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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20230519BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230519BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230519BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20230519BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20230519BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230519BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/6554
H01M10/658
H01M50/204 401H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019569029
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2019001802
(87)【国際公開番号】W WO2019151036
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018014737
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 智文
(72)【発明者】
【氏名】本川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓介
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-134901(JP,A)
【文献】特開2009-134936(JP,A)
【文献】特開2016-046211(JP,A)
【文献】特開2014-229559(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133707(WO,A1)
【文献】特表2011-520235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の角形電池を含む電池積層体と、
前記電池積層体の前記角形電池の積層方向か又は前記積層方向に略直交する直交方向に延在すると共に冷却剤が流動する1以上の冷却剤通路、及び前記積層方向の熱の伝導を抑制する1以上の熱伝導抑制部を有し、前記積層方向に延在し、前記電池積層体に沿って配置される冷却プレートと、を備え、
前記熱伝導抑制部は、前記直交方向に延在し、前記冷却プレートの厚さ方向の前記電池積層体側が開口する1以上の溝であり、
前記冷却プレートの厚さ方向の前記電池積層体側の第1面と前記冷却剤通路との距離が、前記冷却プレートにおける前記厚さ方向の前記第1面側とは反対側の第2面と前記冷却剤通路との距離よりも短い、
電池パック。
【請求項2】
前記電池積層体は、前記積層方向に隣り合う各2つの前記角形電池の間に配置されると共に絶縁性を有するセル間セパレータを含み、
前記1以上の熱伝導抑制部には、前記冷却プレートの厚さ方向から見たとき、前記セル間セパレータに重なる部分を有する1以上のセパレータ重なり抑制部が含まれる、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記セル間セパレータは、断熱材により構成される、
請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記冷却プレートは、前記電池積層体における前記角形電池の高さ方向の一方側に配置されると共に、複数の前記冷却剤通路を有し、
前記冷却剤通路は、前記直交方向に延在し、
前記熱伝導抑制部は、前記積層方向に関して前記積層方向に隣り合う2つの前記冷却剤通路の間に配置される、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の電池パック。
【請求項5】
前記積層方向から見たとき、前記溝が、前記冷却剤通路に重なる部分を有する、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の電池パック。
【請求項6】
積層された複数の角形電池を含む電池積層体と、
前記電池積層体の前記角形電池の積層方向か又は前記積層方向に略直交する直交方向に延在すると共に冷却剤が流動する1以上の冷却剤通路、および前記直交方向が長手方向に一致する長尺形状の開口を有し、冷却プレートの厚さ方向に前記冷却プレートを貫通する1以上の貫通孔を有する前記冷却プレートとを、備え
前記貫通孔が、熱伝導抑制部である、
電池パック。
【請求項7】
積層された複数の角形電池を含む電池積層体と、
前記電池積層体の前記角形電池の積層方向か又は前記積層方向に略直交する直交方向に延在すると共に冷却剤が流動する1以上の冷却剤通路、および前記直交方向が深さ方向に一致し、冷却プレートの厚さ方向の両側が開口する1以上の凹部を有する前記冷却プレートとを備え
前記凹部が、熱伝導抑制部である、
電池パック。
【請求項8】
積層された複数の角形電池を含む電池積層体と、
前記電池積層体の前記角形電池の積層方向か又は前記積層方向に略直交する直交方向に延在すると共に冷却剤が流動する1以上の冷却剤通路、及び前記積層方向の熱の伝導を抑制する1以上の熱伝導抑制部を有し、前記積層方向に延在し、前記電池積層体に沿って配置される冷却プレートと、を備え、
前記熱伝導抑制部は、前記直交方向に延在し、前記冷却プレートの厚さ方向の前記電池積層体側が開口する1以上の溝であり、
前記冷却プレートの厚さ方向において、前記溝の底面は、前記冷却剤通路より、前記角形電池から遠い、
電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池パックとしては、特許文献1に記載されているものがある。この電池パックは、電池積層体と、冷却プレートを備える。電池積層体は、直線の延在方向である積層方向に積層された複数の角形電池を含む。また、冷却プレートは、電池積層体における角形電池の高さ方向の一方側に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-134901号公報
【発明の概要】
【0004】
角形電池が高エネルギー密度化されるにしたがって、角形電池が異常発熱時に大熱量の熱を放出するようになってきている。したがって、より大熱量の熱が、異常発熱した角形電池から冷却プレートを介して積層方向に伝導するようになっており、他の角形電池が、より大熱量の熱を異常発熱した角形電池から冷却プレートを介して受けて熱損傷する虞も高まってきている。
【0005】
そこで、本開示の目的は、冷却プレートを介した積層方向の熱の伝導を抑制できる電池パックを提供することにある。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の電池パックは、積層された複数の角形電池を含む電池積層体と、電池積層体の角形電池の積層方向か又は積層方向に略直交する直交方向に延在すると共に冷却剤が流動する複数の冷却剤通路、及び積層方向の熱の伝導を抑制する1以上の熱伝導抑制部を有し、積層方向に延在し、電池積層体に沿って配置される冷却プレートと、を備える。
【0007】
本開示に係る電池パックによれば、冷却プレートを介した積層方向の熱の伝導を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る電池パックの一部の模式斜視図であり、電池パックの筐体の蓋部が取り外された状態の電池パックの一部の模式斜視図である。
図2図1のA‐A線模式断面図の一部を表す部分模式断面図である。
図3】上記電池パックの冷却プレートを上側から見たときの模式平面図であり、伝熱シートの図示を省略した場合における、冷却プレートとトリガセルとの位置関係、及びトリガセルからの熱の流れについて説明する模式平面図である。
図4】上記電池パックとの比較において溝が存在しないことだけが異なる参考例の電池パックの図2に対応する模式断面図である。
図5】上記参考例の電池パックにおける図3に対応する模式平面図である。
図6】変形例の電池パックの一部を側方から見たときの模式図である。
図7】他の変形例の電池パックにおける図6に対応する模式図である。
図8】別の変形例の冷却プレートの模式平面図である。
図9】更なる変形例の冷却プレートの模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の説明及び図面において、X方向は、電池積層体21において複数の角形電池31が積層される積層方向であり、Y方向は、直交方向であり、Z方向は、角形電池31の高さ方向である。X方向、Y方向、及びZ方向は、互いに直交する。なお、以下で説明する実施例、及び最後に説明する変形例以外の変形例では、Z方向は、冷却プレート41,141,241,341,441の厚さ方向に一致する。また、明細書の最後で、直交方向が、角形電池の高さ方向に一致し、冷却プレートの厚さ方向が、積層方向及び角形電池の高さ方向の両方向に垂直な方向となる場合について簡単に説明する。また、以下の説明において、上側とは、角形電池31におけるZ方向の電極端子形成側をさし、下側とは、角形電池31におけるZ方向の電極端子形成側とは反対側をさす。また、以下の図面では、同一の要素(構成)には、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の各図は、模式図であり、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さの寸法比は、一致しない。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態に係る電池パック1の一部の模式斜視図であり、電池パック1の筐体10の蓋部が取り外された状態の電池パック1の一部の模式斜視図である。なお、図1では、角形電池31の電極端子の図示を省略する。図1に示すように、電池パック1は、筐体10と、複数の電池モジュール20を備える。筐体10は、本体部11、蓋部12(図示せず)、及び複数のねじ(図示せず)を含み、本体部11、及び蓋部は、アルミニウムや鉄等の金属、又は樹脂で構成される。本体部11は、略直方体状の凹部13を有する箱状部材であり、凹部13は、矩形状の開口14をZ方向上側のみに有する。本体部11は、Z方向上側に端面15を有し、端面15には、図示しないねじ孔が所定間隔毎に設けられる。
【0011】
図1に示すように、本体部11は、一対のY方向に延在する壁部11aと、一対のX方向に延在する壁部11bを含み、壁部11aの高さが、壁部11bの高さよりも高くなっている。蓋部は、平面視が矩形の板状部材である。蓋部は、壁部11bと略同じ長さのX方向寸法を有し、壁部11aと壁部11bの高さの差と略一致する厚さを有する。複数の電池モジュール20等を凹部13内に適切に収容した後、蓋部を、一対の壁部11bのX方向の間に配置する。また、蓋部を、Z方向から見たとき、蓋部のY方向一方側の縁が、X方向一方側の壁部11bのY方向一方側の縁に略一致し、蓋部のY方向他方側の縁が、X方向他方側の壁部11bのY方向他方側の縁に略一致するように配置する。その後、図示しないねじを、蓋部及び一対の壁部11bを締結するように締め込んで、蓋部を本体部11に取り付け、電池パック1を構成する。なお、本実施形態において、壁部11aの高さが壁部11bの高さよりも高くなっているが、これに限定されず壁部11bの高さを壁部11aの高さよりも高くしても良いし、あるいは同一にしても良い。
【0012】
図1に示すように、複数の電池モジュール20は、凹部13にY方向に隣り合うように配置される。Y方向に隣り合うように配置された複数の電池モジュール20の平面視における面積は、凹部13の平面視における面積よりも僅かに小さい。その結果、複数の電池モジュール20を凹部13に収容した状態で、各電池モジュール20は、凹部13に対してX方向及びY方向に略相対移動不可能な状態になる。
【0013】
電池モジュール20は、電池積層体21、一方側サイドバインドバー22、他方側サイドバインドバー23、及び一対のエンドプレート24を備える。本実施例では、一対のエンドプレート24が、一対の壁部11aに一致するが、一対のエンドプレートは、筐体においてY方向に延在する一対の壁部に一致しなくてもよい。電池積層体21は、複数の略直方体状の角形電池(Cell)31と、複数のセル間セパレータ32を含む。複数の角形電池31は、X方向に一列に重なるように積層され、セル間セパレータ32は、X方向に隣り合う2つの角形電池31間に配置される。角形電池31は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池であり、主表面がシュリンクチューブ等の絶縁シートで被覆される。セル間セパレータ32は、シート状部材であり、樹脂等の絶縁性を有する材料で構成される。セル間セパレータ32は、X方向に隣り合う2つの角形電池31間の絶縁性を確実に確保するために設けられる。
【0014】
一方及び他方側サイドバインドバー22,23の夫々は、アルミニウムや鉄、ステンレス鋼等の金属で構成される板部材又は角形管部材であり、X方向に延在する。一方及び他方側サイドバインドバー22,23の夫々のX方向寸法は、電池積層体21のX方向寸法よりも僅かに長い。一方側サイドバインドバー22は、電池積層体21のY方向一方側を拘束し、他方側サイドバインドバー23は、電池積層体21のY方向他方側を拘束する。また、各エンドプレート24は、アルミニウムや鉄等の金属で構成される板部材であり、Y方向に延在する。X方向一方側に配置されるエンドプレート24は、電池積層体21のX方向一方側を拘束し、X方向他方側に配置されるエンドプレート24は、電池積層体21のX方向他方側を拘束する。なお、一方及び他方側サイドバインドバー22,23は、金属部材に限定されず、放熱性より軽量化を重視する場合、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)等のプラスチック部材であっても良い。
【0015】
一方及び他方側サイドバインドバー22,23の夫々のX方向の両側の端面35には、X方向に延びるエンドプレート固定用のねじ孔(図示せず)が設けられ、一対のエンドプレート24の夫々には、貫通孔(ねじ孔)が設けられる。また、電池モジュール20は、更に、図示しないエンド用セパレータ、一方側サイド用セパレータ27、及び他方側サイド用セパレータ28を備える。エンド用セパレータ、一方側サイド用セパレータ27、及び他方側サイド用セパレータ28の夫々は、シート状部材であり、樹脂等の絶縁性を有する材料で構成される。エンド用セパレータは、電池積層体21のX方向の一端と一方側に配置されたエンドプレート24との間、及び電池積層体21のX方向の他端と他方側に配置されたエンドプレート24との間に配置される。他方、一方及び他方側サイド用セパレータ27,28は、X方向に延在する。一方及び他方側サイド用セパレータ27,28の夫々のX方向長さは、電池積層体21のX方向長さと、エンド用セパレータのX方向長さ(厚さ)の2倍の長さとを足した長さに略一致する。一方側サイド用セパレータ27は、電池積層体21のY方向一方側の端部と、一方側サイドバインドバー22との間に配置され、他方側サイド用セパレータ28は、電池積層体21のY方向他方側の端部と、他方側サイドバインドバー23との間に配置される。エンド用セパレータを電池積層体21のX方向の両端とエンドプレート24との間に配置し、サイド用セパレータ27,28を電池積層体21のY方向の端部とサイドバインドバー22,23との間に配置する。そして、この状態で、ねじを、エンドプレート24の上記貫通孔及びサイドバインドバー22,23の上記ねじ孔に、エンドプレート24のX方向外側から締め込む。このねじの締め込みで、電池積層体21、一方及び他方側サイドバインドバー22,23、一対のエンドプレート24、2つのエンド用セパレータ、及び一方及び他方側サイド用セパレータ27,28が一体化され、電池モジュール20が構成される。各電池積層体21に関し、各角形電池31のY方向の一方側側面は、一方側サイドバインドバー22による拘束で略同一平面上に位置し、各角形電池31のY方向の他方側側面は、他方側サイドバインドバー23による拘束で略同一平面上に位置する。また、一方及び他方側の一対のエンドプレート24を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、エンドプレート24により電池積層体21を圧縮した状態で一対のエンドプレート24をサイドバインドバー22,23にねじ止めして電池モジュール20を構成してもよい。
【0016】
なお、図1に示す実施例では、Y方向に隣り合う2つの電池積層体21において、Y方向一方側の電池積層体21のY方向他方側に配置される他方側サイドバインドバー23と、Y方向他方側の電池積層体21のY方向一方側に配置される一方側サイドバインドバー22を、同一の共有サイドバインドバー38で構成している。しかし、Y方向に隣り合う2つの電池積層体において、Y方向一方側の電池積層体のY方向他方側に配置される他方側サイドバインドバーと、Y方向他方側の電池積層体のY方向一方側に配置される一方側サイドバインドバーを一体構造とせずに互いに独立に構成してもよい。
【0017】
また、図1に示す実施例では、Y方向から見たときに重なる複数の電池モジュール20に関し、1つで一体の一方側のエンドプレート24を共有させることで、各電池モジュール20の電池積層体21のX方向一方側を拘束し、1つで一体の他方側のエンドプレート24を共有させることで、各電池モジュール20の電池積層体21のX方向他方側を拘束した。しかし、Y方向から見たときに重なる複数の電池モジュールに関し、1つで一体の一方側エンドプレートを共有する構造を採用しなくてもよく、各電池モジュールの電池積層体のX方向一方側のみを拘束する一方側エンドプレートを採用してもよい。また、同様に、Y方向から見たときに重なる複数の電池モジュールに関し、1つで一体の他方側エンドプレートを共有する構造を採用しなくてもよく、各電池モジュールの電池積層体のX方向他方側のみを拘束する他方側エンドプレートを採用してもよい。
【0018】
また、上述のように、電池積層体21は、複数の角形電池31と交互に積層される複数のセル間セパレータ32を含んでもよく、セル間セパレータ32により隣り合う角形電池31間を絶縁してもよい。また、電池積層体21は、X方向の一端の角形電池31と一方側のエンドプレート24との間に配置されて、一端の角形電池31と一方側のエンドプレート24との隙間を埋めるエンド用セパレータを含んでもよく、X方向の他端の角形電池31と他方側のエンドプレート24との間に配置されて、他端の角形電池31と他方側のエンドプレート24との隙間を埋めるエンド用セパレータを含んでもよい。また、これらの構成で、エンド用セパレータは、弾性を有してもよい。この場合、X方向の端の角形電池31と、一方及び他方側のエンドプレート24のうちの少なくとも一方との隙間の寸法変化があったとしても、エンド用セパレータによって、X方向の端の角形電池31と、一方及び他方側のエンドプレート24のうちの少なくとも一方との隙間を容易に埋めることができる。よって、電池積層体21をX方向に密着配置できて好ましい。
【0019】
図1の参照を続けて、本実施例では、筐体の底板部は、伝熱シート40と、アルミニウムやその合金等の金属で構成される冷却プレート41を含む。伝熱シート40は、絶縁性を有すると共に熱伝導性に優れるシート部材で構成され、例えば、エポキシ樹脂シートやシリコーンゴムシート等で構成される。伝熱シート40は、平面視において冷却プレート41と同一の矩形形状を有し、冷却プレート41の電池モジュール20側の上面に配置され、冷却プレート41と壁部11a,11bとで挟持される。ねじを、冷却プレート41の下側から、冷却プレート41、伝熱シート40、及び壁部11a,11bに締め込むことで、冷却プレート41及び伝熱シート40を、壁部11a,11bに固定する。
【0020】
図2は、図1のA‐A線模式断面図の一部を表す図である。図2に示すように、冷却プレート41は、複数の冷却剤通路42を有する。複数の冷却剤通路42は、X方向に間隔をおいて配置され、各冷却剤通路42は、冷却プレート41のY方向の一端から他端までY方向に直線状に延在する。各冷却剤通路42は、Y方向の両端が開口する。例えば、図示しないポンプ等によって、流動力が付与された水等の冷却剤(冷媒)が、X方向に延在すると共に各冷却剤通路42のそれぞれの開口に連結される配管(図示せず)を介して各冷却剤通路内を流動する。冷却プレート41は、当該冷却剤によって冷却される。
【0021】
本実施例では、冷却剤通路42におけるXZ断面での断面形状が、略矩形になっている。しかし、冷却剤通路におけるXZ断面での断面形状は、円形等であってもよく、矩形以外の如何なる形状であってもよい。冷却剤通路42は、冷却プレート41の厚さ方向(Z方向)の略中央部に配置される。Z方向から見たとき、1つの冷却剤通路42が各角形電池31のX方向中央部に重なるように、複数の冷却剤通路42が冷却プレート41に配置される。冷却プレート41は、更に複数の溝43を有する。溝43は、熱伝導抑制部を構成する。溝43は、冷却プレート41のY方向の一端から他端までY方向に直線状に延在する。溝43は、Y方向の両端が開口すると共に、Z方向上側(Z方向(冷却プレート41の厚さ方向)の電池積層体21側)が開口する。溝43は、X方向に関して、隣り合う各2つの冷却剤通路42の間に配置される。複数の溝43には、Z方向から見たとき、セル間セパレータ32に重なる部分を有する複数の溝43aが含まれる。溝43aは、セパレータ重なり抑制部を構成する。また、X方向から見たとき、各溝43は、冷却剤通路42に重なる部分を有している。なお、図2において、参照番号26は、上記エンド用セパレータである。
【0022】
次に、図2図5を用いて、溝43を設けることによって得られる作用効果について説明する。図3は、冷却プレート41を上側から見たときの模式平面図であり、伝熱シート40の図示を省略した場合における、冷却プレート41とトリガセル31aとの位置関係、及びトリガセル31aからの熱の流れについて説明する模式平面図である。また、図4は、電池パック1との比較において溝43が存在しないことだけが異なる参考例の電池パック501における図2に対応する模式断面図であり、図5は、参考例の電池パック501における図3に対応する模式平面図である。
【0023】
図4に示すように、参考例の電池パック501では、異常発熱した角形電池(以下、トリガセルという)31aからの熱は、矢印Fで示す方向にセル間セパレータ32を介してX方向に隣り合う角形電池31に伝達する。更には、トリガセル31aからの熱は、矢印Gに示す方向に伝熱シート40を介して冷却プレート541に伝達する。また、参考例の電池パック501では、溝43が存在しないため、冷却プレート541に伝達した熱のうちの大部分が、矢印Hに示す方向に、再度、伝熱シート40を介して隣り合う角形電池31に伝達する。したがって、隣り合う角形電池31が、トリガセル31aから矢印Fで示す方向の熱に加えて、矢印G及びHで示す方向の大きな熱量の熱を受けて、熱損傷し易くなる。
【0024】
また、図5に示すように、参考例の電池パック501では、溝43が存在しないため、トリガセル31aから矢印H方向にX方向に伝達する熱の熱量が、トリガセル31aから矢印I方向にY方向に伝達する熱の熱量と比較して同程度の熱量となる。よって、トリガセル31aと同じ電池積層体21に所属する他の角形電池31が、トリガセル31aからの熱を受け易く、当該熱で熱損傷し易くなる。
【0025】
これに対し、本実施例の電池パック1では、矢印Bで示すセル間セパレータ32を介する熱は、電池パック501と同程度、X方向に隣り合う角形電池31に伝導する。しかし、トリガセル31aから矢印C方向に伝熱シート40を介してZ方向下側に伝達した熱は、X方向の伝導が溝43によって妨げられる。よって、矢印C方向に伝導した熱のうちの一部の熱は、溝43を乗り越えることができず、矢印C方向に伝達した熱から低減された熱が、矢印Dで示す方向に、X方向に伝導した後、隣り合う角形電池31に伝導する。よって、参考例の電池パック501との比較で、トリガセル31aにX方向に隣り合う角形電池31に伝導する冷却プレート41からの熱を大きく低減できる。また、図3に示すように、本実施例の電池パック1では、伝熱を抑制できる溝43が存在するため、矢印Dで示すトリガセル31aからX方向に伝導する熱の熱量が、矢印Eで示すトリガセル31aからY方向に伝導する熱の熱量よりも小さくなる。その結果、当該隣り合う角形電池31が熱損傷を起こす虞を抑制できるか又は防止できる。なお、トリガセル31aを有する電池積層体21に対してY方向に隣り合う列の電池積層体21のトリガセル31aに隣り合う角形電池31へのトリガセル31aからの冷却プレート41における熱伝導経路は、トリガセル31aが所属する電池積層体21の隣り合う角形電池31に比べて長い。したがって、その熱伝導経路の長さによる伝導される熱量の低減により、トリガセル31aからの熱で隣り合う列の電池積層体21の角形電池31が熱損傷を起こす虞を抑制すること又は防止することが図られている。
【0026】
ところで、セル間セパレータ32は、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)などの樹脂により構成される。これらの樹脂はセル間の断熱材として作用する。すなわち、セル間セパレータ32として断熱材を使用することによりセル間セパレータ32を介して隣り合う角形電池31間で伝導される熱量(矢印B)を低減できる。そのため、冷却プレート41を介して隣り合う角形電池31間で伝導される熱量の低減と相まってトリガセル31aから隣り合う角形電池31が熱損傷を起こす虞を抑制できるか又は防止するのに有利となる。また、セル間セパレータ32として前記樹脂より断熱性能に優れる断熱材を用いると好ましい。例えば、セル間セパレータ32として、不織布等からなる繊維シート等の空隙を有する構造材の前記空隙にシリカキセロゲル等の多孔質材が担持された構造を有する断熱材を用いることができる。この断熱材は、熱伝導率が約0.018~0.024W/m・Kであり、電池モジュールとしてのエネルギー密度の低下を考慮して例えば1~2mmの厚さで使用される。
【0027】
以上、電池パック1は、X方向に積層された複数の角形電池31を含む電池積層体21を備える。また、電池パック1は、X方向とZ方向の両方に略直交するY方向に延在すると共に冷却剤が流動する複数の冷却剤通路42、及びX方向の熱の伝導を抑制する複数の溝43を有する冷却プレート41を備える。
【0028】
したがって、溝43によって、熱が冷却プレート41をX方向に伝導することを抑制できる。したがって、トリガセル31aと同一の電池積層体21に所属する他の角形電池31に伝導する熱を抑制でき、当該他の角形電池31の熱損傷を抑制又は防止できる。
【0029】
また、各溝43は、Z方向上側(冷却プレート41の厚さ方向の電池積層体21側)に開口し、Y方向に延在してもよい。
【0030】
上記構成によれば、溝43で冷却プレート41の上側における熱のX方向の伝達を抑制できる。よって、トリガセル31aからそれに隣り合う角形電池31に冷却プレート41を介して伝達する熱における溝43の深さ方向の回り込みを大きくでき、熱の伝達の低減効果を大きくできる。
【0031】
また、冷却プレート41は、複数の冷却剤通路42を有してもよい。そして、溝43が、X方向に関して、X方向に隣り合う各2つの冷却剤通路42の間に配置されてもよい。
【0032】
上記構成によれば、Z方向から見たとき、溝43が、冷却剤通路42に重なることがない。したがって、溝43が設けられたとしても、冷却剤通路42を流れる冷却剤が、電池積層体21を冷却する性能を良好なものに維持できる。
【0033】
また、電池積層体21は、X方向に隣り合う各2つの角形電池31の間に配置されると共に絶縁性を有するセル間セパレータ32を含んでもよい。また、複数の溝43には、Z方向から見たとき、セル間セパレータ32に重なる部分を有する1以上の溝43aが含まれてもよい。
【0034】
上記構成によれば、1以上の溝43aが角形電池31のX方向の間に配置されることになる。したがって、溝43aでトリガセル31aから隣り合う角形電池31に伝達する熱を効率的に抑制でき、溝43aを形成することで得られる熱伝導抑制の作用効果を顕著なものとできる。
【0035】
また、溝43は、Y方向に延在すると共にZ方向の電池積層体21側が開口してもよい。また、Z方向から見たとき、溝43が、冷却剤通路42に重なる部分を有してもよい。
【0036】
上記構成によれば、溝43の深さが、Z方向から見たとき溝43が冷却剤通路42に重なる程度に深くなる。したがって、熱の回り込みを大きくでき、溝43を超えてX方向に伝導する熱の熱量を効果的に抑制できる。
【0037】
更には、電池パック1では、冷却剤通路42が、冷却プレート41をY方向の一端から他端までY方向に直線状に延在する。また、溝43も、冷却プレート41をY方向の一端から他端までY方向に直線状に延在する。その結果、冷却プレート41を押出成形を用いて簡単安価に形成できる。
【0038】
尚、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、図2に示すように、溝43の底が、冷却剤通路42のZ方向下側の下端よりもZ方向上側に位置している。しかし、図6、すなわち、変形例の電池パック101の一部を側方から見たときの模式図に示すように、冷却プレート141において、溝143の底が冷却剤通路42のZ方向下側の下端よりもZ方向下側に位置してもよい。このようにして、回り込み熱量を更に小さくして、X方向への熱の伝達の抑制効果を更に大きくしてもよい。
【0040】
また、図2に示すように、冷却剤通路42が、冷却プレート41の厚さ方向の中央部に存在する場合について説明した。しかし、図7、すなわち、他の変形例の電池パック201における図6に対応する模式図に示すように、冷却プレート241におけるZ方向の電池積層体21側の第1面(上面)241aと冷却剤通路242との距離aが、冷却プレート241におけるZ方向の上記第1面側とは反対側の第2面(下面)241bと冷却剤通路242との距離bよりも短くてもよい。このようにして、冷却剤通路242を流れる冷却剤による電池積層体21の冷却効果を大きくすると共に冷却プレート241において冷却剤通路242のZ方向上側をX方向に伝導する熱の熱量を低減してもよい。
【0041】
また、冷却プレート41にY方向に一端から他端までY方向に延在する溝43を設ける場合について説明した。しかし、冷却プレートは、少なくともY方向の一方側端部が、Y方向に開口しない溝を有してもよい。また、図8、すなわち、他の変形例の冷却プレート341の模式平面図に示すように、冷却プレート341にY方向に延在する長尺形状の開口を有する複数の貫通孔343を設けてもよい。そして、複数の貫通孔343を、X方向に間隔をおいて配置し、各貫通孔343が、冷却プレート341をZ方向の一端から他端まで貫通するようにしてもよい。この場合、熱がX方向に伝導する領域が、略貫通孔343よりもY方向の端側に位置するY方向の両端部351に限られる。よって、熱のX方向の伝導を大きく抑制できる。なお、冷却プレートが、複数の冷却剤通路を有し、貫通孔が、X方向に関して、X方向に隣り合う各2つの冷却剤通路の間に配置されると好ましい。また、電池積層体がX方向に隣り合う各2つの角形電池の間に配置されると共に絶縁性を有するセル間セパレータを含み、1以上の貫通孔には、Z方向から見たとき、セル間セパレータに重なる部分を有する1以上のセパレータ重なり貫通孔が含まれると好ましい。また、貫通孔343が、熱伝導抑制部を構成することは言うまでもない。
【0042】
又は、図9、すなわち、更なる変形例の冷却プレート441の模式平面図に示すように、冷却プレート441にY方向が深さ方向に一致する複数の凹部443を設けてもよい。そして、複数の凹部443を、X方向に間隔をおいて配置し、各凹部443が、冷却プレート441をZ方向の一端から他端まで貫通し、Y方向の片側のみがY方向に開口するようにしてもよい。また、X方向に隣接する各2つの凹部443のY方向の開口側を逆方向としてもよい。この場合、熱がX方向に伝導するのに、冷却プレート441を蛇行するように伝導するしかない。また、熱がX方向に伝導する領域が、凹部443よりもY方向の端側に位置するY方向の一方端部451のみに限られる。したがって、熱のX方向の伝導の抑制効果を顕著なものにできる。更には、X方向に隣接する各2つの凹部443のY方向の開口側をY方向の同じ側とする変形例と比較して、冷却プレート441の剛性も大きなものにできる。なお、冷却プレートが、複数の冷却剤通路を有し、凹部が、X方向に関して、X方向に隣り合う各2つの冷却剤通路の間に配置されると好ましい。また、電池積層体がX方向に隣り合う各2つの角形電池の間に配置されると共に絶縁性を有するセル間セパレータを含み、1以上の凹部には、Z方向から見たとき、セル間セパレータに重なる部分を有する1以上のセパレータ重なり凹部が含まれると好ましい。また、凹部443が、熱伝導抑制部を構成することは言うまでもない。
【0043】
また、冷却プレート41,141,241,341,441が、複数の同一の熱伝導抑制部を有する場合について説明した。しかし、冷却プレートは、図2及び図6のいずれかで説明した溝43,143と、図8を用いて説明した貫通孔343と、図9を用いて説明した凹部443のうちの2以上の熱伝導抑制部を有してもよい。また、冷却プレート41が、複数の熱伝導抑制部を有する場合について説明した。しかし、冷却プレートは、1つのみの熱伝導抑制部を有してもよい。また、熱伝導抑制部が、Y方向に延在する場合について説明した。しかし、冷却プレートは、少なくとも一部がY方向に対して傾斜する方向に延在する熱伝導抑制部を有してもよい。また、冷却プレート41が、電池パック1の筐体の底板部の一部をなす場合について説明した。しかし、冷却プレートは、電池パックの筐体の底板部と別体であってもよく、底板部のZ方向下側に配置されてもよい。また、略直方体状の角形電池の方向を、短手方向、長手方向、及び高さ方向で定義するとき、積層方向であるX方向が、角形電池31の短手方向(厚さ方向)に一致する場合について説明した。しかし、積層方向であるX方向は、角形電池の長手方向に一致してもよい。
【0044】
また、冷却プレート41,141,241,341,441が、電池積層体21におけるZ方向一方側(Z方向下側)に配置される場合について説明し、X方向に延在する場合について説明した。また、冷却プレート41,141,241,341,441が、Y方向に延在する冷却剤通路42,242を有する場合について説明した。しかし、冷却プレートは、電池積層体の少なくとも一方側の側方に、厚さ方向が角形電池の高さ方向及び積層方向の両方向に垂直な方向に一致するように配置されて、積層方向に延在してもよい。また、冷却プレートは、積層方向に延在する1以上の冷却剤通路を有してもよい。なお、この場合においては、直交方向が、高さ方向に一致すると好ましく、1以上の熱伝導抑制部が、直交方向(高さ方向)に延在し、冷却プレートの厚さ方向の電池積層体側が開口する1以上の溝、直交方向(高さ方向)が長手方向に一致する長尺形状の開口を有し、冷却プレートの厚さ方向に冷却プレートを貫通する1以上の貫通孔、及び直交方向(高さ方向)が深さ方向に一致し、冷却プレートの厚さ方向の両側が開口する1以上の凹部のうちの少なくとも1つを含むと好ましい。また、この場合においても、1以上の熱伝導抑制部に、冷却プレートの厚さ方向から見たとき、セル間セパレータに重なる部分を有する1以上のセパレータ重なり抑制部が含まれると好ましい。また、この場合においても、冷却プレートにおける冷却プレートの厚さ方向の電池積層体側の第1面と冷却剤通路との距離が、冷却プレートにおける厚さ方向の第1面側とは反対側の第2面と冷却剤通路との距離よりも短いと好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1,101,201 電池パック
21 電池積層体
31 角形電池
32 セル間セパレータ
41,141,241,341,441 冷却プレート
42,242 冷却剤通路
43,43a,143 溝
241a 冷却プレートの第1面
241b 冷却プレートの第2面
343 貫通孔
443 凹部
a 冷却プレートの上面と冷却剤通路との距離
b 冷却プレートの下面と冷却剤通路との距離
X方向 積層方向
Y方向 直交方向
Z方向 角形電池の高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9