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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】植え込み型吸収可能な機器
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/02 20060101AFI20230518BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20230518BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20230518BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20230518BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20230518BHJP
【FI】
A61L31/02
A61L31/12
A61L31/14 500
A61L31/16
A61F2/82
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021527920
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2019114692
(87)【国際公開番号】W WO2020125227
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】201811548943.2
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521204208
【氏名又は名称】元心科技(深▲せん▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】BIOTYX MEDICAL (SHENZHEN) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】4F, Building No.4, Jinxiu Science Park, Wuhe Avenue, Longhua District Shenzhen, Guangdong 518131, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 文嬌
(72)【発明者】
【氏名】辺 東
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108261559(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106474545(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0263287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
A61F 2/82- 2/97
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁及び内壁を有する鉄系基材を含む、ステントであって、
前記鉄系基材に設けられている亜鉛含有保護層及び酸性の産物を発生し、且つ、前記亜鉛含有保護層と作用し合う生分解性ポリマーを含む腐食促進層をさらに含み、前記亜鉛含有保護層は、前記鉄系基材の外壁及び内壁を覆い、
前記生分解性ポリマーは、生分解性ポリエステル及び生分解性酸無水物から選ばれた少なくとも一つであり、
前記生分解性ポリエステルは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリブチレンサクシネート、サリチル酸系のポリ(無水物-エステル)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ(β-アルカノエート)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリエチレンオキサレート、およびヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレート共重合体から選ばれた少なくとも一つであり、
前記生分解性ポリ酸無水物は、ポリ1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、ポリエルカ酸ダイマー-セバシン酸およびポリフマル酸-セバシン酸から選ばれた少なくとも一つであり、又は、
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリブチレンサクシネート、サリチル酸系のポリ(無水物-エステル)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ(β-アルカノエート)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリエチレンオキサレート、およびヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレート共重合体を形成するモノマー、並びに、ポリ1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、ポリエルカ酸ダイマー-セバシン酸およびポリフマル酸-セバシン酸を形成するモノマーの内に、少なくとも二つにより共重合して形成され、
前記腐食促進層は、前記亜鉛含有保護層を覆い、前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記外壁に位置する部分との厚さ比が、前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分の厚さ比よりも小さい、ことを特徴とするステント
【請求項2】
前記亜鉛含有保護層は、前記鉄系基材の内壁を完全に覆うと共に、前記亜鉛含有保護層は、前記鉄系基材の外壁の少なくとも一部を覆い、前記腐食促進層は、前記鉄系基材の外壁を完全に覆うと共に、前記腐食促進層は、前記鉄系基材の内壁の少なくとも一部を覆う、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項3】
前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分の厚さと前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分の厚さとが等しくない、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項4】
前記腐食促進層における前記外壁に位置する部分の厚さと前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分の厚さとが等しくない、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項5】
前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分との厚さ比は、0.08~0.38であり、しかも、前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項6】
前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分との厚さ比は、0.10~0.24であり、しかも、前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項7】
前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記外壁に位置する部分との厚さ比は、0.04~0.27であり、しかも、前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項8】
前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記外壁に位置する部分との厚さ比は、0.04~0.12であり、しかも、前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分との厚さは、0.4~3.6μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のステント
【請求項9】
前記亜鉛含有保護層の材料は、純亜鉛又は亜鉛合金であり、前記純亜鉛の純度が99.9wt.%以上であり、前記亜鉛合金における合金元素は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リチウム、カルシウム、ストロンチウム、マンガン、鉄、スズ、ゲルマニウム、ホウ素、ケイ素、銅、ビスマス、銀及びジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれかの一つに記載のステント
【請求項10】
前記腐食促進層には、活性物質を含み、しかも、前記腐食促進層における前記外壁、内壁及び側壁に位置する部分は、いずれも、前記活性物質を含み、又は、
前記腐食促進層における前記外壁と側壁における部分には、前記活性物質を含み、前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分には、前記活性物質を含まず、又は、
前記腐食促進層における前記外壁、内壁及び側壁に位置する部分には、いずれも、前記活性物質を含み、しかも、前記外壁及び前記側壁における前記活性物質の含有量は、いずれも、前記内壁における前記活性物質の含有量よりも大きい、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれかの一つに記載のステント
【請求項11】
前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分には、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物を含み、前記内皮化促進物質は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、エストロゲン及びスタチン類薬物から選ばれた少なくとも一つであり、前記抗血栓薬物は、抗凝固薬物、抗血小板薬物又は血栓溶解薬物から選ばれた少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれかの一つに記載のステント
【請求項12】
前記ステントは、薬物キャリア層をさらに含み、前記薬物キャリア層は、前記腐食促進層の少なくとも一部を覆い、又は、前記薬物キャリア層は、前記亜鉛含有保護層の一部を覆い、前記腐食促進層は、前記亜鉛含有保護層の一部を覆い、しかも、前記薬物キャリア層と前記腐食促進層とは、重なり領域を有しない、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれかの一つに記載のステント
【請求項13】
前記薬物キャリア層における前記鉄系基材に位置する内壁の部分には、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物を含み、前記内皮化促進物質は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、エスト
ロゲン及びスタチン類薬物から選ばれた少なくとも一つであり、前記抗血栓薬物は、抗凝固薬物、抗血小板薬物又は血栓溶解薬物から選ばれた少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項12に記載のステント
【請求項14】
前記鉄系基材は、純鉄又は鉄合金で構成され、前記純鉄の純度が99.9wt.%以上であり、前記鉄合金における合金元素は、炭素、窒素、リン、ケイ素、硫黄、ホウ素、コバルト、タングステン、マンガン、スズ、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、チタン、銅、金、銀、白金及びパラジウムから選ばれた少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項1から8のうちのいずれかの一つに記載のステント
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵襲型医療機器の分野に関し、特に、植え込み型吸収可能な機器に関する。
【背景技術】
【0002】
心血管疾患は、21世紀に、人間に健康を脅かす主な疾患の一つであり、血管内にステントを植え込むことが有効な治療手段である。現在、臨床に幅広く適用されているベアメタルステント(BMS、Bare Metal Stent)及び薬剤溶出性ステントは、共に、不活化ステントに該当することから、植え込まれると長期に渡って人体に残されていることになる。ステントが長期に渡って存在していると、ステントにより血管壁に刺激して炎症が生じることがあり、しかも、ステントにおける有害なイオンが溶出してしまう等の原因で、再狭窄や晩期血栓が招致されてしまう可能性が存在している。たとえ理想的に以上の合併症が生じたことが無い場合でも、金属ステントによる長期縛りにより、ステントが植え込まれている血管の生理機能が正常な血管のほうと異なっている。理想的な血管ステントは、血管への破損を避けるために十分な機械的支持を初期に提供できると共に、血管への修復が完了すると、局所的にかつ系統的に毒性が招致されないことを前提として、適正な速度で機体に分解して吸引され、最後に残されず、ひいては、従来の不活化ステントに存在した再狭窄や晩期血栓などの問題を根本的に解決できるものである。以上の臨床ニーズに応じて、従来の金属ステントと同様に優れた性能を有している新型分解可能な金属ステントが登場されてきている。
【0003】
分解可能な金属への研究がますます深くなり、材料に関連する製作及び加工技術が段々に発展しているのに伴い、分解可能な金属ステントが概念から実際の製品に変わってきた。関連の機器は、次々と動物試験や臨床試験の段階に入り、しかも、販売を承認された製品もある。現在において、分解可能な金属ステントは、その材料の体系によって、分解可能なマグネシウム基合金ステント、分解可能な亜鉛基合金ステント及び分解可能な鉄系合金ステントという三つの分類に分けられる。分解可能なマグネシウム合金ステントは、その研究が最も早く、最も深いものであり、数多くの動物試験及び臨床試験が展開されてきた。ドイツのBiotronik社により開発されたMagmarisというマグネシウム合金製の薬剤溶出性ステントは、既に、2016年に、CE認証を承認されたため販売が始まった。近年では、当該マグネシウム合金血管ステントは、その分解が速過ぎ、ステントが早期に崩壊されることにより、再狭窄が招致されてしまう問題が臨床において時々に報告された。また、マグネシウム合金ステントは、その規格が十分ではなく、機械的支持が比較的弱いという問題のせいで、その臨床に適用される範囲が制限されてしまう。分解可能な亜鉛基合金ステントは、近年に注目され始またが、その研究の始まりが遅い。現在においては、材料科学における問題が主に注目され、動物試験の報告が時折にあるが、その適用の見通しがまだ不明である。分解可能な鉄系合金ステントは、その機械的性能がステンレスやコバルトクロム合金などの従来の金属ステント材質によるもののほうと同様に優れており、その生体適合性も理論的・動物試験により証明されてきたことから、極めて有望な分解可能な金属ステントとなる。鉄系分解可能なステントは、マグネシウム合金ステントのほうと異なり、その分解速度が遅すぎるため、これも適用に直面する主な問題となる。如何して、鉄系合金ステントの分解行為を正確に調整し制御し、構成の完全性(分解せずに、或いは、分解が少ない)を植え込みの初期に確保し、血管への修復が完了するまで十分な機械的支持を提供し、その後、ステントを急速に分解させ、血管に正常な生理機能を回復させるか、ということは、鉄系分解可能なステントが実際に適用され得るかどうかを判断するための肝心である。
【0004】
前期の研究によると、鉄系ステントの表面に亜鉛含有保護体を設置することにより、植え込まれた一定の期間が経過してから腐食が始まるように鉄系ステントを保護できるということを確保できることが分かる。しかしながら、亜鉛含有保護体は、鉄系ステントに腐食の始まるタイミングを遅延させることができるものの、後期に腐食が遅すぎるという鉄系ステントの問題を解決できず、ひいては、鉄系ステントが腐食し尽きる周期をある程度で遅延させてしまう。なお、亜鉛含有保護体は、腐食の際に、亜鉛イオンが放出しつつあるため、短時間に血液へ入った亜鉛イオン含有量が多すぎる場合に、溶血や二次的な凝固が引き起こされ、ひいては、血栓が生じてしまうリスクが高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことに鑑み、血栓が発生してしまうリスクが比較的低いと共に、初期に支持する一方、後期に速く腐食するという要求が満たされる植え込み型吸収可能な機器を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
植え込み型吸収可能な機器は、外壁及び内壁を有する鉄系基材を含み、前記鉄系基材に設けられている亜鉛含有保護層及び腐食促進層をさらに含み、前記亜鉛含有保護層は、前記鉄系基材の外壁及び内壁を覆い、前記腐食促進層は、前記亜鉛含有保護層を覆い、前記亜鉛含有保護層における前記外壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記外壁に位置する部分との厚さ比は、前記亜鉛含有保護層における前記内壁に位置する部分と前記腐食促進層における前記内壁に位置する部分との厚さ比よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
上記の植え込み型吸収可能な機器は、鉄系基材を覆う亜鉛含有保護層及び亜鉛含有保護層を覆う腐食促進層が設けられており、亜鉛含有保護層は、犠牲陽極の原理により鉄系基材を保護すると共に、亜鉛含有保護層が腐食して形成した腐食の産物も、不動態皮膜の形成に関与している。従って、鉄系基材が早すぎて腐食し始まることを避け、腐食促進層により後期に鉄系基材に腐食を加速させることができる。そして、腐食促進層により、亜鉛含有保護層をある程度で保護することができる。亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁の部分に位置する厚さ比が亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分の厚さ比よりも小さいことから、亜鉛イオンが短時間内に速く放出されてしまうことにより、植え込み型吸収可能な機器を生体内に植え込むと内皮化する前における血栓形成性の現象が著しく増やされてしまうことを避けることができ、そして、血栓が発生してしまうリスクを低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器の断面図である。
図2】他の一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器の断面図である。
図3】他の一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器の断面図である。
図4】他の一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器の断面図である。
図5】他の一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上記目的、特徴及び利点を明確に理解しやすいように、以下に、図面に基づいて本発明の具体的な実施形態を詳しく説明していく。以降の説明では、本発明を十分に理解するように、数多くの具体的な詳細を説明する。しかしながら、本発明がここで説明する数多くの他の形態と異なるものに基づいて実施されてもよいし、当業者が本発明の趣旨を逸脱しない限り、類似な改良を実施してもよい。従って、本発明は、以下に開示する具体的な実施に限定されない。
【0010】
特別な断りがない限り、本明細書に記載されるあらゆる技術や科学用語が当業者にとって通常に理解されるものと同じ意味である。本明細書に言及されている用語は、具体的な実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本明細書に用いられる用語である「及び/或いは」には、一つや複数の関連項目への任意の組み合わせやあらゆる組み合わせが含まれる。
【0011】
図1を参照すると、一実施形態に係る植え込み型吸収可能な機器は、鉄系基材100を含む。鉄系基材100は、スケルトン化された管腔の構成である。鉄系基材100は、外壁110、内壁120及び側壁130を含む。
【0012】
一実施形態では、鉄系基材100が純鉄又は鉄合金で構成される。ただし、純鉄は、その純度が99.9wt.%以上である。鉄合金における合金元素は、炭素、窒素、リン、ケイ素、硫黄、ホウ素、コバルト、タングステン、マンガン、スズ、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、チタン、銅、金、銀、白金及びパラジウムから選ばれた少なくとも一つである。そのうちの一つの実施例では、鉄系基材100が窒化鉄で構成され、窒化鉄には、窒素の含有量が0.05~0.1wt.%である。上記の純鉄又は鉄合金で製作された鉄系基材100は、優れた機械的性能を有していると共に、適切な腐食の速度を有しており、鉄系基材100が初期に支持する一方後期に速く腐食するという要求が満たされることに役立つ。
【0013】
他の実施形態では、鉄系基材100の材料が、上記に挙げた材料に限定されておらず、鉄系基材100が初期に支持する一方後期に速く腐食するという要求が満たされることに役立つと、鉄を主な成分とする如何なる鉄系材料であれば、いずれも、適用され得る。
【0014】
植え込み型吸収可能な機器は、鉄系基材100に設けられている亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300をさらに含む。
【0015】
ただし、亜鉛含有保護層200は、鉄系基材100の外壁110、内壁120及び側壁130を覆う。亜鉛含有保護層200は、その材料が純亜鉛又は亜鉛合金である。ただし、純亜鉛は、その純度が99.9wt.%以上である。亜鉛合金における合金元素は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リチウム、カルシウム、ストロンチウム、マンガン、鉄、スズ、ゲルマニウム、ホウ素、ケイ素、銅、ビスマス、銀及びジルコニウムから選ばれた少なくとも一つである。説明するべきところは、上記の合金元素が、人間に毒性を与えてしまうことに十分な含有量ではない。
【0016】
亜鉛含有保護層200は、鉄系基材100の外壁110、内壁120及び側壁130を覆う。植え込み型吸収可能な機器が生体に植え込まれると、亜鉛含有保護層200が優先的に腐食する一方、鉄系基材100の腐食が遅延される。しかも、亜鉛含有保護層200が腐食した産物は、鉄系基材100の外壁110、内壁120及び側壁130に付着されて不動態皮膜を形成し、鉄系基材100を一層に保護し、鉄系基材100が腐食し始まるタイミングを一層に遅延させ、鉄系基材100が植え込まれた初期において構造の完全性を保持し、血管を径方向に支持し、血管への修復や復元を補助することに役立つ。
【0017】
一実施形態では、図1に示すように、亜鉛含有保護層200が鉄系基材100の外壁110、内壁120及び側壁130を完全に覆うことにより、鉄系基材100を全体的に保護して、鉄系基材100が腐食し始まるタイミングを遅延させることができる。
【0018】
植え込み型吸収可能な機器を血管に植え込んだ場合には、鉄系基材100の内壁120が血液相と接触し、亜鉛含有保護層200が鉄系基材100の内壁120を完全に覆うことにより、鉄系基材100を効果的に保護することができる。
【0019】
一実施形態では、亜鉛含有保護層200が鉄系基材100の内壁120を完全に覆い、しかも、亜鉛含有保護層200が鉄系基材100の外壁110の一部しかを覆わない。従って、鉄系基材100の外壁110が内壁120よりも速く腐食する。血管を修復すると、鉄系基材100の外壁110の箇所から腐食が始まると共に、鉄系基材100を完全に腐食させることを後期に速めることに役立つ。
【0020】
腐食促進層300は、亜鉛含有保護層200を覆う。腐食促進層300は、その材料が、分解の際に、酸性の産物を形成できるものであって、局所的に低いpH値の環境となり、鉄系基材100に腐食を促進する材料である。そうすると、血管が修復済みであった場合には、腐食促進層300により鉄系基材100に腐食を速めることができる。一実施形態では、腐食促進層300は、その材料に生分解性ポリマーが含まれる。生分解性ポリマーは、生分解性ポリエステル及び生分解性酸無水物から選ばれた一つである。
【0021】
一実施形態では、生分解性ポリエステルは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアクリレート、ポリヒドロキシ脂肪酸エステル、ポリブチレンサクシネート、サリチル酸系のポリ(無水物-エステル)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン、ポリ(β-アルカノエート)、ポリ(β-ヒドロキシブチレート)、ポリエチレンオキサレート、およびヒドロキシブチレート-ヒドロキシバレレート共重合体から選ばれた少なくとも一つである。生分解性酸無水物は、ポリ1,3-ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸、ポリエルカ酸ダイマー-セバシン酸およびポリフマル酸-セバシン酸から選ばれた少なくとも一つである。
【0022】
一実施形態では、生分解性ポリマーは、上記した生分解性ポリエステルを形成する単体及び上記した生分解性無水物を形成する単体のうちの少なくとも二つにより共重合してなる。
【0023】
植え込み型吸収可能な機器を病変部位に植え込むと、鉄系基材100が腐食し始まる前に、亜鉛含有保護層200と腐食促進層300との両者が継続的に腐食したり、分解したりすることから、亜鉛含有保護層200と腐食促進層300とが作用し合う。
【0024】
具体的には、亜鉛含有保護層200が生体内に腐食してリン酸亜鉛を生成し、リン酸亜鉛が鉄系基材100と反応して粘着性を有するFe-Zn-P化合物膜を生成し、Fe-Zn-P化合物膜は、鉄系基材100を覆うことにより、鉄系基材100が不動態化するようにする。それと同時に、リン酸亜鉛は、腐食促進層300と共に、錯体を形成する。例えば、リン酸亜鉛は、腐食促進層300における重合体と共に、錯体を形成し、当該錯体は、鉄系基材100の腐食産物と反応しながら、鉄系基材100に緻密な保護膜を形成する。このプロセスでは、まず、リン酸塩が腐食促進層300を通過し亜鉛含有保護層200に到着し、亜鉛含有保護層200の亜鉛と反応して固体となるリン酸亜鉛を生成すること、次に、固体となるリン酸亜鉛が次第に溶解して腐食促進層300を通過して組織に拡散すること、という二つの反応が関与している。
【0025】
腐食促進層300の厚さが大きすぎる場合には、リン酸塩が腐食促進層300を通過して亜鉛含有保護層200に進入することが比較的難しいことから、生成された固体となるリン酸亜鉛が比較的少ない。それと同時に、腐食促進層300の厚さが大きすぎる場合には、重合体の分解により、内部における比較的に閉鎖される環境のpH値が比較的低く、リン酸亜鉛の溶解度積が比較的大きく、固体となるリン酸亜鉛の量が一層に少なくなり、そして、鉄系基材100に付着されてから最終的に不動態皮膜を形成する、固体となるリン酸亜鉛の量が比較的少なくなり、鉄系基材100が腐食し始まることを遅延させる役割が実現され難しくなる。一方、腐食促進層300の厚さが小さすぎる場合には、リン酸亜鉛は、腐食促進層300と反応して鉄系基材100に付着される緻密な保護膜を形成することなく、周囲の組織まで拡散され易いことから、鉄系基材100が腐食し始まることを遅延させる役割が実現され難い。
【0026】
腐食促進層300における生分解性ポリマーは、亜鉛を錯化させることが可能である。従って、腐食を抑制して保護を行う役割をある程度で果たして、亜鉛含有保護層200が速すぎて腐食してしまうことを避けることができる。それと同時に、植え込み型吸収可能な機器を体内に植え込むと、腐食促進層300が継続的に低分子量の産物又は重合体の単体を分解して放出する。これらの低分子量の産物又は重合体の単体は、亜鉛含有保護層200を腐食する役割を有している。腐食促進層300の厚さが比較的小さいと、併せて、腐食促進層300における生分解性ポリマーの量が比較的少ないため、亜鉛含有保護層200に対する腐食促進層300の保護作用が、腐食作用のほうよりも強い。従って、生分解性ポリマーの量が多くなるのに伴い、亜鉛含有保護層200の腐食が遅くなり、腐食促進層300の厚さがある値まで達すると、併せて、生分解性ポリマーの量がある程度まで高くなると、亜鉛含有保護層200に対する腐食促進層300の腐食作用が保護作用のほうよりも大きく始まる。この時には、生分解性ポリマー量が増大するのに伴い、亜鉛含有保護層200の腐食が速くなる。
【0027】
亜鉛含有保護層200は、腐食が速すぎると、鉄系基材100が保護作用を速く失い、腐食の始まりを遅延させる作用が実現され難い一方、血液における亜鉛イオン含有量が高すぎることにより血栓が引き起こされ易い。
【0028】
しかしながら、腐食促進層300の厚さが小さすぎると、腐食促進層300が継続的に分解するのに伴い、初期に分解し切れたり、大部分に分解したりすることにより、血管が修復済みである場合に、鉄系基材100を後期に速く腐食させるように促進するために十分な分解産物が存在しないことになる。
【0029】
従って、腐食促進層300は、厚さが大きすぎ又は小さすぎると、いずれも、亜鉛含有保護層200を保護することに役立たず、鉄系基材100を保護し難く、鉄系基材100が腐食し始まることを遅延させる目的が実現され難い。しかも、腐食促進層300の厚さが亜鉛含有保護層200の厚さよりも大きすぎ、又は、亜鉛含有保護層200の厚さが腐食促進層300の厚さよりも小さすぎると、鉄系基材100が腐食し始まることを遅延させる目的も実現され難い。
【0030】
腐食促進層300の厚さは、亜鉛含有保護層200厚さと丁度マッチングするべきである。そうすると、腐食促進層300の分解速度が亜鉛含有保護層200の腐食速度とマッチングすることになり、亜鉛含有保護層200を初期に保護し、亜鉛含有保護層200が速すぎて腐食することを避け、鉄系基材100を効果的に保護する一方、後期において、pH値が比較的低い環境が生じるために十分な腐食促進層300の分解産物が存在しており、鉄系基材100に腐食を速めさせるように実現することに役立つ。しかも、腐食促進層300により、亜鉛含有保護層200の腐食速度を制御することは、亜鉛含有保護層200が速すぎて腐食することにより、血液に累積された亜鉛イオンの濃度が高すぎて溶血が発生し、最終に血栓が引き起こされる現象を避けることができる。
【0031】
一実施形態では、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比は、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さい。そうすると、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分の分解速度が亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の内壁120に位置する部分の分解速度よりも大きいように調整して制御することに役立ち、亜鉛イオンが短時間内に速く放出されてしまうことにより、植え込み型吸収可能な機器を生体内に植え込むと内皮化する前における血栓形成性の現象が著しく増やされることを避け、そして、血栓が発生してしまうリスクを低下させることができる。
【0032】
一実施形態では、腐食促進層300が鉄系基材100の外壁110、内壁120及び側壁130を完全に覆い、つまり、腐食促進層300は、亜鉛含有保護層200を完全に覆うことにより、亜鉛含有保護層200が緩く放出されることに役立ち、多く過ぎる亜鉛イオンを血液に放出することを避け、血栓の形成を避けるに役立つ。
【0033】
他の一つ実施形態では、腐食促進層300は、鉄系基材100の外壁110を完全に覆い、しかも、腐食促進層300が鉄系基材100の内壁120の一部しか覆わず、つまり、腐食促進層300が亜鉛含有保護層200を完全に覆わず、少なくとも、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分を露出する。そうすると、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁110に位置する部分との厚さ比よりも小さいという前提を保証する上で、亜鉛イオンが短時間内に速く放出されてしまうことにより植え込み型吸収可能な機器を体内に植え込むと内皮化する前における血栓形成性の現象が著しく増やされることを避け、血栓が発生してしまうリスクを低下させることができる。
【0034】
一実施形態では、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さと亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さとが等しくない。例えば、図2に示すように、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分の厚さが、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さよりも小さい。腐食促進層300は、厚さが均一のコーティング層である。腐食促進層300における外壁110に位置する部分の厚さは、内壁120に位置する部分の厚さと等しく、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さい。又は、図3に示すように、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分の厚さが亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さよりも小さく、腐食促進層300における外壁110に位置する部分の厚さが内壁120に位置する部分の厚さよりもよりも大きく、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さい。
【0035】
他の一つ実施形態では、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さと亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さとは、等しくなく、しかも、腐食促進層300における外壁110に位置する部分の厚さと腐食促進層300における内壁120に位置する部分の厚さとは、等しくない。亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300における外壁110に位置する部分の厚さ及び内壁120に位置する部分の厚さを適正に調整することにより、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分の厚さ比よりも小さい。
【0036】
亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さければ、亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300の厚さを如何にして設置しても構わない。
【0037】
亜鉛含有保護層200が腐食してなされた産物は、鉄系基材100に付着され、鉄系基材100を保護し、鉄系基材100が腐食し始まることを遅延させる役割を果たしている。同時に、腐食促進層300の分解により、比較的低いpH値の環境を局所的に発生することができる。そうすると、鉄系基材100の腐食を速めることができる。亜鉛含有保護層200の腐食と腐食促進層300の分解とが作用し合う。従って、亜鉛含有保護層200と腐食促進層300とを、両者が厚さに合わせるように、適正に調整することにより、適切な腐食速度及び分解速度を両者に有しており、鉄系基材100を、植え込んだ初期に腐食せず又は腐食が少ないようにする一方、血管が修復済みである場合に腐食を速めることができる。
【0038】
一実施形態では、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比をD1とすると、D1の範囲値が0.08~0.38であり、しかも、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さが0.4~3.6μmである。亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比をD2とすると、D1が0.08~0.38という範囲内から選ばれた任意値である場合に、D1がいずれも、D2よりも大きい。
【0039】
一実施形態では、D1の範囲値は、0.10~0.24であり、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである。D1が0.10~0.24という範囲内から選ばれた任意の値である場合には、D1が、いずれも、D2よりも大きい。
【0040】
一実施形態では、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比D2の範囲値は、0.04~0.27であり、しかも、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである。D2が0.04~0.27という範囲内から選ばれた任意の値である場合には、D1がD2よりも大きいように、D1を適正に設置する。
【0041】
一実施形態では、D2の範囲値は、0.04~0.12であり、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである。D2が0.04~0.12という範囲内から選ばれた任意の値である場合には、D1がD2よりも大きいように、D1を適正に設置する。
【0042】
一実施形態では、D1の値が0.08~0.38から選ばれた任意の一つである場合に、D2の値が0.04~0.27から選ばれた一つであり、しかも、D1がD2よりも大きい。また、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さが0.4~3.6μmであり、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さが0.4~3.6μmである。亜鉛含有保護層200は、内壁120に位置する部分の厚さ及び外壁110に位置する部分の厚さが0.4~3.6μmという範囲から選ばれた一つであるが、両者が同じであってもよいし、異なってもよい。
【0043】
一実施形態では、D1の値が0.10~0.24から選ばれた任意の一つである場合に、D2の値が0.04~0.12から選ばれた一つであり、しかも、D1がD2よりも大きい。また、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さは0.4~3.6μmであり、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分の厚さは、0.4~3.6μmである。亜鉛含有保護層200は、内壁120に位置する部分の厚さ及び外壁110に位置する部分の厚さが0.4~3.6μm範囲から選ばれた一つであるが、両者が同じであってもよいし、異なってもよい。
【0044】
上記した複数の実施形態では、亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300の厚さを設置することにより、亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分の厚さが鉄系基材100を十分に保護すると共に、亜鉛含有保護層200と腐食促進層300との厚さ比が亜鉛含有保護層200の腐食速度に合わせられ、亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300が腐食し又は分解する際に作用し合うことになる。腐食促進層300は、亜鉛含有保護層200に対する保護作用及び促腐食作用が合わせられると、亜鉛含有保護層200は、腐食が速すぎることで短時間内に血液における亜鉛イオンの濃度が高すぎることを避け、血液における亜鉛イオンの濃度が溶血を誘発できる濃度よりも低いように確保できる。また、亜鉛含有保護層200と腐食促進層300とは、適切な腐食速度を有しており、鉄系基材100の腐食行為を調整して制御し、鉄系基材100の腐食が速すぎて始まることを避ける一方、後期に速く腐食させることが可能である。
【0045】
上記しは植え込み型吸収可能な機器は、鉄系基材100を覆う亜鉛含有保護層200及び亜鉛含有保護層200を覆う腐食促進層300が設置されている。亜鉛含有保護層200は、犠牲陽極の原理により、鉄系基材100を保護し、避免鉄系基材100の腐食が速すぎて始まることを避けると共に、亜鉛含有保護層200が腐食して形成した腐食産物により、鉄系基材100を覆う不動態皮膜を形成し、鉄系基材100が腐食し始まるタイミングを一層に遅延させ、腐食促進層300が後期において鉄系基材100の腐食を速めることができる。腐食促進層300は、亜鉛含有保護層200をある程度で保護することができ、腐食促進層300が厚くなるのに伴い、亜鉛含有保護層200の腐食速度が次第に低下してから高まる。亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さいようにする。そうすると、腐食促進層300の分解に基づいて、亜鉛含有保護層200の腐食速度を調節して制御することができ、亜鉛イオンが短時間内に速く放出されてしまうことにより、植え込み型吸収可能な機器を生体内に植え込むと内皮化する前における血栓形成性の現象が著しく増やされてしまうことを避け、そして、血栓が発生してしまうリスクを低下させることができる。
【0046】
一実施形態では、腐食促進層300に活性物質を含むことにより、腐食促進層300が腐食を促進すると共に活性物質の放出を制御する役割を同時に果たす。一実施形態では、腐食促進層300における外壁110、内壁120及び側壁130に位置する部分には、活性物質が均一に分布している。一実施形態では、腐食促進層300における外壁110、内壁120及び側壁130に位置する部分には、共に、活性物質が含まれており、しかも、外壁110及び側壁130における活性物質の含有量が、共に、内壁120における含有量よりも大きい。一実施形態では、活性物質は、腐食促進層300における外壁110及び側壁130の部分しかに分布しておらず、腐食促進層300における内壁120に位置する部分には、活性物質が含まれない。活性物質は、人体に有益な物質や治療に有効な物質であれば、如何して分布してもよい。例えば、活性物質は、抗増殖性薬物、再狭窄防止薬物、抗血栓薬物又は抗アレルギー薬物などでも構わない。
【0047】
一実施形態では、植え込み型吸収可能な機器を病変部位に植え込む場合に、腐食促進層300における内壁120に位置する部分が血流に直接接触する。腐食促進層300における内壁120に位置する部分には、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物が含まれる。内皮化促進物質は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、エストロゲン及びスタチン類薬物から選ばれた少なくとも一つである。抗血栓薬物は、抗凝固薬物、抗血小板薬物又は血栓溶解薬物から選ばれた少なくとも一つである。腐食促進層300における鉄系基材100の内壁120に位置する部分には、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物が含まれており、内皮細胞が鉄系基材100の内壁120に速く付着されることに役立ち、血栓の生成を避け、血栓が発生してしまうリスクを低下させることができる。
【0048】
説明するべきところは、腐食促進層300が単層であってもよいし、多層であってもよい。腐食促進層300が単層であれ、多層であれ、亜鉛含有保護層200における外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110に位置する部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さいように、腐食促進層300の厚さ(多層の場合に、総計した厚さである)を適正に設置するとよい。腐食促進層300が多層である場合には、各層の生分解性ポリマーが同じでもよいし異なってもよく、各層に含まれる活性物質が同じでもよいし異なってもよい。
【0049】
図4を参照すると、一実施形態では、植え込み型吸収可能な機器は、薬物キャリア層400をさらに含み、薬物キャリア層400は、腐食促進層300の少なくとも一部を覆う。薬物キャリア層400は、薬物キャリア及び活性薬を含む。一実施形態では、薬物キャリアが生分解性ポリマーである。薬物キャリアが生分解性ポリマーである場合には、薬物キャリア層400における生分解性ポリマーと腐食促進層200における生分解性ポリマーとが、同じであってもよいし、異なってもよい。活性薬は、抗増殖性薬物であってもよい。一実施形態では、図4に示すように、薬物キャリア層400が、腐食促進層300における鉄系基材100の外壁110及び側壁130に位置する部分しか覆わず、薬物キャリア層400が、鉄系基材100の内壁120を全く覆わない。一実施形態では、薬物キャリア層400は、腐食促進層300を完全に覆う。植え込み型吸収可能な機器が病変部位に植え込まれている場合には、薬物キャリア層400における内壁120に位置する部分が血流に直接接触する。薬物キャリア層400には、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物が含まれる。しかも、内皮化促進物質及び/又は抗血栓薬物は、薬物キャリア層400における鉄系基材100の内壁120に位置する部分に少なくとも分布していることから、内皮細胞が鉄系基材100の内壁120に付着されることに役立ち、血栓を形成するリスクを低下させることができる。
【0050】
一実施形態では、薬物キャリア層400と腐食促進層300とは、重なり領域を有さない。つまり、薬物キャリア層400は、亜鉛含有保護層200の一部を覆い、腐食促進層300は、亜鉛含有保護層200の一部を覆い、しかも、薬物キャリア層400と腐食促進層300とが互いにずれており、薬物キャリア層400は、腐食促進層300を全く覆わず、腐食促進層300も、薬物キャリア層400を全く覆わない。
【0051】
一実施形態では、薬物キャリア層が、単層であってもよいし、複数の層であってもよい。
【0052】
一実施形態では、内皮化促進物質は、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子、エストロゲン及びスタチン類薬物から選ばれた少なくとも一つであり、ただし、抗血栓薬物は、抗凝固薬物、抗血小板薬物及び血栓溶解薬物から選ばれた少なくとも一つである。抗凝固薬物は、ヘパリン類薬物である。抗血小板薬物は、アスピリン、クロピグレル、クロピジル及びジピリダモールから選ばれた少なくとも一つである。血栓溶解薬物は、ウロキナーゼ、連鎖キナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーターから選ばれた少なくとも一つである。
【0053】
図5を参照すると、植え込み型吸収可能な機器は、放出緩和層500をさらに含み、放出緩和層500は、薬物キャリア層400を完全に覆う。放出緩和層500には、生分解性ポリマーを含む。放出緩和層500を分解させることにより、薬物キャリア層400における活性薬の放出を調整して制御する。放出緩和層500における生分解性ポリマーと腐食促進層300及び薬物キャリア層400における生分解性ポリマーとは、同じでもよいし、異なってもよい。
【0054】
上記の植え込み型吸収可能な機器は、鉄系基材100に亜鉛含有保護層200及び腐食促進層300を適正に設置し、亜鉛含有保護層200における鉄系基材100の外壁110に位置する部分と腐食促進層300における外壁110における部分との厚さ比が亜鉛含有保護層200における内壁120に位置する部分と腐食促進層300における内壁120に位置する部分との厚さ比よりも小さいことにより、植え込み型吸収可能な機器の腐食又は分解の行為が血管への修復プロセスとマッチングしているようにし、腐食促進層300が分解している過程に放出された活性物質、薬物キャリア層400が分解している過程に放出された活性薬が、組織を効果的に修復しながら、鉄系基材100を速く内皮化させるように促進して、血栓の形成を効果的に避けることができる。血管を修復する過程では、鉄系基材100により径方向に十分な支持を保持する一方、血管の修復が完了すると、鉄系基材100を速く腐食させ、臨床でのリスクを将来に避けることができる。鉄系基材100、亜鉛含有保護層200、腐食促進層300、薬物キャリア層400及び放出緩和層500は、巧みに結合されることにより、機器に有効性及び安全性を確保することができる。
【0055】
上記の植え込み型吸収可能な機器の製作については、まず、当業者が把握している方法により鉄系基材を製作し、次に、当業者が把握している方法により鉄系基材に、亜鉛含有保護層及び腐食促進層を形成する。例えば、レーザー切断の方法により、管腔鉄系基材を形成してから、電気めっき、化学めっき、スプレー塗装、浸漬コーティング、塗布、気相成長、磁界制御型マグネトロンスパッタリング、イオン注入及び埋め込みなどの方法により、鉄系基材に亜鉛含有保護層を形成してから、スプレー塗装、浸漬コーティング、塗布、インクジェット印刷及びエレクトロスピニングなどの方法により、亜鉛含有保護層を覆う腐食促進層を形成する。植え込み型吸収可能な機器に薬物キャリア層及び放出緩和層をさらに含む場合には、さらに、スプレー塗装、浸漬コーティング、塗布、インクジェット印刷及びエレクトロスピニングなどの方法により、腐食促進層の一部を少なくとも覆う薬物キャリア層及び放出緩和層を形成する。
【0056】
以下に、具体的な実施例に基づいて、上記の植え込み型吸収可能な機器をより詳しく説明していくが、本発明による保護範囲がそれに限定されない。
【0057】
以下の各実施例に係る植え込み型吸収可能な機器は、吸収可能な血管ステントとされ、いずれも、規格が30008のステントである。規格が30008のステントとは、ステントが8atmの名義拡張圧(名義拡張圧とは、ステントを公称直径まで拡張させるために使用される圧力を指す)により作用されると、拡張された公称直径が3.0mmとなり、公称長度が8.0mmとなるように定義されている。対比を便宜にするために、以下の各実施例に採用されるステントの鉄系基材は、その材料がいずれも窒化鉄とされるが、本発明による保護範囲がそれに限定されない。
【0058】
植え込み型吸収可能な機器は、血管ステント以外の機器であってもよいし、例えば、植え込み型吸収可能な機器は、さらに、心臓弁膜ステント、胆道ステント、食道ステント、尿道ステントなどであってもよい。植え込み型吸収可能な機器の規格は、30008という規格に限定されておらず、植え込み型吸収可能な機器の規格が植え込みの部位のニーズに合わせられてもよい。
【0059】
以下の実施例には、その試験方法が以下の通りであった。
1、亜鉛含有保護層及び腐食促進層の厚さ試験について
この試験は、走査型電子顕微鏡により行われる。まず、植え込み型吸収可能な機器に金(金/白金)噴射を処理する。長すぎるステントについては、観察すべき一部を切り取り、金噴射及び引き続き処理を行ってもよい。そして、ステント/ステントのセグメントの表面が完全に覆われているように確保する。金噴射は、引き続き、サンプルを埋め込む過程に、埋め込み用樹脂が鉄系基材表面にあるコーティング層を破らないように保証することを目的とする。金噴射が済んだサンプルは、冷たい埋め込み樹脂により埋め込まれてから粗くから細かくまで次第に磨き上げられ、ステントにおける横方向の断面が露出され、最終的に研磨処理がされたものである。磨き上げて研磨されたサンプルについては、導電性接着剤により走査型電子顕微鏡の載物台に貼り付けてから、金噴射を再度行い、観察及びサイズの測量を行う。ステントの長さ方向においては、三つの断面を、できるだけ均一にするように、選択的に磨き上げて研磨する。ステントの表面におけるコーティング層が破られないことを確保している前提としては、各断面について、四本の均一なステント棒をランダムに選択し、ステント棒の内外面における亜鉛含有保護層及び腐食促進層の厚さを測量して、それぞれ12個の測量データの平均値を平均厚さとして取り、その平均の厚さ比を計算する。
2、動物体内に植え込む形態に基づいて、ステントにおける亜鉛イオンの放出行為及び腐食行為を評価して、血栓が発生してしまうリスクの高さを評価する。
(1)ステントを動物体内に植え込んだ異なるタイミングでは、動物を安楽死にして、ステントが植え込まれた箇所の血管を取り出して、ステントの表面に、血栓となる兆しがあるかどうか、ステントが内皮化しているかどうか、その内皮化している度合いについて、観察する。95%よりも大きい部分が内皮細胞層により覆われていることは、完全に内皮化しているとして定義される。ステントと血管組織とを分離して、ステントに残されている組織を取り除く。さらに、ステントを酢酸エチル溶液に置いて、ステントが完全に浸入されているように確保し、超音波により20分洗浄してから表面に残されている重合体を取り除くようにする。重合体コーティング層を洗浄したステントを、1mol/Lの水酸化ナトリウムの溶液に浸入して、ステントの表面に残されている亜鉛含有保護層を洗浄する。上記した洗浄溶液を希釈すると、アジレント社製のSpectrAA240FS型の原子吸光分光法(Atomic Absorption Spectrometry、AAS)により、溶液中の亜鉛イオン濃度をテストして、ステントの表面に亜鉛含有保護層の残留重量(単位がμgである)を計算し、腐食が始まり、組織に入った亜鉛の総量を合わせて計算する。
(2)上記した洗浄済みのステントを、マイクロコンピューター断層撮影(micro-CT)という技術により検査し、腐食の態様を定性分析する。その後に、酒石酸の溶液に、超音波による洗浄により、ステントの表面における腐食産物層を取り除いて、洗浄して乾燥すると、計量を行う。鉄系基材の質量の損失率Mを、鉄系基材が植え込まれる前後の質量差(M 0-M t)が植え込み前における鉄系基材(M 0)の質量に占めているパーセンテージとして定義すると、定義が式(I)の通りである。
W=(M 0-M t)/M 0×100%(I)、
W--質量の損失率
M t--植え込まれていると残されている鉄系基材の質量
M 0--植え込まれる前における鉄系基材の当初質量
ただし、鉄系基材の質量損失率Wが5%よりも小さい場合には、未腐食として定義される一方、鉄系基材の質量損失率Wが90%以上である場合には、腐食し尽きたと定義される。
【0060】
実施例1
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。蒸着法によりレーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に亜鉛をメッキし、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を鉄系基材に形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さが、いずれも、0.4μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万であり、酢酸エチルが揮発した後に、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層における鉄系基材は、その外壁に位置する部分の厚さが6.7μmであり、その内壁に位置する部分の厚さが5μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.08であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.06である。
【0061】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にして、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると、組織に放出された亜鉛が45μgとなり、植え込まれてから30日になると完全に内皮化し、植え込まれてから60日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから48月になると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0062】
実施例2
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法によりレーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.1wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を鉄系基材に形成する。亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さは、それぞれ、0.8μm及び1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.8mmの芯棒をステント内に追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが20μmであり、内壁に位置する部分の厚さが12μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.1であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.04である。
【0063】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が100μgとなり、植え込まれてから60日になると完全に内皮化し、植え込まれてから60日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから18月になると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0064】
実施例3
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。蒸着法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.06wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を鉄系基材に形成する。亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さは、それぞれ、2.5μm及び2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.5mmの芯棒をステントに添加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが35μmであり、内壁に位置する部分の厚さが25μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.08であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.07である。
【0065】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が120μgとなり、植え込まれてから75日となると完全に内皮化し、植え込まれてから60日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから18月になると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0066】
実施例4
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法によりレーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を鉄系基材に形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.6mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが12μmであり、内壁に位置する部分の厚さが8μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.15であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.1である。
【0067】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が45μgとなり、植え込まれてから30日になると完全に内皮化し、植え込まれてから120日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから30月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0068】
実施例5
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法によりレーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.9mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが10μmであり、内壁に位置する部分の厚さが6μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.2である。亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.12である。
【0069】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が30μgとなり、植え込まれてから24日となると完全に内皮化し、植え込まれてから180日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから36月になると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0070】
実施例6
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さは、いずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が1.0mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが15μmであり、内壁に位置する部分の厚さが6μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.2であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.08である。
【0071】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が60μgとなり、植え込まれてから24日となると完全に内皮化し、植え込まれてから90日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから24月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0072】
実施例7
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さは、いずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.6mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う第一ラセミポリ乳酸のコーティング層を取得する。さらに、直径が1.45mmの芯棒をステントに追加する。ラセミポリ乳酸、ラパマイシン及び酢酸エチルの混合溶液を持続的にスプレー塗装する。乾燥すると、鉄系基材に、第二ラセミポリ乳酸コーティング層を形成する。第二ラセミポリ乳酸コーティング層は、第一ラセミポリ乳酸コーティング層における外壁及び側壁に位置する部分を覆う。第一ラセミポリ乳酸コーティング層における内壁に位置する部分は、第二ラセミポリ乳酸コーティング層に覆われていない。第一ラセミポリ乳酸コーティング層及び第二ラセミポリ乳酸コーティング層は、腐食促進層を形成している。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが7.5μmであり、内壁に位置する部分の厚さが5μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.24であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.16である。
【0073】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が60μgとなり、植え込まれてから45日となると完全に内皮化し、植え込まれてから90日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから42月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0074】
実施例8
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。化学法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.08wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、3.6μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸、ラパマイシン及び酢酸エチルの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.5mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸、ラパマイシン及び酢酸エチルの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが13.3μmであり、内壁に位置する部分の厚さが9.5μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.38であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.27である。
【0075】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が60μgとなり、植え込まれてから45日となると完全に内皮化し、植え込まれてから270日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから54月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0076】
実施例9
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.1wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがそれぞれ0.8μm及び1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、3.5μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.34であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.23である。
【0077】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が120μgとなり、植え込まれてから75日となると完全に内皮化し、植え込まれてから60日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから54月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0078】
実施例10
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。蒸着法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、0.4μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万であり、酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが6.7μmであり、内壁に位置する部分の厚さが5μmである。次に、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸、ラパマイシン及び酢酸エチルの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が1.2mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸、ラパマイシン及び酢酸エチルの混合液がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。乾燥すると、腐食促進層における外壁及び内壁を覆う部分の第一薬物キャリア層を形成する。さらに、第一薬物キャリア層に、ラセミポリ乳酸、血管内皮増殖因子、ウロキナーゼ及び酢酸エチルの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、重均分子量が5万である。乾燥すると、第一薬物キャリア層を覆う第二薬物キャリア層を形成する。ただし、亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.08であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.06である。
【0079】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が45μgとなり、植え込まれてから20日となると完全に内皮化し、植え込まれてから60日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから48月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0080】
実施例11
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。蒸着法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、を覆い鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成し、亜鉛含有保護層に、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万であり、酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが4μmであり、内壁に位置する部分の厚さが3.5μmである。ただし、亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.34であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.3である。
【0081】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が130μg、植え込まれてから75日となると完全に内皮化し、植え込まれてから70日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから55月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0082】
実施例12
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。蒸着法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層は、鉄系基材内壁を完全に覆い、鉄系基材外壁の一部しか覆わず、外壁亜鉛含有保護層の面積被覆率(亜鉛含有保護層の表面積/鉄系基材の表面積)が90%であり、亜鉛含有保護層における鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の平均厚さがいずれも1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をスプレー塗装する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万である。スプレー塗装の際には、直径が0.6mmの芯棒をステントに追加する。芯棒は、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液の一部がステントの内壁に堆積することを阻止することができる。酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが12μmであり、内壁に位置する部分の厚さが8μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.15であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.1である。
【0083】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が40μgとなり、植え込まれてから30日になると完全に内皮化し、植え込まれてから100日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから26月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0084】
実施例13
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成し、亜鉛含有保護層に、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層に、ラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万であり、酢酸エチルが揮発すると、ラセミポリ乳酸腐食促進層を取得する。腐食促進層は、鉄系基材の外壁を完全に覆い、鉄系基材の内壁の一部しか覆わず、内壁腐食促進層の面積被覆率(腐食促進層の表面積/亜鉛含有保護層の表面積)が90%である。腐食促進層には、鉄系基材の外壁に位置する部分の厚さが12μmであり、内壁に位置する部分の平均厚さが8μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.15であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.1である。
【0085】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを、複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると組織に放出された亜鉛が50μgであり、植え込まれてから40日となると完全に内皮化し、植え込まれてから90日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから30月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0086】
対比例1
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも1.2μmである。
【0087】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日となると組織に放出された亜鉛が150μgとなり、植え込まれてから90日となると完全に内皮化し、植え込まれてから180日となると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから60月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。また、ステントの内壁には、壁部に付着されている血栓が局所的に見えた。
【0088】
実施例4~7、12~13に比べると、この対比例1に係る吸収可能な鉄系ステントは、その亜鉛の放出が比較的速いため、血栓の形成性が高くなり、それと同時に完全に内皮化した時間がある程度で遅延され、鉄系基材が腐食し始まるタイミングが適当であるが、腐食し尽きた周期が最も長い。
【0089】
対比例2
吸収可能な鉄系ステントは、その製作方法が以下の通りであった。電気めっき法により、レーザー彫刻及び研磨を経た質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmであり、窒素含有量が0.05wt.%であるという規格が30008の窒化鉄系基材に、亜鉛をメッキし、鉄系基材に、鉄系基材の外壁、内壁及び側壁を覆う亜鉛含有保護層を形成する。亜鉛含有保護層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも、1.2μmである。続いて、亜鉛含有保護層にラセミポリ乳酸と酢酸エチルとの混合液をインクジェット印刷する。ただし、ラセミポリ乳酸は、その重均分子量が20万であり、酢酸エチルが揮発すると、亜鉛含有保護層を完全に覆う腐食促進層を取得する。腐食促進層には、鉄系基材の外壁及び内壁に位置する部分の厚さがいずれも40μmである。亜鉛含有保護層における内壁に位置する部分と腐食促進層における内壁に位置する部分との厚さ比が0.03であり、亜鉛含有保護層における外壁に位置する部分と腐食促進層における外壁に位置する部分との厚さ比が0.03である。
【0090】
当該ロットの吸収可能な鉄系ステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日となると組織に放出された亜鉛が150μgとなり、植え込まれてから120日となると完全に内皮化し、植え込まれてから30日になると、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた、植え込まれてから12月となると、鉄系基材が腐食し尽きた。また、ステントの内壁には、壁部に付着されている血栓が局所的に見えた。
【0091】
実施例4~7に比べると、この対比例2に係る吸収可能な鉄系ステントは、その亜鉛の放出が比較的速いことから、血栓形成性が高くなり、それと同時に、完全に内皮化した時間が遅延され、鉄系基材が腐食し始まるタイミングが比較的早い。
【0092】
対比例3
鉄系吸収可能なステントは、その製作方法が以下の通りであった。外径が1.6mmであり、肉厚が85μmである窒化鉄管(鉄含有量≧99.9wt%)について、レーザー彫刻及び化学研磨を経て、規格が30008の裸のステントを取得する。ステントは、質量が3.8mgであり、肉厚が50μmであり、内径が1.45mmである。
【0093】
当該ロットのステントを複数のウサギの腸骨動脈に植え込み、異なる飼育時間が経過すると、動物を死にし、植え込まれた箇所の血管を取り出して分析する。当該吸収可能な鉄系ステントは、植え込まれてから14日になると既に、完全に内皮化し、同一タイミングで、鉄系基材が腐食し始まることが観察されてきた。植え込まれてから60月になると、鉄系ステントが腐食し尽きた。フォローアップ期間全体にわたって、ステントの内壁及び血管における植え込まれた箇所に、いずれも、血栓が観察されなかった。
【0094】
あらゆる実施例に比べると、本対比例3に係る吸収可能な鉄系ステントは、腐食し始めが最も早いが、完全に腐食する周期も著しく長くなる。
【0095】
以上に説明した実施例における各技術的特徴は、任意に組み合わせられてもよく、簡潔に説明するように、上記の実施例における各技術的特徴に対するあらゆる可能な組み合わせを、省略するように説明したが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾が無ければ、いずれも、本説明書に記載されている範囲に含まれるとみなされるべきである。
【0096】
以上に説明した実施例は、本発明の幾つかの実施形態を説明するためのものであり、その説明が詳しい詳細であるが、それに基づいて発明の特許範囲を限定するためのものとして理解するべきではない。説明するべきところは、当業者にとって、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の若干の変形や改良が可能であり、それれは、いずれも、本発明の保護範囲に含まれる。故に、本発明の特許の範囲は、添付されている特許請求の範囲に準ずる。
図1
図2
図3
図4
図5