(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019156468
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】北野 博史
(72)【発明者】
【氏名】高平 宜幸
(72)【発明者】
【氏名】河地 秀治
(72)【発明者】
【氏名】北岡 信一
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538568(JP,A)
【文献】特開2004-205970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0038120(US,A1)
【文献】特開2016-099577(JP,A)
【文献】特開2008-026698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出力する光源素子と、
前記レーザー光が導入される光ファイバモジュールと、
前記光ファイバモジュールによって導光された前記レーザー光を異なる波長の光に変換して放射する波長変換部と、
を備え、
前記光ファイバモジュールは、
ガラス成分を含む光ファイバと、
前記光ファイバの端部における外周面を覆う筒状のフェルールと、を備え、
前記光ファイバの前記外周面と前記フェルールの内周面とは、架橋点にシロキサン結合が含まれるシリコーン樹脂によって接着さ
れ、
前記光ファイバおよび前記シリコーン樹脂は、前記光ファイバモジュールに前記レーザー光が導入される際に、前記レーザー光が照射される
照明装置。
【請求項2】
さらに、前記光ファイバの端面に前記レーザー光を集光する結合レンズを備える、
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
さらに、前記波長変換部にて放射された光のうち、前記光ファイバモジュールを経由して戻る光を検出する戻り光センサを備える、
請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記レーザー光の波長は、430nm以上490nm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂の架橋点は、シロキサン結合のみで構成されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂は、主鎖に炭素-炭素結合を含まない、
請求項1~5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光ファイバおよび前記フェルールは、同一平面上に位置する端面を有している、
請求項1~6のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを備える光ファイバモジュール、この光ファイバモジュールを備える照明装置、および、光ファイバモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源素子から出力されたレーザー光を導光する光ファイバを備える光ファイバモジュールが知られている。この種の光ファイバモジュールの一例として、特許文献1には、光ファイバと、光ファイバの端部が挿入された筒状のフェルールとを備える光ファイバモジュールが開示されている。この特許文献1には、光ファイバがエポキシ系接着剤を用いてフェルール内に固着されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバモジュールでは、光源素子から出力されたレーザー光を光ファイバの端面に照射することでレーザー光を光ファイバに導入するが、レーザー光を光ファイバの端面に照射する際に、光ファイバとフェルールとを接着しているエポキシ系接着剤にもレーザー光が照射されることがある。レーザー光がエポキシ系接着剤に照射されると、エポキシ系接着剤が発光するという問題がある。また、エポキシ系接着剤が発光すると、光ファイバモジュールを備える照明装置において、光ファイバの断線有無の検出精度が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、光ファイバとフェルールとを接着している接着剤が発光することを抑制できる光ファイバモジュールを備える照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る照明装置は、レーザー光を出力する光源素子と、前記レーザー光が導入される光ファイバモジュールと、前記光ファイバモジュールによって導光された前記レーザー光を異なる波長の光に変換して放射する波長変換部と、を備え、前記光ファイバモジュールは、ガラス成分を含む光ファイバと、前記光ファイバの端部における外周面を覆う筒状のフェルールと、を備え、前記光ファイバの前記外周面と前記フェルールの内周面とは、架橋点にシロキサン結合が含まれるシリコーン樹脂によって接着され、前記光ファイバおよび前記シリコーン樹脂は、前記光ファイバモジュールに前記レーザー光が導入される際に、前記レーザー光が照射される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光ファイバモジュールを備える照明装置によれば、光ファイバとフェルールとを接着している接着剤が発光することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】比較例の光ファイバモジュールを示す斜視図である。
【
図3A】照明装置の戻り光センサにて検出される戻り光のスペクトルを示す図である。
【
図3B】エポキシ樹脂単体の発光スペクトルを示す図である。
【
図4】光ファイバモジュールについて高温加速試験を行った結果を示す図である。
【
図5】光ファイバモジュールの接着剤として用いられるシリコーン樹脂を示す図である。
【
図6】光ファイバモジュールの端面の損傷の有無を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る照明装置を示す概略図である。
【
図8】実施の形態に係る光ファイバモジュールを示す斜視図である。
【
図9】実施の形態に係る光ファイバモジュールの正面図および断面図である。
【
図10】実施の形態に係る光ファイバモジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となる知見)
まず、本発明の基礎となる知見について、
図1~
図6を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、比較例の照明装置101を示す概略図である。
【0013】
比較例の照明装置101は、光源装置150と、光ファイバ素線110およびフェルール120を有する光ファイバモジュール102と、波長変換部160とを備えている。光ファイバ素線110は、光ファイバ111と、光ファイバ111を覆う被覆材112とによって構成されている。
【0014】
光源装置150は、光源素子151と、ダイクロイックミラー153と、結合レンズ154と、戻り光センサ156とを備えている。
【0015】
光源素子151から出力されたレーザー光は、ダイクロイックミラー153および結合レンズ154を介して光ファイバモジュール102に導入される。光ファイバモジュール102に導入されたレーザー光は、光ファイバ111内を通って光ファイバ111から出力され、波長変換部160に入力される。波長変換部160は、入力されたレーザー光を異なる波長の光に変換して放射する。
【0016】
戻り光センサ156は、光ファイバ111の断線有無を検出するためのセンサである。戻り光センサ156は、波長変換部160にて放射された光のうち、光ファイバモジュール102、結合レンズ154およびダイクロイックミラー153を経由して戻る戻り光を検出する。照明装置101は、この戻り光が所定範囲の強度で検出されている場合に、光ファイバ111が断線していないと判定する。
【0017】
図2は、比較例の光ファイバモジュール102を示す斜視図である。
【0018】
比較例の光ファイバモジュール102は、光ファイバ111と、光ファイバ111の端部111cにおける外周面を覆う筒状のフェルール120とを備える。光ファイバ111の外周面とフェルール120の内周面とは、エポキシ系接着剤130によって接着されている。前述したように、光源素子151から出力されたレーザー光がエポキシ系接着剤130に照射されると、エポキシ系接着剤130が発光するという問題がある。
【0019】
また、エポキシ系接着剤130が発光すると、照明装置101における光ファイバ111の断線有無の検出精度が低下する。これについて
図3Aおよび
図3Bを参照しながら説明する。
【0020】
図3Aは、照明装置の戻り光センサ156にて検出される戻り光のスペクトルを示す図である。なお、
図3Aでは、波長変換部160が照明装置に装着された状態でなく、波長変換部160を照明装置から外し、光ファイバ111が断線した状態を疑似的に作り出したときの戻り光のスペクトルを示している。
【0021】
同図に示すように、戻り光は、光源素子151から出力されたレーザー光が、光ファイバ111のコアに到達し発光して戻ってくる光L1と、フェルール120に到達し発光して戻ってくる光L2と、光ファイバ111とフェルール120との間に存在するエポキシ系接着剤130に到達し発光して戻ってくる光L3とを含んでいる。この戻り光のスペクトルにおいて、光ファイバ111およびフェルール120から戻る光L1、L2のそれぞれは、急峻で鋭い波形となって表れるが、エポキシ系接着剤130から戻る光L3は、波長500nm以上700nm以下の範囲にわたり、強度が低くブロードな波形となって表れる。
【0022】
図3Bは、エポキシ樹脂単体の発光スペクトルを示す図である。同図に示すように、エポキシ樹脂単体の発光スペクトルは、波長500nm以上700nm以下の範囲にわたり、ブロードな波形を有している。
【0023】
光源素子151から出力されたレーザー光の大部分は、光ファイバ111の端面111bに照射される。しかしながらレーザー光の残りの一部、具体的にはレーザー光を光強度分布で見たときのレーザー光のすそ野部分は、光ファイバ111の外周に位置するエポキシ系接着剤130にも照射される。そのためエポキシ系接着剤130が、
図3Bに示すスペクトルで発光するという現象が起きる。
図3Bに示すエポキシ樹脂単体の発光スペクトルは、波長変換部160から戻る光のスペクトル(波長500nm~700nmが中心)と重なる領域を有しており、戻り光センサ156は、エポキシ系接着剤130による発光と波長変換部160から戻る光とを区別して検出することが困難である。そのため、比較例の照明装置101では、光ファイバ111の断線有無の検出精度が低下するという問題がある。
【0024】
これに対し発明者らは、エポキシ系接着剤130の代わりに、シリコーン樹脂接着剤を用いることで、接着剤の発光を抑制できることを確認した。
【0025】
図4は、光ファイバモジュールについて高温加速試験を行った結果を示す図である。
図4の横軸は、光ファイバモジュールの高温保存累積時間であり、
図4の縦軸は、戻り光センサの出力電圧である。なお、
図4では、波長変換部160が照明装置に装着された状態でなく、波長変換部160を照明装置から外した状態で、戻り光センサの出力電圧を測定した。
【0026】
この試験では、光ファイバとフェルールとを接着する接着剤として、エポキシA、B、C、Dからなる4種類のエポキシ系接着剤を準備した。そして、エポキシA、Cを用いた光ファイバモジュールについて150℃の加速試験を行い、エポキシB、Dを用いた光ファイバモジュールについて180℃の加速試験を行った。また、シリコーン樹脂接着剤を用いた光ファイバモジュールについても180℃の加速試験を行った。
【0027】
図4に示すように、エポキシ系接着剤を用いた光ファイバモジュールでは、エポキシの品種に関わらず、高温保存累積時間が長くなると戻り光センサの出力電圧が大きくなっている。それに対し、シリコーン樹脂接着剤を用いた光ファイバモジュールでは、高温保存累積時間が長くなっても戻り光センサの出力電圧に大きな変化は生じていない。これは、エポキシ樹脂よりもシリコーン樹脂のほうが、レーザー光に対する透過性が高いためである。また、エポキシ樹脂の場合において戻り光センサの出力電圧が時間ともに大きくなるのは、エポキシ樹脂は、高温環境下に晒されると着色が進行し、レーザー光の吸収性が増して発光強度が増加するからである。
【0028】
このように、光ファイバとフェルールとがシリコーン樹脂によって接着されていることで、レーザー光が照射された場合であってもシリコーン樹脂はレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂が発光することを抑制できる。また、シリコーン樹脂はレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂の温度が必要以上に上昇することを抑制できる。
【0029】
また、発明者らは、幾種類もあるシリコーン樹脂のうち、架橋点にシロキサン結合を含むシリコーン樹脂によって光ファイバとフェルールとを接着することで、フェルールに対する光ファイバの固着強度を高めることができることを確認した。
【0030】
図5は、光ファイバモジュールの接着剤として用いられるシリコーン樹脂を示す図である。
図5の(a)は比較例であり、
図5の(b)は本発明に対応する実施例である。
【0031】
比較例のシリコーン樹脂は、架橋反応前にポリマー炭素を有し、架橋反応後において架橋点に炭素-炭素結合(C-C結合)を有している。それに対し、実施例のシリコーン樹脂は、架橋反応前にポリマー炭素を有しているが、架橋反応後において架橋点に炭素-炭素結合を有さず、架橋点がシロキサン結合(Si-O-Si)で構成されている。一般に、シロキサン結合のほうが炭素-炭素結合よりも結合エネルギーが高いので、実施例のシリコーン樹脂は比較例のシリコーン樹脂に比べて、耐熱性を有し、かつ、硬度すなわち機械的強度が高くなる。また、実施例のシリコーン樹脂では、比較例よりも単位体積あたりの架橋点の数が多く、主鎖の自由度が低くなる。これにより、実施例のシリコーン樹脂は比較例のシリコーン樹脂に比べて、機械的強度が高くなる。
【0032】
図6は、光ファイバモジュールの端面の損傷の有無を示す図である。
図6の(a)は比較例であり、
図6の(b)は実施例である。
【0033】
同図には、研磨機を用いて光ファイバモジュールの端面を研磨加工した後の画像が示されているが、比較例では光ファイバの端面の一部が損傷しているのに対し、実施例では光ファイバの端面が損傷していない。これは、実施例のほうが比較例に比べてシリコーン樹脂の機械的強度が高く、フェルールに対する光ファイバの固着強度が高いためであると考えられる。
【0034】
このように、光ファイバとフェルールとを接着するシリコーン樹脂として、架橋点にシロキサン結合を含むシリコーン樹脂を用いることで、光ファイバの固着強度が低下することを抑制できる。これにより、光ファイバモジュールの端面が損傷することを抑制できる。
【0035】
以下、上記知見に基づく本発明の実施の形態について、図面等を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本発明の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
【0036】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0037】
(実施の形態)
[1.照明装置の構成]
実施の形態に係る照明装置の構成について、
図7を参照しながら説明する。
【0038】
図7は、実施の形態に係る照明装置1を示す概略図である。
【0039】
照明装置1は、レーザー光の波長を変換して照明光を出射する装置である。同図に示すように、照明装置1は、レーザー光を出力する光源装置50と、光ファイバモジュール2と、波長変換部60とを備える。
【0040】
光ファイバモジュール2は、光源装置50から出力されたレーザー光を導光して、波長変換部60に出力する光伝送媒体である。光ファイバモジュール2は、ガラス成分を含む光ファイバ11と、光ファイバ11の端部11cにおける外周面を覆う筒状のフェルール20とを備える。光ファイバ11は、レーザー光が伝搬するコアと、コアの周囲に設けられたクラッドとによって構成されている。光ファイバモジュール2の端部には、光源装置50から出力されたレーザー光が照射される端面2bが形成されている。
【0041】
波長変換部60は、光ファイバモジュール2から出力されたレーザー光を異なる波長の光に変換して放射するデバイスである。波長変換部60は、励起光であるレーザー光が照射されることで蛍光し、例えば複数の波長からなる光であって全体として白色に看取される光を拡散して放射する。この放射された光が照明光となって出射される。
【0042】
光源装置50は、光源素子51と、フィルタ52と、ダイクロイックミラー53と、結合レンズ54と、フィルタ55と、戻り光センサ56とを備えている。また、光源装置50は、光源素子51、フィルタ52、ダイクロイックミラー53、結合レンズ54、フィルタ55および戻り光センサ56を収容する箱状の筐体59を備えている。
【0043】
筐体59の外壁には、フェルール20と嵌合するレセプタクル58が設けられる。光ファイバモジュール2は、このレセプタクル58を介して筐体59に着脱可能に取り付けられる。
【0044】
光源素子51は、例えば、青紫色から青色の波長(波長:430nm以上490nm以下)のレーザー光を出力する半導体レーザー素子である。
【0045】
フィルタ52は、光源素子51のレーザー発振波長の光を通過させるバンドパスフィルタである。フィルタ52は、光源素子51から出力された光のうち、青紫色から青色の波長の光を通過させる。
【0046】
ダイクロイックミラー53は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過するミラーである。ダイクロイックミラー53は、フィルタ52を通過した波長の光を反射し、波長変換部60にて放射された波長の光を透過する。
【0047】
結合レンズ54は、光ファイバモジュール2にレーザー光を導入するレンズである。結合レンズ54は、ダイクロイックミラー53と光ファイバモジュール2との間に配置されている。結合レンズ54は、ダイクロイックミラー53で反射されたレーザー光を光ファイバ11の端面に集光することで、レーザー光を光ファイバモジュール2の一端に導入する。光ファイバモジュール2に導入されたレーザー光は、光ファイバ11内を通って光ファイバ11の他端から出力され、波長変換部60に入力される。
【0048】
フィルタ55は、所定範囲の波長の光を通過させるバンドパスフィルタあるいはロングパスフィルタであり、波長変換部60にて放射された波長の光のうち、光ファイバモジュール2、結合レンズ54、ダイクロイックミラー53を経由して戻る光を通過させる。
【0049】
戻り光センサ56は、光ファイバ11の断線有無を検出するためのセンサである。戻り光センサ56は、波長変換部60にて放射された光のうち、光ファイバモジュール2からフィルタ55を経由して戻る戻り光を検出する。照明装置1は、戻り光が所定範囲の強度で検出されている場合に光ファイバ11が断線していないと判定し、戻り光が所定範囲以外の強度で検出された場合に光ファイバ11が断線していると判定するプログラム、および、プログラムを実行するCPU等で構成される処理部(図示せず)を有する。
【0050】
この照明装置1によれば、光ファイバ11等を用いて、光源装置50が配置されている場所と異なる場所に照明光を出射することができる。また、戻り光センサ56を用いて光ファイバ11の断線有無を判定することができるので、照明装置1の不具合を早期に発見することができる。
【0051】
[2.光ファイバモジュールの構成]
次に、光ファイバモジュール2の構成について
図8および
図9を参照しながら説明する。
【0052】
図8は、光ファイバモジュール2を示す斜視図である。
図9は、光ファイバモジュール2の正面図および断面図である。
【0053】
図8および
図9に示すように、光ファイバモジュール2は、光ファイバ素線10と、筒状のフェルール20とを備えている。
【0054】
光ファイバ素線10は、ガラス成分を含む光ファイバ11と、光ファイバ11を被覆する被覆材12とによって構成されている。光ファイバ11の直径は、例えば100μm以上1000μm以下である。光ファイバ11の長さは、例えば1m以上100m以下である。
【0055】
図9に示すように、光ファイバ11は、側面である外周面11aと、光ファイバ11のファイバ軸F1に垂直な端面11bとを有している。この端面11bは、光ファイバモジュール2の端面2bの一部を構成している。また、光ファイバ11は、光ファイバ11の端部11cの先端11c1において被覆材12が除去され、外周面11aがむき出しになっている。先端11c1がむき出しとなった光ファイバ11の端部11cは、フェルール20に挿入されている。なお上記では、光ファイバ11の端面11bが、ファイバ軸F1に対して垂直である例を示したが、それに限られない。例えば、端面11bは、ファイバ軸F1に対して、0°以上10°以下傾いていてもよい。
【0056】
フェルール20は、光ファイバ11の端部11cにおける外周面11aを覆っている。フェルール20は、内側の側面である内周面20aと、ファイバ軸F1に垂直な端面20bとを有している。この端面20bは、光ファイバモジュール2の端面2bの一部を構成している。フェルール20の端面20bおよび光ファイバ11の端面11bは、研磨機等によって同時に形成される研磨面であり、同一平面上に位置している。
【0057】
また、フェルール20は、フェルール本体21と、フェルール本体21が圧入されたフランジ22とを有している。
【0058】
フェルール本体21は、円筒状の部材であり、光ファイバ11よりも径が大きい貫通孔21aを有している。貫通孔21aの内周面は、フェルール20の内周面20aの一部を構成している。この貫通孔21aには、光ファイバ11の端部11cの先端11c1が挿入されている。フェルール本体21は、例えばジルコニア等のセラミック焼結体で形成されている。
【0059】
フランジ22は、鍔部を有する円筒状の部材であり、被覆材12よりも径が大きい貫通孔22aを有している。貫通孔22aの内周面は、フェルール20の内周面20aの一部を構成している。この貫通孔22aには、光ファイバ11の端部11cのうち先端11c1を除く部分、すなわち被覆材12で覆われている部分が挿入されている。フランジ22は、例えばステンレス等の金属材料で形成されている。
【0060】
なお、フェルール本体21およびフランジ22の両方がステンレスで形成されていてもよい。その場合、フェルール20は、フェルール本体21とフランジ22とがステンレスで一体化された構造となる。
【0061】
本実施の形態の光ファイバモジュール2では、光ファイバ11の外周面11aとフェルール20の内周面20aとが、架橋点に炭素-炭素結合を含まずシロキサン結合を含むシリコーン樹脂30によって接着されている。
【0062】
具体的には、光ファイバ11の端部11cの先端11c1とフェルール本体21の貫通孔21aとが、上記シリコーン樹脂30によって接着されている。また、光ファイバ11の端部11cのうち先端11c1を除く部分とフランジ22の貫通孔22aとが、上記シリコーン樹脂30によって接着されている。つまり、光ファイバ11とフェルール20との間には、上記シリコーン樹脂30からなる接着層が設けられている。接着層の厚みは、端面近傍部において、例えば10μm以下であり、この接着層は、光ファイバ11の端面11bとフェルール20の端面20bとを面一で繋ぐ端面を有している。
【0063】
このように、光ファイバ11とフェルール20とがシリコーン樹脂30によって接着されていることで、光ファイバ11とフェルール20との間に位置するシリコーン樹脂30にレーザー光が照射された場合であっても、このシリコーン樹脂30がレーザー光を吸収しにくいため、温度上昇や発光を抑制できる。また、シリコーン樹脂30が発光することを抑制できるので、照明装置1において光ファイバ11の断線有無の検出精度が低下することを抑制できる。
【0064】
また、シリコーン樹脂30が、架橋点に炭素-炭素結合を含まず、架橋点にシロキサン結合を含む樹脂によって構成されていることで、シリコーン樹脂30の耐熱性および機械的強度を向上させることができる。これにより、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度が低下することを抑制でき、例えば光ファイバ11の端面11bを研磨加工した場合に、端面11bが損傷することを抑制できる。
【0065】
[3.光ファイバモジュールの製造方法]
次に、光ファイバモジュール2の製造方法について説明する。
【0066】
図10は、光ファイバモジュール2の製造方法を示すフローチャートである。
【0067】
まず、光ファイバ11の外周面11aとフェルール20の内周面20aとの間に、ポリマー炭素を有する液状のシリコーン樹脂が充填された状態とする(ステップS11)。液状のシリコーン樹脂が充填された状態は、例えば、光ファイバ11の端部11cにおける外周面11aおよびフェルール20の内周面20aの少なくとも一方に、上記液状のシリコーン樹脂を塗布した後、光ファイバ11の端部11cをフェルール20の内周面20a内に挿入することで実現される。または、光ファイバ11の端部11cをフェルール20の内周面20a内に挿入した後、光ファイバ11の端部11cにおける外周面11aとフェルール20の内周面20aとの間に適度な粘性を有する液状のシリコーン樹脂を注入することで実現される
ポリマー炭素は、例えばCH
3CH
2OHなどのアルコキシ基であり、液状のシリコーン樹脂が熱硬化される前は、液状のシリコーン樹脂内に反応基として存在している(
図5の(b)の原料ポリマー構造を参照)。液状のシリコーン樹脂としては、例えば、小西化学工業製のポリシルセスキオキサン(SRシリーズ)を挙げることができる。
【0068】
次に、液状のシリコーン樹脂を140℃以上の温度で加熱して、架橋反応を進行させることにより、液状のシリコーン樹脂を硬化させる(ステップS12)。加熱温度は140℃以上210℃以下であることが望ましい。この加熱により、ポリマー炭素由来の架橋反応時生成物が蒸発し、シリコーン樹脂から除去される。これにより、光ファイバ11とフェルール20と接着するシリコーン樹脂30の架橋点が、シロキサン結合のみで構成されるとともに、シリコーン樹脂30の主鎖(側鎖を除く主鎖)が、炭素-炭素結合を有しない構造となる(
図5の(b)の架橋反応時生成物を参照)。なお、このシリコーン樹脂30は、縮合型シリコーン樹脂とも呼ばれる。縮合型シリコーン樹脂とは、ケイ素原子に結合した水酸基と、別のケイ素原子に結合したアルコキシ基または水酸基とを、脱アルコール反応または脱水反応させることで重縮合された樹脂である。なお上記では、液状のシリコーン樹脂を140℃以上の温度で加熱する例を示したが、140℃以上の本加熱の前に、140℃以下の予備加熱工程を設けてシリコーン樹脂の溶媒を取り除いてもよい。
【0069】
次に、光ファイバ11の端面11bおよびフェルール20の端面20bを、研磨機を用いて同時に研磨する(ステップS13)。これにより、互いの端面11b、20bが面一となる研磨面が形成される。これらのステップS11~S13によって、光ファイバモジュール2が作製される。
【0070】
このように、液状のシリコーン樹脂を加熱して硬化することで、光ファイバ11とフェルール20とを、主鎖に炭素-炭素結合を有しないシリコーン樹脂30によって接着させることができる。これにより、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度が低下することを抑制でき、ステップS13における研磨加工において光ファイバ11の端面11bが損傷することを抑制できる。
【0071】
[4.効果等]
本実施の形態の光ファイバモジュール2は、ガラス成分を含む光ファイバ11と、光ファイバ11の端部11cにおける外周面11aを覆う筒状のフェルール20と、を備える。光ファイバ11の外周面11aとフェルール20の内周面20aとは、架橋点にシロキサン結合が含まれるシリコーン樹脂30によって接着されている。
【0072】
このように、光ファイバ11とフェルール20とがシリコーン樹脂30によって接着されていることで、光ファイバ11とフェルール20との間に位置するシリコーン樹脂30にレーザー光が照射された場合であっても、このシリコーン樹脂30がレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂30が発光することを抑制できる。また、シリコーン樹脂30はレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂30の温度が必要以上に上昇することを抑制できる。
【0073】
また、シリコーン樹脂30が、架橋点にシロキサン結合を含む樹脂によって構成されていることで、シリコーン樹脂30の耐熱性および機械的強度を向上させることができる。これにより、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度が低下することを抑制でき、例えば光ファイバ11の端面11bを研磨加工した場合に、端面11bが損傷することを抑制できる。
【0074】
また、シリコーン樹脂30の架橋点は、シロキサン結合のみで構成されていてもよい。
【0075】
これによれば、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度を高めることができ、例えば光ファイバ11の端面11bを研磨加工した場合に、端面11bが損傷することを抑制できる。
【0076】
また、シリコーン樹脂30は、架橋点に炭素-炭素結合を含まなくてもよい。
【0077】
これによれば、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度を高めることができ、例えば光ファイバ11の端面11bを研磨加工した場合に、端面11bが損傷することを抑制できる。
【0078】
また、光ファイバ11およびフェルール20は、同一平面上に位置する端面11b、20bを有していてもよい。
【0079】
これによれば、フェルール20を用いて光ファイバモジュール2の端部11cを固定し、レーザー光を光ファイバ11の端面11bから効率よく導入することができる。
【0080】
本実施の形態の照明装置1は、レーザー光を出力する光源素子51と、レーザー光が導入される上記光ファイバモジュール2と、光ファイバモジュール2によって導光されたレーザー光を異なる波長の光に変換して放射する波長変換部60と、を備える。
【0081】
照明装置1が、上記光ファイバモジュール2を備えるとで、光ファイバ11とフェルール20との間に位置するシリコーン樹脂30にレーザー光が照射された場合であっても、シリコーン樹脂30がレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂30が発光することを抑制できる。また、シリコーン樹脂30がレーザー光を吸収しにくいので、接着剤であるシリコーン樹脂30の温度が必要以上に上昇することを抑制できる。
【0082】
また、照明装置1は、さらに、光ファイバ11の端面11bにレーザー光を集光する結合レンズ54を備えていてもよい。
【0083】
これによれば、結合レンズ54を用いてレーザー光の多くを光ファイバ11の端面11bに導入することができるので、レーザー光がシリコーン樹脂30に照射される量を減らすことができる。これにより、シリコーン樹脂30が発光することを抑制できる。
【0084】
また、照明装置1は、さらに、波長変換部60にて放射された光のうち、光ファイバモジュール2を経由して戻る光を検出する戻り光センサ56を備えていてもよい。
【0085】
これによれば、光ファイバ11とフェルール20との間に位置するシリコーン樹脂30にレーザー光が照射された場合であっても、シリコーン樹脂30の発光が抑制されるので、照明装置1において光ファイバ11の断線有無の検出精度が低下することを抑制できる。
【0086】
また、レーザー光の波長は、430nm以上490nm以下であってもよい。
【0087】
この照明装置1では、430nm以上490nm以下の波長に対して透過性を有するシリコーン樹脂30を接着剤として用いた光ファイバモジュール2を備えているので、レーザー光がシリコーン樹脂30に照射された場合であってもシリコーン樹脂30が発光することを抑制できる。
【0088】
本実施の形態の光ファイバモジュール2の製造方法は、ガラス成分を含む光ファイバ11と、光ファイバ11の端部11cにおける外周面11aを覆う筒状のフェルール20とを備える光ファイバモジュール2の製造方法であって、光ファイバ11の外周面11aとフェルール20の内周面20aとの間に、ポリマー炭素を有する液状のシリコーン樹脂が充填された状態とするステップと、液状のシリコーン樹脂を140℃以上の温度で加熱して硬化させるステップと、光ファイバ11の端面11bおよびフェルール20の端面20bを同時に研磨するステップと、を含む。
【0089】
このように、液状のシリコーン樹脂を加熱して硬化することで、光ファイバ11とフェルール20とを、主鎖に炭素-炭素結合を有しないシリコーン樹脂30によって固着させることができる。これにより、フェルール20に対する光ファイバ11の固着強度が低下することを抑制でき、研磨加工において光ファイバ11の端面11bが損傷することを抑制できる。
【0090】
(その他の実施の形態)
以上、本発明に係る光ファイバモジュール等について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0091】
例えば上記では、液状のシリコーン樹脂にポリマー炭素が含まれている例を示したが、それに限られず、液状のシリコーン樹脂は、ポリマー炭素の代わりに、水酸基を有する液状のシリコーン樹脂であってもよい。
【0092】
また上記では、光源素子51が励起光であるレーザー光を出力しているときに、光ファイバ11の断線有無を判定する場面について説明したが、断線有無の判定はその場面に限られない。例えば、照明装置1は、光源素子51にて励起光を出力する前に、試験的に励起光よりも光強度が低くスペクトル幅が広い光を出力し、この光が正常に戻ってくるか否かを検出することで光ファイバ11の断線有無を判定してもよい。本実施の形態によれば、このように試験的に光が出力される場面においても、接着剤が発光することを抑制できる。
【0093】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 照明装置
2 光ファイバモジュール
2b 端面
11 光ファイバ
11a 外周面
11b 端面
11c 端部
20 フェルール
20a 内周面
20b 端面
30 シリコーン樹脂
51 光源素子
54 結合レンズ
56 戻り光センサ
60 波長変換部
F1 ファイバ軸