。本出願全体に亘って説明される様々な態様の要素に対し、既に当業者に知られているか或いは後に当業者に知られるようになる構造的および機能的な等価物は、すべて、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本明細書に開示されている事項は、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かに関係なく、公衆に開放することを意図したものではない。「モジュール」、「メカニズム」、「要素」、「装置」などの単語は、「手段」という単語の代わりにはならない場合がある。したがって、「~のための手段」という句を使用して要素が明示的に列挙されていない限り、請求の範囲の要素はミーンズ・プラス・ファンクションとして解釈されるべきではない。
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