(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】超音波送受信器、および超音波流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/667 20220101AFI20230519BHJP
G01F 1/66 20220101ALI20230519BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01F1/667 B
G01F1/66 101
H04R17/00 330J
(21)【出願番号】P 2019142641
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100115554
【氏名又は名称】野村 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石崎 祐大
(72)【発明者】
【氏名】桝田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】永原 英知
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-072461(JP,A)
【文献】特開2003-163995(JP,A)
【文献】特表平06-500389(JP,A)
【文献】特開2002-204498(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212511(WO,A1)
【文献】特開2005-172657(JP,A)
【文献】特開2004-144701(JP,A)
【文献】特開2003-315122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66- 1/667
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
前記圧電素子と直接または他の層を介して積層して接合された複数の音響整合層と、を備え、
前記複数の音響整合層は、前記圧電素子と直接または他の層を介して接合された円板状の第1音響整合層と、前記第1音響整合層に積層して接合された円板状の第2音響整合層と、前記第2音響整合層に積層して接合された円板状の第3音響整合層と、を有し、
第1音響整合層と第2音響整合層との接合部の全周は、前記第1音響整合層の接合面の外周より内側であり、
第2音響整合層と第3音響整合層との接合部の全周は、前記第2音響整合層の接合面の外周より内側である
超音波送受信器。
【請求項2】
各音響整合層の厚みを、それぞれを伝搬する超音波の波長の約1/4とした請求項1に記載の超音波送受信器。
【請求項3】
前記音響整合層の各音響インピーダンスを、前記圧電素子に近い程大きくした請求項1又は2に記載の超音波送受信器。
【請求項4】
被計測流体が流れる矩形断面の計測流路と、
前記計測流路の対向する2つの面の間に平行に挿入され、前記計測流路を多層に分割する複数の仕切り板と、
前記計測流路の前記2つの面と異なる面の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、を備え、
前記一対の超音波送受信器の各々が請求項1から3のいずれかに記載された超音波送受信器である、超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧電素子等を用いて超音波の送受信を行う超音波送受信器、およびこれを用いた超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超音波が伝搬路伝達する時間を計測し、流体の移動速度を測定して流量を計測する超音波流量計がガスメータ等に利用されつつある。超音波の伝搬時間を計測して流量計測を行う超音波流量計は、一般的に一対の超音波送受信器を被計測流体が流れる計測流路の上流と下流に配置し、この超音波送受信器間の超音波の送信と受信により超音波の伝搬時間を計測している。
【0003】
被計測流体が気体である場合、気体と圧電素子との間の音響インピーダンスの差が大きいため、超音波は圧電素子と気体の界面で反射されやすい。このため、超音波送受信器は、超音波を圧電素子から気体に効率よく入射させるため、圧電素子と気体との界面に音響整合層が設けられている。
【0004】
そして、より放射効率を良くする為、密度が高く音速の速い第1音響整合層と、それよりも密度が小さく音速の遅い第2音響整合層とを積層して構成された音響整合層を用い、被計測流体である気体と音響インピーダンス整合した第2音響整合層を気体側に配置することで、音響インピーダンスが十分に小さい気体に整合できる超音波送受信器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では超音波の受信波の残響が大きいために、伝搬時間を計測する為の基準点を正確に検知できずにガス流量を誤検知する可能性があった。
【0007】
次に、超音波流量計における伝搬時間の計測方法について、
図9、
図10を用いて説明する。
【0008】
従来のこの種の流体の流量計測装置は、
図9に示すようなものが一般的であった。この流量計測装置100は、被計測流体の流れる流路101に設置した第1超音波送受信器102および第2超音波送受信器103と、第1超音波送受信器102、第2超音波送受信器103の送受信を切り換える切換手段104と、第1超音波送受信器102及び第2超音波送受信器103を駆動する送信手段105と、受信側の超音波送受信器で受信し切換手段104を通過した受信信号を受信する受信手段106と、受信した信号を所定の振幅まで増幅する増幅手段107と、増幅手段107で増幅された受信信号の電圧と基準電圧とを比較する基準比較手段108とを備えている。
【0009】
また、基準比較手段108で比較される基準電圧を設定する基準電圧設定手段109、基準比較手段108の比較結果に基づき、時間計測の基準点を判定する判定手段110、判定手段110の結果に基づき、超音波の伝搬時間を計時する計時手段111、計時手段111で計測された伝搬時間に基づき被計測流体の流量を算出する流量演算手段112、
及び、全体の制御を行う、マイクロコンピューター等で構成された制御手段113を備えている。
【0010】
次に、
図10を用いて計時手段111による超音波の伝搬時間の計測方法を説明する。
図10は、切換手段104で送信側に設定された超音波送受信器(第1超音波送受信器102または第2超音波送受信器103)の駆動信号Dと切換手段104で受信側に設定された超音波送受信器(第1超音波送受信器102または第2超音波送受信器103)で受信され増幅手段107で最大振幅が所定の振幅になるように増幅された受信信号Sを示している。
【0011】
そして、基準比較手段108で受信信号Sと基準電圧設定手段109で設定された基準電圧Vrを比較し、基準電圧Vrより受信信号Sが大きくなった後の受信信号のゼロクロス点R1を判定手段110で検知する。
【0012】
ここでは、基準電圧Vrは受信信号Sの第3波目を検知できる電圧に設定されているが、これは、受信信号Sの最大振幅が所定の振幅になるように増幅手段107で増幅すると、第3波目の振幅も同じ増幅率で増幅されるので第3波目も所定範囲の電圧になることを前提としている。
【0013】
計時手段111は、起点T0からゼロクロス点R1までの時間TPを計時し、受信開始点R0からゼロクロス点R1までの時間TRを減算することで、伝搬時間TP0を求めることができる。
【0014】
そして、上記の方法により、切換手段104で、第1超音波送受信器102と第2超音波送受信器103の送受信を切り替えることで、第1超音波送受信器102から第2超音波送受信器103に至る伝搬時間t1と第2超音波送受信器103から第1超音波送受信器102に至る伝搬時間t2を求めることができる。
【0015】
そして、被測定流体の流速をv、流路の断面積をS、センサ角度をφ、伝搬距離をLとすると、流量Qは次式で求めることが出来る。
【0016】
Q=S・v=S・L/2・cosφ(n/t1-n/t2) ・・・(式1)
流量演算手段112では、(式1)に流量に応じた係数をさらに乗じて流量を算出する。
【0017】
しかしながら、超音波送受信器として、従来の構成の超音波送受信器を用いると、残響により受信信号の波形が歪むために、ゼロクロス点R1を正しく検知できない場合が生じることが分かった。
【0018】
図11は、従来の超音波送受信器の構成を示すもので、
図11(a)は超音波送受信器200の断面図、
図11(b)は、その平面図である。超音波送受信器200は、有天筒状の金属製のセンサケース201の天面内部201aに圧電素子202を接着し、天面外部201bに円板状の第1音響整合層203と、第1音響整合層203と同じ外径とした円板状の第2音響整合層204が積層、接合されている。
【0019】
図12は、超音波送受信器200を用いた場合の受信波形の一例を示しており、図に示す様に、正規の最大振幅Aの後に比較的大きな残響波が見られ、場合によっては最大振幅Aと同等若しくは、大きな振幅Bが発生している。
【0020】
超音波送受信器が送受信する超音波の波形は、主に圧電素子の厚さ、形状、センサケースの材質、厚さ、形状、第1音響整合層、および第2音響整合層の形状、厚み、音響イン
ピーダンス等に影響される。
【0021】
そして、
図12に示す超音波の受信波形は、音響整合層の面方向の形状に影響を受けることが我々の検討から分かった。即ち、
図11に示す超音波送受信器200の様に第1音響整合層203の接合面の面積と第2音響整合層204の接合面の面積が同じ場合、もしくは、第1音響整合層203の接合面の面積より第2音響整合層204の接合面の面積が大きい場合、被計測流体に放射される超音波は、圧電素子202の振動がセンサケース201、第1音響整合層203、第2音響整合層204を介して最短距離で被計測流体に伝搬する直接波205と、圧電素子202から第1音響整合層203の周囲方向に伝搬して第1音響整合層203と第2音響整合層204の接合部207で反射等により、位相遅れとなった間接波206が合成されたものとなり、この間接波206により、残響が発生すると考えられる。
【0022】
なお、
図11に示す間接波206は、模式的に示すもので、図示した伝搬経路に限定されるものではない。
【0023】
この様に大きな残響波の影響により最大振幅の位置にばらつきが生じると、増幅手段107で最大振幅が所定の振幅になるように増幅しても、検知したい第3波目が想定された振幅にならない為に、前後の第2波目や第4波目を検知してしまい、正しい伝搬時間が計測できないことになる。即ち、式(1)における伝搬時間t1、t2が正確に計測できなくなり、流量の計測精度が低下することになる。
【0024】
例えば、
図12に示す受信波形において、振幅Bが、正規の最大振幅Aより大きくなると、増幅手段107はこの振幅Bが所定の振幅になるように受信信号を増幅する。すると、本来検知したい第3波目が基準電圧以上に増幅されない為に、基準比較手段108は第4波目を検知することになる。
【0025】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、超音波受信波形の残響を抑制して安定した超音波信号の計測を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波送受信器は、圧電素子と、前記圧電素子と直接または他の層を介して積層して接合された複数の音響整合層と、を備え、前記複数の音響整合層は、前記圧電素子と直接または他の層を介して接合された円板状の第1音響整合層と、前記第1音響整合層に積層して接合された円板状の第2音響整合層と、前記第2音響整合層に積層して接合された円板状の第3音響整合層と、を有し、第1音響整合層と第2音響整合層との接合部の全周は、前記第1音響整合層の接合面の外周より内側であり、第2音響整合層と第3音響整合層との接合部の全周は、前記第2音響整合層の接合面の外周より内側である、ものである。
【0027】
このような構成によって、圧電素子側の音響整合層から次の音響整合層への間接波の伝搬を抑制することができ、この超音波受波器を超音波流量計として用いると、超音波送受信器の残響レベルを低減することができ、安定した超音波の伝搬時間の計測を実現する事が出来る。
【発明の効果】
【0028】
本発明の超音波送受信器によると、超音波受信波形の残響を低減させることができ、流量計測における、伝搬時間の誤計測を低減し安定した流量計測を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】(a)実施の形態1における超音波送受信器の断面図、(b)同平面図
【
図2】実施の形態1における超音波受波器の受信波形のイメージ図
【
図3】(a),(b)実施の形態1における超音波送受信器の変形例を示す断面図
【
図4】(a)実施の形態1における超音波送受信器の変形例を示す平面図、(b)実施の形態1における超音波送受信器の変形例を示す断面図
【
図5】(a),(b)実施の形態2における超音波流量計に用いる超音波送受信器の斜視図、(c)同平面図、(d)(c)のA-A断面図
【
図6】(a)実施の形態2における超音波流量計に用いる流路ブロックの斜視図、(b)(a)のB矢視図、(c)実施の形態2における超音波流量計に用いるセンサ固定部材の斜視図
【
図7】(a)実施の形態2における超音波流量計の側面図、(b)(a)のC-C要部断面図
【
図8】実施の形態2における第2音響整合層の短辺の幅と超音波の出力と残響の大きさを説明するグラフ
【
図10】超音波流量計における伝搬時間の計測方法を説明する為の駆動波と受信波のイメージ図
【
図11】(a)従来の超音波送受信器の断面図、(b)同平面図
【
図12】従来の超音波受波器の受信波形を示すイメージ図
【発明を実施するための形態】
【0030】
第1の発明は、圧電素子と、前記圧電素子と直接または他の層を介して積層して接合された複数の音響整合層と、を備え、前記音響整合層同士の接合部の少なくとも一部は、前記圧電素子側に配置された音響整合層の接合面の外周より内側としたもので、圧電素子側の音響整合層から次の音響整合層への間接波の伝搬を抑制することができる。
【0031】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の音響整合層は、前記圧電素子と直接または他の層を介して接合された第1音響整合層と前記第1音響整合層に積層して接合された第2音響整合層であり、前記第1音響整合層は円板状とし、前記第2音響整合層は短辺が前記第1音響整合層の直径より短い長方形としたものである。
【0032】
第3の発明は、第2の発明において、前記圧電素子は、接合面が長方形であり、長辺の方向を前記第2音響整合層の長辺方向に一致させたものである。
【0033】
第4の発明は、第1~3のいずれか1つの発明において、前記音響整合層の厚みを、それぞれを伝搬する超音波の波長の約1/4としたものである。
【0034】
第5の発明は、第1~4のいずれか1つの発明において、前記音響整合層の各音響インピーダンスを、前記圧電素子に近い程大きくしたものである。
【0035】
第6の発明は、被計測流体が流れる矩形断面の計測流路と、前記計測流路の対向する2つの面の間に平行に挿入され、前記計測流路を多層に分割する複数の仕切り板と、前記計測流路の前記2つの面と異なる面の上流と下流に配置された一対の超音波送受信器と、を備え、前記一対の超音波送受信器の各々が第2から5のいずれか1つの発明の超音波送受信器である、超音波流量計である。
【0036】
第7の発明は、第6の発明において、前記超音波送受信器は、前記第2音響整合層の長辺方向が前記仕切り板に平行となるように、前記計測流路に配置したものである。
【0037】
第8の発明は、第7の発明において、前記第2音響整合層の短辺方向の長さを前記仕切り板の間隔以上としたものである。
【0038】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同
一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0039】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における超音波送受信器を示すもので、
図1(a)は断面図、
図1(b)は平面図である。
【0040】
図1において、超音波送受信器10は、有天筒状の導電性を有するケース11と、ケース11の天面内部11aに接合部19で接合された圧電素子12と、ケース11の天面外部11bに接合部18で接合された第1音響整合層13と、第1音響整合層13に接合部17接合された第2音響整合層14から構成されている。
【0041】
圧電素子12の両面には電極12a、12bが設けられており、電極12aは接合部19でケース11に導通可能に接合されており、電極12bとケース11間に交流電圧を印加する事により、圧電素子12はその電圧に応じた変形を生じる。圧電素子12で生じた変形は第1音響整合層13と、第2音響整合層14を介して、被計測流体へと伝搬する。
【0042】
本実施の形態において、第1音響整合層13と第2音響整合層14は共に円板状で、第2音響整合層14の直径を第1音響整合層13の直径より小さくし、同心に積層することで、第1音響整合層13と第2音響整合層14の接合部17が圧電素子12側に接合された第1音響整合層13の接合面13aの外周よりも内側に位置するように構成している。
【0043】
そして、
図1(a)に示す様に、本実施の形態の超音波送受信器10において、被計測流体に放射される超音波は、直接波15が主となり、被計測流体に伝搬されるが、直接波以外の超音波は第1音響整合層13と被計測流体の整合が取れない為に減衰する。従って、間接波16の被計測流体への伝搬を抑制することができる。
【0044】
なお、
図1(a)に示す間接波16は模式的に示したものであり、この伝搬経路に限定されるものではない。
【0045】
図2は、本実施の形態の超音波送受信器10を用いた場合の受信波のイメージ図で、図に示す様に、
図11に示す従来の受信波に比べ、残響部分が急速に減衰していることが分かる。
【0046】
以上の様に、本実施の形態の超音波送受信器10により残響波の影響を抑制することができるので、本実施の形態の超音波送受信器10を
図9に示した超音波流量計に用いることで、増幅手段107で最大振幅が所定の振幅になるように増幅するこができ、検知したい第3波目が想定された振幅となり、正しい伝搬時間が計測できる。
【0047】
なお、第1音響整合層13の厚みt1および第2音響整合層14の厚みt2は、音響整合層中を伝搬する音波の波長の約1/4の厚さを有していることが望ましい。超音波送受信器を駆動させる周波数をf、音響整合層の音速をVとすると音波の波長λはλ=V/fで求められる。よって、音響整合層の厚みdは、d=1/4λで求められる。このような構造にすることにより、センサ内部で反射する超音波の位相をそろえて効率よく超音波の送受信を可能とすることができる。
【0048】
また、圧電素子12の振動を効率よく流体へ伝搬するには音響インピーダンスの整合を取ることが重要である。本実施の形態では、第1音響整合層13はケース11の天面外部
11bに張り付けられており、第2音響整合層14は第1音響整合層13に接合している。第1音響整合層13の音響インピーダンスをZaとし、第2音響整合層14の音響インピーダンスをZbとすると、Za>Zbの関係を満たしている。Zaは圧電素子12の音響インピーダンスよりも小さい。このような音響特性を有する複数の音響整合層を有することにより、圧電素子の振動を効率よく被計測流体中に伝搬することができる。
【0049】
(変形例)
図3、
図4は、本実施の形態における超音波送受信器の変形例を示す図である。なお、
図1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0050】
被計測流体である被伝播物質との整合を図る為に、2層に限らず複数の音響整合層を積層することが知られているが、
図3(a)は、超音波送受信器20の側面断面図を示すもので、ケース11の天面外部11bに音響整合層として、第1音響整合層23、第2音響整合層24、第3音響整合層25を順番に積層して接合することで音響整合層を3層としたものである。
【0051】
この超音波送受信器20においては、第1音響整合層23と第2音響整合層24の接合部27を、第1音響整合層23の接合面23bの外周より内側にし、更に、第2音響整合層24と第3音響整合層25の接合部25bを、第2音響整合層24の接合面24bの外周より内側にすることで、圧電素子12からの間接波16a,16bの第3音響整合層25への伝搬を低減することができ、残響を抑制することができる。
【0052】
同様に、音響整合層を3層より多くする場合でも、音響整合層の接合部を圧電素子側に配置された音響整合層の接合面の外周よりも内側にすることで、間接波16の伝搬を抑制することができ、残響を抑制することができる。
【0053】
図3(b)は、超音波送受信器30の側面断面図を示すもので、超音波送受信器10における第2音響整合層14を円錐台の形状とした第2音響整合層34を用いたものである。この超音波送受信器30において、第2音響整合層34の超音波の伝搬する放射面34bの面積は、第1音響整合層13の接合面13bの面積とほぼ同じとしているが、第1音響整合層13と第2音響整合層14との接合部17は、第1音響整合層13の接合面13bよりも内側としている為、間接波16の第2音響整合層34への伝搬を回避することができ、残響を抑制することができる。
【0054】
図4(a)は、超音波送受信器70の平面図を示すもので、超音波送受信器10における第2音響整合層14の整合面(超音波の放射面)の形状を長方形とし、短辺方向の長さを第1音響整合層13の直径よりも短くした第2音響整合層74を用いたものである。この超音波送受信器70においては、第2音響整合層74の長辺方向の長さに関わらず、第1音響整合層13の側方部Cからの位相遅れの間接波が第2音響整合層74への伝搬を回避することができることで、残響を抑制することができる。
【0055】
図4(b)は、超音波送受信器80の側面断面図を示すもので、
図1に示す超音波送受信器10のケース11を無くして、圧電素子12に直接、第1音響整合層13を接合したものである。この場合も、圧電素子12からの直接波以外の超音波の第3音響整合層25への伝搬を低減することができ、残響を抑制することができる。
【0056】
以上の様に、本実施の形態による超音波送受信器によると、音響整合層同士の接合部を少なくとも1部を圧電素子側に配置された音響整合層の接合面の外周よりも内側とすることで、残響を抑制することができる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、
図3、
図4により、種々の構成を示して例示したが、接合部の全周の一部が圧電素子側に配置された音響整合層の接合面の外周よりも内側となれば、圧電素子からの直接波以外の超音波が次の音響整合層に伝搬することを削減できることは言うまでもなく、音響整合層の形状は適宜選択することができる。
【0058】
また、間接波が次の音響整合層へ伝搬するのを抑制するには、音響整合層同士の接合部全体が圧電素子側に配置された音響整合層の接合面の外周よりも内側にある方が望ましいことは言うまでもない。
【0059】
(実施の形態2)
次に、
図5、
図6、
図7を用いて、実施の形態1で説明した超音波送受信器を用いた超音波流量計について説明する。
【0060】
図5は、本実施の形態に用いる超音波送受信器である。
図5(a)は、圧電素子側から見た斜視図、
図5(b)は整合層側から見た斜視図、
図5(c)は、整合層から見た平面図、
図5(d)は、
図5(c)のA-A断面図である。
【0061】
図に示す様に、超音波送受信器40は、有天筒状の金属製のケース41の天部内側41aに圧電素子42の電極面42aが導通可能に接合されており、電極面42bには、リード線46が半田49により接合されている。また、ケース41にはリード線47が溶接にて接合されており、リード線46とリード線47に交流電圧を印加することで圧電素子42は所定の周波数で振動する。
【0062】
ケース41の開放端にはフランジ41dが形成されており、フランジ41dの外周には防振部材48がモールドで一体に形成されている。また、防振部材48により、リード線46とリード線47はケース41に保持されている。
【0063】
また、ケース41の天部外側41bには、直径10.8mmの円板状の第1音響整合層43が接合されており、更に、第1音響整合層43には第2音響整合層44が接合されている。ここで、第2音響整合層44は、長辺の長さ9.5mm、短辺の長さ5.5mmの略長方形とすることで、第1音響整合層43の接合面の外周よりも内側となるように接合されている。なお、第1音響整合層43と第2音響整合層44の厚みは、前述のように伝搬する超音波の周波数により最適値が設定される。
【0064】
圧電素子42は、直方体であり、ケース41との接合面は第2音響整合層44の外径よりも小さく構成されると共に、長手方向が、第2音響整合層44の長手方向に一致するように配置されている。また、圧電素子42は、縦振動モード励起の高効率化の為のスリット42cを有している。
【0065】
さらに、フランジ41dには、第2音響整合層44の長手方向に当たる外周に位置決めの為の一対の凹部41cが形成されている。
【0066】
図6は、本実施の形態における超音波流量計の流路ブロックの斜視図(
図6(a))と、
図6(a)のB矢視図(
図6(b))と超音波送受信器を流路ブロックに固定する為のセンサ固定部材の斜視図(
図6(c))である。
【0067】
図6に示す様に、流路ブロック50は、被計測流体が流れる矩形断面の筒状の計測流路51を有しており、計測流路51は被計測流体の流れ方向に沿って平行となるように配置した2枚の仕切り板52により、3つの分割流路53(第1の分割流路53a、第2の分割流路53b、第3の分割流路53c)に分割され、全体として多層流路を形成している
。さらに、被計測流体の入口54、出口55を有している。
【0068】
また、流路ブロック50は、超音波送受信器を取り付ける為の開口部を有する上流側センサ取付部56aと下流側センサ取付部56b、超音波送受信器を取り付け時の位置決め凸部57、後述のセンサ固定部材の係止部58、回路基板の係止部59を備えている。
【0069】
図7は、本実施の形態の超音波流量計の概略図であり、
図7(a)に示す様に、超音波流量計60は、流路ブロック50の上流側センサ取付部56aと下流側センサ取付部57bには一対の超音波送受信器40が取り付けられている。ここで、超音波送受信器40は、凹部41cが位置決め凸部57に位置するように取り付けられた後、センサ固定部材61のヒンジ61aが、流路ブロック50に設けられた係止部58に係合することで上流側センサ取付部56aと下流側センサ取付部56bに押圧されて固定されている。
【0070】
図7(b)は、
図7(a)のC-C要部断面図で、第2音響整合層44と仕切り板52との関係を示すもので、図に示す様に、第2音響整合層44は、多層流路の第2の分割流路53bに対向する位置に配置され、第2音響整合層44の幅W(短辺の長さ)は、2つの仕切り板52の外側に合わせており、仕切り板の間隔X(2.9mm)に対して大きくしている。
【0071】
図8は、第2音響整合層44の短辺の幅を横軸として、超音波信号の出力と残響の大きさグラフに示したイメージであり、図に示す様に、第2音響整合層44の幅を大きくするほど出力が大きくなるが、ある大きさになると残響が大きくなることから、最適な寸法として、5.5mmとしている。
【0072】
このように、第2音響整合層44の幅(短辺の長さ)を第1音響整合層43の接合面の外周よりも内側になるようにすることで第1音響整合層43の側面での反射波が第2音響整合層44に伝搬することを防止することができ、超音波信号の残響を抑制すると共に、超音波信号を中央の第2の分割流路53bに効率よく伝搬することができる。
【0073】
また、流路ブロック50の上部には、超音波送受信器40の駆動回路や伝搬時間を計測して被計測流体の流速や流量を演算する計測回路を備えた回路基板62が載置され、係止部59で係止されている。そして、超音波送受信器40のリード線46,47は、回路基板62に半田付け等で接続されている。また、点線で示す基板ケース63が回路基板62を覆うように載置されている。
【0074】
そして、上流側の超音波送受信器40からの超音波信号は矢印P1の経路で対向する流路の内壁51aで反射した後、矢印P2の経路で下流側の超音波送受信器40で受信される。
【0075】
以上の構成により、本実施の形態の超音波流量計60は、
図9を用いて説明したように、前述の式(1)により、流量を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる超音波送受信器は、超音波の残響の低減と超音波伝搬経路の限定が可能で、車載向けのセンシングデバイス等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0077】
10、20、30、40、70、80 超音波送受信器
11、41 ケース
12、42 圧電素子
13、23、43、第1音響整合層(音響整合層)
14、24、34、44、74 第2音響整合層(音響整合層)
25 第3音響整合層(音響整合層)
51 計測流路
52 仕切り板
60 超音波流量計