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特許7281488自動車の構成要素に近接する又は接触している人物の存在を検出するための静電容量デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】自動車の構成要素に近接する又は接触している人物の存在を検出するための静電容量デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20230518BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G01R27/26 C
G01R35/00 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020568300
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066177
(87)【国際公開番号】W WO2020002079
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】1855743
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】サブリン、ピエール
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-195576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305376(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355337(US,A1)
【文献】特許第7128298(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00-27/26
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量センサを備えた、自動車の構成要素(1)に近接する又は接触している人物の存在を検出するための静電容量検出デバイス(100)であって、前記デバイスが、
-前記静電容量センサの少なくとも1つの電極(20)と、
-交流電圧を供給するように構成された電圧源(23)と、
-前記電極(20)と電気回路基準点との間のインピーダンス又はアドミッタンスに対応する、複素数値を測定するためのデバイス(24)と、
-インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の前記測定を較正するための2つの較正抵抗器(Rc1、Rc2)と、を備え、
前記静電容量検出デバイスが、
-測定モードで、前記電圧源(23)を前記電極(20)に接続することと、
-較正モードで、前記電圧源(23)を前記2つの較正抵抗器(Rc1、Rc2)に接続し、前記電極(20)を前記電圧源から切断することと、を行うように構成されたスイッチングデバイス(26、SW1~SW6)を備え、
前記測定デバイス(24)が、
-較正モードでの動作中、前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)の第1の複素数値を測定することと、
-測定モードでの動作中、前記電極(20)と前記電気回路基準点との間の第2の複素数値を測定することと、
-前記第1の測定された複素数値に基づいて、前記第2の測定された複素数値を補正することと、を行うように構成されていて、
前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)が、並列に取り付けられており、前記スイッチングデバイス(26、SW1~SW6)が、前記電圧源(23)を前記2つの抵抗器(RC1、RC2)のうちの一方又は他方に、選択的に接続するように構成されていることを特徴とする、静電容量検出デバイス。
【請求項2】
前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)が、異なる抵抗値を有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)のうちの第1の較正抵抗器(RC1)が、1kΩ~20kΩに含まれる抵抗値を有し、前記較正抵抗器(RC1、RC2)のうちの第2の較正抵抗器(RC2)が、10kΩ~200kΩに含まれる抵抗値を有することを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記測定デバイス(24)が、前記第2の測定された複素数値にオフセット補正を適用するように構成されており、前記オフセット補正が、複素平面内のベクトル
【数1】
による並進に対応しており、点SOCが、前記静電容量検出デバイスのアドミッタンス又はインピーダンスの開回路複素数値に対応している前記複素平面の点であり、点Oが、前記複素平面の原点に対応していることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記測定デバイス(24)が、前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)によって測定された2つの複素数値から、前記静電容量検出デバイスのインピーダンス又はアドミッタンス(SOC)の前記開回路複素数値を計算するように構成されていることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記測定デバイス(24)が、前記静電容量検出デバイスの前記補正動作を検証するために、インピーダンス又はアドミッタンス(COC)の開回路複素数値を測定し、インピーダンス又はアドミッタンスの前記測定された開回路複素数値を、インピーダンス又はアドミッタンス(SOC)の前記計算された開回路複素数値と比較するように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記測定デバイス(24)が、前記第2の測定された複素数値に位相補正(E13)を適用するように構成され、前記位相補正が、前記2つの較正抵抗器によって測定されたインピーダンス又はアドミッタンスの2つの複素数値から得られた、複素平面内の2つの点によって画定された直線と、前記複素平面内の抵抗又は導電率の軸との間の角度αによる回転に対応することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
直列の一対の保護コンデンサ(CP1、CP2)を備え、前記一対のコンデンサが、前記2つの較正抵抗器(RC1、RC2)と並列に取り付けられており、前記2つのコンデンサのうちの一方は、その端子が2つのそれぞれのスイッチを介して前記電圧源(23)に接続されており、他方のコンデンサが、前記自動車のフレーム接地に接続されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記電極と前記電気回路基準点との間の前記第2の複素数値の前記測定を、周期的に繰り返すように構成されており、前記第2の複素数値の2つの連続する測定の間で、較正測定を行うように構成されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記測定デバイス(24)が、スケーリングゲインGを、前記第2の測定され、次いで補正された値の虚部分に適用することによって、前記第2の測定され、次いで補正された複素数値から、前記電極(20)と前記電気回路基準点との間の静電容量値を計算するように構成されており、前記ゲインGが、式
【数2】
によって提供され、
式中、
-RC1は、第1の較正抵抗器であり、
-RC2は、第2の較正抵抗器であり、
-CR_C1は、前記第1の較正抵抗器RC1の複素数値の前記測定に対応する、アドミッタンスの複素平面内の点であり、
-CR_C2は、前記第2の較正抵抗器RC2の複素数値の前記測定に対応する、アドミッタンスの前記複素平面内の点であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記測定デバイス(24)が、電流測定回路を備えることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の静電容量検出デバイス(100)を備えた、自動車用ハンドル。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の静電容量検出デバイス(100)を備えた、自動車用シート。
【請求項14】
請求項12に記載のハンドル及び/又は請求項13に記載のシートを備える、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、車両の構成要素に近接する又は接触している人物の存在を検出することを意図された自動車用の静電容量検出デバイスに関する。このデバイスは、具体的には、車両のハンドル上の運転者の手の有無、又は車両のシートのうちの1つ上の乗員の有無を検出するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
かかる静電容量デバイスは、先行技術、特に、車両シート上の人物の存在を検出するための静電容量デバイスを記載する文書米国特許第2015/0367751号から既知である。米国特許第2015/0367751号に記載の静電容量デバイスは、シートに配置された「アンテナ」電極又は「検出電極」と、交流電圧源と、電流測定回路と、を備える。交流電圧源及び電流測定回路は、アンテナ電極に接続される。車両のフレーム接地に接続されたシートのフレーム部分は、静電容量センサを形成するように、アンテナ電極に結合された第2の電極として機能する。アンテナ電極と車両のフレーム接地との間の複素インピーダンスの測定により、シート上の人物の存在を検出することが可能になる。静電容量デバイスはまた、スイッチング素子に結合された既知の基準インピーダンスを含む。測定モードでの動作中、電流測定回路は、アンテナ電極とフレーム接地との間を循環する交流電流、及び電流電圧変換器機能を有するトランスインピーダンス演算増幅器OP AMPの入力を測定する。アンテナ電極とフレーム接地との間の求められる複素インピーダンスは、トランスインピーダンス増幅器の出力電圧から、電圧源の複素出力信号から、及び比例係数αから計算することができる。この比例係数αを判定又は除去するために、測定モードで行われた測定は、較正モードにおいて、静電容量デバイスの動作中に繰り返される。較正モードでは、基準インピーダンスは、アンテナ電極とフレーム接地との間で判定されるインピーダンスと電気的に並列で切り替えられる。アンテナ電極とフレーム接地との間のこの求められるインピーダンスは、次いで、測定モード及び較正モードで測定されたトランスインピーダンス増幅器の複素出力電圧から、及び基準インピーダンスから計算される。
【0003】
文書米国特許第2017/355337号は、2つの電極を有する静電容量センサのための複素インピーダンス測定回路を記載する。静電容量センサの複素インピーダンスの実部分及び虚部分の絶対値を計算するために、振幅正規化及び位相補正の動作が、予め判定された較正ベクトルによって、測定された複素インピーダンスの実部分と虚部分とを乗じることにより実行される。
【0004】
しかしながら、先行技術は、精度を有する複素インピーダンス又はアドミッタンスを測定することが可能ではない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、状況を改善することを目的とする。この目的のために、本発明は、静電容量センサを備えた、自動車の構成要素に近接する又は接触している人物の存在を検出するための静電容量検出デバイスに関し、当該デバイスは、
-静電容量センサの少なくとも1つの電極と、
-交流電圧を供給するように構成された電圧源と、
-当該電極と電気回路基準点との間のインピーダンス又はアドミッタンスに対応する複素数値を測定するためのデバイスと、
-インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定を較正するための較正抵抗器と、を備える。
静電容量検出デバイスの電極は、検出される人物の存在に近接する又は接触している車両の構成要素上に提供された静電容量センサに属する。静電容量センサは、誘電材料によって分離された2つの電極を備える。
有利には、静電容量検出デバイスは、静電容量センサの2つの電極のうちの1つを備え、車両の構成要素は、静電容量センサの他の電極を備える。
有利には、静電容量センサの電極のうちの少なくとも1つは、車両構成要素の構造要素によって具現化することができる。例えば、かかる電極は、車両構成要素の電機子要素によって具現化することができる。
当該静電容量検出デバイスは、
-測定モードで、当該電圧源を電極に接続することと、
-較正モードで、電圧源を較正抵抗器に接続し、当該電極を電圧源から切断することと、を行うように構成されたスイッチングデバイスを備え、
測定デバイスは、
-較正モードでの動作中、較正抵抗器の第1の複素数値を測定することと、
-測定モードでの動作中、当該電極と電気回路基準点との間の第2の複素数値を測定することと、
-第1の測定された複素数値に基づいて、第2の測定された複素数値を補正することと、を行うように構成されることを特徴とする。
【0006】
このため、較正モードでは、電圧源は、較正抵抗器に選択的に接続され、電極から切断される。任意選択的に、電圧源が電極に接続されるとき、較正抵抗器から切断することができる。抵抗値が判定され(較正され)、既知である較正抵抗器は、較正モードでの動作中(換言すれば、較正抵抗器のみに電圧源を切り替えることによって)、複素インピーダンス又はアドミッタンスを測定するために使用される。較正抵抗器の(インピーダンス又はアドミッタンスの)測定された複素数値は、測定モードで測定デバイスによって(すなわち、電圧源を電極に切り替えることにより)測定された(検出電極とフレーム接地との間の)インピーダンス又はアドミッタンスの求められた複素数値の測定を修正することを可能にする。本発明は、この較正システムによって、環境変動(特に温度及び湿度)による測定におけるいずれのドリフトを効果的に補償するか、又はデバイスの製造に使用される電子構成要素の動作変数を考慮することを可能にする。本発明の特定の実施形態では、静電容量検出デバイスは、2つの較正抵抗器を備える。
【0007】
2つの較正抵抗器を使用することにより、異なる抵抗値を有する2つの電気双極子のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の2つの測定を行うことが可能となる。このため、2つの異なる測定点が、(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素平面で得られる。
【0008】
第1の実施形態では、2つの較正抵抗器は、異なる抵抗値を有する。この場合、デバイスは、2つの較正抵抗器の各々の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値を別々に測定する。有利には、2つの較正抵抗器は、並列に取り付けられ、スイッチングデバイスは、電圧源を2つの較正抵抗器のうちの一方又は他方に選択的に接続するように構成される。
【0009】
例えば、較正抵抗器のうちの第1の較正抵抗器は、1kΩ~20kΩ、好ましくは5kΩ~15kΩに含まれる抵抗値を有し、較正抵抗器のうちの第2の較正抵抗器は、10kΩ~200kΩ、好ましくは50kΩ~150kΩに含まれる抵抗値を有する。これら2つの範囲の値は、それぞれ、ハンドル上の2つの手によって加えられるインピーダンスの複素数値、及びハンドル上の1つの指によって加えられるインピーダンスの複素数値に近接すると定義される。
【0010】
第2の実施形態では、2つの抵抗器は、同一である。この場合、デバイスは、例えば、2つの較正抵抗器のうちの1つのみのインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値、及び直列若しくは並列に取り付けられた2つの較正抵抗器のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定する。
【0011】
いずれの場合も、異なる抵抗値を有する2つの電気双極子に対応する2つの別個の較正測定点を得ることにより、測定された2つの複素較正値が、インピーダンス又はアドミッタンスの複素平面のゼロと整合されなければならないため、測定の位相を容易に補正することが可能となる。
【0012】
有利には、測定デバイスは、第2の測定された複素数値にオフセット補正を適用するように構成され、当該オフセット補正は、複素平面内のベクトル
【数1】
による並進に対応し、点SOCは、静電容量検出デバイスのアドミッタンス又はインピーダンスの開回路複素数値に対応する複素平面の点であり、点Oは、複素平面の原点に対応する。オフセット補正は、電子機器の放射又は電子機器の受信、並びに複素インピーダンスの測定における静電容量検出デバイスの接続ケーブルの異なる段の特定の干渉効果を補正することを可能とする。このため、本発明は、複素インピーダンスの測定値がゼロであることを保証することを可能とする。
【0013】
有利には、測定デバイスは、2つの較正抵抗器によって測定された2つの複素数値から、静電容量検出デバイスのインピーダンス又はアドミッタンスの当該開回路複素数値を計算するように構成される。複素インピーダンスを測定するためのデバイスは、静電容量検出デバイスの正確な動作を検証するために、(インピーダンス又はアドミッタンスの)開回路複素数値を測定し、当該測定された開回路複素数値を、計算された(インピーダンス又はアドミッタンスの)開回路複素数値と比較するように構成することができる。
【0014】
有利には、測定デバイスは、第2の測定された複素数値に位相補正を適用するように構成され、当該位相補正が、2つの較正抵抗器によって測定されたインピーダンス又はアドミッタンスの2つの複素数値から得られた、複素平面内の2つの点によって画定された直線と、複素平面の抵抗又は導電率の軸との間の角度αによる回転に対応する。「較正抵抗器」は、本明細書において、既知の抵抗値を有する2つの抵抗器、又は任意選択的に既知の抵抗値を有する1つの抵抗器、及び開放回路に相当する無限値の1つの抵抗器を指すことが理解される。抵抗器は、他の構成要素の残りよりも、(0.1%程度の)より正確な抵抗値を有するように選択される。これらはまた、(15ppm程度の)非常に低い温度ドリフト及び/又は機械的若しくは熱的応力に対するより良好な抵抗を有するように選択される。これらは、例えば、一般に使用される「厚いフィルム」技術よりも良好な性能を得ることを可能にする、「薄膜」技術を使用することができる。実際、「厚膜」技術を使用する抵抗器は、炉を通過するときに、より大幅に変化する。
【0015】
有利には、測定デバイスは、前述のように、オフセット補正及び位相補正を含む2つの補正のうちの少なくとも1つを適用するように構成される。換言すれば、測定デバイスは、オフセット補正若しくは位相補正、又はオフセット補正及び位相補正のいずれかを適用するように構成することができる。
【0016】
有利には、静電容量検出デバイスは、直列の一対の保護コンデンサを備え、当該一対のコンデンサは、1つ以上の較正抵抗器と並列に取り付けられ、2つのコンデンサのうちの一方は、その端子が2つのそれぞれのスイッチを介して電圧源に接続され、他方のコンデンサは、車両のフレーム接地に接続される。保護コンデンサは、好ましくは、ESD(electrostatic discharge、静電放電)の影響に対して、従来の抵抗器よりも感度が高い精密抵抗器である、較正抵抗器を保護することを可能とする。有利には、保護コンデンサの静電容量値は、静電容量検出デバイスの設計静電容量の値に近い範囲で選択される。このため、較正モードで測定された電流は、測定モードで測定された電流と同様である。これにより、最適な測定精度が保証される。
【0017】
静電容量検出デバイスは、電極と電気回路基準点との間の第2の複素数値の測定を周期的に繰り返し、かつ、当該第2の複素数値の2つの連続する測定の間で、単一の較正測定を行うように構成することができる。
【0018】
前もって、初期の較正位相中に、デバイスは、2つの較正抵抗器から生成された2つの異なる電気双極子のインピーダンス又はアドミッタンスの第1の複素数値の2つの較正測定を行うように構成することができる。
【0019】
このため、本発明は、電極と電気回路基準点との間の複素インピーダンスの測定のリズムを劣化させることなく、複素インピーダンスの測定時間にわたる連続較正を保証し、任意の可能な干渉効果(例えば、温度)を連続的に補償することを可能にする。
【0020】
有利には、測定デバイスは、スケーリングゲインGを、当該第2の測定され、次いで補正された複素数値の虚部分に適用することによって、当該第2の測定され、次いで補正された(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値から、電極と車両の電気回路基準点との間の静電容量値を計算するように構成され、ゲインGは、式
【数2】
によって提供され、
式中、
-RC1は、第1の較正抵抗器であり、
-RC2は、第2の較正抵抗器であり、
-CR_C1は、第1の較正抵抗器RC1の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値の測定に対応する、アドミッタンスの複素平面内の点であり、
-CR_C2は、第2の較正抵抗器RC2の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値の測定に対応する、アドミッタンスの複素平面内の点である。
【0021】
測定デバイスは、例えば、電流測定回路を備える。
【0022】
本発明はまた、前もって定義された静電容量検出デバイスを備える車両ハンドルに関する。
【0023】
本発明は、同様に、前もって定義された静電容量検出デバイスを備えたモータ車両シートに関する。
【0024】
本発明は、上記に定義されたハンドル及び/又はシートを備える、自動車に更に関する。
【0025】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として提供され、添付の図面によって示される本発明の実施形態の以下の詳細な説明から、より明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の特定の実施形態による、ハンドル上の運転者の存在を検出するための2つの電極を備えたハンドルを示す概略図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態による、静電容量デバイスの配線図を示す。
図3】複素平面、この場合、正規直交座標系
【数3】
を含む、アドミッタンスの複素平面を示し、その上に、生(未補正)測定点、補正された測定点、及び計算された点が示される。
図4】複素平面、この場合、正規直交座標系
【数4】
を含む、アドミッタンスの複素平面を示し、その上に、生(未補正)測定点、補正された測定点、及び計算された点が示される。
図5】複素平面、この場合、正規直交座標系
【数5】
を含む、アドミッタンスの複素平面を示し、その上に、生(未補正)測定点、補正された測定点、及び計算された点が示される。
図6.1】初期較正動作の工程のフローチャートを示す。
図6.2】検出電極と車両のフレーム接地との間の、アドミッタンス又はインピーダンスの、求められる複素数値を測定するための動作の工程のフローチャートを示す。
図7図2に示される2つの較正抵抗器の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値の測定と交錯した、求められる複素数値の測定のシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、車両のハンドル上に取り付けられた静電容量デバイスの文脈で、例示的な例によって、以下に記載し、当該デバイスは、ハンドル上の運転者の存在を検出することを意図する。
【0028】
図1は、車両のフレーム接地に接続することができる電機子10を備えるハンドル1を概略的に示す。本発明によれば、ハンドルは、「誘電体電極」と称される外部電極20、及び誘電体材料層22によって分離された「ガード電極」と称される内部電極21を備える。電極21は、電極20とハンドル1の電機子10との間に存在する。電極21は、ハンドル上に存在し、ハンドルの電機子と直接接触(すなわち、直接電気接触)していない。当該電極20、21及び誘電材料は、所定の構造のコンデンサC1を有する要素又は静電容量センサを形成する。静電容量C1は、概して、500pF~10nF、好ましくは1nF~5nF、更により好ましくは1nF~3nFに含まれる。このコンデンサは、図2に見ることができる。
【0029】
車両の運転者が、ハンドルに向かって手又は指を触れるか、又は移動するとき、コンデンサCに対応する複素インピーダンスZ、及び並列に配置された抵抗器Rが、検出電極20と車両のフレーム接地との間に追加される。この複素インピーダンスZは、ハンドルに向かって移動する器官の表面積の関数である。この値を判定することにより、ハンドル上の(又はそれに近い)運転者の有無を検出することが可能になる。
【0030】
図2は、本発明の特定の実施形態による、静電容量デバイス100を示す。このデバイス100は、
-ガード電極21に結合された検出電極20と、
-交流電圧を供給するように構成された電圧源23と、
-インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定するためのデバイス24と、
-少なくとも1つの較正抵抗器、この場合、2つの較正抵抗器RC1、RC2を備える較正デバイス25と、
-スイッチングデバイス26,SW1~SW6と、を備える。
【0031】
図2は、同様に、ハンドル1に存在する様々なコンデンサ、
-電極20と電極21との間にある構造C1を有するコンデンサと、
-ガード電極21と、本明細書では車両のフレーム接地に接続された、ハンドル10の電機子との間に存在する構造C2を有するコンデンサと、
-本明細書ではハンドル1の検出電極20と車両のフレーム接地との間に存在する(判定される)未知のコンデンサCと、を示し、このコンデンサCは、ハンドル1上の運転者の手又は指(複数可)によって加えられた静電容量を含み、適用可能な場合に、1つ以上の漏洩静電容量がハンドル1の構造にリンクされ、これは、検出電極20とフレーム接地との間の、求められた複素インピーダンスZの静電容量部分を示す。
【0032】
電圧源23は、本明細書では電圧変圧器231に接続される、交流電圧発生器230を備える。電圧発生器230は、変圧器231の一次側に接続される。変圧器231の二次側は、変圧器231を介して交流電圧信号を供給される外部構成要素に電圧源23を接続するために、2つの出力端子232及び233に接続される。変圧器231は、ガルバニック絶縁を、電圧発生器230と接続された外部構成要素との間に作成し、共通モードの影響が接続された構成要素に向かって伝播するのを防止する。代替的に、電圧変圧器を除去することもできる。本明細書のスイッチングデバイスは、異なるリレー又は電気スイッチSW1~SW6、及び制御ユニット26を備える。典型的には、制御ユニット26のコマンドにおいて、リレーは、
-測定モードで、電圧源23を電極20又は21のうちの少なくとも1つに接続することと、
-較正モードで、電圧源23を少なくとも1つの較正抵抗器Rc1、Rc2に接続し、1つ以上の電極20又は21を電圧源23から切断することと、を行うように構成される。
【0033】
本明細書に記載される実施形態では、リレーSW1~SW6は、電圧源23を、
-測定モードで、検出電極20のいずれかと、
-又は較正モードで、較正デバイス25に、選択的に接続するより正確な役割を有する。
【0034】
様々なリレーSW1~SW6の開放及び閉鎖は、測定モード及び較正モードで上述した電気構成を得るために、制御ユニット26によって制御される。具体的には、較正モードでは、電圧源23は、較正デバイス25に接続され、電極から(本明細書では検出電極20から)切断されなければならず、SW1及びSW2は、開放され、SW5及びSW6は、閉鎖される。本明細書に記載の特定の実施例では、測定モードでは、電圧源23は、電極(本明細書では検出電極20)に接続され、較正デバイス25から切断され、SW1及びSW2は、閉鎖され、SW5及びSW6は、開放される。しかしながら、電圧源23と較正デバイス25との間の測定モードでの接続を維持することが企図され得る。
【0035】
「測定モード」という用語は、電極、例えば、検出電極20のうちの1つと電気回路基準点と間のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定するのに好適な静電容量検出デバイス100の電気構成を指すものと理解される。この電気回路基準点は、例えば、車両のフレーム接地である。代替的に、基準点は、別の電気回路点、例えば、静電容量デバイスの他の電極であってもよい。
【0036】
「較正モード」という用語は、1つ以上の較正抵抗器(以下に説明するように、本明細書ではRC1又はRC2若しくは任意選択的に開回路に相当する無限抵抗器)のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定するのに好適な静電容量検出デバイス100の電気構成を指すものと理解される。
【0037】
制御ユニット26は、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)である。
【0038】
本明細書に記載される特定の実施形態では、検出電極20は、リレーSW1を介して電圧源23に接続される。より具体的には、図2を参照して本明細書に記載される実施形態では、検出電極20は、リレーSW1を介して変圧器231の二次側の端子232に接続される。ガード電極21は、リレーSW2を介して変圧器231の二次側の端子233に接続される。測定モードでは、2つのリレーSW1及びSW2は、変圧器231の出力端子232及び233を検出電極20及びガード電極21にそれぞれ接続するために閉鎖される。較正モードでは、2つのリレーSW1及びSW2は、電圧源23を電極20及び21から切断するために開放される。
【0039】
測定デバイス24は、電極と電気回路基準点との間のインピーダンス又はアドミッタンスに対応する複素数値を測定するように構成される。例えば、測定デバイス24は、検出電極20と車両のフレーム接地との間の求められる複素インピーダンス「Z」(又はアドミッタンス1/Z)を測定することを意図する。この複素インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)は、ハンドル上の人物の手の有無を検出するように判定される未知のインピーダンス(又はアドミッタンス)である。人物、典型的には運転者が、彼らの手(又は単一の手、又は操縦ホイール上の1つの指若しくは複数の指)を有するとき、複素インピーダンスZは、抵抗Rの実部分及び静電容量Cの虚部分を含む。代替的に、複素アドミッタンス1/Zは、コンダクタンスの実部分及びサセプタンスの虚部分を含む。
【0040】
測定デバイス24は、本明細書では電流測定回路240、242~243、及び処理回路241を備える。
【0041】
電流測定回路240、242~243は、負入力端子(-)240.1と、正入力端子(+)240.2と、出力端子240.3と、を有する演算増幅器240を備える。正入力端子(+)240.2は、フレーム接地又は等価電圧信号に接続される。負入力端子240.1は、複素インピーダンス又はアドミッタンスを測定する目的で測定される電流を受信することを意図する。演算増幅器240の出力端子240.3は、コンデンサ243と並列に取り付けられた抵抗器242を介して、負入力端子240.1にリンクされ、そのため演算増幅器240が、コンデンサ243によってフィルタリングされた電流-電圧変換器を形成する。
【0042】
抵抗器242の値は、例えば、1kΩ~10kΩ、好ましくは1kΩ~5kΩに含まれる。抵抗器の値は、電磁適合性試験が増幅器の入力段を飽和させないように、好都合に選択される。コンデンサ243の静電容量は、正弦波電圧発生器の振動数に関する所望の通過帯域の関数として選択される。例えば、100kHz及び2kΩの周波数の抵抗器242の場合、コンデンサ243の静電容量は、220pF程度である。
【0043】
演算増幅器240の入力端子間の電圧は、0又はほぼ0であり、その入力インピーダンスは、非常に高く、無限であるとみなされる。このようにして、ガード電極21は、仮想接地を構成し、これは、コンデンサC2の端子の電圧がゼロであるので、測定に対するコンデンサC2(電極21と車両のフレーム接地との間)の全ての影響を除去する。
【0044】
演算増幅器240が、電流-電圧変換器として取り付けられるので、その出力に存在する電圧は、演算増幅器240の負入力端子240.1を通って循環する電流を表す。換言すれば、増幅器240の出力電圧は、負入力端子240.1を通って循環する電流のレプリカである。
【0045】
処理回路241は、入力端子240.1を通って循環する電流を表す、演算増幅器240の出力電圧からのインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を判定するように構成される。本明細書では検出電極20と車両のフレーム接地との間の複素インピーダンスZ(又は複素アドミッタンス1/Z)、並びに1つ以上の較正抵抗器(本明細書ではRC1、RC2、又は任意選択的に無限抵抗)の複素インピーダンス(又は複素アドミッタンス)を判定することを可能にする。
【0046】
インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定は、図3に示されるものなどの複素平面で表すことができる。この図3は、例示的な例として、正規直交座標系
【数6】
を含むアドミッタンスの複素平面を示し、式中
【数7】
は、それぞれ、導電率1/Rの軸を画定するベクトル、及びサセプタンスC×2π×fの軸を画定するベクトルである(式中、fは、処理回路241のDDS(Direct Digital Synthesis、直接デジタル合成)によってヘルツで発生させられる周波数である)。
【0047】
測定電子機器(電圧源、変圧器、オペアンプ増幅器など)、接続ケーブル、及び環境条件、特に温度は、複素インピーダンスの測定に干渉効果を有する。これらの干渉効果又は構成要素の変動にリンクした性能変動を補償するために、静電容量検出デバイス100は、較正デバイス25によって測定モードにおけるデバイス100の動作中に行われた、インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定を較正又は補正するように構成される。
【0048】
本明細書の較正デバイス25は、2つの較正抵抗器Rc1及びRc2を備える。本明細書に記載される特定の実施形態では、2つの較正抵抗器Rc1及びRc2は、互いに異なる。
【0049】
較正抵抗器Rc1及びRc2は、有利には、較正され、すなわち、プロビジョニングされ、関連する値の範囲内の測定の正確な較正を保証して、ハンドル上の少なくとも1つの手若しくは少なくとも1つの指のインピーダンス又はアドミッタンスを測定するために、判定された抵抗値を有する。例えば、較正抵抗器Rc1及びRc2は、それぞれ、ハンドル上に配置された2つの手、及びハンドル上に配置された1つの指に対応するようにプロビジョニングされる。換言すれば、較正抵抗器Rc1は、150pF程度の静電容量C150で構成された、ハンドル上に配置された2つの手によって加えられる理論インピーダンスに実質的に(近似によって)等しくなるようにプロビジョニングされる。100kHzの任意の周波数fについて、この理論インピーダンスC150150pFは、以下の式
【数8】
によって判定される。この理論値は、10キロオームに丸みを帯びているため、本明細書で選択される較正抵抗器Rc1は、10K(10キロオーム)の精度を有する抵抗器である。同様に、較正抵抗器Rc2は、15pF程度のC15の静電容量から構成された、ハンドル上に配置された1つの指によって加えられる理論インピーダンスと実質的に(近似によって)等しくなるようにプロビジョニングされる。100kHzの任意の周波数fについて、この理論インピーダンスZ15pFは、以下の式
【数9】
によって判定される。この理論値は、100K(100キロオーム)に丸みを帯びているため、本明細書で選択される較正抵抗器Rc2は、100K(100キロオーム)の精度を有する抵抗器である。しかしながら、較正抵抗器Rc1及びRc2の値は、10K及び100Kとは異なり、有利には、1K~200K、好ましくは5K~150Kに含まれ得る。抵抗器Rc1の値は、例えば、1kΩ~20kΩ、好ましくは5kΩ~15kΩに含まれる。抵抗器Rc2の値は、例えば、10kΩ~200kΩ、好ましくは50kΩ~150kΩに含まれる。較正抵抗器は、インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定するための基準のフレームを作成することを可能にする。好ましくは、精密抵抗器は、非常に低い温度ドリフト(25ppm)、非常に良好な許容誤差(0.1%)、機械的応力に対するより良好な抵抗、水分に対してより良好な抵抗、及び炉を通る通路中の生産においてより良好な抵抗を得るために使用される。例えば、較正抵抗器は、「薄膜」技術によって得られる。
【0050】
2つの較正抵抗器Rc1及びRc2は、本明細書では並列に取り付けられる。抵抗器Rc1(Rc2)の各々は、その2つの端子において、それぞれ以下のように:
-共通電気リレー又はスイッチSW5を介して電圧源23に、具体的には、図2を参照して本明細書に記載される実施形態では、2つの抵抗器Rc1(Rc2)は、リレーSW5を介して変圧器231の出力端子232に接続され、
-個々の電気リレー又はスイッチSW3(SW4)を介して、車両のフレーム接地に、接続される。
【0051】
本明細書に記載される特定の実施形態では、較正デバイス25は同様に、直列に取り付けられた一対の2つの保護コンデンサCP1及びCP2を備える。直列の一対のコンデンサCP1及びCP2は、較正抵抗器Rc1及びRc2と並列に取り付けられ、車両のフレーム接地に接続される。これらのコンデンサCP1及びCP2は、較正抵抗器を保護することを可能にし、本明細書では、ESD(静電放電)の影響に対して従来の抵抗器よりも感度が高い精密抵抗器である。それらは、設計静電容量C1及びC2に近い静電容量範囲でプロビジョニングされる。より具体的には、静電容量CP1は、静電容量C1程度のものであり、静電容量CP2は、静電容量C2程度のものである。より具体的には、CP1は、500pF~500nFに含まれ、好ましくは10nFに等しく、CP2は、100pF~10nFに含まれ、好ましくは1nFに等しい。これに対して、較正中に測定された電流は、求められたインピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定中に測定された電流と同様である。これにより、最適な測定精度が得られる。
【0052】
リレーSW3と直列に結合された較正抵抗器Rc1、リレーSW4と直列に結合された較正抵抗器Rc2、及び直列の一対のコンデンサCP1並びにCP2は、リレーSW5を介する、交流電圧源23(この場合、変圧器231の出力端子232)と車両のフレーム接地との間で、並列に接続された3つの回路分岐を形成する。
【0053】
スイッチングデバイスは、同様に、変圧器231の出力端子233と、2つの保護コンデンサCP1とCP2との間の接続点との間に挿入されたリレーSW6を備える。このため、較正モードでは、保護コンデンサCP1は、その端子が、それぞれ、第1のリレーSW5及び第2のリレーSW6を介して、変圧器231の二次側の2つの出力端子232及び233に接続される。保護コンデンサCP2は、それぞれ、リレーSW6を介して、変圧器231の二次側の出力端子233及びフレーム接地に、その2つの端子で接続される。
【0054】
測定回路24は、増幅器240の負入力端子240.1を通して本明細書で測定されるインピーダンス又はアドミッタンスを表す電流信号を受信するように意図される。このため、スイッチングデバイスは、入力端子240.1を、測定モードにおいて電流源23の出力端子233を接続している分岐、又はリレーSW6を介して2つの保護コンデンサCP1及びCP2の間の接続点のいずれかに接続するように構成される。図2の実施形態では、増幅器240の負入力端子240.1は、リレーSW6と変圧器231の出力端子233とをリンクする接続分岐に接続される。コンデンサCP1及びCP2が使用されない場合、増幅器240の負入力端子240.1は、変圧器231の出力端子233にのみ接続され、抵抗器RC1及びRC2は、同様に、変圧器231の出力端子232に直接接続される。
【0055】
以下は、図3図5のグラフ及び図6.1及び図6.2のフローチャートを参照して、静電容量較正デバイス100の動作に対応する、車両のハンドル1上の人物を検出するための方法の説明である。
【0056】
本発明は、検出電極20と、本明細書では互いに異なる既知の抵抗値を有する較正抵抗器Rc1及びRc2からのフレーム接地との間のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定の較正(又は補正)を可能にする。較正抵抗器Rc1及びRc2は、較正測定を行うために使用される。以下に説明するように、これらの較正測定は、較正を連続的に更新するために繰り返すことができる。
【0057】
検出方法は、図6.1に示される、初期較正動作E0を含む。この初期較正動作E0は、較正抵抗器の各々のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定することを目的とし、同様に、本明細書では、無限抵抗器の複素インピーダンス又はアドミッタンスに相当するインピーダンス又はアドミッタンスの開回路複素数値を測定することを目的とする。これは、静電容量検出デバイス100の較正モードにおける構成の第1の工程E00を含む。この工程E00の間、制御ユニット26のコマンドでは、リレーSW1及びSW2が開放され、リレーSW5及びSW6が閉鎖される。次いで、電圧源23は、電極20、21から切断され、較正デバイス25に接続されて、本明細書では一対の保護コンデンサCP1及びCP2を通して、較正段に交流電圧を供給する。
【0058】
検出デバイス100(SW1~SW2開放及びSW5~SW6閉鎖)のこの構成では、較正抵抗器Rc1及びRc2は、それぞれ、抵抗器Rc1及び抵抗器Rc2のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の2つの測定を行うために、電圧源23に順々に(別々に)接続される。このため、スイッチングデバイスは、電圧源23を、2つの抵抗器Rc1のうちの第1の1つに選択的に接続し、次いで2つの抵抗器Rc2のうちの第2の1つに接続するように構成される。より正確には、リレーSW3が閉鎖され、リレーSW4が開放されるため、測定デバイス24は、第1の較正測定工程E01中に、較正抵抗器Rc1の複素インピーダンス又はアドミッタンスを測定する。次いで、リレーSW3が開放され、リレーSW4が閉鎖されるため、測定デバイス24は、第2の較正測定サブ工程E02中に、較正抵抗器Rc2の複素インピーダンス又はアドミッタンスを測定する。図3図5では、点CR10及びCR100が表され、複素平面において、本明細書では、それぞれ、アドミッタンス
【数10】
較正抵抗器RC1のアドミッタンスの複素数値の生測定、及び較正抵抗器RC2のアドミッタンスの複素数値の生測定である。「生測定」は、補正されていない測定を指すものと理解される。工程E01及び工程E02は、任意の所与の順序で実行することができる。
【0059】
後続の工程E03中、処理回路241は、本明細書において検出デバイス100の理論開回路アドミッタンスSOC、換言すると、以下の式に従って、2つの較正抵抗器Rc1及びRc2の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値の測定から、無限較正抵抗器(例えば、Rc1又はRc2に取って代わる)のアドミッタンスを計算する。
【数11】
【0060】
式(1)は、以下の数学的特性を説明する、
-アドミッタンスSOC、CR10、及びCR100は、3つ全てが抵抗のみを表すため、アドミッタンスの複素平面内で位置合わせされ、
-開回路アドミッタンスSOCに対するアドミッタンスCR10の振幅と、開回路アドミッタンスSOCに対するアドミッタンスCR100の振幅との間に比例係数10が存在する。
【0061】
複素平面
【数12】
では、定義によって、理論的無限インピーダンス点SOCは、正規直交座標系の原点Oであるとみなされる。更に、図3及び図4に示されるように、前述の干渉効果により、座標系
【数13】
の点SOC及び原点Oは、複素平面
【数14】
において一致しない。点SOCを複素平面
【数15】
の原点O上に送る並進は、ベクトル
【数16】
を画定する。ベクトル
【数17】
によって特徴付けられる並進は、測定デバイス24によって行われた測定に適用される第1のオフセット補正を画定する。工程E04中、処理回路241は、オフセット又は並進ベクトル
【数18】
を計算する。
【0062】
工程E05中、処理回路241は、複素平面
【数19】
内の点CR10(又はCR100)のベクトル
【数20】
による並進に対応する第1の補正を、抵抗器Rc1及びRc2のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の2つの測定のうちの少なくとも1つに適用する。ベクトル
【数21】
による並進による点CR10(又はCR100)の画像点は、図4に示されるように、複素平面
【数22】
におけるオフセット点CR10_S(又はCR100_S)である。これは、以下の式に従う。
【数23】
【0063】
工程E06中、処理回路241は、導電率及び静電容量の標準測定単位、それぞれ、ジーメンス及びファラッド、への変換のためのゲインGを計算する。変換ゲインGは、以下の式に従って計算される。
【数24】
【0064】
上記の式(3)は、2つの較正抵抗器Rc1及びRc2のそれぞれのアドミッタンス間の差が、測定点CR10と測定点CR100とを接続するベクトルのノルムを乗じたゲインGと等しいという事実から生じる。換言すると、
【数25】
である。
【0065】
本方法は同様に、(図6.1に点線で示される)工程E07中、較正抵抗器Rc1及びRc2のインピーダンスの測定E01及びE02の後に、例えば、初期較正動作E0中に行われるインピーダンス又はアドミッタンスの開回路複素数値の測定を含むことができる。インピーダンス又はアドミッタンスのこの開回路複素数値は、較正抵抗器のインピーダンス又はアドミッタンスに対応するが、無限抵抗値を備える。図3及び図4に示されるように、アドミッタンスの開回路複素数値の測定に対応するアドミッタンス
【数26】
の平面の点COCであることに留意されたい。図4に示されるように、検出デバイス100の正しい動作中、点COCは、計算された理論上の点SOCに近接する。COCとSOCとの間の過剰なオフセットは、静電容量検出デバイス100の誤動作を示す。本方法は、任意選択的に、正しい動作を診断する工程E08を含み、処理回路241は、検出デバイス100の動作又は誤った動作を検出するために、測定された点COCが、計算された理論上の点SOCに近接するかどうかを検証する。例えば、2つの点COCとSOCとの間の距離が、計算され、限界(又は閾)値と比較される。計算された距離が限界値未満の場合、動作は、正しいとみなされる。計算された距離が限界値を超える場合、検出デバイス100の誤動作が検出される。この場合、車両の運転者に警告信号が送信されてもよい。
【0066】
較正動作E0の後、検出電極20と車両のフレーム接地との間のインピーダンスを測定する動作E1が続く。運転者が、ハンドル上に手を有する(又は、1つ以上の指のみを有する)とき、図2に示されるように、検出電極20とフレーム接地との間で、抵抗R及び静電容量Cを並列に含む、インピーダンスZを加える。
【0067】
測定動作E1は、静電容量検出デバイス100の測定モードにおける構成の第1の工程E10を含む。この工程E10中、制御ユニット26のコマンドにおいて、リレーSW1及びSW2が、閉鎖され、リレーSW5及びSW6が、本明細書では開放される。次いで、電圧源23は、電極20、21に接続され、検出電極20は、電圧源の出力端子232に接続され、較正デバイス25から切断されており、そのため検出電極20に交流電圧が供給される。この構成では、リレーSW3及びSW4は、有利に開放される。
【0068】
測定工程E11中、検出電極20は、交流電圧信号を受信し、測定回路24は、増幅器240によってガード電極21を通って循環する電流を測定する。処理回路241は、検出電極20とフレーム接地との間のインピーダンスZ、又はアドミッタンス1/Zの複素数値を判定する。図4は、本明細書では、アドミッタンス
【数27】
の複素平面内に示され、測定点Mが、インピーダンスZ、又はアドミッタンス1/Zの複素数値の測定を表し、並びに抵抗器RC1のオフセット測定点CR10_S、原点O、及び計算された点SOCが、無限(又は開回路)インピーダンスに対応する。
【0069】
後続の工程E12中、処理回路241は、インピーダンスZ、又はアドミッタンス1/Zの複素数値の測定に適用し、第1の補正が、アドミッタンス
【数28】
の平面における測定点Mのベクトル
【数29】
による並進に対応する。この並進による測定点Mの画像点は、アドミッタンス
【数30】
の平面におけるオフセット点Mである。これは、以下の式に従う。
【数31】
【0070】
較正抵抗器RC1、RC2は、実数(抵抗)値を有する純抵抗器である。従来、抵抗器は、導電軸
【数32】
上の点によって、複素平面、本明細書ではアドミッタンス
【数33】
内で表される。この幾何学的特性、及び抵抗器RC1、RC2の測定された複素数値及びインピーダンス又はアドミッタンスの計算された開回路複素数値(すなわちオフセットによる補正前のCR10、CR100、及びSOC、又は
【数34】
によるオフセット後のCR10_S、CR100_S、及びO)を表す点のうちの少なくとも2つに基づいて、処理回路241は、例えば、次の式により、工程E13中に、複素平面内の位相補正を、オフセット測定点Mに適用する。
【数35】
式中、M_S&Rは、オフセット補正及び位相補正後の測定点Mである。
【0071】
より一般的な方法では、当該位相補正は、
-抵抗器(較正抵抗器(複数可)及び/又は無限抵抗器)のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定から得られる、(アドミッタンス
【数36】
又はインピーダンスの)複素平面の2つの点によって画定される直線と、
-複素平面の導電率又は抵抗の軸
【数37】
との間の角度αによる回転に対応する。
【0072】
抵抗器のインピーダンス又はアドミッタンスの複素数値の測定から得られた、複素平面
【数38】
の2つの点は、以下の2つのグループの点のうちの1つの中から選択することができる。
-CR10、CR100、及びSOC
-CR10_S、CR100_S、及びO、
-又は、例えば、CR10及びCOC
【0073】
このため、処理回路は、本明細書で、アドミッタンス
【数39】
の平面内の点M_S&Rによって表された、オフセット及び位相補正により補正された(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値を判定する。アドミッタンス
【数40】
の平面における点M_S&Rの横座標及び縦座標として、x及びyに留意されたい。
【0074】
オフセット補正及び位相補正は、計算が好適であることを条件として、任意の所与の順序で実行することができる。
【0075】
スケーリング工程E14中、処理ユニット241は、以下の式により、それらをオーム及び測定のファラッド単位にそれぞれ変換するために、点M_S&Rのx座標及びy座標をスケーリングする。
【数41】
式中、fは、処理集積回路241のDDS(直接デジタル合成)によって発生させられたヘルツの周波数である。
【0076】
最終工程E15中、処理ユニット241は、工程E14中に得られた静電容量値Cを使用して、ハンドル1上の運転者の有無を検出する。この静電容量値Cは、ハンドル1と接触する手又は指の表面を評価することを可能にする。15pF程度の静電容量は、ハンドル1上に配置された1つの指に対応する。150pF程度の静電容量は、ハンドル1上に配置された2つの手に対応する。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、初期較正動作E0の実行後、インピーダンスZを測定するための動作E1が続き、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の複素数値を測定する工程E11が、周期的に繰り返され、Z(又は1/Z)の2つの測定の間で、較正工程(E01、E02、及び/又はE07)が繰り返される。このため、インピーダンス(又はアドミッタンス)Z(又は1/Z)の求められた測定は、ハンドル1上の検出の持続時間全体にわたって、連続較正を保証するために、較正測定と交錯される。例えば、較正データを経時的に、徐々にかつ連続的に更新するために、測定の半分は、測定モードにおけるインピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定専用であり、測定の他の半分は、較正モードにおける較正測定(E01、E02、又はE07)専用である。図7は、Zの測定及び較正測定のこの交錯の一実施形態の一実施例を示す。第1の線及び第2の線は、それぞれ、抵抗器RC1及びRC2のインピーダンスの測定を示す。最後の線は、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定を示す。最初に、図6.1を参照して説明されるように、検出デバイス100は、第1の組の較正データを得るために、抵抗器RC1の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値を測定し、次いで、抵抗器RC2の(インピーダンス又はアドミッタンスの)複素数値を測定する。次いで、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の第1の測定が行われる。この初期位相の後、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定は、所定の測定周波数により、定期的に繰り返され、2つの測定の間で、単一の較正測定が本明細書で行われる、すなわち較正抵抗器RC1のインピーダンスの測定、又は較正抵抗器RC2のインピーダンスの測定のいずれかである。また、これらの較正測定を開回路測定(無限値を有する較正抵抗器に相当)で代替することも可能である。このため、異なる較正測定は、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の2つの連続する測定の間で、順々に周期的に行われる。このため、較正測定は、インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定の間に交錯される。
【0078】
インピーダンスZ(又はアドミッタンス1/Z)の測定の交錯、及び較正測定は、典型的には車両が始動される瞬間から、エンジンがオフになるまで、検出デバイス100の動作時間全体の間に有利に実行される。
【0079】
前述の説明では、静電容量検出デバイス100は、互いに異なる抵抗値を有する2つの較正抵抗器を備える。
【0080】
第1の代替的な実施形態では、静電容量検出デバイスは、2つの類似する較正抵抗器(すなわち、同じ抵抗値を有する)を備える。この場合、2つの較正抵抗器から2つの異なる抵抗双極子を生成するためにスイッチング手段が提供され、これにより、インピーダンス(又はアドミッタンス)の複素数値の2つの測定を行い、複素平面内の較正測定のための2つの別個の点を得ることを可能にする。例えば、第1の抵抗双極子は、2つの較正抵抗器のうちの1つのみを備え、第2の抵抗双極子は、並列又は直列に取り付けられた2つの較正抵抗器を備える。
【0081】
第2の代替的な実施形態では、静電容量検出デバイスは、単一の較正抵抗器を備え、例えば、10kΩ~100kΩに含まれる、較正抵抗器のインピーダンスを測定する第1の工程を実行することを可能にする。この場合、別の較正抵抗器のインピーダンスを測定する第2の工程が除去され、本方法は、開回路インピーダンス測定を得るために、工程E07と同一の開回路抵抗を測定する工程を含む。この場合、適用される2つの補正(オフセット補正及び位相補正)は、アドミッタンスの平面における較正抵抗器のインピーダンス測定を表す点、例えばCR100(較正抵抗器が100kΩのものである場合)及び開回路インピーダンス測定を示す点COCのインピーダンス測定を表す点から判定される。開回路インピーダンス(又はアドミッタンス)は、この場合、測定されるが、理論的に計算されない(点SOCは、計算されない)。
【0082】
前述の説明では、検出電極は、電圧源23、この場合、リレーSW1を介してその出力端子232に接続される。電気組立体の代替的な実施形態では、電圧源23に接続される、この場合、リレーSW1を介して出力端子232に接続されるのはガード電極である。
【0083】
前述の説明では、測定デバイス24は、電極(例えば、検出電極20)と車両のフレーム接地との間のハンドル上の人物の有無を検出するために、インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定する。代替的に、インピーダンス測定デバイス24は、2つの電極20、21のうちの1つと電気回路基準点との間のハンドル上の人物の有無を検出するために、インピーダンス又はアドミッタンスの複素数値を測定する。求められる複素インピーダンス又はアドミッタンス測定の基準点を構成する電気回路の点は、他の電極とすることができる。
【0084】
本発明は、車両のハンドル上の運転者の存在を検出する文脈内で説明される。本発明の別の実施形態では、静電容量検出デバイスは、車両のシート上の人物の有無を検出することが意図される。より典型的には、本発明は、モータ車両の構成要素に近接する又はその上にある(すなわち、接触している)人物の存在の検出に適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6.1】
図6.2】
図7