(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】メソポーラス材料内に閉じ込められたナノ触媒を作製する方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20230518BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230518BHJP
B01J 29/03 20060101ALI20230518BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20230518BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20230518BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
B01J37/02 101
B01J35/10 301
B01J29/03 M
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020551555
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 US2019023989
(87)【国際公開番号】W WO2019191034
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021506
【氏名又は名称】リサーチ トライアングル インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ ルツ ミンゲス
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ソクリ
(72)【発明者】
【氏名】マーティ ライル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アール カーペンター
(72)【発明者】
【氏名】サメール パルヴァシカル
(72)【発明者】
【氏名】マイケル カーペンター
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/083772(WO,A1)
【文献】特開2000-167401(JP,A)
【文献】特表2006-526504(JP,A)
【文献】Francisco G. CIRUJANO et. al.,Boosting the Catalytic performance of Metal-Organic Frameworks for Steroid Transformations by Confinement within a Mesoporous Scaffold,Angewandte Chemie International Edition,Willey-VCH,2017年09月25日,volume 129, issue 43,pp 13302-13306,DOI:10.1002/anie.201706721
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 1/12
C07C 9/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラス材料(MPM)内に閉じ込められた金属ナノ触媒を調製する方法であって、(a)少なくとも1つの金属イオンと配位結合を形成することが可能な1つ以上の多座配位子[A
x(L
-x)]を備える、少なくとも1つ以上の有機化合物を含浸させて、メソポーラス材料に第1の中間体[(A
x(L
-x)/MPM)]を形成するステップと、(b)前記第1の中間体[(A
x(L
-x)/MPM)]を気相の酸に曝して、第2の中間体[(H
x(L
-x)/MPM)]を形成するステップと、(c)前記第2の中間体[(H
x(L
-x)/MPM)]に1つ以上の金属イオン(M
1
+y、M
2
+y、M
3
+y)の溶媒溶液を添加して、1つ以上のメソポーラス材料内に閉じ込められた金属有機構造体(MOF)前駆体[MOF/MPM]を形成する1つ以上の多座配位子と配位結合を形成するステップと、(d)ステップ(c)の前記前駆体[MOF/MPM]を制御された変換条件下で処理して、前記メソポーラス材料内に閉じ込められた前記金属ナノ触媒を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(d)は、ステップ(c)の前記前駆体[MOF/MPM]を1つ以上の有機化合物(Z)と接触させて、配位結合[Z/MOF/MPM]を形成することが可能である第2の多座配位子を作ることを含むステップ(d)(1)と、1つ以上の追加の金属イオンの溶媒溶液を添加して、メソポーラス材料内に閉じ込められた追加の金属を有する修飾MOF前駆体[MOF/MPM]を形成するステップ(d)(2)と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)(1)のキレート配位子(Z)は、第2の金属イオンを錯化するための金属結合部位を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御された変換条件により、前記MOF中の炭素の90%を超える炭素が前記MOF/MPMから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制御された変換条件により、前記MOF中の炭素の50%±10%が前記MOF/MPMから放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
制御された変換条件下での処理は、不活性ガス雰囲気中での約300°C~約1000°Cの温度での熱分解である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記制御された変換条件下での処理は、酸素ガスを含有する雰囲気中における約300°C~約600°Cの温度でのか焼である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記制御された変換条件下での処理は、約25°C~約300°Cの温度での水素による還元である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記閉じ込められた金属ナノ触媒は、モノメタル(M
1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記閉じ込められた金属ナノ触媒は、バイメタル(M
1+M
2)である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記閉じ込められた金属ナノ触媒は、3つ以上の金属を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記メソポーラス材料内に閉じ込められた金属ナノ触媒は、10nm未満の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記メソポーラス材料は、メソポーラス金属酸化物、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボン、メソポーラスポリマー、メソポーラスシリコアルミナ(ゼオライト)、メソポーラス有機シリカ、またはメソポーラスアルミノリン酸アルミニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記メソポーラス金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、または酸化マグネシウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
メソポーラス材料が約100m
2/g~約1000m
2/gの表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記金属イオン(M
1
+y、M
2
+y、M
3
+y)は、Al、Au、Ce、Co、Fe、Ir、Mo、Ni、Pd、Rh、Ru、Ti、V、Zrまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記MOFの前記多座配位子は、テレフタレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、2,5-ジオキシベンゼンジカルボキシレート、ビフェニル-4,4´-ジカルボキシレート、イミダゾレート、ピリミジン-アゾレート、トリアゾレート、テトラゾレート、それらの誘導体または組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記MOFは、HKUST-1、M
2(dobpdc)、MIL-100、MIL-101、MIL-53、MOF-74、NU-1000、PCN-222、PCN-224、UiO-66、UiO-67、ZIF-8、ZIFs、またはそれらの誘導体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記メソポーラス材料は、MCM-41、SBA-15、または市販のシリカからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記メソポーラス材料内に閉じ込められた、閉じ込められた金属ナノ触媒は、ポリマー、有機金属配位子前駆体、窒素含有有機化合物、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、ホウ素含有有機化合物、ハロゲン化物塩、有機ハロゲン化物、または原子層堆積または化学蒸気堆積によって追加された金属原子を有する追加の有機金属系金属錯体または金属塩とさらに反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
アルケンのアンモ酸化反応、アルケンのエポキシ化、アンモニア合成、カルボキシル化反応、CO
2メタン化反応、CO
2の燃料への変換、メタンからの直接メタノール合成、ドライメタン改質、電気触媒アンモニア酸化、電気触媒酸素還元反応、Fischer-Tropsch合成、液体有機水素担体の水素化/脱水素化、水素化処理および水素化処理エステル化反応、合成ガスからのメタノール合成、逆水性ガスシフト反応、または水性ガスシフト反応を触媒するための、請求項
1に記載の
方法により製造された触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する声明】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省によって授与されたDE-AR0000811および米国エネルギー省によって授与されたDE-FE0026432の下で政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2018年3月26日に出願された“METHOD OF MAKING CONFINED NANOCATALYSTS WITHIN MESOPOROUS MATERIALS AND USES THEREOF,”と題する米国仮特許出願第62/647,949号に関して優先権を主張し、その出願全体が参照により本明細書に援用される。
【技術分野】
【0003】
(1.技術分野)
本開示は、メソポーラス材料(MPM)内に閉じ込められたナノ触媒を作製する方法を提供する。この方法は、ナノ結晶金属有機構造体(MOF)の固体成長と、それに続く制御された変換を利用して、メソポーラス材料内にその場でナノ触媒を生成する。本開示はまた、液体有機水素担体、合成液体燃料の調製、および窒素の固定を含むがこれらに限定されない、多種多様な分野へのナノ触媒の適用を提供する。
【背景技術】
【0004】
(2.背景)
(2.1.序文)
本明細書で提供される「背景」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することを目的としている。この背景セクションに記載されている限りにおいて、現在発明者として記載されている者の研究、同様に出願時に先行技術として適格とならない可能性のある説明の態様は、明示的にも暗示的にも本開示に対する先行技術として認められない。
【0005】
金属有機構造体(MOF)は、窒素下での制御された熱分解、酸素下でのか焼、水素下での還元1などの特定の条件を適用して、触媒活物質を調製するための用途で多様に使用できる前駆体として広く使用されている。(Lee,K.J.;Lee,J.H.;Jeoung,S.;Moon,H.R.:Transformation of Metal-Organic Frameworks/Coordination Polymers into Functional Nanostructured Materials:Experimental Approaches Based on Mechanistic Insights,Accounts of Chemical Research 2017,50,2684-2692.)前駆体としてのMOFの多様性は、主に、テンプレートと前駆体として機能する同時に2つの役割を果たし得る、永続的な多孔性を有する結晶構造に沿って陳列される有機ストラットによって離間した明確な金属部位など、独自の高度に調整可能な機能によるものである。変換時に、MOFは、変換条件に応じて、階層的な足場内に単分散する明確なナノ構造の触媒活性種、つまり酸化剤条件下の微孔性金属酸化物または不活性条件下の微孔性炭素質マトリックスをもたらし得る。得られたナノ構造触媒は、金属、金属酸化物、ヘテロ原子ドープ炭素、およびそれらの組み合わせで構成され得る(Wei,J.;Ge,Q.;Yao,R.;Wen,Z.;Fang,C.;Guo,L.;Xu,H.;Sun,J.:Directly converting CO2 into a gasoline fuel Nat. Commun 2017,8,15174 doi:10.1038/ncomms15174)。
【0006】
より嵩高い粒子の代わりに、前駆体としてナノサイズのMOFドメイン(5~50nm)を使用すると、金属または金属酸化物原子の数を減らすことができ、さらにはサブナノメートルの結晶ドメインまたは指定されたクラスターを形成する変換後の触媒の観点から、いくつかの利点をもたらし得る(Liu,L.C.;Diaz,U.;Arenal,R.;Agostini,G.;Concepcion,P.;Corma,A.:Generation of subnanometric platinum with high stability during transformation of a 2D zeolite into 3D.Nature Materials 2017,16,132-138)。しかし、前駆体としての自立型MOFナノ結晶の使用は、高温下での安定性が低く、必要な変換条件下でより大きな凝集体への融合を促進し得、それによってより大きなMOF前駆体から開始する場合と同じケースになるため、問題がある。したがって、MOFナノ結晶前駆体が高温処理中に焼結するのを回避するための新しい合成ルートが強く求められており、MOF由来の新世代ナノ触媒の開発への道が開かれている。
【0007】
「固体」合成によるメソポーラス材料(MPM)内のMOFナノ結晶の選択的閉じ込めの一般的な方法が近年報告された。この広い用途のアプローチは、MOFゲストの組成、配合、分散、およびメソポーラス材料ホストの組成、細孔径分布、粒子サイズなど、結果として得られるハイブリッド材料の配合とナノアーキテクチャに対して高レベルの設計を提供する。MOF結晶ドメインは、常にメソポーラス材料の保持空洞によって区切られた寸法に制限される。同様に、テストステロン誘導体を合成するための不均一系触媒としての優れた性能が近年実証された(Cirujano,F.G.;Luz,I.;Soukri,M.;Van Goethem,C.;Vankelecom,I.F.J.;Lail,M.;De Vos,D.E.:Boosting the Catalytic Performance of Metal-Organic Frameworks for Steroid Transformations by Confinement within a Mesoporous Scaffold. Angewandte Chemie International Edition,2017,56,13302-13306)。加えて、これらのハイブリッドMOF/MPM材料の燃焼後の燃排気ガス用の流動ハイブリッド吸着剤としてのCO2捕捉能力は、「最先端技術」やその他の用途と比較される。PCT特許出願PCT/US2017/046231(リサーチトライアングルインスティテュート)を参照されたい。
【0008】
近年、Liらの層状複水酸化物(LDH)の外面に支持された単一MOFナノ結晶の、空気中での加熱または還元性雰囲気下での加熱による単一金属または金属酸化物ナノ結晶への直接変換をそれぞれ開示した(Li,P.;Zeng,H.C.:Immobilization of Metal-Organic Framework Nanocrystals for Advanced Design of Supported Nanocatalysts. ACS Applied Materials&Interfaces 2016,8,29551-29564)。著者らは、十分に分散された単一金属または金属酸化物ナノ結晶を得るためのLDH支持体の分散および安定化効果の利点に注目している。Liらのアプローチではメソポーラス材料またはバイメタルMOFは、ナノ触媒、支持体として示されていない。Liらは29552ページにおいて、「ナノスケールMOFは不安定であり、凝集や劣化を起こしやすい」ことを認めている。さらに、この非多孔質材料に支持された結果として生じる金属および金属酸化物ナノ結晶は、焼結またはバルク相への融合により損害を被る傾向がある。
【発明の概要】
【0009】
(3.本発明の概要)
本開示は、(a)少なくとも1つの金属イオンと配位結合を形成することが可能である1つ以上の多座配位子[Ax(L-x)]を備える、少なくとも1つ以上の有機化合物をメソポーラス材料に含浸させて、第1の中間体[(Ax(L-x)/MPM)]を形成するステップと、(b)第1の中間体[(Ax(L-x)/MPM)]を気相の酸に曝して、第2の中間体[(Hx(L-x)/MPM)]を形成するステップと、(c)第2の中間体[(Hx(L-x)/MPM)]に、1つ以上の金属イオン(M1
+y,M2
+y,M3
+y)の溶媒溶液を添加して、メソポーラス材料[MOF/MPM]内に閉じ込められた金属有機構造体(MOF)前駆体を形成する1つ以上の多座配位子と配位結合を形成するステップと、(d)ステップ(c)[MOF/MPM]の前駆体を制御された変換条件下で処理して、メソポーラス材料内に閉じ込められた金属ナノ触媒を形成するステップと、を含む、メソポーラス材料(MPM)内に閉じ込められた金属ナノ触媒を調製する方法を提供する。
【0010】
上記の方法において、ステップ(d)はさらに、ステップ(c)の前駆体[MOF/MPM]を1つ以上の有機化合物(Z)と接触させて、配位結合を形成することが可能である第2の多座配位子[Z/MOF/MPM]を作るステップ(d)(1)と、1つ以上の追加の金属イオンの溶媒溶液を添加して、メソポーラス材料内に閉じ込められた追加の金属を有する修飾MOF前駆体[MOF/MPM]を形成するステップ(d)(2)と、を含み得る。
【0011】
上記の方法において、ステップ(d)(1)のキレート配位子(Z)は、第2の金属イオンを錯化するための金属結合部位を備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、制御された変換条件により、MOF中の炭素の90%を超える炭素がMOF/MPMから放出される。いくつかの場合では、炭素のほぼ100%が放出され得る。たとえば、95%超、97%超、99%超などである。
【0013】
他の実施形態では、制御された変換条件により、MOF中の炭素の50%±10%がMOF/MPMから放出される。あるいは、30%±10%、40%±10%、60%±10%、または70%±10%が放出され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、制御された変換条件下での処理は、不活性ガス雰囲気中での約300°C~約1000°Cの温度での熱分解である。より具体的には、不活性雰囲気の熱分解は、350°C±50°C、400°C±50°C、450°C±50°C、500°C±50°C、550°C±50°C、600°C±50°C、650°C±50°C、700°C±50°C、750°C±50°C、800°C±50°C、850°C±50°C、900°C±50°C、または950°C±50°Cであり得る。
【0015】
他の実施形態では、制御された変換条件下での処理は、酸素ガスを含む雰囲気中での約300°C~約600°Cの温度でのか焼である。より具体的には、か焼は、350°C±50°C、400°C±50°C、450°C±50°C、500°C±50°C、または550°C±50°Cであり得る。か焼雰囲気は空気であり得る。あるいは、か焼雰囲気は、酸素に富んだ空気であっても、または酸素が枯渇した空気であってもよく、MOF/MPM内の炭素と反応するのに十分な濃度の酸素を含有したままでもよい。
【0016】
さらに他の実施形態では、制御された変換条件下での処理は、約25°C~約300°Cの温度での水素による還元などの、還元性雰囲気での処理である。より具体的には、か焼は、50°C±25°C、75°C±25°C、100°C±25°C、125°C±25°C、150°C±25°C、175°C±25°C、200°C±25°C、225°C±25°C、250°C±50°C、または275°C±25°Cであり得る。還元性雰囲気は、100%水素、90±5%水素、80±5%水素、70±5%水素、60±5%水素、50±5%水素、40±5%水素、30±5%水素、20±5%水素、または10±5%水素であり得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、閉じ込められたナノ触媒はモノメタル(M1)である。
【0018】
他の実施形態では、閉じ込められたナノ触媒はバイメタル(M1+M2)である。
【0019】
さらに他の実施形態では、閉じ込められたナノ触媒は、3つ以上の金属を有する。
【0020】
一実施形態では、メソポーラス材料内に閉じ込められたナノ触媒は、10nm未満の直径を有する。他の実施形態では、ナノ触媒は、約2~約4nm、約3~約5nm、約4~約6nm、約5~約7nm、約6~約8nm、約7~約9nm、または約8~約10nmの直径を有する。
【0021】
一実施形態では、メソポーラス材料は、メソポーラス金属酸化物、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボン、メソポーラスポリマー、メソポーラスシリコアルミナ(ゼオライト)、メソポーラス有機シリカ、またはメソポーラスアルミノリン酸である。メソポーラス金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、または酸化マグネシウムであり得る。
【0022】
一実施形態では、メソポーラス材料は、約100m2/g~約1000m2/gの表面積を有する。
【0023】
一実施形態では、金属イオン(M1
+y,M2
+y,M3
+y)は、Al、Au、Ce、Co、Fe、Ir、Mo、Ni、Pd、Rh、Ru、Ti、VおよびZrまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。具体的な反応と金属触媒の組み合わせは次のとおりである。
【0024】
アルケンのアンモ酸化反応(Bi-Mo、V-Mo、V-Sb、Fe-Sb、Cr-Sb、Cr-Nb、Fe-Nb)、James F. Brazdil Catalysts 2018,8(3),103;doi:10.3390/catal8030103.
【0025】
アルケンエポキシ化(Mn-Fe)、Vincent Escande,Eddy Petit,Laetitia Garoux,Clotilde Boulanger,およびClaude Grison ACS Sustainable Chem.Eng.,2015,3(11),pp2704-2715.
【0026】
アンモニア合成(Co-Mo,Fe-Mo)、Yuki Tsuji,Masaaki Kitano,Kazuhisa Kishida,Masato Sasase,Toshiharu Yokoyama,Michikazu Hara and Hideo Hosono Chem.Commun.,2016,52,14369-14372.
【0027】
カルボキシル化反応(Ni-Zn)、Qiang Liu,Lipeng Wu,Ralf Jackstell&Matthias Beller Nature Communications,2015,6,5933.
【0028】
CO2メタン化反応(Zr-Ce,Ni-Ce,N-Ti)、F Ocampo F,B Louis,A Kiennemann,A C Roger IOP Conf. Series:Materials Science and Engineering 19(2011)012007.
【0029】
メタンからの直接メタノール合成(Fe-Mo,Ni-Mg,Co-Mo)、Manoj Ravi,Marco Ranocchiari and Jeroen A. van Bokhoven Angew.Chem.Int.Ed.2017,56,16464.
【0030】
ドライメタン改質(Ni-Mg,Ni-Al)、Radosl/aw Debek,Maria Elena Galvez,Franck Launay,Monika Motak,Teresa Grzybek&Patrick Da Costa International Journal of Hydrogen Energy,2016,41,11616-11623.
【0031】
電極触媒アンモニア酸化(Ru-Zr,Pt-Ir,Pt-Pd) Denver Cheddie“Ammonia as a Hydrogen Source for Fuel Cells: A Review”Chapter 13 from a book edited by Dragica Minic called“Hydrogen Energy-Challenges and Perspectives”
【0032】
内燃機関用触媒コンバータ(Pt-Rh,Ce-Pt-Rh) Farrauto and Heck,Catalytic converters:state of the art and perspectives,Catalysis Today,1999,51(3-4),351-360.
【0033】
一実施形態では、MOFの多座配位子は、テレフタレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、2,5-ジオキシベンゼンジカルボキシレート、ビフェニル-4,4´-ジカルボキシレート、イミダゾレート、ピリミジン-アゾレート、トリアゾレート、テトラゾレート、それらの誘導体または組み合わせからなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、MOFは、HKUST-1、M2(dobpdc)、MIL-100、MIL-101、MIL-53、MOF-74、NU-1000、PCN-222、PCN-224、UiO-66、UiO-67、ZIF-8、ZIFまたはそれらの誘導体であり得る。
【0035】
一実施形態では、メソポーラス材料は、MCM-41、SBA-15、または市販のシリカからなる群から選択される。
【0036】
一実施形態では、MOFの有機配位子の遊離官能基は、アミノ、ビピリジン、塩化物、ヒドロキシル、ポルフィリン、エステル、アミド、ケトン、酸、ヒドラジン、またはオキシムから選択される。
【0037】
キレート配位子(Z)がサリチルアルデヒド、エチルクロロオキソアセテート、ピリジンアルデヒド、ヒドロキシメチルホスフィン、ピロールアルデヒド、エチレンジアミン、ピコリネート、ジメチルグリオキシメート、2,2´,2´´-テルピリジン、1,4,7,10-トリエチレンテトラミン、1,4,8,11-トリエチレンテトラミン、フェナントロリンおよびビスジフェニルホスフィノエタンまたはホスフィンアルデヒドから選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、メソポーラス材料内に閉じ込められたナノ触媒は、追加の有機金属系金属錯体またはポリマーとの金属塩、有機金属配位子前駆体、窒素含有有機化合物、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、ホウ素含有有機化合物、ハロゲン化物塩、有機ハロゲン化物、もしくは原子層堆積または化学蒸気堆積によって追加された金属原子とさらに反応する。
【0039】
本開示はまた、上記の方法によって作製された触媒を提供する。
【0040】
触媒は、追加の金属促進剤をさらに備え得る。
【0041】
本開示はまた、使用を提供する。上記の触媒は、アルケンのアンモニア化反応、アルケンのエポキシ化、アンモニア合成、カルボキシル化反応、CO2メタン化反応、CO2の燃料への変換、メタンからの直接メタノール合成、ドライメタン改質、電気触媒アンモニア酸化、電気触媒酸素還元反応、Fischer-Tropsch合成、液体有機水素担体の水素化/脱水素化、水素化処理および水素化処理エステル化反応、合成ガスからのメタノール合成、逆水性ガスシフト反応、または水性ガスシフト反応を触媒するために使用され得る。
(4.図面の簡単な説明)
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】MOFナノ結晶のバイメタル酸化物ナノ触媒への、単一ナノ結晶から単一ナノ触媒への変換の一般的なアプローチを説明する図解である。TEM画像は(a)SBA-15および(b)(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15である。STEM画像は(c)PdCl-SI-(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15および(d)Pd
NC/SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15である。
【
図2】MOFナノ結晶上の遷移金属錯体の取り込みとその後のバイメタルナノ触媒を調製するための制御された変換処理とのための2段階の合成後修飾(PSM)を示す図解である。この制御された変換処理の図解は、SBUに金属酸化物を1つだけ含有するモノメタルMOFナノ結晶に有効である。低MOF配合(15wt%未満)は、MOFナノ結晶間の十分な初期間隔を取得するための十分な要因であることがわかっている。より高いMOF配合(20~40wt.%)は、結晶子間の距離を短くし、それにより、変換処理中に凝集体を形成する傾向を高める。
【
図3】バイメタル[M
2-Z-(M
1)MOF/MPM]前駆体材料の典型的な特性評価ルーチン:FTIR、XRD、表面積、および細孔分布である。
【
図4a】窒素下の650°Cでの熱分解によって処理されたPd-SI-(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15から調製されたSBA-15内に閉じ込められた無炭素PdZrO
2ナノ触媒のSTEM画像およびEDSである。
【
図4b】酸素下の500°Cでのか焼によって処理されたPd-SI-(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15から調製されたSBA-15内に閉じ込められたPdZrO
2ナノ触媒のSTEM画像およびEDSである。
【
図4c】水素下の200°Cで還元処理されたPd-SI-(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15から調製されたSBA-15内に閉じ込められたPdNC/(Zr)UiO-66(NH
2)ナノ触媒のSTEM画像およびEDSである。
【
図5】(左)窒素および空気下でのサンプルPdCl-SI-(Zr)UiO-66(NH
2)/SBA-15のTGAプロファイルである。(右)
図1に示すような900°Cの窒素下での熱分解によるPdZrO
2/SBA-15サンプルの調製の連続ステップのFTIRスペクトルである。
【
図6】応用例、固体状態の液体有機水素担体の水素化/脱水素化の結果である。
【
図7】(Fe)MIL-100/SiO
2から調製されたさまざまな配合で、Fe
3O
4/SiO
2およびFeC/SiO
2触媒によって触媒される燃料反応へのCO
2のいくつかの結果の、クラリアント市販触媒と比較した適用例。
【
図8】さまざまな比率のH
2/CO
2でFeC/SiO
2によって触媒される燃料反応への異なるCO
2の適用例。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(5.発明の詳細な説明)
この開示は、MOFナノ結晶の制御された変換を介してナノサイズの触媒を調製するための新しい方針を提供する。これらの触媒は、以前または以後にメソポーラス材料内に閉じ込められた追加の有機金属系金属錯体または金属塩で必要に応じて装飾され得、およびまたは必要に応じて、ポリマー、有機金属配位子前駆体、窒素含有有機化合物、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、ホウ素含有有機化合物、ハロゲン化物塩、有機ハロゲン化物、原子層堆積または化学蒸気堆積を介して添加された金属原子、またはメソポーラス材料内に以前または以後に閉じ込められた他の化合物で装飾され得る。この一般的な方法は、分散、ナノサイズの寸法、および元の担体前駆体のメソポーラスマトリックスに沿った3D分布を得られた触媒に保存し、こうしてナノメートルおよびサブナノメートルの活性種(金属、金属酸化物、Nドープ炭素、Pドープ炭素、Sドープ炭素、Bドープ炭素、ハロゲン化物ドープ炭素、およびそれらの組み合わせなど)の形成を、ハイブリッド前駆体(すなわち、有機金属系金属錯体、金属塩、ポリマー、有機金属配位子前駆体、窒素含有有機物、リン含有有機物、硫黄含有有機物、ホウ素含有有機物、ハロゲン化物塩、有機ハロゲン化物、MOFおよびメソポーラス足場)の適切な選択を用いることにより、高精度で促進する。
【0044】
好ましい実施形態では、変換処理は、3つの異なる条件:熱分解、か焼または還元、で行うことができる。ハイブリッドMOF/MPM材料について最近報告されたように、拡散の強化、化学的安定性の向上、優れた耐摩耗性、および実行可能な取り扱いなど、結果として得られる支持されたナノ触媒をメソポーラス足場に閉じ込めることにより、追加の特性が付与される(Luz, I.;Soukri, M.;Lail, M.:Confining Metal-Organic Framework Nanocrystals within Mesoporous Materials:A General Approach via “Solid-State”Synthesis. Chemistry of Materials 2017 29 9628-9638)。
【0045】
MOFは、窒素またはその他の不活性ガス下での制御された熱分解、酸素下でのか焼、水素またはその他の還元ガス下での還元など、特定の条件を適用して触媒活物質を調製するための用途の広い前駆体として広く使用されている。得られる固体触媒は、金属、金属酸化物、窒素ドープ炭素、リンドープ炭素、硫黄ドープ炭素、ホウ素ドープ炭素、ハロゲン化物ドープ炭素、およびそれらの組み合わせから構成され得る(Weiら、2017)。上記の処理のうちの1つにおいて、前駆体として、嵩高い粒子の代わりにナノサイズのMOFドメイン(直径5~50nm)を使用すると、単結晶内またはクラスター内の金属原子の数を減らすことができるため(Liu,L.C.;Diaz,U.;Arenal,R.;Agostini,G.;Concepcion, P.;Corma,A.:Generation of subnanometric platinum with high stability during transformation of a 2D zeolite into 3D. Nature Materials 2017,16,132-138)、触媒の観点からいくつかの利点を有する。しかし、前駆体としての自立型バルクMOFナノ結晶の使用は、それらの必要な変換処理を適用すると、得られる材料の表面下領域の深部に集中する大量の到達できない金属部位と、より大きな凝集体への融合を引き起こす高温下での低い安定性とのため、問題がある。したがって、MOF由来のナノ触媒の濃度を触媒表面に限定し、MOFナノ結晶が高温処理中に焼結するのを回避し、MOF由来の新世代ナノ触媒の開発への道を開くための新しい合成経路が強く求められている。
【0046】
我々のグループは最近、「固体」結晶化を介してメソポーラス材料内でMOFナノ結晶を選択的に支持するための新しい方法を報告した。この用途の広いアプローチは、MOFゲストの組成、配合、分散、メソポーラス材料ホストの組成、細孔径分布、粒子サイズなど、結果として得られるハイブリッド材料の配合とナノアーキテクチャに対して高レベルの設計を提供する。MOFナノ結晶のサイズは、常にメソポーラス材料の保持空洞によって区切られた寸法に制限される。同様に、最近、テストステロン誘導体を合成するための不均一系触媒として優れた触媒活性を示した(Cirujanoら、2017)。さらに、これらの材料は、「最先端」技術や、クロマトグラフィなどの他の用途と比較して、ハイブリッドMOF/MPM材料の燃焼後の燃排気ガス用の流動ハイブリッド吸着剤として、CO2捕捉能力を有する。PCT特許出願PCT/US2017/046231(リサーチトライアングルインスティテュート)を参照されたい。
【0047】
ここではそれらの、支持され十分に分散されたMOFナノ結晶が、単一ナノ結晶から単一ナノ触媒への変換を通じて、ナノサイズのモノメタル、二金属、または多金属系金属酸化物を調製するための最適な前駆体として使用され得ることを示している。これは(1)窒素または他の不活性ガス下での熱分解(500~1000°C)、(2)酸素の存在下でのか焼(400~800°C)、または(3)水素または他の適切な還元ガス下での化学的還元(室温~300°C)でなされ得る。このアプローチは、メソポーラス材料の表面積に沿って得られたナノ触媒上のMOF前駆体の初期の3D分布を維持し、これにより、担持触媒の失活の主な原因の1つである、ナノ結晶がより大きな結晶子に融合する傾向を回避する(Prieto,G.;Zecevic,J.;Friedrich,H.;de Jong,K.P.;de Jongh,P.E.:Towards stable catalysts by controlling collective properties of supported metal nanoparticles. Nature Materials 2013,12,34-39)。したがって、より安定で高活性のサブナノメートル触媒(<1nm)が我々の一般的な手法によって調製され、液体有機水素担体の水素化/脱水素化、メタンからの直接メタノール合成、合成ガスからのメタノール合成、CO2メタン化、アンモニア合成、Fischer-Tropsch合成、ドライメタン改質、アルケンエポキシ化、水性ガスシフト、逆水性ガスシフト、水素化処理および水素化処理エステル化、カルボキシル化、電気触媒酸素還元反応、電気触媒アンモニア酸化、アルケンのアンモ酸化、触媒燃焼、および燃料へのCO2、その他など、産業的に高い関心を得るいくつかの触媒反応についてテストされた。
【0048】
第1のステップでは、式Ax(L-x)の有機配位子塩の水溶液を、10~300mg/mL、好ましくは25~275mg/mL、好ましくは50~250mg/mLの範囲の濃度で存在するメソポーラス材料(MPM)と接触させて、式Ax(L-x)/MPMの含浸メソポーラス塩材料を形成する。例示的な塩には、アミンなどの塩基性基の無機または有機酸塩、ならびにカルボン酸などのアルカリまたは酸性基の有機塩が含まれるが、これらに限定されない。塩には、例えば、非毒性の無機または有機酸から形成された、従来の親化合物の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。カルボン酸含有配位子の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、追加のアルカリ金属などのカチオンを含み得る。塩には、例えば、非毒性の無機または有機酸から形成された、従来の非毒性塩または親化合物の第四級アンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、塩はアルカリ金属塩、最も好ましくはナトリウム塩である。好ましい実施形態では、接触は、最大80°C、好ましくは10~80°C、好ましくは15~60°C、好ましくは20~40°C、好ましくは22~30°Cの温度で、またはほぼ室温で行われ、最大48時間、好ましくは0.5~36時間、好ましくは1~24時間、好ましくは2~12時間、好ましくは2.5~8時間、好ましくは3~6時間の接触時間を有する。いくつかの実施形態において、配位子(すなわち、酸形態;2,6-ジヒドロキシテレフタル酸)は、水または有機溶媒に溶解および含浸され得る。例示的な有機溶媒には、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトンなどが含まれ、これらに限定されない。
【0049】
第2のステップでは、10~300mg/mL、好ましくは25~275mg/mL、好ましくは50~250mg/mLの範囲の濃度で存在する含浸メソポーラス塩材料を気相酸で処理して、式Hx(L-x)/MPMの含浸メソポーラス酸材料を形成する。気相酸は、HClなどの無機酸であり得る。好ましい実施形態では、ガス処理は、最大150°C、好ましくは10~120°C、好ましくは15~110°C、好ましくは20~40°C、好ましくは22~30°C、またはほぼ室温の温度で実施され、最大48時間、好ましくは0.5~36時間、好ましくは1~24時間、好ましくは2~12時間、好ましくは2.5~8時間、好ましくは3~6時間の処理時間を有する。温度は酸の選択に依存する。有機酸は、100°C±50°C、好ましくは100°C±20°C、好ましくは100°C±10°C、好ましくは100°C±5°Cの温度であり得る。一方、HClで飽和した窒素による処理は、30°C±20°C、好ましくは30°C±10°C、好ましくは30°C±5°Cであり得る。
【0050】
あるいは、結合配位子は、0.05~10.0M、好ましくは0.1~9.0M、好ましくは1.0~8.0M、好ましくは2.0~6.0M、または約4.0Mの濃度の酸性水溶液で処理され得、式Hx(L-x)/MPMの含浸メソポーラス酸材料を形成する。HCl、H2SO4、およびHNO3を含むがこれらに限定されない強酸が好ましいが、有機酸および弱酸(すなわち酢酸)も処理に使用することができ、最も好ましくはHClである。好ましい実施形態では、溶液処理は、最大80°C、好ましくは10~80°C、好ましくは15~60°C、好ましくは20~40°C、好ましくは22~30°C、またはほぼ室温の温度で実施され、最大48時間、好ましくは0.5~36時間、好ましくは1~24時間、好ましくは2~12時間、好ましくは2.5~8時間、好ましくは3~6時間の処理時間を有する。
【0051】
第3のステップにおいて、10~300mg/mL、好ましくは25~275mg/mL、好ましくは50~250mg/mLの範囲の濃度で存在する含浸メソポーラス酸材料を、式M+yの金属前駆体の水溶液と接触させて、含浸メソポーラス金属有機構造体前駆体を形成する。好ましい実施形態では、接触は、最大80°C、好ましくは10~80°C、好ましくは15~60°C、好ましくは20~40°C、好ましくは22~30°Cの温度で、またはほぼ室温で行われ、最大48時間、好ましくは0.5~36時間、好ましくは1~24時間、好ましくは2~12時間、好ましくは2.5~8時間、好ましくは3~6時間の接触時間を有する。
【0052】
次のステップでは、含浸メソポーラス金属有機構造体前駆体は、溶媒の非存在下で加熱されるか、溶媒の非存在下で揮発性蒸気(すなわち、メチルアミンなどのアミンまたは蒸気などの制御された水分)に曝されて式(M+yL-x)/MPMのハイブリッド材料(または以降MOF/MPMと呼ぶ)を形成する。このステップでは、金属イオンは1つ以上の有機配位子、好ましくは多座有機配位子と配位結合を形成して、メソポーラス材料の細孔空間にナノ結晶金属有機構造体を形成する。好ましい実施形態では、加熱は、最大300°C、好ましくは40~250°C、好ましくは60~220°C、好ましくは100~200°C、好ましくは120~190°Cの温度で行われ、加熱時間は最大60時間、好ましくは12~48時間、好ましくは24~36時間である。好ましい実施形態では、蒸気への暴露は、最大80°C、好ましくは10~80°C、好ましくは15~60°C、好ましくは20~40°C、好ましくは22~30°C、またはほぼ室温の温度で行われ、最大48時間、好ましくは6~36時間、好ましくは12~24時間の加熱時間を有する。特定の実施形態において、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドなどを含むがこれらに限定されない特定の添加剤の触媒量を使用して、ハイブリッド材料内の結晶形成を支援することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、MOF/MPMは、有機化合物で処理されて別の配位子を形成し、次いで、少なくとも1つ以上の追加の金属で処理されて、MOFとの結合を作り出す。まとめると、モノメタル、バイメタル、トリメタル、マルチメタルのいずれであっても、これらの金属は次のステップのためにMPMに限定されたMOFの一部となる。他の実施形態では、MOF/MPM(モノ、バイ、トリ、ポリメタルの)は、追加の金属触媒または促進剤の塩を含有する溶液と接触する。次に、修飾されたMOF/MPMを乾燥させ、以下に説明する制御された変換条件で処理する。
【0054】
最後のステップでは、埋め込まれたMOFまたはMOF/MPMに制御された変換条件を適用して、閉じ込められたナノ触媒を生成する。制御された変換は、(1)窒素または他の不活性ガス下での熱分解であり得る。ここで、窒素(またはArなどの他の不活性ガスまたはアセチレンなどの他の反応性ガス)下で300°C~1000°Cの範囲の温度で変換を実行するとナノ結晶が得られる。いくつかの実施形態では、300°C~500°C、好ましくは400~600°C、好ましくは500~700°C、好ましくは600~800°C、好ましくは700~900°C、好ましくは800~1000°Cの範囲の温度である。
【0055】
あるいは、制御された変換は、(2)酸素含有雰囲気中でのか焼であり得る。変換処理に酸素含有雰囲気が存在する場合、すべての有機材料は低温で放出される。炭素を含まないナノ触媒は、300~600°C、好ましくは300~350°C、好ましくは400~450°C、好ましくは450~500°C、好ましくは500~550°C、好ましくは550~600°Cの温度で得られる。
【0056】
あるいは、制御された変換は、(3)水素含有雰囲気での還元であり得る。変換のために水素が大気中に存在する場合、温度はさらに低い(室温から300°Cまで)。MOFナノ結晶を装飾する遷移金属カチオンが還元されて、MOFおよび/またはMPMの微孔性空洞内に閉じ込められた金属ナノ結晶を形成するが、MOF炭素微細構造は完全には分解されない。いくつかの実施形態において、還元的変換のための温度は、25~50°C、好ましくは50~75°C、好ましくは75~100°C、好ましくは100~125°C、好ましくは125~150°C、好ましくは150~175°C、好ましくは175~200°C、好ましくは200~225°C、好ましくは225~250°C、好ましくは250~275°C、好ましくは275~300°Cである。
【0057】
特定の実施形態では、閉じ込められた金属ナノ結晶は、メソポーラス材料のメソ細孔または空隙内にのみ存在し、メソポーラス材料のメソ細孔または空隙内に均一に分散している。本明細書で使用される場合、「組み込まれる」、「埋め込まれる」または「含浸される」は、全体にわたって完全にまたは部分的に満たされ、飽和され、浸透され、および/または注入されることを表す。閉じ込められた金属ナノ結晶は、メソポーラス材料の細孔空間内に実質的に固定され得る。閉じ込められた金属ナノ結晶は、物理吸着または化学吸着およびそれらの混合物などの任意の合理的な方法でメソポーラス材料に固定され得る。一実施形態では、メソポーラス材料の細孔空間の10%超が、閉じ込められた金属ナノ結晶によって占められ、好ましくは15%超、好ましく20%超、好ましくは25%超、好ましくは30%超、好ましくは35%超、好ましくは40%超、好ましく45%超、好ましくは50%超、好ましくは55%超、好ましくは60%超、好ましくは65%超、好ましくは70%超、好ましくは75%超、好ましくは80%超、好ましくは85%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは96%超、好ましくは97%超、好ましくは98%超、好ましくは99%超である。あるいは、メソポーラス材料の細孔空間の5~10%が占有され得る。
【0058】
特定の実施形態では、閉じ込められた金属ナノ結晶は、実質的にメソポーラス材料のメソ細孔または空隙内にのみ存在し、メソポーラス材料の外面に均一に分散され、好ましくは、閉じ込められた金属ナノ結晶の60%超が、好ましくは70%超が、好ましくは75%超が、好ましくは80%超が、好ましくは85%超が、好ましくは90%超が、好ましくは95%超が、好ましくは96%超が、好ましくは97%超が、好ましくは98%超が、好ましくは99%超が、メソポーラス材料の表面ではなく、細孔空間に位置する。本明細書で使用される場合、均一分散は、類似または同じ方法での分散を指し、均一な構造および組成を指し得る。MPMに分布するナノ触媒の変動係数は、10%未満、好ましくは8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3%未満、好ましくは2%未満である。MPMの表面は、一般にナノ触媒を実質的に含まない。
【0059】
特定の実施形態では、この方法は、含浸メソポーラス塩材料、含浸メソポーラス酸材料、含浸メソポーラス金属有機構造体前駆体、およびハイブリッド材料からなる群から選択される少なくとも1つを、真空下で25~160°C、好ましくは85~150°C、好ましくは90~140°C、好ましくは100~130°Cの範囲の温度で、または約120°Cで、最大24時間、好ましくは0.5~18時間、好ましくは1~12時間、好ましくは1.5~6時間、または約2時間の乾燥時間で、乾燥させることをさらに含む。
【0060】
特定の実施形態では、この方法は、ハイブリッド材料を蒸留水または他の極性プロトン性溶媒で洗浄し、メタノールまたは他の極性プロトン性溶媒をリサイクルするソックスレーシステムでハイブリッド材料から水を抽出することをさらに含む。
【0061】
好ましい実施形態では、メソポーラス材料は、メソポーラス金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなど)、メソポーラスシリカ、メソポーラス炭素メソポーラスポリマー、メソポーラスシリコアルミナ(ゼオライト)、メソポーラス有機シリカ、およびメソポーラスアルミノリン酸など)からなる群から選択される少なくとも1つである。本明細書で使用される場合、メソポーラス材料は、2~50nmの直径を有する細孔を含む材料を指し得、多孔質材料は、それらの細孔サイズによっていくつかの種類に分類される。好ましい実施形態では、メソポーラス材料は、10%超、好ましくは20%超、好ましくは25%超、好ましくは30%超、好ましくは35%超、好ましくは40%超の多孔率を有する。
【0062】
好ましい実施形態において、有機配位子塩の有機配位子(L-x)は、ポリカルボン酸配位子、アザヘテロ環配位子、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである。本明細書で使用される場合、「配位子」は、1つの遷移金属または複数の遷移金属にそれぞれ結合する単座または多座の化合物を指す。一般に、連結部分は、1~20個の炭素原子を備えるアルキルまたはシクロアルキル基、1~5個のフェニル環を備えるアリール基、1~20個の炭素原子を有するアルキルまたはシクロアルキル基を備えるアルキルまたはアリールアミン、または1~5個のフェニル環を備えるアリール基、に共有結合した下部構造を備え、連結クラスター(例えば、多座官能基)は下部構造に共有結合している。シクロアルキルまたはアリール下部構造は、環を構成するすべての炭素、または炭素と窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、ケイ素および/またはアルミニウム原子との混合物のいずれかを含む1~5個の環を備え得る。通常、連結部分は、共有結合した1つ以上のカルボン酸連結クラスターを有する部分構造を備える。
【0063】
好ましい実施形態では、有機配位子塩の有機配位子(L-x)は、テレフタレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、2,5-ジオキシベンゼンジカルボキシレート、ビフェニル-4,4´-ジカルボキシレートおよびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましい実施形態において、有機配位子塩の有機配位子(L-x)は、イミダゾリド、ピリミジン-アゾレート、トリアゾレート、テトラゾレートおよびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである。追加の適切な例示的な配位子には、二座カルボン酸塩(すなわち、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、三座カルボン酸塩(すなわち、クエン酸、トリメシン酸)、アゾール(すなわち、1,2,3-トリアゾール、ピロジアゾール)スクアリン酸およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
好ましい実施形態では、金属前駆体の金属(M+y)は、Mg、V、Cr、Mo、Zr、Hf、Mn、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Ru、Al、およびGaからなる群から選択される少なくとも1つの遷移金属である。本明細書で使用される場合、「金属イオン」は、元素の周期表の第Ia族、第IIa族、第IIIa族、第IVa族から第VIIIa族、および第IB族から第VIb族の元素からなる群から選択される。特定の他の実施形態では、金属前駆体は、金属酸化物のクラスターを備え得る。
【0065】
好ましい実施形態では、金属有機構造体は、MIL-101、MIL-100、MIL-53、MOF-74、UiO-66、UiO-67、ZIF-8、ZIF、HKUST-1、M2(dobpdc)、NU-1000、PCN-222、PCN-224、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1つである。本明細書で使用される場合、金属有機構造体は、多孔性の特別な特徴を備えた、一次元、二次元、または三次元構造を形成するために有機配位子に配位された金属イオンまたはクラスターからなる化合物を指し得る。より正式には、金属有機構造体は、潜在的空孔を含む有機配位子との配位ネットワークである。好ましい実施形態では、ナノ結晶MOFは、10%超、好ましくは20%超、好ましくは25%超、好ましくは30%超、好ましくは35%超、好ましくは40%超の多孔率を有する。MOFは、金属イオンまたは金属イオンのクラスターと、しばしばリンカーと呼ばれる有機分子との、2つの主要な要素で構成されている。この有機単位は、通常、一価、二価、三価、または四価の配位子である。金属およびリンカーの選択により、MOFの構造と特性が決まる。たとえば、好ましい金属の配位は、金属に結合し得る配位子の数と方向とを決定することにより、細孔のサイズと形状に影響を与える。
【0066】
好ましい実施形態では、ハイブリッド材料は、ハイブリッド材料の総重量に対して5~50%の範囲、好ましくは15~45%、好ましくは25~40%、好ましくは30~35%、または少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも45%の重量パーセントの金属有機構造体を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、メソポーラス材料(MPM)は、2~50nm、好ましくは4~45nm、好ましくは6~40nmの範囲の平均直径を有するメソ細孔と、0.5~5.0nm、好ましくは1.0~4.5nm、好ましくは2.0~4.0nmの範囲の平均直径を有するミクロ細孔を含む。好ましい実施形態では、メソ細孔、ミクロ細孔、またはその両方は、変動係数が10%未満、好ましくは8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満、好ましくは3%未満の単分散である。好ましい実施形態では、ハイブリッド材料は、10%超、好ましくは20%超、好ましくは25%超、好ましくは30%超、好ましくは35%超、好ましくは40%超の多孔率を有する。好ましい実施形態では、ハイブリッド材料は、むきだしのメソポーラス材料と比較して減少したメソ多孔性を有し、むきだしのメソポーラス材料と比較して大きなミクロ多孔性を有する。
【0068】
好ましい実施形態では、閉じ込められた金属ナノ結晶は、10nm未満、好ましくは8nm未満、好ましくは5nm未満、好ましくは2.5nm未満の平均最長直線寸法を有する。
【0069】
好ましい実施形態では、MPMは、100~1200m2/g、好ましくは200~1100m2/g、好ましくは300~1000m2/g、好ましくは400~900m2/g、好ましくは500~950m2/g、好ましくは600~900m2/g、好ましくは700~850m2/g、または少なくとも400m2/g、好ましくは少なくとも600m2/g、好ましくは少なくとも800m2/g、好ましくは少なくとも1000m2/gの範囲の表面積を有する。
【0070】
以下の用語は当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、現在開示されている主題の説明を容易にするために記載されている。
【0071】
本明細書全体を通して、「約」および/または「概算」という用語は、数値および/または範囲と組み合わせて使用され得る。「約」という用語は、記載された値に近い値を意味すると理解される。たとえば、「約40(単位)」は、40の±25%以内(たとえば、30から50)、±20%以内、±15%以内、±10%以内、±9%以内、±8%以内、±7%以内、±6%以内、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±1%未満、またはその他の任意の値またはその範囲の中またはそれより下の値を意味し得る。さらに、「約(値)未満」または「約(値)超」という句は、本明細書で提供される「約」という用語の定義を考慮して理解されるべきである。「約」と「おおよそ」という用語は同じ意味で使用され得る。
【0072】
本明細書全体を通して、特定の量について数値範囲が提供されている。これらの範囲は、その中のすべての部分範囲を備えることを理解されたい。したがって、「50から80」の範囲には、その中のすべての可能な範囲が含まれる(たとえば、51-79、52-78、53-77、54-76、55-75、60-70など)。さらに、所与の範囲内のすべての値は、それによって包含される範囲の終端であり得る(例えば、範囲50~80は、55~80、50~75などのような終点を有する範囲を含む)。
【0073】
本明細書で使用される場合、本明細書および特許請求の範囲およびその活用形で使用される動詞「含む、備える(comprise)」は、その単語に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目が除外されないことを意味する、非限定的な意味で使用される。
【0074】
仕様全体を通して、「含む、備える(comprising)」という単語、または「含む、備える(comprises)」または「含む、備える(comprising)」などのバリエーションは、記載された要素、整数またはステップ、もしくは要素、整数またはステップのグループを含むことを意味するが、他の要素、整数またはステップ、もしくは要素、整数またはステップのグループの除外はしないことを理解されたい。本開示は、特許請求の範囲に記載のステップ、要素、および/または試薬を適切に「含む、備える(comprise)」、「からなる(consist of)」、または「実質的に~からなる(consist essentially of)」ことができる。
【0075】
請求項は、任意の要素を除外するために立案され得ることにさらに留意されたい。したがって、この声明は、請求要素の列挙に関連して「単独(solely)」、「のみ(only)」などの排他的用語を使用するための先行詞として、または「否定的(negative)」制限を使用するための先行詞として機能することを意図している。
【0076】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。好ましい方法、デバイス、および材料が説明されているが、本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に使用することができる。本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0077】
以下の実施例は、開示をさらに説明するものであり、範囲を限定することを意図するものではない。特に、本開示は、記載された特定の実施形態に限定されず、もちろん変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【実施例】
【0078】
(6.実施例)
(6.1.材料および方法)
化学物質。すべての化学物質は、さらに精製することなく、シグマアルドリッチから受領したままで使用した。Cr(NO3)3・9H2O、CrCl3・6H2O、Al(NO3)3・9H2O、AlCl3xH2O、Co(NO3)2・6H2O、Ni(NO3)2・6H2O、ZrOCl2・8H2O、RuCl3・xH2O、Zn(NO3)3・9H2O、1,4-ベンゼンジカルボン酸(H2BDC)、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(H3BTC)、2-アミノテレフタル酸(H2BDC(NH2))、2-スルホテレフタレート一ナトリウム(H2BDC(SO3Na))、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(H4DOBDC)、2,2´-ビピリジン-5,5´-ジカルボン酸(H2BpyDC)、2-メチルイミダゾール(HMeIM)、テトラキス(4-カルボキシ-フェニル)-ポルフィリン(H4TCPP)。1,3,6,8-テトラキス(p-安息香酸)ピレン(H4TBAPy)は、公開されている手順に従って合成された。Deria,P.;Bury,W.;Hupp,J.T.;Farha,O.K.:Versatile functionalization of the NU-1000 platform by solvent-assisted ligand incorporation. Chem. Commun. 2014,50,1965-1968.を参照されたい。トリエチルアミン(TEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、およびメタノール(MeOH)は、分析グレード(シグマアルドリッチ)であった。
【0079】
メソポーラス材料。シリカ(A)(75-250μm)、シリカ(B)(200-500μm)、シリカ(C)(75-200μm)およびシリカ(D)(75-150μm)は、当社の商用パートナーから提供された。SBA-15は公開された手順に従って調製された。Zhao,D.Y.;Feng,J.L.;Huo,Q.S.;Melosh,N.;Fredrickson,G.H.;Chmelka,B.F.;Stucky,G.D.:Triblock copolymer syntheses of mesoporous silica with periodic 50 to 300 angstrom pores.Science 1998,279,548-552.MCM-41はクレイテック(イーストランシング、ミシガン州)、γ-Al2O3はサソール(ヒューストン、テキサス州)、TiO2はザハトレーベン(ハウザッハ、ドイツ)、ZrO2はメルケミカルズ(マンチェスター、イギリス)から提供された。メソポーラス炭素とHayeSepA(スペルコ)(100~120μm)はシグマアルドリッチから供給された。すべてのメソポーラス材料を真空下で120°Cで一晩脱気して、吸着水を除去した。
【0080】
配位子塩前駆体。Na2BDCおよびNa3BTC配位子塩前駆体は、有機リンカーのカルボン酸を脱プロトン化するのに必要な化学量論量のNaOHを用いて、水中の酸形態から調製し、続いてアセトン中で沈殿させることにより精製ステップを行った。あるいは、H2BDC(NH2)、H2BpyDC、H4TCPP、およびH4TBAPyの配位子塩前駆体溶液は、化学量論量のTEAを使用して直接調製され、それによって配位子塩を単離するステップをスキップした。H2BDC(SO3Na)とHMeIMとを直接水に溶解した。H4DOBDCは、2,5-ジオキシテレフタレート配位高分子ナトリウムが水に不溶性であるため、高温のTHFに溶解した。トリエチルアンモニウム塩の使用は、目標であったMOF-74構造を生じさせなかった。
【0081】
バルクタイプのMOF。比較のために、報告された文献に従って次のMOFを作成し、活性化した。
(Cr)MIL-101(Ferey,G.;Mellot-Draznieks,C.;Serre,C.;Millange,F.;Dutour,J.;Surble,S.;Margiolaki,I.:A chromium terephthalate-based solid with unusually large pore volumes and surface area. Science 2005,309,2040-2042およびSerre,C.;Millange,F.;Thouvenot,C.;Nogues,M.;Marsolier,G.;Loue:r,D.;Ferey,G.:Very Large Breathing Effect in the First Nanoporous Chromium(III)-Based Solids:MIL-53 or CrIII(OH)・{O2C-C6H4-CO2} {HO2C-C6H4-CO2H}x・H2Oy.J.Am.Chem.Soc.2002,124,13519-13526)、
(Cr)MIL-100(Long,P.P.;Wu,H.W.;Zhao,Q.;Wang,Y.X.;Dong,J.X.;Li,J.P.:Solvent effect on the synthesis of MIL-96(Cr) and MIL-100(Cr).Microporous Mesoporous Mater.2011,142,489-493)、
(Cr)MIL-101(SO3H)(Juan-Alcaniz,J.;Gielisse,R.;Lago,A.B.;Ramos-Fernan-dez,E.V.;Serra-Crespo,P.;Devic,T.;Guillou,N.;Serre,C.;Kapteijn,F.;Gascon,J.:Towards acid MOFs-catalytic performance of sulfonic acid functionalized architectures.Catal.Sci.Technol.2013,3,2311-2318)、
(Al)MIL-100(Volkringer,C.;Popov,D.;Loiseau,T.;Ferey,G.;Burghammer,M.;Riekel,C.;Haouas,M.;Taulelle,F.:Synthesis,Single-Crystal X-ray Microdiffraction, and NMR Characterizations of the Giant Pore Metal-Organic Framework Aluminum Trimesate MIL-100.Chem.Mater.2009,21,5695-5697)、
(Al)MIL-53(NH2)(Couck,S.;Denayer,J.F.M.;Baron,G.V.;Remy,T.;Gas-con,J.;Kapteijn,F.:An Amine-Functionalized MIL-53 Metal-Organic Framework with Large Separation Power for CO2 and CH4.J.Am.Chem.Soc.2009,131,6326-+)、
(Co,Ni)MOF-74(Dietzel,P.D.C.;Morita,Y.;Blom,R.;Fjellva&g,H.:An In Situ High-Temperature Single-Crystal Investigation of a Dehydrated Metal-Organic Framework Compound and Field-Induced Magnetization of One-Dimensional Metal-Oxygen Chains.Angew.Chem.,Int.Ed.2005,44,6354-6358およびDietzel,P.D.C.;Panella,B.;Hirscher,M.;Blom,R.;Fjell-vag,H.:Hydrogen adsorption in a nickel based coordination polymer with open metal sites in the cylindrical cavities of the desolvated frame-work.Chem.Commun.2006,959-961)、
(Zr)UiO-66(H,NH2)(Kandiah,M.;Nilsen,M.H.;Usseglio,S.;Jakobsen,S.;Ols-bye,U.;Tilset,M.;Larabi,C.;Quadrelli,E.A.;Bonino,F.;Lillerud,K.P.:Synthesis and Stability of Tagged UiO-66 Zr-MOFs.Chem.Ma-ter.2010,22,6632-6640)、
(Zr)UiO-67(Bpy)(Fei,H.;Cohen,S.M.:A robust, catalytic metal-organic framework with open 2,2-bipyridine sites.Chem.Commun.2014,50,4810-4812)、
(Ru)HKUST-1(Kozachuk,O.;Luz,I.;Llabres i Xamena,F.X.;Noei,H.;Kauer,M.;Albada,H.B.;Bloch,E.D.;Marler,B.;Wang,Y.;Muhler,M.;Fischer,R.A.:Multifunctional, Defect-Engineered Metal-Organic Frameworks with Ruthenium Centers:Sorption and Catalytic Properties.Angew.Chem.,Int.Ed.2014,53,7058-7062)、
(Zn)ZIF-8(Cravillon,J.;Mu:nzer,S.;Lohmeier,S.-J.;Feldhoff,A.;Huber,K.;Wiebcke,M.:Rapid Room-Temperature Synthesis and Characterization of Nanocrystals of a Prototypical Zeolitic Imidazolate Framework.Chem.Mater.2009,21,1410-1412)、
(Zr)PCN-222(Dawei Feng;Zhi-Yuan Gu;Jian-Rong Li;Hai-Long Jiang;ZhangwenWei;Zhou,H.-C.:Zirconium-Metalloporphyrin PCN-222: Mesoporous Metal-Organic Frameworks with Ultrahigh Stability as Biomimetic Catalysts.Angew.Chem.,Int.Ed.2012,51,10307-10310)、
(Zr)NU-1000(Deria et al.2014)およびCo2(dobpdc)(McDonald et al. Cooperative insertion of CO2 in diamine-appended metal-organic frameworks.Nature 2015,519,303-+)。
これらのMOFのFTIRスペクトルは、MOF/MPMハイブリッド材料の参照として使用された。図には、(Cr)MIL-101(SO3H)のN2等温線と細孔分布とが含まれていた。
【0082】
透過型電子顕微鏡(TEM)。透過型電子顕微鏡(TEM)実験は、120μmのコンデンサーレンズアパーチャと80μmの対物レンズアパーチャが挿入された200kVのLaB6エミッターを備えたJEOL JEM-2000FX S/TEM顕微鏡で実行された。
【0083】
熱重量分析(TGA)。熱安定性の測定は、メトラー・トレド熱重量分析装置(TGA)で、空気雰囲気下で5°C/分のステップを使用して1000°Cまで実施した。
【0084】
N2収着等温線。サンプルは、Micromeritics ASAP(効率比表面積および細孔分布)2020システムで分析された。サンプルをシールフリット付きのチューブに量り入れ、加熱しながら真空(<500μmHg)で脱気した。それらは最初に150°Cで加熱され、4時間保持され、最後に室温まで冷却され、N2で埋め戻された。分析前にサンプルの重量を再測定した。分析吸着剤は77KでN2であった。多点BET表面積は、Rouquerolによって提案された4つの基準を満たす0.050~0.300の範囲の相対圧力(P/Po)での6回の測定から決定した。Gomez-Gualdron,D.A.,Moghadam,P.Z.,Hupp,J.T.,Farha,O.K.,Snurr,R.Q.:Application of Consistency Criteria To Calculate BET Areas of Micro- And Mesoporous Metal-Organic Frameworks.J.Am.Chem.Soc.,2016,138,215-224を参照されたい。一点吸着の総細孔体積は、飽和圧力(Po≒770mmHg)付近で測定した。吸着平均細孔幅も計算した。細孔径分布プロットは、Halsey厚さ曲線方程式とFaasBJH補正を使用したBJH法によって決定した。
【0085】
FTIR:ATRおよびDRIFTSセル。ATR吸収分光測定は、Perkin Elmer Spectrum 100 FTIR分光計を使用して4000~400cm-1の範囲で実行した。「その場」DRIFTS実験は、120°Cでの気相結晶化を補助するために、水で飽和した窒素流を注入することによってPrayingMantisセルで実行した。
【0086】
(6.2.単一ナノ結晶から単一ナノ触媒への変換の例)
本明細書に開示されるアプローチの範囲の例として、単一の金属および金属酸化物ナノ結晶は、前駆体としてメソポーラスシリカ上に選択された支持されたMOFナノ結晶を使用することによって制御された変換手順によって調製された。さらに、バイメタル金属酸化物ナノ結晶は、気相官能基化を含む、制御された変換の前に実行されるMOFハイブリッド前駆体の追加の多段階合成後修飾(PSM)によっても調製されており(表1および
図1および2を参照)(Servalli,M.;Ranocchiari,M.;VanBokhoven,J.A.:Fast and high yield post-synthetic modification of metal-organic frameworks by vapor diffusion.Chemical Communications 2012,48,1904-1906)、続いて選択的にメタル化される(Zhang, X.;Llabres i Xamena,F.X.;Corma,A.:Gold(III)-Metal Organic Framework Bridges the Gap between Homogeneous and Heterogeneous Gold Catalysts.Journal of Catalysis 2009,265,155-160)。
【0087】
(6.3.合成アプローチの例:触媒用のバイメタル[PdCl-SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]前駆体)
バイメタル[PdCl-SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]前駆体は、(1)MOF前駆体溶液のSBA-15への多段階初期湿潤含浸、(2)特定の条件での処理、(3)一般的な洗浄処理、(4)合成後の気相官能基化(固体)、および(5)合成後の液相メタル化、の一般的な手順に従って、固相合成によって調製された。すべてのバイメタル[M2-Z-(M1)MOF/MPM]前駆体は、以前に記述されたように(Cirujanoetalら、2017およびPCT特許出願PCT/US2017/046231)前述の一般的な手順(ステップ1~5)によって調製され得る。モノメタル[(M1)MOF/MPM]前駆体は、最初の3つのステップ(1~3)のみに従って調製される。
【0088】
MOF前駆体溶液のSBA-15への多段階初期湿潤含浸:
【0089】
最初に、配位子塩前駆体溶液(TEA)2BDC(NH2)を、35mLの水の中のH2BDC(NH2)(1.5g)添加とTEA(2.5mL)とに溶解して、調製した。次に、10gの排気SBA-15(120°Cで一晩の間真空下)に(TEA)2BDC(NH2)溶液を含浸させ、50°Cで真空下においてロータリーエバポレーターで2時間乾燥させた。続いて、得られた乾燥中間体[(TEA)2BDC(NH2)/SBA-15]を流動床リアクターに入れ、最初に濃HCl(37%)で飽和させた窒素流で室温において2時間処理し、やがて窒素流で2時間パージして、過剰なHClを除去した。その後、2.5gのZrOCl2・8H2Oを30mLの水に溶解して調製した金属塩前駆体溶液を使用して、[H2BDC(NH2)/SBA-15]メソポーラスシリカを含浸させた。得られた[ZrOCl2/H2BDC(NH2)/SBA-15]固体を、最終的に50°Cで真空下、ロータリーエバポレーターで2時間乾燥させた。すべての含浸ステップは、初期湿潤含浸を介して行われた。
【0090】
特定の条件での処理:
【0091】
乾燥固体中間体[ZrOCl2/H2BDC(NH2)/SBA-15]を、添加剤(H2Oの15wt.%)と一緒にシンチレーションバイアルまたはテフロンタップで蓋をしたパイレックスガラス瓶に入れ、120°Cで2時間オーブンで加熱した。
【0092】
一般的な洗浄手順:
【0093】
冷却後、18.6wt.%の(Zr)UiO-66(NH2)ナノ結晶を含む、得られた[(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]前駆体を、濾過漏斗内において蒸留水で完全に洗浄した。続いて、材料をソックスレー抽出器でMeOHと共に一晩さらに洗浄した。すべての材料を、真空下、120°Cで一晩活性化した。
【0094】
気相の合成後の官能基化:
【0095】
排気された前駆体[(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15](1グラム)とサリチルアルデヒド(1mL)とを含有するチューブを別々にシュレンクに入れた。その後、シュレンクを真空下で閉じ、オーブン内で100°Cで一晩加熱した。サリチルアルデヒド蒸気に曝されると、材料の色が淡黄色からオレンジ色に変化することは、MOFとサリチルアルデヒドとの間にイミン共有結合が形成され、サリチルイデンイミン基(またはシッフ塩基、Z=SI)を含有する固体を導くことを示している。この材料は中間体[SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]に対応する。
【0096】
液相合成後メタル化:
【0097】
金属カチオンは、PdCl2(CH3CN)(200mg)をTHF(5mL)中に含有する溶液に室温で2~3時間浸漬することにより、シッフ塩基[SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]を含有する中間体へキレート化された。その後、材料をMeOHで洗浄し、真空下で80°Cで乾燥させて、XRFによると1.7重量%のPdを含有する前駆体[PdCl-SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]を得た。同様に、Au、Pt、Ag、Cu、Niなどの他のいくつかの金属カチオンをシッフ塩基中間体[SI-(Zr)UiO-66(NH2)/SBA-15]に組み込むことができる。表1の例を参照されたい。
【0098】
追加のバイメタルナノ触媒を準備するための手順は次のとおりである。最初のステップでは、多数のMOF構造の配位子にある、(Zr)UiO-66(NH
2)、(Al)MIL-53(NH
2)、(Ti)MIL-125(NH
2)、(Zn)IRMOF-3(NH
2)、(V)MIL-101(NH
2)、(Fe)MIL-53(NH
2)、などの遊離アミノ基の選択的PSMが、110°Cのサリチルアルデヒド蒸気による気相処理によって官能基化され、アミノ基をシッフ塩基配位子(サリチリデン-イミン、SI)に完全に変換する(
図1および
図2を参照されたい)。
図5は、合成の後続のステップでのアミノ基のシッフ塩基配位子(SI)への変換のFTIR特性を示している。続いて、Pd、Pt、Au、Cu、Ni、Mo、Ir、Rhなどの金属塩を含有する溶液に固体材料を浸すことにより、多数の金属カチオンが選択的にシッフ塩基へキレート化されている。MOFハイブリッドで観察された、バルクMOFと比較してより速い官能基化速度は、主に、より小さな粒子サイズ、メソポーラスシリカ内のMOFナノ結晶の優れた分散、および支持体の表面上のMOFナノ結晶の濃度によるものである。たとえば、9nmの一次元チャネルを備えたSBA-15の場合、三次元の30nmの不規則な空洞を示すメソポーラスシリカであるシリカAよりも低い官能基化速度が観察されている。したがって、我々の新しいアプローチは、MOFクラスター上で適切な金属酸化物(M
1=Zr、Al、Ti、Zn、V、Feなど)を選択し、別の選択された金属をSI(M
2=Pd、Pt、Cu、Ni、Co、Mo、Au、…)で組み込むことによって、変換時に明確に定義された構造化触媒を生成する。得られるナノ触媒の形態と組成は、変換処理と選択したシリカのメソ細孔の寸法とに依存する。
【0099】
(6.3.1.制御された変換の例:窒素または他の不活性ガス下での熱分解)
金属ナノ結晶は、窒素または他の不活性ガス下で300~1000
oCの範囲の温度で変換を行うと得られる。いくつかの実施形態では、この処理は、MOFナノ結晶の有機組成物を炭素質種に変換する。それにもかかわらず、TGAおよび元素分析データは、600~700°Cを超える熱分解温度で炭素またはグラフェンを含まないバイメタルナノ触媒をもたらすMOFナノ結晶の完全な「脱炭素化」を明らかにしている。これは、処理時に微孔性炭素質構造が残っているバルクMOF(100nmを超える)(
図5のTGA FTIR比較を参照されたい)とは対照的である。Tang,J.;Salunkhe,R.R.;Zhang,H.;Malgras,V.;Ahamad,T.;Alshehri,S.M.;Kobayashi,N.;Tominaka,S.;Ide,Y.;Kim,J.H.;Yamauchi,Y.:Bimetallic Metal-Organic Frameworks for Controlled Catalytic Graphitization of Nanoporous Carbons.Scientific Reports 2016,6,30295;Masoomi,M.Y.;Morsali,A.:Applications of metal-organic coordination polymers as precursors for preparation of nano-materials.Coordination Chemistry Reviews 2012,256,2921-2943;Wezendonk,T.A.;Santos,V.P.;Nasalevich,M.A.;Warringa,Q.S.E.;Dugulan,A.I.;Chojecki,A.;Koeken,A.C.J.;Ruitenbeek,M.;Meima,G.;Islam,H.U.;Sankar,G.;Makkee,M.;Kapteijn,F.;Gascon,J.:Elucidating the Nature of Fe Species during Pyrolysis of the Fe-BTC MOF into Highly Active and Stable Fischer-Tropsch Catalysts. ACS Catalysis 2016,6,3236-3247、を参照されたい。ナノ触媒からの炭素放出を回避するために、低温熱分解(<500°C)を使用し得る。
図4aは、不活性雰囲気で加熱して調製したナノ触媒のSTEM画像を示している。
【0100】
(6.3.2.制御された変換の例:酸素含有雰囲気でのか焼)
変換処理に酸素を使用すると、すべての有機組成物が低温で放出される。炭素を含まないバイメタルナノ触媒は、300~600°Cを超える温度で得られる。
図4bは、酸素含有雰囲気中でのか焼によって調製されたナノ触媒のSTEM画像を示している。
【0101】
(6.3.2.制御された変換の例:水素含有雰囲気による還元)
水素含有雰囲気を使用すると、より穏やかな温度(室温から300°C)で制御された変換が発生する。これらの条件下では、MOFナノ結晶を装飾する遷移金属カチオンが還元されて、MOFの微孔性空洞内に閉じ込められたモノメタルナノ結晶が形成されるが、MOF炭素微細構造は完全には分解されない。サブナノメートルの金属ナノ結晶の形成は、微孔性MOF内に限定される。
図4cは、水素含有雰囲気での還元によって調製されたナノ触媒のSTEM画像を示している。
【0102】
(6.4.本開示の範囲の例)
我々の新しいアプローチによって調製された支持ナノ結晶のいくつかの例を表1に示す。これらの材料の選択は、他の構造の調製を制限するものではない。
【0103】
表1.「単結晶から単一ナノ触媒」アプローチによって調製されたモノメタルおよびバイメタル触媒の例。
【表1】
【0104】
(6.5.応用例:高度なアンモニア合成)
本発明のアンモニア合成への適用を実証する実験を以下に説明する。Ru/SiO2は高収率で合成され、2グラムの固定床マイクロリアクターでテストするための材料を提供した。ナノ触媒に変換される前に、Ru-HKUST-1の構造は、X線回折(XRD)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびBET表面積測定を照合することによって確認され、シリカ複合材料の表面積の増加はMOFの存在と相関することを示した。次に、Ru-HKUST-1は、ゆっくりとした温度上昇で900°Cの熱処理を使用してルテニウムナノ粒子に変換された。400°Cを超える温度では、有機リンカーの特定の成分がガス化されてCO2として放出されるため、MOFの高表面積と長距離構造が破壊される。単原子ルテニウムは錯化から放出され、残留有機フラグメントの中で表面に堆積する。ルテニウム原子の凝集は高温で起こり、十分に分散した小さなルテニウムナノ粒子が支持体の表面に形成される。ルテニウム触媒によるアンモニア合成を促進することが示されている硝酸バリウムおよび硝酸セシウムを使用した文献からの促進手順に従った(Bielawa,H.;Hinrichsen,O.;Birkner,A.;Muhler,M.:The ammonia-synthesis catalyst of the next generation:Barium-promoted oxide-supported ruthenium. Angewandte Chemie-International Edition 2001,40,1061-1063)。促進は、水溶液からRu/SiO2の表面への硝酸バリウムおよび硝酸セシウム塩の湿式堆積によって達成され、バリウムおよびセシウムによって促進されるRu/SiO2触媒が得られた。
【0105】
熱処理されたRu/SiO2触媒の試験は、商業的に使用されている従来のマグネタイト触媒と比較して活性を測定するために実施された。触媒を充填層マイクロリアクターに添加し、2日間にわたってその場で還元した後、水素と窒素を全圧90バール、ガス時空間速度(GHSV)15,000h-1でリアクターに導入した。リアクターの温度は470°Cであった。触媒は還元後4時間テストされた。触媒は4.59gNH3/gmetal/hの平均アンモニア生成速度を示した。
【0106】
表2:アンモニア製造に対するRu/SiO
2と市販の触媒特性および性能の比較
【表2】
【0107】
(6.6.適用例:液体有機水素担体)
独自の機能を利用して得られた触媒の幅広い用途の例を説明するために、それらは、流動化メソポーラスシリカ(ここでは、流動化ナノリアクター、FN)内で構成される、先端概念である流動化ナノリアクター水素担体(ここではFNHC)の触媒活性プラットフォームに使用される。OHCは、接触水素化反応によってH2を水素希薄分子に結合することによる化学的水素貯蔵で構成され、触媒脱水素化を介して放出することができる。結合H2は、現実的な「オフボード」の水素充填ステーションから、自動車や宇宙船などのモバイルプラットフォームでの未来的な「オンボード」の水素生成に至るまで、いくつかの用途のための燃料として使用され得る(Preuster,P.;Papp,C.;Wasserscheid,P.:Liquid Organic Hydrogen Carriers(LOHCs):Toward a Hydrogen -free Hydrogen Economy. Accounts of Chemical Research 2017,50,74-85.)。
【0108】
このコンセプトを評価するために、33wt.%のN-エチルカルバゾール(C)を、900°Cで処理したPdCl/SI/UiO-66(NH
2)/SiO
2から調製した1.7wt.%のPd/ZrO
2/SiO
2に窒素下で含浸させた。得られた水素希薄FNHC(H
0-FNHC)をパールボンベリアクターに添加し、室温でH
2で800psigに加圧した。リアクターを220°Cまで加熱し、圧力が低下して安定するまで保持し、水素化ステップの終了を示す(
図6を参照)。水素添加FNHC(Hx-FNHC)のアリコート(5mg)を、H
2添加N-エチルカルバゾール(H
x-C)をCHCl
3で抽出して分析し、GCで分析した。GC分析によると、93.0%のH
12-C、3.6%のH
6-C、3.4%のH
4-Cを含有する、H
0-CからH
x-Cへ完全水素化された。可逆性を証明するために、H
x-FNHCを30psigのH
2で加圧し、圧力が上昇して安定するまで保持して220°Cまで(これは脱水素化ステップの終了を示す)加熱した。FNHCから抽出されたH
2非添加OHCの分析により、74.3%の完全な脱水素化合物(H
0-C)が残りの22%のH
6-Cおよび3.7%のH
12-Cと混合されていることが明らかになった。
【0109】
(6.7.適用例:合成液体燃料)
Fe触媒は、(Fe)MIL-100/SiO
2を、空気と窒素との2つの異なる変換条件を使用して直接変換し、それぞれFe
3O
4/SiO
2とFeC/SiO
2を形成することによって調製した。これら2つの触媒は、水素を使用したCO
2から燃料への熱変換について評価された。320°C、30bar、4000h
-1のGHSVでFeのさまざまな配合を含むこれらの触媒によって得られた結果のいくつかの例を
図7と8に示す(Wei,J.;Ge,Q.;Yao,R.;Wen,Z.;Fang,C.;Guo,L.;Xu,H.;Sun,J.:Directly converting CO
2 into a gasoline fuel.Nature Communications2017,8,15174-82.)。
【0110】
(7.本開示の一般的記述)
以下の番号付きの記述は、開示の一般的な説明を提供し、添付の特許請求の範囲を制限することを意図するものではない。
【0111】
記述1:メソポーラス材料(MPM)内に閉じ込められた金属ナノ触媒を調製する方法であって、(a)少なくとも1つの金属イオンと配位結合を形成することが可能な1つ以上の多座配位子[Ax(L-x)]を備える、少なくとも1つ以上の有機化合物を含浸させて、メソポーラス材料に第1の中間体[(Ax(L-x)/MPM)]を形成するステップと、(b)前記第1の中間体[(Ax(L-x)/MPM)]を気相の酸に曝して、第2の中間体[(Hx(L-x)/MPM)]を形成するステップと、(c)前記第2の中間体[(Hx(L-x)/MPM)]に1つ以上の金属イオン(M1
+y、M2
+y、M3
+y)の溶媒溶液を添加して、1つ以上のメソポーラス材料内に閉じ込められた金属有機構造体(MOF)前駆体[MOF/MPM]を形成する1つ以上の多座配位子と配位結合を形成するステップと、(d)ステップ(c)の前記前駆体[MOF/MPM]を制御された変換条件下で処理して、前記メソポーラス材料内に閉じ込められた前記金属ナノ触媒を形成するステップと、を含む、方法。
【0112】
記述2:ステップ(c)の前記前駆体[MOF/MPM]を1つ以上の有機化合物(Z)と接触させて、配位結合[Z/MOF/MPM]を形成することが可能である第2の多座配位子を作ることを含むステップ(d)(1)と、1つ以上の追加の金属イオンの溶媒溶液を添加して、メソポーラス材料内に閉じ込められた追加の金属を有する修飾MOF前駆体[MOF/MPM]を形成するステップ(d)(2)と、をさらに含む、記述1に記載の方法。
【0113】
記述3:ステップ(d)(1)のキレート配位子(Z)は、第2の金属イオンを錯化するための金属結合部位を備える、記述1または2に記載の方法。
【0114】
記述4:前記制御された変換条件により、前記MOF中の炭素の90%を超える炭素が前記MOF/MPMから放出される、記述1から3に記載の方法。
【0115】
記述5:前記制御された変換条件により、前記MOF中の炭素の50%±10%が前記MOF/MPMから放出される、記述1から4に記載の方法。
【0116】
記述6:制御された変換条件下での処理は、不活性ガス雰囲気中での約300°C~約1000°Cの温度での熱分解である、記述1から5に記載の方法。
【0117】
記述7:前記制御された変換条件下での処理は、酸素ガスを含有する雰囲気中における約300°C~約600°Cの温度での仮焼である、記述1から6に記載の方法。
【0118】
記述8:前記制御された変換条件下での処理は、約25°C~約300°Cの温度での水素による還元である、記述1から6に記載の方法。
【0119】
記述9:前記閉じ込められたナノ触媒は、モノメタル(M1)である、記述1から8に記載の方法。
【0120】
記述10:前記閉じ込められたナノ触媒は、バイメタル(M1+M2)である、記述1から8に記載の方法。
【0121】
記述11:前記閉じ込められたナノ触媒は、3つ以上の金属を有する、記述1から8に記載の方法。
【0122】
記述12:前記メソポーラス材料内に閉じ込められたナノ触媒は、10nm未満の直径を有する、記述1から11に記載の方法。
【0123】
記述13:前記メソポーラス材料は、メソポーラス金属酸化物、メソポーラスシリカ、メソポーラスカーボン、メソポーラスポリマー、メソポーラスシリコアルミナ(ゼオライト)、メソポーラス有機シリカ、またはメソポーラスアルミノリン酸である、記述1から12に記載の方法。
【0124】
記述14:前記メソポーラス金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、または酸化マグネシウムである、記述12に記載の方法。
【0125】
記述15:メソポーラス材料が約100m2/g~約1000m2/gの表面積を有する、記述1から13に記載の方法。
【0126】
記述16:前記金属イオン(M1
+y、M2
+y、M3
+y)は、Al、Au、Ce、Co、Fe、Ir、Mo、Ni、Pd、Rh、Ru、Ti、V、Zrまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される、記述1から15に記載の方法。
【0127】
記述17:前記MOFの前記多座配位子は、テレフタレート、ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、2,5-ジオキシベンゼンジカルボキシレート、ビフェニル-4,4´-ジカルボキシレート、イミダゾレート、ピリミジン-アゾレート、トリアゾレート、テトラゾレート、それらの誘導体または組み合わせからなる群から選択される、記述1から16に記載の方法。
【0128】
記述18:前記MOFは、HKUST-1、M2(dobpdc)、MIL-100、MIL-101、MIL-53、MOF-74、NU-1000、PCN-222、PCN-224、UiO-66、UiO-67、ZIF-8、ZIFs、またはそれらの誘導体から選択される、記述1から16に記載の方法。
【0129】
記述19:前記メソポーラス材料は、MCM-41、SBA-15、または市販のシリカからなる群から選択される、記述1から18に記載の方法。
【0130】
記述20:前記メソポーラス材料内に閉じ込められた、閉じ込められたナノ触媒は、ポリマー、有機金属配位子前駆体、窒素含有有機化合物、リン含有有機化合物、硫黄含有有機化合物、ホウ素含有有機化合物、ハロゲン化物塩、有機ハロゲン化物、または原子層堆積または化学蒸気堆積によって追加された金属原子を有する追加の有機金属系金属錯体または金属塩とさらに反応する、記述1から19に記載の方法。
【0131】
記述21:記述1から19に記載の方法により製造された触媒。
【0132】
記述21:追加の金属促進剤をさらに備える、記述20に記載の触媒。
【0133】
記述22:アルケンのアンモ酸化反応、アルケンのエポキシ化、アンモニア合成、カルボキシル化反応、CO2メタン化反応、CO2の燃料への変換、メタンからの直接メタノール合成、ドライメタン改質、電気触媒アンモニア酸化、電気触媒酸素還元反応、Fischer-Tropsch合成、液体有機水素担体の水素化/脱水素化、水素化処理および水素化処理エステル化反応、合成ガスからのメタノール合成、逆水性ガスシフト反応、または水性ガスシフト反応を触媒するための、記述20または21に記載の触媒の使用。
【0134】
上記の説明は、例示的な実施形態および例を代表するものにすぎないことを理解されたい。読者の便宜のために、上記の説明は、すべての可能な実施形態の限られた数の代表的な例、本開示の原理を教示する例に焦点をあてている。説明は、すべての可能なバリエーション、または説明されたそれらのバリエーションの組み合わせも、網羅的に列挙しようとしていない。その代替の実施形態は、本開示の特定の部分について提示されていない可能性があること、またはさらに説明されていない代替の実施形態が一部について利用可能である可能性があることは、それらの代替の実施形態の免責事項と見なされるべきではない。当業者は、それらの説明されていない実施形態の多くが、本開示の原理の適用の違いではなく、技術および材料の違いを伴うことを理解するであろう。したがって、本開示は、以下の特許請求の範囲および均等物に記載される範囲内に限定されることを意図するものではない。
【0135】
(参照による援用)
【0136】
本明細書で引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、および特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により援用される。ただし、ここで引用されている参考文献、記事、出版物、特許、特許出版物、および特許出願についての言及は、それらが有効な先行技術を構成すること、または世界の任意の国における一般的な一般知識の一部を形成することの、承認または提案として解釈されるべきではない。本開示は、その詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は、描写を意図しており、範囲を限定するものではないことを理解されたい。その他の側面、利点、および変更は、以下に記載される特許請求の範囲内にある。本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。