(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】バイオアッセイ用微細ウェルフィルム、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム形成用感光性樹脂組成物、及び、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230518BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230518BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230518BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230518BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20230518BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230518BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230518BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20230518BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C08F290/06
B32B3/30
B32B7/023
B32B27/16 101
B05D7/24 301T
B05D7/00 A
B05D7/24 302Z
B05D3/06 Z
B05D3/12 C
(21)【出願番号】P 2021529162
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025838
(87)【国際公開番号】W WO2021002388
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019123981
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】山口 布士人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0004967(US,A1)
【文献】特開2004-309405(JP,A)
【文献】特開2014-058667(JP,A)
【文献】指紋付着防止剤 オプツール DAC-HP(添加剤),DAIKIN Product Information,2014年,[online],[令和4年11月21日検索],インターネット<URL:http//expydoc.com/doc/7303352/指紋付着防止剤-オプツール-dac-hp>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C08F 290/06
B32B 3/30
B32B 7/023
B32B 27/00
B32B 27/16
B05D 7/24
B05D 7/00
B05D 3/06
B05D 3/12
JSTPlus//JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオアッセイ用微細ウェルフィルムであって、
少なくとも基材と、前記基材の第一主面上に設けられ、表面に微細ウェルを有する樹脂層とで構成され、
前記基材は、シクロオレフィンポリマーであり、
前記樹脂層は、少なくとも、N-ビニル化合物である単量体を含む感光性樹脂組成物の硬化体であり、
前記樹脂層の平均窒素元素濃度(Nf)は、前記基材の平均窒素元素濃度(Ns)よりも高く、前記基材は、前記樹脂層が設けられる前記第一主面側に、Nf>Ni>Ns(式(1))を満たす窒素元素濃度(Ni)の領域を有し、
前記基材の厚さは、10μm~300μmであり、
前記樹脂層のウェル底部の最肉薄部の厚さが、1nm~10μmであり、
前記基材、及び前記樹脂層は、波長350nmから800nmの各波長における吸光係数が、0.01μm
-1以下であることを特徴とするバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【請求項2】
前記樹脂層が、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーとに由来する感光性樹脂組成物の硬化体であることを特徴とする請求項
1に記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【請求項3】
前記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを含む、ことを特徴とする請求項2に記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【請求項4】
前記光重合性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーを含む、ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【請求項5】
波長300nmにおける、前記樹脂層の吸光係数が、0.02μm
-1以下であり、この吸光係数は、波長300nmから800nmの各波長における吸光係数の最大値であることを特徴とする請求項1
から請求項4のいずれかに記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【請求項6】
前記樹脂層において、前記樹脂層の表面のフッ素元素濃度(Fs)と、前記樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Fb)との比が、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
1<Fs/Fb≦1500 式(2)
【請求項7】
一分子酵素アッセイ法用であることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載のバイオアッセイ用微細ウェルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム形成用感光性樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病疾患や感染症などの診断のために、核酸、タンパク質、ウィルス及び細胞などのマーカーを迅速、高感度に検出するための技術として、核酸、タンパク質、ウィルス及び細胞などの検出対象物質を微小容積の液滴中に封入し、標識抗体を用いた免疫学的手法によって検出する「一分子酵素アッセイ」法がある。この方法によれば、検出対象物質を一分子単位の感度で検出できる(例えば、特許文献1に記載の発明を参照)。
【0003】
このような「一分子酵素アッセイ」法に使用される基材としては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどの種々の高分子樹脂又はシリコンゴムなどの軟質の物質が用いられており、熱硬化成型により基材が得られている(例えば、特許文献2に記載の発明を参照)。
【0004】
また、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂を熱プレス成型や射出成型して形成されたバイオアッセイプレートが提案されている(特許文献3に記載の発明を参照)。さらに、バイオアッセイプレートに適用される樹脂に、自家蛍光を発しない樹脂が提案されている(特許文献4に記載の発明を参照)。
【0005】
さらに、酵素処理、PCR反応におけるチップ全面の温調均一化を目的として、微小射出成型により形成した貫通穴を薄膜フィルムにより閉じた微小容量のマイクロウェルチップが提案されている(特許文献5に記載の発明を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-137830号公報
【文献】特開2004-309405号公報
【文献】特表2018-529968号公報
【文献】特開2005-134339号公報
【文献】特開2003-70456号公報
【文献】特開2008-44283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の基材では、熱硬化成型のため、基材を得るために長時間を要し、生産性が悪い。さらに、生産性の低さから、製造コストの点で不利である。
【0008】
また、特許文献3に記載されるバイオアッセイプレートは、以下のような問題がある。すなわち、射出成型装置と射出成型に用いる金型が高価であるため、射出成型により製造されるバイオアッセイプレートは、製造コストの面で不利である。このため、特許文献3に記載のバイオアッセイプレートでは、コスト面から小ロットでの生産への対応が困難である。
【0009】
また、特許文献3に記載されるバイオアッセイプレートは、ある程度の厚みがあるプレート状の形状である。なんとなれば、射出成型による薄肉の成型品の成型では、金型内に樹脂が完全に充てんされないショートショットの問題が生じやすい。ショートショットは射出圧を上げることで解消されるが、この場合、成型品にバリが発生しやすく、不良の要因となる。そのために、プレートはある程度以上の厚みが必要となる。
【0010】
さらに、バイオアッセイプレートを薄肉とするには、射出成型時の樹脂充てん経路が狭くなるために、生産性が悪化する問題があり、ある程度以上の薄肉化は困難である。
【0011】
以上から、射出成型による成型では、工業生産上、実施可能な厚みは、300μm~400μmが下限とされている。バイオアッセイプレートの厚みに下限があるため、バイオアッセイプレートを利用した分析機器の小型化の障壁となる問題がある。
【0012】
また、同様に特許文献3に記載される熱プレス成型においても、高粘度の樹脂の流動性が必要であるために、上記と同様の理由で、薄肉化が困難である。
【0013】
そして、射出成型、熱プレスのどちらも、形成後に冷却工程が必要であり、製造に長時間を要するために、製造コストと生産量の点で不利であり、産業上の利用制限が大きい。
【0014】
また、「一分子酵素アッセイ」法は、酵素反応であるために、温度環境の影響を受けやすく、特に、基材外周部にあるウェルが周囲の温度の影響を受けて他のウェルより反応が進行(あるいは遅延)するいわゆるエッジ効果も課題として挙げられる。
【0015】
これら、射出成型による薄肉化の課題を解決するために、特許文献5に記載の発明では、貫通穴を有するプレートを射出成型で、形成したのち、薄膜フィルムで閉じ、マイクロウェルプレートを得ている。
【0016】
しかしながら、特許文献5に記載のマイクロウェルプレートでも射出成型を必要とするため、貫通穴を有するプレートを厚くする必要があり、さらに、個々の凹部間距離を狭くできず、「一分子酵素アッセイ」法に要求される、平面内の凹部密度を高くできない。
【0017】
さらに、バイオアッセイ用の基材には、核酸、タンパク質、ウィルス及び細胞などのマーカー検出に蛍光が使われるため、バイオアッセイ用基材自体が発する蛍光が少ない、低自家蛍光特性が求められる。しかしながら、上記した技術を適用する場合、前記したように成型品の厚みに下限があるため、たとえ、自家蛍光特性の低い材料を使用しても、ある程度以上の自家蛍光特性より抑制できない課題があった。なぜならば、基材の低自家蛍光特性は、材料固有の自家蛍光特性と厚みの積により決定されるからである。
【0018】
一方、射出成型以外の微細加工方法の一つとして、感光性樹脂組成物を用いた光インプリント技術があげられる(例えば、特許文献6に記載の発明を参照)。しかし、前記したように、バイオアッセイ用基材には、低自家蛍光特性が求められるが、低自家蛍光特性を有する感光性樹脂で構成されたバイオアッセイ用基材は提示されていない。
【0019】
さらに、上記した光インプリント技術においては、微細形状を形成する基材フィルムが必須であり、低自家蛍光の樹脂製の基材フィルムとして、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。特に、シクロオレフィンポリマー基材フィルムは、透明性、低自家蛍光特性に優れ、バイオアッセイ用基材として好適であるが、光インプリント技術に適用される感光性樹脂との接着性が低く、シクロオレフィンポリマーを基材フィルムとして、低自家蛍光特性を有する感光性樹脂とで構成されたバイオアッセイ用基材を形成することは困難であった。
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、「一分子酵素アッセイ」法などに適用されるバイオアッセイ用基材において、低コストで産業上の利用性が高く、かつ、低自家蛍光特性を発現でき、ウェルの温調が容易でエッジ効果を抑制できるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムとその製造方法、さらには、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム形成用感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムは、少なくとも基材と、前記基材の第一主面上に設けられ、表面に微細ウェルを有する樹脂層とで構成され、前記基材は、シクロオレフィンポリマーであり、前記樹脂層は、少なくとも、N-ビニル化合物である単量体を含む感光性樹脂組成物の硬化体であり、前記樹脂層の平均窒素元素濃度(Nf)は、前記基材の平均窒素元素濃度(Ns)よりも高く、前記基材は、前記樹脂層が設けられる前記第一主面側に、Nf>Ni>Ns(式(1))を満たす窒素元素濃度(Ni)の領域を有し、前記基材の厚さは、10μm~300μmであり、前記樹脂層のウェル底部の最肉薄部の厚さが、1nm~10μmであり、前記基材、及び前記樹脂層は、波長350nmから800nmの各波長における吸光係数が、0.01μm-1以下であることを特徴とする。
【0022】
さらに本発明のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいては、前記樹脂層の波長300nmにおける吸光係数が、0.02μm-1以下であり、この吸光係数は、波長300nmから800nmの各波長における吸光係数の最大値であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいて、前記樹脂層が、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーとに由来する感光性樹脂組成物の硬化体であることが好ましい。
本発明では、前記光重合性モノマーは、(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。また、前記光重合性オリゴマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーを含むことが好ましい。
【0025】
このような構成であると、低自家蛍光特性を有し、かつ、粘度が低い光重合性モノマーを利用する光インプリント法により「一分子酵素アッセイ」法に適した微細なウェルを有したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムが得られる。
【0028】
さらに、本発明のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいては、前記樹脂層において、前記樹脂層の表面のフッ素元素濃度(Fs)と、前記樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Fb)との比が、下記式(2)を満たすことが好ましい。
1<Fs/Fb≦1500 式(2)
【0035】
本発明のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムは、例えば、一分子酵素アッセイ法用に適用される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、従来の射出成型によるバイオアッセイプレートよりも低自家蛍光特性を有し、低コストで製造でき、ウェルの温調が容易で、エッジ効果を抑制できる「一分子酵素アッセイ」法などに適用されるバイオアッセイ基材であるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを提供できる。さらに、自家蛍光特性が低く、マーカー検出が容易なバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを形成できる感光性樹脂組成物と、前記感光性樹脂組成物を用いるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける微細ウェルのパタンの一例を示す平面模式図である。
【
図3】本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける微細ウェルのパタンの一例を示す平面模式図である。
【
図4】本実施例におけるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの主面に垂直な方向の窒素元素濃度分布の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。数値範囲を示す「~」の表記は、下限値と上限値を含む意味である。
【0039】
以下、本実施の形態に係るバイオアッセイ用微細ウェルフィルム及びその製造方法について詳細に説明する。尚、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。
【0040】
《バイオアッセイ用微細ウェルフィルム》
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムは、表面に微細凹構造である微細ウェルを有する微細ウェルフィルムであって、少なくとも基材と、前記基材の第一主面上に設けられ、表面に微細ウェルを有する樹脂層とで構成されている。
【0041】
また、本実施の形態では、基材及び樹脂層を構成する樹脂は、波長350nmから800nmの各波長における吸光係数が、0.01μm-1以下であることを特徴とする。
【0042】
基材と微細ウェルを有する樹脂層とで構成されているため、ウェルフィルム全体の厚さを薄くし、かつ、面内の厚さを均一にできる。基材を有することでフィルム全体の厚さ均一性を担保できるため、微細ウェルを有する樹脂層は、微細ウェルを形成するだけの厚さのみでよく、結果として、ウェルフィルム全体の厚みムラを抑制できる。
【0043】
前記したように、「一分子酵素アッセイ」法は、酵素反応であるために、温度環境の影響を受けやすく、特に、基材外周部にあるウェルが周囲の温度の影響を受けて他のウェルより反応が進行(あるいは遅延)する、いわゆるエッジ効果が課題である。その課題解決のために、ウェルフィルムを薄くすることで、ウェルフィルムの裏面側の温調プレートによる温調が容易で、かつ、相対的に基材外周部のエッジ効果が抑制される。さらに、ウェルフィルム全体の厚みムラの抑制により、より温調ムラが抑制される。
【0044】
特に、従来の射出成型による成型プレートの下限厚よりも薄いフィルムとすることが容易であるため、上記したウェルフィルムの温調が容易で、かつ、面内均一性に優れる効果が得られる。
【0045】
図1に、本発明の一実施形態として、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムの斜視断面模式図を示す。
【0046】
図1に示す例においては、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム1は、フィルム形状をなしており、基材11と、この基材11の第一主面上に設けられた微細ウェルを有する樹脂層12とを備える。樹脂層12は、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム1の主面(第一主面)Fから面内方向に向けて(第一主面と反対側の第二主面(裏面)方向に向けて)延在する複数の凹部13を含む。複数の凹部13は、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム1の主面Fに垂直な厚み方向(Z軸方向)において、主面Fから下方(バイオアッセイ用微細ウェルフィルム1内部)に向けて陥没するように設けられる。複数の凹部13は、各々、所定のピッチで配列される。
【0047】
本実施の形態における微細ウェルは、その用途のバイオアッセイに適した微細凹構造であれば、特に限定されるものではないが、凹部はホール構造であることが好ましい。
【0048】
ホール構造の凹部の断面形状は、長方形、正方形、台形、及び、これらの角部が曲率を有する形状等や、円形であってもよい。また、ホール構造の凹部の上面平面形状は、長方形、正方形、台形、菱形、六角形、三角形、及び、これらの角部が曲率を有する形状等や、円形であってもよい。
【0049】
さらに、これらホール構造の凹部のパタン配列は、適宜、用途に応じて選択され、特に限定されるものではない。
【0050】
例えば、ホール構造の凹部がランダムに配列され、面内に略均等に形成されているパタン形状、あるいは、周期的に配列したパタン形状のどちらでもよい。特に、ホール構造の凹部が周期的に配列されアレイを構成するパタン形状であると、「一分子酵素アッセイ」法における対象物質の検出が容易となるため好ましい。
【0051】
図2は、本実施の形態に係るバイオアッセイ用微細ウェルフィルム1の平面模式図である。
図2に示すように、微細ウェルを含む樹脂層12の主面Fに形成されたホール構造の凹部13は、互いに同じピッチで一定間隔に配列され、四方配置をとる。
【0052】
図3は、本実施の形態に係るバイオアッセイ用微細ウェルフィルム1の別の例を示す平面模式図である。
図3に示すように、微細ウェルを含む樹脂層12の主面Fに形成されたホール構造の凹部13は、互いに同じピッチで一定間隔に配列され、三方配置をとる。
【0053】
本実施の形態におけるホール構造の凹部13の大きさは、その用途のバイオアッセイに適したサイズが選択され、特に限定されるものではなく、例えば、ホール構造の上面平面形状が円形の場合、その直径が50nm~100μmの範囲であると好ましく、直径100nm~50μmの範囲であると、RNAから細胞検出のバイオアッセイに適合し好ましい。さらに、200nm~10umの範囲であると「一分子酵素アッセイ」に最適であり、特に好ましい。
【0054】
また、ホール構造の深さは、50nm~100μmの範囲であると好ましく、直径100nm~50μmの範囲であると、上記と同様の理由でバイオアッセイに適合し好ましく、さらに、200nm~10umの範囲であると、上記と同様、「一分子酵素アッセイ」に最適であり、特に好ましい。
【0055】
本実施の形態における各凹部13間のピッチは、200nm~400μmの範囲であると好ましく、400nm~200μmの範囲であると、バイオアッセイにおける対象物質の検出が容易になるため好ましく、800nm~40μmの範囲であると、「一分子酵素アッセイ」における検出感度が最大となるため、特に好ましい。
【0056】
ここで本実施の形態における各凹部間のピッチは、各ホールに最近接する他のホールとの中心間の最短距離であり、周期的に配列したパタン形状においては、その周期ピッチであり、ホール構造の凹部がランダムに配置されている場合は、個々の最近接距離の平均値である。
【0057】
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいて、基材11と、微細ウェルを含む樹脂層12は、波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下である。
【0058】
〈吸光係数〉
吸光係数を0.01μm-1以下に抑制することで、波長350nmから波長800nmにおける自家蛍光特性を低くした微細ウェルフィルムを得ることができる。蛍光発光は、特定波長の励起光を吸収し、そのエネルギーにより励起光より長波長の蛍光を発光するメカニズムである。そのため、吸光係数を抑制すれば、蛍光特性も抑制できる傾向がある。
【0059】
一方で、前記したように、本実施の形態の微細ウェルフィルムにおいては、微細ウェルを有する樹脂層の厚みが薄いために、フィルムの温調ムラが抑制できる。そのために、微細ウェルを有する樹脂層は、光重合性モノマーを含む感光性樹脂組成物の硬化体であることが好ましい。なお、樹脂層は、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーとに由来する感光性樹脂組成物の硬化体であることが好ましい。しかしながら、光重合性モノマーは、光照射により硬化するために、光硬化するための波長の吸光係数が高いことが求められ、前記した自家蛍光特性の抑制と相反する。
【0060】
本発明者らは、鋭意検討した結果、微細ウェルを有する樹脂層において、波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であると、光重合性モノマーを含む感光性樹脂組成物の硬化体であっても、自家蛍光特性を抑制できることを見出した。光重合後の硬化体の吸光係数を前記した値とすることで、光重合性モノマーの反応性を維持しつつ、自家蛍光特性を抑制することが可能となる。
【0061】
波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であると、光重合性モノマーを含む感光性樹脂組成物の硬化体であっても、自家蛍光特性を抑制できる詳細は不明だが、次のように推定される。
【0062】
まず、本発明者らの検討から、微細ウェルフィルムの自家蛍光特性は、波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数に比例することが明らかとなっている。蛍光発光のためには、蛍光波長よりも短い波長の光を吸収することが必要であり、吸収された波長の光が、特定の蛍光変換効率により蛍光となるためと推定される。
【0063】
本実施の形態の微細ウェルフィルムは、基材11と、微細ウェルを含む樹脂層12とで構成されている。基材11は、通常の平坦なフィルムが使用され、従来技術の射出成型による成型品よりも薄く、おおむね50μmから188μmの範囲である。
【0064】
また、前記した微細ウェルを含む樹脂層12の厚さは、前記したホール構造の凹部体積を除した平均厚さと、凹部底部の最薄部の厚さの和であり、おおむね10~15μmである。
【0065】
上記から、微細ウェルフィルムの基材11に、従来の射出成型に使用される樹脂と同一の自家蛍光特性を有する樹脂を使用した場合、下記式(3)が成り立つと、少なくとも、従来技術の射出成型による最薄成型品と同等以下の自家蛍光特性を有することになる。
【0066】
基材11の自家蛍光特性+樹脂層12の自家蛍光特性
<射出成型最薄厚による自家蛍光特性 式(3)
自家蛍光特性 ∝ 吸光係数× 厚み 式(4)
式(3)、式(4)から、式(5)を得る。
樹脂層12の吸光係数A<(射出成型による最薄成形品―基材11)×吸光係数B
式(5)
ここで、吸光係数A、Bは各々、樹脂層12、基材11、あるいは、射出成型による最薄成形品の吸光係数である。
【0067】
式(5)を満たす吸光係数Aの樹脂層12の時に、従来の射出成型によるバイオアッセイプレートよりも低自家蛍光特性を有する、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムが得られる。
【0068】
さらに、発明者らの鋭意検討の結果、樹脂層12の波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であると、低自家蛍光特性を有するバイオアッセイ用ウェルフィルムが得られる。
【0069】
また、樹脂層12の波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が、0.005μm-1以下であると、より低い低自家蛍光特性のため、蛍光によるバイオマーカー検出が容易となるため好ましく、0.001μm-1以下であると、微小ウェル体積でバイオマーカーの蛍光強度が少ない「一分子酵素アッセイ」においても、基材によるバックグランド信号を抑制することで、検出感度を下げることができ、特に好ましい。
【0070】
さらに本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいては、樹脂層12の波長300nmにおける吸光係数が、0.02μm-1以下であり、この吸光係数は、波長300nmから800nmの各波長における吸光係数の最大値であることが好ましい。
【0071】
上記吸光係数の分布であると、吸光係数のピークを示す波長が少なくとも300nm以下となるため、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける樹脂層12に、光重合性モノマーを含む感光性樹脂組成物の硬化体を採用した場合に、良好な光硬化特性と、低自家蛍光特性を有するバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得ることができ好ましい。
【0072】
樹脂層12において、前記した、波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であることに加え、吸光係数のピークを示す波長が300nm以下であると、低自家蛍光特性を有するバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得られる理由は、次のように推定される。
【0073】
前記したように、蛍光発光は、特定波長の励起光を吸収し、そのエネルギーにより励起光より長波長の蛍光を発光するメカニズムである。バイオアッセイ用微細ウェルフィルムを形成する高分子の吸収は、特定の波長を中心に、ブロードな吸収を示すため、300nmを超える波長域に、吸収ピークを有すると、良好な低自家蛍光特性を得にくくなり、好ましくない。
【0074】
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいては、樹脂層12の波長300nmにおける吸光係数が、波長300nmから800nmの各波長における吸光係数の最大値であり、0.01μm-1以下であると、より低い低自家蛍光特性のため、蛍光によるバイオマーカー検出が容易となるため好ましく、0.002μm-1以下であると、微小ウェル体積でバイオマーカーの蛍光強度が少ない「一分子酵素アッセイ」においても、基材によるバックグランド信号を抑制することで、検出感度を下げることができ、特に好ましい。
【0075】
また、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける基材11は、波長350nmから800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であると、光重合性モノマーの反応性を維持しつつ、自家蛍光特性を抑制することが可能となる。
なお、本明細書中、「吸光係数」は、下記式(6)より求められるものである。
【0076】
吸光係数=吸光度/フィルム厚み(μm) 式(6)
さらに吸光度は、下記、式(7)に従い算出される。
吸光度=-log(光透過率) 式(7)
【0077】
光透過率は、一般的な分光光度系にて測定して求められ、例えば、分光光度計UV-2500(島津製作所株式会社製)が挙げられる。
【0078】
〈基材〉
上記したような、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムのエッジ効果抑制のために、本実施の形態における基材の厚さは、10μm~300μmの範囲であると好ましく、20μm以上であると、微細ウェルフィルムのハンドリング上より好ましく、200μm以下であると、微細ウェルフィルムの温調がしやすいためより好ましい。
【0079】
また、同様の理由により、本実施の形態の微細ウェルを有する樹脂層の厚みは、ウェル底部の最肉薄部の厚さが、1nm~10μmの範囲であると好ましく、10nm~1μmの範囲であると、より微細ウェルフィルムの温調ムラが抑制されるとため、より好ましい。
【0080】
基材の材料としては、波長350nmから800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であれば、特に限定されるものではなく、ガラス、セラミックなどの無機材料、プラスチックなどの有機材料を問わず使用できる。屈曲性を有し連続生産性に優れたフィルム形状が好ましく、薄膜、織物、不織布等と複合化したものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリスチレンが好ましい。
【0081】
特にシクロオレフィンポリマーは、紫外線~赤外線領域にわたって透明性に優れ、この波長範囲での自家蛍光特性も低いため、特に好ましい。このようなシクロオレフィンポリマーからなる、日本ゼオン株式会社製のゼオノアフィルム(登録商標)や、JSR株式会社製のARTON(登録商標)フィルムが挙げられる。
【0082】
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける基材の厚さは、その表面に微細ウェルを有する樹脂層を形成できれば特に制限されるものではないが、前記式(5)より、少なくとも、通常の射出成型による最薄成形品よりも薄いと、ウェル温調が容易でエッジ効果を抑制でき、さらに自家蛍光特性を抑制でき、マーカー検出が容易となる本発明の効果を得られる。
【0083】
上記理由より、基材の厚さは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であると、表面樹脂層を含めた微細ウェルフィルム全厚が、射出成型による最薄成形品よりも薄くなるため、エッジ効果を抑制でき好ましく、190μm以下であると、自家蛍光特性を抑制できさらに好ましい。
【0084】
〈樹脂層〉
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおける微細ウェルを有する樹脂層を構成する硬化体を形成する光重合性モノマーとしては、これを含む樹脂層において波長350nmから波長800nmの各波長における吸光係数が0.01μm-1以下であり、かつ光重合可能であれば、ラジカル重合系でも、カチオン重合系でも特に限定されず、フッ素樹脂を含有してもよい。フッ素樹脂を含有すると、表面撥液性が発現するため、バイオアッセイにおける微細ウェル内への微小液滴の形成が促進され好ましい。
【0085】
微細ウェルを有する樹脂層を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂としては、例えば光重合性モノマーである(メタ)アクリレートと、光重合性オリゴマーおよび光重合開始剤の混合物である樹脂組成物を用いることができる。
【0086】
(メタ)アクリレートとしては、硬化後のガラス転移温度が100℃以上であれば、より好ましくは120℃以上であれば特に限定されないが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。ここで硬化後のガラス転移温度は、使用する(メタ)アクリレートの混合物の硬化物に対するガラス転移温度を意味する。即ち、例えば(メタ)アクリレートA、(メタ)アクリレートB、(メタ)アクリレートCを使用した場合に、硬化後の(メタ)アクリレートA、B、Cのガラス転移温度がそれぞれ60℃、100℃、120℃の場合でも、それらの混合物((メタ)アクリレートA+(メタ)アクリレートB+(メタ)アクリレートC)の硬化後のガラス転移温度が105℃だとすれば、ガラス転移温度として105℃を採用するものとする。
【0087】
光重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1~6の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は2~5が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1または2であるモノマーの場合、重合性基の数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
【0088】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、芳香族系の(メタ)アクリレート[フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等]、炭化水素系の(メタ)アクリレート[ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等]、エーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等]、官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等]、シリコーン系のアクリレート等が挙げられる。他には、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジおよびトリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。アリル基を有するモノマーとしては、p-イソプロペニルフェノール、ビニル基を有するモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等が挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。また、例えば、ビスフェノールA系としては、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルずつのプロピレンオキサイドと平均6モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートや、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルずつのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE-500)およびビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE-200)を採用することもできる。例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ジ(p-ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロ-ルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロ-ルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(アクリロイルキシ)プロピルフタレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ウレタン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基を有する化合物(2-ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレート等)との反応で得られるウレタン化合物等が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマ-PP1000)との反応物がある。
【0089】
また、本実施の形態において、微細ウェルを有する樹脂層を構成する光重合可能なラジカル重合系の樹脂組成物として、窒素含有光重合性モノマーを含むことも好ましい。具体的には、N-ビニル化合物である単量体を5重量%~40重量%の範囲で含有することが好ましい。ここで、特に好ましく用いられる、N-ビニル化合物である単量体としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、及びN-ビニルカプロラクタムの少なくとも1個以上が挙げられる。これらのN-ビニル化合物類を配合することにより、微細ウェルを有する樹脂層と、基材フィルムとの密着性を向上させることができ、かつ、低自家蛍光特性を維持することが可能となる。
【0090】
また、前記した窒素含有光重合性モノマーを含有することで、重合後のモールドからの離型性も良好となるので好ましい。
【0091】
これらの窒素含有光重合性モノマーの含有量は、上記効果を発揮するために5重量%以上であることが好ましい。また、40重量%以下であることによって、重合体からブリードアウトしてしまうような、低重合度オリゴマーの副生成を抑制することができ、また、微細ウェルを有する樹脂層の過度の吸湿も抑制でき、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの耐湿特性が向上するので好ましい。これらの窒素含有光重合性モノマーの含有量は、15重量%~38重量%の範囲であると、上記した密着性が向上し好ましく、25重量%~35重量%の範囲であると、特に好ましい。
本実施の形態の組成物においては、他に単官能モノマーを含有していてもよい。
【0092】
その例としては、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレ-ト、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらのモノマーは必要に応じて二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0093】
上記した光重合性モノマーの配合量は、感光性樹脂組成物の重量に対し、10~95重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20~92重量%である。なお、光重合性モノマーの配合量は、10~80重量%とすることがより好ましい。この範囲であると、低粘度と十分な硬化硬度を有し、光インプリント法により「一分子酵素アッセイ」法に適した微細なウェルを有したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムが得られる。
【0094】
前記樹脂層にフッ素樹脂を含有する場合、樹脂層の表面のフッ素元素濃度(Fs)と、前記樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Fb)との比が、下記式(2)を満たすと、上記したようにバイオアッセイ用基材として好ましい。
1<(Fs/Fb)≦15000 式(2)
【0095】
樹脂層の表面(微細ウェル構造付近)のフッ素濃度を、樹脂層の平均フッ素濃度以上にすることで、樹脂層の表面は自由エネルギーの低さ故に、表面撥液性を発現し、微細ウェル内への微小液滴の形成が促進される。なんとなれば、バイオアッセイ用微細ウェルフィルム上に、検査液を塗布すると、検査液は、微小ウェル内に入り込むが、表面の撥液性のために、微細ウェル内とフィルム最表面とで液滴が分断される。結果として、微小ウェル内のみに検査液が残るためである。特に、微小液滴が必要とされる「一分子酵素アッセイ」法用の基材として好適となる。
【0096】
一方で、樹脂層のフッ素濃度が高いと、基材との接着性が低下し好ましくないため、基材付近では自由エネルギーを高く保ち、より接着性を維持できる。
【0097】
特に、20≦(Fs/Fb)≦200の範囲であると、樹脂層表面部のフッ素元素濃度(Fs)が樹脂層の平均フッ素濃度(Fb)より十分高くなり、樹脂層表面の自由エネルギーを効果的に減少できる。また、樹脂層中の平均フッ素濃度(Fb)を樹脂層表面部のフッ素元素濃度(Fs)に対して相対的に低くすることにより、樹脂層自体の強度が向上するとともに、樹脂層における基材付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、基材との密着性が向上し好ましい。
【0098】
また、26≦(Fs/Fb)≦189の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ好ましい。さらに、30≦(Fs/Fb)≦160の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーを減少させると共に、樹脂の強度を維持することができ好ましく、31≦(Fs/Fb)≦155であればより好ましい。46≦(Fs/Fb)≦155であれば、上記効果をより一層発現できるため好ましい。
【0099】
本実施の形態における感光性樹脂組成物においては、上記した光重合性モノマーに加え、下記化学式(1)で表されるフッ素含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、感光性樹脂組成物の重量に対し、0.1~20重量%であることが好ましい。
【化4】
【化5】
【化6】
【0100】
0.1重量%以上であれば、離型性に優れ、20重量%以下であると、基材への密着性に優れるため好ましい。特に、0.5~10重量%であると、光ナノインプリント法における離型性と基材への密着性を両立でき好ましい。
【0101】
尚、上記範囲の中でもフッ素含有(メタ)アクリレートが、0.8重量部以上であることで、樹脂層表面部(微細ウェル表面)のフッ素元素濃度(Fs)を高くすることができるためより好ましく、6重量部以下であることで、樹脂中における平均フッ素元素濃度(Fb)を低くし、樹脂層の微細ウェルの強度と基材界面の密着力を高くできるためより好ましい。さらに、1重量部~6重量部の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ、微細ウェル中の微小液滴形成が良好になるため好ましい。
【0102】
本明細書中、「樹脂層の表面部」とは、樹脂層の微細ウェルの表面部のことを示し、樹脂層の表面に直交する厚み方向において、樹脂層の表面側から略1%~10%の範囲の部分又は2nm~20nmの範囲の部分を意味する。また、本実施の形態では、樹脂層の表面部のフッ素元素濃度(Fs)は、後述するXPS法により求めた値を採用する。本実施の形態では、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Fs)としている。
【0103】
一方、本明細書中、「樹脂中の平均フッ素元素濃度(Fb)」とは、仕込み量から計算する値、あるいは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析できる値を採用する。すなわち、樹脂層を構成する樹脂に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成される樹脂層の、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで樹脂中の平均フッ素元素濃度(Fb)を同定することができる。
【0104】
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムにおいて、樹脂層の平均窒素元素濃度(Nf)は、基材の平均窒素元素濃度(Ns)よりも高く、前記基材は、前記樹脂層が設けられる前記第一主面側に、下記式(1)を満たす窒素元素濃度(Ni)の領域を有することが好ましい。
Nf>Ni>Ns 式(1)
また、基材は、樹脂層が設けられる第一主面側に、第一主面とは反対側の第二主面に向かって、窒素元素濃度が漸減する領域を有することが好ましい。
【0105】
窒素元素濃度(Ni)が、微細ウェルを有する樹脂層と、基材との界面(第一主面)から裏面(第二主面)の方向、つまり、界面の基材側内部に存在することで、微細ウェルを有する樹脂層と基材との接着性が良好となる。特に、透明性、低自家蛍光特性に優れており、バイオアッセイ用基材として好適だが、光感光性樹脂との接着性が低い、シクロオレフィンポリマー基材フィルムとの接着性が良好となり、好ましい。
【0106】
上記のような、窒素元素濃度(Ni)の分布が、界面の基材側内部に存在すると、基材、特にシクロオレフィンポリマー基材フィルムとの接着性が良好となる明確なメカニズムは不明だが、次のように推定される。
【0107】
つまり、基材の内部には、樹脂層との界面から、窒素含有光重合性モノマーが浸透し、基材の内部で、重合することで、表面の樹脂層との分子鎖ネットワークが形成され、強固な界面接着力を生ずると考えられる。発明者らの詳細な検討により、特に、窒素含有光重合性モノマーの浸透力が強く、強固な接着力を生じることが判明している。
【0108】
漸減する窒素元素濃度(Ni)の層厚さは、1nm以上100nm以下であると、良好な接着性を発現し、好ましく、1nm以上500nm以下であると、窒素含有光重合性モノマーの硬化による接着補強硬化が増強され好ましく、1nm以上2000nm以下であると、窒素含有光重合性モノマーの浸透によるヘイズがなく、接着性がさらに増強されるために、さらに好ましい。このように、漸減する窒素元素濃度(Ni)の層厚さの下限値を1nmとしたが、接着性を発現するために、より好ましくは、10nm以上であり、安定した接着性の発現のために、更に好ましくは、50nm以上である。
【0109】
また、本明細書中、「微細ウェルを有する樹脂中の平均窒素元素濃度(Nf)」とは、仕込み量から計算する値、あるいは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析できる値を採用する。すなわち、樹脂層を構成する樹脂に含まれる窒素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成される樹脂層の、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで樹脂中の平均窒素元素濃度(Nf)を同定することができる。
【0110】
また同様に、本明細書中、「基材の平均窒素元素濃度(Ns)」とは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析できる値を採用する。すなわち、基材中に含まれる窒素元素濃度を意味する。例えば、基材から物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで基材中の平均窒素元素濃度(Ns)を同定することができる。
【0111】
さらに、本明細書中、微細ウェルを有する樹脂層と、基材との界面から第二主面(裏面)の方向に存在する、窒素元素濃度(Ni)は、前記主面に垂直な方向に割断した断面において、前記微細ウェルを有する樹脂層と、基材との両者の界面の窒素元素濃度を測定した値を採用する。測定方法としては、EDX(エネルギー分散型X線分光法)、EELS(電子損失エネルギー分光法)が挙げられる。
【0112】
また、界面を2度から5度程度の極低角斜め切削法により切断し、露出した界面近傍をTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)で測定する方法も挙げられる。この方法によれば、界面近傍の窒素元素濃度を厚さ方向に引き伸ばした情報を得られるので、深さ方向の窒素元素濃度を精度良く測定できるため好ましい。
【0113】
本実施の形態における光重合可能なラジカル重合系樹脂には、上記した光重合性モノマーに加え、光重合性オリゴマーを含むことが好ましく、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーを用いることができる。その例としては、芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートリゴマー、ポリエステルアクリレートリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、その他の特殊オリゴマーが挙げられる。
【0114】
その市販品としては、日本化学合成社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B、UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454、サートマー社製のCN902、CN902J75、CN929、CN940、CN944、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN964、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN968、CN969、CN970、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN971J75、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977、CN977C70、CN978、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN984、CN985、CN985B88、CN986、CN989、CN991、CN992、CN994、CN996、CN997、CN999、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9013、CN9018、CN9019、CN9024、CN9025、CN9026、CN9028、CN9029、CN9030、CN9060、CN9165、CN9167、CN9178、CN9290、CN9782、CN9783、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック社製のEBECRYL(登録商標)210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701等が挙げられ、これらを併用することも可能である。
【0115】
また、合成により得たオリゴマーを単独で又は併用することも可能である。
【0116】
上記したモノマーの配合量は、感光性樹脂組成物の重量に対し、10~80重量%であることが好ましく、さらに好ましくは20~80重量%である。この範囲であると、光インプリント法において、得られる硬化物の厚みムラを抑制でき、光ナノインプリント法により「一分子酵素アッセイ」法に適した微細なウェルを有したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムが得られる。
【0117】
〈光重合開始剤〉
本実施の形態における光重合可能なラジカル重合系樹脂に含まれる光重合開始剤としては、特に限定されず、公知の光重合開始剤を用いることができるが、波長350nmから波長800nmの各波長における光吸収が少ないことが好ましい。光重合開始剤は、光によりラジカル反応またはイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられる。
【0118】
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0119】
なかでも、α―ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤であると、硬化後の波長350nm~800nmの各波長における吸光係数を0.01μm-1以下にしやすく、波長300nmにおける吸光係数が、0.02μm-1以下で、波長300nmから800nmの各波長における吸光係数の最大値となるため、特に好ましい。
【0120】
光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad(登録商標) 379EG、IGM Resins B.V.社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.社製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.社製)、オキシムエステル系の(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0121】
上記した光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の重量に対し、0.5~10重量%が好ましく、さらに好ましくは、1.0~5重量%である。この範囲であると、硬化後の波長350nm~800nmの各波長における吸光係数を0.01μm-1以下にしやすく、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得られる。
【0122】
《バイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法》
本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法は特に限定されないが、所定のマスターモールドから光インプリント法による転写による製造方法が選択できる。
【0123】
マスターモールドは、表面に所望とする微細ウェルの反転形状パタンを具備し、材質としては、石英ガラス、紫外線透過ガラス、サファイア、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン材、フッ素樹脂、シリコン、SiO2、Al、SiC、ニッケル、クロム等が挙げられ、各々積層して複合化してもよい。転写時の離型性を向上させるために、離型処理を行ってもよい。
【0124】
特にマスターモールドに離型処理を施すことで、マスターモールド表面の自由エネルギーが低下する。そのため、樹脂層中の平均フッ素濃度(Fb)を低く保った状態で転写を行うことで、マスターモールド/感光性樹脂混合物/基材から構成される系全体のエネルギーを低くするように、本実施の形態に係るフッ素含有(メタ)アクリレートがマスターモールド表面へと効果的に偏析するため、Fs/Fbを大きくすることができる。そのため、転写時の離型性のみでなく、得られる微細ウェルフィルムは、バイオアッセイ用基材として好適となる。
【0125】
尚、マスターモールドへの離型処理の耐久性の観点から、離型処理剤としては、シランカップリング系離型剤が好ましい。市販されている離型剤の例としては、ダイキン工業社製のオプツールDSX、デュラサーフHD1100やHD2100、住友スリーエム社製のノベック等が挙げられる。
【0126】
以下、本実施の形態のバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法について説明する。
【0127】
〈工程1〉
工程1:基材あるいはマスターモールド上に感光性樹脂組成物を塗布する。
樹脂組成物を塗布する方法としては、流延法、ポッティング法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、ラングミュアプロジェット法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法、等が挙げられる。光硬化性樹脂組成物の塗工厚は、50nm~5mmが好ましく、100nm~200μmがより好ましく、100nm~100μmがさらに好ましい。
【0128】
基材がマスターモールドよりも大きい場合、樹脂組成物を基材全面に塗布しても良いし、マスターモールドを型押しする範囲にのみに樹脂組成物が存在するように樹脂組成物を基材の一部に塗布しても良い。また、マスターモールド側に樹脂組成物を塗布しても良い。
【0129】
基材に樹脂組成物を塗工後、プリベイクすることで、溶剤を含む場合は溶剤の留去や、または内添した含フッ素重合性(メタ)アクリレートの表面偏析を促進させることができる。含フッ素重合性(メタ)アクリレートは、上記で記載した化学式(1)のフッ素含有(メタ)アクリレートであることが好ましい。内添した含フッ素重合性(メタ)アクリレートを表面に偏析させることで、マスターモールドを押圧する際に、含フッ素重合性(メタ)アクリレートがマスターモールドの微細構造内部に効率的に充填され、マスターモールドの劣化を抑制するのみならず、得られる樹脂層の表面フッ素元素濃度(Fs)をバルクのフッ素元素濃度(Fb)で除した値Fs/Fbを大きく向上させ、離型性を向上させることができる。温度は、25℃~120℃が好ましく、40℃~105℃がより好ましく、50℃~105℃がさらに好ましく、60℃~105℃が最も好ましい。プリベイク時間は30秒~30分が好ましく、1分~15分がより好ましく、3分~10分がさらに好ましい。
【0130】
基材と樹脂組成物との接着性を向上させる処理を施すことが好ましい。例えば基材の接着させる面に、樹脂組成物との化学結合や、浸透などの物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理などを施すことが好ましい。
【0131】
〈工程2〉
工程2:感光性樹脂組成物の基材への浸透工程
基材に樹脂組成物を塗工後、感光性樹脂組成物の基材への浸透工程を設けることで、硬化後の樹脂組成物との接着性が向上し、好ましい。本実施の形態における浸透工程は、樹脂組成物が基材表面近傍の内部にわずかに浸透すればよく、例えば、基材に樹脂組成物を塗工後、所定時間放置する方法が挙げられる。浸透工程の条件としては、温度は、15℃~120℃が好ましく、20℃~105℃がより好ましく、25℃~105℃がさらに好ましい。浸透工程の時間としては、1分~30分が好ましく、2分~15分であると、感光性樹脂組成物の硬化後の接着性が良好となり好ましく、3分~10分であると、基材界面のヘイズ増加を抑制でき、さらに好ましい。特に、光重合性モノマーとして、窒素を含有する光重合性モノマーを含む感光性樹脂組成物を、基材に塗布し、浸透させることで、効果的に、基材と樹脂層との界面での接着力を向上させることができる。
【0132】
〈工程3〉
工程3:感光性樹脂組成物を基材とマスターモールドとの間で押圧する工程
気泡が入らないように柔軟性の高い基材を端から静かにマスターモールド上に被膜し、一定圧力下にて押圧することが好ましい。押圧する際のプレス圧力は、0MPa超~10MPaが好ましく、0.01MPa~5MPaがより好ましく、0.01MPa~1MPaがさらに好ましい。
【0133】
〈工程4〉
工程4:光硬化性樹脂組成物を露光により硬化させ、硬化物を得る工程
マスターモールドの光透過性が低い場合、基材側から露光することが好ましい。一方、マスターモールドが紫外波長の光に対する透過率が高い場合、例えば、合成石英材質の場合は、基材側またはマスターモールド側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基材側とマスターモールド側の両面から露光するとより好ましい。露光時の雰囲気は、酸素による重合阻害を防ぐため、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下としても良い。
【0134】
使用する露光光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、UV-LEDが好ましい。長時間露光時の発熱を抑える観点から、可視波長以上の波長をカットするフィルター(バンドパスフィルターを含む)を利用することが好ましい。積算光量としては、波長365nmで300mJ/cm2以上が好ましく、反応率の高い硬化物(E)を得る目的で、800mJ/cm2以上が好ましく、800mJ/cm2~6000mJ/cm2がより好ましく、光による樹脂劣化性を防ぐため、800mJ/cm2~3000mJ/cm2が特に好ましい。
【0135】
硬化物の厚さに依存せず、350nm~450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、効率的な光反応を行う上で、70%以上であることがより好ましい。硬化物の厚さが0nm超~50μmのとき、350nm~450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0136】
〈工程5〉
工程5:マスターモールドから硬化物を剥離する工程
マスターモールドに柔軟性がある場合、モールド面側または基材面側の少なくとも一方から一定速度で剥離することが好ましい。剥離方法としては、線剥離が好ましい。例えば、マスターモールドの剛性が高い材質の場合、特に無機材質の場合、マスターモールド側から剥離すると部分的に面剥離による剥離面積が高くなり、硬化物の破損が懸念される。したがって、柔軟性のある基材側から剥がすことが好ましい。剥離速度は、特定方向から一定速度で0m/min超~5m/minの速度で線剥離することが、硬化物の破損リスクを低減できる点で好ましい。
【0137】
また、硬化後~剥離前の間に加熱処理を施すことが好ましい。この過程で加熱処理を施すことにより、未反応基を減少させることができ、離型が容易になり、さらに、マスターモールドの耐久性が向上する。温度は、50℃~120℃が好ましく、50℃~105℃がより好ましく、60℃~105℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒~30分が好ましく、30秒~15分がより好ましく、1分~10分がさらに好ましい。
【0138】
一方で、剥離後に加熱処理を行ってもよい。剥離後に加熱処理を行うことで、未反応基の反応が促進され好ましい。温度は、50℃~120℃が好ましく、50℃~105℃がより好ましく、60℃~105℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒~30分が好ましく、30秒~15分がより好ましく、1分~10分がさらに好ましい。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の効果を明確に行った実施例をもとに本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0140】
[残膜厚測定]
作成された微細ウェルフィルムの樹脂層の厚さ、及びウェル底部の最肉薄部の厚さは走査型電子顕微鏡(以下、SEM)観察より測定した。まず、試料を適当な大きさに切り出した後に、常温割断し、試料台に積載した。次に、観察面にOsを2nm程度コーティングし、検鏡用試料とした。使用装置及び検鏡条件は以下に示す。
装置;HITACHI s-5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
【0141】
[フッ素元素濃度測定]
樹脂層の表面フッ素元素濃度はX線光電子分光法(以下、XPS)にて測定した。XPSにおける、X線のサンプル表面への侵入長は数nmと非常に浅いため、XPSの測定値を樹脂層表面のフッ素元素濃度(Fs)として採用した。微細ウェルフィルムを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0~1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
【0142】
一方、微細ウェルフィルムの樹脂層を構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Fb)を測定するには、物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで、樹脂層中の平均フッ素元素濃度(Fb)を測定した。
【0143】
[窒素元素濃度測定]
微細ウェルフィルムの主面に垂直な断面方向の窒素元素濃度は、ミクロトームで表面平行から2度~5度に傾斜させて切削面を作成し、露出した界面層をTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)にて測定した。尚、ミクロトームの刃からの成分汚染を除去するために、GCIBスパッタで切削面をクリーニングした。
【0144】
TOF-SIMS測定条件
使用機器 :nano TOF(アルバックファイ社製)
一次イオン :Bi3
++
加速電圧 :30kV
電流値 :約0.2nA(DCとして)
バンチング :無
分析面積 :50mm×50mm
積算時間 :20分
検出イオン :負イオン
中和 :電子銃
【0145】
[自家蛍光特性]
微細ウェルフィルムの自家蛍光は、下記条件にて測定し、蛍光量は、あらかじめ作成した標準物質の検量線から、相当する標準物質濃度として評価した。
使用機器:SynergyHTXプレートリーダー(Biotek社製)
光源:タングステンランプ
励起光フィルター:340nm~380nm
蛍光フィルター :440nm~480nm
標準物質:Hoechst33342(同人化学社製)
0μg~0.3125μgで検量線を作成。
【0146】
[吸光係数]
「吸光係数」を、下記式(6)より求めた。
吸光係数=吸光度/フィルム厚み(μm) 式(6)
樹脂層の吸光係数であれば、吸光度、及び、フィルム厚みは、「樹脂層の吸光度、及び樹脂層の厚み」であり、基材の吸光係数であれば、吸光度及び、フィルム厚みは「基材の吸光度及び基材の厚み」である。
さらに吸光度は、下記、式(7)に従い算出される。
吸光度=-log(光透過率) 式(7)
光透過率は、一般的な分光光度系にて測定して求めることができ、本実験では、分光光度計UV-2500(島津製作所株式会社製)を用いた。
【0147】
[実施例1]
φ4μm、高さ4μmの円柱状凸部がピッチ6μmで三方配列されたニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf(登録商標) 2101Zを用い離型処理を施した。
【0148】
Nビニルピロリドン、ウレタンオリゴマー(サートマー社製 CN991)及びOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を重量部で50:50:5の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。
【0149】
続いて、事前に表面プラズマ処理を施した環状オレフィン樹脂フィルム(JSR社製 ARTON(登録商標)、t188μm)で混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。フィルム面側からのUV露光後、硬化し環状オレフィン樹脂フィルムと一体化した樹脂層と共に、金型から剥離し、樹脂層と基材とが一体化したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得た。
【0150】
得られた微細ウェルフィルム表面には、φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、樹脂層の厚みは、ウェル深さを含めて、4.2μmと均一で、ウェル底部の最肉薄部の厚さ=0.2μmであり、フィルム全厚は、192μmと均一であった。薄く均一であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしやすく、温調ムラが抑制され、エッジ効果の抑制が見込まれた。
【0151】
環状オレフィン樹脂フィルムと、得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの樹脂層の350nm~800nmの吸光係数は、350nmで最大となり、各々、0.001μm-1、0.005μm-1であった。
【0152】
また、微細ウェルフィルムの樹脂層の300nm~800nmの吸光係数は、300nmで最大となり、0.015μm-1であった。
【0153】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.005μg相当であった。
【0154】
[実施例2]
実施例1と同様の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。
【0155】
フッ素含有アクリレート(ダイキン工業社製 OPTOOL DAC HP、固形分20%)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、ウレタンオリゴマー(サートマー社製 CN991)及びOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を重量部で17:50:50:5の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。
【0156】
続いて、事前に表面プラズマ処理を施した環状オレフィン樹脂フィルム(JSR社製 ARTON(登録商標)、t188μm)で混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。フィルム面側からのUV露光後、硬化し環状オレフィン樹脂フィルムと一体化した樹脂層と共に、金型から剥離し、樹脂層と基材とが一体化したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得た。
【0157】
得られた微細ウェルフィルム表面には、φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、樹脂層の厚みは、ウェル深さを含めて、4.2μmと均一で、ウェル底部の最肉薄部の厚さ=0.2μmであり、フィルム全厚は、192μmと均一であった。薄く均一であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしやすく、温調ムラが抑制され、エッジ効果の抑制が見込まれた。
【0158】
環状オレフィン樹脂フィルムと、得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの樹脂層の350nm~800nmの吸光係数は、350nmで最大となり、各々、0.001μm-1、0.008μm-1であった。
【0159】
また、微細ウェルフィルムの樹脂層の300nm~800nmの吸光係数は、300nmで最大となり、0.02μm-1であった。
【0160】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.006μg相当であった。
【0161】
さらに、得られた微細ウェルフィルム表面をXPSで測定したところ、表面のフッ素元素濃度(Fs)と樹脂中の平均フッ素元素濃度(Fb)との比Fs/Fbは48であった。表面撥液性が高く、「一分子酵素アッセイ」法における基材として好適であった。
【0162】
[実施例3]
実施例1と同様の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。
【0163】
Nビニルピロリドン、ウレタンオリゴマー(サートマー社製 CN991)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、及びOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を重量部で33:20:47:5の割合で混合した。
【0164】
続いて、事前に表面プラズマ処理を施した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルム(登録商標)、t188μm)上に感光性樹脂混合物を滴下し、スピンコーターで均一に塗り広げた。その後、5分間静置し、基材への感光性樹脂混合物の浸透工程とした。
【0165】
続いて、実施例1と同様の、表面に微細凹凸構造を有する金型を用い、金型の微細凹凸構造面上に感光性樹脂混合物を滴下した。
【0166】
続いて、事前に表面プラズマ処理を施した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアフィルム ZF-14、t188μm)で混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。フィルム面側からのUV露光後、硬化し環状オレフィン樹脂フィルムと一体化した樹脂層と共に、金型から剥離し、樹脂層と基材とが一体化したバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得た。
【0167】
得られた微細ウェルフィルム表面には、φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、樹脂層の厚みは、ウェル深さを含めて、4.2μmと均一で、ウェル底部の最肉薄部の厚さ=0.2μmであり、フィルム全厚は、192μmと均一であった。薄く均一であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしやすく、温調ムラが抑制され、エッジ効果の抑制が見込まれた。
【0168】
環状オレフィン樹脂フィルムと得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの樹脂層の350nm~800nmの吸光係数は、350nmで最大となり、各々、0.0002μm-1、0.003μm-1であった。
【0169】
また、微細ウェルフィルムの樹脂層の300nm~800nmの吸光係数は、300nmで最大となり、0.005μm-1であった。
【0170】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.0025μg相当で低自家蛍光を示し、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムとして好適であった。さらに、微細凹凸構造を有する表面樹脂と基材フィルムとの接着性は、良好であった。
【0171】
また、得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの窒素元素濃度の主面に垂直な方向の窒素元素濃度を測定した(
図4)。
図4は、微細ウェルフィルムの樹脂層の窒素元素濃度を100%としたときの、基材中の窒素元素濃度比を、基材との界面からの距離に対して示している。
【0172】
基材として使用した環状シクロオレフィン樹脂フィルムには、元々、窒素元素は、ほとんど含まれておらず、基材中の平均窒素元素濃度(Ns)は、ほぼ0であった。しかし、環状シクロオレフィン樹脂フィルムの表面には、窒素元素が浸透しており、微細凹凸構造を有する表面の光硬化樹脂中の窒素元素濃度(Nf)を100%としたとき、光硬化樹脂層と環状オレフィン樹脂フィルムの界面から基材内部に532nmの位置における窒素元素濃度(Ni)は、5%であった。これにより、Nf>Ni>Nsを満たすことがわかった。
【0173】
[実施例4]
実施例1と同様の平板状金型を用い、Nビニルピロリドン、ウレタンオリゴマー(サートマー社製 CN991)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、及びOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を重量部で33:10:57:5の割合で混合した以外は、実施例3と同様の方法でゼオノアフィルムを基材とし、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得た。
【0174】
得られた微細ウェルフィルム表面には、φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、樹脂層の厚みは、ウェル深さを含めて、4.2μmと均一で、ウェル底部の最肉薄部の厚さ=0.1μmであり、フィルム全厚は、192μmと均一であった。薄く均一であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしやすく、温調ムラが抑制され、エッジ効果の抑制が見込まれた。
【0175】
環状オレフィン樹脂フィルムと得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの樹脂層の350nm~800nmの吸光係数は、350nmで最大となり、各々、0.0002μm-1、0.0004μm-1であった。
【0176】
また、微細ウェルフィルムの樹脂層の300nm~800nmの吸光係数は、300nmで最大となり、0.0007μm-1であった。
【0177】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.001μg相当で低自家蛍光を示し、バイオアッセイ用微細ウェルフィルムとして好適であった。さらに、微細凹凸構造を有する表面樹脂と基材フィルムとの接着性は、良好であった。
【0178】
また、得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの窒素元素濃度の主面に垂直な方向の窒素元素濃度を測定した(
図4)。
図4は、微細ウェルフィルムの樹脂層の窒素元素濃度を100%としたときの、基材中の窒素元素濃度比を、基材との界面からの距離に対して示している。
【0179】
基材として使用した環状シクロオレフィン樹脂フィルムには、元々、窒素元素は、ほとんど含まれておらず、基材中の平均窒素元素濃度(Ns)は、ほぼ0であった。しかし、環状シクロオレフィン樹脂フィルムの表面には、窒素元素が浸透しており、微細凹凸構造を有する表面の光硬化樹脂中の窒素元素濃度(Nf)を100%としたとき、光硬化樹脂と環状オレフィン樹脂フィルムの界面から、基材内部に1188nmの位置における窒素元素濃度(Ni)は、5%であった。これにより、Nf>Ni>Nsを満たすことがわかった。
【0180】
[比較例1]
実施例1と同様の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。
【0181】
フッ素含有アクリレート(ダイキン工業社製 OPTOOL(登録商標) DAC HP、固形分20%)、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)、ウレタンオリゴマー(サートマー社製 CN991)、Omnirad184(IGM Resins B.V.製)及びOmnirad369(IGM Resins B.V.製)を重量部で17:50:50:5:2の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。
【0182】
続いて、PETフィルム(東洋紡社製 コスモシャインA4100、t188μm)で混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。フィルム面側からのUV露光後、金型とフィルムを剥離しバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを得た。
【0183】
得られた微細ウェルフィルム表面には、φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、樹脂層の厚みは、ウェル深さを含めて、4.2μmと均一で、ウェル底部の最肉薄部の厚さ=0.2μmであり、フィルム全厚は、192μmと均一であった。
【0184】
PETフィルムと得られたバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの樹脂層の350nm~800nmの吸光係数は、350nmで最大となり、各々、0.002μm-1、0.07μm-1であった。
また、300nmの光は透過せず、吸光係数は測定できなかった。
【0185】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.22μg相当であり、自家蛍光特性が強いため、マーカーの蛍光と分離できないために、マーカーを検出できず「一分子酵素アッセイ」法には不適であった。
【0186】
[比較例2]
実施例1と同様の凹凸パタンを賦形する射出成型型を用意し、射出成型により、COP樹脂(JSR社製 ARTON F4520)を使用し、ウェルプレートを形成した。実施例1と同様に、射出樹脂層の表面パタンは、表面φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、フィルム全厚は、400μmと肉厚であった。
【0187】
肉厚であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしにくく、エッジ効果の発生が見込まれた。
【0188】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.01μg相当であった。
【0189】
[比較例3]
比較例2と同様の射出成型型を用意し、射出成型により、COP樹脂(日本ゼオン社製 ゼオノア 1020R)を使用し、ウェルプレートを形成した。実施例1と同様に、表面パタンは、表面φ4μm、深さ4μmの円筒状ウェルがピッチ6μmで三方配列されており、フィルム全厚は、300μmと肉厚であった。
【0190】
肉厚であるために、「一分子酵素アッセイ」法において、温調プレートによる温調がしにくく、エッジ効果の発生が見込まれた。
【0191】
また、自家蛍光特性は、Hoechst33342の0.004μg相当であった。
【0192】
以下、表1に、実施例1~実施例4、及び比較例1~比較例3の材質、吸光係数及び効果等についてまとめた。
【0193】
表1に示すように、実施例1、実施例2、実施例3、及び実施例4は、いずれも、樹脂層の波長350nmから800mの各波長における吸光係数が、0.01μm-1以下であった。なお、サンプルに使用した基材を構成する樹脂は、いずれも、波長350nmから800mの各波長における吸光係数が、0.01μm-1以下であり、300nmの吸光係数は、0.02μm-1以下であった。そして、いずれの実施例においても、比較例2、比較例3による従来のバイオアッセイプレートと同等以下の低自家蛍光特性を得ることができた。
【0194】
【0195】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。
【0196】
本実施の形態によれば、従来の射出成型によるバイオアッセイプレートよりも低自家蛍光特性を有し、低コストで製造でき、ウェルの温調が容易で、エッジ効果を抑制できる「一分子酵素アッセイ」法などに適用されるバイオアッセイ基材であるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを提供できる。さらに、自家蛍光特性が低く、マーカー検出が容易なバイオアッセイ用微細ウェルフィルムを形成できる感光性樹脂組成物と、前記感光性樹脂組成物を用いるバイオアッセイ用微細ウェルフィルムの製造方法を提供することができ、簡便に工業実用上の用途に適用しうる。
【0197】
本出願は、2019年7月2日出願の特願2019-123981に基づく。この内容は全てここに含めておく。