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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ガスメータ及びメータ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 3/22 20060101AFI20230519BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20230519BHJP
【FI】
G01F3/22 D
G01F3/22 B
G01F1/00 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019100942
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193924
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横畑 光男
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F 15/00-15/18
F23K 5/00- 5/22
F23N 1/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、
ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、
過去のガスの使用状況に応じて前記適正条件を更新し、更新後の前記適正条件を前記記憶部に記憶する条件更新部と、
前記流量測定部により測定されたガスの流量が最新の前記適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、
前記第1適合性判定部により前記新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、前記新適正条件に更新される1つ前の前記適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、
前記第2適合性判定部により前記旧適正条件に合致しないと判定された場合に、所定の信号を外部へ送信する信号送信部と、
を備える、ガスメータ。
【請求項2】
前記流量測定部によるガスの流量の測定値に基づいて、前記流路に接続されるガス器具を識別する器具識別部を更に備え、
前記流量測定部は、前記器具識別部により識別された前記ガス器具ごとに、当該ガス器具の使用に基づくガスの流量を測定し、
前記条件更新部は、過去のガスの使用状況に加え、前記流路に接続された前記ガス器具に応じて、前記適正条件を更新する、
請求項1に記載のガスメータ。
【請求項3】
前記流量測定部により計測されたガスの流量について、前記第1適合性判定部により前記新適正条件に合致すると判定され、かつ、前記第2適合性判定部により前記旧適正条件に合致しないと判定された回数(以下、「点検回避数」)をカウントする計数部を更に備え、
前記信号送信部により外部へ送信される信号には、前記点検回避数に関する情報が含まれる、
請求項1又は2に記載のガスメータ。
【請求項4】
複数のガス需要者宅のそれぞれに設けられたガスメータと、複数の前記ガスメータとの間で第1通信回線を介して接続されたメータ管理装置と、を備え、
前記ガスメータは、
流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、
ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、
過去のガスの使用状況に応じて前記適正条件を更新し、更新後の前記適正条件を前記記憶部に記憶する条件更新部と、
前記流量測定部により測定されたガスの流量が最新の前記適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、
前記第1適合性判定部により前記新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、前記新適正条件に更新される1つ前の前記適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、
前記第2適合性判定部により前記旧適正条件に合致しないと判定された場合に、前記第1通信回線を介して所定の信号を前記メータ管理装置へ送信する信号送信部と、を有し、
前記メータ管理装置は、
前記第1通信回線を介して前記ガスメータから受信した前記信号を、各前記ガスメータを設置した事業者別に集計すると共に、集計した情報を出力する集計出力部を有する、
メータ管理システム。
【請求項5】
前記ガスメータは、
前記流量測定部により計測されたガスの流量について、前記第1適合性判定部により前記新適正条件に合致すると判定され、かつ、前記第2適合性判定部により前記旧適正条件に合致しないと判定された回数(以下、「点検回避数」)をカウントする計数部を更に有し、
前記信号送信部により外部へ送信される信号には、前記点検回避数に関する情報が含まれ、
前記メータ管理装置が有する集計出力部は、前記点検回避数に所定の点検コストを乗じて得られる金額を前記事業者別に出力する、
請求項4に記載のメータ管理システム。
【請求項6】
前記メータ管理装置との間で第2通信回線を介して接続された携帯型端末を更に備え、
前記メータ管理装置は、前記集計出力部が出力する情報を前記第2通信回線を介して前記携帯型端末へ送信する情報送信部を更に有し、
前記携帯型端末は、前記第2通信回線を介して前記メータ管理装置から受信した前記情報を出力する情報出力部を有する、
請求項4又は5に記載のメータ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給源から流路を介してガス器具へ供給されるガスの流量を計測し、計測値に基づいてガスの流量の適正を判定するガスメータ、及び、このガスメータを有するメータ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス供給システムは、液化プロパンガス等の燃料用ガスを、配管を通じて各家庭のガス器具に供給している。このようなガス供給システムでは、各家庭に通じる配管にガスメータが設けられ、ガスの流量が測定される。測定される流量値は、ガス使用量に応じた課金計算のために用いられる他、ガス供給経路上の異常(ガス漏洩等)を検知し、異常を検知した場合にはガスの通流を遮断するためにも用いられる。
【0003】
流量値から異常を検知するためには、流量に対して閾値を設定する必要があるが、ガスの使用量は1年を通じて季節に応じて異なるのが通常である。例えば、夏季に比べて秋季や冬季は一般的に給湯量が増すため、ガスの使用量が大幅に増加する傾向がある。そのため、夏季のガス使用量に応じて閾値を設定すると、秋季や冬季に入って給湯量が増すと異常と判定(誤判定)されてしまう場合がある。
【0004】
そこで特許文献1には、ガスの適正な使用を示す条件(適正使用条件)を、適宜のタイミングで再設定するガス遮断装置が開示されている。これによれば、季節の変わり目などにガスの使用量が急激に変化した場合であっても、誤判定による遮断が生じるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-203507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載されたようなガス遮断装置は、ガスの誤遮断を防止する上で非常に有益であるものの、ガスメータの管理業者において、その有益性を把握しづらい。すなわち、ガスの遮断が生じていない場合に、それが、適切に適正使用条件が再設定された結果としてガスの誤遮断が回避されているのか、あるいは、単に異常が生じていないからなのか、の判別ができない。そのため、特許文献1のガス遮断装置は、誤遮断の回避により不要な現場出動及び点検作業を削減できるにもかかわらず、その有益性が認知されにくいゆえ、各家庭への設置が普及しづらくなっている。
【0007】
そこで本発明は、上述したような事情を鑑み、ガスメータの管理業者において、ガスの誤遮断の回避実績を容易に把握することができるガスメータと、これを備えるメータ管理システムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスメータは、流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、過去のガスの使用状況に応じて適正条件を更新し、更新後の適正条件を記憶部に記憶する条件更新部と、流量測定部により測定されたガスの流量が最新の適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、新適正条件に更新される1つ前の適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された場合に、所定の信号を外部へ送信する信号送信部と、を備える。
【0009】
また、本発明に係るメータ管理システムは、複数のガス需要者宅のそれぞれに設けられたガスメータと、複数のガスメータとの間で第1通信回線を介して接続されたメータ管理装置と、を備え、ガスメータは、流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、過去のガスの使用状況に応じて適正条件を更新し、更新後の適正条件を記憶部に記憶する条件更新部と、流量測定部により測定されたガスの流量が最新の適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、新適正条件に更新される1つ前の適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された場合に、第1通信回線を介して所定の信号をメータ管理装置へ送信する信号送信部と、を有し、メータ管理装置は、第1通信回線を介してガスメータから受信した信号を、各ガスメータを設置した事業者別に集計すると共に、集計した情報を出力する集計出力部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスメータの管理業者において、ガスの誤遮断の回避実績を容易に把握することができるガスメータと、これを備えるメータ管理システムとを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るメータ管理システムを示す模式図である。
図2】実施の形態1に係るガスメータ及びメータ管理装置の各構成を示すブロック図である。
図3】適正条件の更新態様を説明するための模式的なグラフである。
図4】実施の形態2に係るガスメータ及びメータ管理装置の各構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態3に係るガスメータ及びメータ管理装置の各構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態4に係るガスメータ、メータ管理装置、及び携帯型端末の各構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明に係るガスメータは、流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、過去のガスの使用状況に応じて適正条件を更新し、更新後の適正条件を記憶部に記憶する条件更新部と、流量測定部により測定されたガスの流量が最新の適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、新適正条件に更新される1つ前の適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された場合に、所定の信号を外部へ送信する信号送信部と、を備えている。
【0013】
この構成により、旧適正条件に合致しないが新適正条件には合致する場合、すなわち、適正条件を更新することでガスの誤遮断等を回避することができた場合に、ガスメータを管理する事業者等へその状況を知らせることができる。よって、事業者において、ガスの誤遮断の回避実績を容易に把握することができる。また、これにより適正条件を更新可能なガスメータの有益性が認知されやすくなり、各家庭への普及が期待できるようになる。
【0014】
第2の発明に係るガスメータは、第1の発明において、流量測定部によるガスの流量の測定値に基づいて、流路に接続されるガス器具を識別する器具識別部を更に備え、流量測定部は、器具識別部により識別されたガス器具ごとに、ガス器具の使用に基づくガスの流量を測定し、条件更新部は、過去のガスの使用状況に加え、流路に接続されたガス器具に応じて、適正条件を更新する構成であってもよい。
【0015】
この構成により、ガス器具の種類に応じた適正条件を設定し、更新することができるため、より正確な誤遮断防止が可能であり、誤遮断の回避実績を高めることができる。
【0016】
第3の発明に係るガスメータは、第1又は第2の発明において、流量計測部により計測されたガスの流量について、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定され、かつ、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された回数(以下、「点検回避数」)をカウントする計数部を更に備え、信号送信部により外部へ送信される信号には、点検回避数に関する情報が含まれる構成であってもよい。
【0017】
この構成により、ガスメータの管理事業者等に対して、誤遮断の回避実績をより具体的に分かりやすく提示することができる。
【0018】
第4の発明に係るメータ管理システムは、複数のガス需要者宅のそれぞれに設けられたガスメータと、複数の前記ガスメータとの間で第1通信回線を介して接続されたメータ管理装置と、を備え、ガスメータは、流路内のガスの流量を測定する流量測定部と、ガスの流量に関する適正条件を記憶する記憶部と、過去のガスの使用状況に応じて適正条件を更新し、更新後の適正条件を記憶部に記憶する条件更新部と、流量測定部により測定されたガスの流量が最新の適正条件(以下、「新適正条件」)に合致するか否かを判定する第1適合性判定部と、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、新適正条件に更新される1つ前の適正条件(以下、「旧適正条件」)に合致するか否かを判定する第2適合性判定部と、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された場合に、第1通信回線を介して所定の信号をメータ管理装置へ送信する信号送信部と、を有し、メータ管理装置は、第1通信回線を介してガスメータから受信した信号を、各ガスメータを設置した事業者別に集計すると共に、集計した情報を出力する集計出力部を有している。
【0019】
この構成により、メータ管理システムにおいて複数の事業者が扱うガスメータを管理する場合に、事業者ごとに、誤遮断の回避実績等を集計して提示することができ、事業者において誤遮断の回避実績を把握しやすくなる。
【0020】
第5の発明に係るメータ管理システムは、第4の発明において、ガスメータは、流量計測部により計測されたガスの流量について、第1適合性判定部により新適正条件に合致すると判定され、かつ、第2適合性判定部により旧適正条件に合致しないと判定された回数(以下、「点検回避数」)をカウントする計数部を更に有し、信号出力部により外部へ送信される信号には、点検回避数に関する情報が含まれ、メータ管理装置が有する集計出力部は、点検回避数に所定の点検コストを乗じて得られる金額を事業者別に出力する構成であってもよい。
【0021】
この構成により、ガスメータの管理事業者等に対して、誤遮断の回避実績を、負担せずに済んだ点検コストという具体的な情報により、提示することができる。
【0022】
第6の発明に係るメータ管理システムは、第4又は第5の発明において、メータ管理装置との間で第2通信回線を介して接続された携帯型端末を更に備え、メータ管理装置は、集計出力部が出力する情報を第2通信回線を介して携帯型端末へ送信する情報送信部を更に有し、携帯型端末は、第2通信回線を介してメータ管理装置から受信した情報を出力する情報出力部を有する構成であってもよい。
【0023】
この構成により、ガスメータの管理事業者における従業員等が所持する携帯型端末にて、誤遮断の回避実績等に関する情報を表示等することができる。
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るメータ管理システムを示す模式図である。メータ管理システム100は、ガスメータ2,3と、これらガスメータ2,3を管理するメータ管理装置4と、ガスメータ2,3を設置したりメンテナンスしたりする事業者が有する携帯型端末5とを備えている。
【0026】
ガスメータ2,3は、各家庭などの需要者宅1に供給されるガスの流量を測定すると共に、何らかの異常を検知したときにはガスの供給路を遮断するなどの対応措置を実行する。メータ管理装置4は、個々のガスメータ2,3との間で第1通信回線101を介して接続され、ガスメータ2,3の検針を行う他、ガスメータ2,3の状態に関する様々の情報を取得したり、ガスメータ2,3に対して遮断解除等の制御信号を送信したりする。携帯型端末5は、メータ管理装置4との間でインターネット等の第2通信回線102を介して接続され、メータ管理装置4から提供された情報を出力(表示等)する。
【0027】
各ガスメータ2,3は、設置されている地域あるいは需要者の任意の契約により、その設置やメンテナンスを担う事業者が異なり得る。図1の例では、ガスメータ2,3のそれぞれが、3つの事業者X,Y,Zの何れかにより管理されている。
【0028】
また、ガスメータ2は、本発明に係るガスメータの一例であり、ガス供給路の誤遮断を抑制するために異常判定に用いる適正条件を適宜更新する機能を有している(詳しくは後述する)。一方、ガスメータ3は、このような機能を有していない。従って、ガスメータ2はガスメータ3よりも相対的に異常検知の精度が高く、誤遮断の発生頻度は低い。なお、図1の例では、事業者Xはガスメータ2を1つとガスメータ3を2つ管理しており、事業者Yはガスメータ2を2つとガスメータ3を1つ管理しており、事業者Zはガスメータ2のみ3つ管理している。
【0029】
図2は、実施の形態1に係るガスメータ2及びメータ管理装置4の各構成を示すブロック図である。ガスメータ2は、需要者宅1へ敷設されたガス供給管から成る流路10の途中に設けられ、流量測定部11、記憶部12、条件更新部13、第1適合性判定部14、第2適合性判定部15、信号送信部16、及び遮断部17等を備えている。
【0030】
流量測定部11は、流路10内のガスの流量を測定するものであり、超音波式あるいは膜式など、公知の何れの測定方式によるものであってもよい。記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、ガスの流量に関する適正条件を記憶する。そのために、例えばROMには初期条件記憶部12Aとしての領域が設定され、RAMには新適正条件記憶部12B及び旧適正条件記憶部12Cとしての各領域が設定されている。
【0031】
条件更新部13は、当該ガスメータ2を通じた過去のガスの使用状況に応じて適正条件を適宜更新し、更新後の適正条件を記憶部12に記憶する。本実施の形態では、適正条件を更新するタイミングを計るために、条件更新部13が一例としてタイマー部13Aを有している。従って、タイマー部13Aにより設定された時期(例えば、夏季から秋季へ移り変わる所定の日時)が到来すると、適正条件の更新が実行される。
【0032】
なお、以下では最新の適正条件(現在の適正条件)を「新適正条件」と称し、新適正条件に更新される1つ前の適正条件を「旧適正条件」と称する。従って、適正条件の更新が行われるたびに、新たに設定された新適正条件は記憶部12の新適正条件記憶部12Bに記憶され、更新により旧適正条件となった適正条件(更新前に新適正条件であった適正条件)は記憶部12の旧適正条件記憶部12Cに記憶される。
【0033】
第1適合性判定部14は、流量測定部11により測定されたガスの流量が新適正条件に合致するか否かを判定する。本実施の形態では、新適正条件に合致しないと判定された場合には、遮断部17が駆動して流路10を遮断すると共に、信号送信部16から第1通信回線101を介して異常検知を示す信号(異常検知信号)をメータ管理装置4へ送信する。なお、流路10の遮断に替えて、あるいは、流路10の遮断に加えて、新適正条件に合致しない旨の報知をするなど、他の動作を実行するようにしてもよい。
【0034】
第2適合性判定部15は、第1適合性判定部14により新適正条件に合致すると判定されたガスの流量が、旧適正条件に合致するか否かを判定する。ここで、第2適合性判定部による「旧適正条件に合致せず」との判定は、換言すれば、前回の適正条件の更新により不要な流路10の遮断(誤遮断)が回避されたことを意味する。そして、信号送信部16は、第2適合性判定部により「旧適正条件に合致せず」と判定された場合に、所定の信号を外部へ送信する。本実施の形態では、信号送信部16は、所定の信号として、誤遮断が回避されたことを示す信号(誤遮断回避信号)を、第1通信回線101を介してメータ管理装置4へ送信する。
【0035】
なお、ガスメータ2の構成のうち上述した条件更新部13、第1適合性判定部14、第2適合性判定部15、及び信号送信部16は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを記憶したメモリとを含むマイクロコントローラや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などにより、実現される。
【0036】
一方、ガスメータ3は、上述したように異常判定に用いる適正条件を更新する機能を有していない。その他の構成は特に制限されないが、例えば、ガスメータ2から新適正条件記憶部12B、旧適正条件記憶部12C、条件更新部13、及び第2適合性判定部15を省いた構成を例示することができる。なお、メータ管理システム100において、このガスメータ3は必須ではない。
【0037】
メータ管理装置4は、信号受信部20及び集計出力部21を備えている。信号受信部20は、第1通信回線101を介してガスメータ2,3から送信されてきた様々の信号(検針情報を含む信号、異常検知信号、及び誤遮断回避信号など)を受信する。集計出力部21は、ガスメータ2から受信した誤遮断回避信号を、ガスメータ2を設置した事業者別(例えば、図1の事業者X,Y,Zごと)に集計すると共に、集計した情報を出力する。この集計出力部21としては、集計情報を表示するディスプレイや、紙面に印字するプリンタなどが採用される。なお、図示しないが、メータ管理装置4は各ガスメータ2,3へ流路10の遮断を解除すべき旨の制御信号を送信するための信号送信部など、他の構成を備えていてもよい。
【0038】
[システムの動作]
次に、上述したメータ管理システム100の動作について説明する。
【0039】
ガスメータ2は、需要者宅1でのガス需要により流路10をガスが通流すると、流量測定部11にてその流量を測定する。記憶部12の初期条件記憶部12Aには、ガスの流量の適正条件に関する情報が記憶されており、第1適合性判定部14は、測定された流量と適正条件とを比較して、異常有無の判別を行う。異常判別の方法は特に限定されないが、例えば、適正条件として、単位期間(例:1日)当たりの流量や、流量の変化量(増加量)に関する閾値が設定され、何れかを超える場合には異常と判定し、何れも超えない場合は正常と判定する。
【0040】
第1適合性判定部14にて正常と判定されている間は、流量の測定と異常判別とを継続する。一方、測定した流量について第1適合性判定部14にて異常と判定された場合は、例えば、遮断部17を駆動して流路10内のガスの通流を遮断すると共に、メータ管理装置4へ、第1通信回線101を介して異常検知信号を送信する。なお、異常検知信号は、異常が判定されたガスメータ2の識別情報と共にメータ管理装置4へ送られる。メータ管理装置4は、この異常検知信号を受信すると、付随の識別情報に基づいて特定されるガスメータ2を管理する事業者へ、異常検知を知らせる。その結果、当該事業者は、対応するガスメータ2の設置宅へ出向き、点検を行う。
【0041】
[適正条件の更新処理]
ここで、本実施の形態に係るガスメータ2は、誤遮断を抑制するために適正条件を更新する構成を備えている。以下、適正条件の更新方法について、単位期間当たりの流量に関する適正条件を例にして説明する。
【0042】
図3は、適正条件の更新態様を説明するための模式的なグラフである。このグラフの横軸は経過時間を示し、縦軸はガスの流量を示している。また、グラフ中の黒塗りの四角の点は、流量測定部11により測定された流量値をプロットしたものである。
【0043】
はじめに、需要者宅1にガスメータ2の設置が完了し、時間T1に駆動開始したものとする。駆動開始の当初は、流量に関する適正条件として、初期条件記憶部12Aに記憶されている初期条件が設定されており、本実施の形態では、ガスメータ2のスペック上の上限値M1が初期条件とされている。ガスメータ2の条件更新部13は、時間T1から一定の期間Tx(例えば、1週間)、流量測定部11により測定される流量を取得し、その間に測定された最大の流量P1を取得する。
【0044】
条件更新部13は、期間Txを経過した時間T2に、流量P1に所定の係数を乗じた流量M2を、新たな適正条件として決定する。すなわち、初期条件の流量M1に替わる新適正条件として流量M2を設定し、これを記憶部12の新適正条件記憶部12Bに記憶する。従って、時間T2以降、第1適合性判定部14は、この新適正条件(流量M2)に基づいて流量の異常判定を行う。例えば、新適正条件の流量M2を超える流量が測定された場合は、第1適合性判定部14は異常と判定する。
【0045】
条件更新部13は、タイマー部13Aにより時間T3の到来を知ると、適正条件の更新処理を開始する。この時間T3は、例えば、夏季から秋季への変わり目など、季節の変わり目に該当する時期(月日)である。
【0046】
適正条件の更新処理では、はじめに、現在の適正条件(流量M2)を一旦初期条件(流量M1)に切り替える。次に、一定の期間Tx(例えば、1週間)、流量測定部11により測定される流量を取得し、その間に測定された最大の流量P2を取得する。そして、期間Txを経過した時間T4に、流量P2に所定の係数を乗じた流量M3を、新たな適正条件として決定する。すなわち、前回の適正条件(流量M2)に替わる新適正条件として流量M3を設定する。また、前回の適正条件(流量M2)を旧適正条件として旧適正条件記憶部12Cに記憶し、更新後の新適正条件(流量M3)を新適正条件記憶部12Bに記憶する。
【0047】
このように、更新処理では、タイマー部13Aにより設定された適宜の時期に、その時期のガス需要に応じた適正条件への更新が行われる。また、これ以降も、タイマー部13Aにより設定された適宜の時期が到来するたびに、同様の手順にて適正条件の更新が行われる。そのため、本実施の形態に係るガスメータ2は流路10の誤遮断を抑制することができる。
【0048】
例えば、図3の例では、更新処理を終えた時間T5に比較的大きな流量P3が測定されているが、これは、夏季から秋季への時間の経過に応じたガス需要の増加に伴うものであって異常ではない。そして、この流量P3は、更新前の旧適正条件には合致しない(流量M2を超えるので異常と判定される)が、更新後の新適正条件には合致する(流量M3以下であるので正常と判定される)。すなわち、適正条件の更新により、流路10の不要な遮断(誤遮断)を回避することができる。
【0049】
[誤遮断回避の報知]
ところで、ガスメータ2は、上述したような誤遮断の回避があった場合、その旨を示す誤遮断回避信号をメータ管理装置4へ送信する。より具体的に説明すると、ガスメータ2では、流量測定部11が流量を測定し、その流量に対して第1適合性判定部14が新適正条件に基づいて正常と判定すると、同じ流量に対して第2適合性判定部15が旧適正条件に基づいて異常判定を行う。その結果、異常と判定された場合は、誤遮断が回避されたとみなし、信号送信部16を介して誤遮断回避信号をメータ管理装置4へ送信する。
【0050】
メータ管理装置4は、信号受信部20を介して誤遮断回避信号を受信する。そして、この信号を、集計出力部21にて事業者別に集計して集計情報を生成し、集計情報を出力(表示又は印刷等)する。
【0051】
以上に説明したメータ管理システム100によれば、ガスの遮断が生じていない場合に、単に異常が生じていないからなのか、あるいは、適正条件の更新により誤遮断が回避された結果なのか、を誤遮断回避信号に基づいて把握することができる。そのため、ガスメータ2,3を管理する事業者は、ガスメータ2の有用性を理解することができ、各需要者宅1への普及(例えば、ガスメータ3からガスメータ2への切り替え)を促進することができる。
【0052】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係るメータ管理システム100Aを構成する、ガスメータ2A及びメータ管理装置4Aの各構成を示すブロック図である。図4に示すガスメータ2Aは、図2に示したガスメータ2と比べて器具識別部18を更に備える点が異なり、その他は同様の構成を備えている。また、図4に示すメータ管理装置4Aは、図2に示したメータ管理装置4と同じ構成を備えている。
【0053】
ガスメータ2Aが備える器具識別部18は、流量測定部11が測定した流量を、所定の周期で逐次取得し、取得した測定値の特徴に基づいて流路10に接続されているガス器具を識別する。ここで、流量からガス器具を識別する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、所定時間の始期と終期との流量差、及び、この所定時間中の流量変化率などに基づき、特定のガス器具であるか否かを識別する方法であってもよい。
【0054】
流量測定部11は、器具識別部18により識別されたガス器具ごとに、当該ガス器具の使用に基づく流量を測定し、測定値を出力することができる。この場合、条件更新部13は、過去のガスの使用状況に加え、ガス器具に応じて、第1適合性判定部14及び第2適合性判定部15での各判定に用いる適正条件を更新し、更新された適正条件は記憶部12に記憶される。
【0055】
条件更新部13が、識別したガス器具に応じて適正条件を更新する方法は特に限定されない。例えば、あるガス器具の季節ごとのガス消費量の違いに基づき、過去の流量から適正条件を算出する際の係数を異ならせてもよいし、ガス器具ごとに適正条件を設定するようにしてもよい。これによりガスメータ2Aは、誤遮断をより高い精度で回避することができる。
【0056】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係るメータ管理システム100Bが備える、ガスメータ2B及びメータ管理装置4Bの各構成を示すブロック図である。図5に示すガスメータ2Bは、図4に示したガスメータ2Aに比べて計数部19を更に備える点が異なり、その他は同様の構成を備えている。また、図5に示すメータ管理装置4Bは、図4に示したメータ管理装置4Aと同じ構成を備えている。
【0057】
ガスメータ2Bが備える計数部19は、第2適合性判定部15にて「合致せず」と判定された回数を取得してカウントする。換言すれば、流量計測部11にて計測されたガスの流量について、第1適合性判定部14により新適正条件に合致すると判定され、かつ、第2適合性判定部15により旧適正条件に合致しないと判定された回数(以下、「点検回避数」)をカウントする。そして、計数部19がカウントした点検回避数に関する情報は、信号送信部16を介してメータ管理装置4Bへ送信される。
【0058】
メータ管理装置4Bは、点検回避数に関する情報を受信すると、集計出力部21により、この情報を事業者別に集計して集計情報を生成し、集計情報を出力(表示又は印刷等)する。これにより、ガスメータ2Bを採用したメータ管理システム100Bでは、各事業者において、適正条件の更新により誤遮断が回避されたことに加え、そのような誤遮断が回避された回数も、容易に把握することができる。
【0059】
また、メータ管理装置4Bの集計出力部21は、点検回避数に所定の点検コストを乗じて得られる金額を、事業者別に出力することも可能である。これにより、各事業者は、ガスメータ2Bの採用により誤遮断の回数が低減したことに伴って削減できた点検費用を具体的に把握することができる。なお、本実施の形態に係るガスメータ2Bにおいて、器具識別部18は必須ではない。
【0060】
(実施の形態4)
図6は、実施の形態4に係るメータ管理システム100Cを構成する、ガスメータ2C、メータ管理装置4C、及び携帯型端末5Cの各構成を示すブロック図である。図6に示すメータ管理システム100Cが備えるメータ管理装置4Cは、図5に示したメータ管理装置4Bに比べて情報送信部22を更に備える点が異なり、その他は同様の構成を備えている。また、図6のメータ管理システム100Cは、メータ管理装置4Cとの間で第2通信回線102を介して接続される携帯型端末5Cを備える点で、図5のメータ管理システム100Bと異なる。なお、図6のガスメータ2Cは図5のガスメータ2Bと同じ構成を備えている。
【0061】
メータ管理装置4Cが備える情報送信部22は、集計出力部21が出力する情報(集計情報)を、第2通信回線102を介して携帯型端末5Cへ送信する。
【0062】
携帯型端末5Cは、情報出力部30及び情報受信部31を備えている。このうち情報受信部31は、メータ管理装置4Cから第2通信回線102を介して送信された集計情報を受信する。情報出力装置30は、情報受信部31にて受信した集計情報を出力(表示又は印刷等)する。
【0063】
これにより、ガスメータ2C,3を管理する事業者は、その従業員等が所持する携帯型端末5Cにて、誤遮断の回避実績等に関する情報を表示させ、従業員等において直接確認させることができる。従って、ガスメータ2Cを設置した需要者宅1において、誤遮断回避のデモンストレーションを実施し、その効果を需要者に容易に理解してもらうことも可能となる。なお、本実施の形態に係るガスメータ2Cにおいて、器具識別部18及び係数部19は何れも必須ではなく、両方とも備えていなくてもよいし、いずれか一方だけ備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、ガス供給源から流路を介してガス器具へ供給されるガスの流量を計測し、計測値に基づいてガスの流量の適正を判定するガスメータ、及び、このガスメータを有するメータ管理システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 需要者宅
2 ガスメータ
3 ガスメータ
4 メータ管理装置
5 携帯型端末
10 流路
11 流量測定部
12 記憶部
13 条件更新部
14 第1適合性判定部
15 第2適合性判定部
16 信号送信部
17 遮断部
18 器具識別部
19 係数部
20 信号受信部
21 集計出力部
22 情報送信部
30 情報出力部
31 情報受信部
100 メータ管理システム
101 第1通信回線
102 第2通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6