(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】モータ装置、コントローラ、モータシステム、ファンユニット、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20230519BHJP
【FI】
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2020528801
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2019024858
(87)【国際公開番号】W WO2020008924
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2018128880
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 信介
(72)【発明者】
【氏名】横内 保行
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123188(JP,A)
【文献】特開2018-70083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
第1期間にてコントローラから供給される電力を受け付け、前記第1期間の後の第2期間にて少なくとも前記コントローラから送信される通信信号を受信する入力部と、
前記入力部が受信した前記通信信号に基づいて前記モータ用のデータを更新する処理部と、
前記入力部に入力された前記電力により前記処理部の駆動用の電気エネルギを蓄積する蓄電部と、を備える、
モータ装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記コントローラに電気的に接続される一対の電線を介して前記電力を受け付けており、
前記入力部は、前記一対の電線を介して前記通信信号を受信する、
請求項1記載のモータ装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記入力部に入力される電圧の波形に応じて、前記コントローラが接続されているか否かを判別する、
請求項1又は2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記入力部へ前記電力を供給する供給期間と、前記入力部へ前記通信信号を送信する送信期間とを交互に繰り返す、
請求項1~3のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記送信期間は、前記蓄電部の出力電圧が前記処理部の駆動に必要な電圧を下回らない期間である、
請求項4記載のモータ装置。
【請求項6】
前記処理部と前記コントローラとの通信方式は、調歩同期方式のシリアル通信である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項7】
前記入力部は、
前記入力部に入力される電圧を所定の電圧に変換して前記蓄電部に供給する電源回路と、
前記入力部に入力される前記通信信号としての電圧信号を受信して前記処理部へ出力する受信回路と、を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項8】
前記モータ用のデータは、前記モータの動作用データ及び前記モータの制御に用いられるプログラムのヴァージョンアップ用のデータの少なくとも一方を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモータ装置に電気的に接続され、前記モータ装置に前記電力の供給及び前記通信信号の送信を行う、
コントローラ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモータ装置と、
前記モータ装置に電気的に接続され、前記モータ装置に前記電力の供給及び前記通信信号の送信を行うコントローラと、を備える、
モータシステム。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載のモータ装置の前記モータに取り付けられる羽根を有し、前記モータの発生する力を受けて前記羽根を回転させる、
ファンユニット。
【請求項12】
コントローラと、モータを有するモータ装置との間の通信方法であって、
第1期間にて前記コントローラから供給される電力を受け付け、受け付けた前記電力により前記モータ装置の有する処理部の駆動用の電気エネルギを蓄電部に蓄積し、
前記第1期間の後の第2期間にて少なくとも前記コントローラから送信される通信信号を受信し、受信した前記通信信号に基づいて、前記処理部の有する前記モータ用のデータを更新する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にモータ装置、コントローラ、モータシステム、ファンユニット、及び通信方法に関する。より詳細には、本開示は、通信機能を有するモータ装置、コントローラ、モータシステム、ファンユニット、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの回転方向、速度等の設定に関してプログラミング可能なモータが記載されている。特許文献1に記載のモータは、コントローラから印加された交流電圧の周波数を感知するセンサを有している。このモータは、印加された交流電圧の周波数が、通常時の交流電圧の周波数の範囲外であればプログラミングモードに切り替わる。そして、このモータは、印加された交流電圧の周波数の変化をプログラミングデータとして検出する。
【0003】
特許文献1に記載のモータ(モータ装置)では、制御プロセッサ(処理部)に動作するために十分な電力が供給されていない場合、コントローラから印加された交流電圧の周波数をセンサにて検知できない可能性がある、という問題があった。このため、特許文献1に記載のモータ装置では、プログラミングモードに切り替わることができず、プログラミングデータ(通信信号)の受信に失敗する可能性がある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/0234630号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示は、コントローラから送信される通信信号を受信しやすいモータ装置、コントローラ、モータシステム、ファンユニット、及び通信方法を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係るモータ装置は、モータと、入力部と、処理部と、蓄電部と、を備える。前記入力部は、第1期間にてコントローラから供給される電力を受け付け、前記第1期間の後の第2期間にて少なくとも前記コントローラから送信される通信信号を受信する。前記処理部は、前記入力部が受信した前記通信信号に基づいて前記モータ用のデータを更新する。前記蓄電部は、前記入力部に入力された前記電力により前記処理部の駆動用の電気エネルギを蓄積する。
【0007】
本開示の一態様に係るコントローラは、上記のモータ装置に電気的に接続され、前記モータ装置に前記電力の供給及び前記通信信号の送信を行う。
【0008】
本開示の一態様に係るモータシステムは、上記のモータ装置と、コントローラと、を備える。前記コントローラは、前記モータ装置に電気的に接続され、前記モータ装置に前記電力の供給及び前記通信信号の送信を行う。
【0009】
本開示の一態様に係るファンユニットは、上記のモータ装置の前記モータに取り付けられる羽根を有し、前記モータの発生する力を受けて前記羽根を回転させる。
【0010】
本開示の一態様に係る通信方法は、コントローラと、モータを有するモータ装置との間の通信方法である。この通信方法では、第1期間にて前記コントローラから供給される電力を受け付け、受け付けた前記電力により前記モータ装置の有する処理部の駆動用の電気エネルギを蓄電部に蓄積する。また、この通信方法では、前記第1期間の後の第2期間にて少なくとも前記コントローラから送信される通信信号を受信し、受信した前記通信信号に基づいて、前記処理部の有する前記モータ用のデータを更新する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るモータ装置及びコントローラを備えたモータシステムの概要を示す回路図である。
【
図2】
図2は、電源が接続された同上のモータ装置の概要を示す回路図である。
【
図3】
図3は、同上のモータ装置を備えるファンユニットの使用例の概要を示す図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、それぞれ同上のコントローラの出力する電圧の波形図、同上のモータ装置の蓄電部に印加される電圧の波形図、及び同上のモータ装置の処理部に入力される電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)構成
以下、本開示の一実施形態に係るモータ装置1、コントローラ10、及びモータシステム100の構成について説明する。モータシステム100は、
図1に示すように、モータ装置1と、コントローラ10と、を備えている。モータ装置1は、モータ4と、モータ4を駆動するための回路等と、を有している。コントローラ10は、モータ装置1に電気的に接続可能に構成されており、モータ装置1に電力の供給及び通信信号S1の送信を行う。通信信号S1は、モータ装置1の設定等を変更するためのデータ又はコマンド(言い換えれば、モータ4用のデータ)を含み得る。
【0013】
本実施形態では、モータ装置1に電源AC1(
図2参照)が接続される場合と、モータ装置1にコントローラ10が接続される場合との2つの場合が生じ得る。そして、モータシステム100は、モータ装置1にコントローラ10が接続される場合に構成される。電源AC1は、交流電源であり、例えば商用電源である。
【0014】
モータ装置1は、
図1及び
図2に示すように、一対の入力端子1A,1Bと、整流回路2と、インバータ回路3と、モータ4と、処理部5と、駆動部6と、受信回路7と、電源回路8と、コンデンサC1と、を備えている。一対の入力端子1A,1Bには、一対の電線91,92を介してコントローラ10又は電源AC1が電気的に接続される。なお、一対の入力端子1A,1Bの「端子」は、電線を接続するための部品(端子)でなくてもよく、例えば、電子部品のリード、又は回路基板に含まれる導体の一部であってもよい。
【0015】
本実施形態では、整流回路2、受信回路7、電源回路8、及びコンデンサC1は、いずれも入力部20の一部を構成している。入力部20は、モータ装置1にコントローラ10が接続されている場合、第1期間T1(後述する)にてコントローラ10から供給される電力を受け付ける。そして、入力部20は、第1期間T1の後の第2期間T2(後述する)にてコントローラ10から送信される通信信号S1を受信する。
【0016】
ここで、本実施形態では、モータ装置1は、一対の電線91,92を介してコントローラ10に電気的に接続されている。したがって、入力部20は、コントローラ10に電気的に接続される一対の電線91,92を介して電力を受け付けている。また、入力部20は、一対の電線91,92を介して通信信号S1を受信している。つまり、コントローラ10からモータ装置1への電力の供給経路と、コントローラ10からモータ装置1への通信経路とは、同じである。
【0017】
整流回路2は、一対の入力端子1A,1Bに印加される電圧(以下、「入力電圧」ともいう)を整流する回路である。本実施形態では、整流回路2は、ダイオードブリッジで構成されている。したがって、本実施形態では、整流回路2は、入力電圧を全波整流する。このため、入力電圧が交流電圧の場合、整流回路2は、交流電圧を全波整流することで脈流電圧を出力する。一方、入力電圧が直流電圧の場合、整流回路2は、入力電圧を全波整流することなく出力する(つまり、直流電圧を出力する)。
【0018】
整流回路2の一対の出力端、及びインバータ回路3の一対の入力端には、コンデンサC1が電気的に接続されている。コンデンサC1は、平滑コンデンサであって、整流回路2の出力電圧(脈流電圧)を平滑する。したがって、インバータ回路3の一対の入力端には、コンデンサC1の両端電圧(直流電圧)が印加される。
【0019】
インバータ回路3は、いわゆる三相インバータであって、6つのスイッチング素子を有している。本実施形態では、6つのスイッチング素子は、いずれも絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。6つのスイッチング素子のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ転流用の6つのダイオードが電気的に接続されている。6つのスイッチング素子は、駆動部6により駆動される。駆動部6は、処理部5に制御されることにより、6つのスイッチング素子の各々のゲートに駆動信号を出力する。6つのスイッチング素子は、駆動部6から与えられる駆動信号により、オン/オフを切り替える。
【0020】
インバータ回路3は、駆動部6を介して処理部5により制御される。本実施形態では、インバータ回路3は、処理部5が通常モード(後述する)で動作する場合、入力される直流電圧を交流電圧に変換し、変換した交流電圧をモータ4の巻線41,42,43に印加することにより、巻線41,42,43に交流電流を供給する。
【0021】
モータ4は、同期電動機であって、いわゆるブラシレスDCモータ(brushless direct current motor)である。モータ4は、Y結線(スター結線)により接続された3つの巻線41,42,43(第1巻線41、第2巻線42、第3巻線43)を有している。モータ4は、互いに位相が異なる複数の相(U相、V相、及びW相)にそれぞれ電流(相電流)が供給されて駆動するように構成されている。本実施形態では、第1巻線41には、U相の相電流が流れる。第2巻線42には、V相の相電流が流れる。第3巻線43には、W相の相電流が流れる。
【0022】
処理部5は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)で構成されている。つまり、処理部5は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが処理部5として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。処理部5の動作用電源は、電源回路8にて電源AC1又はコントローラ10から供給される電力を所定の電力に変換することで、生成される。
【0023】
処理部5は、動作モードとして、モータ4を駆動する通常モードと、コントローラ10との間で通信を行う通信モードと、を有している。通常モードは、モータ装置1に電源AC1が接続されている場合の動作モードである。通信モードは、モータ装置1にコントローラ10が接続されている場合の動作モードである。
【0024】
動作モードが通常モードである場合、処理部5は、メモリに記憶されている動作用データを読み出し、読み出した動作用データを用いて駆動部6を制御することにより、インバータ回路3の6つのスイッチング素子を制御する。これにより、処理部5は、動作用データに従ってモータ4を制御する。動作用データは、例えばモータ4の回転の向き、回転速度、又は加速度などのモータ4の動作に関連する種々のパラメータを含み得る。
【0025】
動作モードが通信モードである場合、処理部5は、コントローラ10から送信される通信信号S1を受信し、受信した通信信号S1に含まれるデータ又はコマンドに応じて、メモリに記憶されている動作用データを更新する。言い換えれば、処理部5は、入力部20が受信した通信信号S1に基づいて、モータ4の動作用データを更新する。つまり、本実施形態では、モータ装置1は、コントローラ10を用いることでモータ4の動作用データを書き換えることが可能である。モータ装置1による通信信号S1の受信方法については、後述する「(2)動作」にて詳細に説明する。
【0026】
また、通信モードでは、処理部5は、インバータ回路3を制御してモータ4の巻線41,42,43に電流を流すことにより、モータ4に電気的に接続されたコントローラ10へ電流信号S2を送信することも可能である。本実施形態では、処理部5は、コントローラ10から送信される通信信号S1に対する返信として、電流信号S2を送信する。つまり、本実施形態では、処理部5は、コントローラ10から通信信号S1が送信されるのを待って、電流信号S2を送信する。
【0027】
受信回路7は、降圧回路であって、一対の入力端子1A,1Bに入力される通信信号S1を受信して処理部5へ出力する。本実施形態では、通信信号S1は、後述するように電圧信号である。したがって、受信回路7は、入力部20に入力される通信信号S1としての電圧信号を受信して処理部5へ出力する。受信回路7は、ダイオードD1と、4つの抵抗R1~R4と、スイッチング素子Q0と、を有している。ダイオードD1のアノードは、一対の入力端子1A,1Bのうちの高電位側の入力端子1Aに電気的に接続されている。ダイオードD1のカソードと基準電位(ここでは、グランド)との間には、3つの抵抗R1~R3が直列に電気的に接続されている。3つの抵抗R1~R3は、一対の入力端子1A,1B間に印加される電圧を分圧する分圧回路を構成する。スイッチング素子Q0は、例えばNPN型のバイポーラトランジスタである。スイッチング素子Q0のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。スイッチング素子Q0のベースは、抵抗R2,R3の接続点に電気的に接続されている。スイッチング素子Q0のコレクタは、プルアップ抵抗である抵抗R4を介して第2電源端子P2(後述する)に電気的に接続されている。また、スイッチング素子Q0のコレクタは、処理部5の信号用の入力端子に電気的に接続されている。
【0028】
スイッチング素子Q0は、一対の入力端子1A,1B間に印加される電圧の大きさが所定値を上回るとオンに切り替わり、所定値以下になるとオフに切り替わる。つまり、スイッチング素子Q0は、電圧信号(通信信号S1)に応じてオン/オフを切り替える。そして、スイッチング素子Q0がオンの場合、処理部5には基準電位に相当する電圧が入力され、スイッチング素子Q0がオフの場合、処理部5には第2電源端子P2の端子電圧に相当する電圧が入力される。
【0029】
つまり、一対の入力端子1A,1B間に直流電圧が印加されている間、処理部5には、零電圧(基準電位)が印加され続ける。また、一対の入力端子1A,1B間に電圧信号(通信信号S1)が入力されている場合、処理部5には、通信信号S1が入力される。つまり、この場合、処理部5には、スイッチング素子Q0のオン/オフに応じて、ハイレベル(第2電源端子P2の端子電圧)とローレベル(基準電位)との2値をとり得る2値信号(ディジタル信号)が、通信信号S1として入力される。
【0030】
電源回路8は、コンデンサC1の両端電圧を所定の電圧に変換して、第1電源端子P1及び第2電源端子P2に供給する。第1電源端子P1は、駆動部6に電気的に接続されて、駆動部6に駆動用の電気エネルギを供給するための端子である。第2電源端子P2は、処理部5に電気的に接続されて、処理部5に駆動用の電気エネルギを供給するための端子である。電源回路8は、2つのDC/DCコンバータ81,82と、2つのコンデンサC2,C3と、を有している。
【0031】
DC/DCコンバータ81は、コンデンサC1の両端電圧を第1直流電圧に降圧して出力する。第1直流電圧は、例えば十数〔V〕である。コンデンサC2は、DC/DCコンバータ81の出力端に電気的に接続され、かつ、第1電源端子P1と基準電位との間に電気的に接続されている。コンデンサC2は、第1直流電圧が印加されることで電気エネルギを蓄積し、蓄積した電気エネルギを第1電源端子P1に供給する。つまり、コンデンサC2は、駆動部6の駆動用の電気エネルギを蓄積する。
【0032】
DC/DCコンバータ82は、第1直流電圧を第2直流電圧に降圧して出力する。第2直流電圧は、例えば数〔V〕である。コンデンサC3は、DC/DCコンバータ82の出力端に電気的に接続され、かつ、第2電源端子P2と基準電位との間に電気的に接続されている。コンデンサC3は、第2直流電圧が印加されることで電気エネルギを蓄積し、蓄積した電気エネルギを第2電源端子P2に供給する。つまり、コンデンサC3は、処理部5の駆動用の電気エネルギを蓄積する。言い換えれば、コンデンサC3は、入力部20に入力された電力により処理部5の駆動用の電気エネルギを蓄積する蓄電部21に相当する。したがって、電源回路8は、入力部20に入力される電圧を所定の電圧に変換して蓄電部21に供給している。
【0033】
コントローラ10は、
図1に示すように、直流電源101と、処理部103と、第1駆動部104と、第2駆動部105と、反転素子106と、検出部107と、限流抵抗R5と、検出抵抗R6と、2つのスイッチング素子Q1,Q2と、を備えている。2つのスイッチング素子Q1,Q2は、いずれも絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。
【0034】
第1駆動部104及び第2駆動部105は、それぞれスイッチング素子Q1,Q2を駆動するためのドライバであり、例えばHVIC(High Voltage IC)にて構成される。反転素子106は、処理部103から第2駆動部105に与える第2駆動信号を反転し、第1駆動信号として第1駆動部104に出力する。つまり、スイッチング素子Q1がオンであればスイッチング素子Q2がオフになり、スイッチング素子Q1がオフであればスイッチング素子Q2がオンになる。限流抵抗R5は、コントローラ10の起動時に発生し得る突入電流を抑制する。
【0035】
コントローラ10は、例えばユーザが携行可能な可搬型の端末である。本開示でいう「ユーザ」は、コントローラ10を使用する者である。ユーザは、例えばモータ装置1の購入者、又はモータ装置1を提供する業者などを含み得る。
【0036】
直流電源101は、コントローラ10に接続される交流電源(ここでは、電源AC1)の出力する交流電圧を直流電圧に変換し、変換した直流電圧を出力する。直流電源101は、整流回路102と、コンデンサC4と、を有している。整流回路102は、交流電源(ここでは、電源AC1)からの交流電圧を整流する回路であり、ダイオードブリッジで構成されている。したがって、本実施形態では、整流回路102は、入力される交流電圧を全波整流する。コンデンサC4は、整流回路102の一対の出力端に電気的に接続されている。コンデンサC4は、平滑コンデンサであって、整流回路102の出力電圧(脈流電圧)を平滑する。したがって、直流電源101は、コンデンサC4の両端電圧(直流電圧)を出力する。
【0037】
処理部103は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)で構成されている。つまり、処理部103は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムで実現されている。そして、プロセッサが適宜のプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが処理部103として機能する。プログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。処理部103の動作用電源は、例えばコントローラ10の備える電源回路にて電源AC1から供給される電力を所定の電力に変換することで、生成される。
【0038】
処理部103は、コントローラ10からモータ装置1へ出力する電圧の大きさを所定のパターンで変化させることにより電圧信号を発生させ、発生させた電圧信号を通信信号S1としてモータ装置1へ送信する機能を有している。本実施形態では、処理部103は、第1駆動部104及び第2駆動部105を制御し、2つのスイッチング素子Q1,Q2のオン/オフを切り替えることで、コントローラ10が出力する電圧の大きさを変化させている。具体的には、処理部103は、スイッチング素子Q1をオン、スイッチング素子Q2をオフに切り替えることにより、コントローラ10から直流電源101の出力電圧を出力させる。また、処理部103は、スイッチング素子Q1をオフ、スイッチング素子Q2をオンに切り替えることにより、一対の電線91,92間を短絡させ、コントローラ10から出力する電圧を零にする。
【0039】
つまり、本実施形態では、コントローラ10の発生する通信信号S1は、ハイレベルとローレベルの2値をとり得る電圧信号である。ここでいう「ハイレベル」は、直流電源101の出力電圧の大きさに相当する。また、ここでいう「ローレベル」は、零に相当する。
【0040】
本実施形態では、処理部103は、送信するデータ及びコマンドに応じて、コントローラ10が出力する電圧を変化させることで、複数ビットのデータを含む通信信号S1を1ビットずつモータ装置1へ送信する。つまり、本実施形態では、処理部5とコントローラ10との通信方式は、調歩同期方式のシリアル通信である。
【0041】
検出部107は、検出抵抗R6の両端電圧を検出することにより、検出抵抗R6を流れる電流を検出する。本実施形態では、検出抵抗R6は、コントローラ10がモータ装置1に接続されている場合、直流電源101の低電位側の一端と、モータ装置1の低電位側の入力端子1Bとの間に電気的に接続される。そして、通信モードにおいてモータ装置1が電流信号S2を発生している場合、モータ装置1からコントローラ10へと流れる電流が、検出抵抗R6に流れる。つまり、検出部107は、電流信号S2の発生によりモータ装置1からコントローラ10へと流れる電流を検出する。検出部107は、検出結果を処理部103へ出力する。このため、処理部103は、通信モードにおいて、検出部107にてモータ装置1からコントローラ10へと流れる電流が検出されることをもって、モータ装置1からの電流信号S2を受信する。
【0042】
本実施形態のモータ装置1は、例えば
図3に示すようなファンユニット200に内蔵される。
図3では、モータ装置1の図示を省略している。ファンユニット200は、モータ装置1と、羽根201と、電源ケーブル202と、を備えている。羽根201は、モータ装置1のモータ4の回転軸に取り付けられており、モータ4が駆動することにより回転する。言い換えれば、ファンユニット200は、モータ装置1の発生する力を受けて羽根201を回転させる。つまり、モータ装置1がファンユニット200に用いられる場合、モータ装置1の負荷は、羽根201である。
【0043】
ファンユニット200は、例えば業務用の冷却ファンとして用いられる。
図3に示す例では、ファンユニット200は、上下2段の陳列スペースA1,A2を有する冷蔵ショーケース300に設けられている。具体的には、2台のファンユニット200が、上段の陳列スペースA1の側壁と、下段の陳列スペースA2の側壁とに、それぞれ取り付けられている。
【0044】
各ファンユニット200は、電源ケーブル202をコンセントに接続することにより、電源AC1に電気的に接続される。そして、各ファンユニット200のモータ装置1は、電源AC1に接続された状態では、通常モードで動作する。つまり、各ファンユニット200は、電源AC1に接続された状態では、モータ装置1の処理部5が有する動作用データに従って羽根201を回転させる。これにより、2台のファンユニット200は、それぞれ陳列スペースA1,A2を冷却する。
【0045】
また、各ファンユニット200は、電源ケーブル202をコントローラ10に接続することにより、コントローラ10に電気的に接続される。そして、各ファンユニット200のモータ装置1は、コントローラ10に接続された状態では、通信モードで動作する。つまり、各ファンユニット200は、コントローラ10に接続された状態では、コントローラ10から送信される通信信号S1に含まれるデータ又はコマンドに応じて、モータ装置1の処理部5が有する動作用データを更新する。
【0046】
ここで、2台のファンユニット200は、コントローラ10を用いることで、互いに異なる動作用データに更新することが可能である。例えば、上段の陳列スペースA1を「5℃」で冷却し、下段の陳列スペースA2を「0℃」で冷却するように、各ファンユニット200の動作用データをコントローラ10で更新することが可能である。つまり、複数のファンユニット200が存在する場合、コントローラ10を用いれば、個別に動作用データを更新することが可能である。もちろん、コントローラ10を用いれば、全てのファンユニット200の動作用データを単一の動作用データに更新することも可能である。
【0047】
(2)動作
以下、コントローラ10が通信信号S1を送信する方法、及びモータ装置1が通信信号S1を受信する方法について、
図4A~
図4Cを用いて説明する。
図4Aは、コントローラ10の出力電圧の波形を表している。
図4Bは、蓄電部21(ここでは、コンデンサC3)の両端電圧の波形を表している。
図4Cは、モータ装置1の処理部5に入力される通信信号S1の波形を表している。
【0048】
まず、コントローラ10が通信信号S1を送信する方法について説明する。コントローラ10は、電源が投入された状態でモータ装置1に接続されると、モータ装置1への通信信号S1の送信処理を開始する。ここで、コントローラ10は、ユーザによる所定の操作を受け付けることをトリガとして、送信処理を開始してもよい。
図4A~
図4Cに示す例では、コントローラ10による送信処理の開始時点は、時刻t0である。
【0049】
送信処理において、コントローラ10の処理部103は、最初の一定期間(時刻t0から時刻t1までの間)、スイッチング素子Q1をオン、スイッチング素子Q2をオフに切り替えることにより、モータ装置1へ直流電源101の出力電圧を供給する。この一定期間は、入力部20へ電力を供給する供給期間T10である。次に、処理部103は、一定期間(時刻t1から時刻t2までの間)、スイッチング素子Q1,Q2のオン/オフを適宜切り替え、コントローラ10の出力電圧の大きさを変化させることで、電圧信号(通信信号S1)を発生させる。この一定期間は、入力部20へ通信信号S1を送信する送信期間T11に相当する。
【0050】
本実施形態では、コントローラ10は、送信処理において、供給期間T10と送信期間T11とを交互に繰り返す。
図4A~
図4Cに示す例では、時刻t0から時刻t1までが1回目の供給期間T10、時刻t1から時刻t2までが1回目の送信期間T11である。また、時刻t2から時刻t3までの間が2回目の供給期間T10、時刻t3から時刻t4までの間が2回目の送信期間T11である。本実施形態では、供給期間T10の長さは一定であり、例えば数百〔ms〕である。また、本実施形態では、送信期間T11の長さは一定であり、例えば数十〔ms〕である。つまり、本実施形態では、供給期間T10及び送信期間T11は、それぞれ固定の長さを有している。なお、本実施形態では、2回目以降の供給期間T10の長さは、1回目の供給期間T10の長さよりも短くなっている。送信処理は、通信信号S1の送信が完了するまで継続する。
【0051】
次に、モータ装置1が通信信号S1を受信する方法について説明する。モータ装置1では、1回目の供給期間T10に相当する期間、一対の入力端子1A,1B間に直流電圧が印加される。つまり、モータ装置1における第1期間T1は、コントローラ10における1回目の供給期間T10に相当する。また、モータ装置1では、2回目以降の供給期間T10に相当する期間、一対の入力端子1A,1B間に直流電圧が印加される。2回目以降の供給期間T10は、モータ装置1における第3期間T3に相当する。第3期間T3は、コントローラ10からの通信信号S1に対する返信として、モータ装置1が電流信号S2を発生する期間になり得る。
【0052】
第1期間T1及び第3期間T3では、入力部20に直流電圧が印加されることにより、電源回路8のコンデンサC3(蓄電部21)に電気エネルギが蓄積される。このため、コンデンサC3の両端電圧は、コンデンサC3が満充電状態となるまで、時間経過に伴って上昇する。つまり、モータ装置1では、コントローラ10が送信処理を開始してから第1期間T1が経過するまでの間、コントローラ10から電力が供給されることにより、蓄電部21に電気エネルギが蓄積される。また、モータ装置1では、コントローラ10の送信期間T11が経過するごとに、コントローラ10から電力が供給されることにより、蓄電部21に電気エネルギが蓄積される。このため、コントローラ10の送信処理が終了するまでの間、蓄電部21は、処理部5の駆動用の電気エネルギが十分に蓄積された状態を維持する。
【0053】
ここで、本実施形態では、モータ装置1の処理部5は、受信回路7の出力電圧を監視することにより、動作モードを通常モード及び通信モードのいずれか一方に切り替える。具体的には、モータ装置1に電源AC1が接続されている場合、一対の入力端子間1A,1B間には、周波数が50〔Hz〕又は60〔Hz〕の交流電圧が印加される。このため、受信回路7の出力電圧は、周波数が50〔Hz〕又は60〔Hz〕のパルス電圧となる。一方、モータ装置1にコントローラ10が接続されている場合、少なくとも一定期間(第1期間T1)においては、一対の入力端子1A,1B間に直流電圧が印加され続ける。このため、受信回路7の出力電圧は零電圧となる。
【0054】
したがって、処理部5は、受信回路7の出力電圧がパルス電圧であれば、動作モードを通常モードに切り替える。また、処理部5は、受信回路7の出力電圧が、一定期間(第1期間T1)零電圧であれば、動作モードを通信モードに切り替える。このように、本実施形態では、処理部5は、入力部20に入力される電圧(ここでは、受信回路7の出力電圧)の波形に応じて、コントローラ10が接続されているか否かを判別する。なお、処理部5にてコントローラ10が接続されているか否かを正確に判別するために、第1期間T1の長さは、電源AC1の1周期よりも長いことが好ましい。
【0055】
ここでは、第1期間T1にて一対の入力端子1A,1B間に直流電圧が印加され続けているので、処理部5は、動作モードを通信モードに切り替える。その後、モータ装置1では、1回目の送信期間T11に相当する期間、2回目の送信期間T11に相当する期間の各々において、一対の入力端子1A,1B間に電圧信号(通信信号S1)が入力される。つまり、モータ装置1における第2期間T2は、コントローラ10における送信期間T11に相当する。
【0056】
第2期間T2では、一対の入力端子1A,1B間に入力される電圧信号は、受信回路7により2値信号に変換される。そして、処理部5は、受信回路7から2値信号を受信することにより、通信信号S1を受信する。第2期間T2では、処理部5が動作することにより、蓄電部21に蓄積された電気エネルギが消費され得る。しかしながら、既に述べたように、第2期間T2の後の第3期間T3にて蓄電部21に電気エネルギが蓄積されるので、蓄電部21は、処理部5の駆動用の電気エネルギが十分に蓄積された状態を維持する。
【0057】
また、処理部5は、第2期間T2の後の第3期間T3において、駆動部6を制御してモータ4の巻線41,42,43に電流を流すことにより、電流信号S2を発生させる。これにより、処理部5は、第3期間T3にて、通信信号S1に対する返信として、電流信号S2をコントローラ10へ送信する。コントローラ10の処理部103は、検出抵抗R6及び検出部107により電流信号S2を受信する。
【0058】
上述のように、本実施形態のモータ装置1では、コントローラ10が通信信号S1を送信する前に、コントローラ10から供給される電力を受けることにより、処理部5の駆動用の電気エネルギを蓄電部21に蓄積することができる。このため、本実施形態では、コントローラ10が通信信号S1を送信する際に、蓄電部21に蓄積された電気エネルギにより処理部5が正常に動作しやすく、コントローラ10から送信される通信信号S1を受信しやすい、という利点がある。
【0059】
また、本実施形態では、必要に応じてコントローラ10を用いてモータ装置1の動作用データ(言い換えれば、モータ4用のデータ)を変更することができるので、1機種のモータ装置1で様々な仕様に対応することが可能になる、という利点がある。
【0060】
(3)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、モータ装置1と同様の機能は、通信方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。
【0061】
一態様に係る通信方法は、コントローラ10と、モータ4を有するモータ装置1との間の通信方法である。この通信方法では、第1期間T1にてコントローラ10から供給される電力を受け付け、受け付けた電力によりモータ装置1の有する処理部5の駆動用の電気エネルギを蓄電部21に蓄積する。また、この通信方法では、第1期間T1の後の第2期間T2にて少なくともコントローラ10から送信される通信信号S1を受信し、受信した通信信号S1に基づいて、処理部5の有するモータ4用のデータを更新する。
【0062】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下の種々の変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0063】
本開示におけるモータ装置1は、例えば処理部5等に、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるモータ装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、蓄電部21は、電源回路8のコンデンサC3であるが、これに限定する趣旨ではない。つまり、蓄電部21は、処理部5の動作用の電気エネルギを供給する経路上にあるコンデンサであればよく、例えばコンデンサC1,C2も蓄電部21と言える。その他、蓄電部21は、コンデンサに限らず、二次電池であってもよい。
【0065】
上述の実施形態では、処理部5に入力される通信信号S1は、受信回路7でのスイッチング素子Q0のオン/オフに応じたハイレベルとローレベルとの2値をとり得る2値信号(ディジタル信号)であるが、これに限定する趣旨ではない。例えば、処理部5に入力される通信信号S1は、アナログ信号であってもよい。この場合、処理部5は、例えば処理部5内に設けたA/D変換器により、入力されたアナログ電圧をディジタル値に変換し、変換した値を解析することでデータとする。
【0066】
上述の実施形態では、通信信号S1は、モータ装置1の設定等を変更するためのデータ又はコマンドを含み得るが、これに限定する趣旨ではない。例えば、通信信号S1は、処理部5の実行するプログラムのヴァージョンアップ用のデータが含まれていてもよい。つまり、モータ4用のデータは、モータ4の動作用データ及びモータ4の制御に用いられるプログラムのヴァージョンアップ用のデータの少なくとも一方を含んでいる。
【0067】
上述の実施形態において、1台のコントローラ10に対して複数のモータ装置1を接続し、複数のモータ装置1に対して通信信号S1を送信する場合、通信信号S1には、各モータ装置1を識別するためのアドレスが含まれているのが好ましい。アドレスとしては、例えばモータ装置1に固有のシリアル番号(製造番号)が用いられてもよい。この態様では、モータ装置1は、通信信号S1に含まれるアドレスと、自己のアドレスとが一致するか否かを判定し、アドレスが一致する場合に通信信号S1を受信する。
【0068】
上述の実施形態では、モータ装置1とコントローラ10とは一対の電線91,92、つまり2線で接続されているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、モータ装置1とコントローラ10とは、接地線を含めて3線で接続されていてもよい。その他、モータ装置1とコントローラ10とは、1以上の信号線を含めた3線以上の電線で接続されていてもよい。
【0069】
上述の実施形態では、供給期間T10及び送信期間T11は、それぞれ固定の長さを有しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、供給期間T10及び送信期間T11の少なくとも一方の長さは、可変長であってもよい。例えば、処理部5は、コンデンサC3の両端電圧を監視し、コンデンサC3の両端電圧が所定電圧を上回ると、その旨を知らせる電流信号S2を割込み信号としてコントローラ10へ送信する。コントローラ10は、割込み信号を受信すると、供給期間T10の途中であっても通信信号S1の送信を開始する、つまり送信期間T11に切り替える。この態様では、供給期間T10は、コンデンサC3の両端電圧に応じて可変となる。
【0070】
また、例えば、コントローラ10は、通信信号S1のデータ量が大きければ送信期間T11を長くし、通信信号S1のデータ量が小さければ送信期間T11を短くしてもよい。この場合、送信期間T11は、蓄電部21に蓄積される電気エネルギが、放電により処理部5の駆動に必要な電気エネルギを下回らないように設定する。言い換えれば、送信期間T11は、蓄電部21の出力電圧が処理部5の駆動に必要な電圧を下回らない期間である。
【0071】
上述の実施形態において、コントローラ10は、例えば1回の送信期間T11では通信信号S1を送信しきれない程に通信信号S1のデータ量が大きい場合、複数の送信期間T11に分割して通信信号S1を送信してもよい。
【0072】
上述の実施形態では、処理部5は、第3期間T3にて通信信号S1に対する返信として電流信号S2をコントローラ10へ送信しているが、電流信号S2を送信するか否かは任意である。
【0073】
上述の実施形態では、モータ装置1は、ファンユニット200の羽根201を回転させるために用いられているが、モータ装置1の用途を限定する趣旨ではない。つまり、モータ装置1は、処理部5の有する動作用データに従ってモータ4を駆動することで、モータ4に取り付けられる負荷を駆動する構成であればよく、負荷の種類は問わない。
【0074】
上述の実施形態では、コントローラ10は、モータ装置1との間に接続された一対の電線91,92を介して、調歩同期方式のシリアル通信によりモータ装置1へ通信信号S1を送信しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、コントローラ10は、上記一対の電線91,92を用いずに、別の通信経路(有線又は無線を問わず)を用いてモータ装置1へ通信信号S1を送信する構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態において、特許文献1に記載のモータ装置のように、コントローラ10とモータ装置1との間の通信方式として周波数変調を採用してもよい。ただし、この態様では、モータ装置1の処理部5では、通信信号S1の周波数を計測するための時間を要するため、通信速度を向上しにくくなる可能性がある。また、この態様では、モータ装置1の処理部5が計測した周波数を“0”又は“1”の2値の受信データに変換する必要があるため、受信処理が複雑で手間がかかりやすい。更に、この態様では、コントローラ10にて出力電圧の周波数を可変とする構成が必要となるため、設計が複雑になりやすい。
【0076】
上述の実施形態では、モータ装置1の備えるモータ4はブラシレスDCモータであるが、これに限定する趣旨ではない。例えば、モータ4は、三相誘導モータ、又は単相誘導モータなどのモータであってもよい。また、インバータ回路3及び駆動部6は、モータ4の種類に応じて、適宜他の駆動回路に変更されてもよい。この場合でも、処理部5は、この駆動回路を制御し、モータ4の有する巻線に電流を流すことにより、電流信号S2を発生させることが可能である。
【0077】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係るモータ装置(1)は、モータ(4)と、入力部(20)と、処理部(5)と、蓄電部(21)と、を備える。入力部(20)は、第1期間(T1)にてコントローラ(10)から供給される電力を受け付け、第1期間(T1)の後の第2期間(T2)にて少なくともコントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信する。処理部(5)は、入力部(20)が受信した通信信号(S1)に基づいてモータ(4)用のデータを更新する。蓄電部(21)は、入力部(20)に入力された電力により処理部(5)の駆動用の電気エネルギを蓄積する。
【0078】
この態様によれば、コントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信しやすい、という利点がある。
【0079】
第2の態様に係るモータ装置(1)では、第1の態様において、入力部(20)は、コントローラ(10)に電気的に接続される一対の電線(91,92)を介して電力を受け付けている。入力部(20)は、一対の電線(91,92)を介して通信信号(S1)を受信する。
【0080】
この態様によれば、コントローラ(10)からモータ装置(1)への通信経路を別途確保しなくて済む、という利点がある。
【0081】
第3の態様に係るモータ装置(1)では、第1又は第2の態様において、処理部(5)は、入力部(20)に入力される電圧の波形に応じて、コントローラ(10)が接続されているか否かを判別する。
【0082】
この態様によれば、モータ装置(1)に電源(AC1)が接続されている場合に、電源(AC1)から供給される電力を誤って通信信号(S1)として受信してしまうのを防ぎやすい、という利点がある。
【0083】
第4の態様に係るモータ装置(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、コントローラ(10)は、入力部(20)へ電力を供給する供給期間(T10)と、入力部(20)へ通信信号(S1)を送信する送信期間(T11)とを交互に繰り返す。
【0084】
この態様によれば、1回の送信期間(T11)では送信しきれない程にデータ量の大きい通信信号(S1)であっても、複数回に分割してモータ装置(1)にて受信することができる、という利点がある。
【0085】
第5の態様に係るモータ装置(1)では、第4の態様において、送信期間(T11)は、蓄電部(21)の出力電圧が処理部(5)の駆動に必要な電圧を下回らない期間である。
【0086】
この態様によれば、コンデンサ(C1)の容量に応じて、供給期間(T10)及び送信期間(T11)を固定の長さにすることで、モータ装置(1)とコントローラ(10)との通信が複雑になりにくい、という利点がある。
【0087】
第6の態様に係るモータ装置(1)では、第1~第5のいずれかの態様において、処理部(5)とコントローラ(10)との通信方式は、調歩同期方式のシリアル通信である。
【0088】
この態様によれば、パラレル通信と比較して、簡易な設計によりモータ装置(1)とコントローラ(10)との通信を実現できる、という利点がある。
【0089】
第7の態様に係るモータ装置(1)では、第1~第6のいずれかの態様において、入力部(20)は、電源回路(8)と、受信回路(7)と、を有する。電源回路(8)は、入力部(20)に入力される電圧を所定の電圧に変換して蓄電部(21)に供給する。受信回路(7)は、入力部に入力される電圧信号を受信し、受信した電圧信号を通信信号(S1)として処理部(5)へ出力する。
【0090】
この態様によれば、電圧という単一の物理量を用いて、モータ装置(1)に対する電力の供給及び通信信号(S1)の送信の両方を実現できる、という利点がある。
【0091】
第8の態様に係るコントローラ(10)では、第1~第7のいずれかの態様において、モータ(4)用のデータは、モータ(4)の動作用データ及びモータ(4)の制御に用いられるプログラムのヴァージョンアップ用のデータの少なくとも一方を含む。
【0092】
この態様によれば、1機種のモータ装置(1)で様々な仕様に対応することが可能になる、という利点がある。
【0093】
第9の態様に係るコントローラ(10)は、第1~第8のいずれかの態様のモータ装置(1)に電気的に接続され、モータ装置(1)に電力の供給及び通信信号(S1)の送信を行う。
【0094】
この態様によれば、コントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信しやすい、という利点がある。
【0095】
第10の態様に係るモータシステム(100)は、第1~第8のいずれかの態様のモータ装置(1)と、コントローラ(10)と、を備える。コントローラ(10)は、モータ装置(1)に電気的に接続され、モータ装置(1)に電力の供給及び通信信号(S1)の送信を行う。
【0096】
この態様によれば、コントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信しやすい、という利点がある。
【0097】
第11の態様に係るファンユニット(200)は、第1~第8のいずれかの態様のモータ装置(1)のモータ(4)に取り付けられる羽根(201)を有し、モータ(4)の発生する力を受けて羽根(201)を回転させる。
【0098】
この態様によれば、コントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信しやすい、という利点がある。
【0099】
第12の態様に係る通信方法は、コントローラ(10)と、モータ(4)を有するモータ装置(1)との間の通信方法である。この通信方法では、第1期間(T1)にてコントローラ(10)から供給される電力を受け付け、受け付けた電力によりモータ装置(1)の有する処理部(5)の駆動用の電気エネルギを蓄電部(21)に蓄積する。また、この通信方法では、第1期間(T1)の後の第2期間(T2)にて少なくともコントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信し、受信した通信信号(S1)に基づいて、処理部(5)の有するモータ(4)用のデータを更新する。
【0100】
この態様によれば、コントローラ(10)から送信される通信信号(S1)を受信しやすい、という利点がある。
【0101】
第2~第8の態様に係る構成は、モータ装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 モータ装置
20 入力部
21 蓄電部
4 モータ
5 処理部
7 受信回路
8 電源回路
91,92 一対の電線
10 コントローラ
100 モータシステム
200 ファンユニット
201 羽根
S1 通信信号
T1 第1期間
T2 第2期間
T10 供給期間
T11 送信期間