(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】複眼式人体検知装置
(51)【国際特許分類】
G08B 13/191 20060101AFI20230519BHJP
G01V 8/20 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G08B13/191
G01V8/20 N
(21)【出願番号】P 2019195815
(22)【出願日】2019-10-29
【審査請求日】2022-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森川 嘉文
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-235679(JP,A)
【文献】国際公開第1998/034085(WO,A1)
【文献】特開2016-001424(JP,A)
【文献】特開2016-176801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B13/00-15/02
19/00-31/00
G01V1/00-99/00
E05F15/00-15/79
G01S7/48-7/51
17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間内において監視すべき方向に延びる検知ゾーン、および前記検知ゾーンの上方または下方においてこの検知ゾーンに対応する方向に並行して延びる別の検知ゾーンを設定し、前記2本の検知ゾーンの両方を同時に侵入物体が横切ったときに、警報器を作動させるための警報出力信号を発生する複眼式人体検知装置において、
侵入物体検知範囲を遠距離を通過する人間を検知する設定から近距離を通過する人間を検知する設定にする場合は、検知ゾーンの延びる方向を下方に向けて変更するのに伴い、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が大きくなるよう変更する第1の検知ゾーン間隔変更手段を設け、
設置高さを低い位置から高い位置に設定する場合は、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が小さくなるよう変更する第2の検知ゾーン間隔変更手段を設け、
前記2本の検知ゾーンはそれぞれ焦電素子と集光器で構成される光学系ユニットから成る検知ゾーンであり、
前記第1の検知ゾーン間隔変更手段は、いずれか一方の光学系ユニットの配置角度を変えることに伴い、他方の光学系ユニットの配置角度を前記角度変化より大きくまたは小さく変えるようにした動力伝達機構とし、
前記第2の検知ゾーン間隔変更手段は、前記動力伝達機構を第1の動力伝達機構状態から第2の動力伝達機構状態にすることにより、片方または両方の光学系ユニットの配置角度を変える機構とすることを特徴とする複眼式人体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複眼式人体検知装置において、
上段の検知ゾーンを構成する光学系ユニット11aと下段の検知ゾーンを構成する光学系ユニット11bとを備え、前記光学系ユニット11a、11bに設けられたピン13a、13bが、前記光学系ユニット11aと11bとの間に回転可能な状態で取り付けられている溝カムディスクの溝15a、15b内に位置するように連結され、
前記第2の検知ゾーン間隔変更手段は、
前記溝カムディスクの回転軸の位置を変更することにより、前記光学系ユニット11aの回転軸と前記ピン13aとを通る直線と、前記光学系ユニット11bの回転軸と前記ピン13bとを通る直線との角度を変更し、
前記動力伝達機構を第1の動力伝達機構状態から第2の動力伝達機構状態にする機構であることを特徴とする複眼式人体検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の複眼式人体検知装置において、
上段の検知ゾーンを構成する光学系ユニット11aと下段の検知ゾーンを構成する光学系ユニット11bとを備え、前記光学系ユニット11a、11bに設けられたピン13a、13bが、前記光学系ユニット11aと11bとの間に回転可能な状態で取り付けられている溝カムディスクの溝15a、15b内に位置するように連結され、
前記第2の検知ゾーン間隔変更手段は、
前記光学系ユニット11aと前記光学系ユニット11bとがそれぞれ逆方向に回転するように、前記光学系ユニット11aの回転軸と前記ピン13aとを通る直線と、前記光学系ユニット11bの回転軸と前記ピン13bとを通る直線との角度を変更し、
前記動力伝達機構を第1の動力伝達機構状態から第2の動力伝達機構状態にする機構であることを特徴とする複眼式人体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出すべき物体の侵入方向に沿って配列された検知ゾーンを上下二段に配置してなる複眼式人体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の空間内を移動する人間を検出する防犯用の人体検知装置として、物体から放射される赤外線を検出する受動型赤外線検知装置が多用されている。この装置は、焦電素子に、凹面鏡やフレネルレンズ等の集光器により赤外線エネルギーを集束し、その焦電素子から得られる検出信号をもとに、人体の存在の有無を判定するものである。
【0003】
人体検知装置は人間以外の小動物による誤報を発生することがあるため、その対策として焦電素子と集光器で構成される光学系ユニットを2個上下に配置し構成した2本の検知ゾーンの両方を同時に侵入物体が横切ったときに警報器を作動させるための警報出力信号を発生させるようにしている複眼式人体検知装置が実用化されている。この複眼式人体検知装置では、2本の検知ゾーンがある程度の広がり角をもって延びており、本発明においては、このようにある程度の広がり角をもって延びている場合も含めて“並行”と表現することにする。
【0004】
侵入物体検知範囲を遠距離を通過する人間を検知する設定から近距離を通過する人間を検知する設定にする場合、特許文献1のように、一方の光学系ユニットの配置角度を変えることに伴い、他方の光学系ユニットの配置角度をより大きく変えるようにすることにより、検知ゾーンの延びる方向を下方に向けて変更させるのに伴い、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が大きくなるよう変更する検知ゾーンの間隔変更手段を設けている物がある。
【0005】
また、設置高さを低い位置から高い位置に設定する場合、特許文献2のように、それぞれの光学系ユニットが個別に動くように切り替えて配置角度を変更することにより、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が小さくなるよう変更する検知ゾーンの間隔変更手段を設けている物がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO98/34085公報
【文献】特開2016-001424
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の複眼式人体検知装置では、侵入物体検知範囲の遠近を調整する場合は2個の光学系ユニットを連動させる機構とし、設置高さの高低を調整する場合は個別に光学系ユニットを動かす機構としているため、それぞれ調整する場合に連動の機構と個別の機構とを切り替える必要があった。また、それぞれを調整する機構を実現するため、溝カムディスクを2個以上使用するなど部品点数が増えたり、連動の機構のための連結と個別の機構のための分離の両方を行う複雑な機構が必要であったりした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、所定の空間内において監視すべき方向に延びる検知ゾーン、および前記検知ゾーンの上方または下方においてこの検知ゾーンに対応する方向に並行して延びる別の検知ゾーンを設定し、前記2本の検知ゾーンの両方を同時に侵入物体が横切ったときに、警報器を作動させるための警報出力信号を発生する複眼式人体検知装置において、侵入物体検知範囲を遠距離を通過する人間を検知する設定から近距離を通過する人間を検知する設定にする場合は、検知ゾーンの延びる方向を下方に向けて変更するのに伴い、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が大きくなるよう変更する第1の検知ゾーン間隔変更手段を設け、設置高さを低い位置から高い位置に設定する場合は、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔が小さくなるよう変更する第2の検知ゾーン間隔変更手段を設け、前記2本の検知ゾーンはそれぞれ焦電素子と集光器で構成される光学系ユニットから成る検知ゾーンであり、前記第1の検知ゾーン間隔変更手段は、いずれか一方の光学系ユニットの配置角度を変えることに伴い、他方の光学系ユニットの配置角度を前記角度変化より大きくまたは小さく変えるようにした動力伝達機構とし、前記第2の検知ゾーン間隔変更手段は、前記動力伝達機構を第1の動力伝達機構状態から第2の動力伝達機構状態にすることにより、片方または両方の光学系ユニットの配置角度を変える機構とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、各設置高さと各警戒距離での検知ゾーン間の広がりを制御する複眼式人体検知装置において、人間を検出し小動物を検出しない識別のバランスが良い位置に検知ゾーン間の広がりを配置でき、信頼性の高い複眼式人検知装置が実現できる。また、設置高さの高低を調整する場合は、複雑な操作を必要とせず、動力伝達機構を第1の動力伝達機構状態から第2の動力伝達機構状態にするだけで、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンとの間隔を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の複眼式人体検知装置の第1の実施形態の検出系配置を示す側断面図である。
【
図2】本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態の検出系配置を示す側断面図である。
【
図3】一般的な光学系ユニットの構成を示す側断面図である。
【
図4】本発明の複眼式人体検知装置の第1の実施形態における光学系ユニットの動作機構を示した図である。
【
図5】本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態における光学系ユニットの動作機構を示した図である。
【
図6】本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態の構成を示した図である。
【
図7】本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態においてカバーを外した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の複眼式人体検知装置の第1の実施形態の検出系配置を示す側断面図である。
図1(a)は低所設置時を示し、
図1(b)は高所設置時を示している。複眼式人体検知装置Sは、並行して延びる2本の検知ゾーンを構成し、2本の検知ゾーンの両方を同時に侵入物体が横切ったときに、警報器を作動させるための警報出力信号を発生する。
【0012】
図1(a)において、検知ゾーンA1、B1は遠距離警戒時に構成される2本の検知ゾーンであり、検知ゾーンA1’、B1’は近距離警戒時に構成される2本の検知ゾーンである。F1は検知器1が低所設置時の床面を、Hは人間を、Nはネズミなどの小動物を示す。
【0013】
遠距離警戒時は、検知ゾーンAと検知ゾーンBで2本の検知ゾーンを構成し、近距離警戒時は角度がα<βとなるように検知ゾーンを移動させて検知ゾーンA1’と検知ゾーンB1’で2本の検知ゾーンを構成する。人間Hは遠距離警戒時でも近距離警戒時でも2本の検知ゾーンを同時に横切ることとなる。しかし、小動物Nは検知ゾーンAと検知ゾーンBを別々に横切ることはあるが、両方を同時に横切ることはない。警戒距離を遠距離警戒から近距離警戒に変更しても2本の検知ゾーンの間隔が保たれ、小動物に対する誤報対策となっている。
【0014】
この状態のまま、高所設置した場合の床面がF2となる。高所設置時は低所設置時と比べ、検知ゾーンの間隔が広がりすぎてしまい、人間Hの場合でも2本の検知ゾーンを両方同時に通過することが困難になっており、複眼式人体検知装置Sが警報出力信号を発生する侵入物体検知範囲に人間が入っても警報出力信号を発生できない(失報する)ことになる。
【0015】
図1(b)において、失報を防ぐために2本の検知ゾーンの間隔が小さくなるように、下段の検知ゾーンを上段の検知ゾーンの方向に移動させる。
図1(b)のように遠距離警戒では下段の検知ゾーンをB1の位置からB2の位置へ移動し、近距離警戒では下段の検知ゾーンをB1’の位置からB2’の位置へ移動する。このことにより適切な2本の検知ゾーンの間隔にでき、高所設置時で人間の失報と小動物による誤報を低減できる。2本の検知ゾーンの間隔は低所設置と高所設置の2段階に限定されるものではなく、設置高さに応じて3段階以上にしてもよく、また、無段階として任意の位置で固定できるようにしてもよい。
【0016】
次に光学系ユニットの動作機構を説明する。
図3は本発明の実施形態に用いる一般的な光学系ユニットの構成を示す側断面図である。光学系ユニットは、凹面鏡Mとその焦点位置に固定された焦電素子Eで構成され、検知ゾーンCを形成する。
【0017】
図4は、本発明の複眼式人体検知装置の第1の実施形態における光学系ユニットの動作機構を示した図である。
図3と同様の光学系ユニット11a、11bに設けられたピン13a、13bが、光学系ユニット11aと11bの間にシャフト16を回転軸として回転可能な状態で取り付けられている溝カムディスク14の溝15a、溝15b内に位置するようにして連結されている。
【0018】
まず、低所設置の場合の遠距離警戒状態から近距離警戒状態への変更動作機構を、
図4(a)から
図4(b)への状態変化で説明する。
図4(a)の状態から、光学系ユニット11aを下方に(反時計回りに)回転させると、ピン13aが、溝カムディスク14の溝15aに接しているため、シャフト16を軸に溝カムディスク14を時計回りに回転させる。溝カムディスク14を時計回りに回転することにより、溝15bを介してピン13bを反時計回りに回転させ、光学系ユニット11bが下方に(反時計回りに)回転することになる。
図4(a)の状態から
図4(b)の状態へ、特許文献1で開示されている第6図と同様の機構で、光学系ユニット11aが回転すると、連動して光学系ユニット11bが回転し、光学系ユニット11aの回転角度よりも光学系ユニット11bの回転角度の方が大きくなるようになっている。
【0019】
次に低所設置から高所設置への変更動作機構を、
図4(a)から
図4(c)への状態変化で説明する。ピン13aを軸に溝カムディスク14のシャフト16を反時計回りに移動させる。溝カムディスク14のシャフト16が移動することにより、ピン13bを時計回りに回転させ、光学系ユニット11bが上方に(時計回りに)回転することになる。
【0020】
光学系ユニット11aの回転軸となるシャフト12aとピン13aとを通る直線と、光学系ユニット11bの回転軸となるシャフト12bとピン13bとを通る直線との角度が変更され、光学系ユニット11aは固定したままで、光学系ユニット11bのみ上方に(時計回りに)回転させることができ、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。
【0021】
ピン13aを軸に溝カムディスク14のシャフト16を移動し動力伝達機構の状態を変更することにより、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。また、高所設置の動力伝達機構の状態への変更後も、低所設置の動力伝達機構の状態と同様に、光学系ユニット11aが回転すると、連動して光学系ユニット11bが回転し、光学系ユニット11aの回転角度よりも光学系ユニット11bの回転角度の方が大きくなるようになっており、遠距離警戒の状態から近距離警戒の状態へ変更可能である。
【0022】
図2は、本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態の検出系配置を示す側断面図である。
図2(a)は低所設置時を示し、
図2(b)は高所設置時を示している。複眼式人体検知装置Sは、並行して延びる2本の検知ゾーンを構成し、2本の検知ゾーンの両方を同時に侵入物体が横切ったときに、警報器を作動させるための警報出力信号を発生する。
図2(a)は、
図1(a)と同じであり、説明は省略する。
【0023】
図2(b)において、失報を防ぐために2本の検知ゾーンの間隔が小さくなるように、上段の検知ゾーンと下段の検知ゾーンの両方を他方の検知ゾーンの方向に移動させる。
図2(b)のように遠距離警戒では上段の検知ゾーンをA1の位置からA3の位置へ、下段の検知ゾーンをB1の位置からB3の位置へ移動し、近距離警戒では上段の検知ゾーンをA1’の位置からA3’の位置へ、下段の検知ゾーンをB1’の位置からB3’の位置へ移動する。このことにより適切な2本の検知ゾーンの間隔にでき、高所設置時で人間の失報と小動物による誤報を低減できる。2本の検知ゾーンの間隔は低所設置と高所設置の2段階に限定されるものではなく、設置高さに応じて3段階以上にしてもよく、また、無段階として任意の位置で固定できるようにしてもよい。
【0024】
次に光学系ユニットの動作機構を説明する。
図5は、本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態における光学系ユニットの動作機構を示した図である。第1の実施形態と同様に、光学系ユニット11a、11bに設けられたピン13a、13bが、光学系ユニット11aと11bの間にシャフト16を回転軸として回転可能な状態で取り付けられている溝カムディスク14の溝15a、溝15b内に位置するようにして連結されている。
【0025】
低所設置の場合の遠距離警戒状態から近距離警戒状態への変更動作機構は、
図5(a)から
図5(b)への状態の変化で行い、第1の実施形態と同じであるため、説明は省略する。
【0026】
次に低所設置から高所設置への変更動作機構を、
図5(a)から
図5(c)への状態変化で説明する。溝カムディスク14のシャフト16を上方向に(天井方向に)移動させる。溝カムディスク14のシャフト16が移動することにより、ピン13aとピン13bの両方が上方向に(天井方向に)移動し、光学系ユニット11aが下方に(反時計回りに)、光学系ユニット11bが上方に(時計回りに)回転することになる。
【0027】
光学系ユニット11aの回転軸となるシャフト12aとピン13aとを通る直線と、光学系ユニット11bの回転軸となるシャフト12bとピン13bとを通る直線との角度が変更され、2つの光学系ユニットが連動して、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。
【0028】
溝カムディスク14のシャフト16を上方向に(天井方向に)移動し動力伝達機構の状態を変更することにより、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。また、高所設置の動力伝達機構の状態への変更後も、低所設置の動力伝達機構の状態と同様に、光学系ユニット11aが回転すると、連動して光学系ユニット11bが回転し、光学系ユニット11aの回転角度よりも光学系ユニット11bの回転角度の方が大きくなるようになっており、遠距離警戒の状態から近距離警戒の状態へ変更可能である。
【0029】
第1の実施形態、第2の実施形態ともに動力伝達機構の状態を変更するだけで容易に設置高さに対応した検知ゾーンの調整ができる。また、溝カムディスクが2つでなく1つで調整可能のため、部品点数が減り生産性が上がる。
【0030】
図6は本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態の構成を示した図である。カバー41、光学系ユニット11a、11b、溝カムディスク14、切替レバー21、シャーシ31、プリント基板Pcで構成されている。カバー41は、高密度ポリエチレンなどの赤外線の透過率が高い材料を使用している。
【0031】
光学系ユニット11aは、凹面鏡(図示せず)と焦電素子Eaや電子部品(図示せず)が実装されたプリント基板Paを備えている。光学系ユニット11bも同様に、凹面鏡(図示せず)と焦電素子Ebや電子部品(図示せず)が実装されたプリント基板Pbを備えている。シャーシ31に電子部品(図示せず)が実装されたプリント基板Pcを固定し、プリント基板Pcとプリント基板Pa、Pbがコネクタや接続コードなどで接続される。
【0032】
図4および5を用いて説明したように、光学系ユニット11a、11bに設けられたピン13a、13bが、光学系ユニット11aと11bの間にシャフト16を回転軸として回転可能な状態で取り付けられている溝カムディスク14の溝15a、溝15b内に位置するようにして連結される。
【0033】
シャーシ31に、光学系ユニット11aを保持する支持部34a、34a’を、光学系ユニット11bを保持する支持部34b、34b’を、溝カムディスクを保持する支持部32を備えている。
【0034】
光学系ユニット11aの回転軸となるシャフト12a(12a’)が支持部34a(34a’)の穴35a(35a’)に入り、光学系ユニット11aはシャーシ31に保持される。光学系ユニット11bの回転軸となるシャフト12b(12b’)が支持部34b(34b’)の穴35b(35b’)に入り、光学系ユニット11bはシャーシ31に保持される。
【0035】
溝カムディスク14のシャフト16が支持部32の長穴33に入り、切替レバー21の回転軸となるシャフト22が支持部34aの穴35aに入る。この時、切替レバー21の長穴23に溝カムディスク14のシャフト16が入り、溝カムディスク14と切替レバー21とがシャーシ31に保持される。
カバー41でシャーシ31を覆った状態で、複眼式人体検知装置は運用される。
【0036】
図7は、本発明の複眼式人体検知装置の第2の実施形態においてカバーを外した状態を示した図である。
図7(a)は低所設置の動力伝達機構の状態、
図7(b)は高所設置の動力伝達機構の状態を示した図である。
【0037】
低所設置の動力伝達機構状態では、溝カムディスク14のシャフト16は支持部32の長穴33の下側(床側)と切替レバー21の長穴23の上側(天井側)でシャーシ31に保持されている。
【0038】
図7(a)の状態からシャフト22を軸に上方向(天井方向)へ反時計回りに切替レバー21を回転することにより、溝カムディスク14のシャフト16は支持部32の長穴33の上側(天井側)と切替レバー21の長穴23の下側(床側)でシャーシ31に保持され、溝カムディスクのシャフト16は上方向(天井方向)に移動することになる。
【0039】
溝カムディスクのシャフト16が上方向(天井方向)に移動すると、
図5を用いて説明したように、光学系ユニット11aが下方に(反時計回りに)、光学系ユニット11bが上方に(時計回りに)回転し、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。
【0040】
第1の実施形態、第2の実施形態において、遠距離警戒状態から近距離警戒状態への変更動作を、光学系ユニット11aを回転し、溝カムディスク14を通じて光学系ユニット11bが回転する内容で説明したが、同機構で、光学系ユニット11bを回転し、溝カムディスク14を通じて光学系ユニット11aを回転することもでき、溝カムディスク14を回転し、光学系ユニット11aと11bの両方を回転することもできる。
【0041】
第1の実施形態において、ピン13aを軸に溝カムディスク14のシャフト16を移動し動力伝達機構の状態を変更したが、ピン13bを軸に溝カムディスク14のシャフト16を移動し動力伝達機構の状態を変更してもよく、このときは、光学系ユニット11bは固定したままで、光学系ユニット11aのみ下方に(反時計回りに)回転させることができ、2本の検知ゾーンの間隔を小さくすることができる。
【0042】
第2の実施形態において、低所設置から高所設置に変更する場合、溝カムディスク14のシャフト16の移動角度は上方向(天井方向)であればよく、特に限定しない。また、長穴33の角度も限定しない。
また、光学系ユニット11aのシャフト12aと切替レバー21のシャフト22とを同じ位置としたが、シャーシ31の異なる位置に穴を設けてそれぞれ個別に配置してもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は例として提示したものであり、本発明の範囲は、これらに限定するものではなく、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
11a,11b・・・光学系ユニット
12a,12a’,12b,12b’・・・シャフト
13a,13b・・・ピン
14・・・溝カムディスク
15a,15b・・・溝
16・・・シャフト
21・・・切替レバー
22・・・シャフト
23・・・長穴
31・・・シャーシ
32・・・支持部
33・・・長穴
34a,34a’,34b,34b’・・・支持部
35a,35a’,35b,35b’・・・穴
41・・・カバー
A,A1,A1’,A3,A3’・・・検知ゾーン
B,B1,B1’,B2,B2’,B3,B3’・・・検知ゾーン
C・・・検知ゾーン
E,Ea,Eb・・・焦電素子
F1・・・低所設置時の床面
F2・・・高所設置時の床面
H・・・人間
M・・・凹面鏡
N・・・小動物
Pa,Pb,Pc・・・プリント基板
S・・・複眼式人体検知装置