(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ドラム搬送部材
(51)【国際特許分類】
B65D 85/04 20060101AFI20230519BHJP
B65D 19/44 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
B65D85/04
B65D19/44 A
(21)【出願番号】P 2019102140
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
(72)【発明者】
【氏名】吉田 攻一郎
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-004485(JP,U)
【文献】特開2019-085159(JP,A)
【文献】特開2017-128345(JP,A)
【文献】実開平04-048133(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/00-85/90
B65D 19/00-19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン状に形成されるドラムの第1フランジ部が載置される第1溝部と、
前記ドラムの第2フランジ部が載置される複数の第2溝部と、
を有
し、
前記第1溝部及び前記第2溝部の底部は、円弧状に形成され、
各前記第2溝部の底部は、それぞれ異なる曲率で形成されることを特徴とするドラム搬送部材。
【請求項2】
前記第1溝部の底部の曲率は、複数の前記第2溝部の底部のうち最小曲率の前記第2溝部の底部の曲率と同じであることを特徴とする請求項1に記載のドラム搬送部材。
【請求項3】
前記第1溝部及び前記第2溝部は、平板状に形成されるトレイ本体に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドラム搬送部材。
【請求項4】
前記トレイ本体は、載置される前記ドラムの軸方向に延設される凹曲面溝が形成されることを特徴とする請求項3に記載のドラム搬送部材。
【請求項5】
前記トレイ本体の前記ドラムの軸方向における対向する縁部には、それぞれ切欠部が形成されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のドラム搬送部材。
【請求項6】
2組の前記第1溝部と複数の前記第2溝部との組み合わせが対称に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか記載のドラム搬送部材。
【請求項7】
複数の前記第2溝部のうち少なくとも一つは、前記第1溝部の溝幅の2倍の幅以上の溝幅で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか記載のドラム搬送部材。
【請求項8】
ボビン状に形成されるドラムの第1フランジ部が載置される第1溝部と、
前記ドラムの第2フランジ部が載置される複数の第2溝部と、
を有
し、
前記第1溝部及び前記第2溝部の底部は、円弧状に形成され、
各前記第2溝部の底部は、それぞれ異なる曲率で形成されることを特徴とする前記ドラムの搬送用のトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムを載置して搬送するためのドラム搬送部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線やホース等の線条体が巻回されたボビン状のドラムを載置して搬送するためのドラム搬送部材が開示される。例えば、特許文献1に開示されるドラム搬送部材であるコンテナは、フォークリフトの爪を挿入可能な底パレットの上面側に、載置されるドラムの軸心方向に延設されて、複数の係止孔が形成された傾斜受面を備えて向かい合う一対の受け部が形成される。ドラムは、フランジ部が一対の受け部と当接するように載置される。そして、ドラムのフランジ部の径に合わせてストッパー爪を係止孔に差し込むことで、ドラムが位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線条体が巻回されるボビン状のドラムは、その線条体の径や長さに応じて種々の大きさのフランジ部の外径(ドラム径)、フランジ部間の距離(ドラム幅)で形成される。従って、特許文献1に開示されるドラム搬送部材では、例えばドラム径に合わせて、都度、ストッパー爪を係止孔に差し込む必要があり、多品種少量生産の現状においては、ストッパー爪の位置変更を度々行う必要が生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、搬送作業の効率を向上するドラム搬送部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドラム搬送部材は、ボビン状に形成されるドラムの第1フランジ部が載置される第1溝部と、前記ドラムの第2フランジ部が載置される複数の第2溝部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送作業の効率を向上するドラム搬送部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材であるコンテナの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材であるコンテナの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材が備えるトレイを上面側から見た斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材が備えるトレイを下面側から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材が備えるトレイに係る
図3のV-V断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材が備えるトレイにドラムが載置される状態を示す正面図であり、トレイは
図5に相当する断面図で表しており、(a)のドラム径が最も小さく、(b)のドラム径が次に大きく、(c)のドラム径がその次に大きく、(a)~(c)のドラム幅は同じである。
【
図7】本発明の実施形態に係るドラム搬送部材が備えるトレイにドラムが載置される状態を示す正面図であり、トレイは
図5に相当する断面図で表しており、(a)のドラム径、ドラム幅よりも(b)のドラム径、ドラム幅が大きい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1,2には、線条体である電線が巻回されたドラム100を2個収納し、搬送しやすいよう形成したドラム搬送部材とされるコンテナ1が示される。コンテナ1は、パレット10、トレイ20、スリーブ30、リッド40を備える。
【0010】
コンテナ1は、収納されるドラム100の軸心L方向を長手方向とする平面視略長矩形の箱状に形成される。略平板状のパレット10は、下面に複数の突起部11が所定の間隔をもって形成される。突起部11間には、フォークリフト等による搬送時にフォークリフト等の爪が挿入される。パレット10の上面には、略平板状のトレイ20が載置される。
図1,2の例では、トレイ20上にドラム100が2個載置される。パレット10の外縁には、略角筒状のスリーブ30が立設する。スリーブ30の上面には、略平板状のリッド40が配置される。スリーブ30は、長手方向の面において、パレット10及びリッド40と、各4か所に形成される固定部10a,40aを介して固定される。
【0011】
ドラム100は、ドラム幅W、ドラム径Dとされるボビン状に形成される。詳細には、ドラム100の軸心L回りに形成される筒部105の両端に第1フランジ部101と第2フランジ部102とが形成される。第1フランジ部101と第2フランジ部102は同径(ドラム径D)で、かつ、厚さTも同じである。ドラム100の中心には貫通孔が形成されて、該貫通孔からトレイ20の下面に亘ってバンド108が通されて、ドラム100はトレイ20と固定される。
【0012】
次に、
図3~
図5に基づいて、トレイ20について詳細に説明する。トレイ20は、平面視略長矩形の略平板状に形成されるトレイ本体21を備える。トレイ本体21は、後述の第1溝部210や第2溝部220が形成される略平板状の平面部21aと、平面部21aの外縁から垂直に立設する壁部21bとを備える。壁部21bは、平面部21aの外周に沿って環状に形成される。トレイ本体21の長手方向(すなわちドラム100の軸心L方向)と平行なトレイ本体21の2か所の壁部21bの端部からは、それぞれ板状の突出板22が外方向に突出して形成される。トレイ本体21の短手方向(すなわちドラム100の軸心Lと直交する方向)と平行な壁部21bには、平面視略台形形状の切欠部23が形成される。切欠部23を介して、前述のバンド108がドラム100に掛けられる。切欠部23により、バンド108がトレイ本体21を屈折する部位をドラム100の第1フランジ部101の直下に近付けることができるので、バンド108を掛けた際のトレイ20の撓みを低減することができる。本実施形態においては、切欠部23は、第1フランジ部101が載置される第1溝部210と連通している。なお、突出板22は、トレイ本体21の短手方向の壁部21b及び切欠部23に亘って小さく突出するリブ状部22aと平坦面が連続して接続される。このようにして、突出板22及び切欠部23は、それぞれ対向して2か所に設けられる。
【0013】
トレイ本体21の平面部21aの外表面には、軸心L方向と直交する方向に延設される複数の溝部(第1溝部210、第2溝部220)が形成される。長手方向両最外側には、第1溝部210が配置される。第1溝部210間には、第1溝部210から長手方向に所定距離離れて複数の第2溝部220(本実施形態では5本の第2溝部221,222,223)が配置される。第2溝部223は、トレイ本体21の長手方向略中央に配置される。第1溝部210と所定距離離れて隣接する位置には第2溝部221が配置される。第2溝部221と中央の第2溝部223との間には第2溝部222が配置される。第1溝部210と第2溝部221,222との組み合わせは、トレイ本体21において、中央の第2溝部223を挟んで対称に配置される。
【0014】
第1溝部210及び第2溝部220は、各溝(第1溝部210及び第2溝部220)の底部210a,221a,222a,223aがトレイ本体21の短手方向に円弧状に形成される。また、第1溝部210と第2溝部222の溝幅は略同等とされ、第2溝部221,223の溝幅は、第1溝部210(第2溝部222)の約2倍の幅とされる。第1溝部210及び第2溝部220は、平面部21aから下方に突出するように形成される。
図5に示すように、第1溝部210及び第2溝部220が突出する下端、突出板22の下面、壁部21bの端部、リブ状部22aの下面は、略同一平面となるよう形成される。従って、第1溝部210及び第2溝部220が下方に突出する下端は、突出板22の下面等よりも突出することがない。
【0015】
また、第1溝部210及び各第2溝部220の各側面210b,221b,222b,223bは、上面側に向けて拡開するテーパ状に形成される。
【0016】
トレイ本体21には、ドラム100の軸心L方向に凹曲面溝28が延設される。凹曲面溝28は、トレイ本体21の平面部21aの上面上に比較的浅く形成されて、トレイ本体21の短手方向に円弧状に形成される。凹曲面溝28の曲率は、溝部(第1溝部210及び第2溝部220)のうち最も曲率が小さい第1溝部210及び第2溝部223の各底部210a,223aの曲率よりも小さい。凹曲面溝28や突出板22により、トレイ本体21の短辺が向かい合う方向の剛性が高められる。
【0017】
ここで、ドラム100は、巻回する電線の径や巻き量に応じて、ドラム径D(第1フランジ部101、第2フランジ部102の径)及びドラム幅Wが異なるドラム100が用意される。本実施形態に係るコンテナ1には、ドラム100が2個又は3個が収納可能とされる。例えば、
図6(a)~(c)に示すドラム110,120,130は、3個のドラム110,120,130がコンテナ1に収納される。一方、
図7(a),(b)に示すドラム140,150は、それぞれ2個のドラム140,150がコンテナ1に収納される。
【0018】
なお、
図6及び
図7においては、ドラム110,120,130,140,150が載置されている様子を分かりやすくするため、各ドラム110,120,130,140,150とトレイ20のみを示している。
【0019】
図6(a)~(c)のドラム110,120,130のドラム幅W1,W2,W3は、同じ幅で形成される。ドラム110,120,130のドラム径D1,D2,D3は、D1<D2<D3で形成される。一方、
図7(a),(b)に示すドラム140,150のドラム幅W4,W5は、W4<W5で形成され、ドラム径D4,D5はD4<D5で形成される。ドラム110,120,130,140,150についてのドラム幅W1,W2,W3,W4,W5、ドラム径D1,D2,D3,D4,D5についてまとめると、W1=W2=W3<W4<W5、D1<D2<D3<D4<D5となるよう形成される。なお、ドラム110,120,130,140,150におけるフランジ部(第1フランジ部111,121,131,141,151、第2フランジ部112,122,132,142,152)の厚さTは同じである。
【0020】
図6(a)~(c)の3個並んだドラム110,120,130の両端のドラム110,120,130における一方のフランジ部である第1フランジ部111,121,131は、第1溝部210に載置される。両端のドラム110,120,130における他方のフランジ部である第2フランジ部112,122,132は、複数の第2溝部220のうち、第1溝部210と隣り合う第2溝部221に載置される。中央のドラム110,120,130における両フランジ部(第1フランジ部111,121,131、第2フランジ部112,122,132)は、両端のドラム110,120,130の第2フランジ部112,122,132と共に第2溝部221に載置される。従って、第2溝部220のうち少なくとも一つである第2溝部221は、第1フランジ部101(111,121,131)と第2フランジ部102(112,122,132)とを合算した幅2T以上の溝幅で形成される。
【0021】
一方、
図7(a),(b)の2個並んだドラム140,150においても、第1フランジ部141,151は、第1溝部210に載置される。
図7(a)のドラム140の第2フランジ部142は、中央の第2溝部223と、第1溝部210と隣り合う第2溝部221との間に配置される第2溝部222に載置される。
図7(b)のドラム150の第2フランジ部152は、中央の第2溝部223に載置される。第2溝部223は、2個のドラム150の第2フランジ部152が載置されるように、2つの第2フランジ部152を合算した幅以上の溝幅2Tで形成される。
【0022】
本実施形態においては、第2溝部221は、ドラム110,120,130のドラム径D1,D2,D3に対応して形成される。すなわち、第2溝部221は、ドラム110,120,130が載置されるので、底部221aの円弧の径は、ドラム径D1,D2,D3のうち一番大きいドラム130のドラム径D3と略同一の径に設定される。また、第2溝部222は、ドラム140のみが載置されるので、第2溝部222の底部222aの円弧の径は、ドラム140のドラム径D4と略同一の径に設定される。さらにまた、第2溝部223は、ドラム150のみが載置されるので、第2溝部223の底部223aの円弧の径は、ドラム150のドラム径D5と略同一の径に設定される。そして、第1溝部210は、ドラム110,120,130,140,150のいずれもが載置されるので、第1溝部210の底部210aの円弧の径は、一番大きいドラム150のドラム径D5と略同一の径に設定される。換言すれば、各第2溝部220の底部221a,222a,223aは、それぞれ異なる曲率で形成されて、第1溝部210の底部210aは、複数の第2溝部220の底部221a,222a,223aのうち最小曲率の第2溝部223の底部223aの曲率と同じに形成される。
【0023】
このように、載置されるドラム100に合わせて第2溝部220の底部が異なる曲率で形成されるので、第1溝部210が第2溝部220の底部のうちの最小曲率で形成されていても、安定してドラム100を載置することができる。
【0024】
本実施形態のトレイ20によれば、ドラム幅Wやドラム径Dが異なるドラム100について対応して載置することができる。そして、ドラム100(110,120,130,140,150)の第1フランジ部101(111,121,131,141,151)は、常に第1溝部210に載置すればよいので、ドラム100の載置の作業が分かりやすく、トレイ20を小型に形成することができる。また、第1溝部210、第2溝部220の側面がテーパ状に形成されるので、ドラム100の載置時の位置決め作業が容易とされる。
【0025】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は本実施形態によって限定されることはなく、種々変更を加えて実施することができる。例えば、トレイ20とパレット10は一体として形成することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 コンテナ 10 パレット
10a 固定部 11 突起部
20 トレイ 21 トレイ本体
21a 平面部 21b 壁部
22 突出板 22a リブ状部
23 切欠部 28 凹曲面溝
30 スリーブ 40 リッド
40a 固定部
100,110,120,130,140,150 ドラム
101,111,121,131,141,151 第1フランジ部
102,112,122,132,142,152 第2フランジ部
105 筒部
210 第1溝部 210a 底部
210b 側面
220,221,222,223 第2溝部
221a,222a,223a 底部
221b,222b,223b 側面
D,D1,D2,D3,D4,D5 ドラム径
W,W1,W2,W3,W4,W5 ドラム幅
T (ドラムにおけるフランジ部の)厚さ
L ドラムの軸心