(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】抽出装置および抽出方法
(51)【国際特許分類】
B01D 11/02 20060101AFI20230518BHJP
A47J 31/00 20060101ALI20230518BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
B01D11/02 101
A47J31/00 201
A47J31/00 307
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2020525432
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2019021558
(87)【国際公開番号】W WO2019244597
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2018117348
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019059626
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127237
【氏名又は名称】株式会社イズミフードマシナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】杉舩 大亮
(72)【発明者】
【氏名】山下 元気
(72)【発明者】
【氏名】平田 元久
(72)【発明者】
【氏名】平木 剛司
(72)【発明者】
【氏名】安川 宰秀
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-177147(JP,A)
【文献】特開平06-014716(JP,A)
【文献】特開2016-215079(JP,A)
【文献】特開2005-117997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D11/00-12/00
A47J31/00-31/60
A23F3/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出原料を収容する収容室と、
溶媒を上記収容室に流入するための流入口と、
抽出原料から抽出された抽出液を上記収容室から排出するための排出口と、
上記排出口よりも上方に設けられ、上記抽出原料が載置される載置部と、
抽出が開始される前から存在する気体であって、上記溶媒が浸透する載置部上の原料と上記収容室に貯留した抽出液との間の気体を上記収容室外へ排気する排気部と
、
上記排気部を開閉する第1バルブと、
上記排出口に接続され、抽出液を払い出す払出管と、
上記払出管に設けられた管路開閉用の第2バルブと、
上記気体を排出するときは、上
記第2バルブを閉じ、
上記第1バルブを開く
ように制御するコントローラと、
を有することを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
上記第1バルブは、上記コントローラからの操作信号によって開き又は閉じる請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
上記収容室内の抽出液の液位を検出する液位センサをさらに備えた請求項2に記載の抽出装置。
【請求項4】
上記コントローラは、上記液位センサによって検出された上記液位が上記排気部の入口に達した場合に上記第1バルブを閉じるように上記第1バルブを制御す
る請求項3に記載の抽出装置。
【請求項5】
上記コントローラは、上記第1バルブが閉じられた後に、上記第2バルブを開くように上記第2バルブを制御する、請求項4に記載の抽出装置。
【請求項6】
上記収容室内を加圧する加圧装置をさらに備えている、請求項1から5のいずれかに記載の抽出装置。
【請求項7】
上記コントローラは、
抽出が終了した場合に、上記第1バルブを開くように制御する、請求項4または5に記載の抽出装置。
【請求項8】
上記排出口は、上記流入口よりも下方に設けられており、
上記流入口側の圧力を検出する第1検出部と、
上記排出口側で、かつ、上記第2バルブよりも上流側の圧力を検出する第2検出部と、をさらに備えている、請求項1から7のいずれかに記載の抽出装置。
【請求項9】
上記第1バルブは、上記第1検出部で検出された圧力と、上記第2検出部で検出された圧力との圧力差に基づいて、開閉が制御される、請求項8に記載の抽出装置。
【請求項10】
上記排気部を洗浄する洗浄装置をさらに備えている、請求項1から9のいずれかに記載の抽出装置。
【請求項11】
上記洗浄装置は、上記排気部に接続され、可撓性を有する管体を備えている、請求項10に記載の抽出装置。
【請求項12】
抽出原料を収容する収容室と、溶媒を上記収容室に流入するための流入口と、抽出原料から抽出された抽出液を上記収容室から排出するための排出口と、上記排出口よりも上方に設けられ、上記抽出原料が載置される載置部と、
抽出が開始される前から存在する気体であって、上記溶媒が浸透する載置部上の原料と上記収容室に貯留した抽出液との間の気体を上記収容室外へ排気する排気部と、上記排気部を開閉する第1バルブと、上記排出口に接続され、抽出液を払い出す払出管と、上記払出管に設けられた管路開閉用の第2バルブと、を備えた抽出装置を用いて上記抽出原料から上記抽出液を抽出する抽出方法であって、
抽出が開始される前から存在する気体であって、上記溶媒が浸透する載置部上の原料と上記収容室に貯留した抽出液との間の気体を上記収容室外へ排気する工程を備え、
上記気体を排出するときは、上記第2バルブを閉じ、
上記第1バルブを開くことを特徴とする抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉を含む原料と溶媒とを用いて抽出液を抽出する抽出装置および抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆やカツオの削り節などの微粉を含む原料から、温水などの溶媒中で有用な成分を抽出する抽出装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された抽出装置は、原料が載置されるフイルタが内部に配置された夕ンクを備える。このタンクは、抽出液を排出する排出口を下端に有する。排出口には、配管が接続されている。配管には、排出ポンプが設置されている。
【0004】
フイルタに載置された原料に溶媒が注がれると、溶媒が原料に浸透し、次いで、抽出液がタンクの下部に溜まる。タンクの下部に溜まった抽出液と、溶媒が浸透する原料との間にエアが溜まる。溜まったエアは抽出液の抽出を阻害する。
【0005】
特許文献1に記載された抽出装置では、抽出を行う前に、排出ポンプを逆回転させて溶媒を配管に送り込み、配管内のエアを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抽出が開始される前に、排出ポンプを逆回転させて配管及びタンク内に溶媒を送り込んで配管内やタンク内のエアを除去することにより、エアによって抽出が阻害されることを抑制することができる。しかしながら、送り込んだ溶媒の分だけ、抽出液の濃度が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、抽出液の濃度を低下させることなく、タンク内のエア等の気体を除去することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る抽出装置は、抽出原料を収容する収容室と、溶媒を上記収容室に流入するための流入口と、抽出原料から抽出された抽出液を上記収容室から排出するための排出口と、上記排出口よりも上方に設けられ、上記抽出原料が載置される載置部と、上記載置部の下方に設けられ、気体を上記収容室外へ排気する排気部と、を備える。
【0010】
流入口を通じて収容室内に注入された溶媒は、載置部に載置された抽出原料に浸透し、抽出液として収容室の下部に溜まる。収容室の下部に溜まった抽出液と、溶媒が浸透した抽出原料との間の気体は、排気部を通じて収容室の外部に排出される。したがって、排出口から溶媒を収容室内に注入して気体を抜く従来の抽出装置よりも、濃度の高い抽出液を得ることができる。
【0011】
本願に係る抽出方法は、抽出原料を収容する収容室と、溶媒を上記収容室に流入するための流入口と、抽出原料から抽出された抽出液を上記収容室から排出するための排出口と、上記排出口よりも上方に設けられ、上記抽出原料が載置される載置部と、を備えた抽出装置を用いて上記抽出原料から上記抽出液を抽出する抽出方法であって、上記載置部の下方から気体を上記収容室外へ排気する工程を備える。
【0012】
本発明は、抽出原料から抽出液を抽出する抽出方法として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、抽出液の濃度を低下させることなく、タンク内の気体を除去することができる抽出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図3は、第1実施形態の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における制御処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態における制御処理のフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示すフローチャート内のサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図4を参照して本発明の第1実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、後述する各処理の実行順序は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。
【0016】
本実施形態では、
図1に示される抽出装置10を説明する。抽出装置10は、抽出原料の一例であるコーヒー粉から、溶媒(温水)を用いてエスプレッソコーヒーを抽出する装置である。但し、抽出装置10は、お茶や出汁などの他の抽出液を抽出する装置として用いられてもよい。以下では、抽出装置10が床などに設置されて使用される状態における鉛直方向を上下方向(
図1における上下方向)として説明する。
【0017】
抽出装置10は、タンク11と、タンク11内の収容室17に溶媒を供給する溶媒供給装置12と、タンク11内を加圧する加圧装置13と、タンク11内の収容室17から抽出液を排出する排出装置14と、タンク11内のエア等の気体を除去するエア抜き装置15と、各装置12~15の動作を制御する制御装置16(
図3)と、を備える。
【0018】
[タンク11]
【0019】
タンク11は、中空の円柱状であって、抽出原料を収容する収容室17を内部に有する。但し、タンク11は、中空の直方体状など、他の形状であってもよい。タンク11は、下面が開口する箱状の上部本体21と、上面が開口する箱状の下部本体22とを備える。下部本体22は、上部本体21の開口と下部本体の開口とが一致する状態で、上部本体に21に着脱可能に、或いは、上部本体21に回動可能に取り付けられている。これにより、下部本体22は、上部本体21の開口を開閉することができる。そして、下部本体22は、開状態で上部本体21内を下方に向かって開放させ、閉状態で上部本体21(収容室17)内を封止することができる。タンク11は、不図示の設置台座などを用いて、床から離間して設置されている。すなわち、タンク11の下方は開放されている。下部本体22は、使用済み原料の取り出しやメンテナンスなどにおいて、上部本体21から外される場合もある。
【0020】
下部本体22は、底23の中央部に、底23を上下方向に貫通する排出口24を有する。排出口24には、後述の排出装置14の第1排出パイプ51が接続されている。また、下部本体22の内面は、排出口24に向かって傾斜している。下部本体22に溜まった抽出液は、下部本体22の傾斜する内面によって排出口24に導かれ、排出口24から第1排出パイプ51に流れる。
【0021】
また、下部本体22は、原料が載置される載置部としてフィルタ25を備える。フィルタ25は、平面形状であって、排出口24の上方、詳細には下部本体22の開口に配置されている。フィルタ25は、原料の微粉が通過しないサイズの複数の網目を有する網目状である。なお、原料を載置可能であって、溶媒が供給されることで原料から抽出液を抽出可能であれば、載置部としてフィルタ25以外の構成を用いてもよい。
【0022】
また、下部本体22は、挿通孔26を底23の中央部に有する。挿通孔26は、下部本体22の底23を上下方向に貫通する。挿通孔26には、後述のエア抜き装置15の排気部として排気管61が挿通されている。なお、ここでは排気部として管状の排気管61を用いるが、後述するエアの収容室17外への排気機能を有するのであれば、管状の構成でなくともよい。
【0023】
タンク11の上部本体21は、原料が注入される原料注入口27を上壁28に有する。原料注入口27は、上壁28を上下方向に貫通する。原料注入口27から注がれた原料は、フィルタ25に堆積する。原料注入口27は、蓋29によって開閉される。
【0024】
また、上部本体21は、後述の溶媒供給装置12の外筒31が挿通された流入口71を、上壁28の中央部に有する。流入口71は、上壁28を上下方向に貫通する。なお、この流入口71よりも下方に排出口24が設けられている。
【0025】
また、上部本体21は、後述の加圧装置13のパイプ41が接続された貫通孔72を上壁28に有する。貫通孔72は、上壁28を上下方向に貫通する。
【0026】
[溶媒供給装置12]
【0027】
溶媒供給装置12は、中空の外筒31と、外筒31に挿通されたシャフト32と、外筒31に一端が接続された供給パイプ33と、供給パイプ33の他端に設けられた開閉バルブ34と、開閉バルブ34を通じて供給パイプ33に溶媒を送出する溶媒ポンプ35と、を備える。また、溶媒供給装置12は、シャフト32に取り付けられたノズル部材36及びならし羽根37を備える。さらに、溶媒供給装置12は、シャフト32を回転駆動するモータ38と、モータ38の駆動回路39と、シャフト32を上下に往復移動させるモータ73と、モータ73の駆動回路74と、を備える。
【0028】
外筒31は、上下方向に延びる中空のパイプである。外筒31は、タンク11の上部本体21に設けられた流入口71に挿通されている。すなわち、外筒31の下端はタンク11内にあり、外筒31の上端はタンク11の上面から上方に突出している。なお、タンク11内を加圧装置13によって加圧可能とするため、流入口71の内周面と外筒31の外周面とは、例えばシール部材によってシールされている。
【0029】
シャフト32は、外筒31に挿通されている。すなわち、シャフト32の下端はタンク11内にあり、シャフト32の上端はタンク11の外部に位置する。シャフト32は、不図示の保持部材により、中心軸周りに回転可能に、かつ上下方向に往復移動可能に保持されている。すなわち、シャフト32は、外筒31とともに上下方向に往復移動可能(昇降可能)であり、外筒31とともに中心軸周りに回転可能である。
【0030】
ならし羽根37は、シャフト32の下端に固定されている。ならし羽根37は、シャフト32の中心軸に直交する方向(水平方向)に延びる板状である。ならし羽根37は、シャフト32と一体に、シャフト32の中心軸周りに回転する。回転するならし羽根37は、原料注入口27からフィルタ25に注がれた原料を、均等にならす。
【0031】
ノズル部材36は、タンク11内であって、かつ、ならし羽根37の上方に位置しており、外筒31に取り付けられて固定されている。ノズル部材36は、水平方向に延びる中空の棒状であって、下面に複数のノズルを有している。複数のノズルは、ノズル部材36の内部空間を通じて、外筒31の内部空間に設けられた溶媒流路と連通している。外筒31の内部空間及びノズル部材36の内部空間を通じて、溶媒がノズルから下方に向けて噴出される。すなわち、ノズル部材36は、いわゆるシヤワーノズルである。
【0032】
供給パイプ33の一端は、供給パイプ33の内部空間と外筒31の内部空間に設けられた溶媒流路とが連通された状態で、外筒31の上端部と接続されている。
【0033】
開閉バルブ34は、供給パイプ33の他端に設置されてり、供給パイプ33の内部空間に繋がる溶媒流路を開閉する。開閉バルブ34は、後述の制御装置16から入力する操作信号によって開閉する。開閉バルブ34は、操作信号が入力した場合に閉じる常開のバルブであってもよいし、操作信号が入力した場合に開く常閉のバルブであってもよい。開閉バルブは、操作信号によって開閉する電磁リレーを備えたものなど、種々のバルブを用いることができる。
【0034】
溶媒ポンプ35は、例えば、モータと、モータによって回転駆動されるインペラと、モータの駆動回路と、を有するものなどが用いられる。モータ及び駆動回路は、例えば、後述のモータ38及び駆動回路39と同構成であり、後述の制御装置16から入力された操作信号によって、インペラの駆動、停止、回転数の制御などの駆動制御がされる。
【0035】
なお、図には示されていないが、溶媒供給装置12は、熱交換器やヒータなど、溶媒(水)を加熱する加熱装置を有している。溶媒供給装置12は、加熱された溶媒である温水をタンク11に供給する。
【0036】
モータ38は、シャフト32を回転駆動する。モータ38には、直流モータや交流モータなど、種々のモータを用いることができる。モータ38を駆動させる駆動回路39は、モータ38の種類に応じたものであって、モータ38の回転速度を変更可能なものが用いられる。例えば、モータ38が直流モータである場合、駆動回路39は、一定の直流電圧を出力する定電圧回路と、定電圧回路の出力端とモータ38の入力端との間に配置されたスイッチング素子と、当該スイッチング素子に駆動信号を入力する発振回路とで構成される。発振回路は、スイッチング素子に入力する駆勣信号の周波数やデューティー比を制御することにより、モータ38の回転数を制御する。この発信回路は、後述の制御装置16から入力される操作信号に応じた駆動信号を生成する。すなわち、モータ38は、制御装置16が出力する操作信号によって駆動を制御される。
【0037】
モータ73及び駆動回路74の構成は、モータ38及び駆動回路39の構成と同じである。すなわち、モータ73は、後述の制御装置16が出力する操作信号によって駆動を制御される。モータ73の回転は、不図示の駆動伝達機構を介してシャフト32に伝達される。駆動伝達機構は、例えば、モータ73によって回転されるギアと、シャフト32に設けられたラックギアである。モータ73が一方の向きに回転されることにより、シャフト32が上昇し、他方の向きに回転されることにより、シャフト32が下降する。
【0038】
[加圧装置13]
【0039】
加圧装置13は、加圧エアが流れるエア流路を形成するパイプ41と、2つの開閉バルブ42、43と、パイプ41内のエアの圧力を検出する圧力センサ44と、エアを送出する送出ポンプ45と、を備える。
【0040】
パイプ41の一端は、タンク11の上部本体21に設けられた上述の貫通孔72の周りの上壁28に固定されている。すなわち、パイプ41の内部空間は、貫通孔72を通じてタンク11の内部と連通している。
【0041】
パイプ41の他端は、分岐している。分岐する2つの端の一方に開閉バルブ42が接続され、他方に開閉バルブ43がそれぞれ接続されている。開閉バルブ42は、送出ポンプ45と接続されている。開閉バルブ42は、送出ポンプ45とパイプ41との間のエア流路を開閉する。開閉バルブ43は、パイプ41の内部空間と外部との間のエア流路を開閉する。
【0042】
開閉バルブ43が閉じられ、開閉バルブ42が開かれ、送出ポンプ45が駆動されることにより、エアがタンク11内に供給され、タンク11内が加圧される。開閉バルブ42、43が共に閉じられることにより、タンク11内が加圧状態で保持される。開閉バルブ42が閉じられ、開閉バルブ43が開かれることにより、タンク11内が大気圧まで減圧される。
【0043】
開閉バルブ42、43の構成は、上述の開閉バルブ34の構成と同様であり、後述の制御装置16から入力される操作信号によって開閉する。
【0044】
圧力センサ44には、撓み量に応じた電圧を出力するピエソ素子を用いたものなど、種々の圧力センサを用いることができる。圧力センサ44は、パイプ41内のエアの圧力に応じた電圧の検出信号を出力する。圧力センサ44が出力する検出信号は、後述の制御装置16に入力される。
【0045】
[排出装置14]
【0046】
排出装置14は、一端がタンク11の下部本体22の排出口24の周りの底23に接続された第1排出パイプ51と、第1排出パイプ51の他端に配置された開閉バルブ(第2バルブ)52と、開閉バルブ52に一端が接続された第2排出パイプ53と、第2排出パイプ53の他端に接続された排出ポンプ54と、を備える。第1排出パイプ51は、本発明の「払出管」の一例である。
【0047】
開閉バルブ52の構成は、上述の開閉バルブ34の構成と同じである。開閉バルブ34は、後述の制御装置16から入力される操作信号により、開閉される。開閉バルブ52は、本発明の「第2バルブ」の一例である。
【0048】
排出ポンプ54の構成は、上述の溶媒ポンプ35の構成と同じであり、後述の制御装置16から入力された操作信号によって、駆動制御がされる。
【0049】
開閉バルブ52が開かれ、排出ポンプ54が駆動されることにより、排出パイプ51、53を通じて、タンク11の下部本体22に貯留された抽出液がタンク11の外部に排出される。
【0050】
[エア抜き装置15]
【0051】
エア抜き装置15は、排気管61と、排気管61が形成する流路を開閉する開閉バルブ(第1バルブ)62と、排気管61内の液体を検出する液位センサ63と、を備える。開閉バルブ62は、本発明の「第1バルブ」の一例である。
【0052】
排気管61は、
図2に示されるように、タンク11の下部本体22の底23に設けられた挿通孔26に挿通されている。すなわち、排気管61の一端部(図における上端部)は、タンク11内のフイルタ25よりも下方に位置し、排気管61の他端部は、タンク11の外部に位置している。
【0053】
排気管61は、不図示の取付部材を用いて、タンク11の下部本体22の底23に固定されている。排気管61の上端は閉塞されている。また、排気管61の上端部の周壁には、一乃至複数の通気口64が設けられている。排気管61は、上端面をフイルタ25に当接させて配置されている。したがって、排気管61の通気口64は、フイルタ25の下面に近接して位置している。すなわち、上端が閉塞された排気管61を用い、当該上端をフイルタ25に当接させることにより、通気口64とフイルタ25との間の距離を一定に保って排気管61を配置することができる。なお、上端が開放された排気管61が用いられてもよい。その場合、排気管61は、開放された排気管61の上端がフイルタ25の下面から僅かに離間する状態で、下部本体22に固定される。
【0054】
開閉バルブ62の構成は、上述の開閉バルブ34の構成と同じである。開閉バルブ62は、後述の制御装置16から入力される操作信号により、開閉される。
【0055】
液位センサ63は、例えば、排気管61内を流れる液体の流速や流量に応じた電圧の検出信号を出力する流量センサである。液位センサ63には、既存の種々の流量センサを用いることができる。なお、排気管61内を液体が流れたか否かを検出可能であれば、他のセンサが用いられてもよい。例えば、流路を挟んで設けられた発光ダイオード及びフォトダイオードを有するフォトインタラプタが用いられてもよい。フォトインタラプタは、液体(抽出液)が流路を通過する場合と、液体が流路を通過しない場合とで、異なる電圧値の検出信号を出力する。液位センサ63が出力した検出信号は、後述の制御装置16に入力される。
【0056】
開閉バルブ62が開かれることにより、溶媒が浸透するフイルタ25上の原料と、タンク11の下部本体22に溜まった抽出液との間のエアは、排気管61の通気口64を通じて排気管61内に進入し、排気管61内及び開閉バルブ62を通じて外部に排出される。エアが完全に排出されると、通気口64から排気管61内に抽出液が流入する。排気管61内に抽出液が流入すると、液位センサ63が出力する検出信号の信号レベル(電圧値)が変化する。後述の制御装置16は、検出信号の信号レベルにより、排気管61内に抽出液が流入したか否か、すなわち、エアが完全に抜かれたか否かを判断する。
【0057】
[制御装置16]
【0058】
制御装置16は、マイクロコンピュータや、パーソナルコンピュータや、タブレツトや、リレー等を有する制御盤などである。以下では、制御装置16がパーソナルコンピュータである例を説明する。
【0059】
制御装置16は、
図3に示されるように、コントローラ80と、クロックモジュール81と、ディスプレイ82と、入力装置83と、を備える。クロックモジュール81、ディスプレイ82、及び入力装置83は、コントローラ80と電気的に接続されている。
【0060】
入力装置83は、キーボードやマウスなどである。作業者は、入力装置83を用いて、作業開始の指示等をコントローラ80に入力する。ディスプレイ82は、コントローラ80から入力される画像信号を表示する。例えば、ディスプレイ82は、抽出作業の進捗状況などを表示する。クロックモジュール81は、現在時刻を出力する。クロックモジュール81が出力する現在時刻は、コントローラ80に入力される。
【0061】
コントローラ80は、中央演算処理装置であるCPU84と、メモリ85と、通信バス86とを備える。CPU84及びメモリ85と、上述のクロックモジュール81、ディスプレイ82、及び入力装置83とは、通信バス86と接続されている。
【0062】
メモリ85は、プログラムが記憶される第1領域87と、データ等が記憶される第2領域88と、を有する。第1領域87は、例えば、ハードディスクである。第2領域88は、ハードディスクやRAMやバッフアなどである。
【0063】
第1領域87は、OS89及び制御プログラム90を記憶する。OS89は、制御プログラム90など他のプログラムの動作を統括して制御するオペレーティングシステムである。制御プログラム90は、抽出装置10の動作を制御するプログラムである。制御プログラム90は、アドレスに記述された命令をCPU84が実行することによって実行される。
【0064】
通信バス86には、上述の圧力センサ44と、液位センサ63と、開閉バルブ34、42、43と、溶媒ポンプ35と、排出ポンプ54と、モータ38、73とが接続されている。コントローラ80は、圧力センサ44及び液位センサ63が出力する検出信号を入力され、開閉バルブ34、42、43、溶媒ポンプ35、排出ポンプ54、及びモータ38、73に操作信号を出力して、開閉バルブ34、42、43を開閉し、溶媒ポンプ35、排出ポンプ54、及びモータ38、73の駆動を制御する。
【0065】
[制御装置16(制御プログラム90)が実行する制御処理]
【0066】
以下、
図4を参照して、制御プログラム90が実行する制御処理について説明する。なお、以下では、制御プログラム90が実行する処理を、コントローラ80が実行する処理として記載する。また、以下では、開閉バルブ34、42、43、52が常閉のバルブであり、開閉バルブ62が常開のバルブであるものとして説明する。
【0067】
まず、コントローラ80は、入力装置83から抽出開始指示が入力されたか否かを判断し(S11)、抽出開始指示が入力されるまで(S11:No)、待機する。作業者は、原料注入口27から、規定量の原料をタンク11内に注ぎ入れた後、入力装置83を用いて、抽出開始指示をコントローラ80に入力する。
【0068】
コントローラ80は、抽出開始指示が入力されと判断すると(S11:Yes)、ならし処理を実行する(S12)。ならし処理は、フィルタ25上に注がれた原料を、ならし羽根37を用いてならす処理である。詳しく説明すると、コントローラ80は、操作信号を出力して、モータ38、73を回転駆動させる。モータ38が回転駆動することにより、シャフト32及びならし羽根37が回転する。モータ73が一方の向き及び他方の向きに交互に回転駆勣することにより、シャフト32及びならし羽根37が上下に昇降する。回転及び昇降するならし羽根37により、フィルタ25上の原料がならされる。
【0069】
コントローラ80は、例えば、メモリ85の第2領域88に予め記憶された所定時間の間、モータ38、73を駆動させた後、モータ38、73の駆動を停止させ、ならし処理を終了する。
【0070】
コントローラ80は、ならし処理の終了後、溶媒供給処理を実行する(S13)。具体的には、コントローラ80は、操作信号を出力し、溶媒ポンプ35を駆動させ、また、開閉バルブ34を開く。溶媒ポンプ35によって送出された溶媒(温水)は、開かれた開閉バルブ34、供給パイプ33の内部空間、外筒31の内部空間、及びノズル部材36の内部空間を通り、ノズル部材36の複数のノズルから、フィルタ25上の原料に注がれる。原料に注がれた溶媒は、原料に浸透する。原料に浸透した溶媒は、原料中の成分が溶出することにより、抽出液となる。抽出液は、フイルタ25を通過し、タンク11の下部本体22及び第1排出パイプ51内に溜まる。
【0071】
下部本体22に溜まった抽出液と、溶媒が浸透したフイルタ25上の原料との間に閉じ込められたエアは、排気管61の内部空間及び開かれた開閉バルブ62を通じて外部に排出される。
【0072】
下部本体22に溜まった抽出液と、溶媒が浸透したフイルタ25上の原料との間に閉じ込められたエアのほぼ全てが外部に排出されると、排気管61の通気口64から排気管61内に抽出液が流入する。排気管61内に抽出液が流入すると、液位センサ63が出力する検出信号の信号レベル(電圧値)が変化する。コントローラ80は、液位センサ63が出力する検出信号の信号レベルにより、排気管61内において抽出液が検出されたか否かを判断する(S14)。
【0073】
コントローラ80は、排気管61内において抽出液が検出されるまで(S14:No)、すなわち、ほぼ全てのエアが抜けるまで、開閉バルブ62を開いたままとする。一方、コントローラ80は、排気管61内において抽出液が検出されたと判断すると(S14:Yes)、すなわち、ほぼ全てのエアが抜けたと判断すると、第1操作信号を出力し、開閉バルブ62を閉じる(S15)。
【0074】
コントローラ80は、開閉バルブ62を閉じた後、タンク11内を加圧する加圧処理を実行する(S16)。具体的には、コントローラ80は、操作信号を出力して、加圧装置13の開閉バルブ42を開く。開閉バルブ42が開かれることにより、開閉バルブ42、パイプ41の内部空間、及び貫通孔72を通じて、エアがタンク11内に流入し、タンク11内が加圧される。
【0075】
なお、フローチャートには示されていないが、コントローラ80は、圧力センサ44から入力する検出信号により、タンク11内の圧力を検出し、開閉バルブ42を開閉して、タンク11内の内圧を一定に保つ。
【0076】
次に、コントローラ80は、抽出液を外部に排出する排出処理を実行する(S17)。具体的には、コントローラ80は、第2操作信号を出力して、開閉バルブ52を開くとともに、排出ポンプ54を駆動させる。タンク11の下部本体22に溜まった抽出液は、排出口24及び排出パイプ51、53の内部空間を通過して、タンク11の外部に排出される。
【0077】
次に、コントローラ80は、抽出が終了したか否かを判断する(S18)。例えば、コントローラ80は、規定量の溶媒がタンク11内に注入されたことに応じて、或いは、規定時間の聞溶媒がタンク11内に注入されたことに応じて、抽出が終了したと判断する。例えば、溶媒供給装置12のパイプ41には、パイプ41内を流れる液体の量に応じた検出信号を出力する流量センサが設けられる。流量センサが出力する検出信号は、コントローラ80に入力される。コントローラ80は、検出信号が示す流量が、メモリ85の第2領域88に予め記憶された閥値量以上であることに応じて、抽出が終了したと判断する。または、コントローラ80は、溶媒ポンプ35の駆動時間をタイマカウンタでカウントし、カウントしたカウント値が、メモリ85の第2領域88に予め記憶された閥値時間以上であることに応じて、抽出が終了したと判断する。
【0078】
コントローラ80は、抽出が終了したと判断するまで(S18:No)、溶媒ポンプ35を駆動させ、抽出を継続する。一方、コントローラ80は、抽出が終了したと判断すると(S18:Yes)、溶媒停止処理を実行する(S19)。具体的には、コントローラ80は、溶媒ポンプ35を駆動させる操作信号、及び、開閉バルブ34を開かせる操作信号の出力を停止する。溶媒停止処理が実行されることにより、タンク11内への溶媒の供給が停止される。
【0079】
次に、コントローラ80は、減圧処理を実行する(S20)。具体的には、コントローラ80は、開閉バルブ42、52への操作信号の出力を停止し、開閉バルブ42、52を閉じる。次に、コントローラ80は、第3操作信号を出力して開閉バルブ43を開くとともに、第1操作信号の出力を停止し、開閉バルブ43、62を開く。開閉バルブ43が開かれることにより、パイプ41の内部空間及び開かれた開閉バルブ43を通じて、タンク11内のエアが外部に開放される。また、開閉バルブ62が開かれることにより、排気管61の内部空間及び開かれた開閉バルブ62を通じて、タンク11内のエアが外部に開放される。
【0080】
フローチャートには示されていないが、例えば、コントローラ80は、減圧処理の実行後、制御処理が終了したことを示す表示をディスプレイ82に表示させた後、制御処理を終了する。作業者は、ディスプレイ82の表示によって抽出が終了したことを確認すると、下部本体22を上部本体21から外し、フィルタ25から原料を取り除く。
【0081】
なお、コントローラ80は、操作信号を出力して開閉バルブ34、42、43、52、62を開き、或いは閉じ、操作信号の出力を停止して開閉バルブ34、42、43、52、62を閉じ、或いは開く。コントローラ80が操作信号の出力を停止することは、0vの操作信号を出力することを意味する。すなわち、コントローラ80は、操作信号を出力することにより、開閉バルブ34、42、43、52、62を開閉する。
【0082】
[実施形態の作用効果]
【0083】
本実施形態では、排気管61を用いて、フィルタ25上の原料と抽出液との間のエアを抜くことができるので、排出口から溶媒をタンク内に注入してエアを抜く従来の抽出装置よりも、濃度の高い抽出液を得ることができる。
【0084】
また、本実施形態では、排気管61に開閉バルブ62が設けられているので、開閉バルブ62が閉じられることにより、排気管61を通じて抽出液が外部に排出されることを防止することができる。また、開閉バルブ62が閉じられることにより、タンク11内を加圧することができる。
【0085】
また、本実施形態では、排気管61に抽出液が流入したことを検出する液位センサ63が設けられているので、エアがほぼ抜けたことを検出して、自動で開閉バルブ62を閉じることができる。また、自動で開閉バルブ62を閉じることができるので、作業者の手間を省くことができる。
【0086】
また、本実施形態では、エアがほぼ抜けると、自勣で開閉バルブ62が閉じられ、さらに、自動で開閉バルブ52が開かれ、タンク11から抽出液が排出される。したがって、開閉バルブ52を開く作業者の手間を省くことができる。
【0087】
また、本実施形態では、加圧装置13を備えるので、エスプレッソコーヒーなど、加圧が必要な抽出液の抽出も行うことができる。
【0088】
また、本実施形態では、抽出が終了すると、加圧装置13の開閉バルブ43と、エア抜き装置15の開閉バルブ62との両方の開閉バルブが開かれ、タンク11内が大気開放(減圧)される。したがって、開閉バルブ43のみでタンク11内を大気開放するよりも、速やかに減圧を行うことができる。すなわち、エア抜き装置15を利用して、タンク11内の大気開放を速やかに行うことができる。
【0089】
[変形例]
【0090】
上述の実施形態では、排気管61内の抽出液の有無を検出する流量センサである液位センサ63を用いて、タンク11内のエアがほぼ抜かれたか否かを検出する例を説明した。しかしながら、液位センサ63に代えて、下部本体22内の抽出液の液面が所定位置に達したか否かを検出するレベルセンサが用いられてもよい。所定位置は、排気管61の通気口64と、ほぼ同じ高さ位置である。コントローラ80は、液位センサ63から入力する検出信号により、抽出液の水面が通気口64に達したと判断すると(S14:Yes)、エアがほぼ抜かれたと判断して、操作信号を出力し、開閉バルブ62を閉じる(S15)。
【0091】
また、必ずしもエアがほぼ抜かれていなくてもよく、ある程度エアが収容室17内に残存していてもよい。その場合、例えば液位センサ63を用いるのであれば、通気口64は、
図2に示す位置よりも下部に設けられていてもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、加圧装置13に開閉バルブ43が設けられ、開閉バルブ43とエア抜き装置15の開閉バルブ62との両方の開閉バルブが開かれ、タンク11内が大気開放(減圧)される例を説明した。しかしながら、加圧装置13の開閉バルブ43は設けられていなくてもよい。その場合、エア抜き装置15の開閉バルブ62のみによって、タンク11内が大気開放される。
【0093】
また、上述の実施形態では、液位センサ63によってタンク11内のエアがほぼ抜かれたと判断すると、コントローラ80が開閉バルブ62を閉じる例(S15)を説明した。しかしながら、コントローラ80は、開閉バルブ62を閉じるとともに、或いは、開閉バルブ62を閉じる処理に代えて、タンク11内の液体がほぼ抜かれたことを、スピーカなどの報知装置を用いて、作業者に報知してもよい。報知によって、エアが抜けたことを認識した作業者は、開閉バルブ62を閉じる。開閉バルブ62を開ける場合でも、同様に報知を行ってもよい。また、他の開閉バルブ34、42、43の開閉を行う場合についても、同様に報知を行ってもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、加圧装置13を有する抽出装置10を説明した。しかしながら、加圧装置13の有無は、任意である。すなわち、本発明は、加圧装置13を有さない抽出装置として実現されてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、ならし羽根37を有し、さらに、いわるゆシヤワーノズル型のノズル部材36を有する溶媒供給装置12を備えた抽出装置10を説明した。しかしながら、本発明は、他の構成の溶媒供給装置を備えた抽出装置として実現されてもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、原料のならし処理(S12)や、溶媒の供給処理(S13)や、タンク11内の加圧処理や(S16)、抽出液の排出処理(S17)や、タンク11内の減圧処理などを、コントローラ80が行う例を説明した。しかしながら、上述の処理の全て或いは一部の処理を、作業者が手動で行ってもよい。例えば、作業者は、原料注入口27から原料をタンク11内に注いだ後、手動操作によってモータ38、73を駆動させ、ならし作業を行う。
【0097】
また、上述の実施形態では、制御装置16がパーソナルコンピュータである例を説明した。しかしながら、制御装置16は、圧力センサ44や液位センサ63が出力した検出信号を増幅するオペアンプ等を用いたアンプ回路、当該アンプ回路が増幅した検出信号から操作信号を生成する操作信号生成回路やリレーなどのアナログ回路を備えた制御盤であってもよい。
【0098】
また、上述の実施形態では、加圧のためにエア(空気)を収容室17に流入させたり、エア抜き装置15によって収容室17からエア(空気)を抜いたりする例について説明したが、エアでなくとも気体を用いる系であれば本発明を適用することができる。例えば、エアではなく窒素ガス、酸素ガス等の気体を流入させてもよい。その場合、当然ながらエア抜き装置15は、それらのエアだけでなく気体も抜くことが可能である。
【0099】
上述の実施形態で説明された圧力センサ44や、液位センサ63や、抽出の終了を判断する流量センサなどのセンサの他、温度センサなど、他のセンサが抽出装置10に用いられていてもよい。温度センサは、例えば、ノズル部材36のノズルから噴出される温水の温度や、第1排出パイプ51から排出される抽出液の温度などを検出する。コントローラ80は、ノズル部材36のノズルから噴出される温水の温度や、第1排出パイプ51から排出される抽出液の温度などに応じて、溶媒供給装置12の熱交換器やヒータを制御し、溶媒供給装置12がタンク11に供給する溶媒の温度を制御する。
【0100】
<第2実施形態>
以下、
図5および
図6を参照して本発明の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0101】
ステップS13での溶媒供給処理の実行により、溶媒供給装置12から収容室17(タンク11)内に溶媒(温水)が供給される。このとき、開閉バルブ62は、開状態となっているため、溶媒供給装置12からの溶媒の供給に伴って、収容室17の上側、すなわち、流入口71側では、圧力が上昇するが、収容室17の下側、すなわち、排出口24側では、圧力の上昇が、上側での圧力上昇よりも緩やかとなる。以下、流入口71側での圧力を「上側圧力P1」といい、排出口24側の圧力を「下側圧力P2」という。
【0102】
そして、上側圧力P1と下側圧力P2との圧力差ΔPの程度によっては、フィルタ25が下側に向かって変形していき、その変形がフィルタ25の破断限界を超えた場合、破断するおそれがある。また、圧力差ΔPの程度によっては、フィルタ25上の原料を構成する微粉が高密状態となるように圧縮されて(固められて)しまい、溶媒が原料を円滑に通過するのが困難となるおそれもある。
【0103】
そこで、抽出装置10では、このような現象を防止するよう構成されている。以下、この構成および作用について説明する。
図5に示すように、抽出装置10は、上側圧力P1を検出する第1検出部としての圧力センサ44の他に、さらに、下側圧力P2を検出する第2検出部としての圧力センサ55を備えている。
【0104】
圧力センサ55は、排出口24側で、かつ、開閉バルブ52よりも上流側の下側圧力P2を検出可能な位置に配置されている。この配置位置としては、
図5に示す構成では下部本体22の底23となっているが、これに限定されず、例えば、第1排出パイプ51の途中、すなわち、排出口24と開閉バルブ52との間であってもよい。また、圧力センサ55としては、圧力センサ44と同じ構成のセンサを用いることができる。
【0105】
また、コントローラ80(制御装置16)により、開閉バルブ62は、圧力センサ44(第1検出部)で検出された上側圧力P1と、圧力センサ55(第2検出部)で検出された下側圧力P2との圧力差に基づいて、開閉が制御される。
【0106】
次に、この制御処理について説明する。
図6に示すように、本実施形態では、ステップS13とステップS14との間に、収容室17内の圧力を調整する圧力調整処理を実行するサブルーチンSR300が介挿されている。サブルーチンSR300では、
図7に示すステップS301~ステップS308が順次実行される。そして、サブルーチンSR300が実行されている間に、ステップS14で抽出液が検出されたと判断されたら、サブルーチンSR300の実行を停止して、ステップS15以降のステップを順次実行する。
【0107】
図7に示すように、サブルーチンSR300では、まず、開閉バルブ62を開状態として(S301)、圧力センサ44で上側圧力P1を検出する(S302)。
次いで、圧力センサ55で下側圧力P2を検出して、上側圧力P1と下側圧力P2との圧力差ΔPが閾値α1以上であるか否かを判断する(S304)。閾値α1は、「第1閾値」ということができ、フィルタ25が破断するおそれが生じる圧力の上限値を、十分に下回る大きさの圧力である。また、この閾値α1は、フィルタ25上の原料が高密状態に圧縮されるおそれが生じる圧力を、十分に下回る大きさの圧力でもある。
【0108】
ステップS304での判断の結果、圧力差ΔPが閾値α1以上であると判断された場合には(S304:Yes)、開閉バルブ62を閉状態とする(S305)。これにより、排出口24側でも、下側圧力P2が、前述した緩やかな上昇よりも、急峻に上昇することができ、よって、圧力差ΔPが減少していく。この圧力差ΔPの減少により、フィルタ25が破断するのを防止することができる。また、フィルタ25上の原料が高密状態に圧縮されるのも防止することができる。
【0109】
一方、ステップS304での判断の結果、圧力差ΔPが閾値α1以上ではない判断された場合には(S304:No)、ステップS302に戻り、以降のステップを順次実行する。
【0110】
ステップS305を実行した後、圧力センサ44で上側圧力P1を再度検出するとともに(S306)、圧力センサ55で下側圧力P2を再度検出する(S307)。そして、上側圧力P1と下側圧力P2との圧力差ΔPが閾値α2以下であるか否かを判断する(S308)。閾値α2は、「第2閾値」ということができ、閾値α1よりも小さい。圧力差ΔPが小さ過ぎると、原料に対する溶媒の浸透が阻害されるおそれがある。そのため、閾値α2は、原料に対する溶媒の浸透が阻害されない状態となる圧力の下限値とすることができる。
【0111】
ステップS308での判断の結果、圧力差ΔPが閾値α2以下であると判断された場合には(S308:Yes)、ステップS301に戻り、以降のステップを順次実行する。ステップS301が実行されることにより、開閉バルブ62が再度開状態となる。これにより、圧力差ΔPが増大して、原料に対する溶媒の浸透が促進される。
【0112】
抽出装置10では、このようなサブルーチンSR300を実行している間に、抽出液が下部本体22内に徐々に満たされ、遂には、液位センサ63により抽出液が検出可能な状態となる。そして、ステップS14で抽出液が検出された場合には、サブルーチンSR300の実行を停止して、ステップS15以降を順次実行する。
【0113】
なお、
図7に示すフローチャートでは、ステップS302とステップS303との順番を逆転させてもよいし、ステップS306ステップS307との順番を逆転させてもよい。
抽出装置10は、以上のような圧力調整処理が可能な構成となっている。これにより、フィルタ25が過剰に変形して、破断するのを確実に防止することができる。また、フィルタ25上の原料が高密状態となるのを防止することができ、よって、溶媒が原料を円滑に通過することができる。
なお、S308の後で、S301に戻る際、下側圧力P2の圧力が急激に下がらない様、開閉バルブ62の開度を徐々に開くような制御をしても良い。
【0114】
<第3実施形態>
以下、
図8を参照して本発明の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0115】
図8に示すように、エア抜き装置15は、補助バルブ65をさらに備える。補助バルブ65は、排気管61の液位センサ63と開閉バルブ62との間に配置されている。
本実施形態では、開閉バルブ62は、その開度が調整可能に構成されていない。すなわち、開閉バルブ62は、全開状態と全閉状態とを取り得、全開状態と全閉状態と間の中間の状態で開度が停止することができない。一般的に、バルブにとって、全開状態と全閉状態とを過剰に繰り返すこと(ハンチング)は、劣化、すなわち、寿命の短縮につながると言われている。
【0116】
これに対し、補助バルブ65は、その開度が調整可能に構成されている。すなわち、補助バルブ65は、全開状態と全閉状態とを取り得、さらに、全開状態と全閉状態と間の中間の状態で開度が停止することができる。この補助バルブ65により、排気管61を通過するエアの流量を調整することができ、よって、開閉バルブ62に代えて、エアの通過と通過停止とを切り替えることができる。これにより、開閉バルブ62が全開状態と全閉状態とを繰り返すことによる、開閉バルブ62の劣化を防止または抑制することもできる。
【0117】
なお、補助バルブ65は、本実施形態では開閉バルブ62の上流側に配置されているが、これに限定されず、例えば、開閉バルブ62の下流側に配置されていてもよい。
また、エア抜き装置15は、本実施形態では補助バルブ65を備える構成となっているが、これに限定されず、例えば、補助バルブ65を省略して、開閉バルブ62自体が補助バルブ65と同様の開度調整機能を有する構成となっていてもよい。この場合、補助バルブ65を省略できるので、より簡素な抽出装置1にすることができる。
【0118】
<第4実施形態>
以下、
図9を参照して本発明の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0119】
図9に示すように、抽出装置10は、排気管61(排気部)を洗浄する洗浄装置18をさらに備えている。前述したように、排気管61は、エアの他に、抽出液が通過する場合がある。この場合、抽出液が排気管61を通過した後も、この排気管61内に抽出液が微量ながらも残留する。そこで、抽出装置10では、洗浄装置18で排気管61内、その他、開閉バルブ62内を洗浄して、清潔に保つことができる。
【0120】
また、抽出装置10は、タンク11(収容室17)内も洗浄することができる。これにより、タンク11内も清潔に保つことができる。
また、抽出装置10では、洗浄の最後に、洗浄装置18により水ですすぐのが好ましい。これにより、一連の洗浄が完了する。
【0121】
洗浄装置18は、水供給ライン401と、洗剤供給ライン402と、タンク403と、第1中継ライン404と、送液ポンプ405と、熱交換器406と、第2中継ライン407と、第3中継ライン408と、第4中継ライン409と、循環ライン410と、を備え、これらが接続された装置である。なお、各ラインは、管体で構成されている。
【0122】
水供給ライン401は、水を供給するラインである。水供給ライン401の途中には、開閉バルブ411が配置されている。これにより、水の供給と、その供給停止とを切り替えることができる。
洗剤供給ライン402は、洗剤を供給するラインである。洗剤供給ライン402の途中には、開閉バルブ412が配置されている。これにより、洗剤の供給と、その供給停止とを切り替えることができる。なお、洗剤には、酸性の洗剤と、アルカリ性の洗剤とがある。酸性の洗剤は、カルシウムなどのような無機物(ミネラル分)を洗浄するに適している。アルカリ性の洗剤は、有機物を洗浄するに適している。
【0123】
水供給ライン401の下流側と、洗剤供給ライン402の下流側とは、タンク403に接続されている。タンク403には、水供給ライン401を介して供給された水や、洗剤供給ライン402を介して供給された洗剤を一時的に貯留することができる。
【0124】
タンク403と熱交換器406とは、第1中継ライン404を介して、接続されている。これにより、タンク403からの水や洗剤を熱交換器406で加熱することができる。これにより、洗浄力が向上する。なお、熱交換器406は、例えば、蒸気を発生させて、この蒸気で加熱する構成となっている。
また、第1中継ライン404の途中には、送液ポンプ405が配置されている。これにより、水や洗剤を下流側に向かって確実に送り出すことができる。
【0125】
熱交換器406の下流側には、第2中継ライン407が接続されている。第2中継ライン407の熱交換器406側には、温度センサ418が配置されている。温度センサ418により、第2中継ライン407を通過する水などの温度を検出することができる。コントローラ80は、温度センサ418での検出結果に基づいて、熱交換器406の出力を調整することができる。
【0126】
第2中継ライン407の下流側は、第3中継ライン408と、第4中継ライン409とに分岐している。
第3中継ライン408は、タンク11の上壁28に設けられたボール状のスプレー部19に接続されている。これにより、水や洗剤をスプレー部19からタンク11内に向かって噴射して、このタンク11内を洗浄することができる。
【0127】
なお、第3中継ライン408の途中には、開閉バルブ413が配置されている。これにより、タンク11内への水や洗剤の噴射と、その噴射停止とを切り替えることができる。
循環ライン410は、第2排出パイプ53と、タンク403とを接続している。タンク11内の洗浄に供された水や洗剤は、循環ライン410を介して、タンク403に戻される。
【0128】
第4中継ライン409は、排気管61の開閉バルブ62よりも下流側に接続されている。そして、開閉バルブ62を開状態とすれば、第4中継ライン409を通過した水や洗剤が排気管61内をタンク11側に向かって逆流することができる。これにより、排気管61内と開閉バルブ62内とを洗浄することができる。
【0129】
第4中継ライン409の一部は、可撓性を有する管体414で構成されている。また、排気管61は、下部本体22に設けられている。管体414が可撓性を有することにより、下部本体22が前述したように回動する際、管体414が下部本体22の回動を阻害するのを防止することができ、よって、下部本体22が円滑に回動することができる。
なお、第4中継ライン409の途中には、開閉バルブ415が配置されている。これにより、排気管61内への水や洗剤の噴射と、その噴射停止とを切り替えることができる。
【0130】
排気管61内の洗浄に供された洗剤は、タンク11内に一旦流入し、その後、循環ライン410を介して、タンク403に戻される。
また、排気管61内の洗浄に供された水は、排気管61の下流側に接続されたドレンライン416を介して、排出される。なお、ドレンライン416の途中には、開閉バルブ417が配置されている。これにより、水の排出と、その排出停止とを切り替えることができる。
【0131】
<第5実施形態>
以下、
図10を参照して本発明の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0132】
図10に示すように、本実施形態では、洗剤供給ライン402がタンク11の上壁28に接続されている。これにより、洗剤を直接タンク11内に供給することができる。
なお、抽出装置10では、タンク11内への洗剤の供給に先立って、水供給ライン401から供給された水がタンク11内に貯留されている。この状態で、タンク11内に洗剤を給すれば、このタンク11内を洗剤で洗浄することができる。
【0133】
また、本実施形態では、循環ライン410が第1中継ライン404の送液ポンプ405よりも下流側に接続されている。これにより、タンク11内の洗浄に供された洗剤を、第1中継ライン404に送ることができる。そして、この洗剤は、熱交換器406、第2中継ライン407、第4中継ライン409を順に通過して、排気管61に至る。これにより、洗剤で排気管61を洗浄することができる。
【0134】
循環ライン410の途中には、切替バルブ419が配置され、循環ライン410と第1中継ライン404との接続部には、切替バルブ420が配置されている。切替バルブ419を切替バルブ420側に切り替えた、すなわち、洗剤の流れが切替バルブ420側に向かうようにした状態として、熱交換器406側に切り替わることにより、洗剤の循環と、その循環停止を切り替えることができる。
また、切替バルブ419には、ドレンライン421が接続されている。洗浄に供された洗剤を排出する場合には、切替バルブ419をドレンライン421側に切り替えた、すなわち、洗剤の流れがドレンライン421側に向かうようにした状態として、その排出を行うことができる。さらに、通常、洗浄の際には洗剤を用いて循環をする前後に水ですすぐ工程を設けるが、その時は切替バルブ419をドレンライン421側としておくことでそれが可能である。
【符号の説明】
【0135】
10…抽出装置
11…タンク
12…溶媒供給装置
13…加圧装置
14…排出装置
15…エア抜き装置
16…制御装置
17…収容室
18…洗浄装置
19…
21…上部本体
22…下部本体
23…底
24…排出口
25…フィルタ
26…挿通孔
27…原料注入口
28…上壁
29…蓋
31…外筒
32…シャフト
33…供給パイプ
34…開閉バルブ
35…開閉バルブ
36…ノズル部材
37…ならし羽根
38…モータ
39…駆動回路
41…パイプ
42、43…開閉バルブ
44…圧カセンサ
45…送出ポンプ
51…第1排出パイプ
52…開閉バルブ(第2バルブ)
53…第2排出パイプ
54…排出ポンプ
55…圧力センサ
61…排気管
62…開閉バルブ(第1バルブ)
63…液位センサ
64…通気口
65…補助バルブ
71…流入口
72…貫通孔
73…モータ
74…駆動回路
80…コントローラ
81…クロックモジュール
82…ディスプレイ
83…入力装置
84…CPU
85…メモリ
86…通信バス
87…第1領域
88…第2領域
89…OS
90…制御プログラム
401…水供給ライン
402…洗剤供給ライン
403…タンク
404…第1中継ライン
405…送液ポンプ
406…熱交換器
407…第2中継ライン
408…第3中継ライン
409…第4中継ライン
410…循環ライン
411…開閉バルブ
412…開閉バルブ
413…開閉バルブ
414…管体
415…開閉バルブ
416…ドレンライン
417…開閉バルブ
418…温度センサ
419…切替バルブ
420…切替バルブ
421…ドレンライン
P1…上側圧力
P2…下側圧力
ΔP…圧力差
α1…閾値
α2…閾値