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  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図1
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図2
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図3
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図4
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図5
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図6
  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図7
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  • 特許-部品実装装置および実装基板の製造方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】部品実装装置および実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230519BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K13/08 U
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018234030
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020096114
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】永冶 利彦
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】木原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀明
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-094297(JP,A)
【文献】特開2011-181675(JP,A)
【文献】特開2007-266425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品搭載手段で基板の実装位置に部品を搭載することによって、前記基板に形成されたランドにはんだを介して前記部品の電極を接続させる部品実装装置であって、
前記実装位置に搭載される部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量に基づいて、当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合に、当該部品が当該部品に隣接する隣接部品に干渉するか否かを判定する干渉判定手段を備え、
前記部品搭載手段は、
前記干渉判定手段によって当該部品が前記隣接部品に干渉すると判断された場合に、当該部品を前記実装位置に搭載しない、部品実装装置。
【請求項2】
前記干渉判定手段は、
当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合の当該部品の外形と前記隣接部品の外形との間隔が所定値以下の場合に、当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定する、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記部品搭載手段は、
当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定された場合に、当該部品を廃棄する、請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記部品搭載手段は、
当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定された場合に、当該部品を他の実装位置に搭載する、請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記干渉判定手段は、
前記部品搭載手段が保持する部品の外形と電極を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像結果より前記部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量を算出する処理部と、を有する、請求項1から4のいずれかに記載の部品実装装置。
【請求項6】
基板の実装位置に部品を搭載することによって、前記基板に形成されたランドにはんだを介して前記部品の電極を接続させる実装基板の製造方法であって、
前記実装位置に搭載される部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量に基づいて、当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合に、当該部品が当該部品に隣接する隣接部品に干渉するか否かを判定する干渉判定工程と、
前記干渉判定工程による判定結果に基づいて、当該部品を処理する判定後処理工程と、を含み、
前記干渉判定工程において当該部品が前記隣接部品に干渉すると判断された場合に、前記判定後処理工程において当該部品が前記実装位置に搭載されない、実装基板の製造方法。
【請求項7】
前記干渉判定工程は、当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合の当該部品の外形と前記隣接部品の外形との間隔が所定値以下の場合に、当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定する、請求項6に記載の実装基板の製造方法。
【請求項8】
前記干渉判定工程において当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定された場合に、前記判定後処理工程において当該部品が廃棄される、請求項6または7に記載の実装基板の製造方法。
【請求項9】
前記干渉判定工程において当該部品が前記隣接部品に干渉すると判定された場合に、前記判定後処理工程において当該部品が他の実装位置に搭載される、請求項6または7に記載の実装基板の製造方法。
【請求項10】
記部品の外形と電極を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程による撮像結果より前記部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量を算出する処理工程と、をさらに含む、請求項6から9のいずれかに記載の実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に部品を実装する部品実装装置および部品を基板に実装した実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装した実装基板に搭載される部品として、BGA(Ball Grid Array)部品などの部品の下面に形成された電極をはんだを介して基板の表面に形成されたランドに接続する下面電極部品が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の部品実装装置では、基板に搭載する前にBGA部品の電極(BG接合部)に形成されたはんだバンプの欠落、ずれ、はんだ量不足などの良否を判定して、不良部品は廃棄して基板に搭載しないことで実装基板の品質を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第98/26641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、下面電極部品の電極に不良がないと判定されて基板の実装位置に搭載した後に、リフローによる加熱で融解したはんだの表面張力によって下面電極部品の位置が移動して、隣接する部品に接触する不良が発生することがあるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、下面電極部品を実装した実装基板の品質を向上することができる部品実装装置および実装基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装装置は、部品搭載手段で基板の実装位置に部品を搭載することによって、前記基板に形成されたランドにはんだを介して前記部品の電極を接続させる部品実装装置であって、前記実装位置に搭載される部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量に基づいて、当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合に、当該部品が当該部品に隣接する隣接部品に干渉するか否かを判定する干渉判定手段を備え、前記部品搭載手段は、前記干渉判定手段によって当該部品が前記隣接部品に干渉すると判断された場合に、当該部品を前記実装位置に搭載しない。
【0007】
本発明の実装基板の製造方法は、基板の実装位置に部品を搭載することによって、前記基板に形成されたランドにはんだを介して前記部品の電極を接続させる実装基板の製造方法であって、前記実装位置に搭載される部品の外形に対する前記電極の位置のずれ方向とずれ量に基づいて、当該部品を前記実装位置に搭載して前記はんだを融解させた場合に、当該部品が当該部品に隣接する隣接部品に干渉するか否かを判定する干渉判定工程と、前記干渉判定工程による判定結果に基づいて、当該部品を処理する判定後処理工程と、を含み、前記干渉判定工程において当該部品が前記隣接部品に干渉すると判断された場合に、前記判定後処理工程において当該部品が前記実装位置に搭載されない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、下面電極部品を実装した実装基板の品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成を示す平面図
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置によって基板に搭載される下面に電極を有する部品の(a)側面図(b)底面図
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置が備える部品認識カメラによる部品撮像動作の説明図
図4】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態の部品実装装置によって基板に部品を搭載する工程説明図
図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置の制御系の構成を示すブロック図
図6】本発明の一実施の形態の部品実装装置が備える部品認識カメラが撮像した部品認識画像の例を示す図
図7】本発明の一実施の形態の部品実装装置によって部品が搭載される基板の実装位置付近の部分平面図
図8】本発明の一実施の形態の部品実装装置によって部品が搭載された基板の(a)はんだ融解前の部分平面図(b)はんだ融解後の部分平面図
図9】本発明の一実施の形態の実装基板の製造方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。
【0011】
まず図1を参照して、部品実装装置1の構成を説明する。図1において、基台1aの中央には、基板搬送機構2がX方向に設置されている。基板搬送機構2は、上流側から搬入された基板3をX方向へ搬送し、以下に説明する実装ヘッドによる実装作業位置に位置決めして保持する。また、基板搬送機構2は、部品搭載作業が完了した基板3を下流側に搬出する。基板搬送機構2の両側方には、それぞれ部品供給部4が設置されている。
【0012】
両方の部品供給部4には、複数のテープフィーダ5がX方向に並列に装着されている。テープフィーダ5は、部品を格納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部4の外側から基板搬送機構2に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、実装ヘッドが部品をピックアップする部品取出し位置に部品を供給する。また、一方の部品供給部4には、部品Dを整列して保持するトレイ6を部品取出し位置に供給するトレイフィーダ7が装着されている。
【0013】
ここで図2(a)、図2(b)を参照して、部品Dの構造について説明する。図2(a)に示す部品Dは、その下面Ddに基板3のランドと接続される複数の電極E(ここでは4個)が形成された下面電極部品である。図2(b)において、部品Dの下面Ddには、4個の電極Eが上下左右に等間隔で形成されている。この例では、部品Dの4個の電極Eの中心(以下、単に「電極中心Ce」と称する。)が、部品Dの外形に基づく部品Dの中心(以下、単に「部品中心Cd」と称する。)と一致するように電極Eが形成されている。なお、図2に示す部品Dは下部電極部品の一例であり、電極Eの数は4個に限定されることはない。また、部品Dの外形は正方形に限定されることはなく、電極中心Ceが部品中心Cdに一致しない位置に電極Eが設定されていてもよい。
【0014】
図1において、基台1aの上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル8が配置されている。Y軸テーブル8には、同様にリニア機構を備えたビーム9がY方向に移動自在に結合されている。ビーム9には、実装ヘッド10がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド10は、部品Dを保持して昇降可能な複数の吸着ユニット(図示省略)を備える。吸着ユニットのそれぞれの下端部には、部品Dを吸着して保持する吸着ノズル10a(図3参照)が装着されている。
【0015】
Y軸テーブル8およびビーム9は、実装ヘッド10を水平方向(X方向、Y方向)に移動させる実装ヘッド移動機構を構成する。実装ヘッド移動機構および実装ヘッド10は、基板3の実装位置に部品Dを搭載する部品搭載手段11を構成する。部品搭載手段11は、部品供給部4に装着されているテープフィーダ5およびトレイフィーダ7の部品取出し位置から部品Dの上面Du(図2(a)参照)を吸着ノズル10aによって真空吸着してピックアップし、基板搬送機構2に保持された基板3の実装位置に移送して搭載する部品搭載作業を実行する。
【0016】
部品搭載作業において実装ヘッド10は、部品供給部4の上方に移動し、各吸着ノズル10aで所定の部品Dをそれぞれピックアップし、基板3の上方に移動し、各吸着ノズル10aが保持する部品Dをそれぞれの実装位置に実装する一連のターンを繰り返す。
【0017】
図1において、ビーム9には、ビーム9の下面側に位置して実装ヘッド10とともに一体的に移動するヘッドカメラ12が装着されている。実装ヘッド10が移動することにより、ヘッドカメラ12は基板搬送機構2の実装作業位置に位置決めされた基板3の上方に移動して、基板3に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板3の位置を認識する。
【0018】
部品供給部4と基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ13および廃棄部14が設置されている。部品認識カメラ13は、部品供給部4から部品Dを取り出した実装ヘッド10が部品認識カメラ13の上方に位置した際に、吸着ノズル10aに保持された部品Dを下方から撮像する(図3参照)。実装ヘッド10による部品Dの基板3への部品搭載作業では、ヘッドカメラ12による基板3の認識結果と部品認識カメラ13による部品Dの認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
【0019】
図1において、廃棄部14には、実装ヘッド10が保持した部品Dのうち、基板3に実装しない部品Dが廃棄される。部品実装装置1の前面で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル15が設置されている。タッチパネル15は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品実装装置1の操作を行う。
【0020】
次に図4(a)~図4(c)を参照して、基板3に部品Dを搭載する部品搭載作業の工程につて説明する。図4(a)は、図2に示す部品Dが搭載される実装位置S1付近の基板3の部分平面図である。基板3には、部品Dに隣接して抵抗や容量などのチップ部品P(P1,P2)が搭載される。図4(a)において、基板3の表面には、部品Dまたはチップ部品Pの電極Eが接続されるランドLが形成されている。図4(b)に示すように、部品搭載作業の前に、基板3のランドLの表面には、図示省略するスクリーン印刷装置などでランドLの形状に対応したはんだQが印刷(堆積)される。次いではんだQが印刷された基板3は部品実装装置1に搬入されて、実装作業位置に保持される。
【0021】
次いで部品搭載手段11は、トレイフィーダ7またはテープフィーダ5から供給された部品Dまたはチップ部品Pをピックアップし、部品認識カメラ13によって撮像(図3)した後、基板3に設定された実装位置Sに部品Dまたはチップ部品Pを搭載する。図4の例では、部品Dの実装位置S1は4個のランドL1の中心に、チップ部品P1の実装位置S2は2個のランドL2の間に、チップ部品P2の実装位置S3は2個のランドL3の間に、それぞれ設定されている。部品搭載手段11は、部品認識カメラ13による認識結果を加味して、部品D、チップ部品P1,P2を実装位置S1~S3に搭載する。図4(c)に示すように、部品Dは、部品中心Cdが実装位置S1に一致するように基板3に搭載される。
【0022】
次いで部品Dおよびチップ部品P1,P2が搭載された基板3は、図示省略するリフロー装置に搬送される。リフロー装置は、基板3を搬送しながら加熱してはんだQを融解させた後、はんだQを固化させて部品Dおよびチップ部品P1,P2を基板3にはんだ付けする。このように、部品実装装置1は、部品搭載手段11で基板3の実装位置Sに部品Dまたはチップ部品Pを搭載することによって、基板3に形成されたランドLにはんだを介して部品Dまたはチップ部品Pの電極Eを接続させる。
【0023】
次に図5を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。部品実装装置1が備える制御部20には、基板搬送機構2、部品供給部4、部品搭載手段11、ヘッドカメラ12、部品認識カメラ13、タッチパネル15が接続されている。制御部20は、認識処理部21、干渉判定処理部22、搭載制御部23、生産データ記憶部24、部品情報記憶部25、位置ずれ情報記憶部26を備えている。
【0024】
生産データ記憶部24は記憶装置であり、部品D、チップ部品Pを基板3に実装する際に参照される部品D、チップ部品Pの部品名(種類)、実装位置S(XY座標)などを含む生産データを記憶する。部品情報記憶部25は記憶装置であり、基板3に実装される部品D、チップ部品Pの部品名毎に、サイズ、外形に対する電極Eの規格位置、隣接部品との最小間隔などが記憶されている。
【0025】
図5において、認識処理部21は、部品認識カメラ13が撮像した吸着ノズル10aに保持された部品Dの下面Ddの画像を認識処理して、部品Dの外形および電極Eの位置を認識する。すなわち、部品認識カメラ13は、部品搭載手段11が保持する部品Dの外形と電極Eを撮像する撮像部である。また、認識処理部21は、認識した部品Dの外形に基づいて、部品Dを真空吸着している吸着ノズル10aに対する部品Dの位置を算出する。
【0026】
下面電極部品である部品Dは、製造過程の製造誤差やばらつきに起因して、電極Eの位置が規格位置からずれることがある。認識処理部21は、認識した部品Dの外形と電極Eの位置、および部品情報記憶部25に記憶されている部品Dの外形に対する電極Eの規格位置に基づいて、電極Eの規格位置からの位置ずれ(ずれ方向とずれ量)を算出する。すなわち、認識処理部21は、撮像部による撮像結果より部品Dの外形に対する電極Eの位置のずれ方向とずれ量を算出する処理部である。
【0027】
ここで図6を参照して、部品認識カメラ13によって撮像された吸着ノズル10aに吸着された部品Dの部品認識画像13aの一例における部品Dの位置(部品中心Cd)、電極Eの位置(電極中心Ce)について説明する。部品認識画像13aには、X方向の中心線13xとY方向の中心線13yが重ねて表示されている。X方向の中心線13xとY方向の中心線13yの交点が、部品認識画像13aの中心13cである。
【0028】
図6において、部品Dを保持した吸着ノズル10aは、部品認識画像13aの中心13cと吸着ノズル10aの中心Cnとが一致するように停止位置が調整されている。部品中心Cdは、認識処理部21によって部品Dの外形より認識されている。さらに認識処理部21によって、部品Dの吸着位置ずれ(ΔXd,ΔYd)が部品認識画像13aの中心13cに対する部品中心Cdの位置から算出される。
【0029】
電極中心Ceは、認識処理部21によって4個の電極Eの位置より認識されている。さらに認識処理部21によって、電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)が部品中心Cd、電極中心Ce、部品情報記憶部25に記憶されている電極Eの規格位置から算出される。この例では、電極Eの規格位置(電極中心Ce)は部品中心Cdに一致しており、部品中心Cdに対する電極中心Ceの相対的な位置が電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)になる。認識処理部21は、算出した部品Dの吸着位置ずれ(ΔXd,ΔYd)と電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)を、位置ずれ情報記憶部26に記憶させる。
【0030】
図5において、干渉判定処理部22は、位置ずれ情報記憶部26に記憶される電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)、生産データ記憶部24に記憶される部品Dと部品Dに隣接する隣接部品の実装位置S、部品情報記憶部25に記憶される部品Dと隣接部品のサイズ、部品Dと隣接部品の最小間隔に基づいて、部品Dを実装位置S1に搭載してはんだを融解させた場合に部品Dが隣接部品に干渉するか否かを判定する。
【0031】
ここで図7を参照して、部品Dが搭載される実装位置S1が設定された基板3の例について説明する。実装位置S1は、部品Dの4個の電極Eが接続される基板3上に形成された4個のランドL1の中心の位置に設定されている。部品Dは、部品中心Cdが実装位置S1に一致するように位置補正されて基板3上に搭載される。実装位置S1の上側(Y方向)には、隣接部品であるチップ部品P1が搭載される実装位置S2が設定されている。実装位置S2は、実装位置S1からY方向に距離Y0だけ離れて設定されている。実装位置S2は、チップ部品P1の2個の電極Eが接続される2個のランドL2の中心の位置に設定されている。チップ部品P1は、部品中心Cpが実装位置S2に一致するように位置補正されて基板3上に搭載される。
【0032】
実装位置S1の左側(X方向)には、隣接部品であるチップ部品P2が搭載される実装位置S3が設定されている。実装位置S3は、実装位置S1からX方向に距離X0だけ離れて設定されている。実装位置S3は、チップ部品P2の2個の電極Eが接続される2個のランドL3の中心の位置に設定されている。チップ部品P2は、部品中心Cpが実装位置S3に一致するように位置補正されて基板3上に搭載される。
【0033】
図7において、部品DのサイズはX方向がDx、Y方向がDyである。また、チップ部品P1のY方向のサイズはPy、チップ部品P2のX方向のサイズはPxである。部品Dとチップ部品P2がずれなく基板3に搭載されると、部品Dとチップ部品P2との間のX方向の間隔Gxは、X0-Dx/2-Px/2となる。同様に、部品Dとチップ部品P1がずれなく基板3に搭載されると、部品Dとチップ部品P1との間のY方向の間隔Gyは、Y0-Dy/2-Py/2となる。
【0034】
次に図8(a)、図8(b)を参照して、電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)がある部品Dを基板3の搭載した例について説明する。図8(a)はランドLにはんだQが印刷された基板3に部品Dが搭載された直後の状態を示し、図8(b)は部品Dを搭載した後にはんだQを融解させて固化させた状態を示している。図8(a)において、部品Dの部品中心Cdを実装位置S1に一致させて基板3に搭載すると、部品Dの電極Eは基板3の実装位置S1から電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)だけずれた状態となる。すなわち、電極Eの位置がランドL1に対してX方向はΔXeだけチップ部品P2から遠い側にあり、Y方向はチップ部品P1からΔYeだけ遠い側にある。
【0035】
はんだQを融解させると、図8(b)に示すように融解された液状のはんだQの表面張力により部品Dの電極EがランドL1に一致するように部品Dの位置が移動する。すなわち、はんだQを融解させると、電極中心Ceが実装位置S1に一致する位置まで部品Dが移動する。そして、電極Eのずれ方向が隣接部品(チップ部品P1,P2)から遠い位置にあり、かつ、ずれ量が大きい部品Dでは、はんだQを融解させた際の移動で隣接部品に接触(衝突)したり近づき過ぎる干渉が発生する場合がある。
【0036】
干渉判定処理部22は、部品Dが隣接部品(チップ部品P1,P2)に干渉するか否かを判定する。具体的には、干渉判定処理部22は、はんだQを融解させた後に部品Dとチップ部品P2とのX方向の間隔Gx(X0-Dx/2-Px/2-ΔXe)が最小間隔Gxmより小さくなる(負となる場合を含む)場合に、部品Dが隣接するチップ部品P2と干渉すると判定する。または、干渉判定処理部22は、はんだを融解させた後に部品Dとチップ部品P1とのY方向の間隔Gy(Y0-Dy/2-Py/2-ΔYe)が最小間隔Gymより小さくなる(負となる場合を含む)場合に、部品Dが隣接するチップ部品P1と干渉すると判定する。
【0037】
すなわち、干渉判定処理部22は、部品Dを実装位置S1に搭載してはんだQを融解させた場合の当該部品Dの外形と隣接部品(チップ部品P1,P2)の外形との間隔(Gx,Gy)が所定値(Gxm,Gym)以下の場合に、当該部品Dが隣接部品に干渉すると判定する。このように、部品認識カメラ13(撮像部)、認識処理部21(処理部)、干渉判定処理部22は、実装位置S1に搭載される部品Dの外形に対する電極Eの位置のずれ方向とずれ量(電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe))に基づいて、当該部品Dを実装位置S1に搭載してはんだQを融解させた場合に、当該部品Dが当該部品Dに隣接する隣接部品に干渉するか否かを判定する干渉判定手段27(図5参照)を構成する。
【0038】
図5において、搭載制御部23は、部品搭載手段11を制御して、吸着ノズル10aによってトレイ6に収納された部品Dの上面Duを真空吸着してピックアップし、吸着ノズル10aが保持する部品Dを基板3の実装位置S1に搭載させる部品搭載作業を実行させる。その際、搭載制御部23は、部品Dの吸着位置ずれ(ΔXd,ΔYd)に基づいて、部品Dの部品中心Cpが実装位置S1に一致するように補正して基板3に搭載させる。また、搭載制御部23は、干渉判定処理部22が、吸着ノズル10aが保持する部品Dが隣接部品に干渉すると判断すると、その部品Dを廃棄部14に廃棄させる。
【0039】
すなわち、部品搭載手段11は、干渉判定手段27によって当該部品Dが隣接部品に干渉すると判定された場合に、当該部品Dを廃棄部14に廃棄して、当該部品Dを実装位置S1に搭載しない。これによって、基板3に搭載した部品DがはんだQを融解させた後に隣接部品に干渉することを防止することができ、下面電極部品(部品D)を実装した実装基板の品質を向上することができる。
【0040】
また、干渉判定処理部22は、吸着ノズル10aが保持する部品Dを当初予定の実装位置S1に搭載すると隣接部品に干渉すると判定した場合、同一の基板3上に隣接部品と干渉することなくその部品Dを搭載することができる代替の実装位置Sがないかを探索する。基板3上に部品Dと同じ種類の部品が複数実装される場合で、当初予定の実装位置S1より隣接部品が離れていたり、隣接部品との相対的な位置関係が干渉しない方向であったりする場合に、代替の実装位置Sが見つかる場合がある。
【0041】
干渉判定処理部22が、吸着ノズル10aが保持する部品Dを搭載可能な実装位置Sを見つけると、搭載制御部23は、部品搭載手段11を制御して、その部品Dを実装位置Sに搭載させる。すなわち、部品搭載手段11は、当該部品Dが隣接部品に干渉すると判定された場合に、当該部品Dを他の実装位置Sに搭載する。これによって、部品Dを廃棄する損失の発生を回避することができる。
【0042】
次に図9のフローに沿って、部品実装装置1においてトレイ6に収納された部品Dを吸着ノズル10aでピックアップして基板3の実装位置S1に搭載することによって、基板3に形成されたランドL1にはんだQを介して部品Dの電極Eを接続させる実装基板の製造方法の1ターン分について説明する。部品実装装置1の実装作業位置には、ランドLにはんだQが印刷された基板3が位置決めして保持されているとする。まず、部品搭載手段11は、トレイ6から部品Dを取り出す(ST1:部品取出し工程)。次いで部品Dを保持する部品搭載手段11が上方を移動する際に、部品認識カメラ13(撮像部)は、部品搭載手段11が保持する部品Dの外形と電極Eを撮像する(ST2:撮像工程)。
【0043】
次いで認識処理部21は、撮像工程(ST2)による撮像結果より部品Dの外形に対する電極Eの位置のずれ方向とずれ量(電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe))を算出する(ST3:処理工程)。この際、認識処理部21は部品Dの吸着位置ずれ(ΔXd,ΔYd)も算出し、電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)と伴に位置ずれ情報記憶部26に記憶させる。次いで干渉判定処理部22は、実装位置S1に搭載される部品Dの電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)に基づいて、当該部品Dを実装位置S1に搭載してはんだQを融解させた場合に、当該部品Dが当該部品Dに隣接する隣接部品(チップ部品P1,P2)に干渉するか否かを判定する(ST4:干渉判定工程)。
【0044】
具体的には、干渉判定工程(ST4)において干渉判定処理部22は、当該部品Dを実装位置S1に搭載してはんだQを融解させた場合の当該部品Dの外形と隣接部品の外形との間隔(Gx,Gy)が所定値(Gxm,Gym)以下の場合に、当該部品Dが隣接部品に干渉すると判定する。干渉判定工程(ST4)において干渉しないと判定された場合(No)、部品搭載手段11は、部品Dの吸着位置ずれ(ΔXd,ΔYd)に基づいて位置補正して、部品Dの部品中心Cdが実装位置S1に一致するように基板3に搭載させる(ST5)。
【0045】
図9において、干渉判定工程(ST4)において干渉すると判定された場合(Yes)、干渉判定処理部22は、当初予定の実装位置S1の代わりに当該部品Dを搭載可能な他の実装位置Sを探索する(ST6:代替実装位置探索工程)。他の実装位置Sに搭載可能な場合(ST6においてYes)、部品搭載手段11は、当該部品Dを他の実装位置Sに搭載させる(ST7)。他に搭載可能な実装位置Sがない場合(ST6においてNo)、部品搭載手段11は、当該部品Dを廃棄部14に破棄し(ST8:部品廃棄工程)、部品取出し工程(ST1)に戻って次の部品Dを取り出す。
【0046】
このように、図9に示すフローのST5からST8は、干渉判定工程(ST4)による判定結果に基づいて、当該部品Dを処理する判定後処理工程となる。判定後処理工程では、当該部品Dが隣接部品に干渉しないと判定された場合(ST4においてNo)、当該部品Dが実装位置S1に搭載される。また、判定後処理工程では、干渉判定工程(ST4)において当該部品Dが隣接部品に干渉すると判定された場合(Yes)、他の実装位置Sに搭載可能と判定されると(ST6においてYes)当該部品Dが他の実装位置Sに搭載され(ST7)、他に搭載可能な実装位置Sがない場合は(ST6においてNo)当該部品Dが廃棄部14に廃棄される(ST8)。
【0047】
すなわち、干渉判定工程(ST4)において当該部品Dが隣接部品に干渉すると判断された場合(Yes)、判定後処理工程において当該部品Dが当初予定の実装位置S1に搭載されない(ST7、ST8)。これによって、基板3に搭載した部品DがはんだQを融解させた後に隣接部品に干渉することを防止することができ、下面電極部品(部品D)を実装した実装基板の品質を向上することができる。
【0048】
上記説明したように、本実施の形態の部品実装装置1は、実装位置S1に搭載される部品Dの外形に対する電極Eの位置のずれ方向とずれ量(電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe))に基づいて、当該部品Dを実装位置S1に搭載してはんだQを融解させた場合に、当該部品Dが隣接部品(チップ部品P1,P2)に干渉するか否かを判定する干渉判定手段27(部品認識カメラ13、認識処理部21、干渉判定処理部22)を備えている。そして、部品搭載手段11は、干渉判定手段27によって当該部品Dが隣接部品に干渉すると判断された場合に、当該部品Dを実装位置S1に搭載しない。これによって、基板3に搭載した部品DがはんだQを融解させた後に隣接部品に干渉することを防止することができ、下面電極部品(部品D)を実装した実装基板の品質を向上することができる。
【0049】
なお、上記の説明では、部品Dをトレイ6から取り出した後に部品Dの電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)を部品認識カメラ13(撮像部)と認識処理部21(処理部)で算出しているが、実施の形態はこれに限定されることはない。例えば、部品Dをトレイ6やキャリアテープに格納する前に部品Dの電極Eの位置ずれ(ΔXe,ΔYe)を計測して、各部品Dに関連付けて位置ずれ情報記憶部26に記憶させ、トレイ6から取り出した部品Dを基板3に搭載する前に位置ずれ情報記憶部26から読み出して干渉判定を実行するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の部品実装装置および実装基板の製造方法は、下面電極部品を実装した実装基板の品質を向上することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 部品実装装置
3 基板
11 部品搭載手段
13 部品認識カメラ(撮像部)
D 部品
E 電極
Gx、Gy 間隔
L、L1、L2、L3 ランド
Q はんだ
S、S1、S2、S3 実装位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9