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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】三輪自転車
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20230519BHJP
   B62K 5/02 20130101ALI20230519BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019046506
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020079071
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018212531
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 祐司
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149828(JP,A)
【文献】特開昭59-179467(JP,A)
【文献】特開平9-216595(JP,A)
【文献】特開2004-122832(JP,A)
【文献】特開2004-131027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/02- 5/06, 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けられた一つの前輪及び二つの後輪と、
走行速度を検出するための速度センサと、を備え、
前記フレームは、
前記一つの前輪が取り付けられた前部フレームと、
前記二つの後輪が取り付けられた後部フレームとを有し、
前記前部フレームと前記後部フレームはいずれか一方に対し、長手方向に延びた回転軸回りに回転可能に接続されると共に、
前記回転軸回りの回転が生じると前記回転を制動す制動装置と、
前記速度センサの検出結果に基づいて前記制動装置を制御する制御部と、
前記回転軸回りの回転が生じると前記検出結果に依存せず前記前部フレームを基準位置に戻そうとする揺動復元装置と、を更に備える、
三輪自転車。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検出結果が所定速度以下であるときに、前記前部フレームの前記回転軸での回転を制動し、
前記検出結果が前記所定速度を超えたときに、前記前部フレームの前記回転軸での回転の制動を解除するように、前制動装置を制御する、
請求項に記載の三輪自転車。
【請求項3】
前記回転軸の長手方向は、前記一つの前輪の下端及び前記二つの後輪の下端を通る仮想平面に対して傾斜している、
請求項1又は2に記載の三輪自転車。
【請求項4】
モータを有し、前記一つの前輪及び前記二つの後輪の少なくとも一つに対し、回転動力を出力するモータユニットを更に備える、
請求項1又は2に記載の三輪自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三輪自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の三輪自転車が記載されている。特許文献1に記載の三輪自転車は、前ホークを介して前輪が取り付けられた前フレームと、二つの後輪が取り付けられた後フレームと、を備える。
【0003】
前フレームの後部には、前フレーム後メインパイプが設けられている。前フレーム後メインパイプは、前フレームの前側部分と、後フレームとをつなぐ。前フレーム後メインパイプは、前フレーム後メインパイプの中心軸を回転軸として、後フレームに対して回転可能に取り付けられている。
【0004】
このように、後フレームに対し、前フレームが回転可能であるため、ユーザは、左右方向のいずれかに旋回したいときには、前フレームを左右方向のいずれかに傾けることで、重心移動をすることができる。この結果、ユーザは、左右方向のいずれか望む向きに三輪自転車を旋回させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-50723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の三輪自転車では、前フレームが後フレームに対して回転可能であるが、一定の速度以上で移動している際には、前フレームに対して慣性力等が働いて、走行が安定する。
【0007】
しかしながら、一定の速度未満で移動しているとき(要するに低速時)には、前フレームに対して働く慣性力等が小さく、前フレームの自立が不安定になり、走行が安定しないことがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば、低速時において、前部フレームの自立が不安定になるのを抑えることができる三輪自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る三輪自転車は、フレームと、前記フレームに取り付けられた一つの前輪及び二つの後輪と、を備える。前記フレームは、前記一つの前輪が取り付けられた前部フレームと、前記二つの後輪が取り付けられた後部フレームと、連結フレームと、を有する。前記連結フレームは、平面視において前後方向に沿って延びており、前記前部フレームと前記後部フレームとをつなぐ。前記連結フレームは、前記前部フレーム及び前記後部フレームのいずれか一方に対して前記連結フレームの長手方向に沿った回転軸で回転可能に接続され、かつ他方に対して前記回転軸で回転不能に接続されている。三輪自転車は、前記連結フレームの前記回転軸での回転を制動する連結フレーム制動装置を更に備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様の三輪自転車は、例えば、低速時において、前部フレームの自立が不安定になるのを抑えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の三輪自転車の側面図である。
図2図2は、同上の三輪自転車の平面図である。
図3図3は、図2における後部フレームの拡大図である。
図4図4は、同上の後部フレームの鉛直面断面図である。
図5図5は、同上の後部フレームにおいて、連結部等の構成を省いた平面図である。
図6図6A~6Cは、同上の三輪自転車における揺動復元機構の動作を示す拡大図である。
図7図7は、同上の連結フレーム制動装置を示す背面図である。
図8図8は、同上の速度センサ、制御部、連結フレーム制動装置のブロック図である。
図9図9は、同上の三輪自転車の前部フレームを傾けた状態の平面図である。
図10図10は、変形例1の後部フレームの鉛直面断面図である。
図11図11は、変形例2の三輪自転車の側面図である。
図12図12は、同上の三輪自転車におけるハブモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係る三輪自転車1は、図1に示すように、フレーム2と、フレーム2に取り付けられた一つの前輪92と、二つの後輪91と、を備える。フレーム2は、前輪92が取り付けられた前部フレーム21と、後輪91が取り付けられた後部フレーム28と、連結フレーム32と、を備える。連結フレーム32は、平面視において前後方向に沿って延びており、前部フレーム21と後部フレーム28とをつなぐ。ここで、本開示でいう「平面視」とは、走行面100に直交する方向のうち、対象物を上側から見ることを意味する。
【0013】
連結フレーム32は、図4に示すように、前部フレーム21及び後部フレーム28のいずれか一方(ここでは、後部フレーム28)に対して、回転可能に接続される。この回転軸331は、連結フレーム32の長手方向に沿っている。また、連結フレーム32は、前部フレーム21及び後部フレーム28のいずれか他方(ここでは前部フレーム21)に対して、回転軸331では回転不能に接続されている。
【0014】
三輪自転車1は、連結フレーム32の回転軸331での回転を制動する連結フレーム制動装置8を備える。
【0015】
このため、例えば、低速時において、前部フレーム21の自立が不安定になるのを抑えることができる。したがって、本実施形態に係る三輪自転車1では、安定した走行を実現しやすい。本開示でいう「低速」とは、三輪自転車1の前進による慣性力が前部フレーム21に発生しても、前部フレーム21の自立が不安定になる速度を意味する。本開示では、「低速」は、一例として、1~5km/hである。
【0016】
(1.2)詳細
(1.2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る三輪自転車について、詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る三輪自転車1は、図1に示すように、電動アシスト自転車であり、前輪92及び後輪91の少なくとも一つに対し、回転動力を出力するモータユニット7を備える。本開示でいう「電動アシスト自転車」は、ユーザの踏む力(以下、「踏力」という)を、駆動補助出力によって補うモータユニット7を持つ自転車を意味する。したがって、本開示でいう「電動アシスト自転車」は、法規上の電動アシスト自転車だけでなく、法規上は電動アシスト自転車に属しないモータユニット7を持つ自転車も含まれる。本開示でいう「駆動補助出力」は、モータが車輪に与える回転出力を意味する。
【0018】
本実施形態に係る三輪自転車1は、電動アシスト自転車であるが、本開示では、踏力により車輪に動力を与える駆動系(人力駆動系)と、モータにより車輪に動力を与える駆動系(モータ駆動系)とが独立している自転車(モータのみでも走行可能な自転車)であってもよい。ここでは、人力駆動系とモータ駆動系とが独立した自転車と、電動アシスト自転車と、を含む自転車を「電動自転車」という。なお、本開示でいう「三輪自転車」は、電動自転車でなくてもよく、モータユニット7を持たない人力駆動系のみの自転車であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る三輪自転車1のユーザは、主に、高齢者、足腰が弱い者、バランスをとるのが苦手な者、障がい者等である。ただし、本開示では、ユーザは、特に限らず、若年者、中年者、健常者等であってもよい。
【0020】
ここで、本開示では、三輪自転車1が走行面100に沿って進む方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、前方向及び後方向の二方向を「前後方向」として定義し、前後方向に直交しかつ水平面に沿う二方向を「左右方向」として定義する。本実施形態では、走行面100は、水平面であるとして説明する。ただし、実際には、走行面100は、必ずしも水平な平面とは限らず、例えば、凹凸面、水平面に対して勾配を有する傾斜面、湾曲した面、球面等であってもよい。これらの方向の定義は、三輪自転車1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0021】
三輪自転車1は、本実施形態では、図1に示すように、フレーム2、一つの前輪92、二つの後輪91、ハンドル38、サドル40、一対のクランクアーム96、一対のペダル95、バッテリ装置6、モータユニット7及びモータブラケット73を備える。また、三輪自転車1は、連結フレーム制動装置8(図2)、速度センサ52及び制御基板5を更に備える。
【0022】
(1.2.2)前輪・後輪
前輪92及び後輪91は、フレーム2を走行面100の上に支える。前輪92及び後輪91の各々は、タイヤ920、ホイール921及びハブ922を備える。
【0023】
前輪92のハブ922には前輪軸93が通されており、前輪92は、前輪軸93によって、前部フレーム21のフロントフォーク26に回転可能に取り付けられている。前輪92の回転軸は、前輪軸93の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。
【0024】
二つの後輪91は、フレーム2に含まれる後部フレーム28に対し、回転可能に取り付けられている。二つの後輪91は、図2に示すように、左右方向に離れている。図3に示すように、後輪91のハブ922には後輪軸94が通されており、後輪91は、後輪軸94によって、後部フレーム28に回転可能に取り付けられている。後輪91の回転軸は、後輪軸94の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。本実施形態に係る三輪自転車1では、二つの後輪91のうちの一方が駆動輪であり、他方が従動輪である。
【0025】
(1.2.3)フレーム
フレーム2は、少なくとも、一つの前輪92及び二つの後輪91が取り付けられた骨組みである。フレーム2は、本実施形態では、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金で構成される。ただし、本開示では、フレーム2は、アルミニウム合金に限らず、鉄、クロムモリブデン鋼、ハイテンスチール、チタン、マグネシウム等で構成されてもよい。また、本開示に係るフレーム2は、金属に限らず、カーボン、木材、竹、繊維強化合成樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics))等で構成されてもよい。フレーム2は、本実施形態では、図1に示すように、前部フレーム21と、後部フレーム28と、連結フレーム32と、を備える。
【0026】
(1.2.3.1)前部フレーム
前部フレーム21は、フレーム2において前側部分を構成する。前部フレーム21には、本実施形態では、前輪92、バッテリ装置6、ハンドル38、サドル40、モータブラケット73、モータユニット7、クランクアーム96及びペダル95が取り付けられている。ここで、本開示でいう「取り付ける」とは、物を、取付け対象物に対して、直接的又は間接的に設置することを意味する。ここでいう「取付け対象物に対して物を直接的に設置する」とは、取付け対象物に対して物を接触させた状態で設置することを意味する。「取付け対象物に対して物を間接的に設置する」とは、取付け対象物に対し、取付け対象物と物との間にパッキン等を挟んだ状態で物を設置することや、取付け対象物に対し、取付け具等によって物を設置することを意味する。
【0027】
前部フレーム21は、複数のパイプで構成されている。前部フレーム21は、本実施形態では、フロントフォーク26、ヘッドパイプ24、ダウンチューブ22及びシートチューブ23を備える。また、前部フレーム21は、シートステイ25及びバッテリブラケット27を備える。
【0028】
本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味する。本開示に係るパイプの断面形状は、例えば、円形状(正円、長円及び楕円を含む)、長方形状(正方形を含む)、六角形状、八角形状等であってもよい。
【0029】
フロントフォーク26は、前輪92を支える。フロントフォーク26は、一対のレッグ261と、一対のレッグ261の上端をつなぐクラウン262と、クラウン262から突出するステアリングコラム263と、を備える。一対のレッグ261には、ハブ922に通された前輪軸93を介して、前輪92が回転可能に取り付けられている。前輪92の回転軸は、走行面100に対して略平行であり、前輪92を支える前輪軸93の中心軸と同じである。ステアリングコラム263の突出方向(長手方向)は、クラウン262から、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾いている。
【0030】
ヘッドパイプ24は、フロントフォーク26を支える。ヘッドパイプ24の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾いている。ヘッドパイプ24には、ヘッドパイプ24の中心軸とステアリングコラム263の中心軸とが一致するように、ステアリングコラム263が通される。これによって、ヘッドパイプ24は、ステアリングコラム263を回転可能に支える。ステアリングコラム263の回転軸は、本実施形態では、ヘッドパイプ24の中心軸と同じである。
【0031】
ダウンチューブ22は、ヘッドパイプ24とシートチューブ23とをつなぐ。ダウンチューブ22は、本実施形態では、第一下管221と、第二下管222と、を備える。第一下管221は、シートチューブ23の下端と第二下管222とをつなぐ。第一下管221の中心軸は、前方向に行くに従って上方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。第一下管221の前端部は、第二下管222の前後方向の後側の端部に接続されており、円弧状に形成されている。
【0032】
第二下管222は、第一下管221とヘッドパイプ24とをつなぐ。第二下管222は直線状に形成されており、第二下管222の中心軸は、前方向に行くに従って上方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。本実施形態に係るダウンチューブ22では、第二下管222の前端と後端とを通る仮想直線(第二下管222中心軸)と走行面100とのなす角は、第一下管221の前端と後端とを通る仮想直線と走行面100とのなす角よりも大きい。第二下管222と第一下管221とは一体であり、連続している。
【0033】
シートチューブ23は、サドル40を保持する。シートチューブ23の下端は、ダウンチューブ22の後端部に接続されている。シートチューブ23は、直線状に形成されており、シートチューブ23の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。シートチューブ23は、前後方向において、前輪92と後輪91との間に位置している。シートチューブ23には、シートチューブ23の中心軸に沿った方向(長手方向)に沿って移動可能に、サドル40が取り付けられている。
【0034】
サドル40は、シートピラー401を有する。シートピラー401は、サドル40においてユーザが座る部分から下側に突出している。シートピラー401は、本実施形態では、下方向に行くに従って前方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。シートピラー401は、シートチューブ23の中心軸に沿うようにして、シートチューブ23に通されている。
【0035】
バッテリブラケット27には、バッテリ装置6が取り付けられる。バッテリブラケット27は、ダウンチューブ22の長手方向の後側の端部に取り付けられている。バッテリブラケット27は、本実施形態では、バッテリ装置6が載る天板部271を有する。ここで、バッテリ装置6は、バッテリ62と、バッテリ62が着脱可能に装着される装着部61と、を備える。バッテリ装置6の詳細については、後述の「(1.2.6)バッテリ装置」の欄で説明する。
【0036】
天板部271には装着部61が取り付けられている。より具体的には、装着部61は、天板部271の上面に載った状態で取り付けられており、天板部271に対して固定されている。
【0037】
シートステイ25は、シートチューブ23を補強する。シートステイ25は、本実施形態では、シートチューブ23とバッテリブラケット27とをつないでいる。シートステイ25は、一対の縦支持体251と、横支持体252と、を備える。一対の縦支持体251は、左右方向に離れて配置されている。各縦支持体251は、本実施形態では、パイプであり、その中心軸がシートチューブ23の中心軸に略平行である。横支持体252は、一対の縦支持体251とシートチューブ23とをつないでいる。横支持体252は、本実施形態では、平面視でT字状に形成されている。なお、縦支持体251の中心軸は、シートチューブ23の中心軸に対して平行でなくてもよい。
【0038】
(1.2.3.2)後部フレーム
後部フレーム28は、フレーム2において後側部分を構成する。後部フレーム28には、後輪91が取り付けられている。後部フレーム28は、図2に示すように、前部フレーム21に対して、平面視において後側に配置されている。後部フレーム28と前部フレーム21とは、連結フレーム32を介してつながっている。後部フレーム28は、図3,4に示すように、接続部29(図4)と、後輪軸受け部30と、揺動復元機構31と、を備える。
【0039】
接続部29は、図4に示すように、後部フレーム28と連結フレーム32とが接続される部分である。連結フレーム32に含まれるシャフト33は、接続部29に回転可能に接続される。シャフト33の回転軸331は、本実施形態では、シャフト33の中心軸と同じである。接続部29は、本実施形態では、ケース291と、複数(ここでは二つ)の軸受292と、を備える。
【0040】
ケース291には、複数の軸受292が取り付けられる。ケース291は、本実施形態では、筒状(ここでは円筒状)に形成されており、中心軸方向の両端面が開口面である。ただし、本開示では、ケース291は、複数の軸受292を支えることができればよく、角筒状であってもよいし、下面が開口面であってもよい。ケース291は、後輪軸受け部30に対して取り付けられている。
【0041】
複数の軸受292は、連結フレーム32のシャフト33を支える。複数の軸受292は、各回転軸が一直線上に位置するように、ケース291に取り付けられている。軸受292は、本実施形態では、滑り軸受であるが、本開示では、転がり軸受であってもよい。滑り軸受としては、例えば、静圧気体軸受、動圧気体軸受、静圧流体軸受、動圧流体軸受、スクイーズ油膜軸受、ハイブリッド軸受、固体潤滑軸受、無潤滑軸受、自己潤滑軸受、多孔質自己潤滑軸受、焼結含油軸受、自給式滑り軸受ユニット等であってもよい。転がり軸受としては、例えば、ラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受等であってもよい。
【0042】
後輪軸受け部30は、図3に示すように、複数の後輪軸94を回転可能に支える。後輪軸94の回転軸は、左右方向に略平行であり、後輪軸94の中心軸と同じである。図3に示すように、後輪軸94の回転軸と、連結フレーム32のシャフト33の回転軸331とは、平面視で直交している。ここで、図5には、後輪軸受け部30において、連結体303を省略した平面図を示す。後輪軸受け部30は、図5に示すように、後部フレーム本体301と、複数(ここでは四つ)の軸受304と、を備える。
【0043】
後部フレーム本体301は、後輪軸受け部30の骨組みである。後部フレーム本体301は、鉛直面に沿った複数(ここでは六つ)のプレート302と、複数のプレート302をつなぐ複数(ここでは二つ)の連結体303(図2)と、を備える。
【0044】
複数のプレート302の各々には、軸受304又は後輪ブレーキ41が取り付けられる。本実施形態では、複数のプレート302のうち、左右方向において最も外側のプレート302には、後輪ブレーキ41が取り付けられ、それ以外のプレート302には、軸受304が取り付けられている。複数のプレート302は、図2に示すように、複数の連結体303でつながっている。
【0045】
複数の連結体303は、図4に示すように、上下方向に離れて配置されている。複数の連結体303のうち、最も下側の連結体303には、ケース291が取り付けられている。これによってケース291は、後部フレーム本体301に対して固定されている。
【0046】
複数の軸受304は、図5に示すように、後輪軸94を回転可能に支える。複数の軸受304は、複数のプレート302に取り付けられている。
【0047】
ここで、本実施形態では、後輪軸94は、左右方向に離れて二つある。二つの後輪軸94は、分離しており、互いに独立して回転可能である。一方の後輪軸94は、二つの後輪91のうちの一方の後輪91のハブ922に取り付けられている。他方の後輪軸94は、二つの後輪91のうちの他方の後輪91のハブ922に取り付けられている。
【0048】
一方の後輪軸94には、リアスプロケット305が固定されている。したがって、リアスプロケット305の回転軸は、後輪軸94の回転軸と同じである。リアスプロケット305は、図1に示すように、モータユニット7の駆動スプロケット71に対し、動力伝達体74を介して連結されている。これにより、駆動スプロケット71から出力された回転動力は、動力伝達体74を介してリアスプロケット305に伝達され、後輪91のうちの一方を回転させる。
【0049】
本実施形態では、リアスプロケット305が固定されていない後輪軸94は、後部フレーム本体301に対して回転可能である。したがって、本実施形態では、二つの後輪91のうちの一方が駆動輪であり、他方が従動輪である。ただし、両方の後輪91を駆動輪としてもよい。デファレンシャルギア(差動装置)を使用すれば、両方の後輪91を駆動輪とすることを実現することができる。
【0050】
(1.2.3.2.1)揺動復元機構
揺動復元機構31は、後部フレーム28に対して、前部フレーム21が回転軸331を中心に回転したときに、前部フレーム21を基準位置に戻そうとする力を、前部フレーム21に加える機構である。したがって、本実施形態に係る三輪自転車1では、ユーザが乗車中において、左右方向のいずれかに進行方向を変える際、後部フレーム28に対して、前部フレーム21を左右方向のいずれかに傾けた場合に、前部フレーム21は基準位置に戻りやすい。
【0051】
本開示でいう「基準位置」とは、三輪自転車1の正面視において、シートチューブ23の中心軸が走行面100に対して直交するときの前部フレーム21の位置を意味する。言い換えると、基準位置にある前部フレーム21は、走行面100から起立した位置にある。以下では、基準位置に前部フレーム21があるときの連結フレーム32の位置についても「基準位置」という場合がある。
【0052】
本実施形態に係る揺動復元機構31は、図4に示すように、後部フレーム3の前方において、シャフト33に取り付けられている。ただし、揺動復元機構31は、例えば、後部フレーム3の後方において、シャフト33に取り付けられてもよく、取付け位置は特に限定されない。揺動復元機構31は、図6Aに示すように、第一レバー313と、第二レバー317と、弾性体318と、を備える。
【0053】
回転体310は、シャフト33の回転動力を、第一レバー313又は第二レバー317に伝達する。回転体310は、図4に示すように、シャフト33に取り付けられており、本実施形態では、シャフト33に対して固定されている。したがって、回転体310の回転軸は、シャフト33の回転軸331と同じである。回転体310は、本実施形態では、シャフト33に対して直接的に固定されている。回転体310は、固着具311と、軸部材312と、を備える。
【0054】
固着具311は、軸部材312を、シャフト33の回転軸331からラジアル方向に離す。固着具311は、本実施形態では、ブロック状に形成されており、シャフト33の外周面からラジアル方向に突出する。ただし、本開示では、固着具311は、例えば、棒状、板状等に形成されてもよい。固着具311は、本実施形態では、図4に示すように、シャフト33が基準位置にあるときにおいて、回転軸331に直交する面上において、上側に突出している。
【0055】
軸部材312は、固着具311に取り付けられている。軸部材312の長手方向は、シャフト33の中心軸に略平行である。軸部材312は、シャフト33の回転軸331に対して、ラジアル方向に離れている。軸部材312の回転軸は、シャフト33の中心軸と同じであり、軸部材312は、シャフト33の回転に伴って、シャフト33と一緒に回転する。
【0056】
第一レバー313及び第二レバー317の各々は、図6A~6Cに示すように、シャフト33に対し、回転可能に取り付けられている。第一レバー313及び第二レバー317の回転軸は、ケース35の回転軸331(シャフト33の中心軸)と同じである。第一レバー313は、軸部材312に押されることによって、一方向に回転する。第二レバー317は、軸部材312に押されることによって、他方向に回転する。本開示でいう「一方向」と「他方向」とは、回転軸331回りにおいて、互いに反対を向く方向である。本開示でいう「一方向」及び「他方向」は、回転軸331回りにおいて互いに反対向きであることを意味する表現に過ぎず、右方向又は左方向といった特定の方向を表現する意図ではない。
【0057】
第一レバー313及び第二レバー317の各々は、レバー本体320と、弾性体取付け部314と、を備える。本実施形態では、二つのレバー313,317は、互いに同一形状に形成されているが、互いに鏡像対称に形成されてもよい。本実施形態では、二つのレバー313,317は同じ構造であるため、主に第一レバー313について説明し、第二レバー317についての説明は省略する。
【0058】
レバー本体320は、第一レバー313の主体を構成する部材であり、シャフト33に対する取付け部分を含む。レバー本体320は、シャフト33の軸方向の中間部分に回転可能に取り付けられている。レバー本体320の回転軸は、シャフト33の回転軸331と同じである。レバー本体320は、本実施形態では、シャフト33の回転軸331に沿った方向にみて、略L字状に形成されている。ただし、レバー本体320は、シャフト33の回転軸331に沿った方向にみて、例えば、円形状、矩形状等に形成されてもよく、形状には特に制限はない。
【0059】
レバー本体320は、基準位置にあるときにおいて、上下方向において回転軸331よりも上側に、押し部315を有する。押し部315は、軸部材312の側面に対向する面である。押し部315は、軸部材312が一方向(第二レバー317の場合は他方向)へ移動すると、軸部材312を押す。レバー本体320は、押し部315が押されることで、回転軸(シャフト33の回転軸331)を中心に回転する。レバー本体320の回転軸は、上下方向において、押し部315と移動規制部316との間にある。
【0060】
レバー本体320は、複数の立上げ片3190を有する。複数の立上げ片3190は、弾性体取付け部314が取り付けられる箇所と、移動規制部316が取り付けられる箇所と、に設けられている。立上げ片3190は、回転軸331に直交する面に対して交差する方向に突出したリブ状に形成されている。立上げ片3190が設けられることで、レバー本体320の強度が高くなる上に、移動規制部316及び弾性体取付け部314が取り付けやすい。
【0061】
弾性体取付け部314は、レバー本体320に取り付けられる。弾性体取付け部314には、弾性体318が取り付けられる。弾性体取付け部314は、本実施形態では、レバー本体320が基準位置にあるときにおいて、上下方向において、回転軸331よりも上側に位置している。弾性体取付け部314は、本実施形態ではアイボルトであり、ナットによってレバー本体320に取り付けられている。ただし、本開示では、弾性体取付け部314は、弾性体318が取付け可能であれば、アイボルトに限らず、フックであってもよいし、立上げ片3190に形成された切欠きであってもよい。また、弾性体取付け部314は、立上げ片3190に取り付けられなくてもよく、レバー本体320において、シャフト33の軸方向に向く面に取り付けられてもよい。
【0062】
弾性体318は、第一レバー313又は第二レバー317に対して、軸部材310からの力による回転力とは反対方向の力を与える。弾性体318は、本実施形態では、引張コイルばねである。ただし、本開示では、弾性体318は、レバー313,317に対して力を付与できればよく、引張コイルばねでなくてもよい。弾性体318としては、例えば、板ばね、ねじりコイルばね、ゴム等が挙げられる。本実施形態では、弾性体318は、第一レバー313の弾性体取付け部314と、第二レバー317の弾性体取付け部314とに掛け渡されている。したがって、例えば、第一レバー313の回転によって弾性体318が引張力を受けると、第二レバー317は、同方向に引っ張られる。このとき、本実施形態では、第二レバー317が第一レバー313からの引張力によって回転しないように、図6Bに示すように、移動規制部316が固定体319に当たって、第二レバー317の回転が制限される。
【0063】
移動規制部316は、基準位置にある第一レバー313に対し、回転軸331の他方向(第二レバー317では一方向)への回転力が加わった場合に、固定体319に当たる部分である。したがって、図6Cに示すように、軸部材310から第二レバー317に対して他方向に力が加わった場合に、弾性体318から第一レバー313に対して他方向への回転力が加えられるが、固定体319に対して移動規制部316が当たることで、回転が規制される。本実施形態では、移動規制部316は、ボルトであり、ナットによってレバー本体320(具体的には、立上げ片3190)に取り付けられている。立上げ片3190に対するボルトの頭の突出寸法を調整することで、弾性体318による引張力を調整することができる。
【0064】
なお、移動規制部316は、第二レバー317にも設けられている。固定体319は、第二レバー317の移動規制部316に当たることで、図6Bに示すように、基準位置にある第二レバー317の、一方向(第一レバー313の回転と同じ方向)の回転を規制する。
【0065】
移動規制部316は無くてもよく、固定体319に対して、レバー本体320の一部が直接当たってもよい。
【0066】
固定体319は、ケース291に対して固定されている。固定体319は、図4に示すように、固定具351と、軸体352と、を備える。固定具351は、後部フレーム本体301に対して固定されている。固定具351は、本実施形態では、シャフト33の回転軸331に直交する方向のうち下側に突出する。
【0067】
軸体352は、固定具351に取り付けられている。軸体352は、シャフト33の回転軸331に略平行である。軸体352は、図6A~6Cに示すように、第一レバー313の移動規制部316と、第二レバー317の移動規制部316との間に配置されている。
【0068】
シャフト33が回転すると(ここでは、この方向を一方向とする)、図6Bに示すように、回転体310が回転軸331回りの一方向(図6Bの黒矢印の方向)に回転する。すると、回転体310の軸部材312は、第一レバー313の押し部315を押し、第一レバー313を一方向に回転させる。第一レバー313が一方向に回転すると、弾性体318の一端は、第一レバー313の弾性体取付け部314によって(ここでは右側に)引っ張られる。
【0069】
このとき、弾性体318の他端は、第二レバー317に対して、引張力を与える。第二レバー317は、弾性体318から引張力を受けると、一方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第二レバー317は、一方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第一レバー313に対して、他方向への回転力(図4Bの白抜き矢印)を加える。
【0070】
これによって、基準位置から一方向に回転する回転体310には、第一レバー313から、基準位置に戻そうとする他方向に向かう回転力が加えられる。したがって、ケース35につながる前部フレーム21には、前部フレーム21が基準位置から傾くと、基準位置に戻そうとする力が加わる。
【0071】
次に、図6Cに示すように、シャフト33が他方向に回転すると、回転体310が回転軸331回りの他方向(図6Cの黒矢印の方向)に回転する。すると、回転体310の軸部材312は、第二レバー317の押し部315を押し、第二レバー317を他方向に回転させる。第二レバー317が他方向に回転すると、弾性体318の一端は、第二レバー317の弾性体取付け部314によって(ここでは左側に)引っ張られる。
【0072】
このとき、弾性体318の他端は、第一レバー313に対して、引張力を与える。第一レバー313は、弾性体318から引張力を受けると、他方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第一レバー313は、他方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第二レバー317に対して、一方向への回転力(図6Cの白抜き矢印)を与える。
【0073】
これによって、基準位置から他方向に回転する回転体310には、第二レバー317から、基準位置に戻そうとする一方向に向かう回転力が加わる。
【0074】
(1.2.3.3)連結フレーム
連結フレーム32は、図2に示すように、平面視において前後方向に沿って延びており、前部フレーム21と後部フレーム28とをつなぐ。本開示において「平面視で前後方向に沿って延び(る)」とは、例えば、図4に示すように、側面視において、走行面100に対して傾いていてもよいし、走行面100に対して略平行であってもよいことを意味する。連結フレーム32は、図4に示すように、シャフト33と、取付け具34と、を備える。
【0075】
シャフト33は、取付け対象であるフレーム21,28に対して回転可能に取り付けられる。ここでいう「取付け対象」とは、前部フレーム21と後部フレーム28とのうちの、シャフト33を支えるフレームのことを意味する。本実施形態では、シャフト33は、後部フレーム28に対して回転可能に取り付けられる。ただし、シャフト33は、前部フレーム21に対して回転可能に取り付けられてもよい。シャフト33の回転軸331は、上述のように、シャフト33の中心軸と同じである。シャフト33は、本実施形態では、後部フレーム28の接続部29に接続されている。
【0076】
取付け具34は、シャフト33に対して固定され、取付け対象であるフレーム21,28に対してシャフト33の回転軸331周りに回転不能に接続される。ここでいう「取付け対象」とは、前部フレーム21と後部フレーム28とのうちの、取付け具34が直接的に取り付けられるフレームを意味する。したがって、シャフト33が後部フレーム28に取り付けられる場合、取付け対象は前部フレーム21である。ただし、取付け具34の取付け対象は、後部フレーム28であってもよい。また、本開示でいう「シャフト33の回転軸331周りに回転不能に接続する」とは、少なくとも、シャフト33を回転軸331で回転させない態様で、取付け対象に接続することを意味する。本実施形態では、前部フレーム21に対して、取付け具34は回転可能に取り付けられているが、取付け具34の回転軸は左右方向に略平行である。本実施形態では、取付け具34は、バッテリブラケット27に対して、取付け軸341によって取り付けられている。取付け具34の回転軸は、取付け軸341の中心軸と同じである。
【0077】
取付け具34は、シャフト33に対して固定されている。本実施形態では、取付け具34とシャフト33との固定は、溶接によって実現されている。ただし、取付け具34とシャフト33との固定は、例えば、ボルト止め、嵌め込み、スプライン結合、キー結合等で実現されてもよい。
【0078】
本実施形態に係る三輪自転車1は、図4に示すように、減衰装置36を備える。減衰装置は、取付け具34とシートステイ25とにまたがって設けられている。減衰装置36は、取付け具34から入力された振動を減衰させる。これによって、後部フレーム28の振動が、前部フレーム21に伝達しにくくなっている。
【0079】
減衰装置36は、本実施形態では、スプリングとオイルダンパとを備えたサスペンションである。ただし、本開示では、減衰装置36は、スプリングなどの弾性体のみで構成されてもよいし、ダンパのみで構成されてもよい。
【0080】
連結フレーム32の長手方向(本実施形態では、シャフト33の回転軸331に略平行な方向)は、走行面100に対して傾いている。具体的には、連結フレーム32の長手方向と水平面とのなす角は、0°より大きく、かつ30°以下である。より好ましくは、連結フレーム32の長手方向と水平面とのなす角は、15°±5°である。
【0081】
ここでいう走行面100は、前輪92の下端(接地する点)と、後輪91の下端と、を通る仮想平面に一致する。したがって、連結フレーム32の長手方向は、当該仮想平面に対して傾斜している。
【0082】
ところで、本実施形態の三輪自転車1では、後部フレーム28に対し、前部フレーム21を傾けると、次のように動作する。図9に示すように、前部フレーム21を左側に傾けると、連結フレーム32は、後部フレーム28に対し、シャフト33の回転軸331周りに回転する。このとき、シャフト33の前側は、前部フレーム21の変位に追従するため、前輪92の下端を中心にして左側に移動する。後部フレーム28に支えられているシャフト33の後側は、二つの後輪91の独立した回転によって、平面視でその場に留まる。要するに、前部フレーム21が傾くと、シャフト33は、平面視において、シャフト33の回転軸331と後輪軸94の回転軸との交点を中心として、回転する。このとき、二つの後輪91のうち、一方の後輪91が、三輪自転車1が前進するときの方向に回転し、他方の後輪91が、その反対方向に回転する。要するに、前部フレーム21を傾けると、それに連動して、一方の後輪91と他方の後輪91とは互いに反対方向に回転する。
【0083】
(1.2.4)連結フレーム制動装置
連結フレーム制動装置8は、連結フレーム32の回転軸331での回転を制動する。本開示でいう「回転を制動する」とは、回転力に対して制動力をかけることを意味する。したがって、「回転を制動する」ことには、対象物に対して制動力を及ぼした結果、対象物の回転を停止させることや、対象物が停止しないが対象物の角速度を低減させることが含まれる。連結フレーム制動装置8は、図7に示すように、プレート81と、ブレーキ85と、を備える。
【0084】
プレート81は、図4に示すように、連結フレーム32に取り付けられており、これによって、連結フレーム32に対して固定されている。プレート81は、本実施形態では、図7に示すように、取付け部82と、取付け部82に設けられた円弧状部83と、を備える。
【0085】
取付け部82は、シャフト33に取り付けられる部分(ここでは貫通孔)を含んでいる。本実施形態では、取付け部82は、シャフト33と、軸部材312と、の複数個所(ここでは二か所)で取り付けられた板状の部分である。軸部材312と取付け部82とは、例えば、ボルト止め、ねじ止め、等によって固定されている。
【0086】
円弧状部83は、ブレーキ85によって挟まれる部分である。円弧状部83は、本実施形態では、取付け部82に一体的に形成されている。円弧状部83は、上側の縁が円弧であり、円弧の中心がシャフト33の中心軸とほぼ同じである。ただし、円弧状部83の中心は、シャフト33の中心軸と同じである必要はない。
【0087】
プレート81は、シャフト33が回転すると、シャフト33と一緒に回転する。プレート81の回転軸は、シャフト33の回転軸331(言い換えると連結フレーム32の回転軸)と同じである。
【0088】
ブレーキ85は、プレート81の移動に対して制動力を与える。ブレーキ85は、図4に示すように、後部フレーム28(連結体303)に取り付けられている。ブレーキ85は、本実施形態では、ワイヤーブレーキであるが、本開示では、例えば、負圧を利用する負圧倍力型、圧縮空気を利用する空圧倍力型、油圧を利用する油圧倍力型等の倍力装置を有してもよい。ブレーキ85は、一対のブレーキパッド86を互いに近づく方向と、互いに離れる方向に移動させることができる。ブレーキ85は、一対のブレーキパッド86の間にプレート81を位置させた状態で、一対のブレーキパッド86を互いに近づく方向に移動させ、一対のブレーキパッド86でプレート81を挟むことで、移動するプレート81に対して制動力を与える。
【0089】
以下では、一対のブレーキパッド86を互いに近づく方向に移動させてプレート81を挟むことを「ブレーキ85を掛ける」といい、一対のブレーキパッド86を互いに離れる方向に移動させることを「ブレーキ85を放す」とする。
【0090】
制御基板5(図1)は、ブレーキ85を制御する制御部51(図8)を有する。制御基板5は、本実施形態では、プリント基板である。制御部51は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを主構成とする。すなわち、マイクロコントローラのメモリに記録されたプログラムを、マイクロコントローラのプロセッサが実行することにより、制御部51の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部51には、ブレーキ85及び速度センサ52が接続されている。
【0091】
速度センサ52は、三輪自転車1の走行速度を検出する。本開示でいう「走行速度」とは、三輪自転車1が走行面100を走行している速度である。速度センサ52は、本実施形態では、前輪92のスポークの一部に設けられたマグネット520と、マグネット520の移動を検知するホールセンサ521とを備え、ホールセンサ521の検知信号を制御部51に出力し、演算することで前輪92の角速度から走行速度を検出する。ただし、速度センサ52は、例えば、ドップラ式又は空間フィルタ式を採用してもよい。また、速度センサ52は、検出素子と、検出素子から受け取った電気信号から速度を割り出す制御部51と、が一つの筐体に収まっていてもよい。
【0092】
制御部51は、速度センサ52の検知結果に基づいて、連結フレーム制動装置8のブレーキ85を制御する。本実施形態では、制御部51は、速度センサ52による検出結果が、所定速度以下であるときに、シャフト33の回転軸331での回転に制動力を掛けるように、連結フレーム制動装置8を制御する。ここでは、連結フレーム制動装置8は、シャフト33の回転軸331での回転に対して、制動力を掛けることができればよく、ブレーキ85を放しながら、徐々に制動力を弱くしてもよい。
【0093】
本実施形態に係る制御部51は、ブレーキ85としてのワイヤーブレーキのワイヤを巻取り可能なモータを制御する。制御部51は、モータを制御することで、ブレーキ85を制御することができる。なお、ブレーキ85が油圧ブレーキの場合、制御部51は、油圧ポンプを制御する。
【0094】
本実施形態では、制御部51は、速度センサ52の検出結果に応じて、連結フレーム制動装置8による制動力を変化させる。具体的には、制御部51は、三輪自転車1の走行速度が速くなるに従って制動力を徐々に弱くするように、連結フレーム制動装置8を制御する。
【0095】
一方、制御部51は、速度センサ52による検出結果が、所定速度を超えたときに、制動を解除するように、連結フレーム制動装置8を制御する。本開示でいう「制動を解除」とは、連結フレーム制動装置8による、シャフト33の回転軸331での回転に対する制動力を発生させないことを意味する。
【0096】
本開示でいう「所定速度」は、慣性力によって前部フレーム21の自立が安定する速度を意味する。「所定速度」は、例えば、7km/h以下であり、より好ましくは5km/h以下である。
【0097】
(1.2.5)ハンドル
ハンドル38は、前輪92の向きを操作する。ハンドル38は、本実施形態では、正面
視略U字状に形成されている。ハンドル38は、先端にグリップ381を有する。ハンドル38はステアリングコラム263の上端に固定されている。ハンドル38とステアリングコラム263との接続部分の上方には、バスケット39が取り付けられている。
【0098】
(1.2.6)バッテリ装置
バッテリ装置6は、少なくともモータに対して、電力を供給する装置である。バッテリ装置6は、図1に示すように、装着部61と、バッテリ62と、を備える。
【0099】
装着部61は、バッテリ62が装着される部分である。装着部61には、バッテリ62が取外し可能に取り付けられている。装着部61は、バッテリブラケット27の天板部271に対し、載った状態で固定されている。
【0100】
バッテリ62は、モータに対して供給する電気的エネルギーを蓄える二次電池である。バッテリ62は、単数又は複数のセルが内蔵されている。バッテリ62は、装着部61に対して電気的に接続される。これにより、バッテリ62はモータに対して電力を供給し得る。
【0101】
本開示では、バッテリ装置6は、モータユニット7に対してのみ電力を供給するように構成されてもよいし、モータユニット7に加えて、例えば、ヘッドライト、モータのON/OFFの操作部等に電力を供給するように構成されてもよい。
【0102】
(1.2.7)モータユニット・モータブラケット
モータユニット7は、ペダル95から入力された踏力を補助する力を出力する。モータユニット7は、ユーザがペダル95を漕ぎ、クランクアーム96を介して、踏力(外力)がクランク軸に入力されると、クランク軸が回転する。本実施形態に係るモータユニット7は、クランク軸が踏力を受けて回転すると、クランク軸の回転速度及びクランク軸に生じるトルクを検出し、その検出結果に応じた力を出力する。要するに、本実施形態に係るモータユニット7は、踏力に対して駆動補助出力を加えた力を、出力することができる。
【0103】
本実施形態に係るモータユニット7は、モータ(不図示)と、動力伝達体74が掛けられる駆動スプロケット71と、を有する。駆動スプロケット71として、踏力によって回転する第一駆動スプロケット710と、モータによって回転する第二駆動スプロケット(不図示)とを備える。要するに、本実施形態に係るモータユニット7は、踏力と、駆動補助出力とを別々に動力伝達体74に対して伝える二軸式のモータユニットである。
【0104】
ただし、本開示では、モータユニット7は、ペダル95及びクランクアーム96を介して伝達された踏力と、モータの出力と、を駆動スプロケット71に伝達した上で、動力伝達体74に動力を伝達する一軸式のモータユニット7であってもよい。
【0105】
モータユニット7のクランク軸の両端の各々には、クランクアーム96と、ペダル95とが取り付けられる。要するに、一対のクランクアーム96と一対のペダル95は、フレーム2の右側と左側とに配置される。ペダル95は、本実施形態では、二つの後輪91の少なくとも一つを駆動する。
【0106】
実施形態では、動力伝達体74はチェーンであるが、本開示ではこれに限らない。例えば、動力伝達体74は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0107】
モータユニット7は、モータブラケット73を介して、フレーム2に取り付けられている。モータブラケット73は、第一下管221に取り付けられている。モータブラケット73は、本実施形態では、バッテリブラケット27よりも前方に配置されており、シートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されている。なお、モータブラケット73とバッテリブラケット27とはつながっていてもよい。
【0108】
本実施形態では、モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されているため、モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線上にある態様よりも、ユーザはペダル95を漕ぎやすい。モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されていると、ペダル95とサドル40との距離を大きく取りやすいからである。
【0109】
(2)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0110】
(2.1)変形例1
上記実施形態に係る三輪自転車1では、連結フレーム32は、後部フレーム28に対して、回転軸331を中心として回転可能に取り付けられ、かつ前部フレーム21に対して、回転軸331を中心として回転不能に取り付けられていた。これに対し、本変形例では、図11に示すように、連結フレーム32は、前部フレーム21に対して、回転軸331を中心として回転可能に取り付けられ、かつ後部フレーム28に対して、回転軸331を中心として回転不能に取り付けられている点で異なる。以下においては、上記実施形態に係る三輪自転車1に対し、本変形例に係る三輪自転車1が異なる点を主に説明し、共通する点については、同じ符号を付して説明を省略する。なお、本変形例に係る前部フレーム21は、上記実施形態と同じである。
【0111】
(2.1.2)後部フレーム
後部フレーム28は、フレーム2において後側部分を構成する。後部フレーム28は、図11に示すように、接続部29と、後輪軸受け部30と、揺動復元機構31と、を備える。後輪軸受け部30については、上記実施形態と同じ構造であるため、説明を省略する。
【0112】
接続部29は、後輪軸受け部30に対して、連結フレーム32を接続する部分である。本実施形態では、接続部29は、後輪軸受け部30に対して、連結フレーム32のシャフト33が固定される。具体的には、接続部29とシャフト33との固定は、例えば、溶接による結合、スプライン結合、キー溝とキーとによる結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。また、接続部29は連結体303に対して固定される。連結体303に対する接続部29の固定は、例えば、溶接による結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。
【0113】
本開示でいう「スプライン結合」には、例えば、角形スプライン、インボリュートスプライン、ボールスプライン、三角山セレーション、インボリュートセレーション等による結合が含まれる。
【0114】
(2.1.3)連結フレーム
連結フレーム32は、平面視において、前後方向に長手方向を有するシャフト33を有する。連結フレーム32は、取付け具34と、外筒体35と、シャフト33と、複数(ここでは二つ)の軸受け353と、を備える。
【0115】
取付け具34は、前部フレーム21に対する、連結フレーム32の取付け部分である。取付け具34は、バッテリブラケット27に対し、取付け軸341によって回転可能に取り付けられている。取付け具34の回転軸は、取付け軸341の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。
【0116】
外筒体35は、取付け具34に取り付けられている。本実施形態に係る外筒体35は、取付け具34に対して固定されている。外筒体35は、筒状に形成されている。外筒体35の中心軸は、平面視において前後方向に略平行である。外筒体35の中心軸は、本実施形態では、後方向に行くに従って下方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。
【0117】
シャフト33は、外筒体35に対して、相対的に回転可能に取り付けられている。シャフト33の外筒体35に対する回転軸331は、外筒体35の中心軸と同じであり、またシャフト33の中心軸とも同じである。シャフト33の長手方向の後側の端部は、後部フレーム28に対して、接続部29で固定されている。要するに、シャフト33は、後部フレーム28に対して前部フレーム21を回転可能とする。したがって、本実施形態では、後部フレーム28に対する前部フレーム21の回転軸331は、シャフト33の中心軸であって、平面視で前後方向に沿っている。シャフト33と外筒体35との相対回転をなす回転軸331を、以下では「シャフト33の回転軸331」又は「外筒体35の回転軸331」という場合があるが、両者は同じ軸331のことである。
【0118】
シャフト33の回転軸331の長手方向は、走行面100に対して傾いている。具体的には、シャフト33の回転軸331の長手方向と水平面とのなす角は、0°より大きく、かつ30°以下である。より好ましくは、シャフト33の回転軸331の長手方向と水平面とのなす角は、15°±5°である。
【0119】
外筒体35に対するシャフト33の中心軸に平行な方向への移動は制限されている。外筒体35に対するシャフト33の中心軸に平行な方向への移動の制限は、例えば、E型の止め輪354等で実現される。
【0120】
シャフト33と外筒体35との間には、複数の軸受け353が設けられている。複数の軸受け353は、本実施形態では、外筒体35の長手方向の両端部に取り付けられている。本実施形態に係る軸受け353は、例えば、滑り軸受けである。
【0121】
本実施形態に係る三輪自転車1は、減衰装置36を備える。減衰装置36は、実施形態と同じ構造であるため、説明を省略する。
【0122】
(2.1.4)回転体
回転体310は、後部フレーム28に対する前部フレーム21の回転に応じて、回転軸331で回転する。回転体310は、図4に示すように、外筒体35に取り付けられており、外筒体35に対して固定されている。したがって、回転体310の回転軸は、外筒体35の回転軸331と同じである。回転体310は、固着具3101と、軸部材312と、を備える。なお、軸部材312は、実施形態と同じ構造である。
【0123】
固着具3101は、軸部材312を、外筒体35の回転軸331から、ラジアル方向に離す部材である。固着具3101は、本実施形態では、板状に形成されており、外筒体35の外周面からラジアル方向に突出する。ただし、本開示では、固着具3101は、例えば、棒状、ブロック状等に形成されてもよい。本実施形態に係る固着具3101は、前部フレーム21が基準位置にあるときに、外筒体35の外周面から、回転軸331に直交する方向のうちの上側に突出している。
【0124】
回転体310が、回転軸331を中心として回転すると、軸部材312が回転軸331を中心として回転し、揺動復元機構31に対して、力を加える。揺動復元機構31の構成は上記実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0125】
また、回転体310が、回転軸331を中心として回転すると、プレート81が、シャフト33の外周面に沿って回転する、プレート81の回転軸は、外筒体35の回転軸331と同じである。プレート81の移動は、上記実施形態と同様に、ブレーキ85によって制動される。
【0126】
このように、本実施形態では、連結フレーム32は、前部フレーム21に対して、回転軸331を中心として回転可能に取り付けられ、かつ後部フレーム28に対して、回転軸331を中心として回転不能に取り付けられているが、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0127】
(2.2)変形例2
上記実施形態の三輪自転車1では、モータユニット7がダウンチューブ22に取り付けられる、いわゆるセンタユニット方式のモータユニット7を備えたが、図11に示すように、フロントハブユニット方式のモータユニット7であってもよい。本変形例では、図11において、上記実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0128】
本変形例の三輪自転車1では、図11に示すように、モータユニット7としてのハブモータ75と、踏力検出ユニット70と、踏力検出ユニットブラケット730と、を備える。
【0129】
踏力検出ユニットブラケット730は、踏力検出ユニット70をダウンチューブ22の第一下管221に取り付けられている。踏力検出ユニットブラケット730は、本変形例では、バッテリブラケット27よりも前方に配置されており、シートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されている。なお、本変形例の踏力検出ユニットブラケット730は、上記実施形態のモータブラケット73と、同じ構造であり、踏力検出ユニットブラケット730とモータユニット7とに、共通して使用することができる。踏力検出ユニットブラケット730と、モータブラケット73と、を併せて「取付けブラケット」という場合がある。
【0130】
踏力検出ユニット70は、クランク軸に連結されたペダル95から入力された踏力を検出する。本変形例では、踏力検出ユニット70は、踏力の検出として、トルクを検出する。このトルクの検出は、例えば、磁歪式トルクセンサによって、クランク軸に生じたひずみを検出することで行われる。なお、踏力の検出として、クランク軸の軸回りの回転を、回転センサで検出してもよい。
【0131】
踏力検出ユニット70で検出された検出結果は、ハブモータ75に出力される。
【0132】
ハブモータ75は、踏力検出ユニット70の検出結果に基づいて、アシスト力を発生させる。本実施形態に係るハブモータ75は、前輪92の前輪軸93に対して同心状に取り付けられている。ハブモータ75は、図12に示すように、一対の固定軸76と、モータ装置77と、減速機構78と、ハブケース79と、を備える。
【0133】
固定軸76は、前輪の回転軸に沿って延びており、フレーム2に取り付けられる。固定軸76は、本実施形態では、一対のレッグ261に取り付けられ、当該一対のレッグ261に対して固定される。
【0134】
モータ装置77は、モータ771を駆動源とし、回転動力を出力する。モータ装置77は、モータ771と、ハウジング772とを備える。ハウジング772には、固定軸76の一方が固定されている。モータ771は、ハウジング772の内部に配置されている。モータ771は、ロータ774と、ステータ773とを備える。ロータ774には、出力軸775が取り付けられており、ロータ774と出力軸775とは互いに固定されている。出力軸775の外周には、歯部776が形成されている。
【0135】
減速機構78は、モータ装置77から出力された回転動力が入力されると、減速した上で、ハブケース79を回転させる。減速機構78は、本変形例では、出力軸775の周囲に配置され、かつ歯部776にかみ合った複数の平歯車781を備えている。本変形例では、複数の平歯車781は、出力軸775の周りを公転しないが、公転可能な遊星歯車で構成されてもよい。減速機構78は、ハブケース79の内部に配置されている。平歯車781は、歯部776に対してかみ合い、かつハブケース79の内周面にかみ合っている。
【0136】
ハブケース79は、固定軸76に対して回転可能である。ハブケース79は、本変形例では、モータ装置77のハウジング772に対して、ベアリング791を介して、回転可能に取り付けられている。ハブケース79には、前輪92のホイール921が備えるスポーク942が取り付けられる。なお、ハブケース79は、モータ771が停止していても、前輪の回転軸で回転可能に構成されている。
【0137】
モータ装置77のロータ774が回転すると、その動力は、減速機構78に伝達し、ハブケース79を回転させる。固定軸76周りに回転したハブケース79は、ホイール921を回転させ、前輪92に対してアシスト力を伝達する。
【0138】
変形例2の三輪自転車1では、モータユニット7がハブモータ75によって構成されているため、ダウンチューブ22の下方をシンプルな構造にすることができる。
【0139】
(2.3)その他の変形例
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0140】
上記実施形態では、連結フレーム制動装置8は、プレート81とブレーキ85とを備えたが、本開示では、キャリパーブレーキやドラムブレーキのように、連結フレーム32との間の摩擦力によって、連結フレーム32の回転軸331での回転を制動してもよい。
【0141】
上記実施形態に係る三輪自転車1では、走行速度に応じて、連結フレーム32の回転軸331での回転を制動したが、例えば、制御部51は、停車時(走行速度0km/h)に、ブレーキ85を掛けるように、連結フレーム制動装置8を制御してもよい。これによれば、停車時において前部フレーム21が傾くのを防ぐことができ、ユーザがサドル40に跨るときに乗りやすくすることができる。
【0142】
また、上記実施形態では、三輪自転車1は、制御部51によって、連結フレーム制動装置8を制御したが、本開示では、手動操作によって連結フレーム制動装置8を作動させてもよい。例えば、ハンドル38のグリップ381に、操作用のレバーを設け、操作用のレバーを操作することで、連結フレーム制動装置8を作動させてもよい。
【0143】
上記実施形態では、連結フレーム32は、後部フレーム28に対して、連結フレーム32の回転軸331の周りに回転可能に接続されていたが、本開示では、連結フレーム32は、前部フレーム21に対して、回転軸331周りに回転可能に接続されてもよい。この場合、連結フレーム32と後部フレーム28とは、左右方向に延びた軸周りに回転可能に連結されることが好ましい。
【0144】
上記実施形態では、連結フレーム32と前部フレーム21とは、左右方向に延びた軸周りに回転可能に取り付けられたが、本開示では、連結フレーム32においてシャフト33とは反対側の端部と、対応するフレーム2とは互いに固定されてもよい。例えば、上記実施形態では、連結フレーム32と前部フレーム21とは溶接で固定されてもよい。この場合、連結フレーム32とバッテリブラケット27とが一体であってもよい。
【0145】
上記実施形態では、揺動復元機構31は、後部フレーム28が備えたが、本開示では、前部フレーム21が備えてもよい。また、本開示では、揺動復元機構31は無くてもよい。
【0146】
上記実施形態では、連結フレーム32の長手方向は、走行面100に対して交差していたが、本開示では、走行面100に対して略平行であってもよい。
【0147】
ペダル95は、上記実施形態では、二つの後輪91の一方を駆動したが、二つの後輪91の両方を駆動してもよい。また、ペダル95は、前輪92のみを駆動してもよい。
【0148】
上記実施形態では、電動自転車に基づいて三輪自転車1を説明したが、本開示では、電動自転車でない三輪自転車1であってもよい。
【0149】
上記変形例2では、フロントハブユニット方式のモータユニット7であったが、変形例2のハブモータ75を、二つの後輪91のうちの駆動輪のハブに取り付けた、いわゆるリアハブユニット方式のモータユニット7としてもよい。
【0150】
本開示にて、「略平行」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0151】
また、本開示において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【0152】
(3)態様
以上説明したように、第1の態様に係る三輪自転車(1)は、フレーム(2)と、フレーム(2)に取り付けられた一つの前輪(92)及び二つの後輪(91)と、を備える。フレーム(2)は、一つの前輪(92)が取り付けられた前部フレーム(21)と、二つの後輪(91)が取り付けられた後部フレーム(28)と、連結フレーム(32)と、を備える。連結フレーム(32)は、平面視において前後方向に沿って延びており、前部フレーム(21)と後部フレーム(28)とをつなぐ。連結フレーム(32)は、前部フレーム(21)及び後部フレーム(28)のいずれか一方に対して連結フレーム(32)の長手方向に沿った回転軸(331)で回転可能に接続され、かつ他方に対して回転軸(331)で回転不能に接続される。三輪自転車(1)は、連結フレーム(32)の回転軸(331)での回転を制動する連結フレーム制動装置(8)を更に備える。
【0153】
この態様によれば、例えば、低速時において、前部フレーム(21)の自立が不安定になることを抑えることができ、安定した走行を実現しやすい。
【0154】
第2の態様に係る三輪自転車(1)は、第1の態様において、走行速度を検出するための速度センサ(52)と、速度センサ(52)の検出結果に基づいて連結フレーム制動装置(8)を制御する制御部(51)と、を更に備える。
【0155】
この態様によれば、例えば、三輪自転車(1)が低速になった時を速度センサ(52)によって判断して、連結フレーム制動装置(8)を作動でき、安定した走行を実現することができる。
【0156】
第3の態様に係る三輪自転車(1)では、第2の態様において、制御部(51)は、速度センサ(52)の検出結果に応じて、連結フレーム制動装置(8)による制動力を変化させる。
【0157】
この態様によれば、例えば、より低速時には、制動力を強くし、速度が上昇するに従って、制動力を弱くすることができるため、より安定した走行を実現することができる。
【0158】
第4の態様に係る三輪自転車(1)では、第2又は第3の態様において、制御部(51)は、検出結果が所定速度以下であるときに、連結フレーム(32)の回転軸(331)での回転を制動する。また、制御部(51)は、検出結果が所定速度を超えたときに、連結フレーム(32)の回転軸(331)での回転の制動を解除するように、連結フレーム制動装置(8)を制御する。
【0159】
この態様によれば、前部フレーム(21)が安定して自立する程度に三輪自転車(1)の速度が上昇したときには、連結フレーム制動装置(8)による制動を解除するため、連結フレーム制動装置(8)によらなくても、安定した走行を実現できる。また、このとき、左右方向への旋回も容易となる。
【0160】
第5の態様に係る三輪自転車(1)では、第1~第4のいずれか一つの態様において、連結フレーム制動装置(8)は、連結フレーム(32)に固定されたプレート(81)と、プレート(81)の移動を制動するブレーキ(85)と、を有する。
【0161】
この態様によれば、必要に応じて、連結フレーム制動装置(8)において、強い制動力を発揮することができる。
【0162】
第6の態様に係る三輪自転車(1)では、第1~第5のいずれか一つの態様において、連結フレーム(32)の長手方向は、一つの前輪(92)の下端及び二つの後輪(91)の下端を通る仮想平面に対して傾斜している。
【0163】
この態様によれば、左右方向に傾きやすい前部フレーム(21)としながら、低速時には、安定した走行を実現することができる。
【0164】
第7の態様に係る三輪自転車(1)は、第1~第6のいずれか一つの態様において、モータユニット(7)を更に備える。モータユニット(7)は、モータを有し、一つの前輪(92)及び二つの後輪(91)の少なくとも一つに対し、回転動力を出力する。
【0165】
この態様によれば、電動自転車において、低速時にも安定した走行を実現できる。
【0166】
第2~第7の態様に係る構成については、三輪自転車(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0167】
2 フレーム
21 前部フレーム
28 後部フレーム
32 連結フレーム
331 回転軸
51 制御部
52 速度センサ
7 モータユニット
8 連結フレーム制動装置
81 プレート
85 ブレーキ
91 後輪
92 前輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12