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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20230518BHJP
【FI】
E05B85/16 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023518431
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035052
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022016754
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】新川 和秀
(72)【発明者】
【氏名】向野 努
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-295063(JP,A)
【文献】特開2017-125339(JP,A)
【文献】特開平7-52651(JP,A)
【文献】国際公開第2015/076113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/10-85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のドアパネル(100)に取り付けるドアハンドル(1)であって、
ハンドル本体部(2)とベース部(3)とを備え、
前記ベース部(3)は、電子部品(5)を収容するケース(4)と固定パッド(6)を有し、
前記固定パッド(6)は、係止片(61)及び押圧片(62)を有し、
前記ケース(4)は、前記係止片(61)の一部一点で係合する係止片受部(9)を有し、
前記押圧片(62)は前記電子部品(5)を押圧することを特徴とするドアハンドル(1)。
【請求項2】
車体のドアパネル(100)に取り付けるドアハンドル(1)であって、
ハンドル本体部(2)とベース部(3)とを備え、
前記ベース部(3)は、電子部品(5)を収容するケース(4)と固定パッド(6)を有し、
前記固定パッド(6)は、係止片(61)及び押圧片(62)を有し、
前記ケース(4)は、前記係止片(61)と係合する係止片受部(9)を有し、
前記押圧片(62)は前記電子部品(5)を押圧することを特徴とするドアハンドル(1)において、
前記押圧片(62)は、受圧部(623)と弾性部(621)と当接部(622)とを有し、
前記受圧部(623)と前記当接部(622)とは、前記弾性部(621)により連結され、
前記受圧部(623)は前記ドアパネル(100)に押圧され、
前記当接部(622)は前記電子部品(5)の表面を押圧することを特徴とすドアハンドル。
【請求項3】
前記係止片(61)はJ字形状のフック部(611)を有し、
前記係止片受部(9)はフック部受け部(92)を有し、
前記フック部(611)は前記フック部受け部(92)と係合することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項4】
前記ケース(4)は、位置決め突起(42)を有し、
前記位置決め突起(42)は前記電子部品(5)の側面と接触することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項5】
前記ケース(4)は壁面支持部(71)を有し、
前記壁面支持部(71)は、前記電子部品(5)の壁面に接触することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項6】
前記電子部品(5)は、パネル当接部(50)を有することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【請求項7】
前記ケース(4)はストッパ(41)を有し、
前記電子部品(5)は、前記ストッパ(41)と係合する被ストッパ部(52)を有することを特徴とする請求項1又は2記載のドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアパネルに取り付けされるドアハンドルには、センサ、アンテナ、スイッチ等の電子部品が埋め込まれることがある。例えば、特許文献1には、スマートエントリーシステムに対応したドアハンドルが開示されている。ドアハンドルは電子部品であるアンテナを内蔵し、ドアハンドルのベース部にはアンテナが取り付けられたアンテナケースがネジ固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-120759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電子部品をドアハンドルのベース部にネジ固定する場合、ネジをネジ孔に挿入し、ネジを回転して螺合する作業が必要があり、組立工数が増加するという問題がある。
本発明は、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるドアハンドル1は、
車体のドアパネル100に取り付けるドアハンドル1であって、
ハンドル本体部2とベース部3とを備え、
前記ベース部3は、電子部品5を収容するケース4と固定パッド6を有し、
前記固定パッド6は、係止片61及び押圧片62を有し、
前記ケース4は、前記係止片61と係合する係止片受部9を有し、
前記押圧片62は前記電子部品5を押圧することを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記押圧片は、受圧部623と弾性部621と当接部622とを有し、
前記受圧部623と前記当接部622とは、前記弾性部621により連結され、
前記受圧部623は前記ドアパネル100に押圧され、
前記当接部622は前記電子部品5の表面を押圧するように構成してもよい。
【0007】
このようなドアハンドルの構成とすることにより、ドアハンドルの組立工程において電子部品をケースにネジ止めする必要がなく、ドアハンドルをドアパネルに固定することにより、電子部品は押圧片によりケース側に押圧され、ドアハンドルのケースに固定される。これにより、作業者の負担が軽減し、ドアハンドルの組立効率の向上に寄与する。また、電子部品は、押圧片により弾性的に押圧されるため、ガタつきが効果的に防止される。
【0008】
上記構成において、前記係止片はJ字形状のフック部611を有し、
前記係止片受部はフック部受け部92を有し、
前記フック部611は前記フック部受け部92と係合するように構成してもよい。
【0009】
このようなドアハンドルの構成とすることにより、係止片がケースに固定され、係止片の抜けが防止される。
【0010】
また、上記構成において、
前記ケース4は、位置決め突起42を有し、
前記位置決め突起42は前記電子部品5の側面と接触するように構成してもよい。
【0011】
また、上記構成において、
前記ケース4は壁面支持部71を有し、
前記壁面支持部71は、前記電子部品5の壁面に接触する構成としてもよい。
【0012】
このようなドアハンドルの構成とすることにより、電子部品のケース内における配置を容易に確定することができる。
【0013】
また、上記構成において、
前記電子部品5は、パネル当接部50を有してもよい。
【0014】
このようなドアハンドルの構成とすることにより、パネル当接部と係止片との連携作用により、さらに効果的に電子部品をケースに固定することができる。
【0015】
また、上記構成において、
前記ケース4はストッパ41を有し、
前記電子部品5は、前記ストッパ41と係合する被ストッパ部52を有する構成としてもよい。
【0016】
このようなドアハンドルの構成とすることにより、電子部品をケースに仮固定することができ、ドアハンドルのドアパネルへの組み付け作業性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(A)は車体のドアパネル100に取り付けられたドアハンドル1を示す斜視図、図1(B)はドアハンドル1のドアパネル100側から見た平面図、図1(C)はベース部3の拡大斜視図である。
図2図2(A)はベース部3の斜視図、図2(B)はベース部3の電子部品5近傍の分解斜視図である。
図3図3はベース部3の部分断面図である。
図4図4(A)はベース部3をドアパネル100に固定する前の押圧片62近傍の拡大断面図であり、図4(B)はベース部3をドアパネル100に固定した後の押圧片62近傍の拡大断面図である。
図5図5(A)は電子部品5をケース4に嵌め込む途中段階の断面図、図5(B)は電子部品5をケース4に嵌め込んだ状態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0020】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明にかかるドアハンドル1の一実施形態について説明する。ドアハンドル1は、車両のドアの開閉装置の一構成部品であり、操作者がドアを開閉する際に使用する操作部である。
図1(A)は車体のドアパネル100に取り付けられたドアハンドル1を示す斜視図、図1(B)はドアハンドル1のドアパネル100側から見た平面図、図1(C)はベース部3の拡大斜視図である。
【0022】
図1(A)に示すように、ドアハンドル1は車両のドアパネル100に取り付けられる。操作者は、ドアハンドル1を把持し、車両のドアの開閉操作を行うことができる。
図1(B)に示すように、ドアハンドル1はハンドル本体部2(把持部2)とベース部3とを備え、ハンドル本体部2は、ドアパネル1に対して回動可能に支持され、ベース部3はドアパネル1に固定されている。
【0023】
図1において、車両の前後方向(ドアハンドル1の長手方向)をX方向、X方向に垂直な車両の高さ方向をY方向(幅方向)とする。
X-Y平面は、ドアハンドル1のドアパネル100の取付箇所において、ドアパネル100と平行な面である。
ドアハンドル1の取付方向は、例えば図1(A)において左側を車両の前方側、右側を車両の後方側とすることができるが、この例に限定されない。
【0024】
ベース部3はケース4を有し、ケース4の内部には、電子部品5が収容されている。
ケース4は、非限定的に、主に例えば樹脂やプラスチック等により構成されることができる。
電子部品5は、筐体55を有し、筐体55の内部に、例えば、電気的又は磁気的機能を有する、電子回路、配線、センサ等の任意の部品(主体部品)を収容することができる。電子部品5の主要な構成であるこれらの部品は、筐体55に公知の固定方法、例えば接着、ネジ固定等により固定される。
筐体55は、非限定的に、例えば、主に樹脂、プラスチック、セラミック等の材料から構成される。
ドアハンドル1がドアパネル100に取付られた状態で、筐体55が、少なくとも部分的にドアパネル100の表面に直接的に接触可能なように、パネル当接部50を設けてもよい。パネル当接部50は、筐体55の周縁部に突起部として構成することができる。パネル当接部50は筐体55と一体で、例えば樹脂の射出成形により設けてもよいが、筐体55上にパネル当接部50を溶着等により接着し、後付けで設けてもよい。
【0025】
電子部品5には、電力を供給する電力線や、データ通信するデータ線が接続されるが、簡単のため図面では省略されている。
なお、無線により、電子部品5に対して電力供給やデータ通信を行ってもよい。
【0026】
電子部品5はケース4に収容され、保持される。
ケース4には、電子部品5を固定するためのストッパ41(支持突起41)及び位置決め突起42を有している。後述するように、ストッパ41は、電子部品5のドアパネル100側の表面(上面)の2箇所(複数箇所)に接触し、電子部品5をケース4に固定(仮固定)する機能を有する。
位置決め突起42は、電子部品5の側壁面に接し、電子部品5の幅方向(Y方向)の位置を確定する。
なお、位置決め突起42の数は2に限定するものではない。
【0027】
ケース4には、円筒状のナット支持部7が設けられ、ナット支持部7にはナット8が固定(溶着)されている。ナット8は、ベース部3をドアパネル100にボルトで固定するために使用される。
ナット支持部7は、その外壁面の一部に壁面支持部71を備え、電子部品5の筐体55の壁面は、壁面支持部71と接触する湾曲面5S(壁面当接部5S)を備えるよう構成されてもよい。湾曲面5Sは、位置決め突起42から長手方向(X方向)に離隔した位置に配置される。壁面支持部71と湾曲面5Sとの接触及び位置決め突起42と電子部品5の側壁面との接触により、電子部品5の幅方向(Y方向)の位置を確定することができる。
また、湾曲面5Sを壁面支持部71に沿った形状、すなわち壁面支持部71と電子部品5の湾曲面5Sとを、互いに相補的な形状とすることで、電子部品5のケース4内における長手方向(X方向)と幅方向(Y方向)の両方の配置を確定することも可能である。
なお、壁面支持部71及び湾曲面5Sの形状は任意であり、互いに接触可能であればよい。湾曲面5S及び壁面支持部71は、接触部において、互いに面で接する形状を有すればよい。図示するように壁面支持部71及び湾曲面5Sとの接触面が円弧形状になるように構成してもよいが、それに限定されない。例えば、筐体55の輪郭が矩形であり、湾曲面5Sがその角部である場合、壁面支持部71を、矩形の角部に沿ったL字形状に構成してもよい。
また、ナット支持部7と独立して支柱を設け、その支柱に壁面支持部71を設けてもよい。ただし、ナット支持部7に壁面支持部71を設けることで、ナット支持部7に挿入される金属製のボルトが電子部品5の支持を補強する効果がある。
【0028】
ケース4の表面には、固定パッド6(固定補助具6)が設置されている。
固定パッド6は、例えば弾性を有する樹脂で構成される。好適な材料として、例えばABS樹脂やポリプロピレン(PP)樹脂が採用できる。
固定パッド6は、ケース4と直接接触する部分である外枠部6Fと、外枠部6Fから内側に延びる係止片61及び押圧片62を有している。
固定パッド6、特に外枠部6Fは、ベース部3とドアパネル100との間を液密に封止する効果を有し、また緩衝材としても機能することができる。
固定パッド6は、ケース4に設けられた突起部40を、固定パッド6に設けられた連結孔60に嵌め込むことで、ケース4に固定することができる。
【0029】
固定パッド6の係止片61及び押圧片62は、電子部品5の固定部を構成する。係止片61はケース4と係合し、さらに押圧片62は電子部品5の表面をケース4側に押圧する。
押圧片62は、連結部620により係止片61に連結することができる(図1(C))。
【0030】
図2は、電子部品5のケース4への固定について説明する図であり、図2(A)はベース部3の斜視図、図2(B)は電子部品5近傍におけるベース部3の分解斜視図である。図2(A)は係止片61が電子部品5を固定する前の状態を示す。
図3はベース部3の部分断面図である。図3は、図1(B)のA-A線断面に相当する。
【0031】
ケース4は電子部品5の収容部43(収容空間43)を有し、電子部品5はケース4の収容部43に収容され、保持される。
固定パッド6の外枠部6Fは、主にケース4の周縁に沿った形状を有し、固定パッド6は、ケース4上に設置される。固定パッド6の係止片61及び押圧片62は、ケース4の周縁から内側に向かって配置される。
【0032】
固定パッド6の係止片61は、フック部611を有している。フック部611はJ字形状(鉤形状)であり、先端部612が折り返された形状を有している。
ケース4は、係止片61と係合する係止片受部9を有し、係止片受部9は、フック部611を収容する空洞部90を有している。空洞部90は壁面部91により囲まれている。
電子部品5側の(近側の)壁面部91には、開口部92(フック受け部92)が設けられている。開口部92と対向する側の(遠側の)壁面部91(図3中、遠側壁面部91a)の上部(ドアパネル100側)には傾斜面93(ガイド面93)が設けられている。
【0033】
フック部611は傾斜面93にガイドされて、空洞部90に挿入され、フック部611が開口部92と係合する。
具体的には、空洞部90に収容されたフック部611の先端部612は、開口部92へと突出し、空洞部90の上方に位置する壁面部91(図3中、係合壁部91b)と干渉する。フック部611と開口部92との係合により、係止片61は、係止片61と係合する
また、電子部品5に貫通孔51が設けられ、フック部611は貫通孔51に挿入され、係止片受部9と係合するように構成されてもよい。その結果、フック部611が貫通孔51から抜け出ることが防止される。係止片61により電子部品5が仮固定されるため、ドアハンドル1をドアパネル100に固定する工程において、作業性を向上させることができる。
係止片61により電子部品5が仮固定された状態でケース4を複数保管することができ、ドアハンドル1の構成部品であるケース4の管理も容易となる。
【0034】
連結部620により係止片61に連結された押圧片62は、電子部品5の表面に接するように配置される。なお、図3に示す状態において、押圧片62は必ずしも電子部品5の表面に接触する必要はない。ベース部3がドアパネル100に固定された状態においては、ドアパネル100の表面が押圧片62に接触して、押圧片62を電子部品5側に押圧する。ドアパネル100に押圧された押圧片62が電子部品5の表面に接触し、電子部品5をケース4側へと押圧する。
【0035】
図4は、押圧片62と電子部品5との関係を示す断面図であり、図4(A)はベース部3をドアパネル100に固定する前の押圧片62近傍の拡大断面図であり、図4(B)はベース部3をドアパネル100に固定した後の押圧片62近傍の拡大断面図である。
【0036】
押圧片62は、図4に示すように、左右両側に2つのバネ部621(弾性部621)及びバネ部621と接続されている当接部622を有している。2つのバネ部621は接続部623(受圧部623)により接続されている。従って、当接部622と接続部623とは、バネ部621により連結されている。
ベース部3がボルトによりドアパネル100に固定されると、ドアパネル100の表面が接続部623を電子部品5側へ押圧し、押圧片62が弾性的に変形する。
詳細には、ドアパネル100により接続部623が電子部品5側に移動し(図中矢印α参照)、接続部623の表面と外枠部6Fの表面とが同一平面に位置するようになる。
そして、2つの当接部622の間隔が拡がり、接続部623とバネ部621との角度θが大きくなる(θ2>θ1)。すなわち、当接部622の表面が、電子部品5の表面(上面)と接触するように、2つの当接部622が互いに離れるように移動する(図中矢印β参照)。
【0037】
図4(B)に示すように、当接部622と電子部品5の表面との接触面積が増大し、当接部622と電子部品5の表面とは、互いに面で接触することになる。
当接部622が電子部品5の表面(上面)を押圧し、電子部品5を固定する。押圧片62、特にバネ部621の弾性力により、電子部品5がケース4側(ドアパネル100の反対側)に付勢され、ガタつきが防止される。
【0038】
また、バネ部621の弾性変形により、電子部品5、ケース4や固定パッド6(固定パッド6の厚み)等の複数の構成部品の寸法バラツキを吸収することができる。
【0039】
なお、図4(B)に示す状態において、好適には、ドアパネル100と電子部品5の表面とが平行になる。この場合、接続部623とバネ部621とのなす角度θ2と、角度θ2と錯角の関係にある当接部622とバネ部621とのなす角度ψ2とが等しくなる(θ2=ψ2)。接続部623が電子部品5側に移動することにより当接部622と電子部品5との接触面積を増大させるためには、図4(A)に示す状態において、接続部623とバネ部621とのなす角度θ1と比較して、角度θ1と錯角の関係にある当接部622とバネ部621とのなす角度ψ1が大きくなる(ψ1>θ1)よう設定する。非限定的な例として、ψ1=140°、θ1=130°である。
また、バネ部621の厚みを調節することにより、固定パッド6が電子部品5を押さえつける力を調節することができる。
固定パッド6のこれらのパラメータ(角度や厚さ)を調節することにより、電子部品5を固定するとともに、ドアハンドル1の操作時のドアパネル100からの電子部品5への衝撃を緩和することも可能である。
【0040】
なお、押圧片62の形状として、上記形状が好適に採用されるが、弾性的に電子部品5の表面を押圧することができれば上記形状に限定されず、例えば皿バネ形状等の他の板バネ形状であってもよい。
【0041】
図5は、ケース4に電子部品5を設置する主要工程を説明するための断面図であり、図1(C)のB-B線断面に相当する。図5(A)は電子部品5をケース4に嵌め込む途中段階の断面図、図5(B)は電子部品5をケース4に嵌め込んだ状態の断面図を示す。
以下、ケース4に電子部品5を設置し、固定する方法について説明する。
【0042】
電子部品5の筐体55は、幅方向(Y方向)の端部にストッパ41と係合する被ストッパ部52(被支持部52)を有している(図5図2(B)参照)。被ストッパ部52は、筐体55と一体成形で設けてもよく、また後付けで設けてもよい。
説明のため、図5において、左側のストッパ41及び被ストッパ部52を、それぞれストッパ41a及び被ストッパ部52aと記し、右側のストッパ41及び被ストッパ部52を、それぞれストッパ41b及び被ストッパ部52bと記す。
【0043】
まず、固定パッド6の係止片61及び押圧片62を45°程度起こした状態で、図5(A)に示すように、電子部品5の一端側の被ストッパ部52aがケース4の一端側のストッパ41aの下部(ドアパネル100の反対側)に位置するように、電子部品5を斜め方向からケース4に挿入する。
【0044】
その後、図5(B)に示すように、一端側の被ストッパ部52aの周りに電子部品5を旋回させ、電子部品5の他端側の被ストッパ部52bをケース4の他端側のストッパ41bの下方へと押し込む。ストッパ41と被ストッパ部52とが係合し、ストッパ41は電子部品5をスナップ固定する機能を有する。
組立作業者は、カチっと嵌め込む触感(クリック感)により、ストッパ41と被ストッパ部52との係合を感知することができる。
なお、旋回による嵌め込みを容易にするように、電子部品5の被ストッパ部52の下部は平面又は曲面の傾斜面53を有してもよい。
【0045】
この段階は図2(A)に示す状態と同じであり、電子部品5がケース4に仮固定された状態である。また、ケース4に電子部品5を仮固定した状態で保管することも可能であり、ドアハンドル1のドアパネル100への組み付け作業の効率も向上する。
この段階では、ストッパ41と被ストッパ部52との間に隙間が生じ、電子部品5は、図5(B)中上下方向にガタつきを有することがある。
【0046】
なお、被ストッパ部52のストッパ41下部への移動を容易にするため、被ストッパ部52の下部(車外側)に、傾斜面であるガイド面520(挿入ガイド520)を設けてもよい。
【0047】
その後、係止片61及び押圧片62を電子部品5側に倒し、係止片61のフック部611を電子部品5の貫通孔51及び係止片受部9の空洞部90に挿入し、図3に示すように係止片61と係止片受部9とを係合する。(図1(C)参照)
【0048】
ドアハンドル1をドアパネル100に取り付ける際には、ベース部3は、ボルトをケース4に固定されたナット8にねじ込むことにより、ドアパネル100に固定される。パネル当接部50の上部(ドアパネル100側)表面は、固定パッド6の上部表面と略面一(同一面)になる。
ドアパネル100にベース部3が固定された状態においては、固定パッド6の表面、又は固定パッド6及びパネル当接部50の表面がドアパネル100と当接する。固定パッド6の押圧片62は電子部品5の表面を押圧する。
一方、電子部品5の筐体55の底部(ケース4側壁面部)は、底部当接面56を有している。ケース4は支持表面4Sを有し、ドアパネル100にベース部3が固定された状態において、底部当接面56は支持表面4Sに接触する。
その結果、固定パッド6(又は固定パッド6及びパネル当接部50)とケース4の支持表面4Sとにより、電子部品5を固定することができる。(図5(B)参照)
【0049】
詳細には、図1(C)において、電子部品5の一方側に位置するパネル当接部50が、ドアパネル100によりケース4側に押圧されると、パネル当接部50に対向する側、すなわち貫通孔51が存在する側がケース4から浮き上がるように力が加えられることになる。貫通孔51付近においては、押圧片62の弾性力によりケース4側に押圧され、効果的に電子部品5が固定される。
【0050】
好適には、パネル当接部50を電子部品5の筐体55の最端部(X方向の最端部)近傍に設け(図1(B)参照)、筐体55のパネル当接部50の下部(ケース4側)に平面状又は曲面状の傾斜面54(図3参照)を設けてもよい。傾斜面54により、パネル当接部50をケース4側(図3中Z方向)に押圧することで、パネル当接部50のX方向の反対側に位置する電子部品5の貫通孔51側がドアパネル100側(図3中、反Z方向)に上がるように力が働き易くなる。
このように、貫通孔51側に配置された押圧片62が弾性力を有する構成において、パネル当接部50との連携により、さらに効果的に電子部品5のガタつきを防止するとともに、ドアパネル100から電子部品5への衝撃等を軽減することも可能である。
なお、Z方向は、図1のX-Y平面に垂直な方向であり、ドアパネル100の表面からケース4(車外)に向かう方向である。
【0051】
なお、上記実施形態においては、筐体55にパネル当接部50を設ける例を示した。
しかし、筐体55にパネル当接部50を設けず、パネル当接部50の設置位置の上方、すなわち、筐体55の幅方向及び長手方向の端部(角部)近傍において、固定パッド6にさらに補助的な押圧片62(副押圧部62’と称す。)を設けてもよい。
長手方向(X方向)に離隔した押圧片62(この場合、主押圧部62と称す。)と補助的な押圧片62(副押圧部62’)とにより、電子部品5をケース4側に押圧し、底部当接面56を支持表面4Sに押圧してもよい。
【0052】
上述のように、ドアハンドル1の組立作業において、電子部品5をケース4にネジ固定する必要がなく、作業負担が軽減される。また、ドアハンドル1のベース部3をドアパネル100にボルトにより取り付ける工程そのものにより、電子部品5とケース4との固定を完成することができ、さらに作業者の作業負担が軽減される効果がある。
【0053】
以上のドアハンドル1の構成により、簡単な作業によりベース部3に電子部品5を組み込むことが可能となる。さらに、ベース部3をドアハンドル100にボルトを用いて固定する工程を、ベース部3と電子部品5との固定を完成させる工程と兼用することが可能となり、組立作業の効率が向上し、作業者の作業負担も軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、容易に組立が可能なドアハンドルを提供することができ、ドアハンドルの生産性を向上させることが可能であり、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0055】
100 ドアパネル
1 ドアハンドル
2 ハンドル本体部(把持部)
3 ベース部
4 ケース
40 突起部
41、41a、41b ストッパ(支持突起)
42 位置決め突起
43 収容部(収容空間)
4S 支持表面
5 電子部品
50 パネル当接部
51 貫通孔
52、52a、52b 被ストッパ部(被支持部)
520 ガイド面(挿入ガイド)
5S 湾曲面(壁面当接部)
53 傾斜面(第1の傾斜面)
54 傾斜面(第2の傾斜面)
55 筐体
56 底部当接面
6 固定パッド(固定補助具)
6F 外枠部
60 連結孔
61 係止片
611 フック部
612 先端部
62 押圧片(主押圧部)
620 連結部
621 バネ部(弾性部)
622 当接部
623 接続部(受圧部)
62’ 副押圧部
7 ナット支持部
71 壁面支持部
8 ナット
9 係止片受部
90 空洞部
91 壁面部
91a 遠側壁面部
91b 係合壁部
92 開口部(フック受け部)
93 傾斜面(ガイド面)
【要約】
【課題】組立作業の負担を軽減することができる、車両のドアパネルに取り付けられるドアハンドルを提供することを課題とする。
【解決手段】
ドアハンドル1は、ハンドル本体部2とベース部3とを備えている。ベース部3は、電子部品5を収容するケース4と固定パッド6とを有しており、固定パッド6は、係止片61と押圧片62とを有している。ケース4は、係止片受部9と係合する係止片受部9を有しており、押圧片62は電子部品5を押圧する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5