(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20230519BHJP
F25D 21/14 20060101ALI20230519BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230519BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20230519BHJP
【FI】
F25D11/00 101D
F25D21/14 F
F25D21/14 Q
B60L50/60
B60L53/12
(21)【出願番号】P 2021072827
(22)【出願日】2021-04-22
(62)【分割の表示】P 2017164520の分割
【原出願日】2017-08-29
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅至
(72)【発明者】
【氏名】上迫 豊志
(72)【発明者】
【氏名】尾関 祐仁
(72)【発明者】
【氏名】内山 亘
(72)【発明者】
【氏名】西岡 伸一郎
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-114108(JP,A)
【文献】特開2011-067398(JP,A)
【文献】特開平08-178516(JP,A)
【文献】特開平08-033524(JP,A)
【文献】特開2001-275758(JP,A)
【文献】特開2005-209090(JP,A)
【文献】特開2014-025608(JP,A)
【文献】特開2015-038409(JP,A)
【文献】特開2008-232591(JP,A)
【文献】特開2008-289815(JP,A)
【文献】特開2007-030942(JP,A)
【文献】特開2019-044980(JP,A)
【文献】特開2012-37158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 21/14
B60L 50/60
B60L 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能であり、移動開始前は基準位置で電力供給を受けつつ、扉を用いて収容された収容物を冷却する、制御部を備える冷蔵庫であって、
前記制御部は、ユーザの第1の指示に基づいて、前記基準位置から目標位置まで前記冷蔵庫を移動させ、ユーザの第2の指示に基づいて、前記冷蔵庫を前記基準位置に戻すよう構成されており、
前記第1の指示には音声による指示が少なくとも含まれ、
前記扉が開いている状態では移動せず、
前記冷蔵庫の内部空間に設けられた棚を更に備え、
前記棚は、
前記扉が開
くに伴い前に向かって上方に移動して庫内から前方へ突出し、
前記扉が閉じ
るに伴い後に向かって下方に移動して庫内に収まることを特徴とする
、冷蔵庫。
【請求項2】
前記基準位置にある状態でのみ冷却運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
冷却部と、
前記冷却部よりも下方に設けられ、除霜水を蓄えるタンクとを更に備え、
前記タンクは、密閉構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記冷蔵庫の下部に設けられた複数の車輪と、
前記車輪を駆動するモータと、
前記モータに電力を供給する蓄電池とを更に備え、
前記蓄電池は、前記タンクの下部に設けられず、前記複数の車輪のうち一対の後輪の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記冷蔵庫の前側に設けられ、所定の中心角度の範囲に光を出射し、前記所定の中心角度の範囲内に存在する物体までの距離を検出可能な測距センサと、
前記冷蔵庫の前壁に設けられ、周囲に存在する物体を検知する障害物センサとを更に備え、
前記測距センサからの検知結果に基づき前記冷蔵庫の走行経路を決定し、
前記障害物センサからの検知結果に基づき前記冷蔵庫の走行速度を変更することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記冷蔵庫の内部空間の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御部は、前記温度センサの検知結果に基づき冷却運転を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫の一例として、特許文献1に示す移動式冷蔵庫が知られている。この移動式冷蔵庫は、冷蔵庫本体の底にキャスター付けられており、移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、基準位置から目標位置まで移動してから基準位置に戻る自走可能な冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る冷蔵庫は、自走可能であり、移動開始前は基準位置で電力供給を受けつつ、扉を用いて収容された収容物を冷却する冷蔵庫であって、ユーザの第1の指示に基づいて、前記基準位置から目標位置まで前記冷蔵庫を移動させる第1の制御手段と、ユーザの第2の指示に基づいて、前記冷蔵庫を前記基準位置に戻す第2の制御手段とを備え、前記第1の指示には音声による指示が少なくとも含まれ、前記扉が開いている状態では移動しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基準位置から目標位置まで移動してから基準位置に戻る自走可能な冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】
図1の断熱筐体が電力供給部と連結しているときの側面図。
【
図4】
図1の断熱筐体が電力供給部から分離しているときの側面図。
【
図5】
図1の断熱筐体を開放した状態を示す斜視図。
【
図6】
図1の断熱筐体の扉を係止した状態の一部を示す斜視図。
【
図7】
図1の断熱筐体の扉の係止を解除した状態の一部を示す斜視図。
【
図8】
図1の断熱筐体の扉を開放した状態を示す斜視図。
【
図9】
図1の断熱筐体の扉を開放している状態を示す斜視図。
【
図12】
図10のB-B線に沿って切断した断熱筐体を示す断面図。
【
図13】
図1の冷蔵庫の構成を示す機能ブロック図。
【
図15】本発明の実施の形態の変形例に係る冷蔵庫を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、全ての図面において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、全ての図面において、本発明を説明するための構成要素を抜粋して図示しており、その他の構成要素については図示を省略する場合がある。さらに、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態)
<冷蔵庫の構成>
以下、本実施の形態に係る冷蔵庫10の一例について説明する。
図1から4に示すように、冷蔵庫10は、断熱筐体51と扉52で囲われた収納区画50および冷却部40、電力受電部22、制御部31、車体70で主に形成されている。
【0020】
冷蔵庫10は、前面(正面)が開口する断熱筐体51と、断熱筐体51の開口部を開閉する扉52とを有している。断熱筐体51は、一体もしくは5つの壁により形成される箱形状であって、これらの壁に囲まれる内部空間(庫内)である収納区画50を有している。各壁及び扉52のそれぞれの内部空間(断熱空間)には、ガラスウール、発泡スチロール、ウレタンや真空断熱材等の断熱材(図示せず)が収容されており、庫外からの熱侵入を抑制し、庫内の温度が低く維持されている。
【0021】
扉52は、矩形の板形状であって、ヒンジ53により回転可能に断熱筐体51に支持されている。扉52は、下端部がヒンジ53により断熱筐体51の下端部に取り付けられた下開き扉であって、開いていくに伴い下方へ移動していく。ヒンジ53は、例えば、3つ設けられている。このうちの2つのヒンジ(図示せず)は扉52の下端部の両端にそれぞれ設けられ、残る1つのヒンジ53は2つのヒンジの中央に設けられている。なお、扉の開け方は上下ではなく通常の冷蔵庫と同様に横方向もしくは引き出し式でもかまわない。
【0022】
収納区画50の背面部には冷却部40で生成された冷気を送風ファン43により冷却流路42を経由して庫内へ空気が流入する流入口63、及び、庫内から空気が流出する流出口64が開口し冷却部40の下部と連結している。
【0023】
収納区画50は、収納区画内もしくはその近傍に備えられた温度センサ36により温度検知されており、その値を制御部31に通信し、各機能部品の動作を決定し、動作させている。例えば、送風ファン43の回転数変化により、流入口63から流入する空気の流量を制御してもよい。これにより、庫内の温度が調整される。
【0024】
なお、この冷却やファン制御は、電源供給ができ、電力受電部が電力供給部と接合している基準位置にある状態のみ有効することにより、無駄な動作を省くことができ、蓄電池の消耗も抑制できる。
【0025】
図2に示すとおり、冷却運転に必要な圧縮機44は冷蔵庫10の下方、車体70の近傍の左右の車輪72の間に構成されている。また、蓄電池74も同様に車輪72の間に構成されている。これにより、冷蔵庫10の重心が下部、後方にあるため安定運転が可能なると同時に車輪の間隔が広いため安定性を増す。
【0026】
図3に示すように、冷蔵庫10は、例えば、収納部11の奥に配置されている。収納部11は、冷蔵庫10を収納可能なサイズであり、例えば、キッチンの壁等から窪んだ空間である。この場合、電力供給部21は、
図3に示すように例えば収納部11の奥の壁面部に設けられている。そして、収納部11内には、電力供給部21に対して連結可能な電力受電部の位置(基準位置)が設定されている。
【0027】
冷蔵庫10の冷却部40は、空気を冷却する冷却サイクル(図示せず)と、冷却された空気が流れる冷却流路42と、冷却流路42から断熱筐体51へ空気を送る送風ファン43と、を有している。冷却サイクルは、冷媒の圧縮を行う圧縮機44と、圧縮機44から供給される冷媒の蒸発熱を利用して空気を冷却する蒸発器46とそれらを結ぶ配管等を含んでいる。
【0028】
圧縮機44の駆動及び停止、並びに、送風ファン43の駆動及び停止は制御部31により制御されている。送風ファン43の風力は調整可能であってもよく、この場合、風量は制御部31により制御される。
【0029】
冷却部40には、除霜部が設けられている。除霜部は、例えば、蒸発器46の近傍に配置されており、ヒータ49等の加熱部により構成され、その近傍に除霜水を貯留するためのタンクが構成されている。このヒータの加熱により蒸発器46等に付着した霜を溶かして水に変える。この水は、冷却部40の下部に構成された密閉されたタンク82に蓄えられたり、外部へ排出されたりする。また、ファンやヒータ等によってこの水を蒸発する機構を有してもよい。
【0030】
また、収納区画50を高い温度設定をした場合、蒸発器には霜を生成せず、水滴のみ成長する場合もあるが、これも運転を継続すると水滴の径が成長、増大し、重力により落下、タンクに収納される。
【0031】
このタンク82は、ほぼ密閉構造となっており、冷蔵庫の運転、停止などの振動による液面変化があったとしても外部に漏れることはない。また、タンクを脱着可能式にすることにより満水に近づいた場合、検知手段によりユーザにしらせ、除去してもらうことも可能である。
【0032】
さらに、このタンクの下部および近傍には、蓄電池74を設置しないことにより漏電抑制などの安全を高めることができる。
【0033】
扉52の開閉を検知する扉開閉センサ34が、断熱筐体51に設けられている。例えば、扉開閉センサ34は、断熱筐体51の前面に設けられた挿通孔34aと、挿通孔34aから突出する突起34bとを有している。扉52が閉じられていると突起34bは扉52に押されて挿通孔34aから断熱筐体51の壁内へ引っ込み、扉52が開いていると突起34bは断熱筐体51の壁内から挿通孔34aを介して前方へ突出する。扉開閉センサ34は、このように進退する突起34bの位置に基づいて扉52の開閉を検知し、制御部31に出力する。
【0034】
また、冷蔵庫10を移動させるための車体70は、車体本体71と、車輪72と、車輪72を駆動するモータ73と、モータ73に電力を供給する蓄電池74とを有している。車体本体71は、下方が開口した箱形状であって、断熱筐体51と一体的に形成されている。車体本体71の天壁は、断熱筐体51の底壁と間隔を空けて平行に設けられている。車体本体71の背壁は断熱筐体51の背壁と連続的に繋がり、車体本体71の左右側壁は断熱筐体51の左右側壁とそれぞれ後方の一部が接続している。
【0035】
車輪72は、モータ73により回転する回転軸(図示せず)と、この回転軸を支持しつつ該回転軸に直交する転向軸を有する保持部(図示せず)が設けられている。従って、車輪72は回転軸が回転することにより回転し、冷蔵庫10が移動する。また、左右の車輪72の回転速度を異ならせると、保持部が転向軸を中心に回転して、冷蔵庫10が移動方向を変える。例えば、車輪72は、前方に配置された左右一対の前輪と、後方に配置された左右一対の後輪とにより構成されている。この前輪はモータ73に接続して回転駆動され、後輪は前輪の動きに従って動く。
【0036】
蓄電池74は、充電することで再利用可能なリチウムイオン等を用いて取り外しも可能な二次電池であり、車体本体71の後部に取り付けられており、一対の後輪の間に配置されている。自立走行時にも冷蔵庫10の重心が安定し、スムーズな走行が可能となっている。蓄電池74からの電力は、モータ73、冷蔵庫10に搭載されている各種センサ、制御部31、照明部67に供給される。また、蓄電池74には受電端子(図示せず)が設けられている。
【0037】
収納部11の壁面の構成されている電力供給部21は、商用交流電源等の外部電源に接続されている。電力供給部21は、外部電源からの電力を冷蔵庫10の電力受電部22を介して冷却部40、制御部31及び車体70の蓄電池74等に供給する。電力供給部21は、出力端子(図示せず)を有しており、出力端子に蓄電池74の受電端子が接触することによりこれらが接続して蓄電池74に電力を供給する。なお、この電力受電部22は、断熱筐体51に設けているが、断熱筐体51ではなく車体本体71に設けてもよい。
【0038】
一方、
図4に示すように、電力供給部から電力受電部が離れることによりこれらが解離して蓄電池74への電力供給が停止する。
【0039】
また、このとき、コイル等を用いて電力出力部を構成、一方で冷蔵庫側の電力受電部もコイル等で構成し、非接触給電による電力供給を行うことにより、簡単に連結、分離ができる。この場合、正しく給電しているかは、例えば電力受電部側の電流値を検出し、判断することができ、規定値以下の場合、給電を停止することができる。さらに、この場合、異物のはさみこみになども想定されるので温度検知等の保護手段を備えてもよい。
【0040】
図5に示すように、断熱筐体51の天壁の上面に、冷蔵庫10を操作するボタンが配置されている。ボタンとしては、例えば、扉開ボタン54、扉閉ボタン55及び指定位置復帰ボタン56が設けられている。これらのボタンが押されると、この信号が制御部31に出力される。
【0041】
扉開ボタン54が押されると、制御部31は、扉52を開くように扉52に接続されたモータ(図示せず)を制御する。扉閉ボタン55が押されると、制御部31は、扉52を閉じるように扉52に接続されたモータ(図示せず)を制御する。指定位置復帰ボタン56が押されると、例えば、制御部31は、冷蔵庫10を収納部11内の電力供給部位置(基準位置)に復帰させるように車体70を制御する。
【0042】
なお、冷蔵庫10を操作するボタンの配置はこれに限らず、スマートフォンなどの携帯端末やリモコン等によって外部から操作を行ってもよい。さらに、使用者が事前に決めた任意の位置に復帰するようなプログラムでも問題ない。
【0043】
図5および
図6に示すように、例えば、断熱筐体51の前面の上側における両角部のそれぞれに、扉52を係止するための係止部58が出入りするための貫通孔57が設けられている。また、扉52の断熱筐体51側の面であって、断熱筐体51の貫通孔57に対向する位置に被係止部59が設けられている。被係止部59は、上方が開口し、下方へ窪む穴部である。
【0044】
係止部58は、直動部58a、カム58b及び爪部58cを有している。直動部58aは、上下方向に延びる棒状部材であって、扉開ボタン54及び扉閉ボタン55が押されると図示しないアクチュエータの駆動により上下動する。カム58bは、例えば、三角形状であって、1つの角部が直動部58aに回転可能に連結されており、他の1つの角部が断熱筐体51に枢支されている。よって、カム58bは、直動部58aの上下動に伴い枢支点を中心にして時計回り及び反時計回りに回転する。爪部58cは、円弧形状であって、その基端が、カム58bが有する更に他の角部に固定的に接続されている。爪部58cの先端は、上述したカム58bの回転に伴い、断熱筐体51の貫通孔57内の位置と、貫通孔57から前方へ突出した位置との間を移動する。
【0045】
このような係止部58等は、以下のように機能する。すなわち、
図6に示すように、扉閉ボタン55が押され、扉52が断熱筐体51の開口を閉じると、直動部58aが上方に移動し、カム58b及び爪部58cが反時計回りに回転して、爪部58cの先端が断熱筐体51の貫通孔57内の位置から前方へ突出する。扉52が断熱筐体51を閉じた状態では、断熱筐体51の貫通孔57の前方に扉52の被係止部59が配置されているため、貫通孔57から突出した爪部58cが被係止部59に挿入されて係止される。これにより、扉52が断熱筐体51の開口を閉じた状態が固定される。
【0046】
一方、
図7に示すように、扉開ボタン54が押されると、直動部58aが下方に移動し、カム58b及び爪部58cが時計回りに回転して、爪部58cの先端が断熱筐体51の貫通孔57から突出していた前方位置から後方へ引っ込む。これにより、被係止部59に挿入されていた爪部58cが抜け、係止が解除される。そして、扉52はモータの駆動によりヒンジ53を中心に回転し、断熱筐体51の開口が開かれる。
【0047】
また、冷蔵庫10が走行している場合には、扉開閉を防止する必要があるため、この扉閉ボタン55が押されたときと同様に扉52が断熱筐体51の開口を閉じた状態が固定される。
【0048】
さらに、扉開状態においては、冷蔵庫10は走行することはできないように車体70に備えられているモータへの給電を停止させる制御を行ってもよい。
【0049】
また、仮に冷蔵庫が何らかの原因により暴走等の異常走行が発生したときには、 スマートフォンなどの携帯端末やリモコン等によって外部から停止信号を通信、停止させてもいいし、冷蔵庫10に非常停止ボタン(図示せず)を設け、この非常用停止ボタンを押し、モータ部への電源供給を停止させていることにより停止させてもよい。
【0050】
図8及び
図9に示すように、断熱筐体51の右側壁及び左側壁の内面には溝部60が設けられ、この溝部60は前後方向に伸展している。溝部60は、一連の後側部分(断熱筐体51の奥側に位置する部分)と前側部分とこれらの間の中間部分とを有している。このうち後側部分は水平に延び、中間部分は前側ほど上方に位置するように傾斜し、前側部分は水平に延びている。
【0051】
断熱筐体51の庫内である収納区画50には、食品及び食器等の収容物(物品)を支持する棚61が設けられている。棚61はガラスやプラスチックで構成した板形状であって、水平になるように枠部62により支持されている。左右方向における枠部62の両端部には、それぞれ左右の外方へ突出した突起(図示せず)が設けられており、これらの突起は溝部60に嵌っている。枠部62は、扉52の開閉に連動して前後方向へ移動し、この際、枠部62の突起は溝部60に沿って移動する。
【0052】
例えば、
図14に示すように、断熱筐体51の一方の側壁内には、前後方向に軸心を向けたボールネジ68aと、このボールネジ68aに噛合する可動板68bとが設けられている。この可動板68bは、ボールネジ68aの回転に伴って前後動すると共に、上述した枠部62の突起を上下動自在に支持する。また、ボールネジ68aを回転させるため、モータ69が断熱筐体51の後壁内に収容されている。これにより、モータ69を駆動してボールネジ68aを回転させると、可動板68bが前方又は後方へと移動し、これに伴って突起と共に枠部62も前方又は後方へ移動する。
【0053】
このため、
図8に示すように、扉52が開いて、枠部62が前方へ移動する場合には、前方ほど上方へ傾斜する溝部60によって枠部62が上方へ移動し、枠部62に支えられている棚61も上方へ移動して庫内から前方へ突出する。一方、
図9に示すように、扉52が閉じて、枠部62が後方へ移動する場合には、後方ほど下方へ傾斜する溝部60によって枠部62が下方へ移動し、枠部62に支えられている棚61も下方へ移動して庫内に収まる。このため、冷蔵庫10の高さが低くても、棚61の位置が上昇することにより、棚61に載った皿等をユーザが取り易くなる。
【0054】
なお、この棚61が移動する機構に関しては、この冷蔵庫10の形態だけではなく、通常の冷蔵庫においても適用可能である。本発明の実施の形態の変形例として、例えば、
図15に示す家庭用の冷蔵庫200に棚61が配置されていてもよい。冷蔵庫200は本体201を備え、本体201の背面に圧縮器202、蒸発器203、及び、蒸発器203で発生した水を貯めるための蒸発皿204が配置されている。本体201の内部空間は、仕切壁205~207によって複数(例えば、4つ)の貯蔵室208~211に区画されている。本体201の正面は、開放されていて、扉212~215が設けられている。例えば、貯蔵室208に棚61が設けられている。本体201の中央部の背面側には、仕切壁206と仕切壁207とを接続する冷却室壁体216により区画された冷却室218が設けられ、この冷却室218に蒸発器203が配設されている。蒸発器203周辺の空気が冷却され、冷却された空気は、区画壁と本体201の背面との間に形成されている冷却流路217を介して貯蔵室208~211に供給される。
【0055】
図1、
図11及び
図12に示すように、冷蔵庫10には測距センサ32及び障害物センサ33が搭載されている。測距センサ32には、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)が用いられる。測距センサ32は、平面視で所定の中心角度θを成す範囲に光を出射し、この範囲内に存在する物体までの距離を検出し、この検出情報を制御部31へ出力する。なお、測距センサ32に必要な検知距離は、冷蔵庫10の使用環境等に応じて適宜選択すればよく、例えば、20m以内の範囲の物体を検知することができるものを採用することができる。
【0056】
測距センサ32は、冷蔵庫10における断熱筐体51と車体70との間の空間(検出空間35)にあって、前後方向における冷蔵庫10の中心よりも前側であり、前輪72の上部周辺に配置されている。これによって自立走行時に車体70側から受ける振動を低減し、測距センサ32の検知精度を向上できる。検出空間35(
図12)は、測距センサ32を中心に所定の角度θ(例えば、270度)の範囲に亘り、測距センサ32から前方及び左右方向に拡がっており、測距センサ32を通って前後方向へ延びる直線Lに対して左右対称に設けられている。これにより、測距センサ32は、この検出空間35を通って前方及び左右方向に光を走査して、冷蔵庫10の周囲の物体の位置及び形状を取得し、その物体の配置を示すマップを作成する。
【0057】
障害物センサ33は、車体70の前壁に配置されており、例えば、超音波センサが用いられる。障害物センサ33は、超音波を発する発信部33a、及び、物体から反射された超音波を受信する受信部33bを有している。障害物センサ33は、上下、左右にの広範囲な周囲に存在する物体を検知し、検知信号を制御部31へ出力する。このような超音波センサとしては、例えば、4m以内の範囲の物体を検知することができるものを採用することができる。
【0058】
図13に示すように、冷蔵庫10には、扉開閉センサ34、測距センサ32及び障害物センサ33に加えて、温度センサ36が搭載されている。温度センサ36は、断熱筐体51の庫内に配置されており、庫内の温度を検知する。また、断熱筐体51の庫外側に温度センサ36を追加で配置し、外気温度を検知してもよい。更に、電力供給部21と電力受電部22との間には位置センサ37が設けられている。
【0059】
この位置センサ37は、例えば接点スイッチ及び検出突起により構成されている。接点スイッチは、収納部11の内壁面に設けられ、検出突起は、冷蔵庫10の断熱筐体51の後壁面に設けられている。従って、冷蔵庫10が収納部11に入り、電力供給部21に連結可能な位置(基準位置)にあると、検出突起に押圧されて接点スイッチの出力が切り替わる。これにより、冷蔵庫10が基準位置にあるか否かが検知される。なお、位置センサ37は、接点スイッチ及び検出突起を備える構成に限られず、磁気スイッチ及び磁石を備える構成、あるいは、発光素子を用いた光学式センサ等を採用してもよい。
【0060】
また、冷蔵庫10の庫内には、照明部67が設けられている。照明部67は断熱筐体51(
図9)の庫内に配置されており、LED素子等が用いられる。照明部67の点灯及び消灯は制御部31により制御されている。
【0061】
冷蔵庫10の制御部31は演算部31a及び記憶部31bを有している。
【0062】
各記憶部は、ROM及びRAM等により構成されており、冷蔵庫10が機能するために必要なプログラム、及び該プログラムを実行する際に参照する各種データなどを記憶している。各演算部は、CPU等により構成されており、各記憶部のプログラムを読み出して実行する。これにより、各制御部は各部の動作を制御する。なお、各制御部は、集中制御する単独の制御装置によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御装置によって構成されていてもよい。
【0063】
<冷蔵庫の動作>
冷蔵庫10の動作について、
図3、
図4及び
図13を参照して説明する。この動作は制御部31により制御されている。
【0064】
まず、
図3に示すように、冷蔵庫10が収納部11に収納され、収納部11内の基準位置に配置されている。ここで、冷蔵庫10の電力受電部22が電力供給部21と連結し、電力送電可能に接続する。
【0065】
このとき、位置センサ37は、基準位置にある冷蔵庫10を検知し、この検知情報を制御部31へ出力する。これにより、制御部31は、電力供給部21と電力受電部22が接続され冷蔵庫10の車体70近傍に備えられている蓄電池74とを接続可能であると判定し、電力供給部21を駆動して、電力供給部21から電力受電部22を介して蓄電池74へ電力を供給する。
【0066】
また、温度センサ36からの検知情報が制御部31へ出力される。ここで、温度センサ36により検知された断熱筐体51の庫内の温度が所定温度よりも低ければ、庫内が十分に冷やされている。このため、制御部31は、送風ファン43及び圧縮機44の動作を停止したりして、冷却部40からの冷却空気の供給を制限する。これにより、庫内が過剰に冷却されることを防止し、冷蔵庫10の省エネルギー化を図ることができる。また、制御部31は、温度センサ36からの検知温度に基づき送風ファン43の運転状況を可変させ、冷却部40からの冷却空気の供給を制限してもよい。
【0067】
さらに、扉開閉センサ34からの検知情報が制御部31へ出力される。ここで、扉開閉センサ34により検知された断熱筐体51の扉52が開放していれば、制御部31は、照明部67を点灯すると共に、冷却部40からの冷却空気の供給を制限するように、制御部31は送風ファン43及び圧縮機44を制御する。
【0068】
そして、別に設けられたリモコンを用いて、ユーザが冷蔵庫10の移動を指令する。リビング等の部屋に配置されているWiFi等の電波信号や非可聴域の音波信号等の位置検知手段によりリモコンの位置が部屋内の座標として特定される。この目標位置の位置情報が無線LANを経由して制御部31へ出力される。ここで、目標位置の位置情報はリモコンの位置特定によるユーザの現在地とするのみでなく、部屋の地図情報からユーザが目標位置を自由に選択できるものとしてもよい。なお、このリモコンはスマートフォンやタブレットを用いてもよい。また、リモコンに代えて、ユーザの音声により冷蔵庫10の移動を指令してもよい。この場合、部屋には音声を検知するセンサが設けられている。
【0069】
制御部31は、目標位置の位置情報を得ると、冷蔵庫10の位置センサ37及び扉開閉センサ34から検出結果を取得する。この位置センサ37の検出により冷蔵庫10が基準位置にあり、扉開閉センサ34の検出により扉52が閉鎖していたら、制御部31は、冷蔵庫10の電力受電部22を電力供給部21から分離する。
【0070】
制御部31は、目標位置の位置情報、及び、部屋の地図情報に基づき、目標位置への移動ルートを検索する。部屋の地図情報は、以前に移動した際に測距センサ32から得た検知情報に基づいて演算部31aにより予め作成され、記憶部31bにより記憶されている。例えば、部屋の地図情報は、部屋における家具等の物体の位置を座標等として含んでいる。制御部31は、物体を避けながら、目標位置への最短ルートを移動ルートとして求める。
【0071】
制御部31は、移動ルートが決定すると、モータ73を駆動する。このモータ73により車輪72が回転し、冷蔵庫10が移動し、収納部11内の電力供給部21から分離する。また、制御部31は、移動ルートに従って、一対の前輪の回転差を調整して、冷蔵庫10の移動方向を変化させる。
【0072】
この冷蔵庫10の移動中、記憶部31bに予め記憶されている部屋の地図情報と、測距センサ32によりリアルタイムに検出された情報とが異なる場合、制御部31は、測距センサ32からの検出情報に基づいて地図情報を更新する。これに伴い、制御部31は、更新した地図情報に応じて移動ルートも修正していく。また、制御部31は、測距センサ32からの検出情報に基づいて部屋における冷蔵庫10の位置を特定する。この特定位置と移動ルートに応じて、制御部31は、モータ73を制御し、移動ルートに沿って冷蔵庫10を移動する。
【0073】
また、移動中に、冷蔵庫10の移動ルートに人等の物体(障害物)が突然、現れると、測距センサ32もしくは障害物センサ33がこの物体を検知し、検知結果を制御部31へ出力する。制御部31は、この検知結果に基づいて、モータ73の駆動を一時停止したり、移動ルートを変更したりする。これにより、冷蔵庫10が物体に衝突することを防止することができる。
【0074】
なお、測距センサ32についても、物体の位置が特定できるため、測距センサ32が移動ルート上の物体を検知し、この検知結果に基づき制御部31は冷蔵庫10を停止することもできる。このように、障害物センサ33及び測距センサ32を障害物の検知センサとして用いることもできる。
【0075】
さらに、例えば、測距センサ32の故障等により、制御部31が正確な冷蔵庫10の特定位置及び地図情報が得られない場合がある。このような場合に、冷蔵庫10が物体に接近することがある。ただし、障害物センサ33がこの物体を検知することにより、制御部31が障害物センサ33からの検知結果に基づき、冷蔵庫10を停止することができる。このため、超音波センサは、冷蔵庫10のフェイルセーフを担保することができる。
【0076】
そして、冷蔵庫10が目標位置に達すると、制御部31はモータ73を停止する。ここで、冷蔵庫10の断熱筐体51の天面にある扉開ボタン54がユーザにより押されるもしくはなんらかの通信手段で扉開の信号が入ると、扉52が開き、断熱筐体51の扉52が開放される。この際、
図9に示すように、棚61が上方へ移動して庫内から前方へ突出する。このような冷蔵庫10の高さは低いが、棚61の位置が上昇することにより、棚61に載った皿等をユーザが取り易くなる。
【0077】
また、扉開ボタン54が押されるに伴い、照明部67が点灯する。これにより、断熱筐体51の庫内が照明部67に照らされて、ユーザは庫内を確認し易くなる。
【0078】
そして、断熱筐体51の天面にある扉閉ボタン55がユーザにより押されると、扉52が閉じ、断熱筐体51の扉52が閉鎖される。さらに、断熱筐体51の天面にある指定位置復帰ボタン56がユーザにより押されると、制御部31は、収納部11内の基準位置を目標位置として、記憶部31bの地図情報に基づき移動ルートを作成する。
この際に、制御部31が新たな目標位置の位置情報を取得した場合には、現在地から直接新たな目標位置に移動してもよい。また、指定位置復帰ボタン56が一定時間(例えば、1時間)以上を押されなかった場合や、または温度センサ36が基準温度以上を検知した場合には、ユーザへアラーム等の音声やリモコンへの通信表示等による通知をしたうえで、収納部11内の基準位置に戻ってもよい。
【0079】
制御部31は、扉開閉センサ34からの検知情報に基づき、扉52が閉じていることを確認してから、測距センサ32からの検知結果に基づき移動ルートに従ってモータ73を駆動する。これにより、冷蔵庫10は収納部11内の基準位置に戻ると、位置センサ37は、冷蔵庫10が基準位置に到達したことを検知し、この検知結果を制御部31へ出力する。制御部31はモータ73の駆動を停止し、制御部31は電力供給部21から電力受電部22を介して蓄電池74に電力を供給させる。
【0080】
また、温度センサ36により検出された庫内の温度が所定の温度よりも高く、扉開閉センサ34により検出された扉52が閉鎖されていれば、制御部31は冷却運転を行う。これにより、断熱筐体51の収納区画50と冷却部40の冷却流路42とが連通し、冷却部40による冷却空気が冷却流路42の一端の流入口63から収納区画50に供給される。これにより、収納区画50に冷却空気が流入し、庫内が冷却される。そして、庫内の空気は、庫内に通ずる流出口64から冷却部40の下部に戻り、再び冷却部40の蒸発器46により冷却される。
(その他の実施の形態)
【0081】
上記実施の形態では、冷蔵庫10において車体70にモータ73が搭載されており、冷蔵庫10がモータ73により自律走行した。ただし、冷蔵庫10の構成はこれに限定されない。例えば、車体70にモータ73が設けられていなくてもよい。この場合、ユーザが冷蔵庫10を引っ張る等して移動させる。
【0082】
上記実施の形態では、冷蔵庫10に車体70が備えられていたが、備えられていなくてもよい。この場合、ユーザが冷蔵庫10を台車に搭載し、これを引っ張る等して移動させることができる。
【0083】
上記実施の形態では、冷蔵庫10に、扉開閉センサ34、温度センサ36及び位置センサ37が設けられていた。ただし、いずれのセンサも本発明の必須の構成要素ではなく、冷蔵庫10に、扉開閉センサ34が設けられていなくてもよいし、温度センサ36が設けられていなくてもよいし、位置センサ37が設けられていなくてもよい。
【0084】
上記実施の形態では、測距センサ32からの検知結果に基づき移動ルートに従って冷蔵庫10は収納部11内の基準位置に戻った。ただし、冷蔵庫10は収納部11内の基準位置に復帰する方法はこれに限定されない。例えば、収納部11内に基準位置へ誘導する信号を発信する発信部材が別途、設けられており、冷蔵庫10にこの誘導信号を受信する受信部材が別途、設けられている。冷蔵庫10が、収納部11の入口等の所定位置に達すると、受信部材が発信部材からの誘導信号を受信しながら、基準位置に移動するという形態でもよく、使用環境に応じて、より適切な方法を選択すればよい。
【0085】
また、別の形態において、冷蔵庫10は、使用者の持っているリモコンや携帯端末などの位置を特定し、既存に保存されているMAPを利用しながら使用者近辺に走行する自律走行プラグラムでもよい。
【0086】
上記実施の形態において、冷蔵庫10の天面には、IHヒータ等の調理部がさらに搭載されていてもよい。この場合、冷蔵庫として、より利便性が向上する。この料理部の電力は、蓄電池74から供給されてもよい。
【0087】
上記実施の形態において、収納区画50もしくは、冷気が収納区画に流れる流入口付近に蓄例材等の補助冷却手段を備えてもよい。この場合、走行中の温度上昇がさらに抑制され、長時間走行、維持が可能となる。
【0088】
上記実施の形態において、冷蔵庫としたがマイナス20度前後で温度維持管理されている冷凍庫でもよい。
【0089】
なお、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の要旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る冷蔵庫では、移動中の水漏れを防止することができる冷蔵庫等として有用である。
【符号の説明】
【0091】
10 :冷蔵庫
21 :電力供給部
32 :測距センサ
33 :障害物センサ
34 :扉開閉センサ
36 :温度センサ
37 :位置センサ
40 :冷却部
50 :収納区画
51 :断熱筐体
52 :扉
61 :棚
63 :流入口
64 :流出口
70 :車体
72 :車輪
73 :モータ
74 :蓄電池
82 :タンク