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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】アンテナ装置、カバン、および、カバー
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/46 20060101AFI20230519BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20230519BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230519BHJP
   A45F 3/04 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01Q1/46
H01Q9/16
H01Q1/22 Z
A45F3/04 400N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019059177
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161976
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 英徳
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 辰一
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/082591(WO,A1)
【文献】米国特許第04611214(US,A)
【文献】特開2007-096475(JP,A)
【文献】実開昭54-111444(JP,U)
【文献】特開2000-252731(JP,A)
【文献】特開2016-021729(JP,A)
【文献】特開2007-049249(JP,A)
【文献】特開2002-305410(JP,A)
【文献】特開2006-197072(JP,A)
【文献】特許第4281023(JP,B1)
【文献】特開2009-049570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
A45C 1/00-15/08
A45F 3/00
A45F 3/02
A45F 3/04
A45F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアンテナ部分と、
第2のアンテナ部分と、
前記第1のアンテナ部分と前記第2のアンテナ部分とを接続する接続部分とを有し、
前記第2のアンテナ部分および前記接続部分は、同軸ケーブルにより構成されており、
前記第1のアンテナ部分は、前記接続部分の内部導体にバランを介することなく接続された第1の導体部分と、前記接続部分の外部導体にバランを介することなく接続された第2の導体部分とを有し、
前記第1のアンテナ部分の少なくとも一部は、前記第2のアンテナ部分の少なくとも一部と所定の間隔をあけて並行するよう配置されており、
前記所定の間隔は、前記第1のアンテナ部分、および、前記第2のアンテナ部分から放射される電波の波長の2分の1の間隔であり、前記接続部分は、前記電波の波長となる長さを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第2のアンテナ部分および前記接続部分は1本の同軸ケーブルにより構成されていることを特徴とする請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記接続部分は、折り曲げられた2箇所を境として第1の部分と第2の部分と前記第1の部分と前記第2の部分の間の第3の部分とに分けられ、前記第1の部分、および、前記第2の部分は、それぞれ前記第1のアンテナ部分の少なくとも一部、および、前記第2のアンテナ部分と平行に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の導体部分と前記第2の導体部分とは、前記第1の導体部分と前記第2の導体部分との間のなす角度が直角となるよう構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の導体部分と前記第2の導体部分とは、直線状に並ぶように配置されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のアンテナ装置を備えるカバン。
【請求項7】
カバンに取り付けられるカバーであって、
請求項1からのいずれか1項に記載のアンテナ装置を備えるカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置、カバン、および、カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本のアンテナエレメントを用いたアンテナシステムにおいて、アンテナエレメントの位相を調整することにより、アンテナシステムの前方向利得を改善する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-75341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるようなアンテナシステムでは、アンテナやケーブルなどの平衡回路と送受信機などの不平衡回路との間に、平衡-不平衡変換器であるバランが設けられている。そのため、アンテナシステムの小型化やコストの面で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、小型化および低コスト化を容易に実現することができるアンテナ装置、カバン、および、カバンに取り付けられるカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るアンテナ装置は、第1のアンテナ部分と、第2のアンテナ部分と、前記第1のアンテナ部分と前記第2のアンテナ部分とを接続する接続部分とを有し、前記第2のアンテナ部分および前記接続部分は、同軸ケーブルにより構成されており、前記第1のアンテナ部分は、前記接続部分の内部導体にバランを介することなく接続された第1の導体部分と、前記接続部分の外部導体にバランを介することなく接続された第2の導体部分とを有し、前記第1のアンテナ部分の少なくとも一部は、前記第2のアンテナ部分の少なくとも一部と所定の間隔をあけて並行するよう配置されている。
【0007】
本開示の一態様に係るカバンは、上記アンテナ装置を備える。
【0008】
本開示の一態様に係るカバーは、カバンに取り付けられるカバーであって、上記アンテナ装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、小型化および低コスト化を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係るアンテナ装置を備えたカバンの一例を示す斜視図
図2】アンテナ装置の構成の一例を示す斜視図
図3A】同軸ケーブルの外部導体に電流が流れる原理について説明する図
図3B】同軸ケーブルの外部導体に電流が流れる原理について説明する図
図4A】アンテナ装置の指向性の調整について説明する図
図4B】アンテナ装置の指向性の調整について説明する図
図4C】アンテナ装置の指向性の調整について説明する図
図4D】アンテナ装置の指向性の調整について説明する図
図5A】アンテナ装置の指向性についてのシミュレーション結果を示す図
図5B】アンテナ装置の指向性についてのシミュレーション結果を示す図
図5C】アンテナ装置の指向性についてのシミュレーション結果を示す図
図5D】アンテナ装置の指向性についてのシミュレーション結果を示す図
図6】アンテナ装置の構成の別の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るアンテナ装置10を備えたカバン1の一例を示す斜視図である。カバン1は、ランドセル(スクールバッグ)、リュックサック、ポーチなど、どのような形態のものであってもよい。
【0013】
図1に示すように、カバン1は、上側に開口(図示省略)を有する収容部2と、収容部2に設けられた背負いベルト3とを備える。
【0014】
以下では、収容部2において背負いベルト3が設けられる側をカバン1の前側とし、カバン1の前後左右方向を定義することとする。
【0015】
アンテナ装置10は、信号の送信、および、外部の無線通信装置から送信される信号の受信を行う装置である。外部の無線通信装置は、例えば、高度交通システム(ITS:Intelligent Transport System)において用いられる無線通信装置である。
【0016】
外部の無線通信装置は、車両、路側帯および道路標識などに備えられる。車両に備えられる無線通信装置との通信は、V2X通信と呼ばれることもある。
【0017】
このアンテナ装置10は、第1のアンテナ部分11と、第2のアンテナ部分12と、接続部分13とを有する。第2のアンテナ部分12には、アンテナ装置10を用いて無線通信を行う無線部14が接続される。
【0018】
ここで、第2のアンテナ部分12は、例えば、地表面に対して垂直な水平面垂直偏波の信号の送信、および/または、受信を行う。第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12が送信、および/または、受信する周波数は、例えば、V2X通信で用いられる760MHz帯、または、5.9GHz帯であってよい。
【0019】
つぎに、アンテナ装置10の構成について詳しく説明する。図2は、アンテナ装置10の構成の一例を示す斜視図である。
【0020】
このアンテナ装置10では、第2のアンテナ部分12、および、接続部分13は同軸ケーブルにより構成されている。
【0021】
そして、第1のアンテナ部分11は、同軸ケーブルから構成される接続部分13の内部導体にバランを介することなく接続された第1の導体部分11aと、接続部分13の外部導体にバランを介することなく接続された第2の導体部分11bとを有する。
【0022】
そして、第1の導体部分11aと第2の導体部分11bとは、それらのなす角度が直角となるよう配置されている。
【0023】
第1のアンテナ部分11に同軸ケーブルで給電が行われると、第2のアンテナ部分12を構成する同軸ケーブルの外部導体に電流が流れる。これにより、第2のアンテナ部分12から電波が放射される。
【0024】
なお、第2のアンテナ部分12の長さは、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波の波長の4分の1から2分の1の長さとすることが望ましい。
【0025】
また、図2では、接続部分13が2箇所で折り曲げられ、それらの箇所を境として接続部分13の両端にある第1の部分13aと第2の部分13b、および、それらの間の第3の部分が形成されている。
【0026】
また、第1の部分13a、および、第2の部分13bは、それぞれ第1のアンテナ部分11の少なくとも一部である第1の導体部分11a、および、第2のアンテナ部分12と平行に配置されている。
【0027】
しかしながら、第1の部分13aと第2の部分13bとは緩やかに曲げられて形成されることとしてもよい。
【0028】
なお、接続部分13と第2のアンテナ部分12とを1本の同軸ケーブルで構成してもよいし、第1の導体部分11aと接続部分13と第2のアンテナ部分12とを1本の同軸ケーブルで構成してもよい。
【0029】
図3A図3Bは、同軸ケーブル20の外部導体20aに電流が流れる原理について説明する図である。図3Aは、ダイポールアンテナ21と同軸ケーブル20とをバラン22を介して接続した場合を示しており、図3Bは、ダイポールアンテナ21と同軸ケーブル20とをバラン22を介さずに接続した場合を示している。
【0030】
図3Aの場合、ダイポールアンテナ21と同軸ケーブル20との間にバラン22があるため、同軸ケーブル20の外部導体20aには、内部導体20bに流れる電流Iiと同じ大きさで逆向きの電流Io(=Ii)が流れる。
【0031】
図3Bの場合、ダイポールアンテナ21と同軸ケーブル20との間にバラン22が存在しないので、同軸ケーブル20の外部導体20aには、同軸ケーブル20の内部導体20bに流れる電流Iiと同じ大きさで逆向きの電流Io(=Ii)が流れるとともに、外部導体20aの外側には、内部導体20bに流れる電流と異なる大きさで同じ方向の電流Io’が流れる。
【0032】
アンテナ装置10では、バラン22を用いずに同軸ケーブル20にあえてこのような電流Io’を流すことにより、第2のアンテナ部分12から電波を放射できるようにしている。
【0033】
また、図2に示すように、第1のアンテナ部分11の少なくとも一部は、第2のアンテナ部分12と所定の間隔をあけて並行するよう配置されている。
【0034】
なお、第1のアンテナ部分11の少なくとも一部が、第2のアンテナ部分12の少なくとも一部と所定の間隔をあけて並行するよう配置されていることとしてもよい。
【0035】
図2の例では、この間隔は、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波の波長の2分の1の間隔である。この間隔と接続部分13の長さを調整することにより、アンテナ装置10の指向性を調整することができる。
【0036】
図4A図4Dは、アンテナ装置10の指向性の調整について説明する図である。図4A図4Dにおいて、太い実線は、第1のアンテナ部分11から放射される電波の谷を示し、太い点線は、第1のアンテナ部分11から放射される電波の山を示し、細い実線は、第2のアンテナ部分12から放射される電波の谷を示し、細い点線は、第2のアンテナ部分12から放射される電波の山を示している。
【0037】
図4A図4Dの例では、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔が、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波の波長λの2分の1の間隔とされている。
【0038】
また、図4Aは、第1のアンテナ部分11から放射される電波と第2のアンテナ部分12から放射される電波との間の位相差がない場合、図4Bは、上記位相差が4分の1波長である場合、図4Cは、上記位相差が2分の1波長である場合、図4Dは、上記位相差が4分の3波長である場合の例である。
【0039】
図4Aでは、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔が放射電波の2分の1波長の長さであり、かつ、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間に位相差がない。
【0040】
この場合、第1のアンテナ部分11の位置と第2のアンテナ部分12の位置とを結ぶ方向(白抜きの矢印で示されるカバン1の前後方向)においては電波が弱め合い、その方向と直交する方向(黒の矢印で示されるカバン1の左右方向)においては電波が強め合う。
【0041】
図4Bでは、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔が放射電波の2分の1波長の長さであり、かつ、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間には4分の1波長の位相差がある。
【0042】
この場合、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12の位置からみて斜め前方(黒の矢印で示されるカバン1の斜め前方)においては電波が強め合い、斜め後方(白抜きの矢印で示されるカバン1の斜め後方)においては電波が弱め合う。
【0043】
図4Cでは、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔が放射電波の2分の1波長の長さであり、かつ、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間には2分の1波長の位相差がある。
【0044】
この場合、第1のアンテナ部分11の位置と第2のアンテナ部分12の位置とを結ぶ方向(黒の矢印で示されるカバン1の前後方向)においては電波が強め合い、その方向と直交する方向(白抜きの矢印で示されるカバン1の左右方向)においては電波が弱め合う。
【0045】
図4Dでは、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔が放射電波の2分の1波長の長さであり、かつ、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間には4分の3波長の位相差がある。
【0046】
この場合、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12の位置からみて斜め前方(白抜きの矢印で示されるカバン1の斜め前方)においては電波が弱め合い、斜め後方(黒の矢印で示されるカバン1の斜め後方)においては電波が強め合う。
【0047】
ここで、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差は、同軸ケーブルで構成される接続部分13の長さで調整できる。これにより、アンテナ装置10の指向性を調整することができる。
【0048】
たとえば、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波の位相差を0にするには、図2に示した第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔(接続部分13の長さ)を放射電波の2分の1波長の間隔としつつ、接続部分13の第1の部分13a、および、第2の部分13bの長さを0とする。
【0049】
この場合、接続部分13の長さに起因して2分の1波長分の位相差が生じることとなるが、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12とはU字型となったアンテナ装置10の両端部分にあるため、位相が2分の1波長分逆方向にずれ、全体でみると第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差が0になる。
【0050】
また、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差を4分の1波長にするには、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔を放射電波の2分の1波長の長さとしつつ、接続部分13の第1の部分13a、および、第2の部分13bの長さの合計が4分の1波長となるようにする。
【0051】
この場合、接続部分13の長さに起因する位相差が4分の3波長となり、U字型のアンテナ構造に起因する位相差がマイナス2分の1波長となるため、全体でみると第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差は4分の1波長となる。
【0052】
また、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差を2分の1波長にするには、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔を放射電波の2分の1波長の長さとしつつ、図2に示した接続部分13の第1の部分13a、および、第2の部分13bの長さの合計も2分の1波長となるようにする。
【0053】
この場合、接続部分13の長さに起因する位相差が1波長となり、U字型のアンテナ構造に起因する位相差がマイナス2分の1波長となるため、全体でみると第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差は2分の1波長となる。
【0054】
さらに、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差を4分の3波長にするには、第1のアンテナ部分11と第2のアンテナ部分12との間隔を放射電波の2分の1波長の長さとしつつ、図2に示した接続部分13の第1の部分13a、および、第2の部分13bの長さの合計が4分の3波長となるようにする。
【0055】
この場合、接続部分13の長さに起因する位相差が4分の5波長となり、U字型のアンテナ構造に起因する位相差がマイナス2分の1波長となるため、全体でみると第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差は4分の3波長となる。
【0056】
以上のように、接続部分13の長さを調整することにより、アンテナ装置10の指向性をアンテナ装置10の用途に応じて調整することができる。
【0057】
特に、図4Cの場合は、アンテナ装置10をカバン1に取り付けた場合に人体の影響により電波が弱くなりがちなカバン1の前後方向における電波の強度を強くできるという利点がある。
【0058】
つぎに、アンテナ装置10の指向性についてのシミュレーション結果について説明する。図5A図5Dは、アンテナ装置10の指向性についてのシミュレーション結果を示す図である。図5A図5Dは、図4A図4Dで説明した各状況にそれぞれ対応するシミュレーション結果である。
【0059】
図5A図5Dにおいて、0度方向、90度方向、180度方向、270度方向は、それぞれカバン1の前、左、後ろ、右方向を示している。
【0060】
図5A図5Dに示されるように、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波間の位相差が0、4分の1波長、2分の1波長、4分の3波長の場合、アンテナ装置10からそれぞれ、カバン1の左右方向、斜め前方向、前後方向、斜め後ろ方向に強い電波が放射される。
【0061】
図6は、アンテナ装置10の構成の別の一例を示す斜視図である。図6において、図2の構成と対応する部分には、同一の符号を付している。
【0062】
図6に示すように、このアンテナ装置10は、第1のアンテナ部分11と、第2のアンテナ部分12と、接続部分13とを有する。
【0063】
第1のアンテナ部分11は、同軸ケーブルの内部導体にバランを介することなく接続された第1の導体部分11aと、同軸ケーブルの外部導体にバランを介することなく接続された第2の導体部分11bとを有する。
【0064】
そして、第1の導体部分11aと第2の導体部分11bとは、直線状に並ぶように配置されている。
【0065】
また、第2のアンテナ部分12、および、接続部分13は同軸ケーブルにより構成されている。
【0066】
第1のアンテナ部分11に同軸ケーブルで給電が行われる場合、第2のアンテナ部分12を構成する同軸ケーブルの外部導体には電流が流れる。これにより、第2のアンテナ部分12から電波が放射される。
【0067】
また、図6に示すように、第1のアンテナ部分11の少なくとも一部は、第2のアンテナ部分12の少なくとも一部と所定の間隔をあけて並行するよう配置されている。図6の例では、この間隔は、第1のアンテナ部分11、および、第2のアンテナ部分12から放射される電波の波長の2分の1の間隔とされている。
【0068】
この間隔と接続部分13の長さを調整することにより、図2に示したアンテナ装置10と同様に、アンテナ装置10の指向性を調整することができる。
【0069】
なお、上記実施形態において記載された電波の波長は、アンテナ装置10が送受信する電波の真空中の波長であってもよいし、波長短縮率を考慮した波長である実効波長であってもよい。
【0070】
また、図1では、第2のアンテナ部分12がカバン1の背負いベルト3が取り付けられる面に設けられることとしたが、第2のアンテナ部分12が背負いベルト3に設けられることとしてもよい。
【0071】
また、第1のアンテナ部分11がカバン1の背負いベルト3が取り付けられる面に設けられ、第2のアンテナ部分12が背負いベルト3に設けられることとしてもよい。
【0072】
また、カバン1以外にも、アンテナ装置10を衣服などの他の物品に設けることとしてもよい。
【0073】
以上説明してきたように、本実施形態におけるアンテナ装置10では、同軸ケーブルとダイポールアンテナとの接続にバランを用いず、同軸ケーブルに流れる電流を利用して第2のアンテナ部分12から電波を放射することとした。そのため、アンテナ装置10の小型化および低コスト化を容易に実現することができる。
【0074】
また、接続部分13を構成する同軸ケーブルの長さを変更することにより、容易にアンテナ装置10の指向性を変更することができる。また、簡単に手に入り、柔軟性を有する同軸ケーブルを用いてアンテナ装置10を構成するので、アンテナ装置10の低コスト化を容易に図ることができる。
【0075】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態は例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、上述した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0077】
本開示におけるアンテナ装置は、第1のアンテナ部分と、第2のアンテナ部分と、前記第1のアンテナ部分と前記第2のアンテナ部分とを接続する接続部分とを有し、前記第2のアンテナ部分および前記接続部分は、同軸ケーブルにより構成されており、前記第1のアンテナ部分は、前記接続部分の内部導体にバランを介することなく接続された第1の導体部分と、前記接続部分の外部導体にバランを介することなく接続された第2の導体部分とを有し、前記第1のアンテナ部分の少なくとも一部は、前記第2のアンテナ部分の少なくとも一部と所定の間隔をあけて並行するよう配置されている。
【0078】
本開示のアンテナ装置において、前記所定の間隔は、前記第1のアンテナ部分、および、前記第2のアンテナ部分から放射される電波の波長の2分の1の間隔であり、前記接続部分は、前記電波の波長となる長さを有する。
【0079】
本開示のアンテナ装置において、前記第2のアンテナ部分および前記接続部分は1本の同軸ケーブルにより構成されている。
【0080】
本開示のアンテナ装置において、前記接続部分は、折り曲げられた2箇所を境として第1の部分と第2の部分と前記第1の部分と前記第2の部分の間の第3の部分とに分けられ、前記第1の部分、および、前記第2の部分は、それぞれ前記第1のアンテナ部分の少なくとも一部、および、前記第2のアンテナ部分と平行に配置されている。
【0081】
本開示のアンテナ装置において、前記第1の導体部分と前記第2の導体部分とは、前記第1の導体部分と前記第2の導体部分との間のなす角度が直角となるよう構成されている。
【0082】
本開示のアンテナ装置において、前記第1の導体部分と前記第2の導体部分とは、直線状に並ぶように配置されている。
【0083】
本開示におけるカバンは、上記アンテナ装置を備える。
【0084】
本開示におけるカバーは、上記アンテナ装置を備える。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本開示に係るアンテナ装置は、カバン等の携行品に設けるのに好適である。
【符号の説明】
【0086】
1 カバン
2 収容部
3 背負いベルト
10 アンテナ装置
11 第1のアンテナ部分
11a 第1の導体部分
11b 第2の導体部分
12 第2のアンテナ部分
13 接続部分
13a 第1の部分
13b 第2の部分
14 無線部
20 同軸ケーブル
20a 外部導体
20b 内部導体
21 ダイポールアンテナ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6