(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】配線用筐体、及びそれを備える電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230519BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20230519BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H05K7/00 L
H05K5/02 L
(21)【出願番号】P 2019164824
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】児島 慎二
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149889(JP,A)
【文献】特開2017-093220(JP,A)
【文献】実開昭51-002693(JP,U)
【文献】実開平05-062076(JP,U)
【文献】特開平10-098276(JP,A)
【文献】特開2016-042064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H05K 7/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に取り付けられて、前記電気機器に電気的に接続される電線を収容する収容ケースを備え、
前記収容ケースは、前記電気機器が設置場所に設置される設置状態での下部に開口を有する第1部材と、前記第1部材の前記開口を閉塞するように前記第1部材に組み合わされる第2部材とを備え、
前記第1部材と前記第2部材とが組み合わされた状態で、前記収容ケースには前記電線を外部から挿入可能な電線導入口が形成され、
前記第1部材と前記第2部材との間には、前記電線導入口を塞ぐ蓋部材が取付可能であり、
前記第1部材は、前記蓋部材の外周部分が嵌合する嵌合構造を有し、
前記第2部材は、前記設置状態において前記嵌合構造の下側に配置されて、落下してくる水を溜める水受け部を有している、
配線用筐体。
【請求項2】
前記水受け部は、前記第2部材において、前記電線導入口よりも内側の部位に設けられた第1壁と、前記第1壁よりも内側の部位に設けられた第2壁との間に、水を溜めるための空間を有する、
請求項1に記載の配線用筐体。
【請求項3】
前記蓋部材の下部は、前記第1壁と前記電線導入口との間に配置される、
請求項2に記載の配線用筐体。
【請求項4】
前記設置状態において、前記第1壁の高さは前記第2壁の高さよりも低い、
請求項2又は3に記載の配線用筐体。
【請求項5】
前記第2部材は、前記水受け部に溜まる水を外部に流すための水抜き孔を少なくとも1つ備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の配線用筐体。
【請求項6】
前記水受け部が、前記第1部材の内側面に沿って内側に延びている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の配線用筐体。
【請求項7】
前記水受け部は、前記第2部材において前記電線導入口が設けられる端部の全体に亘って更に設けられている、
請求項6に記載の配線用筐体。
【請求項8】
前記嵌合構造は、前記蓋部材の外周部分が挿入される溝部を有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の配線用筐体。
【請求項9】
前記蓋部材において前記溝部に挿入される挿入部位には、前記挿入部位における内側面に、前記溝部の内側寄りの側面と接触するリブが設けられており、
前記溝部の内側寄りの側面に前記リブが接触することによって、前記溝部の外側寄りの側面に前記挿入部位における外側面が押し付けられる、
請求項8に記載の配線用筐体。
【請求項10】
前記蓋部材には、前記蓋部材の内側面を外側に向けた状態で前記蓋部材の外周部分が前記溝部に挿入される場合に前記第1部材と干渉することによって前記第1部材への取り付けを阻止する誤接続防止構造が設けられている、
請求項8又は9のいずれか1項に記載の配線用筐体。
【請求項11】
前記蓋部材を、更に備える、
請求項1~10のいずれか1項に記載の配線用筐体。
【請求項12】
電力変換を行う電力変換回路を収容する装置本体と、
請求項1~11のいずれか1項に記載の配線用筐体と、を備え、
前記配線用筐体が備える前記収容ケースは前記装置本体に取り付けられ、
前記収容ケースが、外部回路と前記電力変換回路とを電気的に接続する前記電線を収容する、
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線用筐体、及びそれを備える電力変換システムに関する。より詳細には、本開示は、電気機器に電気的に接続される電線を収容するための配線用筐体、及びそれを備える電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、直流電力を交流電力に電力変換する電装部品を、前面が開口した箱状の筐体の内部に収納した電力変換装置(電気機器)を開示する。筐体の背面の下部には、貫通口が設けられている。貫通口に取り付けられるカバー部(収容ケース)の背面側には第1開口部(電線導入口)が設けられている。
【0003】
この電力変換装置が壁面に設置される場合、壁面の孔から第1開口部を通してカバー部の内部に通された電線が、貫通口を通して筐体の内部に挿入されて、電装部品に電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電力変換装置が屋外に設置される場合、カバー部の底部に接続された電線管を通して筐体の内部に電線が導入され、この電線が電装部品に電気的に接続される。この場合、カバー部の背面側の第1開口部は補助カバーで塞がれるのであるが、カバー部と補助カバーとの間の隙間からカバー部の内部に雨水等が入り込む可能性があった。
【0006】
本開示の目的は、収容ケースの内側への水の浸入を抑制可能な配線用筐体及びそれを備える電力変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の配線用筐体は、電気機器に取り付けられて、前記電気機器に電気的に接続される電線を収容する収容ケースを備える。前記収容ケースは、前記電気機器が設置場所に設置される設置状態での下部に開口を有する第1部材と、前記第1部材の前記開口を閉塞するように前記第1部材に組み合わされる第2部材とを備える。前記第1部材と前記第2部材とが組み合わされた状態で、前記収容ケースには前記電線を外部から挿入可能な電線導入口が形成される。前記第1部材と前記第2部材との間には、前記電線導入口を塞ぐ蓋部材が取付可能である。前記第1部材は、前記蓋部材の外周部分が嵌合する嵌合構造を有する。前記第2部材は、前記設置状態において前記嵌合構造の下側に配置されて、落下してくる水を溜める水受け部を有する。
【0008】
本開示の一態様の電力変換システムは、電力変換を行う電力変換回路を収容する装置本体と、上記の配線用筐体と、を備える。前記配線用筐体が備える前記収容ケースは前記装置本体に取り付けられる。前記収容ケースが、外部回路と前記電力変換回路とを電気的に接続する前記電線を収容する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、収容ケースの内側への水の浸入を抑制可能な配線用筐体及びそれを備える電力変換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る配線用筐体が電力変換システムに取り付けられた状態の要部の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の電力変換システムの一部破断した斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の配線用筐体を上側から見た外観斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の配線用筐体を下側から見た外観斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の配線用筐体の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、同上の配線用筐体が備える蓋部材の斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の電力変換システムを含む給電システムのシステム構成図である。
【
図9】
図9は、同上の電力変換システムの外観斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の電力変換システムを前側から見た分解斜視図である。
【
図11】
図11は、同上の電力変換システムを後側から見た分解斜視図である。
【
図12】
図12は、同上の電力変換システムを後側から見た分解斜視図である。
【
図13】
図13は、同上の電力変換システムが壁に設置された状態を一部破断した側面図である。
【
図14】
図14は、同上の電力変換システムが野立て設置される状態を後側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態)
(1)概要
本実施形態の配線用筐体、及びそれを備える電力変換システムについて
図1~
図14を参照して説明する。以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
本実施形態の配線用筐体7は、
図1及び
図2に示すように、電気機器(電力変換システム100)に取り付けられて、電気機器(電力変換システム100)に電気的に接続される電線W1を収容する収容ケース70を備える。
【0013】
収容ケース70は、
図1~
図7に示すように、電気機器(電力変換システム100)が設置場所に設置される設置状態での下部に開口45を有する第1部材4と、第1部材4の開口45を閉塞するように第1部材4に組み合わされる第2部材5とを備える。
【0014】
第1部材4と第2部材5とが組み合わされた状態で、収容ケース70には電線W1を外部から挿入可能な電線導入口43が形成される。
【0015】
第1部材4と第2部材5との間には、電線導入口43を塞ぐ蓋部材6が取付可能である。
【0016】
第1部材4は、蓋部材6の外周部分が嵌合する嵌合構造47を有している。
【0017】
第2部材5は、水受け部50を有している。水受け部50は、設置状態において嵌合構造47の下側に配置されて、落下してくる水を溜めるように構成されている。
【0018】
以下の実施形態では、電気機器が、例えば太陽光発電モジュール201(
図8参照)から出力される直流電圧を交流電圧に変換する電力変換システム100である場合について説明を行う。電力変換システム100は屋内又は屋外に設置されて使用される。電力変換システム100の装置本体1は、
図9、
図10及び
図13に示すように、住宅等の施設の壁300に固定した状態で使用される場合と、
図2及び
図14に示すように屋外に設置された架台等に固定して使用される場合とがある。屋外設置の場合、電力変換システム100は、例えば、太陽電池パネルの下側に配置されており、
図2及び
図14に示すように、鋼材等を組み合わせて構成された架台の水平部材320に装置本体1が固定された状態で使用される。電力変換システム100は、壁300に固定される場合も、屋外に設置された架台を利用して設置される場合も、
図2におけるZ軸方向を上下方向とした状態で使用される。
【0019】
以下の説明では、
図2等におけるX軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向(奥行き方向)、Z軸方向を上下方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Y軸方向の正の向きを前側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ここにおいて、電気機器(電力変換システム100)の設置場所は、例えば、建物の壁300又は屋外に設けられた架台等であり、電気機器が設置場所に設置された状態での下側は、Z軸方向の負の向きとなる。ただし、これらの方向は一例であり、電力変換システム100の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0020】
上述のように、電線W1を収容する収容ケース70は第1部材4と第2部材5とを含む。第1部材4と第2部材5とが組み合わされた収容ケース70には、外部(本実施形態では後側)から電線W1を挿入可能な電線導入口43が形成されている。電線導入口43が使用されない場合、第1部材4と第2部材5との間に蓋部材6が取り付けられるのであるが、外部から蓋部材6に水がかかると、第1部材4と蓋部材6との間の隙間から収容ケース70の内部に水が浸入する可能性がある。ここで、第1部材4と蓋部材6との間の隙間から収容ケース70の内部に浸入した水が蓋部材6を伝って落下すると、蓋部材6を伝って落下した水は水受け部50に溜められる。これにより、第2部材5において水受け部50が設けられた部位から内側(つまり、外部に繋がる電線導入口43と反対側)に水が浸入しにくくなるので、収容ケース70の内側への水の浸入を抑制可能な配線用筐体7を提供することができる。
【0021】
また、本実施形態の配線用筐体7は、例えば、電気機器の一種である電力変換システム100に備えられる。電力変換システム100は、電力変換を行う電力変換回路101(
図8参照)を収容する装置本体1と、配線用筐体7と、を備える。配線用筐体7が備える収容ケース70は装置本体1に取り付けられる。収容ケース70は、外部回路(例えば太陽光発電モジュール201、蓄電池ユニット206又は分電盤203等の回路)と電力変換回路101とを電気的に接続する電線W1を収容する。
【0022】
このように、電力変換システム100は配線用筐体7を備え、外部回路と電力変換回路101とを電気的に接続する電線W1は配線用筐体7に収容される。ここで、収容ケース70の電線導入口43が使用されない場合には、第1部材4と第2部材5との間に蓋部材6が取り付けられる。第2部材5には蓋部材6を伝って落ちてくる水を溜める水受け部50が設けられているので、収容ケース70の内側への水の浸入を抑制可能な電力変換システム100を提供することができる。
【0023】
(2)詳細
(2.1)構成
以下、本実施形態に係る配線用筐体7、及びそれを備える電力変換システム100について
図1~
図14を参照して詳しく説明する。本実施形態では、配線用筐体7が取り付けられる電気機器が電力変換システム100である場合を例に説明するが、配線用筐体7が取り付けられる電気機器は電力変換システム100に限定されない。配線用筐体7が取り付けられる電気機器は、例えば屋外に設置される受電装置、又は各種の配線装置等でもよい。
【0024】
ここで、電力変換システム100を含む給電システム200について
図8を参照して説明する。
【0025】
給電システム200は、1以上(図示例では例えば2つ)の太陽光発電モジュール201と、電力変換システム100と、リモートコントローラ202と、分電盤203と、を備えている。電力変換システム100は、例えばDC-DCコンバータ及びDC-ACコンバータ等の電気回路を含み、太陽光発電モジュール201から出力される直流電力を交流電力に変換する。電力変換システム100は、交流電力を分電盤203に出力し、分電盤203を介して負荷機器205に交流電力を供給する。負荷機器205は、例えば施設において使用される照明器具、空調装置、又はテレビ受像機等である。電力変換システム100が出力する交流電力のうち負荷機器205で使用されない余剰の交流電力は商用交流電源204に逆潮流させることもできる。電力変換システム100はリモートコントローラ202と電気的に接続されており、リモートコントローラ202を用いて電力変換システム100の駆動条件の設定、及び、太陽光発電モジュール201の発電量の確認等を行うことができるように構成されている。
【0026】
電力変換システム100は、太陽光発電モジュール201から出力される直流電力で蓄電池ユニット206を充電してもよく、蓄電池ユニット206から放電させた直流電力を交流電力に電力変換して分電盤203に出力してもよい。なお、電力変換システム100は、太陽光発電モジュール201と組み合わせられるものに限定されず、燃料電池システム、風力発電システム等の発電システムによって発電される直流電力を交流電力に電力変換するものでもよい。
【0027】
以下では、電力変換システム100の構成について、より具体的に説明する。
【0028】
電力変換システム100は、
図2、
図10及び
図13に示すように、電力変換回路101を含む電気回路を構成する回路部品110を装置本体1の内部に収容する。電力変換回路101は、例えばDC-DCコンバータ回路、及びDC-ACコンバータ等の回路を含む。
【0029】
電力変換システム100は、電力変換回路101等の電気回路を収容する装置本体1を備える。電力変換システム100の装置本体1は、
図2、
図9~
図14に示すように、ケース本体2と、カバー3とを備える。
【0030】
ケース本体2は、アルミニウム又はその合金等の板金に絞り加工を施すことによって、前面に開口21を有する箱状に形成されている。ケース本体2は、矩形板状の後板22と、後板22の全周から前方に突出する側板23と、側板23の前端から外側に向かって突出する外鍔部24とを備えている。ケース本体2において、後板22と側板23とで囲まれる収容スペース20に回路部品110が収容される。ケース本体2には、ケース本体2に収容されている回路部品110の前側を覆う樹脂カバー27が配置されている。なお、樹脂カバー27は、ケース本体2に収容されている回路部品110の全てを覆う必要はなく、表示部を有する回路部品、及び、操作部を有する回路部品の前面を露出させるように樹脂カバー27は形成されている。
【0031】
カバー3は、例えばアルミニウム又はその合金等の板金に絞り加工を施すことによって形成されている。カバー3は、ケース本体2の開口21を塞ぐために、ケース本体2の外鍔部24に被せた状態で例えばねじ等を用いてケース本体2に取り付けられる。なお、外鍔部24には環状のパッキン31(
図13参照)が配置されており、カバー3はパッキン31を介してケース本体2に固定されているので、ケース本体2とカバー3との間の隙間から装置本体1の内部に水又は埃等の異物が入り込みにくくなる。
【0032】
また、ケース本体2の後部の右下には、側板23の下側部分と後板22とにかけて貫通孔25が設けられている。
【0033】
図13に示すように、電力変換システム100が壁300に取り付けられる場合、壁300の孔301と電線導入口43とを通して収容ケース70の内部に挿入された電線W1は貫通孔25を通してケース本体2の収容スペース20に挿入される。ここで、収容スペース20には、貫通孔25の上側に端子台111が収容され、端子台111の左側に4つの開閉器112が左右方向に並べて収容されており、端子台111又は開閉器112に電線W1が電気的に接続される。したがって、電力変換システム100が壁300に取り付けられる場合、電線W1を壁300の表側から見えない状態で隠蔽配線することができる。
【0034】
また、
図2及び
図14に示すように、電力変換システム100が屋外に設置された架台の水平部材320等に取り付けられる場合、第2部材5の底面の孔に取り付けられた電線管310を通して収容ケース70の内部に電線W1が挿入される。この電線W1は、貫通孔25を通してケース本体2の収容スペース20に挿入され、収容スペース20に収容されている端子台111又は開閉器112に電気的に接続されるので、電線管310を露出させた状態で露出配線を行うことができる。
【0035】
ケース本体2の後板22には、
図10~
図12に示すように、貫通孔25の上側の部位に中空のヒートシンク兼用ケース210が取り付けられ、ヒートシンク兼用ケース210の左側にヒートシンク220が取り付けられている。
【0036】
ヒートシンク兼用ケース210は、例えばアルミニウム又はその合金等で形成されており、前面が開口した箱状に形成されている。ケース本体2の後板22には、ヒートシンク兼用ケース210が取り付けられる部位に、ヒートシンク兼用ケース210の前面よりも小さい第1貫通部が設けられている。この第1貫通部によってケース本体2の収容スペース20とヒートシンク兼用ケース210の内部とは繋がっており、ヒートシンク兼用ケース210の内部にも1以上の回路部品(例えばトランス及びACリアクトル等の大型部品)が収容されている。
【0037】
また、ケース本体2の後板22には、ヒートシンク220が取り付けられる部位に第2貫通部が設けられており、回路部品110に含まれる発熱部品が第2貫通部を通してヒートシンク220に熱的に結合されている。ここで、発熱部品とは、通電中に当該部品が発生する熱が、当該部品で放熱可能な熱に比べて大きい部品であって、当該部品を使用中に当該部品の温度が定格温度を超えないようにするためにヒートシンク等の放熱対策を必要とするような部品である。この種の発熱部品としては、DC-DCコンバータ又はDC-ACコンバータに用いられるIPM(Intelligent Power Module)のようなスイッチング素子、トランス、又はリアクトル等の部品がある。なお、IPMとは、電力を制御するパワー素子と、パワー素子の駆動回路及び保護回路を組み込んだ半導体素子である。パワー素子は、例えばパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。
【0038】
ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の後面には、装置本体1を取付部材8に引っ掛けるための皿ねじ11(
図11及び
図12参照)が1つずつ取り付けられている。また、ヒートシンク220の上面及び下面には、それぞれねじ穴を有する固定片12及び固定片13が設けられている(
図11及び
図12参照)。
【0039】
装置本体1は取付部材8を用いて壁300又は架台の水平部材320等に取り付けられる。取付部材8は、
図9~
図14に示すように、壁300又は架台の水平部材320等にねじ等で固定される背板81と、背板81の左側縁及び右側縁からそれぞれ前方に突出する横ガード82と、背板81の下側縁から前方に突出する下ガード83とを備える。
【0040】
背板81には、壁300又は架台の水平部材320等に固定するためのねじを通す複数の孔84が設けられている。背板81は、複数の孔84にそれぞれ通されたねじを用いて壁300又は架台の水平部材320等に固定される。背板81の上側縁には、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の後面に固定された2つの皿ねじ11のねじ部がそれぞれ挿入される2つの引掛溝85が設けられている。背板81には、第1部材4の電線導入口43に繋がる貫通孔86が設けられている。
【0041】
ケース本体2に設けられた皿ねじ11のねじ部を引掛溝85に挿入すると、皿ねじ11の頭部が引掛溝85の周縁部分に引っ掛かることによって、ケース本体2が取付部材8に取り付けられる。ケース本体2を取付部材8に取り付けた状態で、下ガード83の丸孔87(
図10参照)に通した取付ねじを、ヒートシンク220の下部に配置された固定片13のねじ孔にねじ込むことによって、ケース本体2を取付部材8に固定する。ケース本体2が取付部材8に取り付けられた状態では、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の側面が横ガード82によって覆われ、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の下面が下ガード83によって覆われる。したがって、横ガード82及び下ガード83によって、高温になるヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220にユーザが触れる可能性を低減できる。横ガード82及び下ガード83は、ケース本体2を壁300又は架台の水平部材320等に取り付けるための取付部材8に一体に設けられているので、部品の数を削減できる。また、装置本体1の設置時又は取り外し時に作業が必要になる部品の数が少なくなるので、作業性が向上するという利点もある。
【0042】
また、ケース本体2には、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の上面を覆う上ガード9が固定される。上ガード9の丸孔91(
図10及び
図11参照)に通した取付ねじを、ヒートシンク220の上部に配置された固定片12のねじ孔にねじ込むことによって、上ガード9がケース本体2に固定される。ケース本体2に上ガード9を固定すると、上ガード9によってヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の上面が覆われるので、高温になるヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の上面にユーザが触れる可能性を低減できる。上ガード9は、例えば金属部品の表面を樹脂材料で覆うことによって形成されている。上ガード9の表面は樹脂材料で覆われているので、上ガード9の表面が樹脂材料で覆われていない場合に比べて、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220等の許容外郭温度を高めに設定できる。
【0043】
本実施形態では、ケース本体2において設置状態での下側の外周面(側板23の下側部分)と後板22とにかけて上述の配線用筐体7が取り付けられる。
【0044】
ここで、配線用筐体7の収容ケース70は、設置状態における下部と前側部と後側部とにそれぞれ開口を有する第1部材4と、第1部材4の下部に取り付けられる第2部材5とを備えている。第1部材4及び第2部材5は例えばポリカーボネート等の合成樹脂の成形品である。また、本実施形態の配線用筐体7は蓋部材6を更に備えている。
【0045】
第1部材4は、前側及び後側と下側とにそれぞれ開口を有してケース本体2の後面221よりも後方に突出する筒状部41と、筒状部41の前端部の下側に一体的に連結されたU字形の枠部42とを備えている。筒状部41及び枠部42の前側部分には、ケース本体2の収容スペース20に繋がる開口部44が設けられている。第1部材4は、開口部44の端面を、ケース本体2の後面221(後板22の外側面)と、ケース本体2の外周面(側板23の外側面)とに接触させた状態で、ねじ等の締結部材を用いてケース本体2に取り付けられる。具体的には、第1部材4は、後板22における貫通孔25の周縁部分に筒状部41の前端面411を接触させ、側板23の下側部分における貫通孔25の周縁部分に枠部42の上端面421を接触させた状態でケース本体2に取り付けられる。
【0046】
第1部材4の筒状部41の上面412は、
図1及び
図13に示すように、設置状態での前後方向に対して傾斜している。具体的には、筒状部41の上面412は、設置状態において、前下がりになるよう前後方向に対して傾斜している。ここで、筒状部41の上側にはヒートシンク兼用ケース210が配置されており、設置状態での上下方向において、筒状部41とヒートシンク兼用ケース210との間の隙間を前側に行くほど広げることができる。したがって、筒状部41に設けられた電線導入口43の開口面積を広く保ちながら、筒状部41の前側では筒状部41(第1部材4)とヒートシンク兼用ケース210との間の隙間を広げて、通気性を向上させることができる。よって、全体として小型化を図りながら、放熱性能を向上させることができる。
【0047】
第1部材4の筒状部41の後端部において、筒状部41の左右の壁と上部の壁とで囲まれる開口部分が電線導入口43となる。第1部材4の筒状部41の後端部には、電線導入口43の外周部分に、蓋部材6の外周部分が嵌合する嵌合構造47が形成されている。嵌合構造47は、筒状部41の内側面の後端部であって、電線導入口43のやや内側に設けられている。嵌合構造47は、蓋部材6の外周部分が挿入される溝部471を有している。溝部471は、後側の側壁472と前側の側壁473との間に形成される。この溝部471は、筒状部41の左右の内側面と、筒状部41の上部の内側面とに連続して設けられている。筒状部41の嵌合構造47には、筒状部41の下側から蓋部材6が挿入される。また、第1部材4の筒状部41の後端部には、左右の側壁472の下端付近に、蓋部材6の後面の突起64に引っ掛けられる引掛爪48が設けられている。筒状部41は後方から見た形状が逆U型に形成されており、筒状部41の左右の側壁472が外側に広げられると、側壁472が内側に戻ろうとする弾性力が発生するので、この弾性力を利用して引掛爪48が突起64に引っ掛かった状態を保持できる。また、第1部材4は設置状態における下部に開口45を有しており、この開口45を塞ぐように第2部材5が第1部材4に取り付けられる。
【0048】
第2部材5は、
図1~
図5及び
図7に示すように、矩形板状の底板部51と、底板部51の周縁部分から設置状態における上側に向かって突出する側板部52とを有している。底板部51の上面には、電線管310を接続するための丸孔を形成するためのけがき線511が複数箇所に形成されている。けがき線511に沿って底板部51の一部に丸孔を開け、この丸孔に電線管310(
図2参照)を接続することによって、電線管310に挿入された電線W1を収容ケース70の内部に導入することができる。また、底板部51の前側部分の左右と後側部分の左右には円筒状のボス部531がそれぞれ設けられており、4個のボス部531の各々には取付ねじを通すための貫通孔53が形成されている。ここにおいて、第1部材4には、後側の2つの貫通孔53にそれぞれ対応する部位に、後側の2つの貫通孔53に通した取付ねじがそれぞれねじ込まれる2つのねじ孔461(
図12参照)が設けられている。また、第1部材4には、前側の2つの貫通孔53にそれぞれ対応する部位に、前側の2つの貫通孔53に通した取付ねじを通すための2つの貫通孔462が設けられている。また、第1部材4の筒状部41の内側面には、取付ねじを通すための孔を有するリブ413が左右に2つずつ設けられている。
【0049】
また、第2部材5には、上述した水受け部50が設けられている。水受け部50は、設置状態において第1部材4の嵌合構造47の下側に配置されて、落下してくる水を溜めるように構成されている。具体的には、水受け部50は、第1壁54と第2壁55との間に、水を溜めるための空間56を有している。第1壁54は、第2部材5において、電線導入口43よりも内側(前側)の部位に設けられている。第2壁55は、第2部材5において、第1壁54よりも内側の部位に設けられている。第1壁54は、側板部52よりも内側に形成されている。第1壁54は、第2部材5における電線導入口43側の端部(側板部52の後側部分)に沿って、左右方向の略全体に設けられた横壁部541と、横壁部541の左端部及び右端部からそれぞれ前方に向かって延びる縦壁部542とを備える。第1壁54は、横壁部541と左右の縦壁部542とで上側から見てU型に形成されている。また、第2壁55は、第1壁54の横壁部541に沿って設けられた横壁部551と、横壁部551の左端部及び右端部からそれぞれ前方に向かって延びる縦壁部552とを備える。縦壁部542,552の前端は、底板部51に設けられたボス部531と繋がっており、第1壁54と第2壁55とボス部531とで囲まれる空間56に、嵌合構造47から落下してくる水が溜められる。つまり、水受け部50は、前後方向に沿って延びており、第1部材4の内側面に沿って電線導入口43から内側に延びている。嵌合構造47は、前後方向において後側の側壁472から前側の側壁473まで設けられているが、水受け部50は内側に延びているので、嵌合構造47と蓋部材6との間の隙間から内側に入り込み、落下してきた水が水受け部50の外に落ちる可能性を低減できる。また、水受け部50は、第2部材5において電線導入口43が設けられる端部(後側の端部)の全体に亘って更に設けられている。嵌合構造47において左右方向の中央付近から入り込んだ水が蓋部材6の内側面に沿って落下した場合でも、落下してきた水を水受け部50で受けることができ、収容ケース70の内側への水の浸入を抑制できる。
【0050】
ここにおいて、
図1に示すように、設置状態において、第1壁54(より詳細には横壁部541)の高さH1は、第2壁55(より詳細には横壁部551)の高さH2よりも低くなっている。また、設置状態において、第1壁54(より詳細には横壁部541)の高さH1に比べて、取付部材8における貫通孔86の下縁部分861の高さH3は低くなっている。なお、配線用筐体7と取付部材8との間には、電線導入口43の周りを囲むパッキン90が配置されてもよく、パッキン90で配線用筐体7と取付部材8との間の隙間から水等が浸入するのを抑制している。ただし、パッキン90は必須の構成ではなく、適宜省略が可能である。
【0051】
また、第2部材5の底板部51において、第1壁54と第2壁55との間の部位には、底板部51を上下方向にそれぞれ貫通する複数(例えば6個)の水抜き孔57が設けられている。つまり、第2部材5は、水受け部50に溜まる水を外部に流すための水抜き孔57を少なくとも1つ備えている。また、底板部51において、側板部52の後側部分と第1壁54との間の部位には、底板部51を上下方向にそれぞれ貫通する複数(例えば6個)の水抜き孔58が設けられている。水抜き孔57,58は、埃又は小型の虫等が入りにくいように、大きさが設定されている。
【0052】
蓋部材6は、例えばポリカーボネート等の合成樹脂の成形品である。蓋部材6は、後側から見た形状がほぼ長方形状に形成された主部60と、主部60の下辺以外の外周部分から前方に向かって突出する側部62とを有している。また、蓋部材6には、主部60の下辺以外の外周部分に、第1部材4の嵌合構造47と嵌合する嵌合部61が形成されている。嵌合部61は、主部60の外周部分である第1壁611と、側部62の外側面から外側に突出するように設けられた第2壁612とを有している。ここで、蓋部材6が第1部材4に取り付けられた状態では、蓋部材6の第1壁611が第1部材4の溝部471に挿入され、第1壁611と第2壁612との間にできる凹溝内に第1部材4の前側の側壁473が挿入される。これにより、蓋部材6が第1部材4に取り付けられた状態では、第1部材4が備える断面U型の嵌合構造47と、蓋部材6が備える断面U型の嵌合部61とが嵌合した状態となる。嵌合構造47と嵌合部61とが嵌合した状態では、第1部材4と蓋部材6との間にできる隙間を、前後方向と直交する方向(左右方向又は上下方向)から見た形状が、ラビリンス状(ジグザグ)になるので、第1部材4と蓋部材6との間の隙間から水等が浸入しにくくなるという利点がある。
【0053】
蓋部材6の第2壁612において、上下方向に沿って延びる縦辺部分からは後方に向かって突出する突起63(
図6参照)が設けられている。換言すれば、蓋部材6には、蓋部材6の内側面を外側に向けた状態で蓋部材6の外周部分(第1壁611)が溝部471に挿入される場合に第1部材4と干渉することによって第1部材4への取り付けを阻止する誤接続防止構造(例えば突起63)が設けられている。蓋部材6の前後を逆向きにした状態で蓋部材6の左右の外周部分を第1部材4の溝部471に挿入しようとすると、突起63が側壁472と干渉するので、蓋部材6の逆指しの可能性を低減でき、作業ミスが発生しにくくなる。なお、誤接続防止構造の形状は、蓋部材6が逆向きに取り付けられる場合に第1部材4と干渉するような形状であれば、その形状は適宜変更が可能である。また、突起63は第2壁612の縦辺部分から縦辺部分と直交する向きに突出しているので、この突起63によって蓋部材6の剛性を高めることもできる。なお、蓋部材6の主部60の内側面(前面)には、蓋部材6の取付方向を示す「内側」等の文字WD1(
図6参照)が樹脂成形によって形成される凹凸で表現されていてもよい。
【0054】
また、蓋部材6の後面には、蓋部材6を第1部材4に取り付けた状態で、左右の側壁472の下端に設けられた引掛爪48が引っ掛かる突起64が設けられている。
【0055】
また、蓋部材6の下部は、第2部材5の側板部52と第1壁54(具体的には横壁部541)との間の隙間に挿入される。つまり、蓋部材6の下部は、前後方向において、第1壁54と電線導入口43との間に配置されている。そして、蓋部材6の後面には、側板部52の後側部分よりも上側の部位に、後方に突出する突起65が設けられている。突起65は、蓋部材6の後面に、左右方向に沿って、左右方向のほぼ全体にわたって設けられている。突起65は、下側に行くほど後側への突出量が大きくなるように形成されており、第1部材4と第2部材5との間に蓋部材6が取り付けられた状態で突起65の下端は、側板部52の後壁部分の上端に接触する。これにより、外部から蓋部材6の後面に当たった水が、蓋部材6の後面に沿って流れ落ちると、突起65に沿って側板部52の外側に誘導されるので、蓋部材6の後面に沿って流れ落ちる水を収容ケース70の外側へと導くことができる。また、隠蔽配線を行うために第1部材4から蓋部材6を取り外す場合、第1部材4から第2部材5を取り外した後に、蓋部材6を下側に引っ張って第1部材4から蓋部材6を取り外す。このとき、突起65は、蓋部材6を下側に引っ張るための取っ手として利用可能であるので、蓋部材6を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、主部60の前側面の周縁部分(つまり、蓋部材6において溝部471に挿入される挿入部位)には、挿入部位における内側面(前面)に、溝部471の内側寄りの側面(つまり側壁473の後面)と接触するリブ66が複数設けられている。蓋部材6が第1部材4に取り付けられると、溝部471の内側寄りの側面(側壁473の後面)にリブ66が接触することによって、溝部471の外側寄りの側面(側壁472の前面)に挿入部位における外側面が押し付けられる。これにより、蓋部材6の主部60の後面を、第1部材4における電線導入口43の周縁部分と密着させることができ、主部60の後面と電線導入口43の周縁部分との間に隙間ができにくくなるので、電線導入口43から収容ケース70内への水等の浸入を抑制できる。なお、本実施形態では、主部60の前面側の周縁部分に複数のリブ66が設けられているが、リブ66の数及び配置は適宜変更が可能である。
【0057】
ここで、第1部材4は、前端面411をケース本体2の後板22に接触させるとともに、上端面421をケース本体2の側板23の下側部分に接触させた状態で、リブ413の孔に通した取付ねじをケース本体2のねじ孔にねじ込むことによってケース本体2に固定される。また、第2部材5は、後側の貫通孔53に通した取付ねじを第1部材4のねじ孔461にねじ込むとともに、前側の貫通孔53と第1部材4の貫通孔462とに通した取付ねじをケース本体2のねじ孔にねじ込むことによって第2部材5が第1部材4に取り付けられる。これにより、第1部材4と第2部材5との間に蓋部材6が保持された状態で、配線用筐体7がケース本体2に固定される。
【0058】
(2.2)取付方法
本実施形態の電力変換システム100(電気機器)を設置場所に設置する設置方法について説明する。
【0059】
まず、電力変換システム100が壁300に取り付けられて隠蔽配線が行われる場合の設置方法について説明する。
【0060】
ケース本体2には、電気回路(電力変換回路101等)を構成する回路部品110が収容されており、ケース本体2の後面221にはヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220が予め取り付けられているものとする。ここで、隠蔽配線の場合は、配線用筐体7の収容ケース70から蓋部材6が予め取り外されている。
【0061】
まず、電気機器の設置場所である壁300に取付部材8をねじ等で固定する(
図10参照)。壁300には、電線W1を通すための孔301が設けられており、この貫通孔86と壁300の孔301とが連なるように取付部材8が壁300に固定される。
【0062】
壁300に取付部材8が固定されると、ケース本体2を取付部材8の上方から下方に降ろし、皿ねじ11のねじ部を引掛溝85内に挿入させることによって、ケース本体2を取付部材8に引っ掛ける。そして、取付部材8の下ガード83の丸孔87に取付ねじを通し、この取付ねじを固定片13のねじ孔にねじ込むことによって、ケース本体2を取付部材8に固定する。また、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の上側に上ガード9を被せ、上ガード9の丸孔91に通した取付ねじを、固定片12のねじ孔にねじ込むことによって、ケース本体2に上ガード9を固定する。
【0063】
その後、
図13に示すように、壁300の裏側から孔301と貫通孔86と電線導入口43とを通して配線用筐体7の内部に電線W1を挿入し、この電線W1を貫通孔25からケース本体2の内部に挿入する。そして、端子台111及び開閉器112等の回路部品110に電線W1を接続することによって、装置本体1を有する電力変換システム100(電気機器)に対して外部からの電線W1を接続する。
【0064】
電力変換システム100の装置本体1が壁300に設置された場合は、配線用筐体7と取付部材8との間に配置されたパッキン90と、取付部材8と壁300との間に配置されたパッキンとで配線用筐体7の内部に水が浸入するのが抑制される。
【0065】
次に、電力変換システム100が屋外等に設置された架台に取り付けられて露出配線が行われる場合の施工方法について説明する。
【0066】
屋外設置の場合、例えば架台に設けられた水平部材320(
図2及び
図14参照)に取付部材8をねじ等で固定する。
【0067】
水平部材320に取付部材8が固定されると、ケース本体2を取付部材8の上方から下方に降ろし、皿ねじ11のねじ部を引掛溝85内に挿入させることによって、ケース本体2を取付部材8に引っ掛ける。そして、取付部材8の下ガード83の丸孔87に取付ねじを通し、この取付ねじを固定片13のねじ孔にねじ込むことによって、ケース本体2を取付部材8に固定する。また、ヒートシンク兼用ケース210及びヒートシンク220の上側に上ガード9を被せ、上ガード9の丸孔91に通した取付ねじを、固定片12のねじ孔にねじ込むことによって、ケース本体2に上ガード9を固定する。
【0068】
その後、
図2及び
図14に示すように、第2部材5に設けた孔に固定された電線管310に電線W1を通し、この電線W1を配線用筐体7の内部に導入する。そして、この電線W1を貫通孔25からケース本体2の内部に挿入し、端子台111及び開閉器112等の回路部品110に電線W1を接続することによって、装置本体1を有する電力変換システム100(電気機器)に対して外部からの電線W1を接続する。
【0069】
電力変換システム100の装置本体1が架台に取り付けられた状態では、取付部材8の後面が露出しており、外部から雨水等が電線導入口43を塞ぐ蓋部材6に直接当たる可能性がある。ここで、配線用筐体7では、蓋部材6の外周部分が第1部材4の嵌合構造47に挿入されている。具体的には、蓋部材6の第1壁611が、嵌合構造47の溝部471内に挿入されている。また、蓋部材6において第1壁611と第2壁612との間にできる溝に、溝部471の内側(前側)にある側壁473が挿入されている。したがって、第1部材4の嵌合構造47と蓋部材6の嵌合部61とが嵌合した状態では、嵌合構造47と嵌合部61との間にできる隙間は前後方向においてラビリンス状(ジグザグ)になっている。これにより、外部から蓋部材6に当たった水が、嵌合構造47と嵌合部61との間の隙間に浸入したとしても、ラビリンス状の隙間に留まり、嵌合構造47と嵌合部61とが嵌合している部位を越えて更に内側まで水が入り込む可能性を低減できる。ここで、第1部材4の嵌合構造47と蓋部材6とが直接接触しており、第1部材4の嵌合構造47と蓋部材6との間にはパッキン等のシール部材が配置されていないので、部品数を削減するとともに、シール部材を取り付ける手間を削減できる。
【0070】
そして、嵌合構造47と嵌合部61との間の隙間に入ってきた水が下方に落下すると、落下してきた水は第2部材5の水受け部50に溜まるので、水受け部50を越えて配線用筐体7の更に内側に水が浸入する可能性を低減できる。ここで、水受け部50は、第1部材4の筒状部41の左右の内側面に沿って、内側に延びているので、嵌合構造47と嵌合部61とが嵌合している部位から落下してくる水が水受け部50の外に落ちる可能性を低減できる。また、水受け部50は、第2部材5の後側の端部(電線導入口43が設けられる端部)において左右方向の全体に設けられているので、蓋部材6の上部にある嵌合部61と嵌合構造47との隙間から入ってきた水が水受け部50の外に落ちる可能性を低減できる。
【0071】
なお、水受け部50に溜まった水は、水受け部50の底部にある水抜き孔57から外部に流れていくので、水受け部50に溜まった水が水受け部50を越えて配線用筐体7の更に内側に浸入する可能性を低減できる。また、水受け部50の第1壁54と第2壁55とでは、電線導入口43に近い第1壁54の方が第2壁55よりも低くなっているので、水受け部50の水位が上昇して第1壁54を越えると、第1壁54を越えて流れ出す。ここで、配線用筐体7と取付部材8との間にパッキン90が取り付けられている場合、水受け部50から第1壁54を越えて流れ出た水は、第1壁54と取付部材8との間に溜まることになる。第2部材5の底板部51には、第1壁54と側板部52との間の部位に水抜き孔58が設けられているので、水受け部50から第1壁54を越えて流れ出た水は水抜き孔58を通って外部に流れ出す。また、第2部材5の側板部52の後側部分の高さ、及び、取付部材8の貫通孔86の下縁部分861の高さH3は、第1壁54の高さH1よりもそれぞれ低くなっている。したがって、第1壁54と取付部材8との間に溜まった水の水位が下縁部分861の高さを越えた場合は、第1壁54と取付部材8との間に溜まった水は貫通孔86から外部に流れ出すことになる。以上のように、水受け部50に溜まった水は、水抜き孔57,58又は取付部材8の貫通孔86から外部に流れ出すので、水受け部50に溜まった水が収容ケース70の更に内部へと浸入する可能性を低減することができる。よって、収容ケース70の内側への水の浸入を抑制可能な配線用筐体7を実現することができる。
【0072】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0073】
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0074】
上記実施形態では、ケース本体2と第1部材4とが別体に形成されているが、第1部材4がケース本体2と一体に設けられていてもよい。
【0075】
上記実施形態では、第1部材4の嵌合構造47と蓋部材6とが直接接触しているが、第1部材4の嵌合構造47と蓋部材6との間にパッキン等のシール部材が配置されていてもよい。
【0076】
上記実施形態では、ケース本体2が絞り加工で形成されているが、ケース本体2は板金に曲げ加工又は溶接加工を施すことによって形成されてもよい。
【0077】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様の配線用筐体(7)は、電気機器(100)に取り付けられて、電気機器(100)に電気的に接続される電線(W1)を収容する収容ケース(70)を備える。収容ケース(70)は、電気機器(100)が設置場所に設置される設置状態での下部に開口(45)を有する第1部材(4)と、第1部材(4)の開口(45)を閉塞するように第1部材(4)に組み合わされる第2部材(5)とを備える。第1部材(4)と第2部材(5)とが組み合わされた状態で、収容ケース(70)には電線(W1)を外部から挿入可能な電線導入口(43)が形成されている。第1部材(4)と第2部材(5)との間には、電線導入口(43)を塞ぐ蓋部材(6)が取付可能である。第1部材(4)は、蓋部材(6)の外周部分が嵌合する嵌合構造(47)を有する。第2部材(5)は、設置状態において嵌合構造(47)の下側に配置されて、落下してくる水を溜める水受け部(50)を有している。
【0078】
この態様によれば、収容ケース(70)の外部から第1部材(4)の嵌合構造(47)と蓋部材(6)との間に入り込んだ水が落下すると水受け部(50)に溜められる。したがって、水受け部(50)に水を溜めることで、水受け部(50)を越えて更に内側まで水が浸入するのを抑制でき、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制可能な配線用筐体(7)を提供することができる。
【0079】
第2の態様の配線用筐体(7)では、第1の態様において、水受け部(50)は、第1壁(54)と第2壁(55)との間に水を溜めるための空間(56)を有する。第1壁(54)は、第2部材(5)において、電線導入口(43)よりも内側の部位に設けられている。第2壁(55)は、第2部材(5)において、第1壁(54)よりも内側の部位に設けられている。
【0080】
この態様によれば、収容ケース(70)の外部から第1部材(4)の嵌合構造(47)と蓋部材(6)との間に入り込んだ水が落下すると、第1壁(54)と第2壁(55)との間の空間(56)に溜められる。したがって、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制可能な配線用筐体(7)を提供することができる。
【0081】
第3の態様の配線用筐体(7)では、第2の態様において、蓋部材(6)の下部は、第1壁(54)と電線導入口(43)との間に配置される。
【0082】
この態様によれば、蓋部材(6)の外表面に当たった水は、蓋部材(6)の外表面に沿って第1壁(54)と電線導入口(43)との間に流れ落ちるので、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0083】
第4の態様の配線用筐体(7)では、第2又は第3の態様において、設置状態において、第1壁(54)の高さ(H1)は第2壁(55)の高さ(H2)よりも低い。
【0084】
この態様によれば、空間(56)に溜められた水の水位が第1壁(54)の高さ(H1)を越えると、第1壁(54)を越えて外に流れ出るので、第2壁(55)を越えて収容ケース(70)の内部へ水が浸入するのを抑制することができる。
【0085】
第5の態様の配線用筐体(7)では、第1~第4のいずれかの態様において、第2部材(5)は、水受け部(50)に溜まる水を外部に流すための水抜き孔(57)を少なくとも1つ備える。
【0086】
この態様によれば、水受け部(50)に溜まった水は水抜き孔(57)から外部に流れていくので、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0087】
第6の態様の配線用筐体(7)では、第1~第5のいずれかの態様において、水受け部(50)が、第1部材(4)の内側面に沿って内側に延びている。
【0088】
この態様よれば、収容ケース(70)の外部から第1部材(4)の嵌合構造(47)と蓋部材(6)との間に入り込んだ水が水受け部(50)の外に落ちる可能性を低減できるので、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0089】
第7の態様の配線用筐体(7)では、第6の態様において、水受け部(50)は、第2部材(5)において電線導入口(43)が設けられる端部の全体に亘って更に設けられている。
【0090】
この態様によれば、収容ケース(70)の外部から第1部材(4)の嵌合構造(47)と蓋部材(6)との間に入り込んだ水を水受け部(50)に確実に溜めることができるので、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0091】
第8の態様の配線用筐体(7)では、第1~第7のいずれかの態様において、嵌合構造(47)は、蓋部材(6)の外周部分が挿入される溝部(471)を有する。
【0092】
この態様によれば、蓋部材(6)の外周部分が溝部(471)に挿入されているので、蓋部材(6)と第1部材(4)との間の隙間から収容ケース(70)の内部に水が入りにくくなり、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0093】
第9の態様の配線用筐体(7)では、第8の態様において、蓋部材(6)において溝部(471)に挿入される挿入部位には、挿入部位における内側面に、溝部(471)の内側寄りの側面と接触するリブ(66)が設けられている。溝部(471)の内側寄りの側面にリブ(66)が接触することによって、溝部(471)の外側寄りの側面に挿入部位における外側面が押し付けられる。
【0094】
この態様によれば、蓋部材(6)の挿入部位と溝部(471)の外側寄りの側面との間の隙間を小さくすることで、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0095】
第10の態様の配線用筐体(7)では、第8又は第9の態様において、蓋部材(6)には誤接続防止構造(63)が設けられている。誤接続防止構造(63)は、蓋部材(6)の内側面を外側に向けた状態で蓋部材(6)の外周部分が溝部(471)に挿入される場合に、第1部材(4)と干渉することによって第1部材(4)への取り付けを阻止する。
【0096】
この態様によれば、蓋部材(6)の誤接続を抑制することによって、作業ミスを低減できる。
【0097】
第11の態様の配線用筐体(7)は、第1~10のいずれかの態様において、蓋部材(6)を、更に備える。
【0098】
この態様によれば、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制することができる。
【0099】
第12の態様の電力変換システム(100)は、電力変換を行う電力変換回路(101)を収容する装置本体(1)と、第1~第11のいずれかの態様の配線用筐体(7)と、を備える。配線用筐体(7)が備える収容ケース(70)は装置本体(1)に取り付けられる。収容ケース(70)が、外部回路と電力変換回路(101)とを電気的に接続する電線(W1)を収容する。
【0100】
この態様によれば、収容ケース(70)の外部から第1部材(4)の嵌合構造(47)と蓋部材(6)との間に入り込んだ水が落下すると水受け部(50)に溜められる。したがって、水受け部(50)を越えて更に内側まで水が浸入する可能性を低減でき、収容ケース(70)の内部への水の浸入を抑制可能な配線用筐体(7)を備える電力変換システム(100)を提供することができる。
【0101】
なお、第2~第11の態様に係る構成については、配線用筐体(7)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 装置本体
4 第1部材
5 第2部材
6 蓋部材
7 配線用筐体
43 電線導入口
45 開口
47 嵌合構造
50 水受け部
54 第1壁
55 第2壁
56 空間
57 水抜き孔
63 突起(誤接続防止構造)
66 リブ
70 収容ケース
100 電力変換システム(電気機器)
101 電力変換回路
471 溝部
W1 電線