(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/06 20060101AFI20230519BHJP
H01Q 3/30 20060101ALI20230519BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01Q19/06
H01Q3/30
H01Q13/08
(21)【出願番号】P 2020513252
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2019015313
(87)【国際公開番号】W WO2019198662
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2018076907
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫野 祐一
(72)【発明者】
【氏名】宇野 博之
(72)【発明者】
【氏名】西木戸 友昭
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245921(JP,A)
【文献】特開平08-186421(JP,A)
【文献】特開2011-055419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/06
H01Q 3/30
H01Q 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両に搭載されるアンテナ装置であって、
前記第1の車両の走行面に沿った面である基板の第1面に配置される
複数のアンテナ素子を含み、前記基板の第1面に対して、第1の角度を含む複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成するアレーアンテナと、
前記
複数のアンテナ素子の周囲の少なくとも一部に設けられ、前記第1の角度を成す方向の第1のビームを、前記基板に沿った
第1の方向に屈折させる側壁と、
を備
え、
前記アレーアンテナは、前記第1の方向に存在する第2の車両に搭載される第1の無線通信装置と通信を行う場合、前記第1のビームを形成する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記アレーアンテナは、
前記
複数のアンテナ素子の励振位相を制御する移相器と、
前記移相器の位相を制御する制御回路と、
を備える、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アレーアンテナは、前記基板の第1面と反対の面に反射板を有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記側壁は、前記第1のビームが入射する第1の側面と、
前記第1のビームが屈折して出射する第2の側面と、
を有し、
前記基板の第1面に対する前記第1の側面の傾斜角度および前記基板の第1面に対する前記第2の側面の傾斜角度は、前記第1の角度に基づいて設定される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記基板の第1面に対する前記第1の側面の傾斜角度は、65°以下である、
請求項
4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の側面は、前記基板から距離が離れるほど、前記基板の第1面と垂直な軸から離れるテーパ形状を有する、
請求項
4に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第2の側面は、前記基板の第1面に対して垂直である、
請求項
4に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第2の側面は、レンズ形状である、
請求項
4に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記複数のアンテナ素子は、前記基板において一次元の配列方向に配置され、
前記側壁は、前記配列方向の延長線上に設けられる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記複数のアンテナ素子は、前記基板において2次元の方向に配置され、
前記側壁は、前記複数のアンテナ素子を取り囲む位置に設けられる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記
複数のアンテナ素子の動作周波数は、準ミリ波帯、ミリ波帯、および、テラヘルツ帯の少なくとも1つに含まれる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記側壁は、誘電体で充填されている、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記側壁は、少なくとも、前記基板の第1面に対して30°の角度を成す方向のビームが入射する高さを有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記アレーアンテナは、前記第1の方向と異なる第2の方向に存在し、前記アンテナ装置よりも高い位置に存在する第2の無線通信装置と通信を行う場合、前記複数の角度に含まれ、前記第1の角度と異なる第2の角度を成す方向の第2のビームを形成する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
第3の車両が、前記基板に沿った第3の方向に存在し、
前記第2の車両及び前記第3の車両の一方が、前記第1の車両の前方に存在し、
前記第2の車両及び前記第3の車両の他方が、前記第1の車両の後方に存在し、
前記アレーアンテナは、
前記第3の車両に搭載される第3の無線通信装置と通信を行う場合、前記第1の角度及び前記第2の角度と異なる第3の角度を成す方向の第3のビームを形成する、
請求項14に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信装置またはレーダ装置において、広い通信エリアまたは広い検知エリアを実現するために、放射方向が異なる複数のビームを形成することによって指向性を制御するアンテナが検討されている。例えば、無線通信装置では、通信相手が存在する方向が異なる複数のシチュエーションに対応できるアンテナ装置が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、1個以上のアンテナ素子を有する基板を複数有し、複数の基板を立体的に組立てることによって、装置の水平方向および垂直方向へ指向性を制御できるアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたアンテナ装置は、複数の基板を立体的に組立てるため、構造が複雑になってしまう。
【0006】
本開示の非限定的な実施例は、様々な方向に指向性を制御できる簡易な構成のアンテナ装置の提供に資する。
【0007】
本開示の一実施例に係るアンテナ装置は、基板の第1面に配置される少なくとも1つのアンテナ素子を含み、前記基板の第1面に対して、第1の角度を含む複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成するアレーアンテナと、前記少なくとも1つのアンテナ素子の周囲の少なくとも一部に設けられ、前記第1の角度を成す方向の第1のビームを、前記基板に沿った方向に屈折させる側壁と、を備える。
【0008】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0009】
本開示の一実施例によれば、様々な方向に指向性を制御できる簡易な構成のアンテナ装置の提供に資する。
【0010】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両が無線通信を行うシチュエーションの第1の例を示す図
【
図2】車両が無線通信を行うシチュエーションの第2の例を示す図
【
図3A】本開示の一実施の形態に係るアンテナ装置の一例を示す側面図
【
図3B】本開示の一実施の形態に係るアンテナ装置の一例を示す平面図
【
図6】アンテナ素子を励振する励振移相の一例を示す表
【
図7】
図6に示した励振位相に基づく、アレーアンテナの指向性パターンの一例を示す図
【
図8】
図6に示した励振位相に基づく、アンテナ装置の指向性パターンの一例を示す図
【
図9】本開示の一実施の形態の変形例1に係るアンテナ装置の一例を示す側面図
【
図10】本開示の一実施の形態の変形例2に係るアンテナ装置の一例を示す平面図
【
図11】本開示の一実施の形態の変形例3に係るアンテナ装置の一例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施の形態に係るアンテナ装置は、例えば、車両に搭載される無線通信装置に適用されるアンテナ装置に関する。以下、アンテナ装置を有する無線通信装置を搭載した車両が、無線通信を行うシチュエーションを説明する。
【0013】
図1は、車両が無線通信を行うシチュエーションの第1の例を示す図である。
図1には、アンテナ装置を有する無線通信装置を搭載した車両11と、路側帯に設けられ、車両11の無線通信装置の通信相手である路側機12が示される。
【0014】
図1の例は、車両と路側帯に設けられる路側機との間で通信を行う路車間通信のシチュエーションである。路車間通信の場合、路側機12が車両11よりも上に設けられるため、例えば、車両11のアンテナ装置は、進行方向Xに対して、斜め上の方向V0において利得が高くなるように指向性を制御する。斜め上の方向V0は、例えば、進行方向Xに対して、30度~45度の方向である。
【0015】
また、
図1のシチュエーションにおいて、車両11が、進行方向Xへ走行し、路側機12の下を通過する場合、路側機12が車両11の天頂方向に位置する。そのため、車両11のアンテナ装置は、車両11の天頂方向V1において利得が高くなるように指向性を制御する。
【0016】
図2は、車両が無線通信を行うシチュエーションの第2の例を示す図である。
図2には、アンテナ装置を有する無線通信装置を搭載した車両21および車両22が示される。
【0017】
図2の例は、車両21と車両22との間で通信を行う車車間通信のシチュエーションである。車車間通信の場合、車両21および車両22のアンテナ装置は、進行方向に沿った方向において指向性を制御する。
【0018】
例えば、車両21の通信相手である車両22は、車両21よりも前方を走行している。そのため、車両21のアンテナ装置は、進行方向Xと同じ方向V2において利得が高くなるように指向性を制御する。また、車両22の通信相手である車両21は、車両22よりも後方を走行している。そのため、車両22のアンテナ装置は、進行方向Xと逆方向V3において利得が高くなるように指向性を制御する。
【0019】
図1および
図2を参照して説明したように、車両に搭載されるアンテナ装置は、車両の進行方向に対して斜め上方向、天頂方向、水平方向への指向性を制御する。本開示の一実施例では、このように、様々な方向に指向性を制御できるアンテナ装置の提供に資する。
【0020】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態は一例であり、本開示はこれらの実施形態により限定されるものではない。
【0021】
(一実施の形態)
図3Aは、本実施の形態に係るアンテナ装置30の一例を示す側面図である。
図3Bは、本実施の形態に係るアンテナ装置30の一例を示す平面図である。
【0022】
なお、
図3A及び
図3Bには、X軸、Y軸及びZ軸が示される。X軸は、後述するアンテナ素子311の配列方向を示し、Y軸は、アンテナ素子311が配列される面におけるX軸と垂直な方向を示す。また、Z軸は、X軸およびY軸と垂直な方向を示す。
図3Aは、アンテナ装置30のX-Z平面の側面図であり、
図3Bは、Z軸の正の方向から見たアンテナ装置30のX-Y平面の図である。
【0023】
また、
図3Aに示す線Z0は、4つのアンテナ素子311の配列方向の長さの中央からZ軸の正の方向に延びる補助線である。線Z0は、アンテナ装置30のアンテナ素子311が同位相で励振した場合に放射する電波が最大利得を示す方向に相当する。
【0024】
図3A及び
図3Bに示すアンテナ装置30は、アレーアンテナ31と、側壁32とを備える。
【0025】
アレーアンテナ31は、基板の絶縁層315の第1面(Z軸の正方向の面)に配置されるアンテナ素子311を含み、基板の平面に対して、複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成する。アレーアンテナ31が形成するビームの方向には、少なくとも予め設定された第1の角度θx(
図4参照)が含まれる。以下、第1の角度θxを成す方向に形成されるビームは、第1のビームと称されることがある。
【0026】
例えば、第1の角度θxを成す方向に形成するビームとは、第1の角度θxの方向に最大の利得を有する電波を放射することに相当してもよい。
【0027】
アレーアンテナ31は、例えば、4つのアンテナ素子311と、反射板312と、4つの移相器313と、制御部314と、を備える。
【0028】
4つのアンテナ素子311は、例えば、絶縁層315のZ軸の正方向の面に、X軸の方向に沿って配置される。4つのアンテナ素子311は、導体パターンにより形成されるパッチアンテナである。例えば、4つのアンテナ素子311は、誘電体で構成される銅張基板をエッチング加工することによって形成される。
【0029】
なお、4つのアンテナ素子311は、X軸の負の方向から順に、アンテナ素子#1~アンテナ素子#4と称することがある。また、4つのアンテナ素子311は、まとめて、アンテナ素子311と称することがある。
【0030】
反射板312は、例えば、絶縁層315のZ軸の負の方向の面に設けられる導体である。反射板312は、例えば、アンテナ素子311が放射する電波のうち、Z軸の負の方向に放射される電波をZ軸の正の方向に反射させる。
【0031】
4つの移相器313の各々は、4つのアンテナ素子311のうち対応する一のアンテナ素子311と電気的に接続され、アンテナ素子311の励振位相を制御する。
【0032】
制御部314は、アレーアンテナ31の指向性を制御する。例えば、制御部314は、4つの移相器313それぞれと接続され、4つの移相器313の励振位相の大きさを設定する。
【0033】
なお、上述したアレーアンテナ31の構成は、一例であり、本開示はこれに限定されない。例えば、アンテナ素子311は、パッチアンテナに限らず、スロット形状のアンテナ、ループ形状のアンテナであってもよい。アンテナ素子311は、上記の例とは異なる平面アンテナであってもよい。また、アンテナ素子311の数は、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0034】
また、
図3Aでは、4つの移相器313および制御部314は、図示の便宜上、アンテナ素子311よりもZ軸の負の方向に示される。例えば、4つの移相器313および制御部314は、アンテナ素子311と同一の絶縁層315の面に配置される図示しない無線部に含まれてもよい。この場合、無線部とアンテナ素子311との間は、例えば、マイクロストリップラインによって接続されてもよい。
【0035】
側壁32は、アレーアンテナ31の周囲の少なくとも一部に設けられる。例えば、
図3Aおよび
図3Bの例では、側壁32は、例えば、絶縁層315の面のうち絶縁層315のZ軸の正方向の面に、アンテナ素子311の配列方向(X軸方向)に沿って複数設けられる。この場合、例えば、
図3Bに示すように、側壁32は、Y軸方向に設けられなくてもよい。
【0036】
側壁32は、アレーアンテナ31が形成する第1の角度θxを成す方向の第1のビームを、アンテナ素子311が設けられる平面(X-Y平面)に沿った方向に屈折させる。
【0037】
例えば、側壁32の材料は誘電体である。側壁32に用いられる材料は、例えば、アクリル樹脂、四フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、又は、ABS樹脂である。
【0038】
側壁32の内部は、誘電体により充填されてもよいし、誘電体とは異なる材料により充填されてもよい。あるいは、側壁32の内部には、空洞が含まれていてもよい。
【0039】
側壁32は、側壁32aと側壁32bとを有する。側壁32aと側壁32bとは、線Z0に沿ったY-Z平面に対して、面対称に設けられる。
【0040】
側壁32aは、第1側面321aと第2側面322aとを有する。
【0041】
第1側面321aは、側壁32aの2つの側面のうち、アンテナ素子311に近い側面である。第1側面321aには、少なくとも第1のビームが入射する(例えば、
図4参照)。第1側面321aは、Z軸方向においてアンテナ素子311が設けられる平面から離れるほど、線Z0からX軸の正の方向に離れるテーパ形状を有する。
【0042】
第2側面322aは、側壁32aの2つの側面のうち、アンテナ素子311から遠い側面である。第2側面322aは、例えば、X軸に対して垂直である。第2側面322aは、第1の側面321aに入射した第1のビームが出射する面である(例えば、
図4参照)。第2側面322aから出射した第1のビームは、X軸に沿った方向に放射される。
【0043】
なお、側壁32aにおける、第1側面321aと第2側面322aとの間のX方向の厚みは、特に限定されない。
【0044】
側壁32bは、第1側面321bと第2側面322bを有する。
【0045】
第1側面321bは、側壁32bの2つの側面のうち、アンテナ素子311に近い側面である。第1側面321bには、少なくとも第1のビームが入射する。第1側面321bは、Z軸方向においてアンテナ素子311が設けられる平面から離れるほど、線Z0からX軸の負の方向に離れるテーパ形状を有する。
【0046】
第2側面322bは、側壁32bの2つの側面のうち、アレーアンテナ31から遠い側面である。第2側面322bは、例えば、X軸に対して垂直である。第2側面322bは、第1の側面321bに入射した第1のビームが出射する面である。第2側面322bから出射した第1のビームは、X軸に沿った方向に放射される。
【0047】
なお、側壁32bにおける、第1側面321bと第2側面322bとの間のX方向の厚みは、特に限定されない。
【0048】
次に、側壁32aの第1側面321aと、アレーアンテナ31のビーム方向との関係について
図4を参照して説明する。
【0049】
図4は、側壁32aの形状の第1の例を示す図である。なお、
図4において、
図3Aおよび
図3Bと同様の構成については同一の符番を付し説明を省略する。また、
図4では、図示の便宜上、
図3Aおよび
図3Bに示した構成の一部は省略されている。
【0050】
図4は、
図3Aと同様に、アンテナ装置30のX-Z平面の側面図である。
図4の例は、アレーアンテナ31が、屈折率n1を有する空間中に電波を放射する例である。この例では、アレーアンテナ31が放射した電波は、屈折率n2を有する誘電体によって充填された側壁32aの第1側面321aに入射する。そして、第1側面321aの境界において屈折した電波が、第2側面322aから出射する。
【0051】
矢印Bは、アレーアンテナ31が、チルト角θ1の方向に最大の利得を有する電波を放射した場合の、電波の進行する軌跡の一例を示す。なお、チルト角θ1の方向に最大の利得を有する電波は、
図4に示すX-Z平面において、X-Y平面を0°とした場合に、θx=(90°-θ1)の角度を成す。なお、0°の基準となるX-Y平面は、例えば、基板の第1面(4つのアンテナ素子311が設けられる絶縁層315の面)である。また、
図4に示すX-Z平面では、0°の基準は、X軸に相当してもよい。
【0052】
なお、以下では、説明の便宜上、線Z0を角度0度の基準に設定し、
図4において線Z0から時計回りの方向の角度を正の角度に設定する。
【0053】
図4に示す線T1は、X-Z平面における第1側面321aに垂直な補助線である。
【0054】
θ2は、X-Y平面を0°とした場合の、第1側面321aの傾斜角である。θ3は、矢印Bに示す電波の第1側面321aへの入射角であり、θ4は、屈折角である。なお、以下の説明において、側面の傾斜角は、X-Z平面において、X-Y平面を0°の基準に、側面がX-Y平面に対して成す角であってもよい。
【0055】
アンテナ装置30は、電波が屈折率n1の空気層から屈折率n2の誘電体層に入射した場合に発生する屈折を利用して、X軸の方向に沿った指向性を実現する。
【0056】
例えば、スネルの法則を用いると、屈折率n1、屈折率n2、入射角θ3および屈折角θ4の関係は、次式(1)によって示される。
【数1】
【0057】
そして、屈折した後の電波が、X軸の方向に沿って進行するという条件を満たす、屈折率n1、屈折率n2、チルト角θ1および第1側面321aの傾斜角θ2の関係は、式(1)に基づいて導出される。例えば、屈折率n1、屈折率n2、チルト角θ1および第1側面321aの傾斜角θ2の関係は、式(2)によって示される。
【数2】
【0058】
式(2)の関係を満たす場合、第1側面321aにおいて屈折した電波は、側壁32aの内部をX軸の方向に沿って進行し、第2側面322aにおいて出射する。第2側面322aがX軸の方向に対して垂直である場合、第2の側面322aでは電波の方向が変化せずに透過する。
【0059】
なお、屈折率n1及び屈折率n2は、材料のパラメータ(例えば、比誘電率)によって定まる。例えば、側壁32aが2~6の範囲の比誘電率を有する誘電体を用いて充填され、屈折率n1が空気の屈折率である場合、傾斜角θ2は、65度以下であることが好ましい。
【0060】
例えば、側壁32aが2~5の範囲の比誘電率を有する誘電体を用いて充填される場合、第1側面321aにおいて屈折せずに反射する電波を低減できるため、アレーアンテナ31から放射された電波が、効率よく第2側面322aから放射される。
【0061】
上述したように、本実施の形態に係るアンテナ装置30では、アレーアンテナ31が、チルト角θ1の方向に最大の利得を有する電波を放射した場合、放射した電波は、側壁32の第1の側面321aにおいて屈折し、X軸の方向に向きが変り、第2の側面322aから出射する。そして、第1の側面321aの傾斜角θ2は、屈折した後の電波がX軸の方向に沿って進行するという条件を満たすように、屈折率n1、屈折率n2およびチルト角θ1との関係によって規定される。
【0062】
なお、例えば、屈折率n1、屈折率n2、チルト角θ1および傾斜角θ2の関係には、式(2)に示した関係に対して微小なズレがあってもよい。例えば、式(2)における、チルト角θ1および/または傾斜角θ2に微小なズレがあった場合、アンテナ装置30から放射される電波の最大の利得を示す方向が、X軸に沿った方向に対して微小なズレを含む。ただし、アレーアンテナ31が放射する電波は、ビーム幅を有するため、X軸に沿った方向に対して微小なズレを含んでいても、良好な通信特性を実現できる。
【0063】
別言すれば、式(2)によって規定されるチルト角θ1と傾斜角θ2の関係に基づいて、側壁32aが設けられた場合、例えば、アレーアンテナ31は、チルト角θ1に対して所定の角度範囲内の方向に最大の利得を有する電波を放射してもよい。この場合、チルト角θ1に対して所定の角度範囲内の方向に最大の利得を有する電波は、第1側面321aにおいて屈折し、第2側面322aから、X軸に沿った方向に放射される。
【0064】
また、上述では、第2側面322aがX軸の方向に対して垂直である例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、第2側面322aがX軸の方向に対して垂直な面から、微小なズレがあった場合、アンテナ装置30から放射される電波の最大の利得を有する方向が、X軸に沿った方向に対して微小なズレを含む。ただし、アレーアンテナ31が放射する電波は、ビーム幅を有するため、X軸に沿った方向に対して微小なズレを含んでいても、良好な通信特性を実現できる。
【0065】
また、上述では、第1側面321aにおいて電波を屈折させ、電波の進行方向をX軸に沿った方向に変化させ、第2側面322aにおいて、電波の進行方向を変化させずに、電波が透過する例を示した。本開示は、これに限定されない。例えば、第2側面322aから出射する電波がX軸の方向に沿うように、第1側面321aと第2側面322aとの両方において、電波を屈折させてもよい。この場合、第1側面321aの傾斜角と、第2側面322aの傾斜角とは、例えば、空気層の屈折率n1と誘電体層n2とチルト角θ1とに基づいて規定されてもよい。
【0066】
なお、上述では、側壁32aを一例に挙げて説明したが、側壁32aと側壁32bとが、線Z0に沿ったY-Z平面に対して、面対称に設けられる場合、第1側面321bおよび第2側面322bは、それぞれ、第1側面321aおよび第2側面322aと同様に、面対称の関係の基で規定されてもよい。
【0067】
例えば、第1側面321bおよび第2側面322bが、面対称の関係の基で規定された場合、アレーアンテナ31が放射した、チルト角が-θ1の方向に最大の利得を有する電波は、第1側面321bにおいて屈折し、X軸の負の方向に向きが変わり、第2の側面322bから出射する。この場合、第1側面321bの傾斜角は、θ2である。
【0068】
なお、側壁32a及び側壁32bは、面対称に設けられる例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、側壁32a及び側壁32bは、互いに異なる誘電体によって構成されてもよい。また、例えば、側壁32aの第1側面321aの傾斜角と側壁32bの第1側面321bの傾斜角とは、同一でなくてもよい。また、例えば、側壁32aが
図4に示した第1側面321aと第2側面322aとを有し、側壁32bが、上述した例のように、第1側面321bと第2側面322bの両方において電波を屈折させる構成であってもよい。
【0069】
また、例えば、アンテナ装置30は、側壁32aと側壁32bのいずれか一方を備えていればよい。例えば、アンテナ装置30がX軸の負の方向へ電波を放射しない場合、アンテナ装置30は、側壁32bを備えていなくてもよい。
【0070】
次に、側壁32aの位置について説明する。
【0071】
図5Aは、側壁32aの形状の第2の例を示す図である。
図5Bは、側壁32aの形状の第3の例を示す図である。なお、
図5Aおよび
図5Bにおいて、
図3Aおよび
図3Bと同様の構成については同一の符番を付し説明を省略する。また、
図5Aおよび
図5Bでは、図示の便宜上、
図3Aおよび
図3Bに示した構成の一部は省略されている。
【0072】
図5Aおよび
図5Bは、
図4と同様に、アレーアンテナ31が、屈折率n1を有する空間中に電波を放射する例である。また、
図5Aおよび
図5Bにおける側壁32aは、屈折率n2の誘電体によって充填されている。なお、
図5Aと
図5Bとは、互いの側壁32aの高さが異なる例を示している。
【0073】
図5Aおよび
図5Bにおけるθ5は、アレーアンテナ31の最大チルト角である。なお、最大チルト角とは、アレーアンテナ31が指向性を制御できるチルト角の最大値である。例えば、最大チルト角は、アレーアンテナ31に含まれるアンテナ素子311によって定まる。
【0074】
図5Aおよび
図5Bにおけるθ6は、最大チルト角θ5、屈折率n1、屈折率n2および式(2)に基づいて決められた第1側面321aの傾斜角である。
【0075】
図5Aにおける矢印B1は、アレーアンテナ31が、最大チルト角θ5の方向に最大の利得を有する電波を放射した場合の、電波の進行する向きを示す。
【0076】
図5Aの場合、側壁32aは、最大チルト角θ5の方向に最大の利得を有する電波が入射できる高さを有する。この場合、矢印B1に示すように、第1側面321aに入射した電波は、第1側面321aにおいてX軸に沿った方向へ屈折し、第2の側面322aから出射する。
【0077】
図5Bにおける矢印B2は、アレーアンテナ31が、最大チルト角θ5の方向に最大の利得を有する電波を放射した場合の、電波の進行する向きを示す。
【0078】
図5Bの場合、側壁32aは、最大チルト角θ5の方向に最大の利得を有する電波が入射できる高さよりも低い高さを有する。この場合、矢印B2に示すように、電波が第1側面321aに入射しないため、アンテナ装置30は、X軸の方向へ電波を放射できない。
【0079】
図5Aおよび
図5Bに示すように、側壁32aの第1側面321aは、最大チルト角θ5に基づいて定まる位置に設けられることが好ましい。
【0080】
例えば、アレーアンテナ31の最大チルト角θ5が50度であり、ビーム半値角が約20度の場合、X-Z平面において、線Z0を角度0度の基準とした、0度から60度の範囲に、側壁32aの第1側面321aが設けられることが好ましい。側壁32bについても同様に、-60度から0度の範囲に、側壁32bの第1側面321bが設けられることが好ましい。
【0081】
なお、最大チルト角θ5が50度であり、ビーム半値角が約20度の場合とは、最大チルト角50度に対して±10度の範囲、すなわち、40度から60度の範囲が、良好な特性を有することを指す。そのため、60度までの範囲に、側壁32aの第1側面321aが設けられることが好ましい。
【0082】
次に、アンテナ装置30の特性の一例について説明する。
【0083】
図6は、アンテナ素子311を励振する励振移相の一例を示す表である。
図6には、Case1からCase4の4つのケースに対して、アンテナ素子#1~アンテナ素子#4を励振する励振移相の大きさが示される。
【0084】
例えば、Case1は、アンテナ素子#1~アンテナ素子#4を同位相で励振するケースである。Case2は、隣り合うアンテナ素子の間で60度の位相差を設けて励振するケースである。Case3は、隣り合うアンテナ素子の間において150度の位相差を設けて励振するケースである。Case4は、隣り合うアンテナ素子の間において-150度の位相差を設けて励振するケースである。
【0085】
図7は、
図6に示した励振位相に基づく、アレーアンテナ31の指向性パターンの一例を示す図である。
図7に示すアレーアンテナ31の指向性パターンは、アンテナ装置30において、側壁32を除いた状態でのX-Z平面の指向性パターンである。
【0086】
図7には、
図6に示した4つのケースそれぞれに対する指向性パターンが示される。なお、
図7に示す指向性パターンにおける角度は、
図3Aに示す線Z0との成す角度である。
【0087】
例えば、Case1の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、0度の方向、Z軸の正の方向である。また、Case2の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、約-30度の方向である。また、また、Case3の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、約-50度の方向である。また、Case4の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、約50度の方向である。
【0088】
図8は、
図6に示した励振位相に基づく、アンテナ装置30の指向性パターンの一例を示す図である。
図8に示すアンテナ装置30の指向性パターンは、X-Z平面の指向性パターンである。
【0089】
なお、
図8に示す指向性パターンは、側壁32aの第1側面321aの傾斜角θ2が60度であり、側壁32aに充填される誘電体(または、側壁32aを構成する誘電体)の屈折率が1.82である場合の指向性パターンの例である。なお、側壁32bは、側壁32aと、線Z0に沿ったY-Z平面に対して面対称に設けられる。
【0090】
例えば、Case1の指向性パターンでは、
図7の場合と同様に、最大利得を有する方向は、0度の方向、Z軸の正の方向である。また、Case2の指向性パターンでは、
図7の場合と同様に、最大利得を有する方向は、約-30度の方向である。
【0091】
Case3の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、約-90度の方向、すなわち、X軸の負の方向である。また、Case4の指向性パターンでは、最大利得を有する方向は、約90度の方向、すなわち、X軸の正の方向である。
【0092】
図7と
図8のCase3を比較して示すように、アレーアンテナ31が放射する、-50度の方向に最大利得を有する電波は、側壁32bにおいてX軸の負の方向に屈折し、側壁32から放射されている。
【0093】
図7と
図8のCase4を比較して示すように、アレーアンテナ31が放射する、50度の方向に最大利得を有する電波は、側壁32aにおいてX軸の正の方向に屈折し、側壁32から放射されている。
【0094】
図8に示すように、アンテナ装置30は、アンテナ素子311の配列方向に対して、垂直方向、斜め上方向および水平方向が最大利得を示す放射パターンのビームを形成することができる。
【0095】
以上説明したように、本実施の形態に係るアンテナ装置30は、基板の絶縁層315の第1面(Z軸の正方向の面)に配置される少なくとも1つのアンテナ素子311を含み、基板の第1面に対して、複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成するアレーアンテナ31と、少なくとも1つのアンテナ素子311の周囲の少なくとも一部に設けられ、アレーアンテナ31が形成するビームのうち、チルト角θ1(基板の平面に対してθx=90°-θ1)を成す方向の第1のビームを、基板の平面に沿った方向に屈折させる側壁32を備える。
【0096】
この構成により、側壁32の側面における屈折を用いて水平方向へのビームを形成できるため、様々な方向に指向性の制御を、簡易な構成で実現できる。
【0097】
例えば、アンテナ装置30は、アンテナ素子311が配置された平面に垂直な方向、斜め方向(例えば、垂直な方向に対して30度~45度の角度)および平面に水平な方向に指向性を制御できる。
【0098】
例えば、アンテナ装置30が、アンテナ装置30のX-Y平面が路面に沿うように、車両に搭載された場合、路車間通信のシチュエーション(
図1参照)において、アンテナ装置30は、垂直な方向、斜め方向に指向性を制御でき、車車間通信のシチュエーション(
図2参照)において、水平な方向に指向性を制御できる。
【0099】
また、アンテナ装置30が有するアレーアンテナ31は、アンテナ素子311の裏側に反射板312を備える。この構成により、アンテナ装置30は、電磁ノイズの影響を抑制できる。
【0100】
アンテナ装置30が車両のダッシュボードに搭載された場合、ダッシュボードに対して地面に近い位置にECU(Engine Control Unit)が搭載されているため、ECUからの電磁ノイズがアンテナ装置30に届く可能性がある。アンテナ装置30では、アンテナ素子311の裏側に反射板312を備えるため、電磁ノイズがアンテナ素子311に到達することを抑制できる。
【0101】
また、例えば、アンテナ装置30が車両のルーフ部に搭載された場合、ルーフ部の金属板が、アンテナ素子311の周囲に位置する。このような場合に、反射板312がアンテナ素子311と金属板との間に位置するようにアンテナ装置30を搭載することによって、アンテナ素子311から裏側へ放射される電波が、反射板312によって反射されるため、金属板へ到達しない。そのため、アンテナ素子311から裏側へ放射される電波が、金属板へ到達し、アンテナ装置30の指向性にズレが生じることを避けることができる。
【0102】
なお、本実施の形態におけるアンテナ装置30の動作周波数帯は、例えば、電波の直進性の強い周波数帯であり、例示的に、準ミリ波帯、ミリ波帯、または、テラヘルツ帯である。アンテナ装置30が、電波の直進性の強い周波数帯において動作する場合、アレーアンテナ31から放射される電波が側壁32の端部において回り込むことによる放射効率の低下が少ないため、効率よく電波を放射できる。
【0103】
次に、側壁32の第2側面322a及び第2側面322bの形状の変形例を説明する。
【0104】
(変形例1)
図9は、本実施の形態の変形例1に係るアンテナ装置90の一例を示す側面図である。なお、
図9において、
図3Aと同様の構成については同一の符番を付し説明を省略する。
【0105】
アンテナ装置90は、アレーアンテナ31と、側壁92を備える。
【0106】
側壁92は、アレーアンテナ31が形成する第1の角度θxを成す方向の第1のビームを、アンテナ素子311が設けられる平面(X-Y平面)に沿った方向に屈折させる。
【0107】
側壁92は、側壁92aと側壁92bとを有する。側壁92aは、アンテナ装置30の側壁32における第2側面322aが、第2側面922aに置き換わった構成を有する。また、側壁92bは、アンテナ装置30の側壁32bにおける第2側面322bが、第2側面922bに置き換わった構成を有する。
【0108】
第2側面922aおよび第2側面922bは、それぞれ、曲面が形成されたレンズ形状を有する。第2側面922aおよび第2側面922bがレンズ形状を有することによって、アレーアンテナ31から放射される電波を集約することができるため、効率良く第2側面922aおよび第2側面922bから放射できる。
【0109】
なお、上述したアンテナ装置30およびアンテナ装置90では、アンテナ素子311がX軸の方向に一次元に配列される例を示した。本開示はこれに限定されない。以下では、アンテナ素子が2次元に配列される例を示す。
【0110】
(変形例2)
図10は、本実施の形態の変形例2に係るアンテナ装置100の一例を示す平面図である。
図10に示すアンテナ装置100は、アレーアンテナ101と側壁102とを有する。
【0111】
アレーアンテナ101は、アレーアンテナ31におけるアンテナ素子311が、アンテナ素子1011に置き換わった構成を有する。
【0112】
アレーアンテナ101は、基板の絶縁層315の平面に配置されるアンテナ素子1011を含み、基板の平面に対して、複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成する。アレーアンテナ101が形成するビームの方向には、少なくとも第1の角度θxが含まれる。
【0113】
例えば、
図10に示すように、4つのアンテナ素子1011は、X軸の方向及びY軸の方向の2方向に配列される。
【0114】
アンテナ素子1011が2次元に配列されることにより、制御部314(
図3A参照)はアレーアンテナ101のX-Z平面の指向性とY―Z平面の指向性とを制御する。
【0115】
側壁102は、平面視においてアレーアンテナ101の周囲を取り囲む円環の形状を有する。側壁102は、アレーアンテナ101が形成する第1の角度θxを成す方向の第1のビームを、アンテナ素子1011が設けられる平面(X-Y平面)に沿った方向に屈折させる形状を有する。
【0116】
この構成により、側壁102の側面における屈折を用いて水平方向へのビームを形成できるため、様々な方向に指向性の制御を、簡易な構成で実現できる。さらに、アレーアンテナ101が、X-Z平面の指向性とY―Z平面の指向性とを制御できるため、X軸の方向に沿った水平方向に加えて、例えば、Y軸の方向に沿った水平方向へのビームを形成できる。
【0117】
(変形例3)
図11は、本実施の形態の変形例3に係るアンテナ装置110の一例を示す平面図である。なお、
図11において
図10と同様の構成については同一の符番を付し説明を省略する。
【0118】
図11に示すアンテナ装置110は、アレーアンテナ101と側壁112とを有する。
【0119】
側壁112は、平面視においてアレーアンテナ101の周囲を取り囲む矩形の形状を有する。側壁112は、アレーアンテナ101が形成する第1の角度θ1を成す方向の第1のビームを、アンテナ素子1011が設けられる平面(X-Y平面)に沿った方向に屈折させる形状を有する。
【0120】
この構成により、側壁112の側面における屈折を用いて水平方向へのビームを形成できるため、様々な方向に指向性の制御を、簡易な構成で実現できる。さらに、アレーアンテナ101が、X-Z平面の指向性とY―Z平面の指向性とを制御できるため、X軸の方向に沿った水平方向に加えて、例えば、Y軸の方向に沿った水平方向へのビームを形成できる。
【0121】
なお、
図10では、側壁102が平面視においてアレーアンテナ101の周囲を取り囲む円環の形状を有する例を示し、
図11では、側壁112が平面視においてアレーアンテナ101の周囲を取り囲む矩形の形状を有する例を示した。本開示はこれに限定されない。例えば、側壁は、矩形以外の多角形の形状であってもよい。また、
図10および
図11では、アレーアンテナの周囲に対称性を有する形状の側壁の例を示した。本開示はこれに限定されない。側壁の形状は、非対称であってもよい。
【0122】
なお、上述したアンテナ装置では、側壁の側面における屈折を用いて水平方向へのビームを形成する例を示した。本開示は水平方向に限定されない。例えば、水平方向よりも負の方向に電波を放射してもよい。例えば、側壁の側面において屈折する方向は、アレーアンテナが放射する電波の放射方向、側壁の側面の傾斜角、および、側面を挟む2つの層(例えば、空気層と誘電体層)の屈折率に基づいて設定できるため、所望の方向へ放射するために側面の傾斜角を設定することにより、水平方向に限らず、様々な方向への放射を実現できる。
【0123】
なお、上記実施の形態の説明に用いた「アレーアンテナ」という表記は、「アレーアンテナ部」、アレーアンテナ回路、アレーアンテナデバイス、アレーアンテナユニット、又は、アレーアンテナモジュールといった他の表記に置換されてもよい。
【0124】
また、上記実施の形態の説明に用いた「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0125】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。
【0126】
上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0127】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0128】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0129】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0130】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0131】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0132】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0133】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0134】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0135】
本開示の一実施例におけるアンテナ装置は、基板の第1面に配置される少なくとも1つのアンテナ素子を含み、前記基板の第1面に対して、第1の角度を含む複数の角度を成す方向にそれぞれビームを形成するアレーアンテナと、前記少なくとも1つのアンテナ素子の周囲の少なくとも一部に設けられ、前記第1の角度を成す方向の第1のビームを、前記基板に沿った方向に屈折させる側壁と、を備える。
【0136】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記アレーアンテナは、前記少なくとも1つのアンテナ素子の励振位相を制御する移相器と、前記移相器の位相を制御する制御回路と、を備える。
【0137】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記アレーアンテナは、前記基板の第1面と反対の面に反射板を有する。
【0138】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記少なくとも1つのアンテナ素子と前記反射板との間には、絶縁層が設けられる。
【0139】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記側壁は、前記第1のビームが入射する第1の側面と、前記第1のビームが屈折して出射する第2の側面と、を有し、前記基板の第1面に対する前記第1の側面の傾斜角度および前記基板の第1面に対する前記第2の側面の傾斜角度は、前記第1の角度に基づいて設定される。
【0140】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記基板の第1面に対する前記第1の側面の傾斜角度は、65°以下である。
【0141】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記第1の側面は、前記基板から距離が離れるほど、前記基板の第1面と垂直な軸から離れるテーパ形状を有する。
【0142】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記第2の側面は、前記基板の第1面に対して垂直である。
【0143】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記第2の側面は、レンズ形状である。
【0144】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記少なくとも1つのアンテナ素子は、複数のアンテナ素子であり、前記複数のアンテナ素子は、前記基板において一次元の配列方向に配置され、前記側壁は、前記配列方向の延長線上に設けられる。
【0145】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記少なくとも1つのアンテナ素子は、複数のアンテナ素子であり、前記複数のアンテナ素子は、前記基板において2次元の方向に配置され、前記側壁は、前記複数のアンテナ素子を取り囲む位置に設けられる。
【0146】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記少なくとも1つのアンテナ素子の動作周波数は、準ミリ波帯、ミリ波帯、および、テラヘルツ帯の少なくとも1つに含まれる。
【0147】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記側壁は、誘電体で充填されている。
【0148】
本開示の一実施例のアンテナ装置において、前記側壁は、少なくとも、前記基板の第1面に対して30°の角度を成す方向のビームが入射する高さを有する。
【0149】
2018年4月12日出願の特願2018-076907の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本開示の一実施例は、無線通信装置に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0151】
11、21、22 車両
12 路側機
30、90、100、110 アンテナ装置
31、101 アレーアンテナ
32、32a、32b、92、92a、92b、102、112 側壁
311、1011 アンテナ素子
312 反射板
313 移相器
314 制御部
315 絶縁層
321a、321b 第1側面
322a、322b、922a、922b 第2側面