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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】減少された蒸気毒性のヒドラジン組成物
(51)【国際特許分類】
   C06B 47/08 20060101AFI20230518BHJP
   C06B 31/28 20060101ALI20230518BHJP
   C06D 5/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C06B47/08
C06B31/28
C06D5/00 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021536033
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2019014900
(87)【国際公開番号】W WO2020153958
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マッセ,ロバート ケー.
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-148776(JP,A)
【文献】米国特許第03164505(US,A)
【文献】米国特許第03088272(US,A)
【文献】米国特許第02951335(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C06B
C06D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体混合物を備え、該液体混合物は、
ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせからなる群から選択され、第1蒸気圧を有する5mol%~95mol%のプロトン化されていないヒドラジンであって、ロケット推進剤として用いられる、プロトン化されていないヒドラジンと
前記第1蒸気圧よりも小さい第2蒸気圧を有し、アセタール、アセチル、2つ以上の炭素原子を有したアルコキシアミン、アルデヒド、アミド、アミノアルコール、カルバジド、セミカルバジド、9.2よりも大きい対数解離定数を有したカチオンを備える炭素含有硝酸塩、ヒドロキシアルキルニトロ化合物、ヒドロキシアルキルヒドラジン、炭酸塩、カルボン酸およびカルボン酸の無水物、エステル、エーテル、ケタール、ケトン、31%以上の質量分率のモノアルコールおよびポリアルコール、硝酸エステル、ニトロソアミン、糖、および、これらの組み合わせからなる群から選択された5mol%~90mol%の少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒と、
を有
前記少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジン、硝酸ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とするヒドラジン含有組成物。
【請求項2】
前記液体混合物は、98mol%までの水を有することを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項3】
前記液体混合物は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された酸化剤を有することを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項5】
前記液体混合物は、98mol%までの水を有することを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項6】
前記液体混合物は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された酸化剤を有することを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウムであることを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項9】
前記液体混合物は、酸化剤を有することを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項10】
前記酸化剤は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項11】
前記酸化剤は、硝酸ヒドラジニウムであることを特徴とする請求項に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項12】
前記液体混合物は、1.1g/cm~1.5g/cmの密度を有することを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項13】
前記第2蒸気圧は、前記第1蒸気圧よりも少なくとも50%小さいことを特徴とする請求項1に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項14】
液体混合物を備え、該液体混合物は、
水と、
アンモニウムジニトラミド、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された酸化剤と、
ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせからなる群から選択されたプロトン化されていないヒドラジンであって、ロケット推進剤として用いられる、プロトン化されていないヒドラジンと
硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒と、
を有する、ヒドラジン含有組成物。
【請求項15】
前記液体混合物は、
20mol%~80mol%の前記プロトン化されていないヒドラジンと、
10mol%~80mol%の前記酸素含有溶質または溶媒と、
0mol%~20mol%の前記酸化剤と、
0mol%~20mol%の前記水と、
を有することを特徴とする請求項14に記載のヒドラジン含有組成物。
【請求項16】
前記酸化剤は、硝酸ヒドラジニウムであり、前記少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載のヒドラジン含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減少された蒸気毒性のヒドラジン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドラジンが、ロケット推進剤および工業用溶媒として用いられる。しかし、ヒドラジンは、一般に、高い蒸気毒性を有しており、従って、予防措置を扱うことが、安全の目的のためになされなければならない。特性、例えば凝固点、ゲル化または推進性能を修正するために、ヒドラジンは、添加剤と組み合わされてきた。一定の特性を修正することには成功しているが、望ましい機能的特性、例えば触媒挙動および溶媒強さを大いに引き出すことなく蒸気毒性を減少させる努力については大いに失敗してきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の例に従うヒドラジン含有組成物が、液体混合物を有し、該液体混合物は、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせからなる群から選択され、第1蒸気圧を有する5mol%~95mol%のプロトン化されていないヒドラジンと、第1蒸気圧よりも小さい第2蒸気圧を有する5mol%~90mol%の少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒と、を有する。少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、アセタール、アセチル、2つ以上の炭素原子を有したアルコキシアミン、アルデヒド、アミド、アミノアルコール、カルバジド、セミカルバジド、9.2よりも大きい対数解離定数を有したカチオンを備える炭素含有硝酸塩、ヒドロキシアルキルニトロ化合物、ヒドロキシアルキルヒドラジン、炭酸塩、カルボン酸およびカルボン酸の無水物、エステル、エーテル、ケタール、ケトン、31%以上の質量分率のモノアルコールおよびポリアルコール、硝酸エステル、ニトロソアミン、糖、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0004】
上述の実施形態の他の実施形態では、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジン、硝酸ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0005】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、98mol%までの水を有する。
【0006】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された酸化剤を有する。
【0007】
上述の実施形態の他の実施形態では、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、98mol%までの水を有する。
【0009】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
上述の実施形態の他の実施形態では、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウムである。
【0011】
上述の実施形態の他の実施形態では、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウムである。
【0012】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、98mol%までの水を有する。
【0013】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、酸化剤を有する。
【0014】
上述の実施形態の他の実施形態では、酸化剤は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
上述の実施形態の他の実施形態では、酸化剤は、硝酸ヒドラジニウムである。
【0016】
上述の実施形態の他の実施形態では、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジン、硝酸ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、98%までの水を有する。
【0018】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、1.1g/cm3~1.5g/cm3の密度を有する。
【0019】
上述の実施形態の他の実施形態では、第2蒸気圧は、第1蒸気圧よりも少なくとも50%小さい。
【0020】
本開示の例に従うヒドラジン含有組成物が、液体混合物を有し、該液体混合物は、水と、アンモニウムジニトラミド、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された酸化剤と、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせからなる群から選択されたプロトン化されていないヒドラジンと、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒と、を有する。
【0021】
上述の実施形態の他の実施形態では、液体混合物は、20mol%~80mol%のプロトン化されていないヒドラジンと、10mol%~80mol%の酸素含有溶質または溶媒と、0mol%~20mol%の酸化剤と、0mol%~20mol%の水と、を有する。
【0022】
上述の実施形態の他の実施形態では、酸化剤は、硝酸ヒドラジニウムであり、少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒は、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書には、ロケット推進剤および工業用溶媒として良好な性能を維持する、低い蒸気毒性の液体ヒドラジン組成物が開示されている。添加剤が、ヒドラジンと組み合わせて先に使用されてきた。しかし、この添加剤は、ヒドラジンの望ましい特性を破壊することなく、人間への暴露に対して安全なレベルにヒドラジンの蒸気特性を効果的に低減しなかった。例えば、この添加剤は、混合物を過度に薄くするまたは粘り気があるようにする、化学的活動を効果的でないレベルに減少させる、もしくは貯蔵寿命を受容不可能なレベルに減少させることが多い。
【0024】
しかし、ヒドラジンをロケット推進剤または工業用溶媒として用いるのに魅力的なものとするヒドラジンの機能的特徴を維持しながら、一定の酸素含有溶質および溶媒がヒドラジンの蒸気毒性を効果的に低減することが、現在、予期せずに分かっている。例えば、ヒドラジンを有した共沸混合物および/または擬似共沸混合物を形成し、かつヒドラジンよりも低い蒸気圧を有する強い酸素含有溶質および溶媒が、機能性を維持しながら、蒸気毒性を効果的に低減するために、ヒドラジンと混合されることができる。
【0025】
ヒドラジン含有組成物は、液体混合物であり、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせから選択された5mol%~90mol%のヒドラジンと、アセタール、アセチル、2つ以上の炭素原子を有したアルコキシアミン、アルデヒド、アミドおよび特にカルボキサミド、アミノアルコール、カルバジドおよびセミカルバジド、9.2よりも大きい対数解離定数を有したカチオンを備える炭素含有硝酸塩、ヒドロキシアルキルニトロ化合物、ヒドロキシアルキルヒドラジン、炭酸塩、カルボン酸およびカルボン酸の無水物、エステル、エーテル、ケタール、ケトン、31%以上の質量分率のモノアルコールおよびポリアルコール、硝酸エステル、ニトロソアミン、糖、および、これらの組み合わせから選択された5mol%~95mol%の少なくとも1つの酸素含有溶質または溶媒と、を有している。
【0026】
プロトン化されていないヒドラジンは、第1蒸気圧を有しており、酸素含有溶質または溶媒は、第1蒸気圧よりも小さい第2蒸気圧を有している。蒸気圧は、25℃の参照温度でmmHgの単位で一般に示されるが、同等の単位が用いられ得る。ヒドラジンの蒸気圧および蒸気毒性の結果的な減少が一般に大きいので、低い蒸気圧の溶質または溶媒が好ましい。例えば、第2蒸気圧が第1蒸気圧よりも90%小さい液体混合物は、第2蒸気圧が第1蒸気圧よりも30%小さい場合のヒドラジンおよび溶質または溶媒の等しいモル比の1つよりも多くヒドラジンの蒸気毒性を減少させることになり、ここで、単位の比較は、25℃の参照温度でmmHgである。一例では、第2蒸気圧は、第1蒸気圧よりも少なくとも50%小さい。
【0027】
プロトン化されていないヒドラジンは、液体混合物中で実質的にプロトン化されない。例えば、酸素含有溶質または溶媒は、ヒドラジンのプロトン化を最小限にするために、非酸性であるか、または基準pHである。また、ヒドラジンの非プロトン化は、他の多くの酸性の添加剤がしているのと同様に触媒および化学反応を変更するのではなく、触媒および化学反応を保存するように機能する。
【0028】
本発明の液体混合物に用いるのに適切な例示の溶質および溶媒が以下に挙げられている。
【0029】
【表1】
【0030】
また、液体混合物は、密度比推力性能のために望ましい比較的高い密度を有することが好ましい。例として、液体混合物は、少なくとも1.1g/cm3の好ましい密度、さらに好ましくは1.25g/cm3よりも大きい密度を有する。一例では、液体混合物は、1.1g/cm3~1.5g/cm3の密度を有する。
【0031】
他の例では、酸素含有溶質または溶媒は、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせから選択される。
【0032】
上記の例の液体混合物は、付加的な添加剤、例えば他の溶質または溶媒および/または酸化剤を有しても良い。例えば、液体混合物は、98mol%までの水を有する。他の例では、液体混合物は、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸ヒドロキシアンモニウム、および、これらの組み合わせから選択された酸化剤を有する。液体混合物は、0.5の等価比に至るまでの酸化剤を有しても良い。
【0033】
他の例では、液体混合物は、水と、硝酸アンモニウム、硝酸カルボヒドラジド、硝酸ヒドラジニウム、硝酸カルボヒドラジド、および、これらの組み合わせから選択された酸化剤と、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、および、これらの組み合わせから選択されたプロトン化されていないヒドラジン、硝酸カルボヒドラジド、硝酸エチルアンモニウム、硝酸エチレンジヒドラジン、ヒドロキシエチルヒドラジン、硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム、および、これらの組み合わせから選択された酸素含有溶質または溶媒と、を有する。例えば、液体混合物は、
20mol%~80mol%のプロトン化されていないヒドラジン、
10mol%~80mol%の酸素含有溶質または溶媒、
0mol%~20mol%の酸化剤、および
0mol%~20mol%の水を有している。
【0034】
本明細書における液体混合物は、ヒドラジン単独よりも25%~30%大きい密度と、ヒドラジン単独の5%~0.01%である蒸気毒性(蒸気圧)とを一般に有している。さらに、本明細書における液体混合物は、ヒドラジンとして、ロケット推進剤の同じ触媒予熱条件の下で使用されることができ、および周知のニッケル超合金スラスタ設計(つまり、液体混合物が高いコストの耐火性スラスタを用いる必要がない)で用いられても良い。
【0035】
以下の組成物が、液体混合物の別の例を示している。
【0036】
例1:
70mol%のヒドラジン(N2H4)
30mol%の硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:4%
比推力:230秒
密度1.24g/cc
反応温度:910℃
粘度:20℃で約13cP

例2:
65mol%のヒドラジン(N2H4)
25mol%の硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム
10mol%の硝酸ヒドラジニウム
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.4%
比推力:235秒
密度1.28g/cc
反応温度:1100℃
粘度:20℃で約10cP

例3:
40mol%のヒドラジン(N2H4)
40mol%の硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム
12mol%の硝酸ヒドラジニウム
8mol%の水
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.04%
比推力:235秒
密度1.35g/cc
反応温度:1100℃
粘度:20℃で約31cP

例4:
35.7mol%のヒドラジン(N2H4)
35.7mol%の硝酸エチルアンモニウム
21.5mol%の硝酸ヒドラジニウム
7.1mol%の水
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.03%
比推力:235秒
密度1.29g/cc
反応温度:1100℃
粘度:20℃で約11cP

例5:
65mol%のヒドラジン(N2H4)
16mol%の硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム
6.5mol%の硝酸エチルアンモニウム
12.5mol%の硝酸ヒドラジニウム
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.4%
比推力235秒

例6:
51mol%のヒドラジン(N2H4)
23mol%の硝酸エチレンジヒドラジン
8mol%の硝酸ヒドラジニウム
18mol%の水
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.3%
比推力:235秒
密度1.21g/cc
反応温度1040℃
粘度:20℃で約16cP

例7:
56mol%のヒドラジン(N2H4)
18mol%のカルボヒドラジド
24mol%の硝酸カルボヒドラジド
2mol%の水
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.2%
比推力:232秒
密度1.36g/cc
反応温度:1140℃
粘度:20℃で約24cP

例8:
51mol%のヒドラジン(N2H4)
22mol%の硝酸エチルアンモニウム
23mol%の硝酸アンモニウム
4mol%の水
正味のヒドラジンに対する蒸気圧:0.3%
比推力:235秒
密度1.27g/cc
反応温度:1120℃
粘度:20℃で約7cP

例9:
70mol%のモノメチルヒドラジン
20mol%の硝酸ヒドロキシエチルヒドラジニウム
10mol%の硝酸アンモニウム
正味のモノメチルヒドラジンに対する蒸気圧:1%
比推力:205秒
密度1.18g/cc
反応温度:760℃
粘度:20℃で約6cP

特徴部の組み合わせが例示の例に示されているが、これらの特徴部の全てが、本開示の種々の実施例の利益を実現するために組み合わされる必要はない。つまり、本開示の実施例に従って設計されたシステムは、図の1つに示された特徴部の全てまたは図に概略的に示された部分の全てを必ずしも有している必要はない。さらに、1つの例示の実施例の選択された特徴部は、他の例示の実施例の選択された特徴部と組み合わされても良い。
【0037】
上述の説明は、本質を例示するものであって、限定するものではない。開示された例への変更および修正が、本開示を逸脱することなく、当業者に明らかになるであろう。本開示に与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定されるのみである。